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2156件中 201~250件 を表示しています。
80点
ちゃんと笑わせてくれる

人気漫画の実写映画化はだいたい文句を言われ、炎上するのが定番の展開といえる。それでもワーナー・ブラザースは今年だけで何本もそんな企画をやろうという。どれも大ヒットコミックで、神をも恐れぬ攻めっぷりである。とりあえずはその一つ、空知英秋の同名大ヒットコミックの実写化「銀魂」の出来を語るとしよう。

天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人との戦いに敗れ、傀儡政権となった江戸幕府。町には一足飛びに進んだ文明とともに天人があふれ、奇妙な共存生活を送っていた。かつて彼らと激しい戦いを繰り広げた侍、坂田銀時(小栗旬)はいまは便利屋を営んでいるが、あるとき旧友、桂小太郎(岡田将生)の失踪事件を追うことになる。

いきなりテンションの高いパロディから始まるギャグ映画なので、観客にはある意味覚悟が必要である。「これは「変態仮面」を撮った監督が、豪華キャストを使って最初っから無茶苦茶飛ばしまくるシュールギャグ映画なのだ」としっかり認識し、覚悟した上で鑑賞する。これが大事である。

80点
勝ち組の女性客を気持ちよくさせる計算高いロマコメ

邦題も、野外フェスで「運命の人」と出会う冒頭のコメディシーンも、日本の某作品の二番煎じのような気がするが、それはともかくブリジット・ジョーンズ、なんと12年ぶりの続編の登場である。

40を超えてもいまだ独身彼氏ナシのブリジット(レニー・ゼルウィガー)。仕事はそこそこ順調だがこれではまずいと、悪友仲間と出かけた音楽フェスで、素敵な男性ジャック(パトリック・デンプシー)と思わずヤってしまう。しかも元カレのマーク(コリン・ファース)ともムードに流されしてしまい……これが、ブリジット史上最大のトラブルの引き金となってしまう。

「どっちの子供かわかんない!」10代の女の子ならまだしも、40過ぎの独身おばさんが遭遇するとギャグにしかならないシチュエーションである。こんなものはだれが見ても、どっちの子供だろうが良かったじゃねーかでおしまい。深刻さがないのが救いで、よって本作の笑える度は非常に高い。コメディとしては優秀である。

80点
タイトルが怖い

「ザ・ギフト」は、同種のストーカー型サスペンスのひな形を踏襲するかと見せかけて、なかなかしゃれた(適切な表現ではないかもしれないがネタバレを避けるためあえてこう書く)展開で驚かせる佳作である。

シカゴからカリフォルニアの郊外に越してきたサイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)。経済的に成功し、かつ仲のいい夫婦である二人は、ある理由から夫サイモンの故郷であるこの地に戻ってきたのであった。そしてまだ引っ越し作業も終わっていないとき、買い物先でサイモンは高校時代の同級生ゴード(ジョエル・エドガートン)と25年ぶりに再会する。ところがその日からことあるごとにゴードから住所も教えていない新居へ贈り物が届くようになり、ロビンともども困惑する。

再会時は大人らしく友好的に振舞ったサイモンだが、昔から別にゴードとは仲良いわけではなく、それどころかあまり好きではなかったことが徐々に観客にもロビンにもわかってくる。ただ最初はそんなことは知らないから、ロビンは序盤、急にやってきたゴードにも満面の笑顔で応対する。

80点
テレビ局制作映画だからこその強みをみせた

テレビ局による映画製作は、映画マニアからは何かと批判されることが少なくない。だが、長年テレビ業界での経験がある君塚良一監督のフジテレビ製作映画「グッドモーニングショー」は、逆にテレビをよく知る彼らが作ったからこそこれほど面白くなった、珍しい成功例と言えるだろう。

朝のワイドショーのキャスター澄田真吾(中井貴一)は、起き掛けに同居する息子からデキ婚の意思を伝えられて狼狽する。おまけに共演する女子アナの圭子(長澤まさみ)からは、不倫関係を生放送中に公表するなどと一方的に通告されてしまう。散々な一日になりそうだと思った彼だが、本当のド不幸は放送開始後に待ち構えていた。

序盤はキャスターである主人公が朝の3時に目覚めてから本番までを、ディテール豊かに描く完全なお仕事ムービー。もしあなたがテレビ関係者なら、きっと息子に見せたくなるであろう。職場の格好よさを見事に描いた映像となっている。

80点
観る前にテンションを上げないと

世界中でR指定映画としての興行記録を塗り替えている「デッドプール」を徹底的に楽しむには、酒でも飲んでテンションをアゲてからの方がよい。でないと私が見た試写室のように、皆でそろって沈黙することになりかねない。

元傭兵のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、今は不死身のデッドプールとしてお気楽に悪党をぶちのめしている。だが彼はヒーローを自覚しておらず、単にある男を探し追いかけているだけなのであった。

間違っても子供に見せてはいけない、大人のためだけのアメコミ映画である。戦いの途中でおっぱいポロリはあるわ、人体爆裂グロシーンは多発するわとそのつきぬけぶりはスカウトに来たX-MENもビックリである。これが同じ世界観というのだから仰天企画といってよい。

80点
前作ほどの完成度は望めないがなかなかの佳作

堂々たる傑作にして完結していた前作をもつ続編だけに、どうせこの程度だろうとの低めの先入観をもって見る人が多いと想像する。だが「ファインディング・ドリー」はそれをいい意味で裏切り、予想外の感動を与えてくるのだから大したものだ。

グレート・バリア・リーフで、友人たちと何不自由なく暮らす忘れんぼうのドリー。ある時彼女は幸せそうな親子であるマーリンとニモをみて、自分にも家族がいたはずだと考える。そのときかすかに戻った幼いころの記憶。それだけを頼りに、ドリーはマーリンの制止も聞かず大海原へと飛び出してゆく。家族をさがす無謀なドリーの旅は、はたしてどんな結末を迎えるのだろうか。

