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2121件中 351~400件 を表示しています。
75点
南アW杯の年に、南アW杯の映画を見る

あるひとつのものに、さまざまな側面があったり多機能だったりすると、無性にうれしいものだ。

たとえばこの『インビクタス/負けざる者たち』という映画は、スポーツアクションであり、史実伝記であり、感動の人間ドラマでもある。さらにいえば、95年の南アフリカを舞台にしていながら、じつは現在のアメリカを強烈に比ゆした物語でもあったりする。こういう百面相の作品は、映画好きにはたまらない。清純派だけど夜は女王様、みたいな女性がモテるのと同じ原理である。

反アパルトヘイトの闘士マンデラ(モーガン・フリーマン)は、黒人の熱狂的な支持により大統領に就任する。だが、それまでの支配階級である白人との対立は深まるばかりで、社会の安定化を目指すマンデラにとって悩みはつきない。そこで彼は、まもなく開催されるラグビーワールドカップを利用し、国民の共生を実現しようと考える。

75点
山田洋次監督の円熟味

『おとうと』をみると、これこそ横綱相撲だなという感じを受ける。最近は横綱というと、酔っ払って周りをぶんなぐる血の気の多い奴といった印象が強いが、もちろんこの映画はそうではない。奇手に逃げず、昔ながらの定番の技術のみで、堂々と見せる風格ある映画という意味である。

小さな薬局を営む吟子(吉永小百合)は、女でひとつで育てた娘、小春(蒼井優)の結婚を前に心穏やかな日々をすごしていた。ところがそこに、行方知れずだった問題児の弟、鉄郎(笑福亭鶴瓶)が突然現れる。どこかから小春の結婚の報を聞きつけたらしい彼は、当然のように式へ出席するつもりでやってきたのだった。

市川崑監督の「おとうと」(60年)に捧げられる本作は、山田監督がその登場人物を念頭に置きながら作り上げたドラマである。と同時に、「男はつらいよ」の幻のラストを意識させる内容にもなっている。

75点
2度目も楽しめる、よくできたミステリ

先日、ある人と「ポリティカル・サスペンス」の話をしていたら、なぜか会話が食い違う。どうもおかしいなと思い確認してみたら、その人は「トロピカル・サスペンス」だと思っていたらしい。

そんなジャンルねーよと爆笑した我々だが、よくよく考えてみたら『パーフェクト・ゲッタウェイ』はまさに「トロピカルサスペンス」というほかない代物であった。

新婚旅行でハワイにやってきたシドニー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)とクリフ(スティーヴ・ザーン)は、持ち前の冒険心から秘境の先にあるビーチを目指すことに。奥深く進み、まわりに観光客の姿がほとんど見えなくなるころ、彼らはこの島に男女二人組の恐ろしい殺人犯が潜伏していることを知る。彼らが真っ先に思い出したのは、途中で出会った怪しいカップルの事だったが……。

75点
トンデモ物としては最高

『恋空』の倍以上読まれたといわれる大人気ケータイ小説の映画化である本作は、モデル出身の佐々木希のセミヌードポスターも大きな話題となった。そして実際見てみると、意外や意外、期待をはるかに上回る出来であった。

女子高生の理央(佐々木希)は、誰もが振り向くルックスと、 クラスのいじめられっ子(山本ひかる)を救ってしまう優しさで、独特のカリスマを放っていた。そんな彼女は、ある日写真店のミスで、同じ姓の別人のプリントを渡されてしまう。そこに写っていた大学講師(谷原章介)に惹かれた彼女は、思わず直接会う約束を取り付けるが……。

女子中学生の皆さんがどう思うかは知らないが、個人的にケータイ小説映画に望むものは、そこそこリアルな登場人物と、絶対にありえない素っ頓狂なストーリー。その点本作は、間違いなくパーフェクトである。

75点
美少女好きにもすすめたい、衝撃の一本

『エスター』は、ある日ロシアから美少女が養子としてやってくるお話である。それはある種の嗜好を持つ人にとっては特に素敵な状況であろうが、正直なところ、そういう人にもぜひ本作を見てほしい。その理由は、いすから転げ落ちたついでに床をも突き破る、常識はずれの衝撃的結末をみればすぐにわかる。

第三子を死産したことにより悪夢にうなされつづける妻ケイト(ベラ・ファーミガ)のため、夫ジョン(ピーター・サースガード)は養子を迎えることにした。施設でジョンは、聡明で絵の上手な9歳の少女エスター(イザベル・ファーマン)を直感的に気に入るが、それこそが悲劇の始まりだった。

美少女エスターは、御伽噺にでてくるような古風な服を好み、首と手首に巻いたリボンは決してはずさない。バスルームには鍵をかけ、美しい声で歌を歌う。とにかく一風変わった、ヘンな子である。

75点
今見るなら、オリジナルより面白いかも

スタイリッシュな映像とアクション演出で知られるトニー・スコット監督の最新作は、確かに彼らしいおしゃれな見た目の映画だが、どこか「古きよきアメリカ映画」的な懐かしい香りも感じさせる。

もっとも本作は、74年の地下鉄サスペンス「サブウェイ・パニック」のリメイクだからその印象も当然かもしれないが、何はともあれ、安心して楽しめるアメリカンエンタテインメントを堪能できたことは、久々に感じる幸福であった。

ニューヨークの地下鉄がハイジャックされた。犯行グループは先頭車両に人質の乗客とともに乗り込んだ後、切り離して停止。異変を察知した運行司令室では、たまたま当直だったベテラン職員ウォルター(デンゼル・ワシントン)が犯人との交信に成功。だが主犯格でライダーと名乗る男(ジョン・トラヴォルタ)の要求はとんでもないものだった。「1時間以内にニューヨーク市に1000万ドルを要求する。時間をすぎれば人質を一人ずつ殺す」

75点
プロレス版ロッキー

世界中で54もの映画賞をかき集めたこの話題作は、しかし当初はわずか4館スタート(米国)の小品であった。なぜそんなことになったかといえば、監督のダーレン・アロノフスキーがわがままを言ったからである。

どんなワガママだったかというと、「絶対に主演はミッキー・ロークでいく」という一点。スタジオ側は、とっくに過去の人となったそんな役者より、客を呼べるであろうニコラス・ケイジを起用したかったが、監督がまるで折れる気配が無いので、結局予算を大幅に削った。結果、本作はわずか数億円という、相当な低予算で作られることになった。これが、小規模公開の理由だろう。

……が、そのワガママがミッキー・ロークの胸を打った。アロノフスキー監督のような才気ある若い監督に、そこまで買ってもらって燃えない男はいない。結果、誰が見ても、彼の役者人生最高の役作り&鬼気迫る演技により、「レスラー」は数少ないプロレス映画の中でも、屈指の傑作に仕上がった。これが、54の映画賞受賞の理由である。

