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2156件中 301~350件 を表示しています。
75点
フロリダ州銃乱射事件は異様なる偶然

無差別殺人事件は、いつどこででも起きる──。そんな警鐘をならした映画「葛城事件」の公開に合わせるかのように、フロリダ州オーランドで全米史上最悪の銃乱射事件がおきた。こういう恐ろしい偶然が起きた映画は、何はともあれ見ておいた方がよい。

金物屋を営む葛城清(三浦友和)は、妻と二人の息子に恵まれがむしゃらに働いてきた。マイホームも建て、理想の家族を得たように見えたが、じっさいは傲慢かつ暴力的に支配しようとする彼自身の問題もあって家族はばらばらであった。出来のいい長男の保(新井浩文)は会社をリストラされ、弟の稔(若葉竜也)は引きこもるばかり。やがて、そんな一家のバランスが崩壊する日がやってくる。

赤堀雅秋監督が主宰する劇団「THE SHAMPOO HAT」の同名劇を映画化したもの。演劇版発表時から数年がたち、その間に起きた秋葉原通り魔事件をはじめ同種の事件をリサーチして取り込むことによって、より本作の洞察は深まった。

75点
リアルウシジマくん

北海道警察において、"日本警察史上最悪の不祥事"を巻き起こした一人の悪徳警官を描いた実話映画「日本で一番悪い奴ら」は、あまり意識されていないが現在進行中の案件だったりする。

柔道で名を挙げた諸星要一(綾野剛)は、北海道警察に入り刑事となった。そこで彼は村井という悪徳刑事から「調書なんか作る暇があったら現場でS(スパイ)を作って点数を稼げ」とのアドバイスを得る。猪突猛進型の体育会系な諸星はそれを真に受け、ほとんど違法な捜査で頭角を現していく。「日本一の刑事になりたい」その強い思いは、やがて易々と最後の一線を越えエスカレートしていくが……。

今年3月、ロシア人の元船員が「北海道警のおとり捜査は違法だった」と訴えて再審が決まったとの報道がなされたのだが、その時このロシア人に違法な密輸拳銃を持ってこさせた警部補、というのが本作の主人公のモデル稲葉圭昭である。

75点
ネタバレ前に見に行こう

海外の映画祭で観客賞など高い評価を得た「アイアムアヒーロー」は、なかなかよく出来ているが楽しむためにはいくつかの注意点があるので、公式サイトを含め他の紹介記事を読む前にこのページを一読しておくとよい。

30代も半ばの鈴木英雄(大泉洋)は、15年前に新人賞をとったもののその後はアシスタント生活で全く目が出ない漫画家。長年つきあって同棲しているガールフレンドはいるが、生活が成り立たない状況から彼女との仲は最悪。最後の望みだった新作の持ち込みも編集者から一蹴され、ついに彼女から部屋を追い出されてしまう。

さえない男が巻き込まれるとんでもない運命。この後の展開は原作未読者にはなかなか予測しがたいものとなる。人によっては仰天することだろう。

75点
さすがに上手いホームドラマ

「母と暮せば」が、引退作にしてもいいというほど魂を入れ込んだ渾身作なら、間もなく公開される「家族はつらいよ」は、いかにも山田洋次監督らしい肩のこらない気軽なホームドラマだ。

平田家のあるじ、周造(橋爪功)は、妻・富子(吉行和子)の誕生日を忘れて飲み歩くなどほとんど傍若無人な毎日を過ごしている。ところが突然、富子から離婚届を出され、判を押すよう頼まれる。本人はもちろん子供たちも激しく狼狽、ささやかな一家の平和な日々に激震が走る。

非常に手堅い、安定の出来映えである。笑いもうまいし「東京家族」(2012)のキャストが再結集した役者たちの演技も的確、演出も筋運びにも破綻はなく、すべてが丁寧でミスもない。もっとここをこうしたら、がひとつも出てこない。ベテランらしい仕事である。

75点
究極のリバタリアニズムかと思いきや

アーノルド・シュワルツネッガーの役者としてのブレイク以来、もっとも低予算の映画である「マギー」は、彼にとって初めてのゾンビ映画でもある。

人間をゾンビ化するウィルスが蔓延するアメリカ。田舎の農場で暮らすウェイド(アーノルド・シュワルツネッガー)の16歳になる娘マギー(アビゲイル・ブレスリン)も、今まさにゾンビにかまれ感染してしまった。決まりでは、感染者はいずれ発症前に隔離所に連れ去られる運命だが、ウェイドはその運命に必死に抗いつつ、最愛の娘を前に自分が何をするべきか激しく葛藤する。

シュワがギャラゼロ円で出演したため低予算映画になったわけだが、じっさい彼が出たおかげでこの地味なドラマに華がうまれた。と同時にアーノルド・シュワルツネッガーにとっては、キャリア最高の演技力を見せつける場となった。

75点
性根の入った反戦映画

2016年のお正月映画は、東宝と東映が安倍時代らしい愛国ムービーで足並みをそろえた。しかし松竹は山田洋次監督の「母と暮せば」で反核反戦テーマを訴える。ただひとり、信念を持って迎え打つ構図になっている。

長崎への原爆投下で息子の浩二(二宮和也)が死んだその3年後、助産婦の伸子(吉永小百合)の前に彼の幽霊が現れる。聞くと浩二が死んで以来、操を立てるように誰とも付き合わない恋人の町子(黒木華)が心配なのだという。奇妙な共同生活を始めたこの母子は、おせっかいにも町子の相手探しにかかわっていくのだが……。

さすがは山田洋次監督、戦争映画をやるとなったら生やさしい描き方はしない。かつて「たそがれ清兵衛」に始まる三部作で時代劇映画というジャンルを一段高みへと引き上げた、その創作魂がこの反戦映画にもいかんなく発揮されている。

75点
ライバルを圧倒する高品質

エア御用プロパガンダの様相を呈するライバル東映の「海難1890」に比べ、「杉原千畝 スギハラチウネ」は見事な出来映えである。それはチェリン・グラック監督が日本育ちとはいえ外国人で、ある程度客観的な視点でこの史実を描くことができたからだろう。完全なる当事者でる日本人が監督したら、もっと湿っぽいお涙ちょうだいになっていたかもしれない。

