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2156件中 2001~2050件 を表示しています。
30点
この監督らしい個性はあるのだが

個性的な作風のホラーで、特に欧州で人気の黒沢清監督の最新作。とはいっても『ドッペルゲンガー』は、『回路』や『CURE』といったホラー、スリラー的な作品ではなく、どちらかというと前作『アカルイミライ』に近い、不条理感のある奇妙な雰囲気のドラマである。

もともと、万人受けする作風では無い監督だが、『ドッペルゲンガー』は一段とアクが強く、特にこの監督の作品を初めて見るような方にはオススメしにくい。

次の瞬間に何が起こるかわからないような、画面から発せられる独特の緊張感はさすがで、本作でも予告編であるとおり、トラックに突然人がひかれたりする、ショッキングで印象深いシーンがいくつかある。ただ、散発的に、そうした目を引くシーンがいくつかあるというだけで、映画全体を見渡せば、過去の傑作群と肩を並べるほどの完成度にはいたっていない。

30点
うつ病がどんな病気か知りたい方に

作家エリザベス・ワーツェルの自伝小説の映画化。これは、本人によれば、「うつ病が大変な病気であることを、大勢に知らせたくて書いた」小説だそうで、映画版でも、鬱病という病気について、患者の感情や行動のディテールにこだわって、なるべくリアルに描こうと挑戦している。

こうした映画の場合、患者役を演じる役者の演技力によってその映画の出来は大きく左右されるが、本作の主人公クリスティーナ・リッチは、その点完璧に近い。彼女は、本作に共同製作者としても関わっているので、入れこみ度が違うというわけである。全身ヌードも披露した彼女の迫真のうつ病演技は、『私は「うつ依存症」の女』の最大の見所である。

自伝小説が原作という事で、主人公が問題だらけの家庭に生まれ、やがて精神のバランスを崩して行く過程がとてもリアルだ。そして、うつになった後の行動、たとえば狂ったように電話をかけまくるとか、やたらと感情の起伏が激しいとか、そのあたりも真に迫っている。

30点
どうしても見たい人だけが見に行くという作品だ

台本無し、全部アドリブという、特殊な演出方法で描いた、実験的なドラマ。デジタルビデオによる凝った撮影。画面4分割などの奇抜な演出……、どこをみても、斬新な作風の作品である。

12人のハリウッドスターが出演するが、顔ぶれはかなり豪華。とくに、ルーシー・リューなどは売れっ子で時間がないから、飛行機で到着後、ろくに説明も受けずにサルマ・ハエックとの口喧嘩シーンをアドリブで撮影し、さっさと帰ってしまったという。この、大物女優同士の激闘場面は、人種差別的悪口連発で、ものすごい迫力がある。これがアドリブというのだから、彼女らの今後の人間関係が心配である。

『HOTEL』は、一応女性がターゲットということだが、内容を事前にちゃんと理解していて、その上でどうしても見たい人だけがひっそり見るという、特殊な映画だ。ミニシアターで、次回上映作品のチラシをみて興味を持った程度の人が、前知識なしに見て楽しめるという映画ではない。まぁ、ぶらっとこの映画に入る人など、ほとんどいないだろうから、これはあまり意味のないアドバイスかもしれないが。

30点
低予算だというのにVFXと主演男優が話題になりそうな、奇妙なホラー映画

『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルくんを主演に据え、比較的少ない予算で作られた、イギリス製戦場ホラー映画。なんとも特異なジャンルである。

第一次世界大戦中という設定で、撮影場所はドイツ軍の塹壕跡だけ。確かにあまり金はかかっていなそうだ。……と思って油断していると、最後になって、まるで、そこに製作費の大半を集中投入したかのような、ビックリ仰天のCG残酷シーンが飛び出て楽しませてくれる。なんだか、地方の寂れた遊園地のお化け屋敷のような趣きだ。

『デス・フロント』は、ようするに、戦場という怖い場所でホラー映画を作ったらもっと怖いだろう、という発想で作られた、ごく普通のホラー映画である。ボボボーという、こちらの交感神経を刺激するような、低音の怖い音楽がずっと流れ、客の予想もつかない方向から、何かが出てくるというような、ごくまっとうなホラーなのである。

30点
子供だましホラーだが、お好きな方はどうぞ

ホラービデオとしてカルト的人気の『呪怨』シリーズの、劇場版第2作。前作は、『スパイダーマン』のサム・ライミ監督により、ハリウッドでのリメイクが決まっている。

ホラーといっても、日本風の怖さというか、子供時代に感じた、押し入れの奥に何かがありそうな怖さ……とでも言うべき不安感を描いた作品である。具体的に言えば、画面の隅っこに、青い色した子供がチラッと写ってるとか、不意にガラスに不気味な顔が写ると同時に、耳障りな音がキーンと鳴るとか、まあ、そういう古典的な怖さである。

個人的な感想を言わせてもらえば、どこが怖いんだかさっぱりだ。こんなのは遊園地のお化け屋敷を見ている程度のものだと思うのだが。そういえば前作の公開時も、その時の担当編集者と、「こんな馬鹿馬鹿しいホラーがイマドキ公開されるなんてねー」と大笑いしていたものだが、それがハリウッドでリメイクまでされる話題作になるなんて、世間の評価はわからない。

30点
ギャグも題材選びもキャスティングも、全部センスが悪い

辛口批評家として名をはせる、井筒和幸監督の最新作。得意の人情コメディーである。

ジェームス・ブラウンのあの曲か……と、タイトルからなんとなくだめ臭さが漂うが、題材選びだけで判断するのは不公平であるから、できる限りニュートラルな気持ちで最後まで鑑賞した。

