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85点
ファンのトラウマを晴らす感動のラスト

この記事を待っている方も多いようなので結論から先に言うと、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』はファン必見の出来栄え、文句なしの傑作と言える。

ユーロとロシアが管理する北極域に、新たな使徒が現れた。迎撃に当たった新型エヴァンゲリオンを駆る真希波(まきなみ)・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾(まあや))は、強敵を相手に恐るべき戦闘能力を発揮するが……。一方、日本の第3新東京市には、正規実用型のエヴァンゲリオン2号機のパイロットとして、式波(しきなみ)・アスカ・ラングレー(声:宮村優子)が赴任してくるが、気の強い性格から早くも碇シンジ(声:緒方恵美)、綾波レイ(声:林原めぐみ)らと衝突する。

人気キャラ、アスカの苗字が惣流から式波に変わったとおり、この第2部からはもう、完全なる新作。ストーリーも登場キャラクターも大きく変化する。それでもテレビ版の面影が、ストーリーおよび複数のショットに残っているが、それはもう味付け程度。

85点
西川美和監督のおそるべき手腕

かつてダコタ・ファニングがスーパー子役として鳴らしていたころ、私は彼女の中には40代のベテラン女優が入ってるに違いないと思っていた。あの演技力とインタビューの受け答えの妙は、そう考えないと説明がつかない。

同じように、『ディア・ドクター』を作った西川美和監督(30代、女性)の中には、50代くらいのオッサンが入っているのではないかと、最近私は本気で考えるようになってきた。

かつて無医村だった村で、長く村人から信頼されていた医師(笑福亭鶴瓶)が失踪した。共に働いていた地元の看護師(余貴美子)や、彼の元に東京からやってきた研修医(瑛太)でさえ、その理由はわからない。この静かな山間の村で、いったい何が起きたのだろうか。

85点
意外な社会派ロマコメ

世界最強のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマー(「アルマゲドン」「パール・ハーバー」等々)が製作するこのロマコメは、一見スィートな女の子向けでありながら、よく見るといかにも男が作ったような骨太さを感じさせるユニークな一品となった。

レベッカ・ブルームウッド(アイラ・フィッシャー)は、生来のお買い物好きがたたり、いまやカード破産寸前。一念発起して、憧れのファッション雑誌社の面接にチャレンジするが、得意のハッタリ全開の結果、受かったのはなんと経済専門誌。はたして彼女は、自らの正体を隠しきれるのか。

どう考えても最も不適切な人材を採ってしまった経済誌の運命やいかに、といったところ。無責任男ならぬ無責任ギャルの口八丁に乗せられて、お堅い業界人たちが翻弄される様子が楽しい。

85点
数ある映画版の中でも屈指の傑作

オバマ大統領の登場を機に、ハリウッド映画はネクラからネアカへと変化している。米国民のニーズがそうなっている、あるいは業界がそうした流行を作ろうとしているため、明るい企画が通りやすくなっているわけだが、中でも『スター・トレック』最新作はその典型例というべきエンタテイメント作品だ。

英雄的な艦長を父に持つ若者カーク(クリス・パイン)は、進むべき道が決まらぬまま、無軌道な青春時代を送っていた。だが、新型艦USSエンタープライズのキャプテン直々の誘いにより、父と同じ惑星連邦艦隊に志願。熱い性格のカークとは正反対に冷静沈着なスポック(ザカリー・クイント)と反発しあいながらも、メキメキ頭角を現していく。

66年に始まった初代シリーズ『宇宙大作戦』からおなじみのメンバーの、若き日々を描くSF青春ドラマ。その出会いから、いかにして堅い絆で結ばれていくかをテンポよく追いかける。冒頭に書いたとおり、グダグダと悩む姿ではなく、若者らしくストレートに突っ走る前向きな雰囲気が特長だ。

85点
じつは最高のファミリー向けムービー

「若いころに戻ってやりなおしたい」とは、12歳から90歳まで、それこそオールエイジの共感を得られるテーマである。たとえ相手が小学生だって、「過去に戻れるなら、いつに戻ってみたい?」と聞けば、大いに盛り上がることは間違いない。それが人間というものだ。

さえない中年マイク(マシュー・ペリー)は、自社製品であるED治療薬のプロジェクト会議で、またもろくでもない目にあい、落ち込んでいた。女子高生の娘(ミシェル・トラクテンバーグ)にはバカにされ、息子の尊敬も得られない。何より大恋愛の末結ばれた妻(レスリー・マン)との関係が、破綻寸前に陥っていた。そんなある日、母校を訪れたマイクは怪しげな用務員の力により、17歳当時の姿(ザック・エフロン)へと変身してしまう。

この話の面白いところは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように実際に"過去に戻る"のではなく、主人公の"外見だけが17歳になる"という設定。

85点
大人の男のための、本格ハードボイルド

いつも一人だからさびしいけど、世界中に出かけられて、報酬はいい。ニコラス・ケイジ演じる男がそんな風に自分の仕事を紹介する場面からはじまる本作。そんな仕事があったら応募が殺到しそうだが、その業務内容はひとごろし。『バンコック・デンジャラス』は、引退を願う殺し屋の苦悩と恋心を描く、大人の男のためのハードボイルドである。

成功率100%を誇る凄腕の暗殺者ジョー(ニコラス・ケイジ)は、タイ・バンコクで請け負った4件の殺しを最後に引退を決意する。自らに厳しいルールを課すことで生き抜いてきたジョーだったが、口のきけない薬局の店員フォン(チャーリー・ヤン)の純朴でやさしい人柄にふれ、惹かれあう状況の中で、完璧な計画に狂いが生じていく。

ニコラス・ケイジの声には、どこか安心させられるような魅力があり、そのモノローグで進行する冒頭から、観客はこのキャラクターに魅了される。

85点
本格映像で楽しむ銃撃戦

自称「100年に一度」の金融危機とやらで、世界中のお金持ちがヒーヒーいってる今日この頃。そこで、このたび「金融の裏側」を描いた、タイムリーな映画が公開されることになった。

……とはいえ、じつのところ本作は「100年の一度の金融危機」とはほとんど関係がなく、タイムリーでもなんでもない。そう宣伝したほうがウケるだろうという大人の事情で、邦題もそれらしくつけているだけの事。