75点
泣けないが、感動的な物語

映画界では伊坂幸太郎が大ブームで、こぞって実写化されている。それにしてもこの4ヶ月だけで3本もの長編が公開されるというのは、尋常ならざるペースである。この『重力ピエロ』の原作も、直木賞候補となった人気作だが、今回は読まずに鑑賞した。読書仲間の音楽家(乙一嫌いのアラフォー 独身)がこの作家を絶賛するものだから、個人的にはどうも食指が動かない(私は乙一を高く評価しているので)。

遺伝子研究をしている大学院生の兄、泉水(いずみ)(加瀬亮)は、弟の春(岡田将生)から奇妙な話を聞く。春は街の落書き消しを仕事にしていたが、その現場と最近続いている連続放火事件のそれが、すべて共通しているというのだ。やがて別の法則性や暗号じみた符合を発見した彼らは、徐々に事件の真相に迫っていく。

よくできた物語であり映画だが、精神的にはかなりキツい。「泣けないが、感動的な話」「もっとも思い入れのある作品」と作者が語るとおり、大いに心揺さぶられる良質なドラマだが、単純なお涙頂戴ではまったくない。相当変わった家族の、しかし普通のそれ以上に固い絆が描かれる人間模様といったところ。

75点
宗教知識ゼロでも楽しめる

前作『ダ・ヴィンチ・コード』(06年、米)が世界中で一番ウケたのは、何を隠そうこの日本。シリーズの売り物である陰謀論にしても、ローマやヴァチカンの謎めいた秘儀にしても、あるいはその背景となる美しい観光名所の数々も、日本人が大好きなものばかり、ということか。

この続編『天使と悪魔』にもそうした要素はふんだんにつめこまれている。おまけに初心者大歓迎のわかりやすさも兼ね備えているから、かなりの支持をえることになりそうだ。

教皇逝去にともない、新教皇を選ぶ儀式コンクラーヴェが開始された。だが、それを妨害するかのごとく、有力候補の枢機卿4名が誘拐、殺害予告される。外部に漏れる前の解決を願うヴァチカン当局は、立場上対立してはいたが、もっとも博識の宗教象徴学者ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)を呼び寄せ、事件捜査の助言を求めるのだった。

75点
衣装と美しい建築に価値を見出せる人に

人間社会に生きるものに、完全な自由などない。誰もが大なり小なり宿命を背負っている。だからこそ、人一倍重いそれを背負う人々を尊敬する気持ちが生まれる。

たとえ無意識であろうと、それは自然な感情である。日本人が皇室を敬うのも、貴族がヨーロッパ社会である種の尊敬を受けているのも、その思いが根底にある。彼らが生まれ持った宿命は、深く、重い。

この映画は、その事をわかりやすくわれわれの前に提示してくれる貴重な一本である。

75点
これからの洋画配給は本作の成功を参考にすることになるだろう

普通、パート2というのは一作目を見てからみるものだが、『レッドクリフ Part II —未来への最終決戦—』にその必要はない。本作は、あらゆる観客にとって、かゆいところに手が届く親切設計となっている。

たとえ前作をみてなくとも、何ら問題はない。「話題になってるから、よく知んないけどいってみるか〜」という人や、「三国志なんて興味ないけど、彼氏が無理やり見るっていうからぁ」てな女の子でもOK。そこには、決して取りこぼしはしないという配給サイドのしたたかな意思が感じられる。

80万もの曹操軍に対し劉備・孫権連合軍は5万。圧倒的な兵力差と、曹操(チャン・フォンイー)の卑劣な疫病作戦を前に、さすがの劉備(ユウ・ヨン)も怖気づいたか撤退を言い出してしまう。だが、軍師・孔明(金城武)と指揮官・周瑜(トニー・レオン)とその部下たちに迷いはない。かくして三国志最大のバトル、赤壁の戦いが始まった。

75点
ティーン向け恋愛映画がこれほどの高品質とは

米大手ワーナーブラザーズは、翌夏強化のため08年冬公開予定だった『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を温存、金庫の奥深くにしまいこんだ。

その代わりに前倒しで公開されたのが、同じ英国のベストセラー小説『トワイライト』の映画化である本作。原作同様、10代の女の子の胸をときめかせるイケメン揃いの実写化だが、これが予想を上回る特大ヒット。捨て試合で思わぬ勝利を得たWBC2次ラウンド日韓戦の日本チームのような、旨みある興行となった。

アリゾナから越してきたベラ・スワン(クリステン・スチュワート)は、転校先の高校になじめずにいた。そんな彼女の気を引いたのが、地元クラスメートさえ近寄りがたい様子の寡黙な美少年エドワード・カレン(ロバート・パティンソン)。そしてある日、事故に巻き込まれたベラは、エドワードに人間離れしたパワーで救けられる。

75点
「タイタニック」のカップル再び?!

「タイタニック」のカップル、レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットは、いまや押しも押されぬ大スター。二人とも演技力もすこぶる高い。だが、役者としての特性は正反対といってよい。

レオナルド・ディカプリオは、これはもう彼の顔をひと目見ただけで万人が愛してしまう、好感度の塊をそのまま顔に配置したような、いわば正のスターだ。

一方ケイト・ウィンスレットはその逆。いやな女、不快な態度を演じさせたら当代随一。いわば負のスターといえる。

75点
新型インフルエンザ感染爆発か?

最近、感染症に関する映画が増えている件について、危機管理の専門家、青山繁晴氏に聞いてみた。ちなみに氏は映画好きで有名だが、「映画界は(世の流れに)敏感なのではないか」と言っていた。ハリウッド映画業界が政治と強く結びついており、その最新情報を自らのコンテンツに生かしているのはよく知られているが、日本の映画界も徐々にそれに近づいてきたというわけか。そういう裏事情はちょいと想像しにくいが、ともあれ本作は予想以上のオープニング記録を打ち立て、関係者をほっとさせた。

私立病院の救急医師(妻夫木聡)のもとに、急患が運び込まれてくる。その予想を超えた劇症ぶりに、現場のスタッフは狼狽する。やがてWHOから専門家(檀れい)が派遣されてくるが、彼らの予想では半年間で数千万人の被害者が出るという。日本、いや世界の運命は、いまや最初の感染者が出たこの病院の対応にかかっていた。