しかし、JBは最後までニセモノなので安っぽさが爆発だわ、ギャグは寒いわと、これが散々な出来であった。東京の下町育ちである私には、どうしてもこの映画のユーモアセンスが合わない。

30点
これでは変態ロリエロになりかねない

シベリアに伝わる民話にヒントを得て作られたおとぎ話。主演男優は、監督さんの息子だそうだ。全体的に、重暗いムードのカナダ映画である。

舞台はシベリアの森の中。母親が人間に襲われるトラウマを抱えた一匹の小熊がそこにいた。その小熊は数ヶ月後、ロシアの動物市場で売られてしまう。そして少女ローラの目に止まり、ミーシャと名付けられ彼女のサーカス団で飼われることになる。ブランコ乗りのローラはミーシャとすぐ仲良しになるが、ある夜彼女が、檻に入っているミーシャの様子を見に行くと、何故かその檻の中には見知らぬ裸の青年がいた……。

その後はその青年とローラが恋仲になるわけだが、さて、そんな『ベアーズ・キス』を一言で言えば、熊とセックスする女の話だ。いや本当は、優しい動物好きの少女が、クマに恋して、そのクマが人間に変身して……というおとぎ話なのだが、いろいろな理由から、そう素直に感動できないものがある。

30点
中途半端な実話ドラマだ

実在のボクサーを描いた、韓国映画。さんざ苦労して、ようやくチャンピオンに手がかかったタイトルマッチで、あわれ試合中に死亡した選手の悲劇を映画化した。

主演のボクサー役の俳優は、どうやらよく練習したらしく、サンドバッグの打ち方など、とても上手い。だが、試合のシーンは効果音でごまかしているのがわかってしまう。たとえば、スローで顔を殴る場面など、インパクトの瞬間、猫パンチになるので、少々萎える。

恋人役の女優も、泣くシーンで涙が出て無いのがバレバレなので、またまたお客は萎える。

30点
ロマンティック・コメディのキモがわかっていない

『トゥームレイダー』で主演したアンジェリーナ・ジョリーが、髪を金髪に染め上げて挑んだロマンティック・コメディ。

彼女が演じる主人公は、ニセモノの金髪がトレードマークのTVキャスターだが、まったく似合っていない。彼女の生き方自体も、この似合わない金髪同様、フェイクだという演出なのである。

そんな彼女が、怪しげな占い師に「きみ、あと7日で死ぬよ」といわれ、見栄やらなにやら、くだらないしがらみを捨て切って、ようやくまともな女として生まれ変わるあたりが、本作のラブコメとしての新アイデアである。

30点
映像だけ豪華な、ファン専用2時間テレビスペシャル

織田裕二主演の人気刑事ドラマの映画化PART2。

私は、残念ながらTV放映中にすべての回を見ていたファンでは無いので、このシリーズの事については素人である。そういう人間の意見だという事を最初に記しておきたい。シリーズの熱烈なファンの方は、参考程度に流していただいたほうがいいだろう。

本作は、スタッフ総勢300人、キャスト、エキストラまで、ほとんどすべてを前作・TVシリーズと同じにしたというこだわりで作られた。お台場でのロケによる映像は、ところどころ、さすがは映画と言いたくなるような迫力の映像で、さぞ前作は儲かったのだろうと思わせる金のかけ方である。低予算じゃ使えない機材をたくさん使っているので、邦画にしてはめずらしい構図の映像をたくさん見ることが出来る。

30点
バサラ祭のシーンはインパクト抜群だが……

『萌の朱雀』(97年)で、カンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞した河瀬直美監督が、出身地の奈良を舞台に描く人間ドラマ。

ドキュメントタッチの映像で、平凡な人々を暮らしを淡々と追う。手持ちカメラの長まわしが、その基本である。特に、最初のシークエンスは、しつこいくらいにずーっとカメラが人物を追いつづけるので、非常に目を引く。

しかし、この長まわしってやつは、少々芸が無さすぎやしないか。ポイントで効果的に使うというならともかく、あまりにそればかりでは、客は疲れるし飽きもくる。

30点
ダナ・カーヴィギャグを楽しめる人なら、評価は一変だが

アダム・サンドラー(製作総指揮)が、敬愛する先輩コメディアンのダナ・カーヴィ(主演)に、持ちネタを心おきなくスクリーン上でやらせてあげたコメディ映画。

基本的にこの映画の観客は、ダナ・カーヴィのファンである事が条件かのような映画である。もしくは最低でも、英語のギャグが理解出来る語学力が必要だ。

なぜかというと、ダナ・カーヴィの持ちネタというのは、基本的にモノマネだからだ。つまり、スクリーンを見ていて、「あ、これは、誰々の声真似をしているな」というのがわからなければ話にならない。字幕を見ているだけでは、クスリとも笑えない場面の連続であろう。

30点
20億円もかけたのに……

日本映画界の巨匠、篠田正浩監督の引退作品。邦画としては最大級の、20億円もの製作費と、10年にわたる構想を経て完成した大作である。

『スパイ・ゾルゲ』の特徴その1、壮絶に長い。始まってからすぐ成田を発てば、映画が終わるまでにブラジルくらいまで軽く往復できるんじゃないかと思うほど長く感じる。もちろん、別に上映時間が3時間を超えても、それ自体はいいのだが、この単調さはいかんともしがたい。

『スパイ・ゾルゲ』の特徴その2、古い。 これは、数十年前が舞台だから古く見えるとか、そういう問題ではなく、映像のセンスから音楽のセンスから、みな古い。例えば音楽で言えば、こうした時代ものに、クラシックの有名曲ばかりを随所に挿入するセンスというのは、どうであろう。出来上がった時からすでに古典というのは、ときには格調高いと評されることもあるが、この映画の場合はそういう感じではない。

