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35点
浦沢直樹の2000万部コミックが超大作3部作に

浦沢直樹のベストセラーコミック『20世紀少年』の映画化は、2008年〜09年の日本映画界最大のインパクトとして、製作前から話題を振りまいてきた。

誰が誰を演じるのか、イメージ通りかうんぬん……。原作ファンをそこまでワクワクさせたのは、これを映画化するのは難しいと誰もが直感していたからだろう。だが、本編22巻プラス完結編2巻の大長編の実写版は、計60億円の巨費を投じた三部作としてここに実現した。

1997年、失踪中の姉(黒木瞳)が残していった赤ん坊カンナを背負い、売れないコンビニ経営にいそしむケンジ(唐沢寿明)。この時代、世界各地で致死性ウィルスの被害者が発生、日本では正体不明の教祖"ともだち"率いる新興教団が勢力を増すなど、不穏な空気が蔓延していた。ユキジ(常盤貴子)やマルオ(石塚英彦)、ドンキー(生瀬勝久)ら小学生時代の仲間たちと交流する中、ケンジは最近の事件、災害が、自分が子供時代に人類滅亡の様子を描いた"よげんの書"をなぞったものと気づき愕然とする。タイの闇社会で生き延びていたオッチョ(豊川悦司)も加わり、ケンジと仲間たちは地球を守るため立ち上がる。

35点
地方在住の人にすすめたい日本製カーアクション

クルマ映画というものは、えてして大都市ではヒットしない。しかしシネコンが普及し、都市部の興行比率が相対的に下がっている今日では、地方で根強い人気を誇るこのジャンルは、製作者にとって見逃せない。最近この手の映画が多く公開されるのはそれが理由だ。映画会社の人に聞いた話では、レンタルなどDVDの稼働率も高いという。

舞台は箱根、夜は若者たちがタイムアタックを繰り返す熱いレース場と化す峠道。ここにある夜、三菱・スタリオン4WDラリーに乗った中年男が現れ、記録を塗り替える。この男に興味を持った自動車評論家の栗原(遠藤憲一)は、愛車ポルシェ・ケイマンで現地を訪れ、ジャッキーと呼ばれるそのオヤジがかつて自分と因縁のあるダイブツこと大佛(おさらぎ)(哀川翔)であることを知る。

『ビッグコミックスペリオール』で連載されていた、東本昌平の原作漫画を実写映画化。主人公がいわゆる中年オヤジ二人で、その因縁と友情、復活に光を当てた点が特徴的だ。演じる二人もなかなかカッコよく、若者たちの中に入っても違和感がない。あるいはMEGUMIをはじめとする周りの若い連中が、そろってみなテンションが低いため、ムードが統一したというべきか。

35点
黒澤明を出し抜く覚悟はあったのか

『踊る大捜査線』映画版の記録的ヒットにより、堰を切ったようにテレビ局による大作映画が氾濫した近年の邦画界。顧客のニーズを的確につかんだその映画作りは大成功し、ついに洋画の興行収入を上回るところまできた。私が長年望んでいた邦画の隆盛が実現したわけで、大変好ましく思っている。

しかし当初から危惧していたとおり、二の矢三の矢がない状況へと陥り、彼らのビジネスモデルは早くも袋小路にぶちあたりつつある。せっかく大きく儲けたのだから、余裕があるうちにオリジナル企画とそれを出せる人材を育てておけばよかったのに、良質な原作漁りと使い捨てばかりやってきたツケが回ってきたのである。

そして挙句の果てには、黒澤明作品のリメイクという禁断の果実にとうとう手を出した。これがうまくいったら、次は小津や溝口、木下と、古典資産の使いつぶし、いやリメイクが続くのであろう。ともあれその先陣となるのが、織田裕二主演の『椿三十郎』だ。

35点
ムエタイ男がロケットに乗って大活躍

私は本編を見終わった後にこの作品の予告編を見たが、作った人は天才かと思った。作品の面白い要素をよくぞこれだけ集約できたもの

だと大いに感心した。だが、予告がこれだけ面白いと、本編をみたときどうなるの、という問題が残る。言ってみれば屋台のかき氷を、

最初にストローでチューチュー吸ってしまった結果、肝心の氷にシロップの味が残っておらず愕然とした時の気持ちに似ている。

35点
沢尻エリカは弱点ばかりが露見して気の毒

賃貸住宅に入居すると、まれに以前の住民の忘れ物(?)に遭遇する。大抵は、(解除し忘れたのであろう)定期的に送られてくる通販下着カタログの類であり、宛名がかわいらしい女性の名前でもない限りは迷惑の極みであるが、これがもし洗面所の鏡の裏に隠された分厚い日記帳だとしたらどうだろう。はたしてあなたは、見知らぬ誰かの物語に入り込む欲求を抑えることができるだろうか。

女子大生の香恵(沢尻エリカ)は、入居したアパートの棚に日記帳を見つける。挟まっていた写真を見ると、それを書いた前の住民(竹内結子)は、どうやら小学校の教師らしい。自らが志望する職業ということもあり、香恵はその女性の仕事や恋の悩みを興味深く読み進んでいく。同時に香恵にも、バイト先で知り合った男性(伊勢谷友介)との恋が芽生え始めていた。

雫井脩介の同名原作は、後半にちょっとした驚き(ミステリ的趣向)がある恋愛もの。多少のアレンジはあれど、映画も同様の魅力を放つよう作られている。……が、いくつか難があり、その出来は平均以下のものとなった。

35点
元慰安婦の証言を垂れ流すだけじゃ単なるプロパガンダだ

徴用時の強制性についての安倍晋三首相の不用意な発言により、いま"従軍"慰安婦問題がアメリカの一部で大きく騒がれている。彼の発言内容自体を擁護する声も保守層には根強くあるが、ああいう事を言えばてぐすね引いて叩きネタを待っているマスコミにより、当初の意図とは反した形で広められるのは当然である。そんな予測もできないのでは、政治家として脇が甘いと言わざるを得まい。

そんな折、あまりにもグッドタイミングで公開されるのがこの"従軍"慰安婦をテーマにしたドキュメンタリー「ガイサンシーとその姉妹たち」だ。ちなみに従軍慰安婦(性奴隷も)という言葉は、反体制的な人々による一種のレッテル張り、アジビラに書くための造語のようなもので、厳密には使うべきではない言葉だが、映画の中で使用されているのであえて記述している。