本当は「1991年のBCCI破綻に着想を得た、アクションサスペンス」と説明するのが正しい。ただ、そう言われても、ほとんどの日本人はピンとこないだろう。

85点
フカキョンドロンジョは、歴史に残る名ヒロイン

日本の映画界には妙な癖があって、到底実写じゃ成立しないような漫画・アニメ作品ばかり、なぜか好んで映像化する。ゴルゴ13、ルパン三世、デビルマン、そして二十世紀少年……。

その多くは事前に誰もが予想した通り、まれに見る珍作へと仕上がり、ダメ好きマニアの語り草となる。もはや、この国のお家芸といっても過言ではない。

しかし、ヤッターマンの映画化企画までもが本気だったとは、さすがの私も予想だにしなかった。ましてや、興収50億を狙える記録的な大ヒットスタートになろうとは。映画業界は変人ばかりだが、どうやら観客の方も引けをとらぬ猛者ぞろいだったらしい。

85点
弟がつれてきた恋人は、等身大のリアルドールだった

『ラースと、その彼女』は、リアルドールを恋人だと思い込んでしまった男の物語だ。

私はこの概要だけで興味を引かれた。なにしろ、人間以外の女性に入れ込む男子の多さにかけては、日本はトップクラス。マンガや美少女ゲームの登場人物が非処女と判明しただけで大騒ぎになり、ファンが泣きながらキレてDVDを割り、作者を休載に追い込むような国はほかにないだろう。なにしろあの中国でさえ、世界一のエロ民族は日本人だと一目置くほどだ。

件のリアルドールについても、先日世間を騒がせた事件があった。等身大のいわゆるラブドールと暮らしていた60歳の男性が、処分に困り山中に捨てたという話だ。

85点
テレビアニメ映画化としてはまれに見る成功例『メジャー』

NHKで放映している野球アニメ『メジャー』は、求心力の強い作品である。

ハイビジョンの鮮明映像の美しさもさることながら、主人公吾郎のキャラクターがいい。いつでも迷いなく突っ走り、不屈の心と陽気な性格で現実の壁を打ち破る姿は、やや大げさかもしれないが今の日本人すべてにとって新鮮で、ある種の憧れすら感じさせる。

原作漫画を知らずとも、あるいはシリーズの途中からたった一話だけ鑑賞したとしても、こちらを瞬間的に魅了するだけのパワーがある。くまいもとこや森久保祥太郎といった声優たちの、安定した演技も心地よい。今回は、待望の劇場版となる。

85点
地球に一台だけ残ったごみ処理ロボットの数奇な運命

「トロピックサンダー」の記事でも書いたが、最近はひどいネタばらしが目に付く。

だが、『WALL・E/ウォーリー』の場合は、宣伝側が自ら予告編で「事前に知るべきでない設定」を、何億円もかけて全国民へご丁寧に周知させているのだから参る。

もっとも「最大限の利益を出すため」に活動している彼らと、「作品を最大限に楽しんでもらうため」に情報提供を行う私たちレビュアーとは、方針が似て異なるのだからやむを得ないのかもしれないが。

85点
北野武監督最新作は、相変わらずややこしいゲージュツ家物語

『TAKESHIS’』(2005)、『監督・ばんざい!』(2007)に続く三部作とされる北野武監督の最新作には、数学を愛する監督らしいタイトルがつけられた。

足の速いヤツが遅いヤツに永遠に追いつけない"アキレウスと亀"の話は、もっとも有名なパラドックスだが、様々な意味あいで本作の中に投影されている。冒頭、これの詳しい解説がつく事でわかるとおり、上記三部作の中では観客に対して一番親切なつくり。その解説がよりにもよってアニメでなされるあたりは、前2作を難解だと批判されまくった監督からの皮肉を感じさせる。のっけから心憎い演出である。

富豪の家に生まれた真知寿(吉岡澪皇)は、何の疑いも心配もなく、ただ大好きな絵だけを描いて少年時代を過ごした。ところがあるとき環境が一変、一文無しになって意地悪な親類の家に預けられるハメに。だがこれは彼の波瀾万丈な人生の、ほんのスタートラインに過ぎなかった。

85点
吉高由里子が舌ピアスに全裸SMと大活躍

2004年の芥川賞は、綿矢りさ&金原ひとみという美少女二人の受賞でちょっとした話題になった。その金原ひとみの受賞作の映画化『蛇にピアス』は、原作者たっての希望により、72歳のベテラン蜷川幸雄(にながわゆきお)監督がメガホンをとることになった。

19歳のルイ(吉高由里子)は、渋谷でピアスだらけの男アマ(高良健吾)にナンパされる。舌先が二股に分かれたスプリットタンに興味を持ったルイは、そのままアマと同棲を始め、自らも挑戦することにした。舌ピアスの穴を徐々に拡張する技術を教わるため、アマは彫り物師シバ(ARATA)を紹介する。だが、シバの元に通うようになったルイは、彼からSMの調教を受けるなど、危険な関係にのめり込んでいく。

「身体改造に興味を持つ人間の心理を分析したくてこれを書いた」と、原作者の金原ひとみは語る。いきすぎたピアッシングをはじめとする人体・身体改造は、生物種としての本能に逆行する行為であるから、そこにはよほど強烈な意志か、病的な心理状態が存在する事が予想できる。劇中、ある人物が「(形を変えることは)神の領域」と語る場面がある。神に逆らうヤツは、その二種類のどちらかしかないというわけだ。

85点
ウィル・スミスが嫌われ者ヒーローを演じるトンデモ作

ウィル・スミスは暑い男だ。暑いというのは、彼が圧倒的に夏に強いという意味で、その出演作は7月初旬の独立記念日シーズン(米国でもっとも映画興行が盛り上がる季節)の歴代ベストテンに4本も入っている。そのひとつとなったこの『ハンコック』は、彼の主演作としては8本連続初登場1位という華々しい記録も奪取した。

まさにハリウッドのイチロー。いまアメリカでもっとも打率が高く、映画業界から絶対の信頼を置かれているのは間違いなくこのウィル・スミスといえる。

弾丸を跳ね返す体で空を自由に飛びまわり、車を簡単に投げ飛ばす怪力を持つハンコック(ウィル・スミス)。だが、チンケな悪党ひとり捕まえるのに町中破壊するその釣り合いの取れぬ行動に、市民やマスコミの人気は最低。現れると子供にまで中指をおっ立てられ、帰れ帰れとブーイングされる始末。すっかりひねくれてしまったハンコックは酒におぼれ、酩酊してさらに町を破壊する悪循環。そんな彼があるとき救助したのは、広告代理店のPRマン(ジェイソン・ベイトマン)。彼は命を救われたお礼に、ハンコックを人々から好かれるヒーローにしてやると、そのイメージチェンジを手伝うことに。