30点
ファッションなどのディテールを楽しむ映画

老境に入ったギャングが、自分の半生を振り返る回想ドラマ。若き日のギャングスターが、クールなボスにあこがれ、悪の道をのし上がって行く様子が描かれる。その前半はやや退屈で新味や意外性が無い分、あまり面白くない。

美術にはかなりこだわっており、ギャングたちの60年代ファッションは、とてもカッコいい。ボスの部屋の調度品のデザインも素敵で、あの座りやすそうな椅子は、私もちょっぴり欲しくなった。

本作は、そうしたレトロ趣味の調度品や、60年代のスーツ・ファッションや家具、車などを見て楽しむことができる映画である。そうしたものに興味が無い場合、映画自体への興味を持続させるのも難しくなりそうだ。

30点
宣伝会社によるネタバレが痛い

サディズムの語源ともなった、マルキ・ド・サドの半生を描いたドラマ。彼と、この時代に興味がある人向けである。

1番の見所は、女優さんが体当たりで演じる処女喪失シーンである。

ロスト・バージンが見所の映画なんて、上野のポルノ映画館とこの映画くらいなものかもしれないが、全編を通してみれば、そんなに裸が出てくるわけではない。

30点
チープなSFコメディでも製作費は大作並

アーノルド・シュワルツェネッガーの『トータル・リコール』を、思いっきりチープにしたような雰囲気のおバカ系SFコメディ映画。しかしこれ、じつは製作費が一億ドルもかかっている。たぶん、その99%くらいは、主演のエディ・マーフィーの出演料で、残りの1%がCG工房の社員達のコーヒー代だと思う。

……などと軽口をたたきたくなるような、不思議系の奇妙な作品だ。内容はおバカなコメディだが、CGなど特殊効果関係に手抜きは無く、こんなバカっぽい映画になぜそこまで……といいたくなるような手間のかかった事をやっている。

昔の黒人映画でおなじみの、タランティーノも敬愛する女優パム・グリアーが、エディの母親役に扮するのがひとつの見所。肝心のエディ・マーフィーは、もちろんエディ・マーフィーを演じる。『I・SPY』でも『48時間』でも、彼はたしか同じ役であった。いや、それぞれ役名はあったかもしれないが……。

30点
テンポがのろい意外性ゼロの3角関係ドラマ

親友同士の男と、一人の奥さんを巡る3角関係恋愛ドラマ(エロ無し)。意外なことにこれは、中国初のリメイク映画だったりする。ハリウッドは見習ってほしい?!

舞台は1946年の中国。ユイウェンの嫁いだ由緒ある旧家は、抗日戦争に巻き込まれて没落してしまう。それでも彼女は、気難しい病気の夫リーイェンとその妹シュウ、使用人ホワンの4人で静かな毎日を送っていた。そんなある日、ひとりの男が訪ねてくる。彼はかつてリーイェンと共に医学を志し、現在は上海で医者になっているチーチェン。夫が旧友との再会を喜ぶ一方、ユイウェンは困惑していた。なんと、チーチェンは彼女が16歳の時の初恋の相手だったのだ。この思いがけぬ再会に、ユイウェンの心は掻き乱されていく。

いわゆる古めかしいメロドラマだが、話の展開速度が相当遅いので、せっかちな人には向かない。映像は美しく、中国映画らしい趣に満ちている。

30点
日本語版の出来の悪さを何とかしてほしい

シネコンで、聴覚障害者と健常者が同時に鑑賞出来るという、日本発のバリアフリー上映が行われると話題の映画。原作は、ドイツの超有名な古典。この作者はミステリも書いていて、一部に根強いファンがいる。

そんなわけで、『エーミール』といえば、ドイツ本国では全員がストーリーを知っているお話だ。この物語は、今でも通用する輝きを持っていると私は思っている。

時代を現代に設定したため、この古典童話には、一部アレンジが加えられている。例えば子供探偵団の面々は、携帯電話やパソコンを駆使してスマートに捜査活動をする。また、原作では脇役だった女の子が、ほとんど主役となって大活躍する。このへん、いかにも現代の映画らしい。

25点
清水崇ホラーらしさはあるが

清水崇監督の持ち味というのは、都市伝説を聞いたときのようなとらえどころのない不安感や恐怖を、うまいこと映像としてみせる点にあると私は考えている。

姿を消した子供がしばらくすると戻ってくる不思議な事件が起きた。しかもその家では大人が間もなく死を遂げていた。事件を調べる記者の江崎駿也(有岡大貴)は、やがて恋人の保育士、原田尚美(門脇麦)がその"死のパターン"にはまり込んでしまったことを知る。

ネットで都市伝説とか創作ホラーのたぐいを読むのが私は結構好きなのだが、素人の作品でも、設定の身近さや謎めいた舞台が絶妙で、やたらと先が気になる上手な語り口のものが少なくない。

25点
なおこの点数は間違って昆虫好きの一般人が見ないためです

1の物足りなさを見事に伏線としたガチ恐怖ムービーである2で最高点に達したムカデ人間シリーズは、最終作となる3で残念ながら失速した。

あらゆる数値が全米最悪といわれ、経営の改善を求められている刑務所の所長ビル(ディーター・ラーザー)。妙案を探す彼に助手のドワイト(ローレンス・R・ハーヴィー)は、なぜかB級映画「ムカデ人間」シリーズをすすめてくる。はたして500人の囚人をかかえる所長は、どんな手段で刑務所の経営改善を目指すのだろうか。