ガイサンシーとは、中国の山西省で一番の美人という意味で、戦中実在したある女性のこと。その美貌は当時駐留していた旧日本軍の間にも伝わっていたほどだという。ところがそれが彼女にとって、筆舌に尽くしがたい悲劇を呼び込むこととなった。映画は、日本軍に強制徴用され、いわゆる慰安婦としてあまりにもひどい生涯を送った彼女を訪ねるところから始まる。

35点
これといった特長がない

あまり予算に余裕がないが、面白い映画をつくる必要がある場合どうしたらよいか。徹底してチープ感を前面に押し出すバカ映画タイプは別として、たいていは戦力集中投下型、すなわち一点豪華主義でいきたいと思うのが普通だ。思い切って集客力のあるスターを据えるか、火薬の量に金をかけるかは各自の自由だが、あれこれ欲張るとたいてい失敗することが多い。

この『忍者』の場合、日中香港3カ国合作ということでそれぞれの国の役者を集め、各国にアピールできるという強みがまずある。ところが脚本面で全員に気を配った結果、いったい誰が主役なのかわからないという、羽で背中をかくようなもどかしい映画となっている。

悪の黒幕ブライアンは、あらゆる病気に効く究極のワクチンが納められた箱を奪うため、甲賀忍者の虎大介(魔裟斗)を派遣した。彼らは首尾よくそれを手に入れたが、肝心の箱がどうやっても開かない。やがて、あるストリートミュージシャンの男(ダヨ・ウォン)がその鍵を握るとわかるが、敵対する伊賀忍者の響(白田久子)とシウリン(ホアン・シェンイー)が虎大介の前に立ちふさがるのだった。

35点
画面作りで手一杯な感

世界のオオトモこと、この映画の監督大友克洋は、代表作「AKIRA」をはじめ数々のアニメ映画、そして漫画の傑作を生み出してきたことで知られる。内外ともに信者とでもいうべき熱狂的なファンが多いことでも有名だ。そんな彼が、今回は実写映画に腕を振るった。それが「蟲師」だ。

舞台は100年前の日本。原生林に囲まれたこの国には、蟲と呼ばれる多種多様な生命体が存在する。ときには幽霊のように人に憑いたり、一般の人には見えぬ姿で移動したりする。そんな蟲たちと、その対処法の専門家を人々は蟲師と呼んだ。蟲を引き寄せてしまう体質のギンコ(オダギリジョー)も優秀な蟲師のひとりで、国中を旅しながら蟲と人の共存について思索をめぐらせていた。

映画は一話完結型の原作からいくつかの話を抽出し、多少のアレンジを加えてつなげたような構成。蟲のパワーを文字に封じ込める能力を持つ女、淡幽を蒼井優、ギンコの出生の秘密に関わる女蟲師ぬいを江角マキコが演じている。

35点
アルゼンチンババアが鈴木京香という点に無理がある

どこの町にも一人くらい、一風変わった人物が住んでいるものだ。ジャングルのような庭の奥のあばら家でひっそり暮らしていたり、ゴミ屋敷をせっせと拡大していたり、奇妙な格好をしていたり……。そしてそういう人物に地元の子供らは、たいてい変なあだ名をつけている。『アルゼンチンババア』は、そうした「変人」をモチーフに、人間の内面のもろさ、そして癒しというものの本質に迫ったドラマだ。

女子高生みつこ(堀北真希)の母が病で亡くなった。あれほど母を愛していた墓石職人の父(役所広司)はなぜか当日病室に姿を見せなかった。しかもその日以来、母の死から目をそむけるように失踪してしまう。やがて半年後、みつこは町外れの古いビルに住む、アルゼンチンババアとあだ名される奇妙な女(鈴木京香)のもとで父が暮らしていることを知り、意を決してそこに出向くのだが……。

原作者のよしもとばななは、ロシアやウクライナでも読まれている世界的な人気作家。代表作「キッチン」「TUGUMI」に続いての実写映画化となる。

35点
子ども映画として見ればまあまあ

『バッテリー』の原作小説は、児童向け文学ながら大人の読者の心をもつかみ、全6巻が500万部を超えるベストセラーとなった。となれば人気コンテンツの常で、まずは漫画化、そしていよいよ実写映画化というわけである。

岡山県の小学校に転校してきた原田巧(林遣都)は、大人の打者でも打てぬほどの快速球を投げる天才投手。自分の能力に絶対的な自信を持つ巧は、ある日わずか数球で自分の球をキャッチした同級生の永倉豪(山田健太)と運命的に出会い、バッテリーを組むことに。やがて同じ地元の中学校に入学した二人だが、徹底した管理野球を指導する監督と巧が早速衝突してしまう。

この天才少年は、心を許せる仲間に出会いながらも、あまりに高すぎる自分の能力に周りがついてこれず、孤独を感じ続ける羽目になる。病弱ながらも野球が好きな幼い弟と、それを心配するあまり過保護にする野球嫌いの母の間で難しい立場に立たされながらも、ひたすらマウンドに立ち続ける。やがてライバルが出現し、その対決はクライマックスとして観客を熱くさせる。じつにマジメでベーシックな少年野球ムービーだ。

35点
これまでのジブリの短所を引き継ぎ、かつ長所を捨てた

『ゲド戦記』は、『指輪物語』『ナルニア国ものがたり』に並ぶ、世界三大ファンタジーの一つとされる。原作者がかたくなに映像化を拒みつづけ、かつては、あの宮崎駿でさえ断られたというこの作品を、息子の宮崎吾朗は自身の初監督作に選んだ。アニメーション制作は、もちろんスタジオジブリ。興収100億円を狙う、2006年夏シーズンの大本命の登場だ。

人間の生活圏に現れるはずの無い龍が、立て続けに侵入する異常事態が発生。世界の均衡が崩れつつあると予感した偉大なる魔法使い=大賢人のゲド(声:菅原文太)は、原因を探る旅に出る。やがてゲドは、父親を刺して逃亡中の王子アレン(声:岡田准一)と出会う。アレンが生きる気力を失っており、放置できない事に気づいたゲドは、彼を連れ、知り合いのテナーの家に身を寄せる。そこにはアレンと同年代の孤児の少女テルー(声:手嶌葵)も住んでいたが、彼女は命を大事にしないアレンに対し、激しく非難するのだった。

