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2156件中 101~150件 を表示しています。
85点
シリーズで最もライトユーザー向き

ロバート・ラングドン教授がアカデミックな観光名所で知的な大冒険を繰り広げる『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの第3弾は、上映時間短め、アクション風味強めの、万人が等しく楽しめる良質な娯楽映画になっている。

病院で目覚めたラングドン教授(トム・ハンクス)は、ここがどこなのか、なぜここにいるのかなど、記憶の一部を失っていた。だが確実なことは、自分が何者かに狙われているということ。その謎を考える暇もなく襲撃された教授は、担当女医のシエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)を巻き込んで激しい逃亡劇へと放り出されるのだった。

面白さだけなら間違いなくシリーズ一番。とくに序盤からのノンストップ感がものすごい。なにしろあのラングドンが登場した時から重症で、やたらと気の利く美人女医と逃げまくる。追いかけてくるのはこれまたT-Xのごとき、おっかない美人である。伝統的な巻き込まれ型サスペンスとでもいおうか、中高年でも若者でもすんなり入り込める見事な冒頭部といえる。

85点
キアヌに騙される

2月末にアカデミー賞授賞式があるため、3月は社会派ものとか賞レースに絡んだ地味な映画が多い。気軽なエンタメが見たい映画ファンは4月のGWまで待たなきゃならない事が多いのだが、『砂上の法廷』はこの時期には珍しい娯楽色の強い法廷サスペンスである。

恩師だった弁護士殺害事件で起訴された彼の息子の弁護を引き受けた弁護士ラムゼイ(キアヌ・リーヴス)は、証人たちのウソを見抜くが、なぜか被告人は固く口を閉ざしたままだった。

事件じたいは単純な殺人事件。傲慢な性格で亭主関白だった大物弁護士が自宅で刺殺され、傍らには血まみれの息子と凶器の包丁。しかも息子は「自分がやった」と言っている。ほとんど現行犯だし、争う余地などないように見える。

85点
拉致監禁された部屋で子供を産み育てた少女の物語

20代半ばとみられる美しい母親(ブリー・ラーソン)と、長い髪がきれいな5歳の子供(ジェイコブ・トレンブレイ)。二人は目覚めると朝食を作り、一緒に運動を始める。とても仲睦まじい、仲良し母子のほほえましい様子だ。思わず頬が緩むが、やがて観客は大きな違和感を感じ始める。不気味で、おそろしい違和感を……。

映画「ルーム」のオープニングは秀逸だ。なにしろ、はたからみてもわかるほど深い絆で結ばれる母子を見て恐怖感を感じ始めるというのは何よりインパクトある体験といえる。

たとえば、こんなに大きな子供なのに授乳をしている。美しく長い髪の子供は、しかし男の子だ。6畳かそこらのわずかなスペースに、浴槽やキッチン、ベッドが置かれているが、二人は外に出る気配はない。

85点
全アベンジャーズシリーズでも出色のアクション

私はかねてからアベンジャーズシリーズの問題点として、ヒーローの供給過剰と悪役の存在感不足をあげてきた。それを何とかしないとジリ貧だと予言していたわけだが、マーベルかディズニーの偉い人が感心にも当サイトを読んでいたか、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」ではその不安を払しょくする見事なストーリーを出してきた。

アベンジャーズは世界を救ってきたが、その代償として各地は深刻なダメージを受けていた。やがて、ただの民間組織ながら我が物顔で世界中を跋扈するアベンジャーズに対する世界の目は厳しいものとなっていった。あるテロ事件の捜査で犠牲者を出したことを契機に、ついに彼らを国際的な組織の管理下に置くべきとの声が高まってきたが、アベンジャーズのリーダー、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)は強く反対する。

キャプテンことスティーブ・ロジャースは、かつて裏切られた経験からもともと組織というものを信用していない。と同時に、アベンジャーズ随一の純粋な愛国心の持ち主であり、善悪に対する自分の判断というものに絶対の自信を持っている。合議制が常に正しい結論を出すわけでなく、まともなリーダーならば独裁制のほうが世の中がよくなる論すらあることを考えれば、彼の考えには十分な説得力がある。

85点
日本じゃ作れないだろう

04年の「スーパーサイズ・ミー」をヒントに作られた「あまくない砂糖の話」は、ライザップブームはじめ糖質制限ダイエット全盛の現代日本にこそふさわしい、タイムリーなドキュメンタリーである。

オーストラリア人のデイモン・ガモー監督は、妻の妊娠を機に安全な食生活について考え始める。この奥さんはなかなか優秀で、ガモー家の食生活に特段の問題点はないようにみえる。だが生まれてくる子供のための食事はどうだろう。世間に溢れる子供用の加工食品、健康によいとされるシリアルやジュース。そういうものに問題はないのか、もっというなら、それらに大量に含まれるシュガー(砂糖、果糖)は安全なのか。

そして彼は決意する。シュガーを自ら60日間とり続けて人体実験してみよう、と。

85点
足るを知る者は富む

予測のつかないストーリー展開でスペイン語圏の映画祭等で高く評価された「マジカル・ガール」は、一筋縄ではいかない奥深さを感じさせる良作である。

白血病で余命わずか娘(ルシア・ポリャン)のため、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」のレア衣装を入手しようとする父(ルイス・ベルメホ)。だがその衣装はプレミアが付き、高額となっていた。仕方がなく、失業中の父がとった手段とは……。

青白い顔をした女の子が一心不乱にアニメソングを踊る。どこかドン引きしてしまうシーンから始まる「マジカル・ガール」は、その不穏な映像の質感通り、たんなる美談や感動もの方面には進まない。むしろホラーでもスリラーでもない、大人のためのすこぶるガチな恐怖映画と言えるだろう。