ソ連との北満鉄道譲渡交渉を成功させた外交官の杉原(唐沢寿明)は、ソ連から危険視され念願のモスクワ勤務がパーになってしまった。さらに、代わりに赴任したリトアニアの日本領事館も第二次世界大戦に巻き込まれ、閉鎖が決定する。その期日が迫る中、領事館前には同盟国のナチスドイツに迫害され、出国のためのビザ発給を望むユダヤ難民が大挙押し寄せる。杉原は政治と人命救助のはざまで、困難な決断を迫られるのだった。

この映画が良かったのは、まず杉原を人権活動家のごとき博愛平和主義者に描いていない点である。

75点
人間味ある庶民派ヒーロー

悪役の人材不足で質量ともに飽和気味のヒーロー軍団アベンジャーズ。このままじゃいかんと感じているのは観客もディズニー側も同じということで、ここ最近はかなり異色のヒーローものを打ち出している。「アントマン」もその一つで、アベンジャーズの世界観の中に存在しながら、その他のマッチョヒーローたちとは正反対の特徴を持つ。

人生に行き詰っていたスコット・ラング(ポール・ラッド)は、とうとう別れた妻のもとで暮らす愛娘の養育費すら工面できない状況に陥っていた。そんなとき、彼のもとにハンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)から魅力的な仕事の話が入る。

この仕事というのが、なんと身長1.5cmにちぢむことができる特殊な全身スーツを着てある場所に行ってくれというもの。侵入を得意とするスコットにとっては朝飯前のものだが、そううまい話があるわけがない。

75点
実話をちょっぴりだけもとにしたいい話

「Dearダニー 君へのうた」は、「届かなかったジョン・レノンからの手紙」というべき実話を基にし

た感動ドラマだが、アル・パチーノ熟練の演技力とジョン・レノンのオリジナルスコアの完璧なハーモ

ニー、そして挿入される新曲の出来のよさによって相当見ごたえのある良作に仕上がった。

75点
すごいインパクトの園子温最高傑作

日本では、人気原作をうまく映画化した作品が余りに少ない。そのため、"原作レイプ"などといった物騒な言葉がしょっちゅう使われている。

園子温監督「リアル鬼ごっこ」も、山田悠介の人気ミステリが原作の実写映画。すでに何度も映画、ドラマ化されている人気原作と言っていいが、この映画が"原作レイプ"と批判されることはまずない。

なぜなら園子温監督は、そもそもこの原作を読んでいないし、最初から読むつもりもなかったからだ。

75点
二度と取れないこれっきりの続編

「アクト・オブ・キリング」(12年)という映画がある。これはとんでもないドキュメンタリー映画で1965年のインドネシアにおける虐殺事件の首謀者たち、すなわち本物の大量虐殺者たちに「再現ビデオを作るから本人役を演じてくれ」と頼みにいくアメリカ人映画監督の挑戦を描いている。

普通ならその映画監督自身が被害者数プラス1に貢献してしまうところだが、この殺人老人たちは自分たちを国家を救った英雄と思いこんでいるので、大喜びでにわか俳優を演じてしまう。

そんなシュールすぎる殺人者たちの姿を描いたあの傑作に、実は姉妹編が存在した。それがこの「ルック・オブ・サイレンス」である。

75点
魂の名言集

噴火警戒レベル1(平常)だったはずの御嶽山が、予測できない水蒸気爆発をおこし、多くの人が犠牲になった。山というのはかように人知を越えた存在で、それは山に関わるものなら誰もが共有する実感であろう。たとえ完璧な準備と全力を尽くしても、運が悪ければ命を失う。それは標高の高さとも無関係で、人は覚悟して挑む意外にない。

「アンナプルナ南壁 7,400mの男たち」は、そんな山の非情さと、しかしそこに関わる人間たちの美しい心を描いたドキュメンタリー。2008年5月に実際に起きた事故と救助活動について追いかけた、感動の物語である。

アンナプルナとは、ヒマラヤ中央に位置する山群の名前で、高い山では8091メートルもある。標高世界10位の高峰だが、難易度だけなら最高峰とすらいわれる山でもある。エベレストを何度も登頂したようなトップクライマーが、登山人生の総仕上げとして挑戦する、そんな山だ。

75点
有機的につながるアクションを堪能

週末だけで13億円という驚異的な興収を記録したこの完結編は、前作「るろうに剣心 京都大火編」がいまだ上映中で、同じシネコンでみられるから相乗効果でグイグイ伸びるだろう。それだけの出来栄えだし、見ごたえも大いにある。

強力な私兵軍団を築いた志々雄真実(藤原竜也)の前に、明治政府は後手後手にまわり劣勢を否めない状況であった。一方、志々雄を唯一止められると期待された緋村剣心(佐藤健)は、危ないところをかつての師匠・比古清十郎(福山雅治)に救われる。彼のもとで療養と再修業に挑む剣心だが、はたして剣術面で圧倒された瀬田宗次郎(神木隆之介)や志々雄に対し、単身反撃できる日はくるのだろうか。

前作の隠れキャラ比古清十郎が前半の見せ場を彩る。演じる福山雅治と剣心役・佐藤健のソードバトルは本作でも最高クラスの迫力を感じさせる見事なもので、あの剣心がパワーで押されまくる姿には、速度で負けた瀬田戦とはまた違ったリアリティが伝わってくる。

75点
現実を予見した社会派エンタテイメント

真っ先に逃げ出した船長をはじめ、運行会社から泣き女こと大統領、メディアや救助担当者まで、そろって信じがたい無責任体質を露呈したセウォル号事故。突発的な大事故が起きると、かかわる人々の本質が見えてくる例といえるわけだが、映画「テロ,ライブ」はその韓国の悪しき国民気質のようなものを、直前に予見していた点で特筆すべき社会派エンターテイメントといえる。

不祥事でテレビ番組からラジオ局に左遷された元国民的アナウンサー、ヨンファ(ハ・ジョンウ)は、今日もやる気のないトーク番組を進行していた。生放送だというのに爆破予告のいたずら電話がかかってきたことも、さらに彼を憂鬱にさせた。ところが直後、局の前の漢江に架かるマポ大橋が爆発炎上。その瞬間からヨンファの脳味噌はフル回転し、この前代未聞のスクープを利用して自らの復帰を図ろうと色めき立つのだった。