85点
児童買春、臓器売買を痛烈批判する社会派の日本映画

『闇の子供たち』は、「本年度日本映画界最大の問題作」と宣伝されているが、そのコピーに偽りはない。生半可な気持ちで見ては痛い目にあう、きわめて重い社会派ドラマである。

タイ・バンコクの支局で働く新聞記者、南部浩行(江口洋介)は、タイ闇ルートで行われている子供の生体臓器移植の取材を始める。その過程でフリーカメラマンの与田(妻夫木聡)、NGO職員の音羽恵子(宮崎あおい)らと出会い、協力して調べを進めていくが、その先には彼らの想像を超えたおぞましい現実と、裏社会からの制裁が待っていた。

児童買春、エイズ、人身売買、生きたままの臓器摘出……。先進国の人々の欲望、あるいは命を救うため、外国の貧しい子供たちの生存権が踏みにじられていく。それぞれが密接にかかわるこうした問題の本質を真っ向から暴き、観客の目の前にさらけ出す。

85点
イラク帰還兵が巻き込まれた驚愕の事件の映画化

『告発のとき』は、"実話を基にした映画"。つまり、映画にしたくなるほどビックリする何かが、コトの真相に含まれているわけだ。だがそのネタの良さに安心して工夫のない仕事をすれば、単に過去の事実を再現しただけの退屈な後書きが出来上がるだけ。じっさい「実話の映画化」の中には、そうした凡作、時間のムダ的失敗作が少なくない。しかし、それなら優秀な記者が書いた1ページの記事を読んだほうがはるかにマシなのだ。

04年11月、軍警察を定年退職したハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに、イラク帰還兵の息子マイク(ジョナサン・タッカー)が行方不明との知らせが入る。無断離隊は重罪であり、軍人一家としては赤っ恥もいいところ。ハンクは単身で聞き込みを開始し息子の行方を追うが、やがてマイクの他殺体が発見される。軍警察の反応の鈍さに閉口したハンクは、男社会の地元警察でシングルマザーとして孤立ぎみの刑事エミリー(シャーリーズ・セロン)の協力を得て、独自の犯人探しをはじめる。

『告発のとき』が「実話の映画化」として優れているのは、この驚くべき事件をワクワク感たっぷりのミステリードラマに味付けると同時に、強烈なメッセージをこめた超一流の政治映画に仕立てた点。「クラッシュ」(04年)がアカデミー賞で絶賛されたポール・ハギス監督の、これが第二作目というのだからその手腕には驚くほかない。単なるいち実話を元に、ここまで奥深い映画作品を作り上げた例は珍しい。

85点
出産とはかくも感動的なのか

『プルミエール 私たちの出産』は出産ドキュメンタリーだが、撮影しているのはフランスのイケメン監督である。

映画は、出産に詳しい人ほど度肝を抜かれるショッキングなシーンからはじまる。メキシコのある30代女性が挑んだ、世にもびっくりな出産方法。これを皮切りに、カメラは5大陸10カ国の女性たちのさまざまな「生み方」を追う。

10人を順に見せるわけではなく、あちこちに飛びまくるので誰が誰だかわからなくなりそうだが、各人の出産はなんとも個性的でバラエティに富んでおり驚かされる。

85点
ハル・ベリー&ベニチオ・デル・トロを圧倒する才能

『悲しみが乾くまで』に主演するハル・ベリーとベニチオ・デル・トロは、ともにオスカー受賞経験がある実力者で、その演技力に死角はない。だが、それでも本作は彼らがかすむほどに、別のある人物の圧倒的な才能を感じさせる。

オードリー(ハル・ベリー)の幸せな生活は、ある日夫が殺されて一変する。葬儀当日、夫の親友ジェリー(ベニチオ・デル・トロ)と久々に再会した彼女は、彼が相変わらずドラッグ中毒の後遺症により、廃人同様の暮らしをしている事を知る。これまでジェリーを快く思っていなかったオードリーだが、子供たちが彼になつくのを見て、空き部屋に越してこないかと提案する。

夫の死後、その親友と同居をはじめる女の物語。かといって、その二人が恋をする類の馬鹿げた話ではなく、深く傷ついた二人の人間がそれぞれ再生するまでの浮き沈みを、真摯かつ丹念に描く本格的な人間ドラマ。

85点
上級者ほどいなされる「過去のどの作品にも似ていない」ホラー映画

ホラームービーを大好きなアナタがこの『ザ・フィースト』を見ると、予測を裏切る展開の数々に感心することになるだろう。

舞台はテキサスの片田舎のしょぼくれた一軒家のバー。ここに突然、ショットガンを抱えた男が血相を変えて飛び込んでくる。文字通り血まみれのその男は、急いでバーを封鎖しろと怒鳴る。今しがた外で正体不明の怪物に襲われ、しかもすぐそこまで迫っているというのだ。

登場人物全員と観客は、こうして唐突に命がけのサバイバルバトルに巻き込まれ、わずか86分間の上映時間すべてを、ハラハラドキドキしてすごす事になる。少しも迷いのない、楽しい化け物ムービーだ。

85点
本家ディズニーによるセルフパロディ

『魔法にかけられて』は、ディズニー映画やTDR大好きなアナタがみたら、ショックで椅子から転げ落ちるか、腹を抱えて大笑いするかのどちらかという大問題作だ。

魔法の国"アンダレーシア"の森で暮らすジゼル(声:エイミー・アダムス)。やがて夢に見た王子(声:ジェームズ・マースデン)と出会い、結婚を目前にした彼女は、魔女(声:スーザン・サランドン)にだまされおそろしい国へと続く穴の中へ突き落とされてしまう。

伝統回帰の手描きフルアニメーションはさすが天下のディズニー、うっとりするような美しさ。だが、かわいらしいお姫様が魔女に追いやられた「永遠の愛など存在しない国」は……なんと現代のニューヨークであった。

85点
全プロレスファンは必見

『ガチ☆ボーイ』は、プロレスファンなら絶対に良さがわかる、ぜひ見てほしい傑作ドラマだ。

大学のプロレス同好会に、見るからにひ弱な五十嵐良一(佐藤隆太)が入部を希望してくる。技の覚えも悪かったが、先輩たちの教えは事細かにメモをとり、暇さえあればポラロイドも撮る熱心さに、部員らもすぐ打ち解ける。やがて念願のデビュー戦、五十嵐は試合の台本を途中ですっかり忘れ、負けるはずの先輩選手相手にガチンコで勝利してしまう。騒然とする部員たちだったが、客は大うけ。五十嵐は客を呼べる人気レスラーの道を歩んでいく。