85点
アフガニスタンの国鳥

地球の裏側を飛ぶ遠隔操縦の無人機を操縦し、敵を爆撃したパイロットがあることに気づいた。今吹き飛ばした中に、子供がいたように見えたのだ。同僚にチャットでそれを問うと、彼もたぶんそうだという。するとそのチャットに軍の偉い人が割り込んできてこういった。「違う違う、あれは犬だった。心配するな」と……。

ラスベガス郊外に住むイーガン少佐(イーサン・ホーク)は中東で活躍した元F-16のパイロットだが、今では近くの空軍基地に努めている。だが彼は毎日アフガニスタンの上空に「出撃」してタリバンを駆逐している。彼が操るのは無人機=UAV。妻子が待つ家庭と戦場をマイカーで行き来する異様な毎日は、やがて彼の心をむしばんでゆく。

冒頭の実話は映画とは関係ない話だが、この映画のテーマを象徴しているので紹介した。同時に、いわゆるブラック企業で働く普通の人々の心にも刺さる問題ではないだろうか。すなわち、自分のポリシーや思想、やりたいこととは真逆のことを命じられ、こなし続けていると、どんなに屈強な精神を持つものでもつぶれることがあるという問題だ。

85点
中年世代向けスパイ映画

イーサン・ハントとジェームズ・ボンド両横綱が揃い踏みの2015年に、両者の間に割り込む形で入ってきた「キングスマン」は、しかし巨頭をたたき落とす勢いの傑作スパイ映画だった。

サヴィル・ロウのテーラー「キングスマン」をアジトとする超国家的スパイ組織のハリー(コリン・ファース)。彼は組織の欠員を埋めるため、素質ある不良少年エグジー(タロン・エガートン)をスカウトする。

個性的なヒーロー映画『キック・アス』で知られるマシュー・ヴォーン監督らしく、のっけからこのジャンルへの思いこみを利用した強烈なミスリードで観客を仰天させる。そのショックから立ち直らないうちに一気に物語に引き込む鮮やかなストーリーの立ち上げである。

85点
テーマ曲からアドレナリン全開

映画界はリブート花盛りだが、ターミネーターシリーズ5作目にして新三部作の一作目となる「ターミネーター:新起動/ジェニシス」はすごい。なにしろ3作目と4作目をほとんど無かったことにして、事実上の3作目となる形の超変化球型リブートを果たしてしまったのだから。

2029年、ついにスカイネットとの戦いに勝利したジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)。だが機械軍は敗北の直前、T-800型ターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)を1984年に送り込み、ジョンの母親サラ(エミリア・クラーク)を抹殺しようと試みていた。ジョンは急きょ追撃に部下のカイル・リース(ジェイ・コートニー)を送り込むことを決めるが……。

おやおや、ストーリーを見るとまさにパート1の前日譚である。この後、懐かしい全裸の登場シーンを経てアーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800はバイカー3人組に近づいていく、既視感たっぷりの映像が始まるが……。

85点
エンタメ性抜群な哲学的映画

大ヒット中「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でヒャッハーな暴走族に追いかけられるトラックを運転するトム・ハーディだが、続いて公開される主演作「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」では、妊娠させてしまった不倫相手に呼び出され、ひたすら夜の高速道路を運転する役を演じている。つくづくドライブ運のない男である。

超高層ビルの現場監督として、重要な作業を明朝に控えるアイヴァン・ロック(トム・ハーディ)は、なぜか自宅と逆方向にハンドルを切り、ハイウェイに乗る。彼が向かうのは1年前に不倫した女の病院。彼女は彼の子を妊娠し、今まさに出産しようとしているのだった。

不倫相手が妊娠した、というのは身近ながらきわめて深刻なドラマである。ところが本作はすでにその女性が産気づき、今すぐ来て! というところから物語が始まる。映画は病院までのおよそ90分間のドライブを、リアルタイムで描く「動く密室劇」である。

85点
傑作2本の要素を融合

「トラッシュ!-この街が輝く日まで-」のスティーヴン・ダルドリー監督は、舞台を特定しない原作をブラジル、リオの物語に改変するに当たりフェルナンド・メイレレスを製作チームに引き込んだ。

その結果、本作は「リトル・ダンサー」(00年、英国)の優れた少年ドラマと「シティ・オブ・ゴッド」(02年、ブラジル)の超リアル犯罪ものの強烈なコラボレーションとして成功した。

リオデジャネイロ郊外の廃棄場でゴミ拾いをして生計を立てる3人の少年は、ある日ひとつの財布を見つける。好奇心旺盛なラファエル(ヒクソン・テヴェス)は、この財布を大人たちが血眼で探していることから何かを察知し、あえて彼らに渡さずその秘密を探ろうとする。

85点
戦場のリアリティの中で光るセンチメンタリズム

「フューリー」は軍経験者のデヴィッド・エアー監督が、博物館から本物の戦車を借りて撮影した戦場映画である。戦闘映画といってもいい。本物の戦車でタンクムービーをとるなんて、まさに中二の夢そのものだが、実現のみならず稀代の傑作に仕上げてしまうのだからハリウッド恐るべし。

1945年の欧州戦線。連合軍の戦車乗り・通称ウォーダディー(ブラッド・ピット)は、フューリーと名付けた愛車のシャーマンM4中戦車を駆り、仲間たちと鉄壁のチームワークで生き残っていた。ところがあるとき、戦死した仲間の補充に新兵(ローガン・ラーマン)をあてがわれ、危険な前線任務を命じられる。

敵の巨大戦車ティーガー戦ほか、とてつもない恐怖と興奮を与える戦闘シーンの連続である。跳弾の表現や貫通力重視の対戦車弾の特性など、ディテールにこだわった(かつ分かりやすく観客に伝える)演出は画期的で、今後本作はタンクムービーの新たなる最高峰として映画史に君臨することになるだろう。