前述の青山氏によれば、新型インフルエンザが登場すれば感染者の7割が死にいたるという。新型インフルエンザとは、従来のインフルエンザとは(名前は似てるが)まるで違うもの。鳥から人間に移り、現在はまだその次の段階、すなわち人間から人間に移るケースまではほとんど見られない。だがウィルスが変異し、人間同士で感染するようになったが最後、ワクチンが開発されるまでのおよそ半年間で、世界人類の多くが死に絶える。そういう危機は、いまやすぐそこまで迫っている。

75点
大笑い必至のホスト業界コメディ

愛田武氏といえばホスト王。歌舞伎町の業界勢力図を書き換え、ビジネスの健全化にも貢献したという、テレビ番組等でもおなじみのカリスマ社長だ。そんな彼の伝記映画『NIGHT☆KING ナイトキング』は、ホストビジネスの裏側を興味深く見せるコメディ作品。しかもなかなかの傑作で、ホストをテーマにした実写映画としては、相当面白い部類に入る。

昭和43年。女好きがたたってトラブルを巻き起こし、会社をくびになった榎本武(いしだ壱成)は、叔父のコネでホストに転職する。趣味と実益を兼ねる楽勝ジョブとなめていた榎本だったが、実際は実力がなければ収入ゼロという壮絶な格差社会。派閥争いやイジメがはびこる殺伐とした職場であり、ただ女が好きなだけで勤まるような仕事ではなかった。

AV女優やお笑いタレントがキャスティングされ、見るからに低予算Vシネマ臭がする一品だが、これが意外な掘り出し物。なにしろギャグが切れているし、ホスト業界という非日常的のトリビアを見られる楽しみもある。

75点
アンジェリーナ・ジョリーがアクロバティックな殺し屋に

転職というと響きはいいが、日本の場合は転がり落ちるような職業変更ばかりというのが実情である。新卒以外でまともな職場に就けると思うなと、小学校から教えるべきと私は考えているが、教師の多くは「何度でもやり直せばいいのよ」などと、罠としか思えぬ無責任発言をすり込むからたちが悪い。

さえない青年ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、ある日激しい銃撃戦に巻き込まれる。彼を守るかのように現れた美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)は、ウェスリーの父は凄腕の暗殺者だったと語り、フラタニティなる組織のアジトに案内する。彼らは神話の時代から神に代わって密かに悪人を抹殺してきた歴史ある組織で、ウェスリーの特殊能力を覚醒させようとしているのだった。

転職先を間違うと大変なことになるという、貴重な教訓を得られるアクション映画。主人公のヘタレ男は、絶世の美女アンジェリーナさんに乗せられて、よりにもよって暗殺者にジョブチェンジしてしまう。そこから先は聞くも涙の物語。常識外れのとんでもない訓練をやらされ、銃弾を意識的にカーブさせるなど、一人前の暗殺者に必要なスキルを身につけさせられる。そんなスキル一生身につかねえよと言いたくなるがそこはそれ。OJTの様子は特に必見だ。

75点
奥菜恵が恐怖映画でハリウッドデビュー

"日本製ハリウッド映画"といわれる本作は、美少女幽霊がうらめしやをするホラー作品。女優として低迷していた奥菜恵がはまり役の幽霊を演じ、華々しいハリウッドデビューを果たした。

新婚旅行で日本に来たカメラマン夫婦は、ドライブ中の箱根の山道で若い女性(奥菜恵)をはねてしまう。だが死体は見つからず、代わりにその日から彼らは心霊現象に悩まされる。

タイ映画「心霊写真」(04年)のリメイクということで、このかわいい幽霊は主人公の撮影した写真にことごとくおいたをする。被写体の背後に景気よくエクトプラズムなんかを出現させる。月刊ムーの常連投稿者でもない限り、そんなものを喜ぶヤツがいるわけもなく……というより仕事上しゃれにならない打撃をうけた主人公氏は、必死にその原因を探るが──という展開。

75点
ロメロ「死霊のえじき」がリメイク

『デイ・オブ・ザ・デッド』は、ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロによる三部作の最終作「死霊のえじき」(85年、米)のリメイクだが、見る際にはその事を真っ先に忘れなくてはならない。

最大のウリを最初に無視しろとはとんでもない話だが、こればかりは仕方がない。ゾンビを手なづけたり銃器を操作したりと多少の影響は見られるものの、原作越えなど下手な期待をすると、あまりに無関係な内容に客側がショック死する。

コロラド州のある町が、州兵の大部隊により演習と称され極秘に封鎖された。じつは町の中では、謎のウィルスが蔓延していたのだ。やがて感染者はゾンビとなり、人々を襲い始める。地元出身の兵士サラ(ミーナ・スヴァーリ)は、部下の兵士(ニック・キャノン)らと実家の家族の様子を見に行くが、そこで騒ぎに巻き込まれる。果たして彼らは無事脱出することができるのか。そしてウィルス感染事件の驚愕の真相とは?

75点
イケメンたちがダンクしまくり

カンフー映画が流行中のようである。

思い出すだけでも「カンフーくん」「カンフー・パンダ」「少林少女」と、"枯れ木も山の賑わい"を地で行く魅力的なラインナップ。しかしこのバスケットボール+カンフーアクション『カンフー・ダンク!』だけは別だ。

カンフー学校の師父に拾われ育てられた孤児のファン(ジェイ・チョウ)は、夜の公園でさえない中年男リー(エリック・ツァン)と出会う。そこでファンの超人的な身体能力を見て取ったリーは、「富豪化計画」をひらめき、ファンのマネージャーとして大学バスケチームへの売込みを開始する。

75点
ハムナプトラの続編は中国大陸が舞台

最近、中国がらみのハリウッド映画がやたらと多い。制作費が安く済む(米国の2から3分の1)とか、中国の市場規模が右肩上がりだからなどと、表向きには言われている。このハムナプトラシリーズも、久々に続編が作られたと思いきや舞台は中国、敵役はジェット・リー。あまりに強引な方向転換でファンを驚かせた。

古代中国を支配する皇帝(ジェット・リー)は、女呪術師(ミシェル・ヨー)に不死の術を探させる。だが、恋人を皇帝に殺された彼女は、不死の代わりに呪いの術をかけ、皇帝を大勢の部下もろとも封印してしまう。やがて2000年の時が過ぎ1946年。リック(ブレンダン・フレイザー)とエヴリン(マリア・ベロ)、そして息子のアレックス(ルーク・フォード)は、その封印を解く鍵を入手する。

20世紀もの間眠り続けたねぼすけの皇帝は、ジェット・リーのアクションを見たい観客の期待通りにすんなり復活。能天気だがなかなかしぶとい主人公一家と死闘を繰り広げる。シリーズのお約束どおり、主人公リックはどんなピンチでもユーモアを忘れない。圧倒的な超能力を持つ敵と対峙しても、意外となんとかなりそうな余裕ムードが心地よい。