さて、ここまでのあらすじをみると、学生プロレスを舞台にした青春コメディかと思うだろう。しょっぱいダメ試合から始まるこの映画、じっさい前半はそんな感じだ。

85点
このスパイ、速すぎ&強すぎ

『ボーン・アイデンティティー』(2002)『ボーン・スプレマシー』(2004)に続く三部作の完結編。ものわすれの激しい超人スパイが活躍する、ロバート・ラドラムのベストセラーの実写化だ。

さて、その主人公ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、いよいよ失った記憶を取り戻しつつある。しかし、この職業にリクルートした理由やその前の人生について、なにより本名など肝心の部分がいまだ思い出せない。殺し屋として多くの人を殺めてしまった罪の意識にさいなまれ、恋人の命を奪われる苦しみにも耐えながら、彼は自分探しの旅の終着点へとやってくる。

このシリーズはリアリティを感じさせる瞬殺の格闘シーンや、手近なものをなんでも武器にしてしまう主人公のもったいない精神が大きな魅力。この三作目ものっけからノンストップでスペクタクルの雨あられ。しかもその出来たるや、傑作だった1作目、2作目に勝るとも劣らない。三部作通してこれだけのハイテンションを維持したシリーズはあまりない。

85点
衝撃的なオープニングと至福のラスト

『ニュー・シネマ・パラダイス』(89年、伊/仏)は、公開当時都内のミニシアターで驚異的な長期間上映が行われ、単館系の作品としては例外的な大ヒットを記録した。その名監督ジュゼッペ・トルナトーレによる、本格的なミステリードラマがこの『題名のない子守唄』。邦題を見て、どうせテレ朝の長寿番組にあやかった流行のクラシック音楽映画だろと考えていた私は、あやうくこの傑作を見逃すところであった。

舞台は北イタリア。ウクライナからやってきたイレーナ(クセニア・ラパポルト)は、なぜかある金細工工房の向かいのアパートに入居を決める。しかも彼女は工房の経営者の家政婦に立候補し、その一家に深くかかわっていくのだった。

冒頭、ショッキングな場面から映画は始まる(よって途中入場は厳禁ですぞ)。すぐにシーンが変わってイレーナの物語がはじまるが、その相関関係は最後まで明らかにならない。エロティックで思わせぶりなカットバックなど、随所にはさまれた凝った映像や演出を楽しみながら、観客は謎だらけのヒロインのストーリーを少しずつ理解していく。

85点
もっとも重視する"物語"を、圧倒的な技術力で支えるピクサーらしい作品

ディズニーの完全子会社となったピクサー・アニメーション・スタジオ最新作『レミーのおいしいレストラン』の主人公レミーはネズミであり、あろうことか親会社のメインキャラクター、ミッキーマウスと完全にかぶっている。

美味しいものが大好きで、天才的な料理の腕前を持つドブネズミのレミー(声:パットン・オズワルト)。彼は、いつかシェフとして腕を振るってみたいと夢見ながら、今は亡き有名シェフ、グストーの料理本を愛読している。一方、そのグストーの店の新米料理人リングイニ(声:ルー・ロマノ)には、まったく料理のセンスがない。あるとき、リングイニの失態で店の大事なスープが台無しになってしまうが、レミーは簡単にもとの味へと修復してしまう。それを偶然見てしまったリングイニは、レミーに力を貸してくれと頼む。

料理の天才であるネズミと、料理の才能ゼロの人間。ネズミはシェフとして人々においしい料理を食べさせたい、そして今はゴミ係の人間は、なんとか一人前の料理人として認められたい。二人は互いの夢をかなえるため、タッグを組む。そんなお話だ。

85点
竹内結子最高傑作

竹内結子の結婚出産を経た復帰作となる『サイドカーに犬』は、これまでの主演作と同じく彼女の魅力にあふれているが、その中でも現時点における最高傑作ではないかと私は思う。

30歳の薫(ミムラ)は弟の結婚披露宴に、離婚した両親も出席すると知らされる。20年前、母が出て行った日のことを彼女は思い出した。と同時に、母と入れ替わりにやってきた不思議な女性ヨーコさん(竹内結子)の事も。ヨーコさんはカッコイイ自転車に乗った豪快な女の人で、まじめで厳しかった母とは対照的な性格。幼かった薫は、彼女から多大な影響を受けたのだった。

誰にとっても忘れられない人というのはいるものだが、この映画は80年代を舞台に、「出て行った母の代わりにゴハンを作るため父が連れてきた」若い女性と娘の奇妙な交流を描く。娘にとって「忘れられない人」であるヨーコさんは、カレー皿に麦チョコを盛ってくれたり、ドロップハンドルの自転車を乗りこなしたり、禁止されていたコーラを買ってくれたりした。

85点
映画史上有数の問題作

『ブリッジ』をすこぶる気に入った私は、すでにテレビや雑誌等いくつかの媒体で紹介してきたが、今日はここ超映画批評で初めて知ったという方のためだけに、まったく新しい形でこの映画の記事を書こうと思っている。

映画のタイトルは、サンフランシスコの観光名所ゴールデンゲートブリッジのこと。この作品は、あの美しいデザインのつり橋についてのドキュメンタリーである。

……と、ここまでが私が本作鑑賞前に知っていた予備知識のすべて。この映画がいったいどういう内容か、すでに知っている人は私が本編をみたときどう感じたか、想像するだけでニヤニヤしてしまうことだろう。

85点
完成された世界観のもの凄さ

2004年に作られたこのデンマーク製の人形劇映画は、その格調高さでカンヌで好評を得ていたが、日本公開にあたりジャパンバージョンと称する脚色、再編集がなされた。聞けばほとんどオリジナルと差はないという話だが、ちなみにこの日本公開版の監督を務めるのは、最新作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』が控える庵野秀明だ。

バロン王国の国王カーロ(声:市村正親)は、数百年にもわたる戦争の重責を苦に自害を遂げる。死の間際、彼は心優しき王子ハル(声:草なぎ剛)に後を託す手紙を遺すが、王位を狙う謀略家の弟ニゾ(声:伊武雅刀)がいち早く王の自害を察知、遺書をうち捨ててしまう。しかも、王の死を敵方の仕業と発表し、王子を復讐の旅へとかきたてるのだった。