生放送中に爆破犯人から電話がかかってくる。ありがちだが魅力的な切り口のリアルシミュレーションドラマ、である。

75点
タイトルとコンセプトがよくないが、中身は絶品

長くレギュラー出演をしていてもいまだに生放送は緊張する。とくにラジオのそれは映像がない分、よりシビアである。テレビならごまかせても、ラジオで数秒間会話が途切れたらそれは即、放送事故となる。ラジオ番組を作るもの、出演するもの全員が心に秘めた、絶対に守らねばならぬ最後の防衛線だ。

DJ・マユミ(室井滋)は、20年以上続いた自身の長寿番組の最終回、その大事な生収録中に一本の非通知電話を受ける。会話の様子のおかしさから、相手の若い女が自殺を決意していると見抜いたマユミは、プロデューサーの制止を振り切り放送中、必死に彼女を説得する。だが彼女は考えを変えようとせず、いまにも電話を切ろうとするのだった。

ラジオ番組作りにかかわる一人としては、まったくもって胃が縮み上がるような展開である。なにしろときは最終回、プロデューサーは聴取率より何より、つつがなく番組を終わらせたい。一方、現場のスタッフとDJは、そんなすべてのしがらみよりも、目の前のリスナー一人を救いたい。

75点
どうしようもない連中にも本物の愛がある

この映画のパンフレットや公式サイトには登場人物の相関図が掲載されているが、その理由は見終わったあとにわかる。後から眺めると、なるほどなと色々考えさせられる。

夫が失踪したバイオレット(メリル・ストリープ)の住む家に、一族が次々と集まってくる。長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は母親の世話を妹アイビーに押し付けながら、夫(ユアン・マクレガー)とうまくいかない負い目を抱えたまま。次女アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はいまだ独身という不遇。能天気な三女カレン(ジュリエット・ルイス)は、しかし誰が見ても怪しげな男を連れてきた。問題だらけの一家の人間関係は、まさに一触即発の様相を呈していた。

初期ガンの化学療法により口内が始終痛み続ける主人公は、とてつもない口の悪さで悪態をつきまくる。アメリカ映画は口の悪いキャラがしょっちゅう出てくるが、それにしてもバイオレットの罵倒っぷりはあまりにスゴくて、観客は圧倒される。もちろん、これは演じる女優の演技力が物凄いわけである。のっけから、メリル・ストリープ劇場というわけだ。

75点
あふれるリバタリアニズム

「ダラス・バイヤーズクラブ」はハイレベルな演出技法と役者の役作りを味わえる映画、すなわち見た目がわかりやすい「いい映画」だが、中身やテーマなど内容も、それに劣らずとんがった傑作である。

1985年のテキサス州ダラス。ロデオカウボーイのロン(マシュー・マコノヒー)は、大好きな酒と女を存分に楽しむ奔放な生き方を楽しんでいた。ところがそれが祟り、医師からHIV感染と余命30日を宣告されショックを受ける。生きのびるため病気について学び始めた彼は、偏見と誤解にみちたこの病気についてと、米国ですら遅れている治療法の現状を知る。病院で知り合った同性愛者のエイズ患者レイヨン(ジャレッド・レトー)の協力を得てロンは、未承認薬を求めメキシコへ向かうのだが……。

まず観客が驚くのは、エイズ患者役マシュー・マコノヒーの激やせ芸である。デニーロアプローチを地でいく彼は、余命30日を宣告された時点ですでに常軌を逸した痩せ方をしているが、そこからさらに病的にやせ細ろえていく。もっともこの役をやるには、これくらいやらないとどうにもならないわけだが、その期待に応えた点は特筆に値する。

75点
若い子のおっぱいに目を奪われていると大ショック

フランソワ・オゾンという監督はいろいろなジャンルを撮りこなす器用さを持つが、とくにミステリをやらせると一流である。「17歳」は彼の最新作で、援助交際にはまりこむ17歳の女の子の心理に迫るドラマだが、これもみようによっては良質なミステリとなっている。

17歳の美しい少女イザベル(マリーヌ・ヴァクト)は、手近な男で初体験を済ませると、何かに取りつかれたように不特定多数の男と体を重ね始める。しかもそれは出会い系サイトでみつけた見知らぬ男たちで、彼女は彼らから対価をとる、すなわち売春をしているのだった。とくに周りに深刻な問題など見当たらないというのに、いったいイザベルはなぜそんなことをするのだろうか……。

オンナも30歳を越えると徐々に単純になってきて扱いやすくなるものだ。もっとも、ひとたび怒らせてしまったら大変恐ろしいのもこの年代の特徴ではあるが、とりあえず犬のようにひれ伏して許しをこえば、たいていのことは受け入れてくれる。そんな慈愛の心こそ、男としてはなかなかどうして可愛いなと感じるものである。

75点
本気で作るバカ映画

「なんちゃって家族」は、ハングオーバー!シリーズの大ヒットに気をよくしたワーナー・ブラザースによる、よく似たコンセプトのコメディー映画である。

ブラックジョークや下品なギャグ満載ながら、手抜きのない脚本というぶっとい屋台骨をもつのがその特徴。ただ笑わせるだけではない、映画を見たなあという満腹感を味あわせる、サービス満点の一品である。

麻薬密売人デヴィッド(ジェイソン・サダイキス)は、近所のバカな童貞青年ケニー(ウィル・ポールター)のトラブルに首を突っ込んだ結果、貴重な売り物の麻薬を奪われ窮地に立たされる。組織から許され生き延びるためには、危険地域メキシコからの密輸という、命がけの仕事をするしかない。途方にくれたデヴィッドだが、ストリッパーで隣人のローズ(ジェニファー・アニストン)らをニセの家族とし、キャンピングカーで国境を突破する作戦を思いつく。

75点
原作読者は騙される

ミステリの映画化は難しい。原作読者にはオチが割れているし、小説という形態独特のトリック、たとえば叙述トリックがメインの場合は映像化それ自体が困難である。それらの障害を乗り越え、原作読者をもうならせる映画にするにはどうするか。