75点
絵本作家Dr.スースと日本人大学教授の交流により生まれたハートフルストーリー

私はこれを日本語吹き替え版の試写で見たが、さすがに歌の場面はオリジナル音声を聞きたいと思ったものの、全体的には満足のいくものだった。森川智之&雨蘭咲木子という『ダーマ&グレッグ』でおなじみの二人をはじめとする、専門の声優で固められた日本語版キャストの実力によるものであることは疑いない。

20世紀フォックスといえば『ザ・シンプソンズ MOVIE』(07年)公開の際、テレビ版と異なる有名人キャストを日本語吹き替え版に起用し、大顰蹙をかった事件が記憶に新しいが、さすがに懲りたのだろうか。いずれにせよ、これを見に行く子供たちはほぼ100%日本語版を見るのだから、知名度より完成度をとった方針は評価できる。

ジャングルに住む優しい象のホートン(声:ジム・キャリー 森川智之)は、大きな耳の前を横切るホコリの中から誰かの声が聞こえてくる事に気づく。ホコリに見えたものは、じつはダレダーレという名の極小の平和な国。安定して暮らしていた場所から、風に飛ばされここまでやってきたのだ。風に飛ばされるたび、嵐や地震におびえてきたダレダーレの市長(声:スティーヴ・カレル 小森創介)と無事コンタクトを取る事に成功したホートンは、彼らが安心して暮らせる場所まで運んでやる事を約束、冒険の旅に出る。

75点
ロッキー、ランボーに続き、インディ・ジョーンズも復活

ハリウッドでは、ご存知のとおり一年の間に数え切れないほどの話題作が生み出されている。その中でも、この年一番期待された超ド級の注目株がこれ。"パートタイム考古学者"『インディ・ジョーンズ』19年ぶりの最新作だ。

舞台は1957年のアメリカ、砂漠の中の広大な空軍基地。ソ連の女諜報員(ケイト・ブランシェット)率いる一団は、インディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)を脅して第51番倉庫に侵入、目当ての荷物へと誘導させる。彼女らは、大きな力を秘める水晶髑髏=クリスタル・スカルを探しているのだった。

19年ぶりの新作ということだが、劇中でも前作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」のラストから同期間経ったという設定。かつてインディとかかわった人物たちのその後についても、チラリと触れられ郷愁を誘う。

75点
全裸格闘に挑んだヴィゴ・モーテンセン

『イースタン・プロミス』は、『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役ヴィゴ・モーテンセンの主演最新作。なんと彼の全裸姿モザイク無しによる格闘シーンがあるということで、世界中の女性映画ライター間で大変な話題を呼んだ(と予想される)問題作である。

クリスマス前のロンドン。看護士アンナ(ナオミ・ワッツ)が勤める病院にロシア人少女が運び込まれ緊急出産するが、母体は残念ながら死亡した。なんとか赤ん坊の父親を見つけたいと考えたアンナは、少女が残した手がかりからあるロシア料理店にたどり着く。そこの関係者とみられる自称運転手(ヴィゴ・モーテンセン)の警告を無視してさらなる探りを入れた彼女は、しかしすでに闇社会に絡め取られつつあった。

イギリスにおけるロシアンマフィアの世界を描いた社会派作品である一方、すぐれたサスペンスでもある。ロンドンのトルコ移民の惨状を取り入れた「堕天使のパスポート」(02年、英)の脚本家スティーヴ・ナイトによるストーリー運びが冴え渡る。ヒロインが駆る古いバイクや男たちが着用するアルマーニのブラックスーツなど、細かい小道具にも味がある、見ごたえある一本。

75点
ただいま流行中の「○○現場に偶然居合わせた人の衝撃映像」もの

P.O.V.リアルパニック・ムービーと銘打たれたこの映画。この耳慣れない宣伝文句はしかし、今後何度も使われるかもしれない。というのも現実にいま、P.O.V.なる手法は映画作りをする人々の間では無視できないブームなのだ。

ローカルTV局の女性レポーター(マニュエラ・ヴェラスコ)は、消防士の一日を追うドキュメンタリー番組のロケで消防署に来ている。実際には何の動きもなく、ちっとも面白い画が取れぬまま夜が更けていく。イラ立ちがつのるころ、緊急出動のサイレンが鳴りひびく。あるアパートで、なにやら騒ぎが起こったというのだ。

P.O.V.(Point of View)とはなんぞや。これは日本語で言う主観撮影というもので、簡単に言えば公開中の「クローバーフィールド/HAKAISHA」などがそれにあたる。ようは登場人物の目線で撮影された作品のことだが、これまではその特殊な映像をどう設定するかがひとつのカギであった。

75点
ゲームブックやファンタジー小説でおなじみのモンスターが

『スパイダーウィックの謎』は、やたらと大風呂敷を広げたがるファンタジー映画が多

い中、身の程をわきまえた堅実なつくりの好編。小学生くらいの子供たちはもちろん、

TRPGやゲームブック世代のファンタジーファンにもすすめられるいくつかの要素を持っ

75点
中共プロパガンダ崩れ

中国きっての人気監督チャン・イーモウは、同時に北京政府の大イベントによく関わる事でも知られている。北京五輪の開会式も、もちろん彼が手がけている。

さて、そんな大事な年に、中国史上最も絢爛といわれる五代十国時代の王家を描く超大作が公開ときた。聞けば06年の香港を皮切りに、欧米各国を経ていよいよ日本公開ということだ。間違いなくオリンピック開催を念頭に置いた、海外向け中共プロパガンダの一環であろうと察しがつく。

ところが、いざ鑑賞するとそう単純に言い切れぬ奇妙な点が目に付いた。はたしてこの、見るからにいかがわしい大作映画の正体は何なのか。

75点
過激な濡れ場が話題

『ブロークバック・マウンテン』(05年、米)でアカデミー監督賞を受賞した台湾の人気監督アン・リーの最新作は、ある事情により世界中で物議をかもすことになった。

舞台は1942年、日本占領下の上海。女子学生ワン(タン・ウェイ)は、思い人のクァン(ワン・リーホン)に感化され、過激な抗日運動に身を投じていく。やがて彼女は日本軍と通じる特務機関長、イー(トニー・レオン)を暗殺するため、ハニートラップを仕掛けるよう言い渡される。だが、二人はやがて本当に惹かれあってしまうのだった。

監督にとっては、前作に引き続いての禁断の愛もの。公開各国で、その激しいラブシーンが話題になっている。冒頭に書いた"事情"とはこのことで、たとえば中国では7分間もカットされ、政府が国民に「こんなHの仕方をマネしちゃだめよ」と異例の呼びかけを行った。ノーカット版を見たくて台湾まで出かけた猛者も少なくなかったそうだから、中国人のスケベ根性恐るべし、である。