『ゲド戦記』は、試写会などを見た人々から、早くもブーイングの嵐が巻き起こっている。確かに、あまり良い出来の映画ではないが、正直なところ、これに限らず最近のジブリ作品に傑作は無いので、私としては「まあ、こんなものだろう」という気持ちである。長年のファンにとっては、今のジブリは『天空の城ラピュタ』あたりまでの(宮崎駿作品の好評による)貯金を食いつぶしているようなもので、最初からあまり期待はしていないのだ。

35点
ラブホを舞台にした4つのドラマ

その名のとおり、ラブホテルを舞台にした男女のドラマ。登場人物も物語も違う短編4部構成で、その合間には飲み会と思しき若い男女の、恋愛に関する雑談がはさまれる。

さて、ラブホテルといえば、日本独自の文化。壁の薄い集合住宅、狭い一戸建てなど日本独特の貧しい住宅事情と、少々奥手な国民性が生んだ、不思議な存在だ。

不倫・浮気カップル、両親と同居中の新婚夫婦、まだ独立してない若い二人、自分の部屋ではできない特殊な性癖……匿名性の高い室内では、想像するだけで様々なドラマが展開していそうだ。ここに目をつけ、「ラブホテル」をテーマに映画を作るというのは、いいアイデアだ。場合によっては世界中の人々の興味を集めることもできるだろう。

35点
アメリカ育ちの方なら多少は怖い?

このタイトルをみたとき私は、ジョン・カーペンターの傑作ホラー『ハロウィン』シリーズに登場する殺人鬼の名前を真っ先に連想した。つまり、この映画はあのシリーズのリメイクだと思ったのである。

ところがそれは大きな間違いであった。なんでもブギーマンとは、欧米ではほとんど一般名詞に近いものだという。具体的には、子供をさらっていく架空の化け物を意味する。

そんなわけで本作は、『ハロウィン』とは無関係の、米国人の原体験的恐怖を描いた、正統派のオリジナルホラームービーである。

35点
綺麗な映画ではあるが、考証と人物描写の非リアルが気になる

極端な寡作で知られる映画作家、テレンス・マリックの最新作。……ときいて、胸躍らない人には不向きな作品だということを、最初に書いておこう。

これは、ディズニーによってアニメにもなったポカホンタスの物語の実写映画化。17世紀初頭のアメリカ大陸を舞台に、英国の冒険家ジョン・スミスとネイティブ・アメリカンの娘、ポカホンタスの恋と、アメリカの建国物語を描く。

しかし、見所はそうしたドラマ、ストーリーではなく、比類なき美しさを誇る映像の方。お芝居を、あたかもドキュメントのように撮った作品で、ワンシーン、ワンショットをゆっくりと、何度も何度も違う角度から、じ〜っくりと見せる、そういう映画だ。

35点
やる気が感じられない

「子供向き」と「子供だまし」という言葉は似て異なるものだが、映画『チェケラッチョ!!』には、その両方が当てはまる。

舞台は沖縄。主人公はさえない男子高校生3人組(市原隼人&平岡祐太&柄本佑)。彼らは気の強い同級生の女の子(井上真央)に誘われたインディーズバンドのライブでラップに目覚め、自分らもバンドを結成。次回のライブで、その憧れのバンドの前座で演奏することになる。

そんなありきたりなメインストーリーの中に、適当に恋愛要素が挿入される。年上の女性にあこがれる主人公、その主人公に憧れる気の強い同級生女子、その女の子に憧れる主人公の親友と、恋愛ベクトルが絵に描いたようなループ構造になっている。

35点
ロシア映画界がハリウッドを目指して作ったダークファンタジー

旧ソ連が崩壊した後、かの国の映画文化はほぼ壊滅状態に陥っていた。他の国がそうであるように、ロシアでもハリウッド映画が幅を利かせ、国内映画は衰退の一途をたどっていたかに見えた。ところが近年、相次いで国産映画がヒットを記録。興行収入の面でも、2005年度(9400万ドル)は、2000年度のなんと62倍にまで増えている。

なかでも、2004年に公開されたこの『ナイトウォッチ』は、ロシア映画の記録を塗り替えるほどの大ヒット、すでに3部作のPART2が本国では公開され、こちらも興行記録を更新中だそうだ。

舞台となるのは現代のモスクワで、光の勢力vs.闇の勢力という、異界の戦いを描いたダークファンタジーとなっている。はるか過去から、両勢力は戦いを繰り広げ、いまでは互いを監視する調査部隊("デイウォッチ"vs."ナイトウォッチ")の勢力均衡によって、1000年間の平和が続いているという設定だ。ところが、予言どおり、その均衡を崩すほどの能力を持った存在が生まれ、その存在を自陣営に取り込むべく、両者の戦いが始まるのだった。

35点
犬たちが上手すぎて泣けない

フジテレビ製作の大作日本映画『南極物語』(83年)は、邦画の興行記録を次々塗り替えた大ヒット作品となった。あれから23年ほど経った今、なんとハリウッドがリメイク、ディズニー映画として、日本でも公開される運びとなった。

舞台は氷に包まれた南極基地。主人公のジェリー(ポール・ウォーカー)ほか、調査隊のメンバーは、忠実な8頭の犬による犬ぞりを駆使して、日々の業務をこなしている。ある年、厳しい冬を前に無理をしてギリギリまで調査活動を行った結果、急激な天候悪化に見舞われ、やむなく犬を残して緊急退去する事になった。しかも、天候は回復せず、結局春まで犬たちを放置する事になってしまうのだった。

リメイクということで、置き去りにされた犬が、壮絶な南極の冬をサバイバルする展開や、春に戻ってくる人間たちと再会できるのかどうか? という展開も日本版と同じ。設定が、日本人&カラフト犬からアメリカ人&ハスキー犬その他へ変更となったが、大自然における動物アドベンチャーである点や、犬と人間の友情感動ドラマに仕立ててある点は同じだ。また、これはあくまでディズニー映画であるから、その味付けも推して知るべし。具体的にいうと、アメリカ版南極物語は、お犬様大好きな人々に、映画館で泣いてもらうための作風となっている。

35点
あまりに大味

親日家で知られ、日本でも人気の高い女優ジョディ・フォスター久々の主演作は、飛行中の旅客機を舞台にしたサスペンスドラマだ。

ジョディ演じる主人公は、夫を事故で亡くしたばかりで悲しみにくれる女性。あまりのことに、少々情緒不安定気味だ。そんな彼女が夫の遺体とともに搭乗したジャンボジェットの中で、ほんのわずか目を離した隙に、幼い娘がいなくなった。慌てて探すが、どこにもおらず、驚くべきことに乗務員からは「搭乗名簿に娘さんの名前はありません」と告げられる。まわりの乗客も、誰一人、最初から娘など見ていないという。