北川景子と深田恭子の初共演作「ルームメイト」は、その命題にきわめて斬新なやり方で一つの回答をたたきだした、大胆きわまり無い一本である。

交通事故で入院した春海(北川景子)は、非正規社員という不安定な立場で退院後の不安を感じてる。そんな折、親切にされた看護師の麗子(深田恭子)と仲良くなり、彼女とルームシェアをすることになる。不自由な生活を支えてくれる麗子に心から感謝していた春海だが、時折別人のような態度をとる彼女に、やがてぬぐい難い違和感を感じ始める。

75点
傑作だが考え方には異論も

イクメンなどという言葉が生まれ、お父さんが積極的に育児にかかわることが珍しくない今の時代。だが、どんな大人だって最初から親だったわけではない。私は、子供たちには早めに知っておいてほしいことだと思っているが、あなたたちが生まれる前は父も母も「親」ではない、ただのおじさんおばさんだったのである。

そんなただのおじさんが「父」になる瞬間、過程を描いた「そして父になる」は、福山雅治にあて書きされたオリジナル脚本。福山がただのおじさんかどうかは別として、いまどきこうした地味な企画を映画の形にできるだけでも、是枝裕和という人物は大した監督である。

勝ち組人生を歩んできたエリートサラリーマンの野々宮(福山雅治)は、6歳になる息子の慶多(二宮慶多)がお受験で優秀さを見せても、優しすぎて覇気のない性格にはどこか不満げだ。そんなとき、病院から驚くべき知らせが入る。なんと慶多は新生児のときに取り違えられた、別の家の子供だという。本当の息子・琉晴(横升火玄)が暮らす斎木(リリー・フランキー)とその妻(真木よう子)と接触した野々宮は、がさつで卑屈な斎木に嫌悪感を催すも、その息子の競争心ある態度に「血」の絆を感じ、惹かれるのだった。

75点
米映画の流行をつかんでいる

「ダークナイト」(2008)のクリストファー・ノーランが製作し「ウォッチメン」(2009)のザック・スナイダー監督する。アメコミ映画に社会派の香りとダークな世界感を採用したこの2人がスーパーマンを実写にする。おのずと骨太な映画を期待してしまうのは当然だ。

クリプトン星で生まれた最後の赤ん坊は、故郷の滅亡を前に父母の手により地球へと送られた。カンザスの心優しい夫婦に拾われた赤ん坊は、やがてクラーク(ヘンリー・カヴィル)の名で成長する。超人的なパワーをどう使うべきか、自分探しの旅に出たクラークが、激しい運命に翻弄されやがて得た解答とは。

「マン・オブ・スティール」は、最近のハリウッドの流行を押さえた作りになっている。例えば攻撃されるのはアメリカ本土。今年日本公開されたホワイトハウス映画2本をはじめ繰り返されているモチーフで、これは自国がテロ攻撃される観客自身の不安を表している。

75点
ほどほどで十分?!

最近はバットマンもスーパーマンもリアル志向だが、そういうブームとて永遠に続くわけではない。たとえば「ザ・タワー 超高層ビル大火災」はそうしたコンセプトに堂々と背を向けたマンガ志向のアクション映画ながら、きわめて新鮮で、むしろ正義を感じさせる出来に仕上がっている。

ソウルの汝矣島に建つ超高層ビル「タワースカイ」。クリスマスイブのイベントに備えるマネージャーのユニ(ソン・イェジン)は、担当の厨房からボヤが出たことに一抹の不安を覚えていた。そんなスタッフの不安をよそに会長(チャ・インピョ)は、複数機のヘリから人工雪を降らせる無謀な計画を強引に遂行しようとしていた。

この映画のコンセプトは明確で、高層ビルの火事でわくわくさせ、恐怖とスリルを楽しませ、最後は人間ドラマで泣かせるというもの。40年か50年前のアメリカ映画でよく見られた、王道のパニック映画といえるだろう。

75点
アメリカ版警察24時

LAPD全面協力、出演者が5ヶ月間も本物警察の特訓を受けて挑んだ「エンド・オブ・ウォッチ」は、リアル警察ムービーの決定版である。

サウス・セントラルはロサンゼルスの中でも指折りの犯罪多発地区。ここで働く警察官テイラー(J・ギレンホール)とザヴァラ(M・ペーニャ)は、白人とメキシコ系という人種の違いを超えて、家族といってもいい強い絆で結ばれていた。長年の経験から図抜けた危険察知能力を持つ彼らは、どんな修羅場でも生き延びてきたが、そんな名コンビの行方に不穏な影が立ち込める。

劇映画だが、主人公が今アメリカで増えているユーチューバーなる撮影マニアということで、そうした自画撮り映像を多用したドキュメンタリータッチとなっている。不審者を負う車載カメラ映像による序盤のアクションシーンの本物感といったらなく、こりゃただ者ではないぞと観客に緊張感を強いる。

75点
TPPの終焉を予言するエンターテイメント超大作

どこか日本のロボットアニメや怪獣ものを思わせるアクション作品を、最新のハリウッドクオリティによる3D映像で味わう。「パシフィック・リム」は、私たち日本人にとってじつに奇妙な娯楽作品である。

あるとき太平洋の底から現れた巨大怪獣は、人々と都市に未曽有の被害をもたらした。沿岸諸国は二足歩行の巨大ロボット「イェーガー」を開発して対抗した。当初は優勢だった人類は、しかし登場頻度を縮め、より巨大化する怪獣の前に徐々に押され始めた。無敵のイェーガーに頼れなくなった各国は、巨大な防壁の建設に着手するが……。

主人公はかつてパートナーを戦闘中に失ったイェーガーのパイロット(チャーリー・ハナム)彼はやがて決戦に備え、新たなパートナー候補(菊地凛子)を紹介されるがはたして二人は怪獣を撃退することができるのか。そんな胸躍るロボット・アクションである。

75点
ベテラン監督かと思うような的確な演出

老人映画であり合唱映画である本作は、監督の演出が的確で過剰なお涙ちょうだいがないため素直に感情移入しやすい。

舞台はロンドン。自他ともに認める頑固ジジイのアーサー(テレンス・スタンプ)は、しかし対照的に社交的な妻のマリオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を愛していた。老人合唱団で活躍する彼女を素直に認めることはできなかったが、妻のガンの再発を機に、いやおうなしに価値観の見直しを迫られることになる。

