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2206件中 301~350件 を表示しています。
80点
単なるビックリ映画としてみるのが正しい

日本の『リング』がハリウッドでリメイクされてからというもの、似たような東洋的ホラーが相次いで公開されているが、これもその流行の一つとされている。

ところが、駄作も多いその流行の中、『the EYE(アイ)』はなかなかいける。冒頭から、かなり面白い仕掛けがあるので、開演前には必ず席に付いていたほうがいい。この仕掛けは、まさにこの映画のコンセプトを象徴している。

主演女優は、目がおっきくてかわいらしい顔つき。演技もウマイ。当初は盲目だが、移植手術により徐々に視力を取り戻す過程はとてもリアル。そんな興味深い設定と尽きない謎、そして時々出てくる心臓に悪いシーンのおかげで、観ていて飽きることはない。

80点
スタイル抜群の女の子がワイヤーワークで華麗にアクション

台湾(スー・チー)、中国(ヴィッキー・チャオ)、香港(カレン・モク)の3大スター主演のアクション映画。

『チャーリーズ・エンジェル』との差別化を計るためか、こちらはシリアス路線で行く。でもストーリーは似たようなもん。だから、見所はやはり美女のアクションという事になる。

この映画の美女たちは、モノトーンの衣装しか身に着けないので、色彩的に統一感のある画面作りに成功している。そして、その真っ白なパンツスーツが一番似合うのが、台湾の誇る人気女優スー・チーである。

75点
≪ゲームを知らない人にもすすめられる佳作≫

ファイナルファンタジーというと、映画人にとってはあるトラウマ(莫大な製作費をかけながら失敗作とされた01年版)が頭をよぎるのだが、『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』はそれをついに吹き飛ばす、人間ドラマの傑作として仕上がっている。

単身赴任中だった父・暁(吉田鋼太郎)が、突然会社を辞めるといいだした。心やさしい息子のアキオ(坂口健太郎)はそれを機に、長年ろくに会話すらしていなかった父と、なんとかやりなおせないかと、暇になった父にオンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」をやらせてみることを思いつく。

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はゲームファンを敵に回し、大変な炎上振りとなっているが、日本のRPGとしての二大巨頭『ファイナルファンタジー』も同時期に映画になっていることはあまり話題になっていないのではないか。しかも本作は、ドラクエとは真逆に、このゲームのファン(いやそれ以外も)が見たら号泣確実。テレビゲームが持つよい部分を、堂々とうたいあげる横綱相撲となっている。

75点
≪日本のアクション映画の最上級レベル≫

『ザ・ファブル』は『関ヶ原』や『永遠の0』など、いまや日本映画界を背負って立つ人気スターとなった岡田准一主演のアクションドラマ。週刊ヤングマガジン連載の南勝久の漫画が原作だが、よくぞあれをこうも見事に実写化したものだと驚かされる。

どんなターゲットも6秒以内に倒す殺しの天才として、裏社会でも都市伝説のごとき存在となっている殺し屋ファブル(岡田准一)。あるとき彼はボス(佐藤浩市)から「稼業を1年間休み、大阪で一般人として過ごせ」との命令を受ける。彼は佐藤アキラという偽名で、相棒のヨウコ(木村文乃)と兄妹のふりをして暮らし始めるが……。

冒頭の敵組織襲撃シーンにおける、一人vs集団戦闘が白眉である。数十名の敵に囲まれるファブルの主観映像が多用されるのだが、その画面にはターミネーターのごとく各々の戦力や射撃優先順位が表示され、観客に「腕利き暗殺者」の疑似体験を強いる斬新な映像となっている。これはなかなかの独創性を感じさせ、海外のアクション映画と比較しても近年まれにみる迫力といえる。

75点
≪マ・ドンソクの魅力全開≫

アクションスターは数あれど、韓国のマ・ドンソクの存在感は年々増すばかりである。私も注目しているが、『守護教師』はそんな彼の魅力を存分に味わえる学園ミステリだ。

元ボクシング東洋チャンピオンの実力を持つギチョル(マ・ドンソク)は、正義を通そうとした際の暴力をとがめられて職を失った。なんとか周囲の紹介で仕事を得たものの、それはとある地方都市の女子高の体育教師であった。独特の雰囲気にまったくなじめないギチョルは、同じようにどこか周囲から浮いている生徒ユジン(キム・セロン)を目にとめる。彼女は、最近頻発する女子生徒の失踪事件で、いなくなった友人をひとり探し続けているのだった。

韓国映画にはこういう、不気味な地方都市、郊外社会というものが時折でてくるが、本作もその独特の閉鎖性を舞台にしたスリラー、ミステリである。日本人にはなかなかピンと来ないが、だからこそ興味深く、面白い。

75点
韓国初の実写ゾンビ映画

韓国では国を上げて映画産業を支援している。その結果、国民も自国の映画作品を好む傾向がある。ハリウッド作品を彷彿とさせる一部のエンタメ映画はときに国民の数人に一人が見た、なんていうとんでもない大ヒットとなることも多い。ところが意外なことに、作品の幅という意味ではまだまだ途上国と言わざるを得ないのが実情だ。

別居中の妻のもとへ幼い娘を送ることになった金融マンのソグ(コン・ユ)。朝早くKTXに乗り込んだ父娘だが、同じ列車には人間をゾンビのように狂暴化するウィルスに侵された女も乗り込んでいた。

不思議なことに韓国では、これまでこの手のゾンビ映画はほぼ皆無であった。とはいえ、アニメ・漫画では人気のジャンルであったので、アニメ監督のヨン・サンホが、この企画を手掛けたのは必然といえる。結果は見事その年のナンバーワンヒットとなったわけだが、大衆の渇望とマッチした良作だったということだろう。

75点
子を持つ親に

「チェイサー」は映画会社の破産など不運に見舞われ本国でも上映が延期に延期されたが、この手のトラブルの常で公開後もパッとしない。だが、見てみれば意外な掘り出し物だということがすぐにわかる。