前作「ファインディング・ニモ」を私は、二人の障害者を特別扱いしていたマーリンが、結局彼らに救われる話だとあちこちで解説してきた。狭い見方で他人を判断することの愚かさと、弱者への理解をエンタメの中で見せる優れた映画作品だと評価してきた。

80点
演技力を堪能できる数少ないドラマ

スペイン映画「瞳の奥の秘密」(09年)のハリウッド版リメイクである本作は、ストーリーじたいの面白さも去ることながら、役者の演技力というものを純粋に堪能できる数少ない逸品である。

FBI捜査官のレイ(キウェテル・イジョフォー)は、ある殺人事件現場で、被害者が相棒のジェス(ジュリア・ロバーツ)の愛娘であることに気づき愕然とする。ひそかに思いを寄せるエリート検事補クレア(ニコール・キッドマン)の協力も受け、容疑者を挙げたまではよかったが、なぜか上層部は男を開放するよう圧力をかけてくる。

ニコールとジュリアは、そのキャリアと人気を考えると意外な気もするが、これがはじめての共演となる。そんなにギャラが高かったのかと皮肉の一つも言いたくなるほど、もっと早く見たかったといいたくなるほど、期待にたがわぬすばらしいパフォーマンスを見せている。

80点
資料的価値は点数以上

フェイスブックなどのSNSや、ウェブメールなどインターネットを利用していない人は、いまやほとんどいないだろう。少なくともこの記事を読んでいるすべての人はネットを使いこなしているわけだが、そんな皆さんがやりとりしているそうした情報は、すべてアメリカが(無断で)見張っている。

これは、物的証拠とともにエドワード・スノーデンが暴露した内部告発である。

これまでエシュロンという盗聴システムはよく知られていたが、彼が明らかにしたPRISMの性能と衝撃はその比ではなく、最近では「エクス・マキナ」などのフィクション映画の中でも言及されていたりする。

80点
妙にリアリティのあるAIもの

「エクス・マキナ」は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」など並みいる超大作を押し退けてアカデミー視覚効果賞を受賞したわけだが、なるほどB級な筋書きに超A級の見た目をくっつけたようなユニークなSF映画である。

検索エンジン最大手企業の社員ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、大富豪で知られる創業者社長のネイサン(オスカー・アイザック)の山荘に招かれる。この施設で彼は、なんとAI(人工知能)を搭載した精巧な女性ロボット・エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)を完成させていた。若き優秀なプログラマーであるケイレブは、彼女との会話を通じて最終チェックをするため、全社員から抜擢されたのであった。

あれだけの機密を指紋や網膜認証のひとつもなく、ローテクなカードキーだけで守っているなど、突っ込みたい部分は多々ある。しかし、脱ぐべきときに脱ぐべき人がちゃんとすべてを見せてくれるつくりなので、多少のあらは許すことにする。

80点
泣ける恐竜ファンタジー

ピクサー最新作「アーロと少年」は、「今回は映像で見せますよ」と宣言するがごとく、まるで実写のようなすさまじいクオリティの水面ショットからはじまる。

6500万年前、生物を滅ぼすはずだった隕石が逸れたもうひとつの地球。首長竜のアーロは体が小さく、兄弟たちの中で劣等感を感じていた。最近、一家の食糧庫を荒らす謎の小さい生き物がおり、アーロはその捕獲を狙っていたが失敗する。逃げ出したその奇妙な生き物を追いかけるうち、アーロと父親の身に悲劇が起きる。

映像派宣言をしたとおり、この映画のクライマックスには一切の台詞がない。そして、それが強烈な涙腺刺激効果を生み出し、観客席のほとんどが落涙確実な出来となっている。まったくもって大した自信だし、実力である。これが子供映画というのだからハリウッドのレベルは圧倒的である。

80点
懐かしゲームが襲ってくる

「ピクセル」の原案というべき2010年公開の短編ムービーは、ゲームキャラの攻撃を受けると爆発する代わりにキューブ上にばらけてしまうアイデアで意表を突いた。日本のアニメ映画「ガリバーの宇宙旅行」(65年)にも同様のアイデアが出てくるが、こちらはファミコン世代になじみぶかい、荒いドット絵に変身させられる点が笑いと恐怖感を感じさせる。なかなか秀逸なものだ。

NASAが外宇宙探査機に乗せた地球外生命体への友好的メッセージ。だがそれを曲解した宇宙人は、そこに含まれていた攻撃性の塊のような映像に自らの姿を変え、地球へ先制攻撃を開始した。緒戦で蹴散らされた米軍とアメリカ政府は、彼らの姿が80年代のアーケードゲームそのものであることから、当時の少年ゲームチャンピオンだったサム・ブレナー(アダム・サンドラー)らを人類最後の希望として招集する。

短編映画のアイデアを膨らませ、アダム・サンドラー映画としてまとめた「ピクセル」は、日本人にもなじみ深いゲームがたくさん登場するアクションコメディーだ。

80点
トラウマのない人限定

日本ではタブーになってしまったが、アメリカでは「カリフォルニア・ダウン」のような津波や地震を主菜とするディザスター・ムービーが相変わらず作られている。しかも東日本大震災の凄惨な映像を入念に研究してから作られているわけで、皮肉にもその映像の迫力たるや過去最大級である。

消防レスキューヘリのパイロット、レイ(ドウェイン・ジョンソン)は、ある過去の出来事以来、妻エマ(カーラ・グギーノ)との仲が冷え切っていた。そんな折、未曽有の大地震が発生、幸い飛行中で難を逃れたレイはそのまま高層ビルに取り残されたエマを救いに行くが……。

ドウェイン・ジョンソン主演の家族愛ムービーであるから本来小中学生も含めて楽しめる娯楽映画なのだが、こと日本においてそれは不可能だ。東北の被災地はもちろん、それ以外の子供たちにとってもこの映像は余りに刺激が強すぎる。この映画における震災シーンは、地震、津波系の映画としてはこれまで例がないほどに強烈だ。