85点
全映画作家が嫉妬してしまうのではと思うほど良い

グザヴィエ・ドラン監督は17歳の時に脚本を書いた「マイ・マザー」を19歳で監督して絶賛された天才肌の映画作家である。そしてその才気は、暴力による支配をメインテーマとするドラマ「トム・アット・ザ・ファーム」で再び証明された。

恋人ギョームの葬儀のため、彼の実家を訪れたトム(グザヴィエ・ドラン)は、そこで自分とギョームの関係が少しも母親に知らされていなかったことにショックを受ける。それどころか、唯一それを知っているらしいギョームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)からは、絶対に二人の関係を口にするなと脅されるのだった。

紙ナプキンに何事かを書き殴る冒頭のアップショットからして異様な、あらゆる点に力強さを感じる映画である。ここで観客が想像する今後のいろいろな展開を、あっさり裏切り翻弄する筋運びも抜群にうまい。

85点
天才が天才を描く

この映画の監督クリント・イーストウッドの息子カイル・イーストウッドは9月、東京ブルーノート公演のため来日した。時計を見て、まだ開演までは随分あるなと赤ワインを堪能していた私だが、そこに突然カイル本人がのそのそとやってきて、何やら機材の調整を始めたので驚いた。そんなことはスタッフにでもやらせておけばいいのに、しゃがみこんで当たり前のように自分でごそごそやっている。食事をしている観客の多くは気づいてもいない。

映画「ジャージー・ボーイズ」の音楽にも関わったこの父親似のアーティストの気取らない姿と、一世を風靡したバンド。フォー・シーズンズの共感あふれる舞台裏を描いた映画のシーンが、そのとき思わず頭の中で重なった。

ニュージャージーのヴェルビルという町は貧しく、外に出ていくには事実上、音楽で成功するほかない。チンピラのトミー(ヴィンセント・ピアッツァ)もそれを夢見る一人だったが、彼の前にすばらしい声を持つフランキー(ジョン・ロイド・ヤング)が現れる。さらにボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)なる若きシンガーソングライターのメロディを得て、ついに彼らの運命は動き始める。

85点
チャラ男トム・クルーズのゲームブック人生

日本原作の超大作がこの夏は続くわけだが、圧倒的イチオシの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は、原作要素を大幅に改編した大胆さが功を奏した。

近未来、異生物による侵略を受けた人類は、空爆が効果を上げない敵に対し重武装の歩兵で対峙していた。戦況は芳しくなく、民間人へのプロパガンダを受け持っていたウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)まで最前線におくられることになったが、戦闘訓練を受けていないケイジは戦闘開始数分で戦死する。だがその瞬間、彼は出撃前日の朝へとタイムリープしているのだった。

桜坂洋のライトノベルがハリウッドの予算178億円の超大作になるときいて、これはとんでもないジャパニーズ(?)ドリームだと思ったものだが、実際に読み比べてみると、ストーリーも舞台もビジュアルもほとんど映画オリジナルで、タイムリープのアイデアを拝借して好き放題つくりかえたという印象である。だがもちろん、それでもこの傑作映画の根幹が原作にあることは事実で、それはたいへん誇らしいことだ。

85点
ビジネスオリエンテーリング

娯楽要素が強く賞うけはしないかもしれないが、ことによると今年一番観客から愛される映画は「LIFE!」かもしれない。

雑誌「LIFE」の写真管理部員ウォルター(ベン・スティラー)は、引っ込み思案の小心者だったが、いつも妄想の中ではヒーロー的存在にあこがれていた。ネット時代の運命か、長年勤めたこの雑誌も休刊が迫るが、肝心の最終号に使用する表紙のネガが紛失していることに気付く。急ぎカメラマンのショーン(ショーン・ペン)に連絡を取ろうとするが、世界を飛び回る彼は捕まらない。やむなくウォルターは、行ったこともない秘境へと単身飛び出すことに。

人は旅で変わると言われるが、「LIFE!」は必ずしもそういうことを語っていない。少年時代の忘れられた趣味であるスケボー技術に救われる展開にしても、彼が元々持っていた経験、スキルであり、旅はそれの価値に気づかせただけのわき役である。

85点
邦題はイマイチも中身は傑作

失敗に悩む人に私がいつも言うのは、超一流の打者だって7割近くは失敗なんだから気にせず堂々と失敗してやれということだ。一般人なら一割五分で十分、満足いく仕事が二割もできたら御の字である。まして三割いけばトップクラス。4割できたらもう神技だ。

1987年の夏。アメリカ東部の田舎町でシングルマザーのアデル(ケイト・ウィンスレット)は息子ヘンリー(ガトリン・グリフィス)とつつましく暮らしている。夫に去られてから精神を病み外出もままならぬアデルを、13歳ながら支えようとするヘンリーは月に一度の買い物に今日も母を連れ出してやった。ところが二人はそのショッピングセンターで出会った脱獄囚のフランク(ジョシュ・ブローリン)に無理やり自宅へ押しかけられ、そのまま軟禁されてしまう。

この映画のジェイソン・ライトマン監督はまだ若い(77年生まれ)が、個人的には恐るべき打率の高さで注目している才能である。なにしろデビュー作「サンキュー・スモーキング」(2006)から「JUNO/ジュノ」(2007)、「マイレージ、マイライフ」(2009)、「ヤング≒アダルト」(2011)と目下のところ傑作率10割。そしてこの最新作も期待にそぐわぬ素晴らしい人間ドラマである。

85点
泣ける度、トラウマ度ともに高し

戦争を扱った映画には大きく2タイプある。戦争を外交政策のひとつとしてマクロに見つめる、すなわち政治映画としてのそれ。もう一つは、そこに巻き込まれる生活者を描くミクロの視点。後者の場合は戦争イコール天災のごとく描かれることが多く、開戦理由だとかその必然性を描くことは重視されない。

