「前田有一の超映画批評」をランキング形式で紹介するサイトです。 週末の映画選びなどにご利用ください。

新着記事

2192件中 401~450件 を表示しています。
75点
ナメクジを全裸美少女のお口に

ホラーはもっとも様式化されたジャンルの一つであり、精通した監督の手にかかればオリジナリティなどなくとも、相当面白いものができる。『スリザー』はその最高のお手本のひとつだ。

アメリカ南西部の田舎町の山中に、隕石が落下した。現場近くで女性といちゃついていたグラント(マイケル・ルーカー)が見に行ってみたところ、卵のような未確認生物に襲われ、体内に侵入されてしまう。命は取り留めたものの、その日からグラントの体に醜い腫れ物が現れ、成長をはじめる。

これはほんの導入部。このあと大増殖したナメクジ生物が人々を侵食。やがて脳を乗っ取られた人間たちが次々と周りに襲い掛かる。ヌメヌメと気味悪いこの生物、ヒトが悲鳴を上げるとその口から体内に入ってくる。そんな生理的にウギャーな展開がポイントだ。

75点
松尾スズキ監督の非情さが炸裂する怖い映画

女優は、私生活が波乱万丈なほど芸に深みが出るなどといわれる。もしそれが真実ならば、結婚生活で心身ともに苦労したといわれる内田有紀は、今の若手女優の中では今後の成長が見込まれる一人であろう。結婚引退後、離婚を経て復帰後初の主演作となるこの『クワイエットルームにようこそ』は、彼女のおそるべき演技力によって傑作として花開いた。

独身のフリーライター(内田有紀)は、人間関係や締め切りのストレスから、わずか数百文字の原稿が書けず行き詰っていた。やがて目覚めるとそこは一面、白い部屋。おまけに身体は完全に拘束されている。どうやら彼女は発作的に睡眠薬を大量摂取し、この精神病院の隔離病棟"クワイエットルーム"に入院させられたらしい。そこには常軌を逸した患者たちが大勢いたが、病院が定める規則のため、締め切りを抱えた彼女でさえも簡単には退院できないという。

ろくでもない他の患者たちとの交流の中で、ヒロインが自分の身におきた事を見つめなおす物語は、ほとんど病院のワンフロアのみで展開する。本業が舞台演出の松尾スズキ監督(原作も担当)にとって、物理的に限られたこうした空間設定はまさに得意とするところ。逆に言えば、舞台と映画の演出の違いによるボロが出にくい、うまいストーリーといえる。

75点
気軽な大作映画の中に真実をこめた必見作

中東において、米国のきわめて重要なパートナーのひとつに、サウジアラビアという国がある。なぜ短期間で占領が終わったイラクがいまだにグダグダしているのかなど、この地域での米国の不可解な政策行動を説明するために、絶対に欠かせない存在であるものの、これまでこの国を扱ったアメリカ映画はあまりに少なすぎた。

そんな中『キングダム/見えざる敵』は、本格的な軍事アクションの形で中東情勢の本質をさりげなく教えてくれる、良質な娯楽映画である。ちなみに今ハリウッドは中東ものが熱く、同様の作品が今後何本も企画されているというから楽しみだ。

サウジアラビアで、外国人居住区を狙った自爆テロが発生、アメリカ人にも膨大な死傷者が出た。FBI捜査官のフルーリー(ジェイミー・フォックス)は、首謀者をアルカーイダの幹部アブ・ハムザと推定、現地入りを要望するが、政治的理由により却下される。しかし彼は、ワシントンポストの記者を利用して半ば強引に入国。爆発物や法医学のエキスパートなど精鋭3名を引きつれ、5日間のみだが現地捜査の許可を得るのだった。

75点
嘉門洋子の演技とプロポーションは絶品

先週の「人間椅子」に続く、エロチック乱歩シリーズ第二弾。ミステリの古典である江戸川乱歩の原作を、現代風にアレンジした怪奇&エロティックなドラマだ。同名短編の映画化としては94年以来となる。

編集者の奈緒子(嘉門洋子)は、不気味な作風で知られる有名画家の取材で、彼が生前身を寄せていた東栄館なる洋館を訪れた。そこには一癖もふた癖もある人々が住んでいたが、唯一まともそうな少女マドカ(清水萌々子)の話によると、画家は屋根裏を好んでいたという。奈緒子は好奇心を抑えきれず、屋根裏を伝って住民らの部屋を覗きに行くが……。

のほほんと劇場の椅子に座っていると、冒頭から驚かされることになる。男性ではなく、女性主人公が他の部屋を覗きに行くというアレンジが物語に加えられているが、その最初から緊張感が持続し、何が起こるか予測しがたい。他人の不倫現場やエッチシーンを見ている分には楽しい(?)が、天井の小さな穴からそこにいるはずのない人物の恐ろしい何かを見てしまったとしたら……。

75点
深夜の大邸宅にひとり、執拗にかかってくる無言電話の怖さ

暇つぶしにネットサーフィンしているとき、掲示板などで「今、きみの後ろにいるよ。振り返ってみてごらん」なんて書き込みを見つけると、状況によってはものすごく怖かったりする。ハイテクに囲まれている現代においても、人々が感じる根源的な恐怖というものはあちこちに存在する。

丘の上に建つ一軒の豪邸。そこに女子高生ジル(カミーラ・ベル)が、ある晩ベビーシッターのバイトでやってきた。子供たちはすでに二階で就寝しており、彼女は気軽な留守番ができると思っていた。ところが気味の悪いイタズラ電話が連続。ジルは間取りが想像できぬほど広い、死角だらけのこの邸宅が恐ろしくなってきた。しかも電話の相手は、彼女の姿を見ていなければわからぬ事をやがて話し始める……。

だだっ広い屋敷で留守番をすることになった女子高生が、段々エスカレートするイタズラ電話に恐怖する、というワンシチュエーションスリラーだ。

75点
現代中国にたとえたがごとき構図と感動的なストーリー

本国では記録的な大ヒットをしたにもかかわらず、日本では話題にも上らないという映画は意外に多い。2004年に作られ、05年のお正月映画として中国でダントツの人気だった『イノセントワールド 天下無賊』もそんな一本だ。しかし、そういう作品にこそ各国の大衆の本当の好みが出ていると見るべきであり、鑑賞すれば彼らと同じ空気を味わえるという意味でたいへん興味深いといえる。

ワン・ポー(アンディ・ラウ)とその恋人ワン・リー(レネ・リウ)は、カップルで協力して詐欺や盗みを働くことを生業としている。しかし、リーは悪党稼業に嫌気が差し、足を洗いたがっている。彼らは長距離列車で素朴な青年(ワン・バオチアン)と同席するが、田舎育ちで人を疑うことを知らぬ彼は、大声で「全財産を持って故郷に帰るところだ」と話し続ける。ポーや、偶然乗り合わせた窃盗団グループは、それを聞いてとたんに色めき立つ。しかし、ただ一人リーだけは、この心優しい青年の金と心を守り抜こうと決意するのだった。