80点
パージの本質が見えてきた続編

支持者が信じていることと政治家の本音が正反対というのはよくあることである。今の日本でも「アベノミクスは消費税増税さえなければ成功したんだ」などとズレた意見をよく聞くが、冷静に見れば増税こそアベノミクス定食のメインディッシュである。米国に倣った格差拡大=富の逆再分配が目的の政策なのだから当然だが、そこに気づかせないためにプロパガンダ技術というものがある。かくして、もっとも政策の犠牲者になる人たちが、なぜか一番の熱心な支持者になるという不可思議現象が起こる。

年に一夜限り、あらゆる犯罪が合法となるパージ法。そんな近未来のアメリカで、鍛え抜かれた肉体を持つレオ(フランク・グリロ)は完全武装でその夜を迎えた。彼は改造した防弾使用のマスタングを駆り、悲壮なる表情でパージの夜に発つ。

このシリーズの世界観の最大の特徴であるパージ法も、まさにアベノミクスと同じである。大勢が信じる「目的」と、為政者側の考える「目的」は真逆であり、強力なプロパガンダで国民を洗脳することで真相を隠している。前作含め、この2本の映画が言いたかったのは、要するにそういうことだ。

80点
地味だがきわめて良質なアニメーション

最近の子供向けアニメーションは、ポケモンや妖怪ウォッチといったテレビのキャラクターもの、もしくはディズニーやピクサーなどの海外産が中心で、それ以外の国産のベーシックなものは影が薄い。

そんな風潮に立ち上がった……というわけでもなかろうが、かつて「世界名作劇場」シリーズで日本アニメのベーシックを作り上げた日本アニメーションが、その40周年記念にシンドバッドの冒険を持ってきた。本作はその3部作の1作目となる。

少年シンドバッド(声:村中知)はあるとき空から女の子と馬が起きてくるのに遭遇する。何者かに追われる彼女を非力ながら助けようとするシンドバッドを見ていたラザック船長(声:鹿賀丈史)は、そのガッツを見込んで自分の船にスカウトする。

80点
すごい緊迫感

「誘拐の掟」というから、誘拐ものの脚本はリーアム・ニーソンにもっていけ、みたいな掟があるのかと思ったがそんなはずはなく、しかし彼のおかげで抜群に本作はおもしろくなった。

1999年、元刑事のマット(リーアム・ニーソン)に怪しげな男から依頼が舞い込む。それは、妻をさらわれた男からの、犯人探しの仕事だった。直感から危険な背後関係を察したマットだが、すべて承知で彼は引き受けることにする。

ものすごい緊迫感で、まるで「羊たちの沈黙」を思わせる。その理由は、この主人公が元敏腕刑事、すなわち捜査能力があるのに今は何の後ろ盾もない探偵もどき、との設定によるものが大きい。

80点
絶妙なバランス感覚

高い壁に囲まれ、謎だらけの外の世界を渇望する世界観が「進撃の巨人」とほんのちょっぴり似ている映画版「メイズ・ランナー」は、アメリカにおけるティーン向けミステリアドベンチャーの大本命だ。

ティーンエイジャーのトーマス(ディラン・オブライエン)が目を覚ますと、高い壁に囲まれた広場だった。そこには同じような境遇の若者が大勢おり、すでに相当期間の共同生活を送っていた。なぜか過去の記憶がない以上に最大の問題は、唯一の出口と思われる巨大な扉の向こうには毎夜構造を変える巨大迷路があり、扉が閉まる夜の間にそこに閉じ込められてしまうと、生還の可能性が今のところゼロ打倒いことだった。はたしてトーマスは迷路を抜け、記憶を取り戻し、外の世界に脱出できるのだろうか。

あまりに面白すぎて、こりゃもう進撃はいらないや、おなかいっぱいと思ってしまうほどよくできたフィクションドラマである。

80点
犯すはずのない父親の罪の真相

父子の癒しの物語になっている「ジャッジ 裁かれる判事」には多くのサブテーマが含まれており、非常に見応えがある。とくに息子を持つ父親がみたら、これはたまらない心に残る一本となるだろう。

金のためならどんな悪人の弁護もする凄腕弁護士のハンク・パーマー(ロバート・ダウニー・Jr)。あるとき彼は、長く疎遠となっている判事の父親ジョセフ(ロバート・デュヴァル)が、殺人事件の容疑者となったことを知る。不良の申し子のようなハンクと違って堅物を絵にかいたような父親が、よもや法を犯すなどあり得ないと思った彼は、故郷に戻って事件を調べ始めるが、数々の状況証拠は父親に不利なものばかりだった。

この映画が描いているのは、人が人を裁く難しさとか、依頼人を救うために手段を選ばぬ弁護士ってどうなのよ、といった問題がまず挙げられる。さらに、息子の助けを素直に受け取れない父親の心情や、過去の罪をどう贖罪すればいいのかなど、様々なサブ要素もはらんでいる。事件の真相、鍵をにぎる父親の本音がなかなか明らかにならず、それで引っ張るミステリーとしても良質。

80点
同じ俳優で12年間撮影し続けた劇映画

ドキュメンタリー映画で制作&取材期間ウン年なんてのは珍しくもないが、劇映画で撮影期間12年というのは尋常ではない。しかもキャストは最初から最後まで同じ俳優がやりとげる。「6才のボクが、大人になるまで。」は、そんな素っ頓狂な製作手法が話題の家族ドラマである。

テキサス州の小さな町で暮らす少年メイソン(エラー・コルトレーン)は、母オリヴィア(パトリシア・アークエット)が転職のため大学に再入するとういことでヒューストンに引っ越しする。そこで新しい義父の訪問や同居、暴力等々、ありふれてはいるが彼らにとっては波乱万丈の少年時代を過ごすことになる。

キャストのほとんどが12年間、断続的に撮影を続けたので、この映画の中では登場人物がリアルに歳をとってゆく。お母さん役のパトリシア・アークエットは年々ぽっちゃり度合いを高めていくし、登場時6歳だった主人公少年エラー・コルトレーンは映画の終盤では18歳の立派なヒゲ面青年になっている。