……とはいえ、シリーズの中ではもっともあからさまに社会批判も行っており、もう少しだけうまく作れていたらと思わせる惜しい一本でもある。

25点
手抜きな中継ぎ

空前のヒットとなったハンガー・ゲームシリーズは、放っておいても最後まで大勢がついてくるため、この3作目で相当手を抜いたダメ中継ぎをもってきた。観客もずいぶんとなめられたものだ。

闘技場から生き残ったカットニス(ジェニファー・ローレンス)は、第13地区のコイン首相(ジュリアン・ムーア)のもとで重大な事実を知る。それは独裁国家パネムに対抗する反乱軍の秘密基地が存在し、すでに決戦準備が進められているということであった。国民的人気を誇るカットニスは彼らのシンボルとして宣伝活動を担うことになるが、パネムはそれに対抗するプロパガンダとして彼女のパートナー、ピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)を持ち出してくるのだった。

ファイナルと名はつくが、「ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス」を一言で言うならつなぎにつきる。テレビ番組のロケなど長時間にわたるとき、小腹が減ったときに自由につまめるおにぎりとか、そんなものをツナギと呼ぶが、その程度の出来。食べてしまえば存在を忘れてしまうような映画である。

25点
これじゃない感が強い

岩明均の原作コミックを実写映画化した「寄生獣」はこの秋一番の大作として期待される話題作。だからこそ大ヒット請負人の山崎貴監督で挑んだわけだが、残念ながら失敗作に終わった。

のちにパラサイトと人類が呼ぶことになる奇妙な寄生生物に脳を食い破られる寸前、とっさの判断で食い止めた高校生・泉新一(染谷将太)は、しかし右手に寄生されてしまう。はからずも共生関係となったその生物をミギー(声:阿部サダヲ)を名付けた新一だが、他の寄生された者たちは他の人間を食料とすべく、周囲の人々をひそかに襲い始めていた。

脳すなわち人間らしさを残したまま寄生獣の力を得た人間の高校生が、100%寄生獣となった元人間たちと戦うホラー風味のアクションドラマ。この「人間らしさ」と母性の関係性というものが、重要な物語の要素となっている。

25点
≪0か100か≫

とんがった表現を次々と発表し、業界関係者の評価がすこぶる高い園子温監督の最新作『ヒミズ』は、良くも悪くも評価が真っ二つに分かれるであろう問題作である。

15歳の住田祐一(染谷将太)は、借金まみれで家にも戻らぬ父親(光石研)、男に入れ込んで育児放棄している母親(渡辺真起子)に代わり、家業の貸しボート屋を一人で切り盛りしている。そんな彼は学校では浮いた存在だったが、クラスメートの茶沢景子(二階堂ふみ)だけはなぜか彼に盲目的に惹かれ、邪魔者扱いされても猛烈なアタックを繰り返すのだった。

監督は東日本大震災の発生に衝撃を受け原作の設定を大幅変更。震災直後という形で脚本を書きなおした。その意志は結末部分にもっとも色濃く反映されているが、さらに話題なのはこの映画が、おそらく初めて被災地で撮影され、公開される劇映画という点だろう。

25点
≪捕鯨国ニッポンのためにあるようなホラー映画≫

今回の東日本大震災や2月に起きたニュージーランド地震の直前には、沿岸に大量の鯨やイルカが打ち上げられる奇妙な出来事が起きている。野生動物が大地震の前にこうした異常行動をとる例は、これまで何度も報告されてきた。

そしてこのたび、イギリス沿岸部に鯨100頭が座礁した直後、隣のアイスランドのレイキャビク近くで火山が噴火。偶然というには恐ろしすぎる符合に欧州のネチズンたちが大騒ぎしている。

しかし私的には、鯨とレイキャビクを重要キーワードとして持つホラー映画『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』の公開直前にそんな事件が起きたことのほうが驚きである。これはもう間違いなく、地震兵器HAARPを使ったアメリカのシークレットガバメントとシーシェパードの陰謀に間違いない。

25点
≪大人には物足りず、子供には後味悪い≫

「手塚治虫の」などと有名人の名前がタイトルについていると、とたんに不安になるわけであるが、本作はそんな私の超高精度危険物探知アンテナの実力がみごとに証明されたダメ作であった。

2500年前のインドに、世界を変えると予言される男子が誕生した。緑豊かな釈迦国の王子ゴータマ・シッダールタ(声:吉岡秀隆)は、そうした期待にそぐわぬ心優しい少年へと成長してゆく。だが隣国のコーサラ国は釈迦国を狙い、軍勢を整えている。そんなきな臭い情勢下、優しいゴータマにも戦うリーダーの資質が求められてゆくのだった。

お釈迦様ことシッダールタの生涯を、3部作で描く長大なプロジェクトの第一弾。日本アニメの基礎を作り上げた東映アニメーションが、手塚治虫の最高傑作と称される原作をアニメ化した、業界の期待を担う本年度有数の話題作である。

25点
悟りにチャレンジ

『仏陀再誕』は、この秋300万人の動員を目標とする、日本アニメーション期待の超話題作である。

女子高生、天河小夜子(声:小清水亜美)は、名物記者の金元にあこがれ、ジャーナリストを目指している。ところがその金元が自殺して以来、彼女には霊のようなものが見えるように。一方、ある宗教団体の教祖は奇跡を連発、テレビで大人気となるが……。

子安武人や銀河万丈、三石琴乃といった実力派声優と、業界有数のVFXスタッフをそろえた、まさにジャパンアニメーションの総力を結集した超大作。エル・カンターレことブッダの生まれ変わり、大川隆法(幸福の科学)が製作総指揮として、自らの大ベストセラーを息子の大川宏洋脚本でアニメ化したものである。