映画『ストリングス』は、最初に人形たちを操る人間、すなわち神の視点のごとき舞台裏を写すところから始まる。その後カメラは地上に下りてゆき、そこから最後まで一切人間の存在は出てこない。完全に人形界の物語に移行するのだ。

85点
明るい障がい者映画

『リンガー! 替え玉★選手権』は、五輪に合わせて開催される、知的障がい者たちによるスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス」を題材にした映画だ。

……といっても、いま皆さんが想像したものと本作は、恐らく大幅に異なるであろう。この映画は、一歩間違えばおそろしく不謹慎で失礼千万な、危険極まりないタブーすれすれを突っ走る作品である。

主人公の好青年(ジョニー・ノックスヴィル)は、自分の責任で友人が大怪我をしてしまい、莫大な治療費を何とか工面したいと思っている。そこで叔父に相談するが、ギャンブルで借金まみれのどうしようもないダメ男なので頼りにならない。それどころか、「スペシャルオリンピックスに障がい者のふりをしてお前が出ろ」などと無茶を言う。現チャンピオンは6連覇中で無敵ぶりを発揮しており、負けに賭ければ大もうけできるというのだ。

85点
世界史最上級のタブーに切り込んだ勇気ある一本

ダイヤモンドという宝石は希少で高価かつ透明に輝くピュアなイメージで、世界中の女性の憧れとされてきた。しかしその一方、採掘現場では奴隷同然の過酷な労働がまかり通っていたり、一部はテロリストたちの資金源でもあるという闇の部分も厳然と存在する。ダイヤモンドの原産地のほとんどで内戦など武力紛争が起きているのは、もちろん偶然ではない。

成功と美の象徴であると同時に、死と紛争の象徴でもあるこの宝石について、その闇の部分に鋭く切り込んだのがこの『ブラッド・ダイヤモンド』。しかし、マスコミやエンタテイメント業界にとって巨大なスポンサーである宝石業界を敵に回すことは最上級のタブー。はたしてどこまで迫れるか。

クリントン大統領のスキャンダルが明らかになった90年代、アフリカのシエラレオネ。貧しい猟師ソロモン(ジャイモン・フンスー)の村は反政府過激派のRUF=統一革命戦線に襲われる。家族散り散りとなり、ソロモンは捕らえられ、奴隷としてダイヤモンド採掘場に送られる。なんとしても家族の元へ戻りたい彼は、そこで偶然見つけたおよそ200カラット(おそらく時価数億円)のピンクダイヤの原石を、監視の目を盗んで懐に入れる。

85点
ハイテク衛星システムの運用にローテクが必要という面白さ

デジャヴとは、「一度も経験したことのないことが、いつかどこかですでに経験したことであるかのように感じられること」(三省堂・大辞林)という意味だが、実際のところ本作の内容とそれはほとんど関係がない。

ではどんな映画かというと、一歩間違うと重大なネタバレにかかわるのでなかなか説明が難しい。間違っても言ってはいけない"ある一言"が、感想を投稿するサイトなどではフツーに書かれてしまっており思わず目を覆いたくなるが、一応マスコミ関係者には「ここから先のストーリーは絶対書かないでね」と通達が出ている。私も確かにそれは必要だと思う、そんな映画である。

海軍関係者とその家族を乗せたフェリーが何者かに爆破された。事態を重く見た当局は、地元のベテラン捜査官(デンゼル・ワシントン)に対し、極秘裏に開発した衛星地上監視システムへのアクセスを許可する。

85点
山崎まさよしの主題歌の歌詞を笑えない人に

『秒速5センチメートル』は、一言で言うとアニメ版『時をかける少女』を気に入った人なら、まず間違いなく満足する映画だ。

内容は、一人の少女を思い続けた男の十数年間を三話構成で綴った連作短編もので、上映時間は60分間。第一話は主人公の貴樹(声:水橋研二)と明里(声:近藤好美)の小学生時代から始まる。

舞台は東京の小学校。転校を繰り返してきた二人は、互いの境遇の類似からやがて特別な思いを寄せ合うようになる。明里が栃木の中学校に入ってからも仲良しのまま文通を続けていたが、1学期の終わりに貴樹の鹿児島への転校が決まる。貴樹は最後に明里に会うため、栃木県の小山の先まで向かうが、彼の乗るJR宇都宮線は記録的な豪雪に見舞われる。

85点
結末を知ってると面白さ半減

手遅れかもしれないが、この映画に興味を抱いた人に、私からひとつ重要事項をアドバイスしたい。それは、もしアナタがこの作品の元となったクリス・ガードナーという男の実話の、とくに結末について何も知らないのならば、何も読まず聞かず 先に映画館に行ってきなさいということだ。

この記事では映画の後半部分についての言及は避けているが、世間に出回っている本作の紹介記事は、なんの疑いもなく無邪気に結末まで書いてあるんだから参る。そりゃ、そこをアピールすれば多くの人が興味を持つだろうが、その代償として鑑賞時の満足度は著しくそがれていまう。

この映画で儲けたい宣伝会社側がそれをやるのは仕方ないにせよ、紹介者、批評家まで一緒になって広めてしまうのはどうしたものだろう。映画会社のよこす紹介文のひな型に書いてあるからまあいっか、なんて思っているのかは知らないが、本当に観客のことを考えるなら、そういう資料を作って持ってくる方を批判すべきではないのか。少なくとも、そんな資料はさっさと捨てて、ネタバレ無しでいかに作品の魅力を伝えられるかに知恵を絞るべきだと私は思うのだが。

85点
キムタクの魅力を引き立てた相手役の檀れいが最大の収穫

山田洋次監督による、藤沢周平原作もの時代劇三部作の完結編である本作は、同時に木村拓哉が主演ということで、メディアから熱い注目を浴びている。視聴率請負男を主演に据え、万全の体勢で挑むこの映画がもし、コケるような事にでもなれば、大変な騒ぎになることは容易に想像できる。はたしてその演技は鑑賞に耐えるものか否か。

時代は幕末、主人公は東北の小藩の下級武士、三村新之丞(木村拓哉)。彼は城内の毒見役の一人としてわずかな収入で妻の加世(檀れい)と共につつましく暮らしていたが、あるとき事故で失明してしまう。城にも通えなくなり、暮らしが徐々に立ち行かなくなる中、それを見越した有力者の島田(坂東三津五郎)は、かねてから狙っていた加世に近づいていく。