シングルマザーのカーラ(ハル・ベリー)は、公園で目を離した間に息子のフランキーを何者かに連れ去られる。駐車場で拉致の瞬間を目撃した彼女は必死に食い下がり、犯人の車を追跡する。だが追跡中の犯人を止める手段が彼女にはない。そのうちにも相手の車は高速道路に乗ってしまい……。

オープニングから不穏な空気が立ち込め、子のいる親は胃が痛むような94分間を味わうことになる。

75点
移民問題についても考えさせられる

最近はやりの恋愛工学では、美人に対してほどディスるのが定番の口説き方だが、「スターシップ9」も絶世の美女がつれなくされる場面がたくさん見られる奇妙なドラマである。

超長期で恒星間飛行を続ける宇宙船の中で、およそ20年ほど前に生まれたエレナ(クララ・ラゴ)。最愛の、さらにいえば彼女が唯一見たことがあるにんげんだった両親はもういない。しかも飛行船は吸気システムがトラぶっており酸素は残り少ない。困った彼女のもとにようやく一人のエンジニア(アレックス・ゴンサレス)が到着する。人生初の訪問者を前に、エレナの胸は不思議な期待で高まるのだった。

序盤の最大の見せ場は、宇宙船の中で生まれ両親以外の人間と出会ったことのないエレナが、イケメン技術者のアレックスが眠るベッドに忍び込み自ら迫るセクシーシーンである。

75点
カンフー映画最高峰

いまクンフーアクションをやらせたら、ドニー・イェンは明らかにトップスターであろう。ただ、日本での一般的知名度は残念ながらあまり高くはない。「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」など近年はハリウッドの話題作での活躍も目立つが、そもそも洋画じたいが冬の時代なので、なかなか浸透しない。

ブルース・リーの師匠としても知られる詠春拳の達人イップマン(ドニー・イェン)が静かに妻子と暮らす街に、悪徳不動産業者フランク(マイク・タイソン)が目を付けた。強引な地上げを行おうとする彼らを、イップは息子の同級生の父親チョン(マックス・チャン)と協力して何とか一度は退ける。

さて、そんなドニー・イェンだが彼の魅力を味わうにはこのイップマンシリーズはうってつけである。

75点
チャイナマネーの力

「グレートウォール」はまごうかたなき中国プロパガンダ映画の超大作だが、その出来たるや隙のないまさにお手本というべき傑作であり、その点は高く評価せざるを得ない。

弓の名手で傭兵のウィリアム(マット・デイモン)は、仲間とともに黒色火薬を求めて中国大陸にやってきた。彼らはやがて異民族に追われ万里の長城の警備隊に助けを求める。完全武装の中国軍の大軍勢に圧倒されるウィリアムらは、かれらが60年に一度遅い来る、饕餮(とうてつ)なる獣への迎撃準備をしていることを知るのだった。

万里の長城を「人類を守ってきた最後の防壁」と位置づけ、中国伝統の怪物=饕餮と決死隊のド派手なバトルの連続で見せる熱いストーリー。

75点
取り残されてゆく日本

変化を体感できるドキュメンタリー映画ほど観客が熱中するものはない。まして社会そのものを変える意欲に満ちた映画ともなればその興奮たるや想像に余りあるが、日本でそこまでの影響力を映画が持つことは少ない。その、数少ない映画の一つになろうというのが、反原発訴訟の中心弁護士、河合弘之監督による作品群である。

その3作目となる本作は、これまでの脱原発に加えてその代案としての「自然エネルギー」を徹底的に分析する。批判だけならだれでもできる、では原発をなくしたあとの未来はどうあるべきか。それが監督が描こうと試みた主題である。

この手の反原発モノは腐るほどあるから、いいかげん見る側も飽き飽きしているかもしれないが、さすがは異業種監督。この映画は最初の1秒目から、凡百の反原発映画との違いを見せつける。いきなりとんでもない宣言を観客にたたきつけ、仰天させる。

75点
妻が死んだのに涙が出ない

「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督が、「ナイトクローラー」(2014)など近年高くその演技力が評価されているジェイク・ギレンホールを主演に作ったこの「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」は、その長ったらしい邦題同様、よくまあこんなわけのわからない話をこれほど面白い映画にしたものだと感心させられる佳作である。

ウォール街の優秀な金融マン、ディヴィス(ジェイク・ギレンホール)は、誰もが羨む成功した暮らしを送っている。ところがあるとき妻が交通事故死。だが彼は、その訃報に涙も出ず、なんら感情を動かされることもなかった。

おなじみブラックリスト掲載のオリジナル脚本の映画化だが、これはかなりうまくいった部類に入る。

75点
久々のキング節

モダンホラーの大御所スティーヴン・キングといえば、かつては映画原作者として大人気だった。しかし近年ではテレビムービーがほとんどで、なかなか日本で劇場公開されることはない。リメイク版「キャリー」(2013)の前には「ザ・チャイルド:悪魔の起源」(2010)まで遡らねばならないわけで、20代の人は彼の原作映画をほとんど知らないのではないだろうか。

別居中の妻子に空港から電話をかけていたコミック作家のクレイ(ジョン・キューザック)。ところがバッテリ切れで肝心の通話が途中で切れてしまう。ところが次の瞬間、携帯を使っている人々が次々と狂い、周囲を襲い始める。暴徒と化した群衆から命からがら逃げだした彼は、通話が切れたきりの妻子の家へと向かうのだが……。

原作は06年の小説で、結末に多くの不満が寄せられたキングは映画化にあたり、みずから脚本家として新エンディングを考案して挑んだ。そんなわけで既読者でも楽しめるようになっている。

75点
ヒーローは無名

昨年から始まったディズニー版スター・ウォーズは、隔年で本編3部作が公開される合間に、スピンオフ3本の公開を挟む形でとりあえず6年間続く予定になっている。「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」はそのスピンオフ第一作となる。