25点
親殺しの優等生が、少年院で空手の修行

橋本以蔵原作・たなか亜希夫画による、一風変わった格闘漫画『軍鶏』は、事実上の香港映画としてより珍妙な仕上がりとなった。

裕福な両親のもと名門私立高校にかよう成嶋亮(ショーン・ユー)は、受験のストレスに耐え切れなかったのかある日突然両親を惨殺する。亮は少年院でも、世間を騒がせた親殺しと軽蔑され猛烈なイジメを受ける。このままでは殺されると悟った彼は、終身刑の囚人で空手の達人・黒川(フランシス・ン)のもとで猛特訓。自衛する能力を身に着けようとする。

個人的に原作漫画の中で圧倒的に面白いと思うのは少年院編で、その後のリーサルファイトや中国編はイマイチ、ダンサーがでてきてちょっと復活したかな、といった感じ。映画版では、リーサルファイト(K-1みたいな格闘イベント)のスター、菅原直人(魔裟斗)と主人公が対決するまでを描いている。

25点
『世界の中心で、愛をさけぶ』劣化リメイク

いわずと知れた、『世界の中心で、愛をさけぶ』の韓国製リメイク。

男子高校生スホ(チャ・テヒョン)は、やさしい性格だがちっともハンサムではないから、自分がもてるとは露ほども思っていない。ところが、中学校のころから彼に想いをよせる女子生徒がいた。しかもそれは、クラス中のマドンナ的存在スウン(ソン・ヘギョ)だった。ボイスポケベルで愛を告白しあった二人は、順調に交際を進めていくが、すでにそのころスウンの身には、不吉な病魔の影が忍び寄っていた。

日本版オリジナルに比べ、ポケベル文化や、犬が客引きする民宿といった、韓国らしい独特のムード、文化を前面に押し出した作品になっている。明らかに、韓国人の観客向けにチューニングされているといった印象を受ける。そんなわけで日本人にとっては、原作小説の魅力であったノスタルジーを感じにくい。……となると、それをわざわざ日本人が見る意味がよくわからないが、まあそれは置いておこう。

25点
監督が、原作の魅力をイマイチ理解していない?!

大場つぐみ&小畑健による原作漫画『DEATH NOTE』は、週刊少年ジャンプの連載ものとしてはかなり異色の内容だったが、その完成度の高さにより、多大な人気を博した作品だ。私自身にとっても、ここ数年読んだ漫画作品のなかで、ナンバーワンに挙げたいほどの大傑作である。その実写映画化である本作は、前後編が撮影され、立て続けに公開(後編は10月)されるという、異例の事態となった。製作費も20億円と堂々たるもので、ファンの間ではいやがうえにも期待が高まっていた。

主人公の学生、夜神月(やがみ らいと、と読む。藤原竜也が演じる)は法曹界を目指していたが、法の限界を知り挫折感を味わっていた。そのとき、偶然拾った黒いノートが彼の運命を変える。それは死神が使うデスノートというもので、名前を書かれた人間は必ず死ぬ。ライトは、世直しのため、次々と世界各国の犯罪者の名前を書き込むが、やがて犯罪者の大量死を不審に思った世界中の警察やFBIが動き出す。そしてインターポール(国際刑事警察機構)は、天才的な頭脳を持つ探偵、通称"L"を、捜査アドバイザーとして警察庁に送り込む。

ここから、二人の天才の騙しあい、壮絶な頭脳戦が開始される。Lの捜査をかいくぐって、ライトは犯罪者殺しを続けることができるのか、そこが(原作の)最大の見所である。

25点
セガールが人身売買組織をぶっ飛ばす

スティーブン・セガール主演の犯罪アクション。先日公開されたW・スナイプスの『アウト・オブ・タイム』、近日公開のジャン=クロード・ヴァン・ダム主演『レクイエム』と3本あわせて、「熱い男の祭典<火祭り>燃えてる男大集合!!」と呼ぶ……らしい。要するに、ザクでも100機で襲い掛かればガンダムに勝てるはず、という宣伝戦略である。

元政府機関の凄腕エージェント(S・セガール)は、今は引退してカナダの山小屋で隠居の身。いまやボランティア団体の紹介で知り合ったポーランド在住の孤児の少女との文通が、唯一社会とつながる線だった。ところがある日少女が失踪、不審な影を感じた彼は孤児院のあるワルシャワへ飛ぶことにした。

さて、今回われらのセガールがぶっ潰すのは国際人身売買組織。いたいけな少女らを売り飛ばす外道たちに、セガール拳の天誅が下る。そこのけそこのけセガールが通る、とばかりに無敵のヒーローが悪を追い詰めていく。

25点
見所は上戸彩のおっぱいもみもみ?!

『蹴りたい背中』で芥川賞史上最年少受賞者となったニュースが記憶に新しい綿矢りさの同名デビュー小説の映画化。主演は人気タレントの上戸彩。

主人公の女子高生(上戸彩)は、突然部屋のすべてのものを捨ててしまう。母親には内緒で学校に行くこともやめてしまった。そんなある日、彼女が捨てたパソコンを拾っていった妙に大人びた小学生(神木隆之介)から、エロチャットのサクラをしないかと誘われる。

なぜヒロインが突然持ち物を捨ててしまったのか、彼女は最後にどのような選択を行うのか。登場人物はとっぴな性格設定で一見リアリティはないが、そこに描かれるテーマはシリアスで普遍的、というわけである。

25点
チリ人妻アニータの映画デビューは見事にボカシ入り

青森県住宅供給公社の巨額横領事件で、千田郁司受刑者が10億円以上ともいえる大金をチリ人の妻に貢いでいたのは記憶に新しいが、その妻ことアニータ・アルバラードが本国で映画出演デビューしたという触れ込みのエロティック・サスペンス。