飛行中の航空機内で娘が誘拐された?! はたしてこれはヒロインの妄想なのか、それとも仕組まれた陰謀なのか。どちらとも判断しきれぬまま、物語は進む。このヒロインは、具合のいいことに、何とこの飛行機を設計した技師。つまり、何か隠せそうなスペースは全部わかる。そんなわけで、客室部分以外、天井裏や貨物室まで単独で勝手に探しまくるという、周りの人々大迷惑なお話である。

35点
あまり説得力はないが、復讐方法は三部作でも指折りの残虐さ

『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』に続く、韓国のパク・チャヌク監督の"復讐三部作"完結編。

清楚なルックスのヒロイン(イ・ヨンエ)は、わが子をある男(チェ・ミンシク)に人質に取られ、その男の罪をかぶって13年間投獄されてしまう。13年間の刑務所生活で怨念の塊と化した彼女は、出所後、復讐を開始する。

パク監督の復讐三部作は、すべて復讐をテーマにした映画だが、それぞれは独立した物語だ。もちろんこの作品から、あるいはこの作品だけを見ても何の問題もない。今回復讐者を演じるのは韓国の誇る清純派イ・ヨンエ。この、虫も殺さぬような顔をしたお姉さんが、残虐な復讐劇を見せる意外性がひとつの見所だ。まあ日本で言えば、小倉ゆうこりんが血まみれになりながら男をぶち殺すような、そんな映画だ。

35点
スターウォーズが公開されたら吹っ飛ばされてしまうだろう

トム・クルーズ主演&スティーブン・スピルバーグ監督という最強コンビによるSF超大作。H・G・ウェルズ原作による53年の同名映画のリメイクとなる。

主人公の港湾労働者(T・クルーズ)はこの週末、離婚した妻との間にできた息子と娘(ダコタ・ファニング)とともに過ごすことになっていた。しかし、天空からの恐るべき侵略者により、彼らの平和と地上は破壊される。

結論から言うと、『宇宙戦争』は「コドモ一人勝ちの映画」だ。コドモというのは、トム・クルーズの娘役を演じる天才子役のダコタ・ファニングのことで、文句なしに彼女はこの映画に出てくるほかの誰よりも演技力がある。ショーン・ペン、デンゼル・ワシントンでさえ、彼女と競演すると食われてしまうのだから、トム・クルーズでは話にならないとは思っていたがこれほどとは……。正直私は、タコみたいな宇宙人だとかはどうでもよくて、上映中、あの子役の中に何星人が入っているのか、そちらのほうが気になっていた。

35点
アクション重視の本作だが、それ以外の要素が弱くて不満

いわずと知れた人気TVアニメシリーズの映画版最新作。

まったくいつもと変わらない野原家に、ある日突然「ミライマン」を名乗る生命体がやってきた。肉体をもたない彼は、とりあえずそこにあったソフトビニール怪獣に乗り移り、野原家の面々に事情を説明する。なんでも時空の乱れにより怪獣が続々出現。数分後の未来に行って誰かが3分以内に倒さなければ、この世界にも怪獣たちが現れるというのだ。かくして野原一家の怪獣退治大作戦が始まった。

ミライマンの力のおかげで、未来世界では一人だけ望むヒーローに変身することができる。会社でも家でもまったくうだつのあがらない父ちゃんをはじめ、ここぞとばかりにヒーロー、ヒロインになりたがる野原一家。怪獣が弱っちい間はそれでも良かったが、やがて本当に強い怪獣が現れると……というストーリーだ。

35点
映像に凝る前にストーリーの組み立てをしっかり

郷田マモラ(『きらきらひかる』の原作者)の同名漫画を、「踊る大捜査線」の脚本家、君塚良一が初監督で映画化した作品。

法医学研究所に勤める主人公の監察医(東山紀之)は幽霊を見る事ができる。何かを伝えようとする彼らの声を聞き、その死の真相を突き止める事が、いまや彼のライフワークになっていた。しかし彼は、半年前に交通事故死した妻(和久井映見)の幽霊に対してだけは、いまだまっすぐ向き合うことができずにいた。

「泣けるホラー」という宣伝文句は映画版『MAKOTO』には当てはまらない。泣ける映画とは思えないし、ホラー映画というジャンルにくくるのもどうなのか。また、君塚良一の名前から娯楽映画を期待していくと、まったくそうではないので肩透かしを食らうだろう。

35点
チープすぎて大人が鑑賞するには……。

往年の特撮ドラマ『ウルトラマン』シリーズを、劇場用オリジナルストーリーで映画化したもの。

幼い息子との時間を大切にするため辞職を決意していた航空自衛隊のエースパイロット(別所哲也)は、最後のフライト中に赤い発光体とニアミスする。無事帰還したものの、やがて彼の体には変化が現れる。

シリーズのエッセンス、特に初期のものを色濃く加えたオリジナルストーリーによる映画版だ。ということで、大人のファンを狙っているのかと思ったら、とてもその鑑賞に耐える出来ではなかった。低予算で無理をした作品特有の安っぽさがそこここに見られ、さびしい限りだ。

35点
人体解剖にのめりこんだ記憶喪失の男の話

人体解剖をメイン題材とした個性的なドラマ。人間の生と死というテーマを独創性に富んだ映像表現で描くことで評価の高い塚本晋也監督(『鉄男』『六月の蛇』など)の最新作。

事故で記憶をなくした青年(浅野忠信)は、それでも以前と同じく医学生としての生活をはじめる。なくした記憶は相変わらず戻らないが、同時に人体の神秘にめざめた彼は、病的なまでに解剖実習にのめりこんで行く。

塚本監督は、もともと10年にもわたって解剖学についての資料を読み漁っていたそうで、本作の製作決定後はスタッフとともに実際の医学部の解剖実習に参加して、さらなるリアリティの強化に取り組んだ。実習シーンでは本物の医学生が多数参加し、キャストの指導にもあたったというだけあって、映画史上まれにみるリアルな「人体解剖」の場面が出来上がった。前腕の筋群を刺激すると指が曲がるなどという、異様によくできた模型・特殊メイクも見事だ。