1945年の色丹島。父、祖父とくらす10歳と7歳の兄弟、純平(声:横山幸汰)と寛太(声:谷合純矢)は、戦闘とは無縁のおだやかな少年時代を送っていた。ところが終戦直後にソ連兵が突如侵攻。彼らの家や財産は没収され、かつての母屋にはソ連将校の一家が暮らすことに。その娘ターニャ(声・ポリーナ・イリュシェンコ)との交流に一時の幸福感を覚えるも、二人の家族はやがて過酷な運命に巻き込まれる。

「ジョバンニの島」は、典型的な後者のタイプ、すなわち戦争を天変地異のごときものとして、それに翻弄される一家を描いたミクロ視点の戦争映画だ。

85点
世の中の仕組みムービー

大人は子供たちの前では見栄を張り、格好を付けてしまうものだ。だが、いつか社会にでる彼らに世の中の本当の姿を教えておくのもまた大人たちの役目。この映画はそんなときに使える、中学生から見られる社会の仕組みムービーである。

大手広告代理店、現通で働く若手社員、太田喜一郎(妻夫木聡)は、わがまま勝手な上司・大滝(豊川悦司)から彼の身代わりになって国際広告祭の審査員をやってこいと無謀な命令を受ける。太田は優秀な同僚社員(北川景子)をニセ妻として無理やり連れていくことに成功するが、そのミッションにはさらなる無謀な指令が秘められていたのだった。

多くの人にとって、広告業界は未知なる世界だろう。この映画の永井聡監督と脚本家の澤本嘉光はCM業界出身だから、一般の人が知ったらびっくりするようなギョーカイ特有の裏話をいくつも披露する。ちゃらんぽらんな上司による面倒な仕事の部下への丸投げ、スポンサーさまさまのカースト制度等々。それらは爆笑のギャグシーンとして大きな見所となっている。

85点
ただの豪華キャスト映画ではない

マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、そしてブラッド・ピットと豪華出演陣に、テンポのいい編集がスタイリッシュな予告編。これってアタシみたいなオサレ女子にぴったりな映画じゃない?今日のフェイスブックのネタはこれできまりね!

──と思った推定40代女子のみなさん申し訳ない。それらはすべて映画宣伝会社の悪ふざけであり、万が一にもそんな気構えでこの映画を見ると、とんでもないトラウマを植え付けられかねないのでお気をつけいただきたい。

"カウンセラー"と呼ばれる若き敏腕弁護士(マイケル・ファスベンダー)は、あまりに美しい恋人のローラ(ペネロペ・クルス)との結婚に先立ち、ぜいたくな暮らしへの欲が出ていた。そこで旧知の実業家ライナー(ハビエル・バルデム)から裏社会で生きるウェストリー(ブラッド・ピット)を紹介してもらい、メキシコマフィアとの麻薬取引に手を染めることに。一回だけ、危ない橋は渡らないと、念には念を入れて挑んだカウンセラーだが、予期せぬトラブルに巻き込まれ窮地に追い込まれてしまう。

85点
コメディ仕立てながら本格的

近年では一部の大河ドラマなど、「本格」から離れたものは時代劇ファンから批判されやすい。先日紹介した「蠢動 -しゅんどう-」(13年、日)がみた人から高く評価されているのも、近年まれにみる本格時代劇であったからだろう。

だが、考えてみると時代劇とはもともと絵空事であるのだから、本来どんな素っ頓狂な作風であっても文句を言われる筋合いはない。

実際この「清須会議」などは、日本人に大人気の戦国武将ものでありながら合戦シーンはなし、それどころかカリカチュアされた有名武将たちがコントのような掛け合いを繰り広げる場面まであるなど、相当アバンギャルドな時代劇である。

85点
とんでもない情熱の1本

映画というものは多かれ少なかれ、作り手の情熱がこもっているものだが、「蠢動 -しゅんどう-」はおそらく今年公開される内外すべての映画の中で、もっとも熱い情熱を注がれた映画作品である。出来映えもすこぶるよく、まさに渾身の1本と呼ぶにふさわしい。

山陰の因幡藩は飢饉からなんとか一息ついたところであった。ところがそんな折、幕府から派遣された剣術指南役の松宮(目黒祐樹)が怪しげな調査を繰り返しているとの報が城代家老のもとに入った。隠し田の存在などを幕府に知られれば、藩存続の危機。いまや藩は追い詰められ、非情な選択を迫られつつあった。

三上監督は30年来の夢である本作を作るため、3代続いた自らの会社を売り払った。そうして準備した製作費で一流のスタッフをそろえ、キャストを集めて斬り合いの訓練を施し、数十年間練りに練った渾身の脚本を映像化した。

85点
プロパガンダ度100

アメリカウォッチャーにとって絶対に見逃せない映画というものがあるのだが、その条件の一つが「同時期にそっくりな映画が公開される」そのペア。

「エンド・オブ・ホワイトハウス」はホワイトハウスがテロリストの攻撃を受け陥落するストーリーだが、これは日本でも8月公開になる「ホワイトハウス・ダウン」と全く同じである。

そういう映画は天下のハリウッド2社の重役がそろって「こいつは面白い、今作るべきだ」と判断した企画であるから、きわめてタイムリーであったり、えらい人たちが広く人々に広めたい内容であることが多い。事実この公開と前後してボストンマラソンでテロ事件が起きた。「アメリカ本土が攻撃される」というのは、いまや絵空事とは笑っていられないリアリティをもって、映画化されるに足る題材なのである。

85点
偽善に背を向け、介護を通して愛の本質に迫る

英語圏の映画ではないというのに「愛、アムール」を作品賞にノミネートしたあたりに、アカデミー会員の良心を感じるが、それもそのはず。見ればすぐにわかる、映画の出来という点だけならば、誰が見たってこいつがナンバーワン、である。