80点
男の子が学ぶべきものがある映画

ギリシャ神話に登場する英雄で、ゼウスと人間の女アルクメネの間に生まれたヘラクレス。その勇姿と英雄伝説は多くの映画で見ることができるが、今年は奇しくも2作品がほぼ同時期に公開される、ヘラクレスイヤーとなった。

並外れた戦闘力を持つヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)は、5人の仲間たちとともに傭兵稼業にいそしんでいた。やがて彼らはその強さを見込まれ、トラキア王の兵たちを鍛える任務に就く。

王道のギリシャ神話映画である「ザ・ヘラクレス」(レニー・ハーリン監督 公開中)に比べ、こちらはかなりの異色作。なにしろドウェイン・ジョンソン演じる主人公は「自称」英雄ヘラクレス。その無敵伝説でハッタリをきかせ、自分たちの生業である傭兵稼業の営業をしている男である。これではギリシャ神話ではなく、詐欺師の映画である。

80点
戦争の発生原理を描く

アメリカはシリア領内のイスラム国を空爆、ローマ法王は現状を第三次世界大戦だと懸念、マレーシア機は落とされ、尖閣諸島には中国の不審船がうろついている。いまや世界中が戦争の当事者となる時代に突入している。そんな中、公開される「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は、その公開タイミングも含め、映画の神様の祝福を受けたと思わせる抜群の出来映えである。

前作のラストから10年、ウィルスによって人間はほぼ死滅し、猿たちは驚異的な進化を遂げていた。わずかに残った仲間たちとサンフランシスコで暮らす人間たちは、山で猿のリーダーであるシーザー(アンディ・サーキス)と出会う。一触即発の中、人間たちがシーザーに求めたものとは……。

旧・猿の惑星はなんといってもショッキングな落ちと、時間を行き来するストーリーの輪が完全に閉じた終幕により、シリーズものとしては高評価を得ている。

80点
感動の裏話もの

映画界の巨人ディズニーには膨大な作品アーカイブがある。きっとその一本一本にはそれぞれ興味深いトリビアがあるのだろう。だがこれまで彼らはそうした自社の裏舞台ものには手を出してこなかった。

ディズニーランドでは園内の二カ所で同時にミッキーが現れることは無いそうだが、「舞台裏」を隠し続けるのがある意味社風のこの映画会社で、初めて作られた内幕ものが「ウォルト・ディズニーの約束」だ。

61年のハリウッド。業界一の権力を持つとさえいわれたディズニー社長のウォルト(トム・ハンクス)は、しかし20年来、映画化を説得できない相手がいた。それが「メアリー・ポピンズ」の原作者で、自他ともに認める頑固者P.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)。このたび彼女を英国からようやく招くことに成功したウォルトは、ここぞとばかりにゴージャスなもてなしで迎えるのだが……。

80点
お父さんの選択肢

子を持つ親にとって、誘拐犯罪ほど恐ろしいものはない。デパートでわが子が迷子になっただけでも胃が痛むような苦しみと恐怖にとらわれるのが親というもの。まして誘拐確定となった日には、いかな強靱な男といえど、ただではすまない。

感謝祭のパーティーのさなか、ケラー(ヒュー・ジャックマン)の幼い娘が失踪する。ロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)はそれなりに優秀な男で即座に容疑者(ポール・ダノ)を拘束、取り調べるが、警察はあろうことか証拠不十分で男を釈放してしまうのだった。

「プリズナーズ」は、愛する娘の誘拐を前に、普通の父親に何ができるのかを考えさせられるサスペンスドラマ。

80点
まさかの共演によるボクシング映画

「ロッキー」や「ランボー」の新作をとってみたり、忘れられていたベテランアクションスターを集めてオールスターな作品を作ってみたり。最近のシルヴェスター・スタローンはハリウッド一、サービス精神旺盛な企画に絡んでいる。

そんな彼の最新作「リベンジ・マッチ」もその一つ。なんと、体重増加の役作りが伝説となった「レイジング・ブル」(80年)のロバート・デ・ニーロとふたり、因縁あるライバルボクサーを演じて初共演する離れ業をやってのけた。

80年代に一世を風靡したボクサーのビリー(ロバート・デ・ニーロ)とヘンリー(シルヴェスター・スタローン)。対戦成績五分のまま迎えた第3戦直前にヘンリーが引退したことをビリーはいまだに根に持ち、ヘンリーもまた別の因縁から二人は犬猿の仲となっていた。そんな二人に目を付けた売り出し中のプロモーター、ダンテ(ケヴィン・ハート)は、30年ぶりに二人を対戦させようという無茶な企画を考えるが……。

80点
シリーズ2作目としては相当な完成度

マーベルの看板ヒーロースパイダーマンは、大人の事情でマーベルヒーロー総登場の「アベンジャーズ」には出演できない。しかしこの映画版(リブート版)は、かのオールスター映画に引けを取らない完成度の高さを誇る。

今日もニューヨークの平和を守るスパイダーマンことピーター(アンドリュー・ガーフィールド

)は、「娘を巻き込むな」との父親の願いが常に頭から離れなかったが、それ以上に愛するグウェン(エマ・ストーン)と離れられずにいた。そんな折、親友のハリー(デイン・デハーン)がオズコープ社に戻ったことを契機に、自分を捨てた実父との別れの真相に迫ることになる。

80点
マッチョ二人の意外な大人向けテーマ

女囚もの含む刑務所映画はアクション映画の定番として、かつて高い人気があった。日本でも木曜洋画劇場などで楽しんだオールドファンも多いだろう。いたいけな主人公たちが一致団結、理不尽な支配や虐待に立ち向かう構図は、革命の暗喩でもあり暗い時代の労働者たちの溜飲を下げる働きがあった。

だがバリエーションのアイデアが出尽くした後、観客の間にそうした荒唐無稽を受け入れる余地は年々せばまり、今ではすっかり時代遅れとなった。l

セキュリティ対策のプロ、ブレスリン(シルベスター・スタローン)は自ら収監され脱獄することで施設の脆弱性を探る手法をとっている。だが、あるとき高額で依頼された民間の収容施設において彼は依頼者から裏切られる。外部との連絡とサポートを絶たれた彼は単独で脱出するほかなくなったが、そこでクセのありそうな囚人のボス(アーノルド・シュワルツェネッガー)と出会う。