35点
紹介する相手はもっと選べ

2004年の最後を飾る韓国映画の話題作。大ヒットラブコメ『猟奇的な彼女』の監督&主演女優のコンビによるラブストーリー。

街で偶然、逃亡中のひったくり犯を目撃した若き婦警(チョン・ジヒョン)は、追跡の末、見事に逮捕する。……が、よくよく話を聞くとその気弱な男(チャン・ヒョク)はどうやら真犯人を追っていた善意の市民だと判明する。一向に謝ろうともしない頑固な婦警と彼は、それでも奇妙な縁で引かれあっていく。

今年は韓流ブームということもありたくさんの韓国映画が公開されたが、最後の最後にまたトンデモな映画がやってきた。何しろこの映画、最初はシリアスに始まったかと思うと突然お気楽ラブコメに変貌、やがて冬ソナ風メロドラマ路線に変更したと思いきや今度はハリウッド風アクションになり、あげくの果てにはデミ・ムーアの『ゴースト』になってしまうのだ。面白いものは何でもぶち込めばいいと思っているのだから恐ろしい。

35点
サスペンスなのに予測をはずれない平凡さは問題

ヴァル・キルマー主演(『トップガン』親友パイロットのアイスマン役など)、ネーブ・キャンベル共演(『スクリーム』シリーズのヒロイン)のサスペンスドラマ。

主人公はニューメキシコの砂漠で、頭部を撃たれて倒れていた記憶喪失の男(V・キルマー)。やがて彼は、自分が大統領暗殺計画について知っていることを思い出すが、断片的な情報ばかりで周りには信じてもらえない。そこへ彼の婚約者と名乗る謎の女(N・キャンベル)が現れ、彼を引き取るというのだが……。

観客の視点である主人公が徐々に記憶を取り戻すというストーリーなので、ちょくちょく意味不明な映像(彼の記憶の断片を表している)が挿入される。この手の記憶喪失ものにありがちなわかりやすい演出ではあるが、少々ウザったい。

35点
アイデアはいいが、ジジ臭いセンスがよくない

今週は日本映画の公開が多い。この『死に花』は、老人施設で暮らす老人たちが、ある銀行の地下金庫を盗み出す計画を実行するまでを、コミカルに描いた娯楽作だ。ジジイたちが、若者も真っ青な行動力と長年の経験で、トンデモな計画を着々と成功させていくあたりが痛快で、老人エンタテイメントとでもいうべき面白いジャンルの作品となっている。

ただ、老人賛歌のテーマやストーリー、こうしたアイデアは実に良いと思うのだが、問題は映画作りのセンスだ。『死に花』の音楽やセリフのセンスは、少々ジジくさい。若い人がみると、その辺が鼻につく可能性があるだろう。

かといって、年齢層高めの人々になら薦められるかというと、それもどうだろう。この映画は、まるで老人ホーム側が企画したお楽しみ会的なムードで、あまりに毒がない。なんだか、年寄りの気持ちも考えずに「おじいちゃん、いけませんよー」と子供言葉で話し掛ける看護婦をみているような、寒々しい気持ちになってしまう。当の老人たちがみたら、劇中の老人たちのあまりの子供っぽさに、なおさら白けてしまうのではないか。私としては、もっと渋く、カッコいいジジイたちの活劇を見てみたかったが。

35点
立体映像だけがとりえだ

人気アクションシリーズの完結編で、3D立体映画という趣向を凝らしている。

まず、普通に映画が始まる。やがて登場人物たちが、お客さんと同じデザインのメガネをかける場面が出てくる。そこで我々も、事前に用意された3Dメガネを一緒にかけると、そこから映画は立体映像となって見えるというわけである。

登場人物にあわせて、めがねをかけたり外したりと言う趣向が、恐らくメインターゲットの小さい子供たちには大好評となるだろう。画面から伸びる手を避けようと、身体をよじる小さい観客の姿は、スクリーンを見ているより、ある意味面白いかもしれない。

35点
アクションのための3流ストーリー

アントニオ・バンデラスとルーシー・リューが競演する、派手なガンアクション映画。この二人の競演が、最大の売り所という映画である。

しかしこれ、ストーリーに穴がありすぎる。所詮「アクションを見せるためのお定まりストーリー」とはいえ、あまりに理不尽で納得のいかない設定が多すぎる。

いっそこの映画を観るときは、「なんだよあのバカな設定!」などと、友人同士で突っ込んで楽しんで見るとよい。『バリスティック』は、そういう楽しみ方もできる映画である。こういう事を言うと「映画ファン」の方に怒られそうだが、娯楽のひとつに過ぎない映画をどう楽しもうと、それは料金を払ったお客さんの自由である。また、アメリカではこうした娯楽アクション映画(やホラー映画)を、そのように楽しむのは一般的である。

35点
バカらしさと胡散臭さが魅力的

マトリックスのアクションを作ったユアン・ウーピンがアクション監督を担当した、香港アクション映画。前作のリー・リンチェイ(=ジェット・リー)に代わり、主演は『ジェット・リーを超えた後継者』ことアンディ・オン……だそうである。宣伝文句の先走りようが実に素晴らしいではないか。

CGやワイヤーワーク、そして着ぐるみ怪獣まで出るという、実に香港映画らしい(?)怪しげなB級テイスト溢れる、ゆるいアクション映画である。

だいたい、『ジェット・リーを超えたアクション』といったって、あんなにワイヤーで吊りまくってるんじゃ、主役のアンディ・オン氏本人が凄いのかどうか、さっぱりわからないではないか。あれだけ吊ってりゃ、伊集院光がやったって同じだと思うのだが。

35点
サーフィンの楽しさだけはわかる映画

「サーフィンてこんなに楽しいんだよ! みんなもやりたくなったでしょう?」 と主張しつづける映画である。まるで、サーフィンプロモーションビデオのようだと思えばよろしい。

そんなわけで美しい青い海でのサーフシーンは、撮影が素晴らしいの一語に尽きる。エンドロールでは、ちょっとしたメイキングが見れるので、そこでまた感心である。このカメラマンは、サーフィンを撮らせたら世界一という人で、まったく文句のつけようがない。

ただ、被写体が彼のレベルに追い付いていないと感じる。特に主演の女の子は、サーフィンの天才という設定だが、いかんせんへっぴり腰が目に付き、素人目で見ても危なっかしい。