パリの高級賃貸住宅で暮らす老夫婦ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。深い愛情で結ばれた彼らだったが、妻アンヌがあるとき倒れ、半身まひの後遺障害が残ったことで平和で穏やかな日々は終わりを告げる。相談の結果、ジョルジュは妻を自宅で引き取ることに決めるが、老人同士の介護は想像を超える苦労に満ちたものだった。

オープニングから不穏な空気を張りつめるハネケ節で、こいつはただ事ではなさそうだとの思いを観客はまず抱く。

85点
泣けるスパイダーマン

サム・ライミ監督の降板をきっかけに、大ヒットシリーズである実写版スパイダーマンは一からやり直すことになった。キャストも一新、主人公ピーター・パーカーの高校生時代をじっくり描くという、ドラマ重視のコンセプトとなり、監督もマーク・ウェブ(「(500)日のサマー」(2009))が抜擢された。知名度も実績もかなり劣る面々となったわけだが、それでもふたを開ければドラマ性とエンターテイメント性を高いレベルで両立させたなかなかの傑作であった。

高校生のピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)は、両親が8歳の時に失踪したことが心の傷となっていたが、心優しい叔父夫婦と幸せに暮らしていた。そんなピーターは、あるとき父親の同僚だったコナーズ博士(リス・エヴァンス)の研究室で、特殊なクモにかまれてしまう。

下敷きにした原作自体も前シリーズとは異なるため、ヒロインはMJからグウェン(エマ・ストーン)に変更。恋人との関係は変身前から結構なラブラブ状態、との違いがあるが、基本的にはおなじみのスパイダーマン誕生秘話から描かれる。

85点
面白くて斬新でゴージャス

富士そばの一部店舗にカレーかつ丼というメニューがある。おそらくカレーライスとかつ丼の両方を食べたい人が考案したメニューであろう。だがそのコンビネーションは、予想通りいや予想に反して大した相乗効果をもたらさず、どうみてもかつ丼にカレーをかけた以上の料理にはなれなかった。

これは欲張りな消費者の要求が必ずしもいい結果を招くわけではない一例だが、インド映画『ロボット』は、笑いやスリラー、アクション、ミュージカルなどを、相乗効果を無視してひたすら盛り込んだ映画版カレーかつ丼。しかも、奇跡的に破綻なくまとまった他に類を見ないエンターテイメント作品に仕上がっており、富士そばメニュー考案者も激しく嫉妬間違いなしの逸品である。

バシー博士(ラジニカーント)は10年来の夢である人間型ロボット(ラジニカーント・二役)の開発に成功した。軍用にも耐えるほどの驚異的な能力と戦闘力をもつロボットだったが、感情を理解させるようにしてから予期せぬトラブルが発生する。

85点
完成度なら一番だったが

アカデミー賞というのは、作品の出来不出来以上に、なぜ今ここにこの作品があるのか、それが問われるものだと私は思っている。その点「ヒューゴの不思議な発明」は満点で、さらに数ある作品賞候補の中でも群を抜く完成度を誇る。結果的には「アーティスト」(11年、仏)に譲ったものの、マーティン・スコセッシ監督がほんの5年前に「ディパーテッド」(06年、米)で受賞したばかりでなければ、きっとこちらが選ばれていたことだろう。

1930年代のパリ。リヨン駅の屋根裏にある時計台の中には、父親を失った少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)が一人で住んでいる。生活に必要なものは駅のあちこちから拝借する借り暮らし。だが彼がもっとも収集に執念を燃やすのは、父親が残した機械人形の修理に必要なパーツ。人形を動かせば、父親が遺したメッセージを読める、そう彼は信じている。だがあるとき、ついに盗みの現場を玩具店の主人(ベン・キングズレー)にみつかってしまい……。

この作品は、様々な視点から語ることができる。

85点
≪震災後の日本とリンクする≫

太平洋戦争を描いた映画は常に論議を巻き起こしてきた。民族・思想的立場により解釈が分かれる問題ゆえ、このテーマはどうしても批判の対象になりやすい。自国を一方的に被害者とする偏った考証の娯楽大作「パール・ハーバー」(01年、米)はその典型例。昔は同じ真珠湾攻撃を描いた作品でも、きわめて中立的な視点による「トラ・トラ・トラ!」(70年、米)という傑作もあったのだが、時が過ぎ戦争経験者が減るにつれ、感情的な戦争映画が増えてきた。

そんな流れの中で「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(134分、日本)を見ると、時代が一巡して再び冷静な映画作りができるようになったのかと希望が持てる。

日独伊三国同盟に強硬に反対するくだりから、ブーゲンビルの空に散った悲劇の最期まで、あくまで山本五十六の視点で開戦の顛末を追った本格戦争映画。役所広司演じる山本司令長官は徹底した現実主義者として描かれ、あくまで国益を守る外交的視点と、攻撃準備と生産力不足による軍事的見地の双方の理由から戦争回避に尽力する。

85点
≪女子供に媚びぬ、オヤジのための脚本≫

一部に根強いファンがいる安全パイというべき鉄道映画の、それもシリーズ第2作。超有名ヒット作の二番煎じ臭さ漂う定年運転士のドラマという内容、本格的な長編映画は初という監督など、私にとって『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』の事前の期待値はゼロに近かった。

しかし映画とはわからぬものである。本作はこの秋の日本映画としては、トップクラスに入る見事な傑作であった。

運転士として現場一徹を貫いた滝島徹(三浦友和)は一か月後に定年を控えていた。その後は妻・佐和子(余貴美子)とのんびり旅行でもと計画をたてていたが、彼女はそれを拒否。今後は家族のためでなく自分のために看護師として第二の人生を始めると主張する。やがて彼女の気持ちがまったく理解できぬ徹と激しい口論となり、佐和子は出て行ってしまう。

85点
≪オトナのためのヒーロー映画≫

何のインパクトもないタイトル、中年男のコスプレ姿が移った場面写真。これでこの映画を見ようと思う人は、よほどの変わり者としかいいようのない。普通なら、なんら惹かれるところのない作品である。