満員列車の中で「金を持ってる」といったとたん周りがギラギラしだすという展開は、妙にリアリティがあって笑える。青年は長年の奉公で貯めた全財産を結婚資金にして故郷に戻る気でいるが、見ているコチラはあまりに彼が無防備なので冷や冷やし通しだ。

75点
個性出まくりのオールスターキャストの中でもイチオシは田中麗奈

ゴールデンウィークとはもともと映画業界用語で、この時期は家族みんなで楽しめる話題作が集まるものだが、その中でも異彩を放つのがコレ。おなじみ水木しげるの妖怪漫画を、CG満載で実写化したアクションムービーだ。同じ漫画の実写化として『デビルマン』『キャシャーン』のようなドン引き駄目映画になるもよし、『忍者ハットリくん』のようにバカ映画として後世に名を残すもよし、どっちに転んでも見所にはことかかない、魅力的な一本である。

年中金欠のダメ妖怪ネズミ男(大泉洋)は、ひょんなことから手に入れた妖怪界の至宝"妖怪石"を、よりにもよって質入れしてしまう。織田信長や天草四郎ら歴史上の人物の怨念を封じ込めたこの石は、心の弱い人間などが手にすれば、瞬く間に邪悪な心に取り付かれてしまう。案の定、石は小学生の健太(内田流果)の父(利重剛)の手に渡り、やがて人間&妖怪界を巻き込んだ争奪戦が始まってしまう。

妖怪ものは意外にも現代っ子にウケるらしい。しかも今回は超有名タイトルなので、結構な話題を呼ぶはずだ。鬼太郎役はティーンからオバサマまで大人気のウエンツ瑛士。映画オリジナルのヒロインには、あの沢尻エリカに「最近出すぎで気に入らない」とまで言わせた人気急上昇中の井上真央。そして目玉おやじの声はおなじみ田の中 "オイ、鬼太郎" 勇である。これは年齢性別問わず、あらゆる日本人を守備範囲に収めた強力な布陣といえる。

75点
絶望の中で輝く希望の光

泥棒がひょんなことから誘拐した赤ちゃんの世話に振り回され、やがてそのピュアな微笑みに癒され更正していく……。アカデミー外国語映画賞を受賞した『ツォツィ』は、先週紹介したコメディ『プロジェクトBB』とまったく同じストーリーである。

舞台は南アフリカ、ヨハネスブルグのスラム街。主人公の少年ツォツィ(プレスリー・チュエニヤハエ)は仲間数名と窃盗団を組み、周りからも一目置かれるいっぱしのワルだ。ある日彼は、高級住宅街の主婦から強奪したBMWの後部座席に乳児を発見する。

当初は捨て置こうかと考えたツォツィは、しかし放っておけずに自分のあばら家に連れ戻る。とはいえスラム育ちの孤独な彼に、赤ん坊の世話などできるはずもない。赤ちゃんを紙袋に入れて持ち歩き、ぼろ紙をオムツ代わりにあてる姿からは、この少年の絶望的なまでの無知無学と、育ってきた環境における両親の不在ぶりが伝わってきてあまりに痛々しい。

75点
泣ける度の高さは過去最高レベル

ジャッキー・チェンは、30年以上にわってすべての主演作が日本公開されている不世出の大スターだが、近年じつは尻に火がつき始めていた。それは、タイのアクションスター、トニー・ジャーの出現による。彼は『マッハ!』や『トムヤムクン』で、全盛期のジャッキーを上回る物凄いリアルスタントを見せ、ジャッキー・チェンに引導を渡すのは間違いなくこの男だろうと、全世界のアクション映画ファンに思わせた。

しかしジャッキーは男であった。新世代のスターの登場を受け彼が手がけたのは『香港国際警察/NEW POLICE STORY』。原点であり古巣の香港映画界に戻り、自身の最高傑作であるポリスストーリーのタイトルを、まったく同じコンセプト(CGに頼らない本物のアクション)で再現した。これはすなわち、トニージャーへ真っ向勝負を挑んだということ。作品の出来もすばらしく、まさに横綱相撲であった。

この成功を受け、再び同じベニー・チャン監督と作り上げたのが『プロジェクトBB』。邦題は『プロジェクトA』を思わせるがまったく無関係なオリジナルストーリーだ。

75点
ユマ・サーマン36歳のアイドル映画

この映画の魅力を知ってもらうにはどこかで予告編を見てもらうのが手っ取り早いのだろうが、残念ながら本編の面白いところをほとんど出してしまっているので、先に見るのはよしたほうがいい。予告編を事前に見るなとは矛盾もいいところだが、映画本体をより楽しむためには仕方がない。

いまニューヨークには、あらゆる事故、事件から市民を守る謎のスーパーヒーロー、いやヒロインがいる。Gガールと呼ばれる彼女(ユマ・サーマン)は、長身にブロンドヘアをなびかせ、音速並の速さでどこかから飛んでくる。そして無敵のパワーですべてを解決してしまうのだ。そんなGガールも普段は地味なニューヨーカー。そして、そうとは知らずに近づいてきたやさしげな男性(ルーク・ウィルソン)と恋をしてしまう。

さて、ここまでなら「スーパーマン」の男女入れ替え版といった趣だが、このあとの展開が凄い。当初はカノジョがGガールと知り大喜びしていたはずの男も、やがてその超人級の性欲と束縛欲に嫌気が差してしまうのだ。そして、やっぱり普通の女性がいいとばかりに身近な同僚といい仲になっていく。

75点
白人視点から描くルワンダ事件

昨年話題になった『ホテル・ルワンダ』と同じルワンダ虐殺事件を、別の切り口で描いた劇映画。あれだけの傑作の後発という厳しい立場ではあるが、なかなかどうして見ごたえのある一本であった。

海外青年協力隊の一員としてルワンダにやってきた英国人青年(ヒュー・ダンシー)は、人格者で知られるクリストファー神父(ジョン・ハート)のもと、公立技術専門学校で英語を教えている。そんなある日、フツ族出身の大統領暗殺事件を契機として、ツチ族皆殺し作戦が開始された。この学校には国連軍が駐留し治安を守っていたため、彼らと神父を頼る膨大な数のツチ族住民らが逃げ込んでくるのだった。

別の切り口とは言うが、ストーリーはほとんど『ホテルルワンダ』と同じ。ここまで似通った作品も珍しいが、しいて言えばこちらは徹底して白人、すなわちよそ者、第三者の視点で事件を描いている。さらに、サバイバル劇としての娯楽性などをことさら高めることなく、淡々と、そして真摯に事実を伝えようとしている。この企画を考えた製作者は、当時ルワンダにいた自分が何もできずに帰国してしまったことを悔いているというが、その思いはこのあたりによく現れている。

75点
難しい原作を違和感なくアニメ化した

アニメーションというものが面白い理由は、ひとえに絵が動くから。実写では何の感動もない人物の単純な動作でさえ、それなりに面白く見られるのは、この"絵が動く"という原始的な驚きをいまだに我々が感じるからといっても過言ではない。