75点
おばかさん、ピンポン感染で世界を滅ぼす

オリジナル脚本による終末ホラー「28日後...」(02年)は、ヨーロッパ(イギリス)の監督らしくシニカルなテーマ性と、万人向けな娯楽性を併せ持った佳作であった。

なんといっても、感染すると正気を失い周りを襲いまくるゾンビ菌の恐怖、というアイデアがわかりやすい。それを最初に野に放つのが、動物愛護団体ってなあたりもブラックでよろしい(感染した実験動物を、その危険を指摘されながらも身勝手に逃がしてしまう)。

『28週後...』はその続編で、最初の感染からたった28日でグレートブリテン島が壊滅状態になった英国の、28週後の様子を描く。

75点
イラク帰還兵が、米本土で直面する地獄の日々

アメリカで戦争映画が立て続けにコケている。

それはそうだ、いま作られているのは、テロリストに一定の理解を示したり、自軍の過ちに言及する(反戦ならぬ)"反省映画"ばかり。これから際限ない不景気〜覇権国家転落への道をたどろうという時に、敵様の事情なんぞ気にする余裕が、米国民にあろうはずがない。

この『勇者たちの戦場』もそうした反省映画のひとつで、「イラク戦争からの帰還兵」という、きわめてホットなテーマを扱う戦争ドラマ。そしてここが重要なポイントだが、「アメリカ人が見たがらない戦争映画」というのは、えてして外国人たる我々が見ると面白い。

75点
アメリカ史上最長寿、ブラックな大御所アニメ

ザ・シンプソンズといえば、日本でもC.C.レモンのCMや衛星放送でおなじみの、アメリカ史上最長寿アニメ(1989年から放映中)。なぜか黄色いシンプソンズ一家の、人騒がせな日常を描いたブラックコメディーだ。なんとなく意外な感じがするが、今回が初の映画版となる。

舞台はアメリカの郊外、スプリングフィールド。シンプソン家の父ホーマー(声:所ジョージ)は、かわいそうな境遇のブタを拾って飼い始める。だが、彼の後先考えぬテキトーな行動が、やがて雪ダルマ式に問題を膨れ上がらせ、街に殺人的な環境破壊をもたらしてしまう。怒り狂う住民から逃げ出し、アラスカへと向かう一家だが、やがてファミリーの絆に亀裂が生じ……。

『ザ・シンプソンズ MOVIE』は、日本放映版をものの見事に無視した声のキャスティングにより、ファンから猛烈なブーイングを浴びている。私が見たのは幸い字幕版だったので良かったが、オリジナルキャストを期待する子供らが何も知らずに別の声を映画館で聞いたら、さぞがっかりするだろう。

75点
ナメクジを全裸美少女のお口に

ホラーはもっとも様式化されたジャンルの一つであり、精通した監督の手にかかればオリジナリティなどなくとも、相当面白いものができる。『スリザー』はその最高のお手本のひとつだ。

アメリカ南西部の田舎町の山中に、隕石が落下した。現場近くで女性といちゃついていたグラント(マイケル・ルーカー)が見に行ってみたところ、卵のような未確認生物に襲われ、体内に侵入されてしまう。命は取り留めたものの、その日からグラントの体に醜い腫れ物が現れ、成長をはじめる。

これはほんの導入部。このあと大増殖したナメクジ生物が人々を侵食。やがて脳を乗っ取られた人間たちが次々と周りに襲い掛かる。ヌメヌメと気味悪いこの生物、ヒトが悲鳴を上げるとその口から体内に入ってくる。そんな生理的にウギャーな展開がポイントだ。

75点
松尾スズキ監督の非情さが炸裂する怖い映画

女優は、私生活が波乱万丈なほど芸に深みが出るなどといわれる。もしそれが真実ならば、結婚生活で心身ともに苦労したといわれる内田有紀は、今の若手女優の中では今後の成長が見込まれる一人であろう。結婚引退後、離婚を経て復帰後初の主演作となるこの『クワイエットルームにようこそ』は、彼女のおそるべき演技力によって傑作として花開いた。

独身のフリーライター(内田有紀)は、人間関係や締め切りのストレスから、わずか数百文字の原稿が書けず行き詰っていた。やがて目覚めるとそこは一面、白い部屋。おまけに身体は完全に拘束されている。どうやら彼女は発作的に睡眠薬を大量摂取し、この精神病院の隔離病棟"クワイエットルーム"に入院させられたらしい。そこには常軌を逸した患者たちが大勢いたが、病院が定める規則のため、締め切りを抱えた彼女でさえも簡単には退院できないという。

ろくでもない他の患者たちとの交流の中で、ヒロインが自分の身におきた事を見つめなおす物語は、ほとんど病院のワンフロアのみで展開する。本業が舞台演出の松尾スズキ監督(原作も担当)にとって、物理的に限られたこうした空間設定はまさに得意とするところ。逆に言えば、舞台と映画の演出の違いによるボロが出にくい、うまいストーリーといえる。

75点
気軽な大作映画の中に真実をこめた必見作

中東において、米国のきわめて重要なパートナーのひとつに、サウジアラビアという国がある。なぜ短期間で占領が終わったイラクがいまだにグダグダしているのかなど、この地域での米国の不可解な政策行動を説明するために、絶対に欠かせない存在であるものの、これまでこの国を扱ったアメリカ映画はあまりに少なすぎた。

そんな中『キングダム/見えざる敵』は、本格的な軍事アクションの形で中東情勢の本質をさりげなく教えてくれる、良質な娯楽映画である。ちなみに今ハリウッドは中東ものが熱く、同様の作品が今後何本も企画されているというから楽しみだ。

サウジアラビアで、外国人居住区を狙った自爆テロが発生、アメリカ人にも膨大な死傷者が出た。FBI捜査官のフルーリー(ジェイミー・フォックス)は、首謀者をアルカーイダの幹部アブ・ハムザと推定、現地入りを要望するが、政治的理由により却下される。しかし彼は、ワシントンポストの記者を利用して半ば強引に入国。爆発物や法医学のエキスパートなど精鋭3名を引きつれ、5日間のみだが現地捜査の許可を得るのだった。

75点
嘉門洋子の演技とプロポーションは絶品

先週の「人間椅子」に続く、エロチック乱歩シリーズ第二弾。ミステリの古典である江戸川乱歩の原作を、現代風にアレンジした怪奇&エロティックなドラマだ。同名短編の映画化としては94年以来となる。