しかし私レベルにもなれば、わずかそれだけの情報からでも傑作の香りを感じられる。さらにスタッフキャストの名を見て、これはかなりの確率で「当たり」だなと予想して試写を見に行った。結果、予想通り、いや予想以上の良い映画であった。

美人の妻(リヴ・タイラー)をもらったことが人生唯一にして最大の幸せである、平凡な食堂職員フランク(レイン・ウィルソン)。ところがイケメンのドラッグディーラー(ケヴィン・ベーコン)に妻を奪われ、その怒りでついに覚醒する。神の啓示をうけ、フランクはヒーローになることを決意。自作の赤いヒーロースーツに身を包み、夜の街に悪を求めて出かけるのだった。

85点
≪前に進む勇気が湧いてくる≫

『127時間』は、アカデミー賞を受賞した「スラムドッグ$ミリオネア」に続くダニー・ボイル監督期待の最新作。それも監督自らが企画書を書き発案者となって作り上げた、渾身の作品である。

アウトドア大好きな若者アーロン(ジェームズ・フランコ)は、今日もロッククライミングを楽しむため大自然の峡谷へと向かう。途中で出会った観光客の女の子に、誰も知らない穴場をガイドしてやるなど余裕を見せていた彼だが、やがて一人になって岩を登る途中、落石事故に巻き込まれる。幸い身体は無事だったものの、右手が巨岩に挟まれ身動きが取れなくなってしまう。

私の知るうちにもトライアスロン好きの女の子がいて、休日のたびどこかの島にいって走ったり泳いだりしているとメールが来る。どうせならビキニ姿の写メでも添付してくりゃいいのに気が利かないが、それはともかくこういうタイプとこの映画の主人公は正反対である。

85点
≪とっておきの脚本≫

「ディセント2」(2009)の脚本で知られるJ・ブレイクソンは34歳の若き才能だが、ずっと一つのアイデアを温めていた。彼はそれを他の監督に譲らず、絶対に自分の初監督作品として使うのだとこだわり続けた。それがこの『アリス・クリードの失踪』。ガンコな若手脚本家の夢は叶い、彼は無事、本作で映画監督デビューを果たした。

二人の男が無言でなにかの準備を始めている。人気のない小屋の窓をふさぎ、てきぱきと着替える。やがて彼らはそこに若い女を連れてきていったん服を脱がし、持ち物が何もない事を確認して準備した服を着せ、ベッドに括り付ける。彼らは誘拐犯で、若い女アリス(ジェマ・アータートン)は資産家の娘だった。鮮やかな手口を見せた二人の男、ダニー(マーティン・コムストン)とヴィック(エディ・マーサン)は、続いて身代金の要求に取り掛かる。しかし完璧なその計画は、3人の誰一人として予想もしない方向へと転がってゆく。

登場人物はたったの3人。ほとんどの舞台は監禁部屋。無セリフでひたすら誘拐実行のディテールを描く数分間無セリフのオープニング。のっけから緊張感は100点満点、ただものではない映画が始まったと観客の期待を高めてゆく。

85点
≪平凡な人生の尊さを教えてくれる心優しい佳作≫

『英国王のスピーチ』がイギリス王室へのご祝儀のようにアカデミー賞を受賞したわずか2か月後、ロイヤル・ウェディングが世界に微笑みをもたらした。そしてその瞬間を見届けるように、オバマ大統領は翌日オサマ・ビンラディン暗殺計画を実行した。

敵総大将の死に熱狂する米国民の姿をみるにつけ、この国の大衆はわかりやすいストーリーが好きなのだなと実感する。この後は、長きにわたる対テロ戦争に一息付き、当然ながらアフガニスタンからの凱旋帰国と、抱き合う米兵の家族たちの美談ニュースがお茶の間をにぎわすことだろう。世界(米国人にとって)は平和に向け、大きく前進する。ハリウッド伝統の、感動のハッピーエンディング、というやつだ。

むろん金価格やドル、株価や原油市場も大きく動く。あの国のような巨大な経済を動かすには、経済理論のほかに映画的な演出が必要だということが、ここ数か月の動きをみているとよくわかる。

85点
自虐ネタと本格的スペクタクル

ギリシャ神話をネタに思い切り遊んだ『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は、ほとんど確信的な「突っ込みどころ満載」映画といえる。

ぱっとしない高校生パーシー(ローガン・ラーマン)は、学校では勉強ができず、家では母の暴力的な再婚相手に悩まされる受難の日々を送っている。とはいえ彼は、何分間も水にもぐれたり、古代ギリシャ文字がなぜか読めたりといった、あまり役に立たない個性も持っていた。そんなある日、彼の平凡な日常は突如現れた化け物に襲われる形で幕を閉じる。どうやら世界は、パーシーのあずかり知らぬところでとんでもないことになっているらしい。

本作の世界観では、現代ニューヨークにしょっちゅう神々が遊びにきたり、あるいは住んでいる事になっている。頑強な肉体を持つ神様のこと、かわいい女性やイケメンがいればあっという間にメイクラブ。アダム徳永並のスーパーテクでオーマイゴッドと虜にさせ、たくさんの人神ハーフを生み出している。主人公のパーシーも、そうして生まれた一人というわけだ。

85点
「別れ」のあとには何が来るのか?

3DCGアニメーションで知られるピクサー社は、いうまでもなくこの地球上で最強のアニメーションスタジオである。品質面でも、ビジネス面でも、ここ以上のアニメ映画を作れる会社はどこにも存在しない。とくに私が立派だと思うのは、この会社が15年にわたり「オリジナル」にこだわり続けてきたことだ。

既存のストーリーではなく、ゼロから生み出す。それで利益を上げ続ける。これこそ、創造そのものというべきアニメーション、さらに言えば映画作りの理想形ではないだろうか。

風船売りの老人カール(声:エドワード・アズナー)は、長年暮らした家をついに追い出される事に。亡き妻との思い出がこもったこの家、そしてその中のあらゆるものを捨てることが出来ないカールは、熟考の結果すべての風船を家に結びつけ、家ごと空へ旅にでる。

85点
早くも映画化?