むろん、そんな単純化ができるほど現在のアニメーション作品は簡単なものではないが、それでも『鉄コン筋クリート』のような(そう簡単にアニメ化できそうにない)個性的な絵柄をいとも簡単に動画にしてしまった本作のような映画を見ると、そんな娯楽性の原点を意識せずにはいられない。

昭和的な懐かしさを擁しながらも非現実的な架空の街「宝町」。そこで盗みやらを働きながらたくましく自活する孤児のクロ(声:二宮和也)とシロ(声:蒼井優)。ヤクザでさえ一目置く彼らの耳に、あるとき宝町再開発のニュースが届く。それに合わせるように街に不穏な空気が流れるのを察知した二人は、やがて怪しげなデベロッパーから街を守るための争いに巻き込まれていく。

75点
あまりに鋭すぎる人間観察眼、そして心温まる結末

タイトルから内容がまったく想像できない映画だが、アカデミー脚本賞にノミネートされるなど、その細やかな人間描写が米国で高く評価された一本。万人向けではない内容だから公開規模も小さいが、その質の高さから私も強くこの作品を買っている。

舞台は1986年のニューヨーク。主人公一家は、夫婦ともに作家。しかし、脚光を浴び始めた妻(ローラ・リニー)に対し、夫(ジェフ・ダニエルズ)は現在まったくなかず飛ばず、長いスランプに陥っていた。しかしかつての栄光のせいでプライドだけは異様に高く、彼女を認めてやることができない。やがて二人は離婚、父に心酔する息子ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)と、母親っ子のフランク(オーウェン・クライン)を巻き込み、家族は真っ二つに分かれてしまう。

この4人の心理を徹底したリアリティで描く優れたドラマだ。父親は本当は小心者だから、虚勢ばかり張っていて、母親を批判することでしか自分を高く見せられない。まったくもって愚か者だが、そんな父親を信奉する長男は、彼からあまりよろしくない影響を受けまくっている。

75点
高いアニメーション技術と演出力、声優による、世界レベルのジャパニメーション

今敏(こんさとし)監督と、アニメ制作会社のマッドハウスは、これまで数々の良質な大人向けアニメーションを発表してきた。ホームレスたちの感動ドラマ『東京ゴッドファーザーズ』(2003)、アイドル界を舞台にした異色のサイコホラー『PERFECT BLUE』(1998)、そして衝撃のラストで観客を突き放す『千年女優』(2001)と、ひとつも外れがない傑作ばかり。そんなわけで私が、日本の劇場用アニメ監督の中でもっとも打率が高いと考えているのがこの監督だ。

そんな彼の最新作は、映像化は困難といわれつづけてきた筒井康隆の同名小説をアニメ化した『パプリカ』。これもまた、期待を裏切らないハイレベルな作品であった。

患者の見ている夢を映像化し、潜入できる画期的な機器"DCミニ"。精神医療研究所の研究員、千葉敦子(声:林原めぐみ)はそれを使い、パプリカという美少女の姿で患者の悩みの原因を突き止める、サイコセラピストとして活躍していた。ところがあるとき"DCミニ"が盗まれ、研究員らの意識がのっとられる事件が起こる。敦子はDCミニの発明者の時田(声:古谷徹)らと共に、犯人探しに乗り出す。

75点
田中麗奈の演技力と魅力によって傑作となった

一人暮らしする盲目の女性の家に、犯罪者が侵入して一方的な同居生活をはじめる。そんな斬新で実感の伴う魅力的な設定を持つミステリの映画化。原作の乙一は17歳という若さでデビューした人気作家で、この原作も彼が23歳のころに出したものだ。

ヒロインは事故で視力を失った若い女性ミチル(田中麗奈)。やがて最愛の父(岸部一徳)も死に、住み慣れた一軒家で一人暮らしをすることになる。そんなある日、家のすぐ前の駅のホームで、男が突き落とされ死亡する事件がおきる。そしてその直後、警察から追われる在日中国人のアキヒロ(チェン・ボーリン)がミチルの家に忍び込み、彼女の知らぬままその部屋の片隅に息を潜めて座り込むのだった。

盲目のヒロインが知らぬうちに、殺人事件の容疑者と同居するという奇妙な物語だ。侵入者はしかし彼女の暮らしを乱すことはせず、もちろん危害も加えない。ただ身を潜め、殺人現場の線路を毎日見つめるのみだ。

75点
見ごたえたっぷり、さすがの王道

恋愛というものは、たいてい障害があるほど燃える。背徳は最高の媚薬といわれる通り、他人から反対されればされるほど、その恋の価値も上がるというもの。ときには障害がなくなったとたん、恋心もさめてしまったなんていう、意味不明な経過をたどることも少なくないが、それはまさに本質を見失うほど"障害=媚薬"が魅力的だった、ともいえるわけだ。

さて、中でも最高なのが"決して許されぬ立場同士の恋"。これはもう、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をはじめとする、古今東西のあらゆる恋愛物語の基本形。しかし、それらの悲劇物語に"オリジナル"がある事をご存知だろうか。

それこそが『トリスタンとイゾルデ』。1500年以上も前のケルトの伝説をもとにまとめられたこの物語が、いよいよ映画化された。

75点
ラストショットがうますぎる

平凡な映画でも、はっとさせるワンシーンがあると、すべてをチャラにしてあげたくなる場合があるが、もっとも重要とされるラストシーンがそうした「至福の瞬間」であった場合、評価に与える影響はより大きい。『16ブロック』はまさしくそんな作品で、これはもう、最後のワンカットを味わうためにすべてが作られているかのような、そんな映画である。

ニューヨーク市警のベテラン警官(ブルース・ウィリス)は、捜査中の事故で足を悪くし、今では酒びたりの堕落した日々を送っているが、ある日裁判所まで、証人(モス・デフ)の護送を頼まれる。目的地まではわずか16ブロック。15分もあれば済む用事のはずだったが、彼らは途中で猛烈な攻撃を受け、命がけの逃亡劇を繰り広げることになるのだった。

映画のテンプレートとしては、おしゃべり黒人のお調子者のチンピラと、気難しい白人刑事のバディムービーという、定番中の定番。命がけで追手から逃げる合間にも、テンポのいい会話劇やジョークが交わされ、こちらを楽しませる。

75点
韓国らしい、すこぶる面白い怪獣映画

この映画には、久々に腹が痛くなるほど笑った。「ほえる犬は噛まない」「殺人の追憶」といった佳作で知られるポン・ジュノ監督による韓国製怪獣映画『グエムル -漢江の怪物-』のことだ。

この映画の舞台、漢江とはソウルを南北に分けるように流れる穏やかな河川。観光スポットなので、休日には家族連れやカップルがたくさん集まる。主人公はその川っぺりで売店を営む一家。まったく勤労意欲のないダメ父(ソン・ガンホ)がダラダラしていると、突然漢江からカエルの化け物のような怪獣=グエムルが現れ、人々をぱくぱく食べはじめる。逃げ惑う中、父は娘(コ・アソン)がグエムルに連れ去られるのを見る。