80点
若者の苦しみが描けている

85年生まれの若いジョシュ・トランク監督による低予算映画ながら、全米初登場1位となった「クロニクル」は、スタイリッシュな映像が見所のSF映画。と同時に、迫真の青春学園ヒエラルキードラマでもある。

高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)、マット(アレックス・ラッセル)、スティーヴ(マイケル・B・ジョーダン)は、偶然触れた謎の物質により超能力を身に着ける。スカートめくりや空中アメフトなどたわいもない事に力を使う彼らだったが、その緊張感のなさから大事故を巻き起こしてしまう。その日以来、3人の絆も徐々にひび割れていく。

ビデオ撮りオタクのアンドリュー主人公ということで、いわゆるPOV=主観映像による作品となっている。だが途中から彼も超能力者になるので、遠隔操作も空撮も自由自在。POV映画としてはありえない豊潤なカメラワークを味わえる。と同時に登場人物に寄り添うような映像からは、身近な青春ものとしての味わいもある。

80点
3つの楽しみが味わえる

一見立派に見える人でも、ときには英雄とみられるような人物でさえ、心に闇を抱えていることがある。品行方正、誰もが羨む理想的な人物といわれる私でさえ、悩みの一つや二つは持っている。

「フライト」は、偶然の事故から嘘を積み重ねてきた過去と向き合い、清算せざるをえない立場に追いやられるパイロットを名優デンゼル・ワシントンが熱演したドラマ。受賞はできなかったが主演男優および脚本賞にノミネートされた一本である。

アメリカ国内便の機長ウィップ(デンゼル・ワシントン)はベテランのパイロット。今日も恋人のCA(ナディーン・ヴェラスケス)と徹夜で飲み明かしたばかりだが、コカインで眠気を払い操縦席に座る。そんな状態でも誰より安定した飛行の腕前を持つ彼だったが、その日の機体には致命的な問題があった。

80点
ハードボイルドなヒーロー映画

ヒーロー不在の時代である。世界の警察官は日がなプロパガンダ映画作りに必死、日本の警察官は交番で賭け麻雀に必死。新聞を見ていてもしらけるばかりである。

ヒーロー映画作りがこんなに難しい時代もないわけだが「ジャッジ・ドレッド」は頑張った。シルベスター・スタローン主演の珍作扱いされていた95年版を無かったことに再スタートした本作は、由緒ある英国コミックの実写化。イギリス・南アフリカ合作の、決して背伸びしないシンプルなアクション3D映画としてよみがえった。

近未来のアメリカ。核戦争で荒廃した東海岸における唯一の都市メガシティ・ワンは、人口過密で治安は最悪であった。その対策として市民を守る最後の砦であるジャッジたちには、警察と司法の両方の機能と権限が与えられていた。中でも最強のジャッジと称されるドレッド(カール・アーバン)は、新米の女性ジャッジ、アンダーソン(オリヴィア・サールビー)の教育を命じられる。さっそく出かけた現場は、しかし想像を絶する過酷なものだった。

80点
すぐれた大人SF

時間移動ものSFには佳作が多い。「バタフライ・エフェクト」(04)、「時をかける少女」(06)、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(07)など、内外に多くの作品がある。過去の改変が未来に影響を与えるタイムパラドックスとは、一見絵空事のように思えるが、実際はいわば現代を生きる者の共通認識を象徴している。誰もが無意識にそう考えて今を頑張って生きているからこそ、映像の形でそれを具現化した時間移動ものSFにすんなり共感できるわけだ。

「LOOPER/ルーパー」はそんな暗黙のルールを、ユニークな設定に生かした一本。おそらく以下に紹介するあらすじを読んだだけでも思わず見たい!となるはずだ。

完璧な管理社会である2074年では、マフィアたちもそう簡単に邪魔者を消すことができなかった。そこで彼らは使用が禁止されているタイムマシンを入手する。この発明品はいまだ不完全で、30年前の過去にしか行けない一方通行。だがマフィアにとっては、邪魔者を縛り上げてこれに乗せ、他の時代で殺害すれば完全犯罪となる。彼らは30年前にエージェントを送り込みルーパーと称する殺し屋集団を組織させ、その時代の闇組織に殺害を依頼することにした。

80点
高所恐怖症の人は無理

人生、突然がけっぷちが訪れることがよくある。圧倒的な魅力を持つセンターが卒業し、人気ナンバー4からいよいよ下剋上を狙うかというその時、撮影好きな元彼に恥ずかし写真をばらされる。リアル「ノッティング・ヒルの恋人」を気取ってみたが、現実は厳しかった。ロマコメを信じると高くつくことを身をもって知ったそんな彼女に贈りたい、それがこの「崖っぷちの男」である。

元ニューヨーク市警のニック(サム・ワーシントン)は、ダイヤ強盗の濡れ衣を着せられ投獄されていたが隙を見て脱獄する。その後、ニューヨークど真ん中のホテル高層階に姿を現した彼は、意を決して窓の外に踏み出す。無実を晴らすため、もはや彼には自殺という手段しか残されていないのか。眼下には騒然としたやじ馬たちが次々と集まり、やがてマスコミや警察のヘリも飛んでくる。

人気絶頂サム・ワーシントン、今年4本目の日本における主演公開作にして最高傑作。それがこのスリリングなサスペンスだ。

80点
≪タイトルの意味がわかる瞬間に注目≫

先日発射された北朝鮮のロケットこと弾道ミサイルを警戒していたイージス艦は、自衛隊の誇る最強の護衛艦である。だが、こうした近代的な戦闘艦と、第二次大戦時に最強艦とされていた「戦艦」では設計思想が全く異なる。

大和に代表されるような戦艦は、巨砲を積むための巨大な船体を頑丈な装甲で覆い、多少の攻撃を食らってもびくともしない。イージス艦のような現代の戦闘艦は、それにくらべれば紙でできているような無装甲の軽量艦にすぎない。戦艦武蔵のように、40発近い魚雷や爆弾を食らってもまだ戦闘を続けるようなマネは絶対に無理である。