編集者の奈緒子(嘉門洋子)は、不気味な作風で知られる有名画家の取材で、彼が生前身を寄せていた東栄館なる洋館を訪れた。そこには一癖もふた癖もある人々が住んでいたが、唯一まともそうな少女マドカ(清水萌々子)の話によると、画家は屋根裏を好んでいたという。奈緒子は好奇心を抑えきれず、屋根裏を伝って住民らの部屋を覗きに行くが……。

のほほんと劇場の椅子に座っていると、冒頭から驚かされることになる。男性ではなく、女性主人公が他の部屋を覗きに行くというアレンジが物語に加えられているが、その最初から緊張感が持続し、何が起こるか予測しがたい。他人の不倫現場やエッチシーンを見ている分には楽しい(?)が、天井の小さな穴からそこにいるはずのない人物の恐ろしい何かを見てしまったとしたら……。

75点
深夜の大邸宅にひとり、執拗にかかってくる無言電話の怖さ

暇つぶしにネットサーフィンしているとき、掲示板などで「今、きみの後ろにいるよ。振り返ってみてごらん」なんて書き込みを見つけると、状況によってはものすごく怖かったりする。ハイテクに囲まれている現代においても、人々が感じる根源的な恐怖というものはあちこちに存在する。

丘の上に建つ一軒の豪邸。そこに女子高生ジル(カミーラ・ベル)が、ある晩ベビーシッターのバイトでやってきた。子供たちはすでに二階で就寝しており、彼女は気軽な留守番ができると思っていた。ところが気味の悪いイタズラ電話が連続。ジルは間取りが想像できぬほど広い、死角だらけのこの邸宅が恐ろしくなってきた。しかも電話の相手は、彼女の姿を見ていなければわからぬ事をやがて話し始める……。

だだっ広い屋敷で留守番をすることになった女子高生が、段々エスカレートするイタズラ電話に恐怖する、というワンシチュエーションスリラーだ。

75点
現代中国にたとえたがごとき構図と感動的なストーリー

本国では記録的な大ヒットをしたにもかかわらず、日本では話題にも上らないという映画は意外に多い。2004年に作られ、05年のお正月映画として中国でダントツの人気だった『イノセントワールド 天下無賊』もそんな一本だ。しかし、そういう作品にこそ各国の大衆の本当の好みが出ていると見るべきであり、鑑賞すれば彼らと同じ空気を味わえるという意味でたいへん興味深いといえる。

ワン・ポー(アンディ・ラウ)とその恋人ワン・リー(レネ・リウ)は、カップルで協力して詐欺や盗みを働くことを生業としている。しかし、リーは悪党稼業に嫌気が差し、足を洗いたがっている。彼らは長距離列車で素朴な青年(ワン・バオチアン)と同席するが、田舎育ちで人を疑うことを知らぬ彼は、大声で「全財産を持って故郷に帰るところだ」と話し続ける。ポーや、偶然乗り合わせた窃盗団グループは、それを聞いてとたんに色めき立つ。しかし、ただ一人リーだけは、この心優しい青年の金と心を守り抜こうと決意するのだった。

満員列車の中で「金を持ってる」といったとたん周りがギラギラしだすという展開は、妙にリアリティがあって笑える。青年は長年の奉公で貯めた全財産を結婚資金にして故郷に戻る気でいるが、見ているコチラはあまりに彼が無防備なので冷や冷やし通しだ。

75点
個性出まくりのオールスターキャストの中でもイチオシは田中麗奈

ゴールデンウィークとはもともと映画業界用語で、この時期は家族みんなで楽しめる話題作が集まるものだが、その中でも異彩を放つのがコレ。おなじみ水木しげるの妖怪漫画を、CG満載で実写化したアクションムービーだ。同じ漫画の実写化として『デビルマン』『キャシャーン』のようなドン引き駄目映画になるもよし、『忍者ハットリくん』のようにバカ映画として後世に名を残すもよし、どっちに転んでも見所にはことかかない、魅力的な一本である。

年中金欠のダメ妖怪ネズミ男(大泉洋)は、ひょんなことから手に入れた妖怪界の至宝"妖怪石"を、よりにもよって質入れしてしまう。織田信長や天草四郎ら歴史上の人物の怨念を封じ込めたこの石は、心の弱い人間などが手にすれば、瞬く間に邪悪な心に取り付かれてしまう。案の定、石は小学生の健太(内田流果)の父(利重剛)の手に渡り、やがて人間&妖怪界を巻き込んだ争奪戦が始まってしまう。

妖怪ものは意外にも現代っ子にウケるらしい。しかも今回は超有名タイトルなので、結構な話題を呼ぶはずだ。鬼太郎役はティーンからオバサマまで大人気のウエンツ瑛士。映画オリジナルのヒロインには、あの沢尻エリカに「最近出すぎで気に入らない」とまで言わせた人気急上昇中の井上真央。そして目玉おやじの声はおなじみ田の中 "オイ、鬼太郎" 勇である。これは年齢性別問わず、あらゆる日本人を守備範囲に収めた強力な布陣といえる。

75点
絶望の中で輝く希望の光

泥棒がひょんなことから誘拐した赤ちゃんの世話に振り回され、やがてそのピュアな微笑みに癒され更正していく……。アカデミー外国語映画賞を受賞した『ツォツィ』は、先週紹介したコメディ『プロジェクトBB』とまったく同じストーリーである。

舞台は南アフリカ、ヨハネスブルグのスラム街。主人公の少年ツォツィ(プレスリー・チュエニヤハエ)は仲間数名と窃盗団を組み、周りからも一目置かれるいっぱしのワルだ。ある日彼は、高級住宅街の主婦から強奪したBMWの後部座席に乳児を発見する。

当初は捨て置こうかと考えたツォツィは、しかし放っておけずに自分のあばら家に連れ戻る。とはいえスラム育ちの孤独な彼に、赤ん坊の世話などできるはずもない。赤ちゃんを紙袋に入れて持ち歩き、ぼろ紙をオムツ代わりにあてる姿からは、この少年の絶望的なまでの無知無学と、育ってきた環境における両親の不在ぶりが伝わってきてあまりに痛々しい。

75点
泣ける度の高さは過去最高レベル

ジャッキー・チェンは、30年以上にわってすべての主演作が日本公開されている不世出の大スターだが、近年じつは尻に火がつき始めていた。それは、タイのアクションスター、トニー・ジャーの出現による。彼は『マッハ!』や『トムヤムクン』で、全盛期のジャッキーを上回る物凄いリアルスタントを見せ、ジャッキー・チェンに引導を渡すのは間違いなくこの男だろうと、全世界のアクション映画ファンに思わせた。