卑劣な上司から、愛する家族にひどい仕打ちを受けた男が、まったく勝ち目のない戦いに挑む悲壮なる復讐劇だ。盲目の主人公が剣の達人と果し合いをするクライマックスは、リアリティを最重視した乾いた空気の中で、息詰まる緊迫感をもって演出される。

85点
デパ地下を楽しむがごとく、キャラの魅力をつまみ食い

アメコミ映画といえば、『スーパーマン』の最新作がかなりの出来栄えで好評公開中だが、この『X-MEN』シリーズも華やかさの面では負けていない。いや、一人一人がスーパーマンに匹敵するくらい奇抜な能力を持つキャラクターの群像劇である本作は、派手さの点ではアメコミ映画の頂点に位置するといってもよい。そんな『X-MEN』の最終第3章、あまりに切なく、そしてドラマティックな『ファイナルディシジョン』がいよいよ公開となる。

ミュータントとの全面戦争を避けたい人類は、ついに治療薬、キュアを開発した。これを使えば、ミュータントたちは完全に普通の人間に戻るのだ。能力を失う事を恐れるマグニートー(イアン・マッケラン)とその仲間たちは、すぐにキュア生産のカギとなる少年の拉致に動く。

『X-MEN』の登場人物は回を追うごとにどんどん増えていくが、今回も最終章という触れ込みのわりには、序盤から続々と新キャラが登場する。それぞれ登場時間は少ないのだが、それでもわずかな時間で各々の背景を描くなど、キャラクターを大切にしていることがよくわかる。X-MENシリーズは、それぞれがスピンオフの主人公になれそうなくらい魅力的なキャラ揃いだから、どんな脇役でもおろそかにはできないというわけだ。

85点
おどろくほどテクニカルな構成の高品質ホラー

マンネリ化していたスプラッターホラー界に、フランスから切れ味鋭い新鋭監督が現れたと大変な話題になったのがこの『ハイテンション』。大味なハリウッドものとは違って、フランス映画らしい緻密な恐怖描写とプロットで、高い評価を得た作品である。

女子大生のマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、郊外にある親友のアレックス(マイウェン)の実家に滞在して、試験勉強をする予定だった。ところが到着したその晩、不気味な中年男の殺人鬼(フィリップ・ナオン)が現れ、家族を惨殺し始める。いち早く男の侵入に気づいたマリーは、アレックスの身を心配しつつも、別の部屋にいる彼女へ知らせることもできず、ひとり物陰に隠れて息を潜めるのだが……。

くると思わせなかなかこないショックシーン、血しぶき大量なのに笑いゼロ(スプラッター映画はときにギャグ映画である)、ガラスが刺さったりのどを掻っ捌かれたりと、痛さ満点のスプラッターシーン。『ハイテンション』は、久々に登場した、監督の演出力がきわめて高い本物のホラームービーである。

85点
クリストファー・リーヴもこれなら満足に違いない

スーパーマンは、アメコミにおけるヒーローの元祖であり、その代名詞的存在だ。日本では、70年代〜80年代にかけて、クリストファー・リーヴ主演で映画化された作品がもっとも印象に残っている映像化と思うが、本作はそれを引継いだ、正当なる続編にあたる。

アメコミが続々と映画化されているハリウッドにおいても、スーパーマンだけは別格。この巨大なプロジェクトの完成までには、監督や脚本家、主演、助演俳優候補が何人も現れては消え、ストーリーも何年間もかけ、じっくり練られていった。

スーパーマン(ブランドン・ラウス)が地球を去ってから5年。彼が再び戻ってきたとき、地球は変わっていた。犯罪は急増し、善良な人々もヒーローの存在を忘れ、恋人のロイス(ケイト・ボスワース)は別の恋人を作り、子供もいた。失意の彼を、やがて釈放された宿敵のレックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー)が狙う。

85点
本物の感動ドラマ、変人はいかにして変人になるのか

『幸せのポートレート』は、素晴らしい映画なのだが、何気なく見るとその良さがわかりにくい。しかし私は、この作品を見て号泣するほど感動したし、同時にこれに感動する心が残っていて本当によかったと思った。汚れたこの心にも、まだ一寸のピュアな部分があったというわけだ。

海外ドラマ『SEX and the CITY セックス・アンド・ザ・シティ』でブレイクしたサラ・ジェシカ・パーカーが演じる主人公は、NYで活躍するキャリアウーマン。このたびめでたく結婚が決まり、その相手の実家へ挨拶に行くところだ。ところが彼の家族は、彼女の想像を越えるトンデモ一家。自由奔放で、家族内に隠し事はゼロ。距離を取って適度につきあうという、都会的な彼女のやり方は一瞬で見抜かれ、軽蔑され、家族皆から総すかんを食らう。

気の強いヒロインも、度を越えたこの家族のやり方には反発し、徐々に衝突を隠せなくなる。さて、この結婚の行方はいかに。

85点
世界に通用する素晴らしい出来栄えのラブコメ

映画『NANA』が見事にヒットを飛ばしたおかげで、同じく少女漫画の映画化である『ハチミツとクローバー』やこの『ラブ★コン』も大いに期待されている。各原作の愛読者でもある私が、この3作品を見て共通すると感じるのは、どれも非常にうまく映画化できているということだ。

『ラブ★コン』は、背の高い女子と背の低い男子が主人公の、学園ラブコメドラマ。ヒロインのリサ(藤澤恵麻)も、その相方の敦士(小池徹平)も、それぞれ身長を理由にフラれた経験者で、ヒジョーにコンプレックスに思っている。そんな、妙に似たもの同士の二人は、クラス内で毎日絶妙なノリツッコミを見せ、"オール阪神・巨人"などとあだ名されている。いつも「デカ女!」などと、自分が気にしている高身長をバカにする敦士に対し「絶対アイツだけはヤダ」と思っていたリサだったが、やがて、自分を一番理解しているのは彼だと気づく。

映画『ラブ★コン』は、下手をすると原作漫画よりも面白い。マンガの映画化としては最高クラスの出来栄えといってよい。ヒロインを演じる藤澤恵麻のかわいらしさ、小池徹平の憎めない優しさ、その二人による完璧に息の合った漫才?シーン。どれも映像作品ならではの魅力にあふれており、ほとんど文句の付け所がない。

85点
アイデアと企画の勝利

もともと「スキージャンプ・ペア」というのは、CG作家の真島理一郎による、カルト的人気をもつDVD作品である。冬季オリンピックでもおなじみの、スキーのジャンプ競技をなんとペアで跳び、そのとっぴなポーズや飛び方によって点数をつけ、まじめに実況するという発想が笑いを誘う。テレビの深夜番組などでも紹介され、今では知る人ぞ知る人気商品なのだ。