さて、ここから先は、頼りにならぬ軍や警察に代わり、一家が怪物と対決するという予想通りのストーリーが展開されるが、父親を無敵のヒーローにしてしまいがちなハリウッド映画と違って、こちらは最後までダメでカッコ悪い点が特徴的。

75点
日本が誇るアクションスター2人の初対決

千葉真一と倉田保昭。彼らは、国内はもとより、それぞれ欧米やアジアで高い評価を得ている日本人アクションスターだ。たとえば千葉真一は、出演した「キル・ビル」でタランティーノ監督から最大級の敬意を捧げられているし、和製ドラゴンこと倉田保昭は、かのブルース・リーに、のちに彼の代名詞的存在となるヌンチャクを紹介した人物としても有名だ。

そんな二人が共演し、なんとスクリーン上で対決する。これは、史上初めてのことである(共演自体は過去にもある)。『マスター・オブ・サンダー』は、そのことの価値がわかるアクション映画ファンこそが最大のお客さん、という作品である。

倉田保昭が演じるのは、1400年間怨霊(松村雄基)を封じ込めてきた五重塔を守る和尚。永き戦いの末、仲間たちは倒れ、今では彼が最後の砦となっている。そんな和尚を見て、弟子の女子高生アユミ(木下あゆ美)は、かつての仲間たちの末裔ら6人を集め、再び寺に戻ってきた。

75点
今夏最高の本格ホラームービー

コナミのゲームソフト『サイレントヒル』といえば、カプコンの『バイオハザード』と並ぶ、プレステ時代の傑作ホラータイトルだ。しかし、ゲーム的な、ライトなアクションホラーとして映画化された『バイオハザード』とは、映画化のコンセプトが大きく異なる。

ストーリーは、ゲーム版のパート1を元にしている。ゲーム版では父親だった主人公が、母親に変更されている。これにより、テーマが母子愛という、誰の目にもわかりやすい、普遍的なものとなった。この方が、アメリカでの受けはよいだろうし、なにより、演技力を備えた美人女優で知られるラダ・ミッチェルがヒロイン(しかも妙に体の線丸出しな薄着)なら、世界中の男性客が喜ぶ。商業面でも一石二鳥というわけだ。

主人公ローズ(ラダ・ミッチェル)は、情緒不安定な9歳の娘シャロンが口走る「サイレントヒル」という地名が気になっていた。調べたところ、30年前の火災の影響で、今ではゴーストタウンと化した実在の町とわかる。彼女はそこに娘を連れていけば、何かがわかると思い、早速出かけるが、町で事故を起こし、気が付くとシャロンがいなくなっていた。途中から母子を追ってきた、近くの町の白バイ婦警(ローリー・ホールデン)とともにシャロンを探す彼女の前に、やがて恐ろしいクリーチャーが現れる。

75点
1と2の中間あたりを狙った、安定感ある大作

いまや、トム・クルーズの代名詞的シリーズとなった、ミッションインポッシブルの第3弾がこれ。監督やトム様の相手役の人選を巡って二転三転、完成は遅れに遅れ、ようやく公開である。

今回、トム・クルーズ演じるスパイ、イーサン・ハントは諜報員を引退し、スパイ教育係となっている。一般人の女性と婚約もすみ、あとは悠々自適だと思っていた矢先、招集がかかる。教え子のスパイが捕らえられ、その救出作戦にあたってくれというのだ。

さて、このパート3は、ジョン・ウー監督のお気楽アクション=M:i-2 の反省を踏まえてか、オリジナルのテレビ版の魅力であった、「スパイ仲間のチームプレイ」要素をやや濃くさせたものになっている。大雑把な印象としては、パート1とパート2を足して2で割った、という感じだ。

75点
万人向けの楽しいミステリ映画

『トリック』は、2000年から続く人気テレビシリーズだ。阿部寛演じる物理学者と、仲間由紀恵演じる奇術師のかけあいが楽しい、笑えるミステリである。

この劇場版第2作では、上田(阿部寛)がある青年から、助けを求められる。彼によると、幼馴染の少女(堀北真希)が、ある霊能力者(片平なぎさ)が支配する島に連れ去られてしまったのだという。著書を誉められ、調子に乗った上田は依頼を快諾、当たり前のように奈緒子(仲間由紀恵)を半ば強引に連れて、島に上陸するのだった。

思いついたら即実行、というわけで、全くストレスを感じさせない、テンポの速い展開である。このあたりはいかにもテレビ世代向け。いくつものミステリトリックが楽しめるが、それぞれ一切もったいぶらず、どんどん手の内を見せて先に行く。誰もが超能力かと思ったものを、仲間がトリックを暴いていくシーンは、私のような手品の素人にとっては、大きな驚きがある。

75点
最後の最後に明らかになる、あまりにリアルな感動

『ステイ』はネタバレ厳禁、とんでもない結末を持つ映画だが、その結末は他のミステリ映画のように、観客を驚かせるためのものではない。

主人公は、精神科の医師(ユアン・マクレガー)。今日からちょいとやっかいな患者(ライアン・ゴズリング)の担当になった。その患者は悲しげな瞳をした青年で、もうすぐ自殺すると、その日時まで指定して去っていった。最初は戸惑う主人公だったが、前任者の医師が急に引きこもってしまったり、この患者が雹が降ることを正確に予知するなど、不思議な出来事を目の当たりにするにあたり、狂言自殺の類ではないと確信する。彼の命を救うべく、必死にその行方を探す主人公だが……。

この映画をみると、意味不明なシーンの挿入や、カットのつなぎ方のヘンさ、こちらを落ち着かなくさせる映像へのエフェクトなど、とにかく見た目のわかりにくさに、頭の中に???が並ぶだろう。ただし、それらにはすべて意味がある。時には伏線として、時には結末を暗示する大胆なヒントとして、そうした仕掛けは観客に提示される。私はこの映画をすでに2度観たが、背景の音や群集のセリフにいたるまで、非常に手の込んだ仕掛けが施してあることが見て取れた。

75点
怖い! 面白い! 今度はホラーだ

ゴールデンウィーク向けの映画が続々公開されているなか、子供向けアニメの本命『クレヨンしんちゃん』も新作が登場する。

最近カスカベの街では、妙なうわさが広まっている。ある日突然、隣人が「そっくり人間」に取って代わられ、本物はどこかに連れ去られてしまうというのだ。最初は信じなかった子供たちも、家族や幼稚園の先生たちが、急に性格が豹変するのを見ると……。

なんと今回のクレしん映画は、ホラーである。まったくもって異色だが、これがまた本当に怖いのだからたまらない。たぶん、小さい子供が見たら泣く。なにしろあのふにゃふにゃした絵柄と世界観の中で恐怖シーンが描かれるのだ。私などは昔、「ドラえもんが、突然血を流して死んだら一番怖い映画になる」などと、くだらん妄想を話し合ったものだが、それが現実になってしまった。

75点
見方を間違えなえれば楽しめる

『サウンド・オブ・サンダー』は、まさに「超映画批評」のような事前レビューサイトの役割を問われる一本といえる。というのも、この映画を予告編や、雑誌の無難な紹介記事の印象だけで期待して観に行くと、かなりの確率で外すと思われるからだ。