皇帝とダースベイダーら帝国軍は最終兵器デススターの完成を目の前にしていた。反乱軍は、その危険性を証明するため、過激すぎて袂を分かったかつての仲間ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)に連絡を取る必要があった。そこで彼らは、ソウのもとでかつて暮らしていたジン(フェリシティ・ジョーンズ)にコンタクトを取るのだった。

さて、このジンという女性がヒロインなわけだが、彼女はデススターの開発の中心人物で科学者ゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン)の娘でもある。ほかの人生があったはずなのに、宇宙のゆくえを揺るがす運命に巻き込まれた彼女の悲劇的な物語が本作の見どころである。

75点
中高年男性でも楽しめる娯楽作

元MI6の作家ジョン・ル・カレ原作のスパイサスペンス「われらが背きし者」は、彼の小説の最近の映画化の例に漏れず、非常に見応えのある大人向けの傑作エンタテイメントに仕上がっている。

大学教授ペリー(ユアン・マクレガー)は妻とモロッコに休暇にやってきた。そこで知り合った妙にきっぷのいい男ディマ(ステラン・スカルスガルド)に後日、夫婦で誘われたペリーは、そのあまりにゴージャスなパーティーに圧倒される。そしてその場で彼はディマに、彼がロシアンマフィアの金庫番であること、組織に命を狙われていること、家族を救うため、秘密が入ったメモリスティックをMI6に届けてほしいことを頼まれる。

どこかの国の人気コミックと違って、ジョン・ル・カレの映画化作品に外れはない。どこかの国の人気コミックを実写化する人たちは、大いに参考にしたらよい。

75点
トランプ躍進の謎が解ける

共和党の有力候補ドナルド・トランプは、メキシコ国境に「万里の長城」を建設するとぶちあげている。しかも1兆円ともいわれる建設費は全額メキシコ持ち。突然そんなものを押し付けられたメキシコの納税者はたまらないが、アメリカの有権者は拍手喝采だ。

いったいなぜこんな暴言が支持されるのか。その謎を解くのが「ボーダーライン」。メキシコ麻薬戦争の裏側を初めて描いた本格アクション映画だ。

メキシコとの国境線で活躍するFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)は、麻薬カルテル殲滅のため国防総省らが主導する特別編成チームにスカウトされる。そこには素性のわからぬコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)がいてケイトは警戒するが、捜査を主導するのはやたらと現地の裏社会に詳しいその男だった。

75点
フロリダ州銃乱射事件は異様なる偶然

無差別殺人事件は、いつどこででも起きる──。そんな警鐘をならした映画「葛城事件」の公開に合わせるかのように、フロリダ州オーランドで全米史上最悪の銃乱射事件がおきた。こういう恐ろしい偶然が起きた映画は、何はともあれ見ておいた方がよい。

金物屋を営む葛城清(三浦友和)は、妻と二人の息子に恵まれがむしゃらに働いてきた。マイホームも建て、理想の家族を得たように見えたが、じっさいは傲慢かつ暴力的に支配しようとする彼自身の問題もあって家族はばらばらであった。出来のいい長男の保(新井浩文)は会社をリストラされ、弟の稔(若葉竜也)は引きこもるばかり。やがて、そんな一家のバランスが崩壊する日がやってくる。

赤堀雅秋監督が主宰する劇団「THE SHAMPOO HAT」の同名劇を映画化したもの。演劇版発表時から数年がたち、その間に起きた秋葉原通り魔事件をはじめ同種の事件をリサーチして取り込むことによって、より本作の洞察は深まった。

75点
リアルウシジマくん

北海道警察において、"日本警察史上最悪の不祥事"を巻き起こした一人の悪徳警官を描いた実話映画「日本で一番悪い奴ら」は、あまり意識されていないが現在進行中の案件だったりする。

柔道で名を挙げた諸星要一(綾野剛)は、北海道警察に入り刑事となった。そこで彼は村井という悪徳刑事から「調書なんか作る暇があったら現場でS(スパイ)を作って点数を稼げ」とのアドバイスを得る。猪突猛進型の体育会系な諸星はそれを真に受け、ほとんど違法な捜査で頭角を現していく。「日本一の刑事になりたい」その強い思いは、やがて易々と最後の一線を越えエスカレートしていくが……。

今年3月、ロシア人の元船員が「北海道警のおとり捜査は違法だった」と訴えて再審が決まったとの報道がなされたのだが、その時このロシア人に違法な密輸拳銃を持ってこさせた警部補、というのが本作の主人公のモデル稲葉圭昭である。

75点
ネタバレ前に見に行こう

海外の映画祭で観客賞など高い評価を得た「アイアムアヒーロー」は、なかなかよく出来ているが楽しむためにはいくつかの注意点があるので、公式サイトを含め他の紹介記事を読む前にこのページを一読しておくとよい。

30代も半ばの鈴木英雄(大泉洋)は、15年前に新人賞をとったもののその後はアシスタント生活で全く目が出ない漫画家。長年つきあって同棲しているガールフレンドはいるが、生活が成り立たない状況から彼女との仲は最悪。最後の望みだった新作の持ち込みも編集者から一蹴され、ついに彼女から部屋を追い出されてしまう。

さえない男が巻き込まれるとんでもない運命。この後の展開は原作未読者にはなかなか予測しがたいものとなる。人によっては仰天することだろう。

75点
さすがに上手いホームドラマ

「母と暮せば」が、引退作にしてもいいというほど魂を入れ込んだ渾身作なら、間もなく公開される「家族はつらいよ」は、いかにも山田洋次監督らしい肩のこらない気軽なホームドラマだ。

平田家のあるじ、周造(橋爪功)は、妻・富子(吉行和子)の誕生日を忘れて飲み歩くなどほとんど傍若無人な毎日を過ごしている。ところが突然、富子から離婚届を出され、判を押すよう頼まれる。本人はもちろん子供たちも激しく狼狽、ささやかな一家の平和な日々に激震が走る。