35点
あなたが映画業界関係者なら楽しめる

『ドン・キホーテ』というジョニー・デップ主演の幻の大作映画が、お蔵入りになるまでを描いたドキュメンタリー。

監督さんが、並々ならぬ熱意を持って製作を開始した大作が、天候や資金繰り、さまざまなアクシデントにみまわれ、あわれにもボツになってしまう様子が、非常によくわかる。

いろんなアクシデントが起こるが、結局は主役の役者の病気が問題だったようである。映画というものが、ほんのちょっとした事でコケてしまうという事がわかって興味深い。

30点
ファンをないがしろにした報い

諫山創の人気漫画の実写映画版として期待されていた前編「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」は、当サイトの批評文に樋口真嗣監督が激しく反応したことで炎上騒動を巻き起こした。関係者やスタッフの度重なる燃料投下でそれは大火となり、結果として初動50億の興収を期待されながらいまだ30億程度と、ファンにそっぽを向かれる結果を招いた。今頃映画会社の偉い人たちは、頭を抱えていることだろう。

100年以上ぶりに現れた人食い巨人たち。崩壊した壁を修復すべく調査兵団が奮闘する中、アルミン(本郷奏多)をかばったエレン(三浦春馬)はなぜか巨人化し、他の巨人を攻撃し始めた。それを見た人類側の生き残りは、敵か味方かわからぬエレンをどう取り扱うかに頭を悩ませることになる。

さて、伝えられるところによると樋口真嗣監督は、前田有一は試写室に出入り禁止のはずで、試写状も送っていないはずとの「宣伝部」からの伝聞をインターネット上で公開したという。これはマスコミでも報じられたから、当サイト読者や私に仕事を依頼している媒体の方々など、大勢を困惑させたことだろう。前田という男は呼ばれてもいない試写会に押しかけたのか、あるいは中国の違法サイトの海賊版でも見たのか、もしくは見てもいないのに批評を書いたのではないか、と。

30点
相当なファン意外にはきつい

テレビドラマ版を挟んでの映画版2作目となる本作だが、早くも一見さんお断りの、こぢんまりとしたファン専用作品となっている。

多田啓介(瑛太)行天春彦(松田龍平)がまほろ駅前で便利屋を始めてから3年。彼らは行天と浅からぬ因縁がある凪子(本上まなみ)から、娘はる(岩崎未来)を一時的に預かるよう依頼される。はるだけは知らないことだが、行天は彼女の実の父親ということであり、だから彼は彼女を預かることを激しく拒否するのだった。

映画版1作目から3年、実質3作目というのにのんびり登場人物描きをやるスローモーな展開につきあう覚悟がまずは必要になる。この最新作は行天の過去探りのような趣向なので、そこに興味がないとどうにもならない。

30点
村人を打ち倒すにはまだまだ足りぬ

日本の映画が面白くないのは、出資者間の調整ばかり優先して企画のコンセプトに力がないからである。だから、強烈なコンセプトがあれば、それだけで優位に立てる。

2011年、東日本大震災の直前。愛子(夏樹陽子)は若いころ恋人だった奥村(勝野洋)とSNSを通じて再会する。彼は、長年原発労働者として働いていたが、息子をがんで失ったばかりだという。愛子の人生、そして系譜は、原子力と切り離せぬ因縁があるのだった。

終戦直前の福島でウラン採掘をする愛子の若き父親、そして66年の、原発建設を巡って住民が割れていた双葉町。そして震災前、震災後の2011年。これらの時代を、愛子を中心とした人間模様として描く。

30点
男に見せたくない女の内面

多くの女たちから愛されては捨てられる男の女性遍歴を描いた「ニシノユキヒコの恋と冒険」は、そのタイトルとは裏腹に「女の子の、女の子のための、女の子が主役の映画」である。

誰が見てもモテモテなニシノ(竹野内豊)には、これまで多くの恋人、あるいは女友達がいた。美しい人妻(麻生久美子)や、別れてからも色目を使ってくる元カノ(本田翼)。職場でお気に入りの寂しそうな上司(尾野真千子)……。ほかにも出会う女性をことごとく魅了するが、そうした恋の数々は、なぜかつねに女性たちが離れていくことで終わるのだった。

主人公ニシノユキヒコの人物造形にリアリティがないことについては問題ではない。最初に幽霊としてでてくることで暗示する通り、このキャラクターは現実の男と言うよりある種のファンタジーであると宣言しているからである。

30点
格好つけることはない

「ラブクラフト・ガール」は、女性用バイブを作っている会社が舞台という、なかなかユニークな映画で期待していたが、そのたった一つの武器を生かし切れておらず残念であった。

デザイナー志望の茜(安藤聖)は、就職情報誌の「デザイン・企画開発」の文字にひかれラブクラフト社の面接を受ける。無事採用され喜んだのもつかの間、そこはアダルトグッズを取り扱う会社であった。デザイナーはデザイナーでもいきなり女性用バイブのデザインを依頼され、茜は思考停止に陥ってしまう。

予想外に入社してしまった会社でエログッズのデザインをする羽目になる──。じつに魅力的な走り出しである。ならば最初から全力疾走、矢継ぎ早にアダルト業界と一般社会のギャップを観客に提示し、驚きと笑いの渦に巻き込むのが王道であろう。

30点
単発見せ場を断続的に見せるサーカス映画

日本でG.I.ジョーといえば、オジサン世代にはなじみ深い多関節人形のおもちゃだが、アメリカでは特大ヒットとなった実写映画版前作のこと。その世界観を引き継いだこのパート2は、だから日米の観客が受ける温度差がさらに広がった。

国際テロ組織の一員が米大統領になりすます奇手により、機密部隊G.I.ジョーは壊滅的被害を受けた。ロードブロック(ドウェイン・ジョンソン)ら数名の生存者は、G.I.ジョー初代長官のジョー(ブルース・ウィリス)らの支援を受けなんとか態勢を立て直そうとするが……。

トランスフォーマーやらアイアンマンやら、世界を守る存在が多すぎてG.I.ジョーなんてとっくに記憶の彼方に飛んでいるのが、平均的日本人観客の姿であろう。前作と同じ世界観といっても、4年も前に見たっきりの続編ともなれば、それを思い出すのだけで無駄な時間を取られるというもの。

30点
意欲的な映像的挑戦だが、その他の要素が荒っぽい

映画『ロード・オブ・ザ・リング』3部作は、アカデミー賞11部門受賞の驚異的な記録で人々に記憶されている。イケメン界11部門受賞の私としても親近感を持つシリーズだが、「ホビット 思いがけない冒険」はその前日譚というべきもの。前作の舞台から60年をさかのぼり、かつての主人公フロドのおじさん=ビルボの冒険を描いている。