弟とともに田舎町から首都サンチアゴにやって来たシルビオは、17歳の弟の筆おろしのためにストリップバーで娼婦(アニータ・アルバラード)をあてがってやる。そのバーでマフィアのボスに認められた兄はやがて組織をのし上がっていくが、兄弟揃ってボスの女に惹かれてしまったがめに、3人の運命は狂って行く。

エロシーン満載のB級ポルノかと思っていたが、チリ本国での評価は、アカデミー賞外国語映画賞など、いくつかの国際的な映画祭に出品された事からもわかるとおり、案外真面目な作品らしい。

25点
台湾社会の現代を描くというが、説得力がない

カンヌ国際映画祭の高等技術院賞を受賞した、現代の台湾を描く6つの物語の序章として企画された作品。

ってことは、今後10年間だかで、あと5本の続編が作られるということか。なんでも、主演のスー・チーは、全作品に出演するとかいう話だ。だが、人気女優のスー・チーが、はたしてホントにこんな地味な映画にずっと出続けるのかどうか、大いに疑問だ。

『クローサー』では、その美しさで、男性諸氏の心を奪ったスー・チーだが、この映画の冒頭では、ブサメイクで荒れ果てた女を表現。特に、櫛も入れていないようなヘンなヘアスタイルには衝撃を受ける。

20点
原作の魅力を理解していないつくり

「秘密 THE TOP SECRET」の原作は、清水玲子による少女向け漫画ながら本格的なSF作品である。原作はボーイズラブ風味もある異色作で、いわゆる腐女子的なファンも多いだろうと思ったのか、この実写映画を任されたのは実写版「るろうに剣心」シリーズを大成功に導いた大友啓史監督。だが、その期待は残念ながら裏切られることになった。

死んだ人間の脳をスキャンし、生前の記憶を映像化するMRIスキャナーが開発された。これを犯罪捜査に生かすため、科学警察研究所法医第九研究室(第九)が設立される。若き室長・薪剛(生田斗真)のもとに配属された新任の青木(岡田将生)は、難事件を次々解決する薪室長の手腕に驚嘆する。だがMRIスキャナーは、決して万能ではないのだった。

生田斗真、岡田将生、松坂桃李といった若手の人気者をそろえたキャスティングといい、原作といい、監督の人選といい、ちょいと個性的なオンナノコ観客をターゲットに作ったと思われるが、この出来ではどうにもならない。

20点
ぶっとびすぎ

「スポンジ・ボブ」は日本ではキャラクター先行の人気となっていて、中身も知らずにストラップをつけている女の子も少なくない。海外ではやれゲイの象徴だとか、民主主義運動のシンボルになったりなど、よくわからない解釈で受け取られていたりもする。

そんな世界的なビッグウェーブに乗るどころか海岸に近づいてもいない私があれこれいうのは申し訳ないのだが、それにしてもこいつはそうとう乗る人を選ぶサーフボードである。

海底都市ビキニタウンに暮らすスポンジボブは、ハンバーガーショップ「カニカーニ」でアルバイト中。そんなある日、海賊のバーガー・ビアード(アントニオ・バンデラス)がカニカーニ一番人気のバーガーのレシピを奪ってしまうのだった。

20点
デヴィッド・エリス版を見てみたかった

日本でオリジナルビデオアニメなるジャンルがうまれてしばらくの間、作家性の強いユニークな作品がいくつも生まれた。ある時代のポルノ映画界がそうだったように、裸とロリータな女の子をある程度入れておけば、多少とんがった表現や物語を受け入れる土壌がそこにはあった。「カイト/KITE」のオリジナルとなった18禁アニメ「カイト」(98年)もそのひとつで、その質の高さとオリジナリティから海外で高い人気を誇っていたりする。

金融危機で崩壊したこの近未来では、少女を性奴隷として取引していた。サワ(インディア・アイズリー)は、父の親友で刑事のアカイ(サミュエル・L・ジャクソン)に仕込まれた暗殺術で、こうした人身売買組織と日夜戦っていた。そしてサワは娼婦のふりをして、そのボスに近づいていくのだった。

「カイト」の実写版である本作は、しかしオリジナルとはずいぶん異なる内容となった。序盤、エレベーターにおける暗殺シーンはまるでアニメ版のコピーのようでワクワクさせるが、ここで殺される人間の素性からしてまったく違う。

20点
主演女優のキャラ違いが惜しい

女優が初ヌードになるというのは、これだけ裸が溢れる現代においても特別なものだ。まして本人たちにしてみれば、どこで脱ぐかは一大プロジェクトのようなもの。人気など周囲の情勢をはかりながら、最高のタイミングで発表したいと考えるのが当然だろう。

だが、その戦略的思考が正しいとは限らないのが怖いところ。市川由衣がすべてをさらけ出した「海を感じる時」を見るとまさにそう痛感する。

新聞部の部室で授業をさぼっていた女子高生・恵美子(市川由衣)は、同じくやってきた先輩の洋(池松壮亮)に、密室の中で唇を奪われる。以来一途につくし続ける彼女は、しかし洋からは「女の身体に興味があっただけで好きでも何でもない」と冷たくあしらわれてしまう。

20点
原作の魅力の半分

「あまちゃん」大ヒットで絶好調の脚本家・宮藤官九郎が三池崇史監督とタッグを組んで送る新作アクションコメディということで期待半分、不安半分だったが、結果的には後者の予感が当たった形だ。