しかし、適切な内容の事前レビューを読んで、期待すべき点を間違えずに劇場に出かければ、じつはこれ、けっこう満足できる作品なのである。今これを読んでいる皆様に、そのあたりを適切に伝えられるよう、私としても全力を尽くしたい。何しろ今週は、ただでさえ公開作品が少ない上、たまたまTV出演や取材が重なり、私自身、ほとんど試写会場に出向くことができず、紹介できるのがこれ1本きりなのだから(次週からは元に戻ります)。

この映画の舞台となるのは近未来、西暦2055年だ。この時代、金持ちの流行といえば、タイムトラベル。まあ、今でいうホリエモンらIT成金たちが、ありあまった金で宇宙旅行に行くようなものだ。宇宙旅行といいながら、実際は大気圏外にちょびっと出て放物線飛行を行い、数分間の無重力体験ができる程度であるように、この映画の中で行われるタイムトラベルというのも、決してドラえもんよろしく、好きな時代に自由にいけるレベルのものではない。旅行会社が設定する「ツアーコース」は、毎回同じ場所、同じ時刻に数分間だけ、わずか1メートル程度の幅の「エリア」のみ。そこへ、ガイドの先導で出かけるという趣向なのだ。

75点
生きる方向を失いつつあるサラリーマンに見てほしい

『燃ゆるとき』は、マルちゃんブランドで知られる食品会社の実話を元にした映画だ。80年代から90年代にかけて、まだ、アメリカ市場における数々の恐ろしいルールを知らなかった「うぶな」日本企業が、何度も煮え湯を飲まされながらも、果敢に立ち向かっていく熱血企業ドラマである。

主人公の営業マン(中井貴一)は、韓国の安い商品に押されつつあった米国のカップ麺工場の再生のため、カリフォルニアに派遣される。その工場は、黒人やヒスパニックなど、現地雇いの従業員を中心に稼動していたが、派遣早々、主人公は彼らをレイオフしなければならない厳しい現実にさらされる。日米の消費者の味覚の差や、セクハラなど社会環境の違いに悩まされながらも、彼は米国市場に戦いを挑んでゆく。

タイトルどおり、とても熱いサラリーマン映画だ。この映画を見ると、日本人であること、日本のサラリーマンである事を誇りに思うことができる。全編に、米国発新自由主義経済に対する批判のメッセージがこめられている。

75点
思想色は薄い、感動の戦争ドラマ

2005年は戦後60周年ということで、『ローレライ』『亡国のイージス』『戦国自衛隊1549』といった、軍事大作の公開が続いた。しかし、大東亜戦争(太平洋戦争)を真っ向から描いた戦争大作は、今年最後を締めくくるこの『男たちの大和 YAMATO』だけだ。製作発表時から、大いに期待されてきたこの作品の出来は、いったいどうなのか。

戦艦大和の生き残りを父に持つヒロイン(鈴木京香)は、父の生き様を知るため、漁船を借りて大和の沈没地点に向かう。そしてその道すがら、父の同僚だった船長から、大和の沖縄水上特攻作戦の真実を聞かされる。

さて、沖縄水上特攻作戦とは、史上最強かつ最大だった戦艦大和最後の作戦の事だ。当時の日本は、すでに敗色が濃厚。だが、本土たる沖縄を守るため、彼らは航空支援が無いにもかかわらず、上陸した米軍を艦砲射撃で殲滅するため、護衛艦隊と共に出撃した。しかし、400機近い圧倒的戦力の米軍機から猛烈な攻撃を受け、乗員2千数百名と共に、東シナ海の藻屑と消えたのだ。

75点
企業の裏側を暴く、娯楽性の高いドキュメンタリー

現在、資本主義……というより、アメリカ式のグローバリズム、自由経済の弊害が、世界中で非難を浴びるようになってきた。そうした問題を扱ったドキュメンタリー、それがこの『ザ・コーポレーション』だ。

タイトルにもなっている"企業"とはいったい何なのか。その行動原理や、現在地球にどのような影響を与えているかを、まずは順に分析する。企業は"法人"という擬似人格を与えられているくらいなのだから、人間に対する診断手法も当てはまるはず、というユニークな視点から、企業を分析し、彼らを"サイコパス"と診断する。この冒頭がかなり面白く、一気に引き込まれる。

その後は、現在グローバル企業の犯している様々な犯罪、非道徳的な所業の数々を紹介していくわけだが、つまりはこうした、企業犯罪に対する批判こそがこの映画の本質であろう。145分間、観客を飽きさせぬために、随所にエンタテイメント的な演出が見られ、なかなかよく工夫しているなと感じさせる。

75点
美しい風景の中で展開する4つの感動物語

アン・ブラッシェアーズのベストセラー『トラベリングパンツ』の映画化。

16歳になる4人の少女は、母親同士がマタニティ教室で一緒になって以来の大親友。彼女らはこの夏、初めて離れ離れになる。リーナは祖父母の住むギリシャへ、カルメンは別居中の父と過ごし、ブリジットはメキシコのサッカーキャンプに参加、そしてティビーは地元のスーパーでバイトする。そんな4人はある日不思議なジーンズをお店で見つける。それは、体型のまったく違う4人にフィットする魔法のジーンズ。彼女らは早速入手すると、一人1週間の期限を設け、まわし穿きするルールを定める。

4人の少女の一夏の物語をそれぞれ追いかけた、切なく感動的な青春ドラマ。この映画に登場する「ジーンズ」は、全員のお尻にフィットする不思議なジーンズであるが、それ自体は特別何かファンタジックな奇跡を起こすわけではない。4人の間を行ったり来たりしながら、物語の進行役となるのみである。

75点
結婚を考えているカップルが見たら最高に楽しいコメディ

『バタフライ・エフェクト』で主人公を演じたアシュトン・カッチャーの主演最新作。67年の『招かれざる客』という作品の一風変わったリメイクで、「白人と黒人が結婚する」という米国における難題テーマを、両者の立場を反対に設定して、軽いロマコメに仕上げた作品。

愛娘(ゾーイ・サルダナ)が結婚を前提に交際している彼氏を連れてくるというので、頑固者で心配性の父親(バーニー・マック)は男の身辺調査を依頼する。その結果、完璧な好青年だとわかり一時は安心した父だったが、黒人の娘がつれてきたのは、まったく予想外なことに、白人のハンサムな青年(A・カッチャー)だった。

40年近く前の映画が描いたテーマ、すなわち白人と黒人の結婚が、いまだに特別なものとして映画の主題になるあたりに人種問題の難しさを感じてしまうが、幸いにしてこの『ゲス・フー 招かれざる恋人』は、気軽に見られるロマンティック・コメディ。こんな風にギャグにして笑い飛ばす事ができるというのは、まだマシというべきか。