共有のヤリ部屋で女の変死体が見つかり、通報前に男たちが協議する──某ヒルズ事件が早くも映画化された。

なんて事があるはずはないが、きっとこんな状況だったのだろうなあと思わせる本作の設定はあまりにも生々しい。

だが、この映画の魅力はそうした時事性、類似性ではなく、ガチンコ本格ミステリとしてのそれだ。後半に説明する。

85点
前作よりはるかに面白く、そして怖い

自分がみたままを映像にする、いわゆる主観撮影という技法が流行している。中でも『REC/レック』は本国スペインで記録的大ヒット、成功例といえるだろう。早々にハリウッドに買われたリメイク権は、誰も気づかぬままいつのまにかビデオスルー作品となっていたが、オリジナルの続編である『REC/レック2』は、無事日本でも劇場公開が決定した。

前作のラストシーン直後。現場のアパートにSWATが到着した。ヘルメットに記録用CCDカメラを装着した彼らは、感染病の専門家(ジョナサン・メイヨール)のガイドにより、建物に突入した。博士は真っ先に最上階のチェックを指示するが、暗闇では凶暴化した住民たちが牙をむいて待ち受けていた。

前作も相当恐ろしいガチンコ恐怖映画だったが、今作はさらにパワーアップ。なにしろ、映画の前半部分丸ごとぐたぐだしていた前作と違い、今回はのっけからお化けアパートに突入。ラストまでサバイバルを繰り広げるのだ。気を抜いていられるのはせいぜいオープニングから3分ほどだろう。

85点
シリーズ一作目に迫る名脚本

愛する女を救うため、何度でも過去に戻る男の物語「バタフライ・エフェクト」(04年)は、当サイトでも最高ランクの評価(98点)としたが、実際に見た人たちの満足度もきわめて高い傑作であった。あの映画の何がよかったかといえば、それは誰に聞いても脚本と回答がくる。その脚本家エリック・ブレスは、偶然にも今週公開の「ファイナル・デッドサーキット 3D」の脚本を担当。残念ながら(?)『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』は別の人物がストーリーを書いている。

サム・リード(クリス・カーマック)は、時空を移動できる能力を生かし、警察の事件捜査に協力して生計を立てている。ゴールドバーグ教授(ケヴィン・ヨン)というよき助言者や、理解者である引きこもりの妹(レイチェル・マイナー)の全面協力により、安全・適切に「能力」を使い、彼は暮らしていた。そんなある日、10年前に殺された恋人レベッカの姉(サラ・ハーベル)がたずねてくる。彼女によれば、まもなく処刑される犯人の男が無実である証拠が見つかったため、なんとか真犯人を見つけ、彼を救ってほしいというのだ。

パート3と銘打たれているが、前作までとのつながりはない。シリーズを見てきた人にはおなじみの「過去に飛ぶ能力を持つ男」が主人公という、そこが共通点だ。

85点
これぞSFの醍醐味、技術の特性もマッチした傑作

『TO(トゥー)』は、すでにレンタル中のオリジナルビデオアニメだが、2009年10月16日に六本木ヒ

ルズの大スクリーンで一夜限りの上映が決まったので、急遽本欄で紹介することにした。

地球軌道上に浮かぶ宇宙ステーション、通称「ミッドナイトバズーカ」は、今日も月面基地に向け、物

85点
見終わったあとに議論がまきおこる

どんなに若くても、女は女。たとえ11歳の子供に見えても、その中には大人をさえうならせるオンナの一片が必ず入っている。

11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)はテレビCMで有名な弁護士を雇った。母親(キャメロン・ディアス)らを訴えるためだ。じつはアナは、白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)のために生まれたデザイナーズベイビー。姉の命を守るため、これまで臓器や血液を提供する事を期待されてきたが、いまその方針に反旗を翻した。たとえ姉の命が縮んでも、自分らしく生きたいというのだ。

キャメロン・ディアス演じるお母さんはびっくり仰天。アナが臓器を分け与えなければ愛するケイトは死ぬ。お前は姉が死んでもいいのかと狼狽する。母は病気のケイトを守るため、この家族のために輝かしい弁護士のキャリアまで捨てたのだ。家族は助け合うのが当然ではないか。なのになぜアナは協力しようとしない?

85点
史上最強のお父さんが登場

アイデアが枯渇気味で、四六時中知恵を絞ってうんうん唸っているハリウッドのプロデューサーらは、『96時間』を見て目からうろこが落ちたのではないだろうか。

特筆すべきは驚くべきシンプルさ。なんのひねりもない、まっすぐ一直線なストーリー。それなのに、異様に面白い。忘れていた娯楽映画の原点を思い知らされる本作は、米国民にも大受けし、見事その週の興行ランキング一位を記録した。

かつて秘密工作員として腕を鳴らしたブライアン(リーアム・ニーソン)は、今はカリフォルニアで引退生活を送っている。別れた妻(ファムケ・ヤンセン)は大富豪と再婚し、最愛の娘キム(マギー・グレイス)も彼らと暮らしていた。ある日、キムが友人同士でフランス旅行へいくとの話を聞いたブライアンは、17歳という彼女の年齢から猛反対する。だが、結局妻らに押し切られてしまう。しかしブライアンの悪い予感は的中し、キムはパリで謎の誘拐犯に拉致されてしまう。

85点
自分の住む町が撮影所だと知らなかった犬の物語

この次の週には『忠犬ハチ公』の米国リメイクも公開され、さながら日米イヌ対決の様相を呈しているが(いや正確にはどちらもアメリカの犬か)、先攻の『ボルト』は役者犬。しかも、自分が役者だと気づいていない、ある意味幸せな犬が主人公。