その代わり高性能な多機能レーダーや、人工衛星・警戒機と連携した索敵能力、およびミサイルによる長距離攻撃能力によって先制攻撃、先制撃破するわけで、だからこそ「無敵の盾」と言われている。

80点
「JUNO/ジュノ」の奇跡再び

女のコとは自己矛盾の生き物である。忙しくてデートを断れば、私より仕事が大事なのねとキレるし、

また別の日には、あれが欲しいこれが欲しいと高い服を要求する。仕事しなけりゃそんな服も変えない

ぞと思うのだが、本人の中では全く矛盾なく二つの要求が存在するらしい。

80点
逆輸入本格ソードアクション

コンピュータグラフィックスによるアニメーションの世界では、なんといってもピクサー社が傑作を量産し、第一人者と称されている。

いつの時代も先駆者というのは尊敬され、長く人々の心に残る。その業績を上回り、人々の固定されたイメージを覆すのは容易なことではない。とくにこのCGアニメの世界では、日本は大きく出遅れた感が否めない。

しかし、アメリカ勢に独占を許したかに見えたこの分野で、新境地を切り開いた男がいる。曽利文彦監督がその人で、彼のアニメ映画の代名詞というべき3Dライブアニメのテクノロジーは、ほとんど新ジャンルと呼んでいいインパクト。俳優の動きをトレースしたモーションキャプチャーにトゥーンレンダリングを施したものだが、どこか日本アニメ調の色合いに仕上がっているのがポイントで、そのクールなルックスは世界中のアニメファンを感心させた。

80点
≪笑いの陰に苦しみがチラリ≫

笑いというのは偉大なもので、人生における苦しみのほとんどを緩和する働きがある。とくにカネの悩みや恋愛、人間関係などは多くの人が深刻に考えすぎである。こうした悩みで毎年多くの自殺者が出るが、そういう人たちは一度、広い目で世界を見るといい。

大金を借りまくって豪遊した挙句、仕事や嫌いだよ昼寝はやめない嫌なら借金額を4分の1に減らせフフン、とのたまっているギリシャ人を見るといい。青くなっているのはカネを貸してる金持ちだけで、はたから見ればコメディーである。同じように、どうせ90まで生きればアナタの今の悩みなど、年寄りの笑い話になるのではないだろうか。

もし、こうした話に少しでも共感したなら、「50/50 フィフティ・フィフティ」を見るといい。

80点
≪必死過ぎ米国、国威発揚大作を堪能できる≫

この映画は、東日本大震災で日本公開が延期された作品の一つだが、一刻も早く見ておくべき重要なアメリカ映画である。

流星群が各大陸の沿岸部近海に降り注ぐ事件が起きた。あるトラウマから退役届を出したばかりのマイケル・ナンツ2等軍曹(アーロン・エッカート)も、この非常事態を受けLAの基地に召集される。だがたたき上げのベテラン海兵隊員であるナンツは、事態がたんなる気象現象ではない事にやがて気づかされる。NASAでさえその軌道を把握できなかったこの未確認物体は、単なる隕石ではなかったのだ。そしてその直後、ナンツはかつてない過酷な地上戦に巻き込まれる。

本作は、次々と公開されているエイリアン侵略映画の決定版。いまやアメリカ合衆国は、ホームレスのエイリアンから引っ張りだこ、地球一の人気スポットなのである。あんな不景気で治安の悪いところを侵略するより、のんびりした南国にでも行けばいいのにと思うが、情弱エイリアンたちは懲りずに毎回アメリカと戦ってばかりいる。

80点
お笑いプロパガンダ

『グリーン・ゾーン』を見ると、この映画を作った製作者らスタッフが、現代アメリカの本流というべき立場にいることがよくわかる。アメリカウォッチャーは、今後はこの人たちの作る映画から絶対に目を離すべきではないだろう。

フセイン失脚直後のイラク、バグダッド。米陸軍のミラー准尉(マット・デイモン)のチームは、大量破壊兵器を探す任務についている。ところが情報は常に誤りで、一向に見つかる気配はない。犠牲ばかりが増え続ける現状に納得できないミラーは、ようやくつかんだ重要情報を国防総省のクラーク(グレッグ・キニア)が握りつぶしたのをみて、何かがおかしいと感じ始める。

私はこの映画を見て、内心笑いが止まらなかった。イラク戦争の大義だった「大量破壊兵器」が実在せず、プロパガンダだったことは今では常識。ところがこの映画ときたら、この世紀の大嘘は一人の悪い小役人のせいで、国民もいたいけな米軍兵たちも、それにだまされた被害者だというのだ。

80点
原作と違う結末が秀逸

ギリシャ経済のゴタゴタに伴う暴落で、GW明けに即死状態となった投資家も少なくあるまい。金というものは……というより、そこにかける人々の情熱とは、なんとパワフルで恐ろしいものか。すっかりポジションを失い、抜け殻のようになったFX初心者などに、私はこの『運命のボタン』をすすめたい。

76年の冬、ヴァージニア州の郊外で暮らす一家の妻(キャメロン・ディアス)は奇妙な訪問者に応対する。初対面の彼女に対し、彼は大きなボタンがついた箱を渡す。それを押せば、一家は100万ドルを受け取れる。ただし代わりに見知らぬ誰かが死ぬ。期限は24時間。その間に押さない場合は装置を回収する。そう言って去った男が残したボタン装置は、仲むつまじい夫婦と息子たち一家の運命をどう変えるのだろうか。

押せば1億円。70年代の設定だから今ではその数倍の価値といったところか。ただし憎らしいことに、それは誰かを殺すことになる。さてアナタならどうするか……。

80点
感情を揺さぶる力は『火垂るの墓』より上

『クロッシング』はあまりに危険な内容および主張を含むことから、南北融和のノ・ムヒョン政権時代の韓国ではおおっぴらに製作ができなかった。そこでやむなく、監督らは内容を絶対極秘にして各国ロケを行い、なんとか完成にこぎつけた。そして政権交代した今、ようやく日の目を見たという執念の一本である。