75点
人気漫画の映画化としてはまれにみる成功例

累計2200万部を売上げ、現在も連載中の大ヒットコミックの映画化。矢沢あいによるこの原作は、幅広い年齢層の女の子に絶大な人気を誇る。

成功を目指すロックバンドのボーカリスト大崎ナナ(中島美嘉)と、遠距離彼氏を追いかけてきた小松奈々(宮崎あおい)。同じ名前を持つ二人は同じ上京列車の中で出会い、意気投合する。やがて部屋探しの折に偶然再会した二人は、その部屋で共同生活をはじめる。性格は正反対の二人だが、それでも強く引かれ合い、やがてお互い不可欠な存在となっていく。

映画『NANA』は良かった。原作を知らない者も原作のファンも、どちらも恐らく楽しめるであろうなかなか優れた青春友情ドラマとして成り立っている。

75点
幾多の類似品とは違う、これぞゾンビ映画のオリジナル

60〜70年代から始まるゾンビ映画の始祖ジョージ・A・ロメロ監督による最新作。幾多の粗悪な類似品とは明らかに一線を画す、これぞまさにオリジナル、本家本元によるゾンビ映画だ。

舞台は地上を生ける屍に支配されたアメリカ。生き残った人々は川に囲まれたわずかな地域をフェンスで囲み、ゾンビから身を守って生きている。しかしその“町”は一人の権力者(デニス・ホッパー)により支配され、人々は搾取され、貧しい暮らしを余儀なくされていた。主人公(サイモン・ベイカー)は、仲間とともに特殊な装甲車デッド・リコニング号で外の世界に繰り出し、ゾンビを蹴散らしながら廃墟の街に残った物資を収集してくる傭兵。そして彼の右腕チョロ(ジョン・レグイザモ)は、密かに上流階級への仲間入りを企んでいた。

のっけからゾンビとの激しい戦いの連続で見せる迫力のアクションホラーだ。局地戦ではその戦力差でゾンビを圧倒する人類は、完全に彼らをなめきっており、その戦いはもはや戦争というより虐殺の様相を呈している。ゾンビを“恐ろしい化け物”として描くだけでなく、本当に残酷で恐ろしいのは人間の方だというメッセージはこの監督特有のもので、『ランド・オブ・ザ・デッド』が他の単純なゾンビホラーとは違うのだと冒頭からわかるようになっている。

75点
この上ない不謹慎さと意外なド迫力映像のあわせ技

過激でブラックなアニメシリーズ『サウスパーク』で知られるトレイ・パーカーとマット・ストーンによる、マリオネット(操り人形)アクション大作。

テロを根絶するため、国際警備組織“チーム・アメリカ”が結成された。彼らはハリウッドを拠点とし、強力な武器と車両で世界中のテロリストを虐殺、いや退治していた。ある日彼らは独裁者が大量破壊兵器を取引しようとしている情報をキャッチ、おとり捜査のため俳優のゲイリーをスカウトすることにきめた。

人形劇である。それも糸であやつるマリオネット。CGなどのこじゃれた最新技術は使わない。ところが、えらく精巧なセットと本格的な音響効果、『マトリックス』シリーズや『スパイダーマン2』で知られる撮影監督らの力によって、とんでもない迫力のアクション映画に仕上がっている。一本のアクション作品として、他の実写ハリウッド娯楽大作と比べて見ても、十二分に楽しめるという凄い作品だ。

75点
一度じゃとても見切れない圧倒的な情報量

ジョージ・ルーカスが28年間に渡り作り上げてきた壮大なSFシリーズの完結編。スター・ウォーズは本来9部作で、まだエピソード7〜9が作られるのではと期待されているが、ルーカス本人はもう作らないといっている。そうは言ってもたぶんそのうち作るとは思うが、実際にどうなるかはわからない。

激化する共和国と独立惑星連合との戦いを軸に、主人公アナキン(ヘイデン・クリステンセン)がダークサイドに落ちていく過程を悲劇的に描く。その流れの中で、愛するパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)との恋の行方、師匠であり友であるオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)との別れなど、あらゆる登場人物の運命を一気に描く2時間21分。見ごたえたっぷり、文句なしの超大作だ。

『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』は、ファンにとってはもう、オチはわかっているわけであるから、そこまでいかにして話を進めていくか、どう演出してくれるかが見所。基本的にストーリー運びは前作、前々作同様うまくないので、あらかじめある程度の予備知識を持っていったほうがよいかもしれない。なんといってもエピソード3は、“選ばれし者”だったはずの主人公アナキンが、悪の権化ダースベーダーに変わっていくという“ひねり”があるのでちと複雑だ。単なる各軍の対立構図やストーリーに迷って、彼の心理の移り変わりという最大の見所を逃すのはもったいない。

75点
シリーズ最高傑作

DCコミックス不滅の人気キャラクター、バットマンを映画化したシリーズ最新作。監督は時系列を逆にした異色作「メメント」のクリストファー・ノーラン。渡辺謙が出演しているのも話題だ。

本作はシリーズパート1よりさらにさかのぼった時代を描いたもので、目の前で両親を殺された若き主人公が、ヒマラヤへの一人旅で心身ともに成長、特殊能力も修行の末に獲得し、やがてバットマンとしてゴッサムシティを守るようになるまでの話である。バットマンはスーパーマンやスパイダーマンと違い、超能力を持たないただの生身の人間であるが、彼がそれでもなぜ強いのか、その秘密が明らかになる。このあたり、へぇ〜の連続である。

最初に言っておくと、本作はシリーズ中では最も面白く、そしてカッコいい。このバットマン誕生編は、予想外のすばらしい出来映えであった。

75点
見た人の何割かは確実に拒否するが、それもやむをえない

仰天結末型のアイデア映画。主演は演技派で知られるジュリアン・ムーア。この配役もまた、一種の引っ掛けになっているような気がしてならない。さらにいえば、CMや各種媒体の無難な映画紹介といったパブリシティ全般でのイメージ作りまでもが、壮大なミスディレクションになっているという映画だ。

逆にいえば、それらをみてイメージするものを期待してみに行った観客の何割か(恐らくかなり多数)が、見終わった後、期待を裏切られたといってこの作品を拒否するであろう。こういうジャンルを嫌いな人は非常に多く、かつて似たような某作品の時にまきおこった、文字通り賛否両論の騒ぎを見ると、それは明らかだ。

しかしながら、ツボにはまった人にとっては相当満足度の高い作品になることも間違いない。「見る前に読む」ことが身上の超映画批評においては、書く側としても非常に難度の高いレビューになると思うが、とりあえずチャレンジしてみる。

75点
インチキな偽善的純愛モノよりずっといい

初恋の悩みを2ちゃんねるに相談した、あるオタクの実話(掲示板の書き込みなので信憑性は100%ではなかろうが)を映画化したもの。

主人公は22歳の同人オタク(山田孝之)。彼は今日もアキバ(秋葉原)のフィギュアショップなどを覗いた後、私鉄で帰路につこうとしていた。そのとき目の前で中谷美紀似のお嬢様(中谷美紀)が酔っ払いに絡まれ、彼は思いもかけず彼女を助けてしまう。後日お礼にエルメスのティーセットが届いたことから、彼は自分の高まる恋心を匿名掲示板「2ちゃんねる」に相談するのだった。