正義感だけはあるが警察学校から巡査となった今まで成績ドンケツ、警察組織のルールにはまることができない菊川玲二(生田斗真)。とうとうクビを宣告されてしまうものの、それは署長らのテストであった。彼はレイジの資質に期待しており、武闘派暴力団「数寄矢会」に潜入捜査官=モグラとして送り込みたいとの思惑があったのだ。

日本映画にはヤンキー枠というか、地方向きの企画というものがあって、公道レースだとか不良だとかが題材になった作品が定期的に作られている。これもその一環だが、こういう作品は作品の質にかかわらず、DVD化後の回転が良いのだという。

20点
「幸福の科学」色をもう少し抑えたら

日本という国には色々と構造的問題があるし、取り巻く国際情勢も一触即発……とまでは言うまいが、話のネタには事欠かぬ状況である。

なのに、それを映画のテーマにする人がいない。タブーやしがらみだらけなのは理解できるものの、まともな社会派エンターテイメントを望む人々にとっては欲求不満が募るばかりだ。

だが、アニメーションながらそれらを打ち破る、強烈な社会批判スペクタクルが登場した。「神秘の法」がそれだ。

20点
≪芸能人の戯れ≫

芸能人のように人前に出る仕事をしていると、おのずと自我は肥大し、ときにはおかしな行動をとる人が現れる。空気の読めない主張をしてブログが炎上したり、高慢キャラで映画批評サイトを作ってみたり、刺青に彩られた菊の門をご開陳したりと、その行動内容は多岐に渡る。

映画好きの有名人が、無謀にも映画作りに挑戦するというのは、その中でもありがちなパターンだ。高揚感漂う撮影現場、クランクアップの感動、魔法のような編集により撮影時の何倍もの魅力を放つ完成品。そうした仕事にかかわっていれば、いつか自分も……と思ってしまっても無理はない。

若くして成功した映画俳優、小栗旬がそうだったのかは知らないが、映画好きで知られる彼も、「シュアリー・サムデイ」でその困難(初監督)へ挑むこととなった。

20点
1話逃さず見ていたファンならもっと評価アップだとは思うが……

人気ドラマの完結編は、映画館にて有料でご視聴いただく。広告不況であえぐテレビ局の苦境がしのばれる苦渋のビジネスモデルである。しかも『のだめカンタービレ』の場合は、その映画版が前編後編と分かれている。当然、入場料も二回徴収されることになる。ファンの懐にとっても、テレビ局と不況気分を共有できる仕組みである。

はたして『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』は、二本の映画に分ける必然性があったのか。今回私はそこを重要ポイントとして鑑賞した。(以降、前編のネタバレを含むのでご注意ください)

野田恵ことのだめ(上野樹里)と千秋(玉木宏)はいったん別居し、それぞれの道を歩むことになった。だが千秋との共演どころか、いつまでたっても課題曲にOKが出ないのだめは、一人で焦りまくる。これに対し千秋は、Rui(山田優)との共演が決まり張り切っていたが、その演目がやがてのだめとの関係に致命的なショックを与えることになる。

20点
生誕100年以外に理由や情熱があったのか

松本清張の代表作で、数々のサスペンス劇場の元ネタとなった『ゼロの焦点』が、原作者の生誕100年記念で再映画化された。原作は1ページ目からワクワク感に襲われるエンタテイメント作品だが、映画版は気を抜くと最初の1分間から睡魔に襲われる、斬新な映像解釈である。

結婚式からわずか7日後に失踪した夫(西島秀俊)を探すため、禎子(広末涼子)は以前の勤務地である北陸・金沢に向かった。だが見合い結婚の彼女は、夫の過去をほとんど知らない。夫との交流もあった地元名士の妻・佐知子(中谷美紀)らの助けを借りつつ探り続けるが、その行く手を阻むように殺人事件がおきる。

犬童一心監督は女性を綺麗に撮る人で、3人ヒロインの本作にはある意味うってつけ。対する主演・広末涼子も先日公開されたばかりの「ヴィヨンの妻」の悪女役から一転。本来のイメージである清純無垢な若妻役をかわいらしく演じる。

20点
誰一人警察官に見えない

日本映画史に輝く角川映画ブームを巻き起こした大プロデューサー、角川春樹自ら監督・脚本を担当する『笑う警官』は、「150万人動員できなかったら、もう映画は作らない」と本人が語る入魂の一作である。

北海道警の汚職疑惑が囁かれる中、元ミス道警の変死体が発見される。容疑者はかつて彼女と交際していた津久井巡査(宮迫博之)。だが、異例の射殺命令に不審を抱いた佐伯刑事(大森南朋)は、仲間を集め秘密裏に真相を探り始める。

入魂の一作が傑作になるとはもちろん限らないわけで──というよりこの方の場合、本気で球を投げるとあさっての方角へすっ飛んでいくケースが少なくない。小説家・佐々木譲(ささきじょう)の人気シリーズ第一作を映画化した本作でも、見事なまでの暴投ぶりを見せ付けてくれた。

20点
監督の人選ミス

小林多喜二によるプロレタリア文学の傑作『蟹工船』は、最近ブームとなり本作制作のきっかけとなった。年越し派遣村がニュースになったとおり、単純労働者のあまりの待遇の過酷さから、この原作に共感する若者が多いのだという。

今でこそ、「自分探し」「夢を追いかける」なんて言葉が罠で、そんな事をしていると、あっという間に最底辺の派遣奴隷に落ちぶれる現実が広く知られている。だが、いま30代くらいの世代にとってはそうではなかった。こうした口当たりのいい言葉に浮かれ騙され、将来を棒に振った人たちが今、派遣村で泣いている。