頑固な老人てのは映画の中ではいじりやすいキャラで、本作でも多くのユーモラスな場面に寄与している。合唱サークルでエロ歌詞の歌を歌っているのをみたり、それを若くて美人な音楽教師が提案することに嘆く様子など、それだけで笑いを誘う。

75点
非モテ層に推奨したい良質純愛映画

インターネットでは「女叩き」といって、やけに女性に手厳しい論調が目立つ。男にとって結婚は無駄だとか、一人でいるほうが気楽だというわけだが、書き込んでいるのはモテない中年と、それに引っ張られている知ったかぶりのモテない少年たちといった雰囲気である。

むろん、こうした考え方の背景に長引く不況があることは間違いない。男たちは金がないからそういう気持ちになるのだし、女たちも金がないから専業主婦志向が強まる。男たちはそれを寄生虫だと批判するが、どちらにも余裕がない、生きにくい時代ということであろう。

そんな人々に私は「箱入り息子の恋」を贈りたい。この素晴らしいラブストーリーは、終盤に少々監督の遊び心が過ぎる欠点はあるものの、演出の的確さ、ツボを外さない笑いとそれに伴くキャラクターへの共感によって、かなり出来のいい「非モテ」向け恋愛ムービーとなっている。

75点
純粋な人間はしばしば孤独を味わう

F・スコット・フィッツジェラルドの原作は何度も映画化されているが、「ムーラン・ルージュ」(2001)のバズ・ラーマン監督による3D作品として世に出されるこの2012年版は、豪華絢爛な主人公ギャツビーの表側、その一面を見せるという意味では決定版と言えるだろう。

1922年、中西部から憧れの都会NYに出てきた作家志望のニック(トビー・マグワイア)は、隣家の大富豪ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)になぜか気に入られ、毎夜開かれる評判のパーティーに招かれる。その圧倒的なゴージャスぶりと、誰一人経歴を知らぬ謎めいたジェイに興味を持つニックだったが、やがて彼が知るその物語は、にわかには信じがたいものであった。

いったいギャツビーとはだれなのか、その登場シーンからしてしゃれている。ほとんどギャグかと思うようなレオナルド・ディカプリオ満面のスマイルから始まるその物語は、最近流行の禁酒法時代を舞台にした純愛物語だ。

75点
若者の失業問題と格差の世襲を背景にする骨太さ

イギリスのケン・ローチ監督は、常に労働者階級に寄り添う目線で、彼らが直面するさまざまな社会問題を描いてきたが、その確固たる信念はこのコミカルな娯楽映画「天使の分け前」にさえ生かされている。

スコットランドのグラスゴーですさんだ幼少時代を送ったロビー(ポール・ブラニガン)は、恋人の妊娠が判明した今も暴力事件を起こしてしまう始末。幸い実刑は免れ社会奉仕活動を命じられるが、そこで出会った指導員のハリー(ジョン・ヘンショウ)はウイスキー好きの気のいい中年男だった。理解者としてのハリーと出会い、ロビーは徐々にまっとうな道へと導かれてゆく。

天使の分け前とは、樽の中での熟成中、年に2パーセントほど蒸発するその減り分のことを言う。実にしゃれたネーミングだが、映画を見終わってみればそれ以上の意味、それも極めて重大な作品のテーマがここにこめられていることがわかるはずだ。

75点
寂しい大人たちの友情と愛

現代は、FacebookやLINEのような実名SNSが普及することで、友達の維持管理が容易になった。タイムラインを眺めれば、数百人の友人らと広く浅く交流を続けることが簡単にできるわけで、出会いの多い社交的な若者にとってはこれほどありがたいツールはない。

ただ、友達が多いほどしあわせだと盲信するのは10代くらいなもので、年を取るとこの密着感をうっとうしいと思うようになるのもまた事実。中年以降で、ビジネス用途以外でこれらにハマる人が少ないのは、適切な距離感を知る大人の知恵というものである。

「草原の椅子」は、そんな大人たちの友情を描いたドラマ。こうしたテーマの映画は最近珍しく、しかも本作はとてもよくできている。この映画の中で描かれる「友達づくり」とその距離感の心地よさは、成島出監督(「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011)、「八日目の蝉」(2011))がまっとうな人間観察を行っており、かつしっかりとした人間描写の力を持っているからこそ可能になったものだろう。

75点
キャラクターが面白い

世の中に不満が渦巻くとき、警察を翻弄するクレバーな犯罪者がカリスマ化することがある。世界恐慌時代のボニー&クライド(何度も映画化された)にはじまり、現代日本の遠隔PC操作犯にいたるまで、いつの時代でも変わらない。警察の組織捜査の上をゆく行動力と知能、それは大衆の憂さ晴らしとしては定番中の定番だ。

もっとも捕まってしまえば、知性あふれる若きイケメンハッカーとは程遠い、30超えた小太りのオッサンだったりするのが現実の悲しさだが(いやあれとて真犯人かはわからないが)、映画「脳男」のタイトルロール(題名と同じ役)は違う。

生田斗真演じるこのクールな犯罪者は、痛覚をもたない特殊体質ととてつもない知能の高さによって、小太りオッサンにぶち壊された庶民のささやかな偶像を再び見せてくれる。

75点
古き良きアメリカ映画

洋画が人々の話題に上らなくなってから久しい。なぜ人々は洋画、とくにアメリカ映画を見に行かなくなってしまったのか。字幕を読むのが面倒だからか、日本映画のほうがよくできているからか、それとも韓流の方が好きだからか。

これは、シャレオツな芸能人たちがそろって同じ日のブログにサムゲタンの感想を書くのと同じくらい解明困難な謎であるが、私に言わせれば「アメリカは憧れの国ではなくなった」がファイナルアンサーとなる。

日本人にとって今のヤンキーは、人の家に勝手に上り込んで少年に暴行するとか、電車にのぼって感電するとか、そういうみっともないイメージしかない。自国の労働者を際限なく搾取して、挙句の果てには他国の富も奪い放題、そんな悪印象ばかりの国の文化を楽しめというほうが無理というものだ。映画作りや配給する人たちに罪はないので、恨むならブランディングで失敗し続けている本国のプロパガンダ発信担当部署や、統制のとれない在外軍人たちを恨めというほかない。