さて、普段は罵詈雑言の嵐を浴びせる2ちゃんねるの名無しさんたちであるが、あまりに切実かつ純情な主人公の様子に、やがてマジレスが飛び交うようになる。ハンドルネーム「電車男」を名乗る主人公は、そんな彼らからのアドバイスを元に、助けた彼女(エルメスと命名)にアタックするというラブストーリーだ。

75点
好きな人にはたまらない作品なのだが……

その神秘的でハンサムなルックスで人気のキアヌ・リーブスが、『マトリックス』シリーズの主人公ネオ役のあとに選んだというSFアクション大作。

主人公(K・リーブス)は各地の超常現象を解決している悪魔祓い。彼は地獄や天国から人間界に侵入してきた存在“ハーフブリード”が見えるという特殊能力を持つ。その能力に悩み、かつて大罪である自殺未遂をした事のある彼は、すでに死後の地獄行きが決定されている。しかし、そこがあまりに恐ろしい場所だと知ってしまった今、彼は天国からのお目こぼしを勝手に期待して、地獄からのハーフブリードを日々退治しているのだった。

ところがそんな勝手な努力を、意地悪な神様&天使はまるで認めようともしない。しかも悪いことに、ヘビースモーカーである主人公は肺がんと判明、余命1年と宣告されてしまう。

75点
映画を知らぬ監督が作ったとは思えない

いじめられた恨みを晴らそうとする二重人格の少年を描いた井上三太の同名コミックを実写映画化したもの。主人公役は小栗旬(おとなしい本来の人格=村崎十三)と中村獅童(強暴な別人格=13号)が二人一役で演じている。

主人公の若者、村崎十三(小栗旬)は、10年前の小学生時代、自分をいじめていた男(新井浩文)のアパートを探し当て、復讐のため越してきた。さらに男と同じ職場にバイトとして入社するも、彼は十三の顔すら覚えていなかった。不良時代と変わらず横暴かつ乱暴な男は、今では妻と小さな子供の3人で幸せに暮らしていたが、十三は手始めにその妻に接近していく。

原作漫画はかつて何人かの監督から映画化のオファーがきたというが、原作者はあえて映画経験のないCMディレクターの井上靖雄監督を選んだ。アメコミのごとくアクの強い自分の絵柄を違和感なく実写化できるのは、井上監督の映像センスしかないと思ったそうである。

75点
大人でも楽しめるバランスいい冒険映画

頭は薄いがインパクトの強いお顔をもつ人気俳優ニコラス・ケイジ(「マッチスティック・メン」ほか)主演のアクション・アドベンチャー。ハリウッドNo.1のブロックバスター(=超大作)請負人ジェリー・ブラッカイマー(「パイレーツ・オブ・カリビアン」ほか)製作の、健全なファミリー・カップル向け娯楽大作だ。

歴史学者&冒険家の主人公(N・ケイジ)は、一族が先祖代々追ってきた秘宝を追い求め、世界を飛び回っている。歴史上の権力者とともにあったこの秘宝は、アメリカ独立戦争時の混乱で行方不明になっていたが、彼は合衆国独立宣言書にそのヒントが隠されている事をつきとめる。

主人公とその相棒は、金髪巨乳美女なのに知性的という、キャラクター的ギャップが新鮮な公文書管理者と協力し、その秘宝を探す旅に出る。歴史学者ニコラス・ケイジは、一見そうは見えないがとにかく頭がよい。その知性と豊富な知識を武器に、次々と謎を解いていく。

75点
オドレイ・トトゥのヌード目当ての人も、作品の出来の良さに満足するはず

ミニシアター系の作品としては記録的な興行成績を持つ『アメリ』の監督(ジャン=ピエール・ジュネ)と主演女優(オドレイ・トトゥ)のコンビによる、感動の戦争ドラマ。

舞台は第一次大戦下のフランス、主人公(A・トトゥ)は純粋な心を持つ足の不自由な少女。ある日、彼女の元に恋人戦死の報が届く。しかし、彼の生存を信じる彼女は、私立探偵を雇うとともに、私財をつぎ込んで自らも彼の足跡をたどってゆく。

『ロング・エンゲージメント』は、一人の心やさしい少女が、死んだとされる恋人の行方を必死に捜し歩く物語だ。恋人を探すヒロインのパートと、過酷な戦場で何が起きたのかを描く彼氏のパートに大きく分けられ、交互に物語が展開する。

75点
潜水艦映画にまたひとつ傑作が誕生した

敵味方が協力して動かす羽目になったUボート艦長らの、葛藤と決断を描いた潜水艦映画。

ときは1943年、第二次世界大戦の大西洋下。敵魚雷にやられた米潜水艦の艦長と乗組員数名は、敵Uボートの捕虜にされてしまう。しかし伝染病の蔓延により乗組員が激減、Uボート艦長は生存のためやむなく捕虜たちをクルーに加える決断を下す。両軍兵士が対立する中、米駆逐艦の攻撃を受け艦は損傷、背後からは友軍のUボートもやってくる。米独どちらにつくべきか、運命共同体となった彼らに最後の決断が迫られる。

生きるために敵軍と協力する決断をした時点から、この潜水艦Uボートの目的は微妙に変化していくことになる。すなわち軍隊として敵を殲滅するという目的から、いかに生還するかという事に、本人たちも知らずに変わっていくのだ。

75点
あまりに感動的な「ピーターパンの出来るまで」

名作「ピーター・パン」の誕生秘話を、半フィクションで描いた感動物語。ジョニー・デップ(「パイレーツ・オブ・カリビアン」ほか)、ケイト・ウィンスレット(「タイタニック」ほか)、ダスティン・ホフマンといった演技派競演による、ピーターパン誕生100周年にふさわしい良質なドラマだ。

舞台は1903年のロンドン。主人公の劇作家(J・デップ)は新作の不評で落ち込む中、気晴らしの散歩中にある未亡人一家と出会う。その子供たちのひとり、なぜか空想の世界で遊ぶことを拒絶する三男のピーター(フレディ・ハイモア)に強く惹かれた彼は、やがて一家と積極的に付き合うようになる。

未亡人(K・ウィンスレット)とその子供たちと度々会うことであらぬ噂を立てられ、妻との仲がぎくしゃくしながらも、彼はピーターやその家族と深く付き合って行く。一家の中に自らの少年時代と心の傷を見た主人公は、彼らを救いたいと思うとともに、自らの情熱を新作の執筆にぶつけていく。そうして出来たその新作劇こそ、あの「ピーター・パン」というわけだ。

75点
的確な描写とスリリングなストーリーで見ごたえ十分

一軒の家を巡る争いと人間模様を描いた同名小説の映画化。演技派の役者をそろえ、見ごたえのある人間ドラマを展開する。

夫と別れたショックで茫然自失の日々を送る主人公(ジェニファー・コネリー)は、亡き父が残した海辺の美しい家で一人暮らしている。ところがわずか数百ドルの税金を滞納したため、当局に家を差し押さえられてしまう。弁護士に相談した結果、行政の手違いが判明したものの、そのときすでに家は競売にかけられており、イランからの移民一家に買われてしまっていた。