私も同世代の一人として、こうした現実には深い悲しみと猛烈な怒りの感情を持ち続けている。若い人たちには、私たちの世代の膨大な数の屍をしかと見て、絶対に同じ轍を踏まぬようにしてほしい。今の日本では、一度落ちたら這い上がることは不可能、もがき苦しみながら一生を終えると認識していたほうがよい。

20点
天国で原作者が泣いている

今年の夏は、邦画の話題作がたくさん登場する。『アマルフィ』や『ごくせん THE MOVIE』『蟹工船』等々、とても華やかだ。

だが、深い失望を味わうことで人間的な成長を遂げたい人にとっては『MW-ムウ-』が一番だ。たったの1800円で、これほどの後悔と、本作を選んでしまった自分への嘲笑気分を味わえる逸品はめったにない。

16年前の虐殺事件の生存者・結城美智雄(玉木宏)は、ある目的の元に凶悪犯罪を重ねていた。その友人、賀来裕太郎(山田孝之)は、神父という立場から彼の罪を嘆きながらも、同じ虐殺事件の生存者としてどうしても結城を告発できず、不本意ながら彼に協力するのだった。

20点
ジェシカ・アルバ目当ての方は要注意

『幸せのセラピー』は、久々にだまされた感をたっぷり味わえた、爽快なる一品であった。

地元名士ジャコビー一族の娘ジェス(エリザベス・バンクス)と結婚したことで、彼らの経営する銀行に勤めているビル(アーロン・エッカート)は、一見誰もがうらやむ人生を送っている。ところが実際は、他の役員たちに無能とばかにされ、休日には好きでもない狩猟につきあわされるなど、親族からのプレッシャーに押しつぶされる日々。そんな彼のオフィスに、母校のメンター制度(OBの元で社会体験をする制度)によりインターンとして男子高校生(ローガン・ラーマン)がやってくる。奔放なその生き方に、影響を受けるビルだったが……。

だまされたといっても、別にこの映画がミステリというわけではなく、単に事前に想像していたものとはまったく違った、という意味にすぎない。

20点
チョン・ジヒョンのセーラー服姿に1800円を払う価値を見出せるか

本作のオリジナルとなったアニメーション作品『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000年、日本)は、クエンティン・タランティーノ監督大のお気に入り。『キル・ビル』(03年)のアニメ部分を作ってもらおうと、製作会社のProduction I.Gに直接出向いたエピソードは映画ファンの間では有名だ。

『ラスト・ブラッド』は、海外での評価が高いそんな『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の実写映画化。戦国時代以来、人類の敵としてはびこるオニ=ヴァンパイアと戦う日本人少女役を、「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンが演じているのが話題だ。

アメリカがベトナム戦争遂行中の1970年。ある在日米軍基地内に侵入したオニを退治すべく、サヤ(チョン・ジヒョン)はアメリカンスクールに潜入する。日本刀を武器に超人的な活躍を見せる彼女の最終目的は、すべてのオニの起源といわれる最強の敵オニゲン(小雪)を倒すことだった。

20点
日韓の食文化の決定的な違いがよくわかる

『食客』は、ここ数年公開された韓国映画の中では突出して面白い。だが、「映画を見て感動したい」とか「心に染み入る傑作をみたい」とか「幸せな気分になりたい」とか「映画作りの妙に感心したい」といった、99パーセントくらいの人が期待するものはこの映画の中にはまったくないので、その点は注意が必要である。

韓国最高の料理人として、朝鮮王朝由来の名誉ある包丁の継承者を決めるコンテストが開催される事に。そこでテレビ局員のキム(イ・ハナ)は、いまは料理界から身を引いているが圧倒的な実力を持つ若き料理人、ソン(キム・ガンウ)を出場させようと彼の住む田舎に向かう。

何が面白いかって、こんなにも韓国らしい作品はない。あっても、日本で公開されることはほとんどない。あちらでは、大学の図書館でも大人気のマンガが原作とあって大ヒットしたが、日本でこんな内容の料理マンガがあったら、ヒットの前に笑いものにされるのがオチだろう。

20点
浦沢直樹の大人気漫画の映画化・三部作のパート2

まだ2作目の段階でいうのもなんだが、『20世紀少年』実写版は、きっと20年後くらいに「そういや昔、スゲー変な映画があったよなぁ」と人々に懐かしく思い出される存在になるのではないか。

こんなたわいもない話にこれほどの数のスターが集結し、どこかの会社のお偉いさんたちがこぞって巨額を投じ、いい大人が大マジメに作ってしまう。映画人というのは大ばか者というか、無茶というかKYというか、いずれにしても凄い人たちである。

とはいえ、こうした向こう見ずな暴走が、ときに歴史に残る傑作を生み出すこともあるわけで、一概に否定はできない。国民みながおとなしくなってしまったこの時代、たまにはこういうチャレンジがあってもいい。映画というジャンルには、それを受け止めるだけの力がまだあると思う。

20点
クォン・サンウ&ソン・スンホンが共演するクライムアクション

兵役逃れがバレ、入隊していたソン・スンホンの除隊後復帰作。そして、韓流大スターで涙の帝王ことクォン・サンウが初の悪役に挑戦。『宿命』はなかなかの話題作であったが、韓国ではイマイチとの評価であった。

裏社会に疲れ、足を洗おうとしているウミン(ソン・スンホン)は、そのための金をカジノ強奪で得ようとしていた。兄貴分のガンソプ(アン・ネサン)の指揮のもと、計画は成功したかに見えたが、親友と信じていたチョルジュン(クォン・サンウ)の裏切りで事態は最悪の展開へと転がっていく。

かつての仲間が敵味方に分かれ、悲しい宿命に身を落としていく話。ヤクザの内輪もめを描いた犯罪ドラマだ。

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