非常に手堅い、安定の出来映えである。笑いもうまいし「東京家族」(2012)のキャストが再結集した役者たちの演技も的確、演出も筋運びにも破綻はなく、すべてが丁寧でミスもない。もっとここをこうしたら、がひとつも出てこない。ベテランらしい仕事である。

75点
究極のリバタリアニズムかと思いきや

アーノルド・シュワルツネッガーの役者としてのブレイク以来、もっとも低予算の映画である「マギー」は、彼にとって初めてのゾンビ映画でもある。

人間をゾンビ化するウィルスが蔓延するアメリカ。田舎の農場で暮らすウェイド(アーノルド・シュワルツネッガー)の16歳になる娘マギー(アビゲイル・ブレスリン)も、今まさにゾンビにかまれ感染してしまった。決まりでは、感染者はいずれ発症前に隔離所に連れ去られる運命だが、ウェイドはその運命に必死に抗いつつ、最愛の娘を前に自分が何をするべきか激しく葛藤する。

シュワがギャラゼロ円で出演したため低予算映画になったわけだが、じっさい彼が出たおかげでこの地味なドラマに華がうまれた。と同時にアーノルド・シュワルツネッガーにとっては、キャリア最高の演技力を見せつける場となった。

75点
性根の入った反戦映画

2016年のお正月映画は、東宝と東映が安倍時代らしい愛国ムービーで足並みをそろえた。しかし松竹は山田洋次監督の「母と暮せば」で反核反戦テーマを訴える。ただひとり、信念を持って迎え打つ構図になっている。

長崎への原爆投下で息子の浩二(二宮和也)が死んだその3年後、助産婦の伸子(吉永小百合)の前に彼の幽霊が現れる。聞くと浩二が死んで以来、操を立てるように誰とも付き合わない恋人の町子(黒木華)が心配なのだという。奇妙な共同生活を始めたこの母子は、おせっかいにも町子の相手探しにかかわっていくのだが……。

さすがは山田洋次監督、戦争映画をやるとなったら生やさしい描き方はしない。かつて「たそがれ清兵衛」に始まる三部作で時代劇映画というジャンルを一段高みへと引き上げた、その創作魂がこの反戦映画にもいかんなく発揮されている。

75点
ライバルを圧倒する高品質

エア御用プロパガンダの様相を呈するライバル東映の「海難1890」に比べ、「杉原千畝 スギハラチウネ」は見事な出来映えである。それはチェリン・グラック監督が日本育ちとはいえ外国人で、ある程度客観的な視点でこの史実を描くことができたからだろう。完全なる当事者でる日本人が監督したら、もっと湿っぽいお涙ちょうだいになっていたかもしれない。

ソ連との北満鉄道譲渡交渉を成功させた外交官の杉原(唐沢寿明)は、ソ連から危険視され念願のモスクワ勤務がパーになってしまった。さらに、代わりに赴任したリトアニアの日本領事館も第二次世界大戦に巻き込まれ、閉鎖が決定する。その期日が迫る中、領事館前には同盟国のナチスドイツに迫害され、出国のためのビザ発給を望むユダヤ難民が大挙押し寄せる。杉原は政治と人命救助のはざまで、困難な決断を迫られるのだった。

この映画が良かったのは、まず杉原を人権活動家のごとき博愛平和主義者に描いていない点である。

75点
人間味ある庶民派ヒーロー

悪役の人材不足で質量ともに飽和気味のヒーロー軍団アベンジャーズ。このままじゃいかんと感じているのは観客もディズニー側も同じということで、ここ最近はかなり異色のヒーローものを打ち出している。「アントマン」もその一つで、アベンジャーズの世界観の中に存在しながら、その他のマッチョヒーローたちとは正反対の特徴を持つ。

人生に行き詰っていたスコット・ラング(ポール・ラッド)は、とうとう別れた妻のもとで暮らす愛娘の養育費すら工面できない状況に陥っていた。そんなとき、彼のもとにハンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)から魅力的な仕事の話が入る。

この仕事というのが、なんと身長1.5cmにちぢむことができる特殊な全身スーツを着てある場所に行ってくれというもの。侵入を得意とするスコットにとっては朝飯前のものだが、そううまい話があるわけがない。

75点
実話をちょっぴりだけもとにしたいい話

「Dearダニー 君へのうた」は、「届かなかったジョン・レノンからの手紙」というべき実話を基にし

た感動ドラマだが、アル・パチーノ熟練の演技力とジョン・レノンのオリジナルスコアの完璧なハーモ

ニー、そして挿入される新曲の出来のよさによって相当見ごたえのある良作に仕上がった。

75点
すごいインパクトの園子温最高傑作

日本では、人気原作をうまく映画化した作品が余りに少ない。そのため、"原作レイプ"などといった物騒な言葉がしょっちゅう使われている。

園子温監督「リアル鬼ごっこ」も、山田悠介の人気ミステリが原作の実写映画。すでに何度も映画、ドラマ化されている人気原作と言っていいが、この映画が"原作レイプ"と批判されることはまずない。

なぜなら園子温監督は、そもそもこの原作を読んでいないし、最初から読むつもりもなかったからだ。

75点
二度と取れないこれっきりの続編

「アクト・オブ・キリング」(12年)という映画がある。これはとんでもないドキュメンタリー映画で1965年のインドネシアにおける虐殺事件の首謀者たち、すなわち本物の大量虐殺者たちに「再現ビデオを作るから本人役を演じてくれ」と頼みにいくアメリカ人映画監督の挑戦を描いている。

普通ならその映画監督自身が被害者数プラス1に貢献してしまうところだが、この殺人老人たちは自分たちを国家を救った英雄と思いこんでいるので、大喜びでにわか俳優を演じてしまう。