ホビット族のビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)は、あるとき灰色の魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)から突然冒険に駆り出される。その目的は、13人のドワーフたちの故郷を奪ったドラゴンを退治し、すべてを取り戻すこと。平和主義のホビットであるビルボはなぜ自分がそんなものについていかねばならぬのかさっぱりわからなかったが、ガンダルフにはある予感があるのだった。

反原発運動の雄・山本太郎が衆議員選挙に立候補し、確か「永遠にひとり」とかいう立派な政党まで作り上げたが、主人公のビルボさんは幸いひとりではなく仲間がいた。この物語は、小柄だが頑強な肉体を持つドワーフと、機転が利いて素早いホビット、そして皆を束ねるリーダーの魔法使いというなかなかバランスのとれたパーティーの冒険物語である。

30点
テーマがぼけている

かつて「美しい国」をスローガンに掲げた政治家がいたが、彼の選挙区支部では「美しい姉ちゃんの国」を目指していたようだ。デフレ克服のため金融緩和して金を回すとの政策には多くの国民が目を引かれたが、キャバクラに金を回して地元の景気を潤すとは、まさに有言実行。頼れる保守政治家といえるだろう。

一方、園子温監督は最新作に「希望の国」と名付けた。テーマは原発事故と放射能。「美しい国」に勝るとも劣らないシニカルなタイトルである。

東日本大震災の記憶も薄れぬ頃、長島県で酪農業を営む小野泰彦(夏八木勲)一家は再び大地震の悪夢に遭遇する。近くの長島第一原発もどうやら事故を起こしたらしく、警戒区域が指定されるが、小野家の庭にちょうど20kmの境界線が引かれてしまう。すんでのところで圏外になった母屋の中で、今後どうするか、妻(神楽坂恵)が妊娠したばかりの息子夫婦と泰彦はともに苦悩することになる。

30点
ピクサー初の女性ヒロインというが

先日ヤンキースへとトレードされたイチローだが、あのマシーンのような彼でさえ三振をする。10割打者の異名をとるピクサー社製作のアニメーション映画がダメ映画を作ったとしても、考えてみれば不思議ではない。

おてんばな王女メリダ(声:ケリー・マクドナルド)は、早くも結婚を決めようとする保守的な母親エレノア(声:エマ・トンプソン)と口論ばかりしている。自分をわかってくれないいらだちから、メリダは森の中の魔女へ軽率な願いをしてしまう。その結果、なんと母親は熊の姿に。魔法をキャンセルできる期限が刻一刻と迫る中、メリダは再び母親を取り戻すことができるのか。

ピクサー社は一つのアニメーション作品に3年から5年の月日をかけて制作する。つまり、複数の製作チームに分かれているわけで、チームによって作品にムラがあるのは当然。「Mr.インクレディブル」や「レミーのおいしいレストラン」といった、比較的評価の低い作品にもかかわってきたマーク・アンドリュースの長編初監督作品である本作も、そのムラの側に入ってしまった。

30点
企画をもっと煮詰めないと

小惑星イトカワまで、長距離なお使いをしてきた探査機はやぶさ。その偉業についてはや3作目の劇映画の登場である。だがこの一連の映画企画を見ると、日本の映画業界がいかに貧困なアイデアしか持ち合わせておらず、同時に冒険できない体質であるかがよくわかる。

JAXAのエンジニア助手、大橋(藤原竜也)は、あたかも父親(三浦友和)との確執をバネにするかのごとく、探査機はやぶさプロジェクトに打ち込んでいた。彼の父親は火星探査機のぞみのプロジェクトリーダーだったが、その夢が破れて以来、すっかり老け込んでしまったのだった。

半年後ぐらいに、出揃ったこれらはやぶさ映画のタイトルを並べ、その違いを詳しく説明できる人がいるのだろうか。いったいなぜそれぞれの映画会社は、こんなにも似たコンセプトの企画を大慌てで進めてしまったのか。業界ダントツトップの東宝は「はやぶさ」映画に手を出さなかったが、そこに答えがあるように思えてならない。はやぶさ美談ならタイムリーだ、いまなら金も集まりやすい、とりあえず大コケはしないだろう──そんな安直な考えがチラリとでもなかったのか。企画者たちに問うてみたい。

30点
≪説得力に欠ける≫

『ワイルド7』を見ると、日本のアクション映画の限界がよくわかる。

前例がないほど凶悪な銀行強盗事件が発生。銃撃戦の末逃走した犯人グループは、何の躊躇もなく人質らを次々と射殺。追手の警察もなすすべがなく、そのまま取り逃がすかと思われた時、黒いライダースーツに身を包んだ7人の男たちが現れる。「お前ら全員、退治する」そうつぶやくと7人は、凶悪な強盗犯をさらに上回る過激な戦いぶりで、彼らを虐殺する。この7人こそが、超法規的警察組織・通称ワイルド7のメンバーであった。

ありえないオートバイ・アクションと、法の番人たる警察官が「処刑」を行う過激なストーリーの原作コミックは70年代に人気を博した。それを、海猿シリーズを大ヒットさせた羽住英一郎監督が実写化。中高年の観客まで視野に入れた春の期待作だが、結果としては少々残念な一本である。

30点
≪消費者は媚びなど必要としない≫

前作「カーズ」はピクサー作品の中でも屈指の傑作であり、いくら商売的にさほど振るわなかったとはいえ、続編を作りたくなる気持ちはよくわかる。しかしその『カーズ2』は、明らかに失敗作。ピクサーの実力は疑う余地がないが、その彼らでさえこんなミスを犯すのかと、違った意味で感心させられた。映画作りは本当に難しい。

人気レースカーのマックィーン(オーウェン・ウィルソン)は、ライバルからのあおりもあっていよいよワールドグランプリに挑戦することになった。おんぼろレッカー車ながら親友のメーター(ラリー・ザ・ケイブル・ガイ)をピットクルーに引き連れ、最初の開催地東京へと向かったが、のどかなラジエータースプリングスの町しか知らないメーターは大都会では失敗の連続で、マックィーンの足を引っ張るばかり。二人の友情にもほころびが生じる中、彼らは偶然出会った英国のスパイたちの騒動にも巻き込まれてしまう。

併映の短編は「トイ・ストーリー3」の後日談のような内容。先にこちらを見た瞬間、私は嫌な予感がした。あんなに完璧なラストに、その感動の涙も乾かぬうちに余計なエピソードを付け加える制作陣のセンスを疑ったし、おまけに出来が悪い。蛇足という言葉がこれほど似合うものはない。