しかしジャッキーは男であった。新世代のスターの登場を受け彼が手がけたのは『香港国際警察/NEW POLICE STORY』。原点であり古巣の香港映画界に戻り、自身の最高傑作であるポリスストーリーのタイトルを、まったく同じコンセプト(CGに頼らない本物のアクション)で再現した。これはすなわち、トニージャーへ真っ向勝負を挑んだということ。作品の出来もすばらしく、まさに横綱相撲であった。

この成功を受け、再び同じベニー・チャン監督と作り上げたのが『プロジェクトBB』。邦題は『プロジェクトA』を思わせるがまったく無関係なオリジナルストーリーだ。

75点
ユマ・サーマン36歳のアイドル映画

この映画の魅力を知ってもらうにはどこかで予告編を見てもらうのが手っ取り早いのだろうが、残念ながら本編の面白いところをほとんど出してしまっているので、先に見るのはよしたほうがいい。予告編を事前に見るなとは矛盾もいいところだが、映画本体をより楽しむためには仕方がない。

いまニューヨークには、あらゆる事故、事件から市民を守る謎のスーパーヒーロー、いやヒロインがいる。Gガールと呼ばれる彼女(ユマ・サーマン)は、長身にブロンドヘアをなびかせ、音速並の速さでどこかから飛んでくる。そして無敵のパワーですべてを解決してしまうのだ。そんなGガールも普段は地味なニューヨーカー。そして、そうとは知らずに近づいてきたやさしげな男性(ルーク・ウィルソン)と恋をしてしまう。

さて、ここまでなら「スーパーマン」の男女入れ替え版といった趣だが、このあとの展開が凄い。当初はカノジョがGガールと知り大喜びしていたはずの男も、やがてその超人級の性欲と束縛欲に嫌気が差してしまうのだ。そして、やっぱり普通の女性がいいとばかりに身近な同僚といい仲になっていく。

75点
白人視点から描くルワンダ事件

昨年話題になった『ホテル・ルワンダ』と同じルワンダ虐殺事件を、別の切り口で描いた劇映画。あれだけの傑作の後発という厳しい立場ではあるが、なかなかどうして見ごたえのある一本であった。

海外青年協力隊の一員としてルワンダにやってきた英国人青年(ヒュー・ダンシー)は、人格者で知られるクリストファー神父(ジョン・ハート)のもと、公立技術専門学校で英語を教えている。そんなある日、フツ族出身の大統領暗殺事件を契機として、ツチ族皆殺し作戦が開始された。この学校には国連軍が駐留し治安を守っていたため、彼らと神父を頼る膨大な数のツチ族住民らが逃げ込んでくるのだった。

別の切り口とは言うが、ストーリーはほとんど『ホテルルワンダ』と同じ。ここまで似通った作品も珍しいが、しいて言えばこちらは徹底して白人、すなわちよそ者、第三者の視点で事件を描いている。さらに、サバイバル劇としての娯楽性などをことさら高めることなく、淡々と、そして真摯に事実を伝えようとしている。この企画を考えた製作者は、当時ルワンダにいた自分が何もできずに帰国してしまったことを悔いているというが、その思いはこのあたりによく現れている。

75点
難しい原作を違和感なくアニメ化した

アニメーションというものが面白い理由は、ひとえに絵が動くから。実写では何の感動もない人物の単純な動作でさえ、それなりに面白く見られるのは、この"絵が動く"という原始的な驚きをいまだに我々が感じるからといっても過言ではない。

むろん、そんな単純化ができるほど現在のアニメーション作品は簡単なものではないが、それでも『鉄コン筋クリート』のような(そう簡単にアニメ化できそうにない)個性的な絵柄をいとも簡単に動画にしてしまった本作のような映画を見ると、そんな娯楽性の原点を意識せずにはいられない。

昭和的な懐かしさを擁しながらも非現実的な架空の街「宝町」。そこで盗みやらを働きながらたくましく自活する孤児のクロ(声:二宮和也)とシロ(声:蒼井優)。ヤクザでさえ一目置く彼らの耳に、あるとき宝町再開発のニュースが届く。それに合わせるように街に不穏な空気が流れるのを察知した二人は、やがて怪しげなデベロッパーから街を守るための争いに巻き込まれていく。

75点
あまりに鋭すぎる人間観察眼、そして心温まる結末

タイトルから内容がまったく想像できない映画だが、アカデミー脚本賞にノミネートされるなど、その細やかな人間描写が米国で高く評価された一本。万人向けではない内容だから公開規模も小さいが、その質の高さから私も強くこの作品を買っている。

舞台は1986年のニューヨーク。主人公一家は、夫婦ともに作家。しかし、脚光を浴び始めた妻(ローラ・リニー)に対し、夫(ジェフ・ダニエルズ)は現在まったくなかず飛ばず、長いスランプに陥っていた。しかしかつての栄光のせいでプライドだけは異様に高く、彼女を認めてやることができない。やがて二人は離婚、父に心酔する息子ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)と、母親っ子のフランク(オーウェン・クライン)を巻き込み、家族は真っ二つに分かれてしまう。

この4人の心理を徹底したリアリティで描く優れたドラマだ。父親は本当は小心者だから、虚勢ばかり張っていて、母親を批判することでしか自分を高く見せられない。まったくもって愚か者だが、そんな父親を信奉する長男は、彼からあまりよろしくない影響を受けまくっている。

75点
高いアニメーション技術と演出力、声優による、世界レベルのジャパニメーション

今敏(こんさとし)監督と、アニメ制作会社のマッドハウスは、これまで数々の良質な大人向けアニメーションを発表してきた。ホームレスたちの感動ドラマ『東京ゴッドファーザーズ』(2003)、アイドル界を舞台にした異色のサイコホラー『PERFECT BLUE』(1998)、そして衝撃のラストで観客を突き放す『千年女優』(2001)と、ひとつも外れがない傑作ばかり。そんなわけで私が、日本の劇場用アニメ監督の中でもっとも打率が高いと考えているのがこの監督だ。

そんな彼の最新作は、映像化は困難といわれつづけてきた筒井康隆の同名小説をアニメ化した『パプリカ』。これもまた、期待を裏切らないハイレベルな作品であった。

患者の見ている夢を映像化し、潜入できる画期的な機器"DCミニ"。精神医療研究所の研究員、千葉敦子(声:林原めぐみ)はそれを使い、パプリカという美少女の姿で患者の悩みの原因を突き止める、サイコセラピストとして活躍していた。ところがあるとき"DCミニ"が盗まれ、研究員らの意識がのっとられる事件が起こる。敦子はDCミニの発明者の時田(声:古谷徹)らと共に、犯人探しに乗り出す。