そんなシュールすぎる殺人者たちの姿を描いたあの傑作に、実は姉妹編が存在した。それがこの「ルック・オブ・サイレンス」である。

75点
魂の名言集

噴火警戒レベル1(平常)だったはずの御嶽山が、予測できない水蒸気爆発をおこし、多くの人が犠牲になった。山というのはかように人知を越えた存在で、それは山に関わるものなら誰もが共有する実感であろう。たとえ完璧な準備と全力を尽くしても、運が悪ければ命を失う。それは標高の高さとも無関係で、人は覚悟して挑む意外にない。

「アンナプルナ南壁 7,400mの男たち」は、そんな山の非情さと、しかしそこに関わる人間たちの美しい心を描いたドキュメンタリー。2008年5月に実際に起きた事故と救助活動について追いかけた、感動の物語である。

アンナプルナとは、ヒマラヤ中央に位置する山群の名前で、高い山では8091メートルもある。標高世界10位の高峰だが、難易度だけなら最高峰とすらいわれる山でもある。エベレストを何度も登頂したようなトップクライマーが、登山人生の総仕上げとして挑戦する、そんな山だ。

75点
有機的につながるアクションを堪能

週末だけで13億円という驚異的な興収を記録したこの完結編は、前作「るろうに剣心 京都大火編」がいまだ上映中で、同じシネコンでみられるから相乗効果でグイグイ伸びるだろう。それだけの出来栄えだし、見ごたえも大いにある。

強力な私兵軍団を築いた志々雄真実(藤原竜也)の前に、明治政府は後手後手にまわり劣勢を否めない状況であった。一方、志々雄を唯一止められると期待された緋村剣心(佐藤健)は、危ないところをかつての師匠・比古清十郎(福山雅治)に救われる。彼のもとで療養と再修業に挑む剣心だが、はたして剣術面で圧倒された瀬田宗次郎(神木隆之介)や志々雄に対し、単身反撃できる日はくるのだろうか。

前作の隠れキャラ比古清十郎が前半の見せ場を彩る。演じる福山雅治と剣心役・佐藤健のソードバトルは本作でも最高クラスの迫力を感じさせる見事なもので、あの剣心がパワーで押されまくる姿には、速度で負けた瀬田戦とはまた違ったリアリティが伝わってくる。

75点
現実を予見した社会派エンタテイメント

真っ先に逃げ出した船長をはじめ、運行会社から泣き女こと大統領、メディアや救助担当者まで、そろって信じがたい無責任体質を露呈したセウォル号事故。突発的な大事故が起きると、かかわる人々の本質が見えてくる例といえるわけだが、映画「テロ,ライブ」はその韓国の悪しき国民気質のようなものを、直前に予見していた点で特筆すべき社会派エンターテイメントといえる。

不祥事でテレビ番組からラジオ局に左遷された元国民的アナウンサー、ヨンファ(ハ・ジョンウ)は、今日もやる気のないトーク番組を進行していた。生放送だというのに爆破予告のいたずら電話がかかってきたことも、さらに彼を憂鬱にさせた。ところが直後、局の前の漢江に架かるマポ大橋が爆発炎上。その瞬間からヨンファの脳味噌はフル回転し、この前代未聞のスクープを利用して自らの復帰を図ろうと色めき立つのだった。

生放送中に爆破犯人から電話がかかってくる。ありがちだが魅力的な切り口のリアルシミュレーションドラマ、である。

75点
タイトルとコンセプトがよくないが、中身は絶品

長くレギュラー出演をしていてもいまだに生放送は緊張する。とくにラジオのそれは映像がない分、よりシビアである。テレビならごまかせても、ラジオで数秒間会話が途切れたらそれは即、放送事故となる。ラジオ番組を作るもの、出演するもの全員が心に秘めた、絶対に守らねばならぬ最後の防衛線だ。

DJ・マユミ(室井滋)は、20年以上続いた自身の長寿番組の最終回、その大事な生収録中に一本の非通知電話を受ける。会話の様子のおかしさから、相手の若い女が自殺を決意していると見抜いたマユミは、プロデューサーの制止を振り切り放送中、必死に彼女を説得する。だが彼女は考えを変えようとせず、いまにも電話を切ろうとするのだった。

ラジオ番組作りにかかわる一人としては、まったくもって胃が縮み上がるような展開である。なにしろときは最終回、プロデューサーは聴取率より何より、つつがなく番組を終わらせたい。一方、現場のスタッフとDJは、そんなすべてのしがらみよりも、目の前のリスナー一人を救いたい。

75点
どうしようもない連中にも本物の愛がある

この映画のパンフレットや公式サイトには登場人物の相関図が掲載されているが、その理由は見終わったあとにわかる。後から眺めると、なるほどなと色々考えさせられる。

夫が失踪したバイオレット(メリル・ストリープ)の住む家に、一族が次々と集まってくる。長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は母親の世話を妹アイビーに押し付けながら、夫(ユアン・マクレガー)とうまくいかない負い目を抱えたまま。次女アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はいまだ独身という不遇。能天気な三女カレン(ジュリエット・ルイス)は、しかし誰が見ても怪しげな男を連れてきた。問題だらけの一家の人間関係は、まさに一触即発の様相を呈していた。

初期ガンの化学療法により口内が始終痛み続ける主人公は、とてつもない口の悪さで悪態をつきまくる。アメリカ映画は口の悪いキャラがしょっちゅう出てくるが、それにしてもバイオレットの罵倒っぷりはあまりにスゴくて、観客は圧倒される。もちろん、これは演じる女優の演技力が物凄いわけである。のっけから、メリル・ストリープ劇場というわけだ。

75点
あふれるリバタリアニズム

「ダラス・バイヤーズクラブ」はハイレベルな演出技法と役者の役作りを味わえる映画、すなわち見た目がわかりやすい「いい映画」だが、中身やテーマなど内容も、それに劣らずとんがった傑作である。