家の新所有者となった家族の長たる男(ベン・キングズレー)は、イランで軍の高官をつとめていたためプライドが高い。彼は家族とともに亡命してきたのだが、米国では最底辺の肉体労働者として屈辱の日々を送っていた。だから全財産をはたいて買ったこの家は、故郷と同等の暮らしに戻る最大のチャンスであり、よってそれにかける執着もハンパではない。

75点
主演女優の情熱が伝わってくる一本

全米初の女性死刑囚アイリーン・ウォーノスの半生を描いた衝撃的なドラマ。彼女が連続殺人を犯すことになった直接のきっかけである恋人との関係をメインに、主演女優が脅威の役作りで挑んだ渾身の一本。

1986年アメリカ、売春婦のアイリーン・ウォーノス(C・セロン)は、自殺する前に有り金5ドルを使い果たすつもりで入ったバーで、セルビー(クリスティーナ・リッチ)という名の女性と出会う。同性愛者である彼女もアイリーン同様、社会から疎外感を感じていた一人だった。生まれて初めて他者に受け入れられたアイリーンは、セルビーのためにもう一度人生をやり直そうと決意するが、コネも何もない街娼が簡単に復帰できる社会など、どこにもなかった。

母親が父親を撃ち殺したという壮絶な過去を持ち、自身も死刑制度反対論者である主演女優シャーリーズ・セロンの役作りは凄いの一語に尽きる。つらい環境からのし上がってきた女優だけに、もともと性根の座った人ではあるが、比較的これまで綺麗どころの役柄が多かっただけに、ここまでやるかという衝撃は激しいものがあった。

75点
前作をあらゆる面で超えたアッパレなパート2

アメコミ原作のアクション青春ドラマPART2。世界中で特大ヒットを飛ばした前作のおかげで、今回はハリウッド史上最高額220億円の製作費を投じて作られる事になった。トビー・マグワイア、キルスティン・ダンストといった主要キャストとサム・ライミ監督らスタッフも前作共通である。

前作から二年後。主人公のピーター・パーカーは、大学とバイトとスパイダーマンの3足のわらじ生活が限界に達しようとしていた。愛する人MJとの仲も進展せず、ヒーローとしての正体を誰にも明かせぬプレッシャーから、ついに彼はスパイダーマンをやめようと決心する。だがそのころ、新たな脅威となる敵、ドックオクが登場し、NYを危機におとしめていた。

話題作『スパイダーマン2』は、期待以上のすばらしい出来であった。前作よりはるかにパワーアップした格闘シーンの迫力、空中を飛び回る爽快感、そして数々のスペクタクルシーン。それぞれのVFXに見ごたえがあるだけでなく、ストーリー上の必然性、盛り上がりポイントにピタリと配置され、観客の心を踊らせる。すべての人の期待に見事にこたえたPART2といって良いだろう。

75点
ありそうでなかった良質のアクションエンターテイメント

海上保安庁の海難救助エキスパート“潜水士”を目指す若者たちの青春を描いたアクション・エンターテイメント。週刊ヤングサンデーに連載され大人気となった佐藤秀峰の原作を映画化したものだ。

ところで、先日このページで同じ日本製青春映画の『下妻物語』を紹介したところ、実際に見た方たちから「本当にすばらしい映画だった」というメールを何通もいただいた。「最近の邦画はつまらないと思っていたがその考えが覆った」という声を聞いたときは、私も嬉しかった。

そんな『下妻物語』に続き、オススメするのがこの『海猿』である。この映画は、100%エンターテイメントに徹した作品で、製作費は比較にならずとも、その出来は本場ハリウッドの大作映画にも劣らない。

75点
熟女たちの挑戦がさわやかで若々しい

婦人会の熟女たちが、チャリティーのためヌードカレンダーを企画したというイギリスの実話を映画化した、笑えて泣けるコメディドラマ。1999年に実際に発売されたこのカレンダーは、なんと30万部も売れたという。彼女たちは、この57万ポンドの売上金で、白血病の治療施設とソファを病院に寄付した。

平凡な生活に飽きつつあった一人の主婦の突飛な提案に揺れる保守的な(はずの)婦人会のオバサマたち。彼女らが大きな冒険を決意するまでの心の変化を、映画は優しい視点で描く。彼女たちの姿はとても若々しく、その年齢にかかわらず“女”を感じさせる。女性のもつ強さ、繊細さ、そして美しさをリアルに描いており、とても好感が持てる。

50を過ぎたオバサマたちが、ついに決心してブラをはずすあたりは、コメディなんだかホラーなんだかわからないほどの衝撃があるが、胸やお尻はギリギリ見えない親切なカメラ構図(?)のおかげで、ヌードカレンダーを題材にしているのに下品な印象はゼロ。むしろ、品のいい映画といったイメージさえある。

75点
ヌードにばかり気をとられていると騙される

フランス、プロヴァンス地方を舞台にしたミステリ作品。この監督お気に入りの女優さんを主演に立てた、ちょっとセクシーな要素もある大人向けのドラマだ。

つい先日公開された『ピーターパン』の妖精ティンカーベル役が記憶に新しい主演のリュディヴィーヌ・サニエは、今回その印象をがらりと変えて、自由奔放なセックス感をもつフランス娘を熱演。惜しげなくそのグラマラスな裸体をさらしている。欧米の女優さんには珍しい(?)、ナチュラル巨乳がお見事。

だが、これらの激しい(修正つきの)ヌードシーンに翻弄されていると、監督が仕掛けた壮大なトリックにころっと引っかかるだろう。大胆なプロットには、ミステリに慣れた観客でも驚かされるはず。だまされる快感を十分に味わえるよくできた脚本だ。

75点
見ごたえあるアクションスリラー

近未来を舞台にしながら、ミステリ的な謎解きをメインに据えたSFアクション映画。SFというとちょいとマニアックというか、一部のファン向けのイメージがあるが、『ペイチェック』はむしろスリラー&アクション映画としての印象が強く、一般のお客さんにもお奨めできる作品だ。

退屈な部分はなく、先が気になるストーリー展開は息をつかせない。せっかちな人に向く映画だ。特に、クライマックス以下の二転三転する展開は満足度が高い。キャストやスタッフをみる限り、お話の「中身」でうならせる映画だとは想像もしていなかったので、なんだか得をした気分だ。

たくさんのアイテムは、先の展開をいろいろと想像させる楽しみがあるし、それらを使っていく過程には伏線も多数ばらまかれている。数段構えのラストでそれらが一気につながるのを見ると、まさに拍手喝采したくなる気分。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14
  15. 15
  16. 16
  17. 17
  18. 18
  19. 19
  20. 20
  21. 21
  22. 22
  23. 23
  24. 24
  25. 25
  26. 26
  27. 27
  28. 28
  29. 29
  30. 30
  31. 31
  32. 32
  33. 33
  34. 34
  35. 35
  36. 36
  37. 37
  38. 38
  39. 39
  40. 40
  41. 41
  42. 42
  43. 43
  44. 44