75点
新感覚フランス映画

近年フランス映画は、テレビ局の出資比率が増えるとともに娯楽色の強い作品が増えている。昔ながらのアーティスティックなイメージのものは、賞受けする一部監督作品以外は影を潜めているようだが、「プレイ‐獲物」もそうした傾向にそった作品で、万人向けのアクション映画となっている。

出所目前の銀行強盗犯フランク(アルベール・デュポンテル)は、自分の犯したミスにより、愛する妻と言語障害のある娘が凶悪な性犯罪者に狙われてしまう。彼は意を決して脱獄し、妻のもとへと急いだが、優秀な女刑事クレール(アリス・タグリオーニ)が即座に彼を追い始めるのだった。

何かと批判される事の多いフランス映画界の娯楽路線だが、私は批判派に与しない。不況時にゲージツ家が不遇となるのは今に始まったことではない。そんな逆境から生まれてくる貧乏くさいアート系映画も、これまた時代を映す鏡にほかならない。文句を言いたくなる気持ちもわかるが、今は地球上のどこにも余裕などない。

75点
主演女優の力

「ソウル・サーファー」は、思わぬ障害を持つことになったアスリートが逆境から這い上がる、いかにもディズニー好みの感動スポーツドラマだが、それを嫌みなく仕上げることができたのは、ひとえに主演女優の力である。

暖かい家族と暮らすハワイのカウアイ島で、何よりサーフィンを愛する13歳の少女ベサニー(アナソフィア・ロブ)。地方大会で活躍し、プロサーファーへの道が開けたそのとき、彼女はサメに襲われ左腕を失う。誰もがおしまいだと思った最悪の悲劇に、しかし彼女は決してへこたれなかった。

アナソフィア・ロブは、ハリー・ポッターシリーズのエマ・ワトソンら90年代に生まれた若手女優の中でも群を抜く美少女女優。この分野の世界的権威である私の意見なので何より信頼できる話だが、おそらく彼女は日本人がもっとも好むタイプの白人女性の顔立ちをしているのではないか。

75点
≪マイケル・ムーアも絶賛≫

マイケル・ムーアが絶賛したインディーズ系ホラーということで、なんとなく予想していたが、なるほど『ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春』は、現代の若者が抱える諸問題をうまく象徴したゾンビホラーであった。

世界にゾンビがはびこる時代。オタク青年マイク(マイケル・マッキディ)は、死んではいるがなぜかゾンビになりきれぬ半ゾンビとして目覚めた。人間時代の記憶も生活習慣もそのままな彼は、ポケットの中に恋人に渡し損ねた指輪を見つける。直後に出会った同じ半ゾンビのブレント(ロス・キッダー)、なぜかなついてきたゾンビの大男チーズ(マーカス・テイラー)と3人で、恋人に指輪を渡す旅に出るのだが……。

この映画の設定の特殊なところは、肉体的にはゾンビの主人公が、事実上は人間そのものという点にある。死肉も食わないし人間も襲わない。人を襲いたくてウズウズすることもない。死んではいるが、中身は完全に人間である。

75点
≪あらゆる用途に使える万能選手≫

古いが新しい映画「アーティスト」は、もしこの世に出るのが数年ずれていたならは、これほど評価されることもなく、とくに米国では忘れさられていた可能性がある。

1920年のハリウッド。トーキー移行期の中、サイレント映画のスターであるジョージ(ジャン・デュジャルダン)は時代に取り残されつつあった。一方、新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)はトーキーの波に乗りスター街道を駆け上っていくが、落ちてゆくジョージが常に気がかりであった。彼女はエキストラ女優時代、ジョージに親切にしてもらった恩を忘れていなかったのだ。

現代でもサイレント映画は作られている、または企画されているが、そのほとんどは陽の目を見ない。なぜなら世のニーズに合致していないからであり、同様に「アーティスト」も当初は資金集めに苦しんだ。しかしプロデューサーが自腹を切って企画を進めた結果、あれよあれよと賞レースの主役へと躍り出て、最後は米アカデミー賞を5部門受賞する栄誉を勝ち取った。

75点
≪ボクシング映画に外れなし、か≫

日本はロボット先進国である。Hondaには二足歩行ロボットのASIMOがいるし、ソニーはかわいいアイボを開発した。財務省には野田首相がいるし、アメリカには日本国財務省がいる。どのロボットも世界に並ぶものなしの高性能なものばかりだ。

だからディズニーのロボットムービー『リアル・スティール』が、劇中でやたらと日本推しをしているのも、当然といえば当然である。

2020年のアメリカでは人間による格闘技はすたれ、代わりに人型ロボット同士が戦う派手なロボットボクシングが大人気。元ボクサーのチャーリー(ヒュー・ジャックマン)は、ポンコツロボットを操縦して主にアンダーグラウンドの試合で日銭を稼ぐ日々を過ごしていたが、家賃さえろくに支払えぬ始末。そんな彼の前に、11年ほど前に捨てた妻が死んだ知らせとともに、彼女に押し付けたはずの息子マックス(ダコタ・ゴヨ)が現れる。

75点
≪TVドラマの映画化だが、ちゃんと映画らしさを持っている≫

『セカンドバージン』の記事で明らかにした問題点について、『モテキ』は相当頑張ってその高いハードルを越えてきた。

そもそもテレビドラマの映画版というものは、今まで無料でみられた作品にわざわざ1800円もの入場料を観客から直接とろうというものだ。

だから監督は、テレビ時代とは違って(番組のスポンサーではなく)観客を喜ばせるものを作らなくてはならない。お金を払うお客さんの感覚というのは鋭敏なもので、自分たち以外のスポンサーに気兼ねするような空気を感じれば一瞬でしらける。『セカンドバージン』はその点が下手だったが、『モテキ』は抜群に上手かった。だから私は高得点を与えるのである。なおこの段落の文章について、長澤まさみが見事なエロ演技を見せていたから誉めているわけでは決してない事を最初に申し上げておく。

75点
≪フランスらしい、純愛が原動力となるサスペンス≫

『この愛のために撃て』は、いろいろな意味でフランス的で、その反対に日本人からみると意外というか、感心する作品である。単純明快な痛快アクションではあるが、その意味で大いにすすめたくなる佳作だ。