1985年のテキサス州ダラス。ロデオカウボーイのロン(マシュー・マコノヒー)は、大好きな酒と女を存分に楽しむ奔放な生き方を楽しんでいた。ところがそれが祟り、医師からHIV感染と余命30日を宣告されショックを受ける。生きのびるため病気について学び始めた彼は、偏見と誤解にみちたこの病気についてと、米国ですら遅れている治療法の現状を知る。病院で知り合った同性愛者のエイズ患者レイヨン(ジャレッド・レトー)の協力を得てロンは、未承認薬を求めメキシコへ向かうのだが……。

まず観客が驚くのは、エイズ患者役マシュー・マコノヒーの激やせ芸である。デニーロアプローチを地でいく彼は、余命30日を宣告された時点ですでに常軌を逸した痩せ方をしているが、そこからさらに病的にやせ細ろえていく。もっともこの役をやるには、これくらいやらないとどうにもならないわけだが、その期待に応えた点は特筆に値する。

75点
若い子のおっぱいに目を奪われていると大ショック

フランソワ・オゾンという監督はいろいろなジャンルを撮りこなす器用さを持つが、とくにミステリをやらせると一流である。「17歳」は彼の最新作で、援助交際にはまりこむ17歳の女の子の心理に迫るドラマだが、これもみようによっては良質なミステリとなっている。

17歳の美しい少女イザベル(マリーヌ・ヴァクト)は、手近な男で初体験を済ませると、何かに取りつかれたように不特定多数の男と体を重ね始める。しかもそれは出会い系サイトでみつけた見知らぬ男たちで、彼女は彼らから対価をとる、すなわち売春をしているのだった。とくに周りに深刻な問題など見当たらないというのに、いったいイザベルはなぜそんなことをするのだろうか……。

オンナも30歳を越えると徐々に単純になってきて扱いやすくなるものだ。もっとも、ひとたび怒らせてしまったら大変恐ろしいのもこの年代の特徴ではあるが、とりあえず犬のようにひれ伏して許しをこえば、たいていのことは受け入れてくれる。そんな慈愛の心こそ、男としてはなかなかどうして可愛いなと感じるものである。

75点
本気で作るバカ映画

「なんちゃって家族」は、ハングオーバー!シリーズの大ヒットに気をよくしたワーナー・ブラザースによる、よく似たコンセプトのコメディー映画である。

ブラックジョークや下品なギャグ満載ながら、手抜きのない脚本というぶっとい屋台骨をもつのがその特徴。ただ笑わせるだけではない、映画を見たなあという満腹感を味あわせる、サービス満点の一品である。

麻薬密売人デヴィッド(ジェイソン・サダイキス)は、近所のバカな童貞青年ケニー(ウィル・ポールター)のトラブルに首を突っ込んだ結果、貴重な売り物の麻薬を奪われ窮地に立たされる。組織から許され生き延びるためには、危険地域メキシコからの密輸という、命がけの仕事をするしかない。途方にくれたデヴィッドだが、ストリッパーで隣人のローズ(ジェニファー・アニストン)らをニセの家族とし、キャンピングカーで国境を突破する作戦を思いつく。

75点
原作読者は騙される

ミステリの映画化は難しい。原作読者にはオチが割れているし、小説という形態独特のトリック、たとえば叙述トリックがメインの場合は映像化それ自体が困難である。それらの障害を乗り越え、原作読者をもうならせる映画にするにはどうするか。

北川景子と深田恭子の初共演作「ルームメイト」は、その命題にきわめて斬新なやり方で一つの回答をたたきだした、大胆きわまり無い一本である。

交通事故で入院した春海(北川景子)は、非正規社員という不安定な立場で退院後の不安を感じてる。そんな折、親切にされた看護師の麗子(深田恭子)と仲良くなり、彼女とルームシェアをすることになる。不自由な生活を支えてくれる麗子に心から感謝していた春海だが、時折別人のような態度をとる彼女に、やがてぬぐい難い違和感を感じ始める。

75点
傑作だが考え方には異論も

イクメンなどという言葉が生まれ、お父さんが積極的に育児にかかわることが珍しくない今の時代。だが、どんな大人だって最初から親だったわけではない。私は、子供たちには早めに知っておいてほしいことだと思っているが、あなたたちが生まれる前は父も母も「親」ではない、ただのおじさんおばさんだったのである。

そんなただのおじさんが「父」になる瞬間、過程を描いた「そして父になる」は、福山雅治にあて書きされたオリジナル脚本。福山がただのおじさんかどうかは別として、いまどきこうした地味な企画を映画の形にできるだけでも、是枝裕和という人物は大した監督である。

勝ち組人生を歩んできたエリートサラリーマンの野々宮(福山雅治)は、6歳になる息子の慶多(二宮慶多)がお受験で優秀さを見せても、優しすぎて覇気のない性格にはどこか不満げだ。そんなとき、病院から驚くべき知らせが入る。なんと慶多は新生児のときに取り違えられた、別の家の子供だという。本当の息子・琉晴(横升火玄)が暮らす斎木(リリー・フランキー)とその妻(真木よう子)と接触した野々宮は、がさつで卑屈な斎木に嫌悪感を催すも、その息子の競争心ある態度に「血」の絆を感じ、惹かれるのだった。

75点
米映画の流行をつかんでいる

「ダークナイト」(2008)のクリストファー・ノーランが製作し「ウォッチメン」(2009)のザック・スナイダー監督する。アメコミ映画に社会派の香りとダークな世界感を採用したこの2人がスーパーマンを実写にする。おのずと骨太な映画を期待してしまうのは当然だ。

クリプトン星で生まれた最後の赤ん坊は、故郷の滅亡を前に父母の手により地球へと送られた。カンザスの心優しい夫婦に拾われた赤ん坊は、やがてクラーク(ヘンリー・カヴィル)の名で成長する。超人的なパワーをどう使うべきか、自分探しの旅に出たクラークが、激しい運命に翻弄されやがて得た解答とは。

「マン・オブ・スティール」は、最近のハリウッドの流行を押さえた作りになっている。例えば攻撃されるのはアメリカ本土。今年日本公開されたホワイトハウス映画2本をはじめ繰り返されているモチーフで、これは自国がテロ攻撃される観客自身の不安を表している。

75点
ほどほどで十分?!