そして、それをなんと実写で映画化しようという、いわば一発企画がこの映画版『スキージャンプ・ペア』。テレビのドキュメンタリー番組風に演出された、遊び心たっぷりのバカ映画である。

内容は、この競技の誕生秘話から幾多の研究開発、そして、ついにトリノ五輪正式種目への採用までと、その決勝戦の模様からなる。前半のニセドキュメンタリー部分では、アントニオ猪木や、本物のジャンパーでオリンピックメダリスト、船木和喜選手が登場するなど、小ネタたっぷりのバカっぷりで笑わせる。そして、クライマックスの競技場面では、DVDと同様、ふざけた飛行ポーズや、政宗一成氏の妙に真面目な語り口で爆笑させる。

85点
押し付けがましくない社会派映画

この映画は、実在した伝説的な武器商人数名のエピソードをまとめ、架空の男の一生として描いた、半実話の劇映画だ。主演は「ナショナル・トレジャー」等で活躍中の人気俳優ニコラス・ケイジ。彼ほどの役者が主演する大作ドラマにもかかわらず、題材があまりにデリケートだったため、イラク戦争真っ只中だった米国内では資金調達できなかったという、いわくつきの作品だ。結果、配給会社のあるカナダなど、外国からの投資で製作資金をまかなった。

主人公は、ソ連崩壊前のウクライナで生まれ、家族ともども米国に移住したユーリー(N・ケイジ)という男。彼は、あるレストランでのギャング同士の銃撃戦を見たことで開眼し、弟と二人で武器ビジネスをはじめる。その後、"人生最大の幸運"、ソ連が崩壊し、膨大な武器が彼ら闇商人の手へと流れてくる。そこで莫大な富を築きあげた彼は、長年の憧れの女性(ブリジット・モイナハン)とも結婚し、順風満帆かに見える生活を送る。しかし背後には、ずっと彼を追っていたインターポール(国際刑事警察機構)の刑事(イーサン・ホーク)が迫っていた。

『ロード・オブ・ウォー』は、LORD OF WAR だから、「戦争を支配する者」というような意味だ。そのタイトル通り、ニコラス・ケイジ演じる主人公は、武器の流通を握ることによって、世界中の戦争、紛争を支配しているかのごとき立場に立つようになる。

85点
世界中のあらゆるアクション映画の中でも、トップクラスに位置する

タイのアクション映画は、『マッハ!』の成功により世界中の映画ファンの注目を浴びることになった。そりゃそうだ。あの傑作アクションムービーは、それまでCGやワイヤーを使ったインチキくさい動きに辟易していた人々に、卓越した肉体の動きだけがもつ迫力を思い出させてくれたのだから。

たしかにCGやワイヤーワークを使えば、わずかな訓練期間で、どんなにドンくさいアイドルの女の子を使っても、そこそこのアクション映画を作ることができる。しかし、人々が求めていたのはそんなまがいモノではない。並外れた運動神経を持つ者による、本物の動き、本物のアクションなのだ。

そして、再びその期待にこたえてくれるのがこの『七人のマッハ!!!!!!!』。とてつもなく安直な邦題はともかく、本作は『マッハ!』のアクション監督パンナー・リットグライによる、まったく『マッハ!』とは関係ない内容の、リアルアクション映画である。

85点
トラウマ確実な恐るべき怖さ、勇気ある人のみ見ること

低予算で作られた海洋恐怖映画。総予算は1500万円以下、上映時間はたったの79分間だが、そこにつめこまれたエンタテイメントはその100倍の製作費の映画にも劣っていない。

ストーリーは単純明快、休暇でスキューバダイビングに出かけた若いカップルが、たっぷり楽しんで海面に浮上したところ、そこにいるはずのボートがいないという悲劇である。ツアー客の人数を数え間違えたボートが、彼らを置き去りにして帰ってしまったのだ。さあさあ大変ここは海のど真ん中、しかも悪いことにその海域は有名なサメの生息地でもあるのだった。ありゃー。

そこから先はただただ海に浮かぶ二人の会話劇。次から次へと困難と不安と恐怖が観客と二人を襲い、落ち着くひまはまったくない。上映時間が79分間なのは、それ以上この緊張感に誰も絶えられないからにほかならない。

85点
30代男女に最適な楽しい一本

全世界の負け犬女性(30代独身彼氏ナシ)の共感を呼び大ヒットした前作『ブリジット・ジョーンズの日記』の続編。監督は変わったものの、主要キャストの変更はなし。

仕事も恋もダメダメな主人公ブリジット(レニー・ゼルウィガー)にも、ついに念願の彼氏(コリン・ファース)ができた。ラブラブな日々が過ぎ、二人の仲は順風満帆と思っていた矢先、彼氏と美人秘書の仲むつまじい姿を目撃してしまう。幸せな日々は一転、疑心暗鬼にとらわれるブリジット。グッドタイミングで現れた女たらしの元上司(ヒュー・グラント)からの誘惑。ああ、まだまだ本当の恋の幸せは遠いのか?!

とにかく抜群に面白い、笑いの止まらない第二弾である。飛び出すギャグすべてがクリーンヒット、前作で大笑いした人ならたまらないネタが連発だ。

85点
ここ10年のジャッキー映画の中では文句なしナンバー1

人気アクションスターのジャッキー・チェンが、久しぶりに香港映画界に復帰を果たしたアクションドラマ。本作は、アジア各国で公開され、大ヒットを記録した。

舞台は現代の香港。犯行後、自ら通報して警察との対決を楽しむ凶悪な銀行強盗グループの前に、多数の警察官が死傷した。犯人たちはまんまと逃げのびたかに見えたが、チャン警部(J・チェン)は優秀な部下とともに、彼らのアジトに自信満々で乗り込んでゆく。

彼自身、「自分のアクションの中では最高傑作」と評する往年の名作『ポリスストーリー』の名をひっさげ、ジャッキーが香港映画に戻ってきた。ハリウッドに進出していたここしばらくは、似たような役柄、内容の凡作が続いていたが、この『香港国際警察 NEW POLICE STORY』は相当本気で作った映画らしい。まさに、性根の座った傑作に仕上がっていた。

85点
年間ベスト級に面白い豪腕サスペンス

キム・ベイシンガー主演の、アイデア抜群の設定をもつスリラー。これを考え出したのは電話ボックスだけを舞台に映画を成立させた「フォーン・ブース」の脚本家、ラリー・コーエンだ。この人は電話で話を作るのがうまいですなあ。