そして大事なことに、この映画には韓国人と同じかそれ以上に、日本人である私たちにとって重大な事実が含まれている。

かつて北朝鮮のサッカーナショナルチームの一員だったヨンス(チャ・インピョ)は、今はしがない炭鉱夫として、病弱の妻ヨンハ(ソ・ヨンファ)、11歳の息子ジュニ(シン・ミョンチョル)と3人で暮らしている。だが栄養不足など劣悪な環境下で妻の病状が悪化、特効薬を得るためには国境を越え、中国に行くしかない状況に追い込まれる。

80点
人気が出るのもよくわかる入魂の一作

ライトノベルも深夜アニメも見ない私としては、涼宮ハルヒと遭遇する機会はまずないだろうと安心していた。だから角川の編集者に、いかに熱くその魅力を目の前で語られろうとも、これまでは軽くいなすことができた。

だが映画化されるとなれば話は別だ。もう避けて通るわけには行かない。

しかし、よりにもよってインターネット上でこのタイトルについて下手なことを書けば、間違いなく批評家生命を失うことになろう。そんな恐るべきプレッシャーの中で、しかし私は命がけでこの記事を書くことに決めた。

80点
どう考えても映画史上ナンバーワンのスペクタクル

『2012』には、人々がローランド・エメリッヒ(「デイ・アフター・トゥモロー」(04)、「インデペンデンス・デイ」(96)監督)に望むものがすべてある。彼の映画を好きな人なら、この秋必見の超大作である。

不本意ながらリムジンドライバーとしてなんとか生計を立てている作家のジャクソン(ジョン・キューザック)は、離婚した妻の元で暮らす子供たちとイエローストーン公園にやってきた。ところが思い出の湖はすっかり干上がり、なぜか政府機関と思しき男たちが周辺を閉鎖していた。その後、彼はチャーリー(ウディ・ハレルソン)と名乗る怪しげなDJと出会い、もうすぐ世界が終わるなどと聞かされるが……。

バカげたスケールのストーリーを開陳し、人間賛歌のテーマを謳いあげるエメリッヒ監督は、今回はマヤ終末説を取り上げた。これは今、アメリカを中心に大流行中のテーマ。要は2012年に人類が滅亡するというものだが、根拠としては惑星直列だのマヤの予言だのと色々あげられている。

80点
19世紀の原作が今でも通用することの意味

チャールズ・ディケンズの原作は、これまで50回以上も映像化されたといわれるほどだから、あらすじは誰もが知っていることだろう。本作のタイトルにあるディズニーも、以前にアニメーション作品として発表したことがある。

だがしかし、今回のそれは驚くほどタイムリーで、かつ適切な映画化だったのではないかと強く感じた。

19世紀半ばのロンドン。金貸しの守銭奴スクルージ(声:ジム・キャリー)はクリスマスイブに浮かれた世間に悪態をつき、寄付を求める貧しい人々にも怒鳴り帰す始末。町の嫌われ者であるそんな彼の前に、かつての共同経営者で7年前に亡くなったマーレイ(声:ゲイリー・オールドマン)の亡霊がやってくる。

80点
「揃いも揃ってクズでござい、ってツラしてやがる!」

福本伸行の漫画は、手軽に人生の極意を学べることで、若い人に大人気だ。独特の台詞回しや擬音、個性的な絵柄など、語るに足る要素を多く備えることから、インターネット上でも共通のネタ基盤として確立されている。『カイジ 人生逆転ゲーム』は、その待ちに待った、そして誰もが「無理だろ」と思う実写映画化である。

最底辺の自堕落な生活を送りながらも、認めようとしない典型的なダメ人間カイジ(藤原竜也)。あるとき彼の元に、借金取りがやってくる。覚えのない借金だったが、気軽に保証人の判を押していたためだ。バイト生活のカイジに返せるカネがあるはずもなく、半ば自動的に借金棒引きゲームが開催される客船エスポワール号へと参加することになる。

この、エスポワール号で行われる幾多の「ゲーム」を、CGなどをふんだんに使った見せ場として描くエンタテイメント作品。最初に行われる「限定ジャンケン」など、原作ファン垂涎の展開が楽しめる。

80点
邦題はエロドラマみたいだし、公式資料はネタバレときた

白身魚フライなど、他のおかずが充実していながら「のり弁当」などと控えめに自称する、ほか弁人気メニュー並に良心的な当サイトではそんなことはないが、他メディアによる『あの日、欲望の大地で』の映画紹介には、重度のネタバレが含まれる可能性があるので注意が必要だ。

アメリカ、メイン州の高級レストランのマネージャー、シルヴィア(シャーリーズ・セロン)。仕事もでき容姿も端麗だが、なぜか彼女は行きずりの男とばかりすぐに寝る。どうやら何か心に傷があるようだ。一方、ニューメキシコ州の国境沿いの町では、アメリカ人主婦ジーナ(キム・ベイシンガー)とメキシコ人ニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)が、荒野のトレーラーハウスを密会場所に不倫を重ねていた。

この二つのドラマがどう交差していくのか。その仕掛けはこの脚本を15年かけて構想し、書いたギジェルモ・アリアガ監督がもっとも力を入れたところだろう。しかし、たぶん悪意はないのだろうが宣伝会社の公式資料はそのあたりをまったく考慮していないので、何も気にせずそれを基に原稿を書いたライターたちは、知らぬ間にネタバレ記事を仕上げてしまう可能性がある。

80点
意外な掘り出し物ホラー

この2作品は、それぞれ独立したものと見ることもできるが、それぞれが60分間と短く、同時上映されるという事情から、ひとつの記事にまとめて紹介したい。

タイトルでわかるように、清水崇監督の代表作的ホラーシリーズの一篇。「恨みつづけて、10周年」という、気の長い幽霊のセリフのごときコピーにあるとおり、シリーズ誕生10年の節目を飾るイベント作品である。