最近はバットマンもスーパーマンもリアル志向だが、そういうブームとて永遠に続くわけではない。たとえば「ザ・タワー 超高層ビル大火災」はそうしたコンセプトに堂々と背を向けたマンガ志向のアクション映画ながら、きわめて新鮮で、むしろ正義を感じさせる出来に仕上がっている。

ソウルの汝矣島に建つ超高層ビル「タワースカイ」。クリスマスイブのイベントに備えるマネージャーのユニ(ソン・イェジン)は、担当の厨房からボヤが出たことに一抹の不安を覚えていた。そんなスタッフの不安をよそに会長(チャ・インピョ)は、複数機のヘリから人工雪を降らせる無謀な計画を強引に遂行しようとしていた。

この映画のコンセプトは明確で、高層ビルの火事でわくわくさせ、恐怖とスリルを楽しませ、最後は人間ドラマで泣かせるというもの。40年か50年前のアメリカ映画でよく見られた、王道のパニック映画といえるだろう。

75点
アメリカ版警察24時

LAPD全面協力、出演者が5ヶ月間も本物警察の特訓を受けて挑んだ「エンド・オブ・ウォッチ」は、リアル警察ムービーの決定版である。

サウス・セントラルはロサンゼルスの中でも指折りの犯罪多発地区。ここで働く警察官テイラー(J・ギレンホール)とザヴァラ(M・ペーニャ)は、白人とメキシコ系という人種の違いを超えて、家族といってもいい強い絆で結ばれていた。長年の経験から図抜けた危険察知能力を持つ彼らは、どんな修羅場でも生き延びてきたが、そんな名コンビの行方に不穏な影が立ち込める。

劇映画だが、主人公が今アメリカで増えているユーチューバーなる撮影マニアということで、そうした自画撮り映像を多用したドキュメンタリータッチとなっている。不審者を負う車載カメラ映像による序盤のアクションシーンの本物感といったらなく、こりゃただ者ではないぞと観客に緊張感を強いる。

75点
TPPの終焉を予言するエンターテイメント超大作

どこか日本のロボットアニメや怪獣ものを思わせるアクション作品を、最新のハリウッドクオリティによる3D映像で味わう。「パシフィック・リム」は、私たち日本人にとってじつに奇妙な娯楽作品である。

あるとき太平洋の底から現れた巨大怪獣は、人々と都市に未曽有の被害をもたらした。沿岸諸国は二足歩行の巨大ロボット「イェーガー」を開発して対抗した。当初は優勢だった人類は、しかし登場頻度を縮め、より巨大化する怪獣の前に徐々に押され始めた。無敵のイェーガーに頼れなくなった各国は、巨大な防壁の建設に着手するが……。

主人公はかつてパートナーを戦闘中に失ったイェーガーのパイロット(チャーリー・ハナム)彼はやがて決戦に備え、新たなパートナー候補(菊地凛子)を紹介されるがはたして二人は怪獣を撃退することができるのか。そんな胸躍るロボット・アクションである。

75点
ベテラン監督かと思うような的確な演出

老人映画であり合唱映画である本作は、監督の演出が的確で過剰なお涙ちょうだいがないため素直に感情移入しやすい。

舞台はロンドン。自他ともに認める頑固ジジイのアーサー(テレンス・スタンプ)は、しかし対照的に社交的な妻のマリオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を愛していた。老人合唱団で活躍する彼女を素直に認めることはできなかったが、妻のガンの再発を機に、いやおうなしに価値観の見直しを迫られることになる。

頑固な老人てのは映画の中ではいじりやすいキャラで、本作でも多くのユーモラスな場面に寄与している。合唱サークルでエロ歌詞の歌を歌っているのをみたり、それを若くて美人な音楽教師が提案することに嘆く様子など、それだけで笑いを誘う。

75点
非モテ層に推奨したい良質純愛映画

インターネットでは「女叩き」といって、やけに女性に手厳しい論調が目立つ。男にとって結婚は無駄だとか、一人でいるほうが気楽だというわけだが、書き込んでいるのはモテない中年と、それに引っ張られている知ったかぶりのモテない少年たちといった雰囲気である。

むろん、こうした考え方の背景に長引く不況があることは間違いない。男たちは金がないからそういう気持ちになるのだし、女たちも金がないから専業主婦志向が強まる。男たちはそれを寄生虫だと批判するが、どちらにも余裕がない、生きにくい時代ということであろう。

そんな人々に私は「箱入り息子の恋」を贈りたい。この素晴らしいラブストーリーは、終盤に少々監督の遊び心が過ぎる欠点はあるものの、演出の的確さ、ツボを外さない笑いとそれに伴くキャラクターへの共感によって、かなり出来のいい「非モテ」向け恋愛ムービーとなっている。

75点
純粋な人間はしばしば孤独を味わう

F・スコット・フィッツジェラルドの原作は何度も映画化されているが、「ムーラン・ルージュ」(2001)のバズ・ラーマン監督による3D作品として世に出されるこの2012年版は、豪華絢爛な主人公ギャツビーの表側、その一面を見せるという意味では決定版と言えるだろう。

1922年、中西部から憧れの都会NYに出てきた作家志望のニック(トビー・マグワイア)は、隣家の大富豪ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)になぜか気に入られ、毎夜開かれる評判のパーティーに招かれる。その圧倒的なゴージャスぶりと、誰一人経歴を知らぬ謎めいたジェイに興味を持つニックだったが、やがて彼が知るその物語は、にわかには信じがたいものであった。

いったいギャツビーとはだれなのか、その登場シーンからしてしゃれている。ほとんどギャグかと思うようなレオナルド・ディカプリオ満面のスマイルから始まるその物語は、最近流行の禁酒法時代を舞台にした純愛物語だ。