パリ市内の病院で看護助手を務めるサミュエル(ジル・ルルーシュ)は、臨月の妻(エレナ・アナヤ)を自宅に押し入ってきた何者かに誘拐される。彼らの要求は、自分の病院に入院しているある男(ロシュディ・ゼム)の身柄。警察が厳重に警備するその入院患者を、看護助手の立場をつかってうまく院外に運び出したサミュエルだが、その瞬間彼らは組織と警察の双方から追われる身となってしまう。はたしてサミュエルは、愛する妻を取り戻すことができるのだろうか。

息つく暇もないハイスピードなアクションを、誰もが共感できるキャラクターの魅力で見せるフランス製サスペンス。

75点
≪亀有映画史上最高傑作≫

「こち亀」は原作漫画からアニメーション、舞台版やら実写ドラマと、アニメ版開始時に目立った原作原理主義者がすっかり時代遅れになるほどに、あちこちに勢力を広げている。

『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜』は、香取慎吾主演の、これまた賛否両論が渦巻いたテレビドラマ版の映画化。安直すぎるパロディ邦題から、どうせばか騒ぎをするだけのくだらないギャグ映画だろうとの先入観を持ちがちだが、意外や意外。批評家たちが絶賛するほどの、まっとうな感動ドラマになっている。

両津勘吉(香取慎吾)は、小学生時代の初恋の相手、桃子(深田恭子)と再開する。旅芸人一座の座長として浅草にきていた彼女には、かつての桃子を思わせる愛らしい娘ユイ(川島鈴遥)がおり、両津はすぐに打ち解ける。シングルマザーの桃子に再び恋心をつのらせる両津だったが、そんなときユイが何者かに誘拐される事件が起きる。

75点
≪暴れん坊将軍がライダーと共同戦線を張る超絶純正コラボレーション≫

仮面ライダー40周年イヤーということで、さすがに今年のライダー映画は気合が入っている。全ライダーがイナゴのように登場する前作に引き続き、早くも強烈な最新作が登場した。『劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』は誰も予想しなかったコラボレーションが魅力の話題作である。

欧州の森の中で、失われたメダルを発掘していた鴻上会長は、危険すぎる錬金術師ガラを甦らせてしまう。その強大な力により各地で大異変が発生、オーズこと映司(渡部秀)やアンク(三浦涼介)がいる東京・新宿副都心周辺も、そっくりそのまま江戸時代と入れ替わってしまう。

相変わらずちょっとヘタレで優しすぎるライダー、オーズであるが、そのキャラクターと今回コラボする相手は実に相性がいい。その相手とは、同じ東映が誇る江戸時代最強キャラ、暴れん坊将軍である。

75点
≪食事前に見たい、本格山岳映画≫

原発の汚染水も東電のボーナスもまったく減る気配がない今日この頃、お前らの使う電気だけは減らせとの理不尽な要求に、我々小市民は平伏するほかない状況である。

とくに今の時期は梅雨をひかえて蒸し暑い日もあったりして、思わずエアコンのスイッチに手が伸びる。だが、せめて見て涼しくなれる映画があったなら、多少なりとも節電に貢献できるのではないだろうか。

そんな数時間の避暑効果を生み出してくれそうなのが『岳 -ガク-』。東宝が送る、このGWの目玉的エンタテイメント大作である。

75点
≪中年夫婦が楽しめる気軽なミステリードラマ≫

空撮最強の町ヴェネチアを舞台にした『ツーリスト』は、タイトルを見ればお気軽な旅情サスペンスだろうと誰もが思う。つまり日本でいえば、湯けむりミステリ群馬編〜混浴女子大生連続殺人事件、のようなもの。そして、じっさいそんな程度の内容だろうと思いつつ見ると、これが案外満足できる作品である。

警察から監視されている謎の美女エリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)。当局は彼女をマークすることで、その恋人で重要指名手配犯アレクサンダーを逮捕しようと一大捜査網を敷いていたのだ。むろん、アレクサンダーもそれは承知。捜査をかく乱するため、彼はエリーズにヴェネチア行きの列車に乗り、その中で自分に似た体形の男を探して同行しろとのメッセージを託した。エリーズはそれを忠実に実行、車内で平凡な数学教師のフランク(ジョニー・デップ)を逆ナン、みごと自分のホテルに誘い込むことに成功する。

さて、警察はアレクサンダーの素顔を知らないので、この展開に色めき立つ。この田舎教師がアレクサンダーか? そんな風に混乱し始める。はたして本物アレクサンダーの狙いはなんなのか。そして巻き込まれたツーリスト、ジョニー・デップ先生の運命やいかに。そんな、ヒッチコック風の古き良きサスペンスドラマだ。

75点
≪アカデミー賞受賞も当然≫

「英国王のスピーチ」は、「ソーシャル・ネットワーク」との一騎打ちを制してアカデミー賞の主要部門を独占した話題作だ。日本では早くも終わコン臭がぷんぷん漂うFacebookの時代遅れ感に比べれば、数十年前の史実を描きながらもきわめて現代的な比喩を持つ本作がアカデミー賞を受賞したのは当然であろう。私としても見終わった瞬間、出来の良しあしとは関係なく「ああ、今年はこれだな」と確信を持った作品である。

1930年代のイギリス。国王ジョージ5世の二男アルバート(のちのジョージ6世 演じるのはコリン・ファース)は、吃音症のため満足にスピーチ一つできなかった。彼は、社交的で献身的な妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)のすすめで、オーストラリア出身の平民な上に型破りな自称専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)の治療を受けることに。徐々に効果も表れ、王族相手にまったく臆しないライオネルとアルバートは、やがて友情で結ばれてゆく。そんな折、即位したばかりの兄エドワード8世(ガイ・ピアース)が、全国民を驚かせる決断をする。

英国俳優界の芸達者勢揃いの、見ごたえある歴史ドラマ。この手のジャンルにありがちな退屈さや、歴史知識不足の観客が受けがちな疎外感を感じることはまったくない。非常にわかりやすく、華やかなこの時代の王室メンバーの魅力を感じさせてくれるとともに、主役二人の身分を超えた名タッグぶりに通快感を味わえる、万人向けの一品である。

75点
≪おとうさんの仕事はぎんこうごうとうです≫

盟友マット・デイモンがスター街道まっしぐらなのに比べ、最近ちと目立たないベン・アフレック。気の毒にも、評価の高かった監督第一作目も日本ではDVDスルーの憂き目を見た。しかしこの監督二作目「ザ・タウン」の出来の良さを知ってもらえれば、日本のファンにも再注目されるのではと思う。