30点
≪キャスティングの苦労は買うが…≫

ハリー・ポッターが英国寄宿学校をモデルにしたファンタジーだとすれば、日本には忍者学校で頑張る子供忍者を描いた『忍たま乱太郎』がある。ハリポタ最終版にこちらもその映画化をぶつけてくるとは、じつに挑発的といえよう。しかもわざわざ実写版にするという暴挙、いや大胆さである。これは注目しないわけにはいかない。

貧しいが優しい父母のもとを離れ、忍者学校に通う乱太郎(加藤清史郎)。担任の先生方や同級生には愉快な人が勢ぞろい、乱太郎は退屈知らずな日々を過ごしていたが、ある日、カリスマ髪結いの斉藤幸隆(鹿賀丈史)が襲われる事件が起きる。それ以来、不穏な空気が町に蔓延、やがて忍たまたちも巻き込まれてゆく。

三池崇史監督の人徳というべきか、豪華すぎるキャストが勢ぞろい。平幹二朗や寺島進、柄本明や石橋蓮司、松方弘樹など、そうそうたるベテラン、演技派たちが、その演技力を無駄遣いしておくる確信的おバカ映画である。

30点
≪音楽と映像のこけおどし≫

東京ディズニーランドは、東日本震災当日7万人の来場者を寒さと降雨、空腹から守るため、園内の食料品や土産用の菓子を無料で配ったという。さらに彼らは門外不出の極秘スタッフ用通路を使って客たちを避難させ、夜はアトラクションの建物内に案内して寒さから救った。

多くはアルバイトなどの非正規雇用者だというのにキャストらは笑顔を欠かさず、徹夜で人々を誘導し、一切の混乱はなかった。事前に準備した災害時マニュアルが適切に機能した上、防寒のため梱包材を配布するなど従業員も積極的に機転をきかせた。

これぞ危機管理の見本。驚くべき危機意識の高さである。明日から国内の原発管理は、彼らに任せたほうがいい。もんじゅだの浜岡1号機なんて無粋な名前もやめて、ミッキー1号機とかMOXティンカーベルにすれば好感度も上がる。目玉アトラクションは、3D版「Our Friend The Atom」(※)。スクリーンは原子炉建屋の壁。ディズニー原発なら観光客も大勢来るし、経済効果は計り知れない。原子力村の皆さんはいますぐ検討すべきだ。なおアドバイザーとして私を雇いたい場合はいつでも連絡を。※ディズニーが1958年に製作した原発推進映画

30点
≪よく上映中止にならなかったものだとヒヤヒヤ≫

東日本大震災の影響で、日本の映画界も混乱した。外資系は軒並み営業を控えて社員たちは自宅待機、その他の会社も通常通りだったところはほとんどないような状況であった。当然、公開作品の中止や延期も相次いだ。とくに地震や人の死、そういったものを連想させる作品がそれにあたる。これはさすがにやむをえまい。『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』も私は一時、大丈夫かな、と思っていたが、無事公開されて子供たちをほっとさせた。

都知事を狙った列車爆破テロ事件に居合わせた江戸川コナン(声:高山みなみ)は、なんとか都知事の命だけは救ったものの、犯人を捕らえることはできなかった。やがてコナンは、都知事が国土交通大臣時代に手がけたダム建設をめぐる怨恨の線にたどり着くのだが……。

この映画のクライマックスを見れば私の心配が何だったかわかると思うが、そのシーンに代表されるように本作は映画版らしくアクション重視。季節外れの雪山を舞台に、スノボーに乗り換えたコナン探偵が激しく動き回る。

30点
≪妙にタイムリーなテーマが不気味≫

福島の原発事故が、日本中を引っ掻き回している。先日も参加者20余名という、原発推進デモとしては世界最大規模の市民行動が東京で行われたと報じられた。世界初の恥いや快挙を成し遂げたことを、まずは誇りにしていただきたい。

そんなご時世だからか、劇場用第19弾となる『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦』も、なんとエネルギー問題を暗喩した、藤波心もびっくりの社会派作品として登場した。

しんのすけ(声:矢島晶子)の前に、怪しげな少女レモンが現れる。彼女が持ってきたアクション仮面からのメッセージには、しんのすけをアクションスパイに任命するとあった。すっかりその気になったしんのすけは、彼女の指導の下に猛特訓を開始する。

30点
≪大ヒットアニメへのオマージュ≫

『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』を見ると、現代の日本人に……というより、映画を作る業界の人々に、まともな軍人観や戦争観というものは期待できないのかなと切なくなる。

戦争末期、本土防衛の要衝サイパン島は、米軍の猛攻の前に陥落寸前であった。日本軍の悲惨な玉砕が相次ぐ中、大場栄大尉(竹野内豊)は粘り強い抵抗を決意する。彼は各地で生き残った日本兵や民間人を集め、彼らとともに山中でのゲリラ戦を展開する。人数は少ないが決してあきらめないその勇敢な戦いの前に、米軍は翻弄されてゆくが……。

パンフレットには原作者ドン・ジョーンズによる原作のあとがきの一部が掲載されている。そこには、いまの日本人が、自分たちの父や祖父がなぜ戦ったのか、その精神を何も知らないこと、そしてなんら尊敬をしていない事に彼が驚き、真実を伝えたくてこれを書いた切実な思いが記されている。

30点
≪シリーズ継続のための工夫はみられるものの、完全に賞味期限切れ≫

3Dの普及でひとつ見逃せないのは、シリーズものの延命効果であろう。微妙に人気下降の局面でも、初の3D版ですよーと言えばあと1本くらいはどうにか作れる。そんな時代である。

『シュレック フォーエバー』は、アメリカでは記録的な大ヒットシリーズの完結編という位置づけ。作品のパワーは完全に断末魔のそれで、3Dのゲタはき効果がなければどうなっていただろうと思うほどの凋落ぶりを感じさせる。

妻フィオナ(声:キャメロン・ディアス)と3人の子供たちに囲まれ、何の不足もないように見えるシュレック(声:マイク・マイヤーズ)の日常。しかし彼は、日に日に不満をため込んでいた。怪物らしく気ままに暮らしていた独身時代が、最近恋しくて仕方がない。そんなとき、魔法使いのランプルスティルスキンが一日だけその望みをかなえてやろうと近づいてくる。だがシュレックが思わず契約書にサインした途端、世界は一変。仲間たちと誰一人出会っていない、暗黒のパラレルワールドへと飛ばされてしまう。

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