75点
若者の失業問題と格差の世襲を背景にする骨太さ

イギリスのケン・ローチ監督は、常に労働者階級に寄り添う目線で、彼らが直面するさまざまな社会問題を描いてきたが、その確固たる信念はこのコミカルな娯楽映画「天使の分け前」にさえ生かされている。

スコットランドのグラスゴーですさんだ幼少時代を送ったロビー(ポール・ブラニガン)は、恋人の妊娠が判明した今も暴力事件を起こしてしまう始末。幸い実刑は免れ社会奉仕活動を命じられるが、そこで出会った指導員のハリー(ジョン・ヘンショウ)はウイスキー好きの気のいい中年男だった。理解者としてのハリーと出会い、ロビーは徐々にまっとうな道へと導かれてゆく。

天使の分け前とは、樽の中での熟成中、年に2パーセントほど蒸発するその減り分のことを言う。実にしゃれたネーミングだが、映画を見終わってみればそれ以上の意味、それも極めて重大な作品のテーマがここにこめられていることがわかるはずだ。

75点
寂しい大人たちの友情と愛

現代は、FacebookやLINEのような実名SNSが普及することで、友達の維持管理が容易になった。タイムラインを眺めれば、数百人の友人らと広く浅く交流を続けることが簡単にできるわけで、出会いの多い社交的な若者にとってはこれほどありがたいツールはない。

ただ、友達が多いほどしあわせだと盲信するのは10代くらいなもので、年を取るとこの密着感をうっとうしいと思うようになるのもまた事実。中年以降で、ビジネス用途以外でこれらにハマる人が少ないのは、適切な距離感を知る大人の知恵というものである。

「草原の椅子」は、そんな大人たちの友情を描いたドラマ。こうしたテーマの映画は最近珍しく、しかも本作はとてもよくできている。この映画の中で描かれる「友達づくり」とその距離感の心地よさは、成島出監督(「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011)、「八日目の蝉」(2011))がまっとうな人間観察を行っており、かつしっかりとした人間描写の力を持っているからこそ可能になったものだろう。

75点
キャラクターが面白い

世の中に不満が渦巻くとき、警察を翻弄するクレバーな犯罪者がカリスマ化することがある。世界恐慌時代のボニー&クライド(何度も映画化された)にはじまり、現代日本の遠隔PC操作犯にいたるまで、いつの時代でも変わらない。警察の組織捜査の上をゆく行動力と知能、それは大衆の憂さ晴らしとしては定番中の定番だ。

もっとも捕まってしまえば、知性あふれる若きイケメンハッカーとは程遠い、30超えた小太りのオッサンだったりするのが現実の悲しさだが(いやあれとて真犯人かはわからないが)、映画「脳男」のタイトルロール(題名と同じ役)は違う。

生田斗真演じるこのクールな犯罪者は、痛覚をもたない特殊体質ととてつもない知能の高さによって、小太りオッサンにぶち壊された庶民のささやかな偶像を再び見せてくれる。

75点
古き良きアメリカ映画

洋画が人々の話題に上らなくなってから久しい。なぜ人々は洋画、とくにアメリカ映画を見に行かなくなってしまったのか。字幕を読むのが面倒だからか、日本映画のほうがよくできているからか、それとも韓流の方が好きだからか。

これは、シャレオツな芸能人たちがそろって同じ日のブログにサムゲタンの感想を書くのと同じくらい解明困難な謎であるが、私に言わせれば「アメリカは憧れの国ではなくなった」がファイナルアンサーとなる。

日本人にとって今のヤンキーは、人の家に勝手に上り込んで少年に暴行するとか、電車にのぼって感電するとか、そういうみっともないイメージしかない。自国の労働者を際限なく搾取して、挙句の果てには他国の富も奪い放題、そんな悪印象ばかりの国の文化を楽しめというほうが無理というものだ。映画作りや配給する人たちに罪はないので、恨むならブランディングで失敗し続けている本国のプロパガンダ発信担当部署や、統制のとれない在外軍人たちを恨めというほかない。

75点
新感覚フランス映画

近年フランス映画は、テレビ局の出資比率が増えるとともに娯楽色の強い作品が増えている。昔ながらのアーティスティックなイメージのものは、賞受けする一部監督作品以外は影を潜めているようだが、「プレイ‐獲物」もそうした傾向にそった作品で、万人向けのアクション映画となっている。

出所目前の銀行強盗犯フランク(アルベール・デュポンテル)は、自分の犯したミスにより、愛する妻と言語障害のある娘が凶悪な性犯罪者に狙われてしまう。彼は意を決して脱獄し、妻のもとへと急いだが、優秀な女刑事クレール(アリス・タグリオーニ)が即座に彼を追い始めるのだった。

何かと批判される事の多いフランス映画界の娯楽路線だが、私は批判派に与しない。不況時にゲージツ家が不遇となるのは今に始まったことではない。そんな逆境から生まれてくる貧乏くさいアート系映画も、これまた時代を映す鏡にほかならない。文句を言いたくなる気持ちもわかるが、今は地球上のどこにも余裕などない。

75点
主演女優の力

「ソウル・サーファー」は、思わぬ障害を持つことになったアスリートが逆境から這い上がる、いかにもディズニー好みの感動スポーツドラマだが、それを嫌みなく仕上げることができたのは、ひとえに主演女優の力である。

暖かい家族と暮らすハワイのカウアイ島で、何よりサーフィンを愛する13歳の少女ベサニー(アナソフィア・ロブ)。地方大会で活躍し、プロサーファーへの道が開けたそのとき、彼女はサメに襲われ左腕を失う。誰もがおしまいだと思った最悪の悲劇に、しかし彼女は決してへこたれなかった。

アナソフィア・ロブは、ハリー・ポッターシリーズのエマ・ワトソンら90年代に生まれた若手女優の中でも群を抜く美少女女優。この分野の世界的権威である私の意見なので何より信頼できる話だが、おそらく彼女は日本人がもっとも好むタイプの白人女性の顔立ちをしているのではないか。

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