75点
田中麗奈の演技力と魅力によって傑作となった

一人暮らしする盲目の女性の家に、犯罪者が侵入して一方的な同居生活をはじめる。そんな斬新で実感の伴う魅力的な設定を持つミステリの映画化。原作の乙一は17歳という若さでデビューした人気作家で、この原作も彼が23歳のころに出したものだ。

ヒロインは事故で視力を失った若い女性ミチル(田中麗奈)。やがて最愛の父(岸部一徳)も死に、住み慣れた一軒家で一人暮らしをすることになる。そんなある日、家のすぐ前の駅のホームで、男が突き落とされ死亡する事件がおきる。そしてその直後、警察から追われる在日中国人のアキヒロ(チェン・ボーリン)がミチルの家に忍び込み、彼女の知らぬままその部屋の片隅に息を潜めて座り込むのだった。

盲目のヒロインが知らぬうちに、殺人事件の容疑者と同居するという奇妙な物語だ。侵入者はしかし彼女の暮らしを乱すことはせず、もちろん危害も加えない。ただ身を潜め、殺人現場の線路を毎日見つめるのみだ。

75点
見ごたえたっぷり、さすがの王道

恋愛というものは、たいてい障害があるほど燃える。背徳は最高の媚薬といわれる通り、他人から反対されればされるほど、その恋の価値も上がるというもの。ときには障害がなくなったとたん、恋心もさめてしまったなんていう、意味不明な経過をたどることも少なくないが、それはまさに本質を見失うほど"障害=媚薬"が魅力的だった、ともいえるわけだ。

さて、中でも最高なのが"決して許されぬ立場同士の恋"。これはもう、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をはじめとする、古今東西のあらゆる恋愛物語の基本形。しかし、それらの悲劇物語に"オリジナル"がある事をご存知だろうか。

それこそが『トリスタンとイゾルデ』。1500年以上も前のケルトの伝説をもとにまとめられたこの物語が、いよいよ映画化された。

75点
ラストショットがうますぎる

平凡な映画でも、はっとさせるワンシーンがあると、すべてをチャラにしてあげたくなる場合があるが、もっとも重要とされるラストシーンがそうした「至福の瞬間」であった場合、評価に与える影響はより大きい。『16ブロック』はまさしくそんな作品で、これはもう、最後のワンカットを味わうためにすべてが作られているかのような、そんな映画である。

ニューヨーク市警のベテラン警官(ブルース・ウィリス)は、捜査中の事故で足を悪くし、今では酒びたりの堕落した日々を送っているが、ある日裁判所まで、証人(モス・デフ)の護送を頼まれる。目的地まではわずか16ブロック。15分もあれば済む用事のはずだったが、彼らは途中で猛烈な攻撃を受け、命がけの逃亡劇を繰り広げることになるのだった。

映画のテンプレートとしては、おしゃべり黒人のお調子者のチンピラと、気難しい白人刑事のバディムービーという、定番中の定番。命がけで追手から逃げる合間にも、テンポのいい会話劇やジョークが交わされ、こちらを楽しませる。

75点
韓国らしい、すこぶる面白い怪獣映画

この映画には、久々に腹が痛くなるほど笑った。「ほえる犬は噛まない」「殺人の追憶」といった佳作で知られるポン・ジュノ監督による韓国製怪獣映画『グエムル -漢江の怪物-』のことだ。

この映画の舞台、漢江とはソウルを南北に分けるように流れる穏やかな河川。観光スポットなので、休日には家族連れやカップルがたくさん集まる。主人公はその川っぺりで売店を営む一家。まったく勤労意欲のないダメ父(ソン・ガンホ)がダラダラしていると、突然漢江からカエルの化け物のような怪獣=グエムルが現れ、人々をぱくぱく食べはじめる。逃げ惑う中、父は娘(コ・アソン)がグエムルに連れ去られるのを見る。

さて、ここから先は、頼りにならぬ軍や警察に代わり、一家が怪物と対決するという予想通りのストーリーが展開されるが、父親を無敵のヒーローにしてしまいがちなハリウッド映画と違って、こちらは最後までダメでカッコ悪い点が特徴的。

75点
日本が誇るアクションスター2人の初対決

千葉真一と倉田保昭。彼らは、国内はもとより、それぞれ欧米やアジアで高い評価を得ている日本人アクションスターだ。たとえば千葉真一は、出演した「キル・ビル」でタランティーノ監督から最大級の敬意を捧げられているし、和製ドラゴンこと倉田保昭は、かのブルース・リーに、のちに彼の代名詞的存在となるヌンチャクを紹介した人物としても有名だ。

そんな二人が共演し、なんとスクリーン上で対決する。これは、史上初めてのことである(共演自体は過去にもある)。『マスター・オブ・サンダー』は、そのことの価値がわかるアクション映画ファンこそが最大のお客さん、という作品である。

倉田保昭が演じるのは、1400年間怨霊(松村雄基)を封じ込めてきた五重塔を守る和尚。永き戦いの末、仲間たちは倒れ、今では彼が最後の砦となっている。そんな和尚を見て、弟子の女子高生アユミ(木下あゆ美)は、かつての仲間たちの末裔ら6人を集め、再び寺に戻ってきた。

75点
今夏最高の本格ホラームービー

コナミのゲームソフト『サイレントヒル』といえば、カプコンの『バイオハザード』と並ぶ、プレステ時代の傑作ホラータイトルだ。しかし、ゲーム的な、ライトなアクションホラーとして映画化された『バイオハザード』とは、映画化のコンセプトが大きく異なる。

ストーリーは、ゲーム版のパート1を元にしている。ゲーム版では父親だった主人公が、母親に変更されている。これにより、テーマが母子愛という、誰の目にもわかりやすい、普遍的なものとなった。この方が、アメリカでの受けはよいだろうし、なにより、演技力を備えた美人女優で知られるラダ・ミッチェルがヒロイン(しかも妙に体の線丸出しな薄着)なら、世界中の男性客が喜ぶ。商業面でも一石二鳥というわけだ。

主人公ローズ(ラダ・ミッチェル)は、情緒不安定な9歳の娘シャロンが口走る「サイレントヒル」という地名が気になっていた。調べたところ、30年前の火災の影響で、今ではゴーストタウンと化した実在の町とわかる。彼女はそこに娘を連れていけば、何かがわかると思い、早速出かけるが、町で事故を起こし、気が付くとシャロンがいなくなっていた。途中から母子を追ってきた、近くの町の白バイ婦警(ローリー・ホールデン)とともにシャロンを探す彼女の前に、やがて恐ろしいクリーチャーが現れる。

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