平穏に暮らしていたヒロインの教師(K・ベイシンガー)は、突如乱入してきた男たちに拉致され、そのまま監禁されてしまう。監禁部屋には粉々になった電話機が一台。彼女は持ち前の科学知識を生かして部品を組みなおし、なんとか修理に成功する。しかし意図した番号へダイヤルする事まではできない。やっとの思いで偶然つながった相手は、いかにも無責任そうなイマドキの若者のケータイだった。

ここから先は、文字通りノンストップで息づまるサスペンスが展開する。修理した電話機ではリダイヤルできない以上、この通話が切れてしまうことは、すなわちヒロインの命運が尽きることを意味する。しかも、よりにもよってつながった相手はビーチでナンパにいそしむ能天気な男の子で、まったくこちらの状況を理解してくれない。イタズラ電話と思って切ろうとする彼に、まずは信じてもらわなくてはならない!

85点
ファン以外が見ても楽しめる見ごたえある伝記映画

盲目の天才ミュージシャン、レイ・チャールズの一生を描いた伝記映画。

1948年アメリカ、まだバスには黒人隔離席があった時代。17歳のレイ(ジェイミー・フォックス)はシアトルでピアノの才能を認められ、小さなバンドの一員としてクラブ等で演奏をはじめた。だが、彼が盲目である事をいい事に、バンドの老練な女マネージャーらはギャラを不当に搾取するのだった。

サザン・オールスターズの「愛しのエリー」をカバーした事で日本でもおなじみのレイ・チャールズは、ゴスペルとR&Bを初めて融合させたソウルミュージックのパイオニアとして知られる音楽界の革命者だ。既存のジャンルの壁を乗り越え、彼が生み出した楽曲は世界中でヒットを記録し、もちろんこの映画の中でもたくさん使われている。

85点
よくぞロマコメでここまでやった、すごすぎる

台湾の絵本の原作を、金城武主演で映画化したラブストーリー。ワーナーブラザーズ映画初の中国語作品であり、力の入った一本。

主人公のバイオリニスト(金城武)とヒロインの貧乏翻訳家(ジジ・リョン)はアパートの隣同士──だが、お互いの存在はまだ知らない。そんな二人が町で出会い、電話番号を交換したのはよいが、翌日そのメモは雨でにじんで読めなくなっていた。二人はこの出会いに運命を感じて、お互い必死に相手の居場所を探す……隣同士だとは気づかないまま。

これはすごかった。最初はもうなんてアホな話かと、天下のワーナーブラザーズも、ついにこんなくだらない映画を出してきたかと思ったが、(私の想定する)「ターンレフト ターンライト」の正しい楽しみ方を理解してからはその印象はサイコーへと変わった。平たく言えば、この映画は、まじめな恋愛映画を期待してみてはいけないのであった。とにかく笑い飛ばすこと、これがポイントだ。

85点
トム・クルーズ主演映画としてはパーフェクト

人気スターのトム・クルーズが悪役を演じる犯罪アクション&サスペンス。

ロスで働くタクシードライバー(ジェイミー・フォックス)は、将来メルセデスを購入し、リムジン会社を設立するのが長年の夢。そんなある晩、一人の紳士(T・クルーズ)を乗せると、彼は破格の値段で一晩タクシーを借り切ると言う。

実はこの、トム・クルーズ演じる金持ち風の男は殺し屋で、一晩に5人を殺すという大忙しの仕事のパートナーとして、話の合うこの黒人運転手を見込んだのだ。やがて男の正体を知ったドライバーはどういう行動をとるのか? はたしてこの有能な殺し屋は仕事をまっとうできるのか。物語は予測できない方向へと転がって行く。(ちなみに後半のストーリーについて、プレス関係者には緘口令がしかれている)

85点
知的障害の青年を巡る驚きの感動実話

アメリカのスポーツ専門誌に掲載されたある感動実話の映画化。知的障害の黒人青年を中心とした人々の交流を描いたハートウォーミングなドラマだ。

舞台は1976年のアメリカ。高校のアメリカンフットボール部の練習場をいつもうろついて眺めている知的障害を持った黒人青年がいた。ある日、ふとした事で部員が彼にイジメを加えてたことを知ったコーチは、当事者を厳しくしかった上で青年をチームに雑用係として迎えることにした。突然の事に戸惑いながらもやがて彼を受け入れていく部員たちだったが、人気チームである彼らの成績が下がるにつれ、街の人々からの風当たりは徐々に強まっていく。

時代はまだ70年代、知的障害を持つ黒人青年は、人々から気味悪がられていた。そんな彼をただ一人暖かく受け入れたコーチは、最初は周りの理解を得られなかったが、心やさしい娘や妻などの理解者の助けを得て、青年との交流を深めていく。やがては、町の人々すべても変わっていくのだ。健常者が障害者を助けるのではなく、一人の知的障害の青年が人々を救う物語であるところが感動的。

85点
若々しいセンスでさわやかに描いた傑作青春映画

嶽本野ばら原作、深田恭子主演、茨城県下妻を舞台にしたコメディ友情ドラマ。「サッポロ黒ラベル」のCMで、スローモーションによる卓球シーンを演出した中島哲也監督の若々しい映像感覚は、本作でも存分に発揮されている。地方を舞台にした日本映画はどうも垢抜けないイメージに仕上がることが少なくないが、『下妻物語』にはそれが全くない。このセンスの良さにまず驚かされる。

主人公は、下妻に住みながらロリータファッションをこよなく愛する女の子。常磐線で片道3時間近くかけて、代官山に通いつめるという固い信念を持つ。しかし、あまりに周りとかけ離れた趣味(と性格)のため、友達は一人もいない。しかもそれをちっとも“嫌な事”と感じていないという、孤高のティーンエイジャーだ。フカキョンの魅力がいかんなく発揮された、まさにはまり役といえる。幼い顔立ちにロリータファッションがこの上なく似合っており、非常に可愛らしい。

彼女が、ひょんな事から地元のヤンキー娘と出会い、やがて真の友情を築いていくというのが大まかなストーリー。いかにもなヤンキー(レディース??)ファッションの彼女と、ロリータな深田恭子の見た目および性格のギャップが凄まじい。若い観客にとって、二人の価値観の違いをこれほど雄弁に表す要素はなかろう。このギャップが数々の笑いを生みだし、良くできたコメディとなっている。

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