清水崇監督は今回監修に回り、持ってきた脚本が優れていた二人の才能にそれぞれの監督を任せた。まず『呪怨 白い老女』の方は三宅隆太監督。そして、これが実にとんでもない男であった。

80点
公式サイトを読む前に見に行って

犯人の名前を知ってから推理小説を読むのが好きな人は、『ダイアナの選択』の公式サイトを読むとよい。

高校時代、校内で銃乱射事件に遭遇した経験をもつダイアナ(ユマ・サーマン)の、深い心の傷はいまだ癒えない。あのとき彼女は親友のモーリーン(エヴァ・アムリ)と女子トイレに追い詰められ、犯人にこう問われたのだった。「お前たち二人のうち一人を殺す。どっちを殺すかお前たちが決めろ。さあ、どっちだダイアナ?」

少女時代に自らが発した一言が、親友の運命と自分の人生を変えてしまった。たとえいま、愛娘や優しい夫と、なに不自由ない暮らしをしているように見えても、決して消えることのないトラウマをダイアナは抱えている。

80点
墜落事故生存者の証言が食い違う?!

この映画は、飛行機墜落事故の現場から始まるが、そのセットのリアルさはなかなかである。カナダの浜辺で撮影したというが、航空機の残骸が燃え盛るのを見つけた近所の住民は、半狂乱になって警察に通報したという。たしかに散歩中にこんなものに出くわしたら、間違いなく腰を抜かすだろう。

セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)は、航空機事故の生存者5名の精神的ケアを任される。だがその仕事は簡単ではなかった。事故以来、異様にハイテンションで、専門家も「逆にいちばん危険だ」と評するエリック(パトリック・ウィルソン)は、やたら陽気にデートに誘ってくる。一方、他の生存者たちが行う事故時の状況は、各人まるで違っている。何かがおかしいと感じたクレアは独自に調査を始めるが、航空会社から激しい妨害を受ける。

『パッセンジャーズ』は、騙される快感を味わうための映画である。つまり、結末仰天系ミステリということだ。そういう意味では、冒頭で書いた散歩者が、もっとも幸せな本作の観客だったということもできる。

80点
NYセレブママの、どこか変なライフスタイル

ロマンティック・コメディの良し悪しについて、主演女優のしめる割合はとても高い。女優じたいが魅力的かどうか、演じるキャラクターに共感できるかどうか。観客の性別を問わず、それだけで6割がた決まってしまうといっても過言ではない。これは、私だけが提唱する定説である。

庶民の娘ながら人類学を学び、エリートコースに乗るかと思われたアニー(スカーレット・ヨハンソン)は、ゴールドマン・サックスの面接で大失敗して就職戦線から脱落。ナニー(平たく言えばベビーシッターのこと)のバイトをしながら自分探しをはじめることに。ところがニューヨークのセレブママたちの傲慢不埒な態度と、どこかおかしい子育てに、アニーの上流階級観察日記は日増しに熱を帯びていく。

この一風変わったコメディの主演女優スカーレット・ヨハンソンは、私が思うに25歳前後の女優の中では世界一だ。誰もがひと目で覚えられる顔だちに、不自然に絞っていない体、そして人懐っこいムード。間違いなく、地球上で一番魅力的なぽっちゃり系といってよい。

80点
昭和ウルトラマンと平成三部作の世界観が融合

ウルトラマンで育った世代は、いまや働き盛りのパパである。その琴線に触れる企画をだせば、彼らは子供たちと共に劇場に押し寄せ、ウルトラマン映画は成功する。そんな方程式を前作「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」(06年)で読み取ったか、今回はさらにそのコンセプトを推し進めた作品を出してきた。結果、前売りはなんと5万枚以上も売れ、この公式はいまだ有効と証明された。

少年時代、アスカ、我夢と共にテレビの「ウルトラマン」に夢中になったダイゴは、成長した現在、平凡な公務員として横浜で暮らしている。ところがあるときから、ハヤタさん(黒部進)やモロボシさん(森次晃嗣)、郷さん(団時朗)や北斗さん(高峰圭二)など仲のいい街の人々がウルトラマンになる不思議なイメージを見るようになる。夢と切り捨てるにはあまりに実感を伴う体験を不思議に思う中、ついに本物の怪獣が現れる。

平成三部作を鑑賞した方にとっては奇妙なあらすじと思うだろうが、ようするにこの世界はテレビシリーズとは別のパラレルワールド。ウルトラマンは実在せず、テレビの中だけのヒーローだよ、という設定だ。その意味では、私たちが生きる現実世界とほとんど同じといえる。ここではダイゴたちもハヤタらもただの平凡な社会人。パン屋さんやレストランなんかを経営して、のどかきわまりない。

80点
松山ケンイチが両極端な若者を演じるデスメタル"ギャグ"ムービー

こういう仕事に就いているとつい忘れがちだが、人はそれほど大層なものを映画に求めてやしない。

いくらギャスパー・ノエの映画が面白いといっても、あんな気持ち悪いものを普通の人は見たがらないし、また必要としない。忙しい現代人にとって映画とは、旅行に行くほど気構えず、比較的チープに楽しめる気晴らしのひとつに過ぎない。

そんなとき必要なのはコメディ映画というわけで、アメリカでは大人気の定番ジャンルとなっている。しかし、なぜか日本ではあまり力の入ったコメディというものを見ない。いたく残念&不満に思っていたところに『デトロイト・メタル・シティ』が来た。長年こういうものが増えればいいのにと思い続けてきた、まさに万人にすすめられるコメディ作品だ。

80点
ケン・ローチが描く「奪い合う労働者」

弱肉強食の新自由主義は格差社会を拡大し、この日本でも最底辺の労働者の危機感は相当なものがある。

私は仕事柄、たまにその手の集会を見に行くことがあるが、たいていは盛況である。そこで語られる派遣労働者やシングルマザー、障がい者や引きこもりたちの現状の訴えは深刻で、聞いているだけで怒りで涙が出てくる。

そんなとき、どうしても労働者は善人で支配側は極悪守銭奴といった単純化をしてしまいたくなるが、もちろん現実はそうではない。

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