全米有数の強盗多発地区であるボストンのチャールズタウン。ここで育ったダグ(ベン・アフレック)は、華々しい青春時代を送るがいまでは結局、弟分のジェム(ジェレミー・レナー)らと「家業」を継いでいた。鮮やかなその手口は仲間から厚い信頼を置かれていたが、あるとき逃亡のためやむなくとった人質が、同じ町出身の女(レベッカ・ホール)だとわかり、彼らは正体を知られたのではないかと狼狽する。

もっともユニークで目立つ本作のポイントは、舞台となる街についてだろう。ボストンのチャールズタウン。この町は、あの犯罪無法国家アメリカの中でも、強盗がもっとも多い街として知られる。住民は先祖代々銀行強盗が生業で、休日ともなれば友人家族と誘い合って、川向こうの景気のいい街に出かけて覆面強盗をして帰ってくる。銀行強盗が地場産業とは、ガイトナー財務長官もびっくりである。

75点
≪日本人のアイデンティティー的な題材だが、どこか米映画的≫

日本人はマンネリ大好きな民族である。ウルトラマンはカラータイマーが鳴るまでプロレスでいうセール(客を盛り上げるため攻撃を受け続けること)状態をやめようとしないし、水戸黄門もしかり、だ。規定通りの結末が待っているから、安心してみていられる。

年末になると、そんなマンネリリストに忠臣蔵が登場してくる。マニフェストにマの字も書いてない消費税アップを言われても、非実在青少年漫画を規制されても、お上の言うことならばと我慢し続ける忍耐深い民族にとっては、法を破ってでも筋を通す四十七士は憧憬の存在。そこにシビれる憧れるゥの世界だ。当然、彼らの物語は最高のうっぷん晴らしとなる。

とはいえ『最後の忠臣蔵』は、いわゆる史実の忠臣蔵とはかなり違う。あの話の後日談を描いた、ユニークなフィクション作品である。

75点
≪原作ファンにすすめたい≫

『ノルウェイの森』がブームとなった80年代後半は、赤と緑の二冊組のハードカバーを持って歩いているだけで、なんとなく教養があるふりができた古き良きバブル時代である。普通の男女がブンガク作品をデートの話題にするようになったほどの、歴史に残る社会現象であった。

私のような恥ずかしがり屋の純情ボーイにとっては、この作品は下心を隠して女の子とエロ話をするための材料のようなもの。だからこそ異常なまでの大ベストセラーになったのだと、いまだに私は固く信じている。

昭和40年代。ワタナベ(松山ケンイチ)と親友のキズキ(高良健吾)、キズキの彼女である直子(菊地凛子)は3人でいつも仲良く過ごしていた。だがキズキが謎の自殺を遂げ、残された二人は深く傷つく。ワタナベは反動で大学では女遊びに走り、直子は療養のため入院した。直子への思いを忘れられぬワタナベだったが、やがて大学で爛漫な少女、緑(水原希子)と出会う。

75点
≪超ハイクォリティ胸きゅん全部入りムービー≫

映画の上映前、予告編が始まるころに館内の照明は落ちる。そんな時間に我慢できず抱き合ってキスしはじめるようなアツアツのアベック(死語)にとって、『エクリプス/トワイライト・サーガ』はいうまでもなく最強の1本である。

なお私の場合、この上映館に一人で来ているおじさんの姿を後部座席に発見したが、たんにおじさんというだけだというのに、彼は館内で猛烈な違和感を発していた。もはや同業者でなければ説明がつかない、そんな異様な空気である。この映画に出かけようというおひとりさま男子は、くれぐれも覚悟が必要であろう。ちなみに人のことをあれこれ言う前にお前はどうなんだというクレームを、本サイトは一切受け付けていない。

高校卒業を前に、愛するエドワードと結ばれるためヴァンパイアになろうと考えているベラ(クリステン・スチュワート)。その意見に賛成しないエドワード(ロバート・パティンソン)。相変わらず前に進めない二人をよそに、シアトルでは謎の連続猟奇殺人事件が起こっていた。カイル家では、これを人間から変化したばかりの獰猛なヴァンパイア「ニューボーン」軍団によるものだと認識。ベラを守るため団結するが、戦力は圧倒的に不足していた……。

75点
≪愛国者たちの潔い最後を描くせつない時代劇≫

先日、尖閣諸島に色白な船長がやってきて、喧嘩上等とばかりに海保船に特攻を仕掛けてきた。こうした事態に対し、政治家はどう対処すべきなのか。穏健にコトナカレ主義に徹するのか、3倍返しじゃコラァと受けて立つのか。

どちらが正しいのかは、その時点では誰にもわからない。未来から振り返った時、ああすべきだったかもしれない、とわかる程度のものである。たとえその時はおかしな選択だったとしても、それが後々生きてくるなんてケースは腐るほどある。政治とは、常に謙虚な目で分析していきたいものである。

そんなわけで、歴史上の事件を描くとき、片方を一方的な悪として描くようなドラマは安っぽくなりがちだ。謙虚さを捨ててまで片方に肩入れする描き方は、それはそれで熱いものがあるが、常にこのチープ感が付きまとうリスクと隣り合わせとなる。

75点
≪黒幕はCIA?≫

『THE LAST MESSAGE 海猿』をみると、日本人も日本映画界も相変らず脳みその中は平和だなと感心する。

玄界灘に浮かぶ大規模天然ガスプラント「レガリア」で火災事故が発生した。海上保安庁の潜水士、仙崎(伊藤英明)は、後輩の服部(三浦翔平)ら仲間と共にこの困難な現場での救助作業を進めていた。ところが巨大台風が接近、ヘリさえ飛べぬ悪天候となり、彼らは数名の生存者とともにレガリアに閉じ込められてしまう。

レガリアの造形は映画にふさわしい大迫力で、そこでの救助作業はテレビドラマではまずできない大スペクタクルだ。巨大なセットに大量の水を流す撮影は、さぞ(予算もふくめて)苦労の多い現場だったろうと想像がつく。こうしたスケール感のある大作が当たり前のように公開される邦画隆盛時代が到来したことを、まずは喜びたい。

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