白い体に稲妻の模様。美しい犬ボルト(声:ジョン・トラヴォルタ)は今日も飼い主の少女ペニー(声:マイリー・サイラス)を守るため、超能力を駆使して大活躍。しかしボルトが「現実世界」と思っているのはハリウッドの撮影スタジオ。ここで育ったボルトは、自分が本当は「普通の犬」とは夢にも思っていなかった。ところがあるとき、「ペニーを悪の組織にさらわれて」しまった彼は、飼い主の姿を求めスタジオの外に飛び出してしまう。

「自分をスーパードッグだと思っている」「ペニーは外の世界にさらわれて行ってしまった」という、二つの誤解を抱えたまま、ボルトは初めて「現実世界」の旅にでる。その過程で彼はつらい現実を知ることになるが、最後のよすがとする「ペニーとの愛」だけは信じぬこうとする。その姿がなんとも泣ける。

85点
オレはもうだめだ、と思ったらこれを見よう

今のように景気の悪いときは、映画は比較的安価な娯楽として重宝される。そしてこういう時代において、『サンシャイン・クリーニング』のようなルーザームービー、いわゆる弱者応援歌のような作品は、多くの人々を励ます貴重な存在となるだろう。

かつてチアリーダーとして学園のアイドルだったローズ(エイミー・アダムス)も、いまや30代のシングルマザー。仕事はしょぼくれた家政婦、彼氏は既婚者と、典型的な負け犬人生を送っていた。おまけに妹ノラ(エミリー・ブラント)も、ダメ父親のもとでパラサイトシングルというダメっぷりで、ローズにとっては心配の種。危機感を募らす彼女は、一発逆転を狙い「事件現場のクリーニング業」をノラと二人で開業するが……。

不倫相手の彼氏が警察官で、そこから仕事を回してもらえるのはいいが、どの現場もキョーレツ。相当変わったケースばかりだが、人間の最期と向き合うこの仕事。アメリカ版おくりびと、といえなくもない。

85点
ファンのトラウマを晴らす感動のラスト

この記事を待っている方も多いようなので結論から先に言うと、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』はファン必見の出来栄え、文句なしの傑作と言える。

ユーロとロシアが管理する北極域に、新たな使徒が現れた。迎撃に当たった新型エヴァンゲリオンを駆る真希波(まきなみ)・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾(まあや))は、強敵を相手に恐るべき戦闘能力を発揮するが……。一方、日本の第3新東京市には、正規実用型のエヴァンゲリオン2号機のパイロットとして、式波(しきなみ)・アスカ・ラングレー(声:宮村優子)が赴任してくるが、気の強い性格から早くも碇シンジ(声:緒方恵美)、綾波レイ(声:林原めぐみ)らと衝突する。

人気キャラ、アスカの苗字が惣流から式波に変わったとおり、この第2部からはもう、完全なる新作。ストーリーも登場キャラクターも大きく変化する。それでもテレビ版の面影が、ストーリーおよび複数のショットに残っているが、それはもう味付け程度。

85点
西川美和監督のおそるべき手腕

かつてダコタ・ファニングがスーパー子役として鳴らしていたころ、私は彼女の中には40代のベテラン女優が入ってるに違いないと思っていた。あの演技力とインタビューの受け答えの妙は、そう考えないと説明がつかない。

同じように、『ディア・ドクター』を作った西川美和監督(30代、女性)の中には、50代くらいのオッサンが入っているのではないかと、最近私は本気で考えるようになってきた。

かつて無医村だった村で、長く村人から信頼されていた医師(笑福亭鶴瓶)が失踪した。共に働いていた地元の看護師(余貴美子)や、彼の元に東京からやってきた研修医(瑛太)でさえ、その理由はわからない。この静かな山間の村で、いったい何が起きたのだろうか。

85点
意外な社会派ロマコメ

世界最強のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマー(「アルマゲドン」「パール・ハーバー」等々)が製作するこのロマコメは、一見スィートな女の子向けでありながら、よく見るといかにも男が作ったような骨太さを感じさせるユニークな一品となった。

レベッカ・ブルームウッド(アイラ・フィッシャー)は、生来のお買い物好きがたたり、いまやカード破産寸前。一念発起して、憧れのファッション雑誌社の面接にチャレンジするが、得意のハッタリ全開の結果、受かったのはなんと経済専門誌。はたして彼女は、自らの正体を隠しきれるのか。

どう考えても最も不適切な人材を採ってしまった経済誌の運命やいかに、といったところ。無責任男ならぬ無責任ギャルの口八丁に乗せられて、お堅い業界人たちが翻弄される様子が楽しい。

85点
数ある映画版の中でも屈指の傑作

オバマ大統領の登場を機に、ハリウッド映画はネクラからネアカへと変化している。米国民のニーズがそうなっている、あるいは業界がそうした流行を作ろうとしているため、明るい企画が通りやすくなっているわけだが、中でも『スター・トレック』最新作はその典型例というべきエンタテイメント作品だ。

英雄的な艦長を父に持つ若者カーク(クリス・パイン)は、進むべき道が決まらぬまま、無軌道な青春時代を送っていた。だが、新型艦USSエンタープライズのキャプテン直々の誘いにより、父と同じ惑星連邦艦隊に志願。熱い性格のカークとは正反対に冷静沈着なスポック(ザカリー・クイント)と反発しあいながらも、メキメキ頭角を現していく。

66年に始まった初代シリーズ『宇宙大作戦』からおなじみのメンバーの、若き日々を描くSF青春ドラマ。その出会いから、いかにして堅い絆で結ばれていくかをテンポよく追いかける。冒頭に書いたとおり、グダグダと悩む姿ではなく、若者らしくストレートに突っ走る前向きな雰囲気が特長だ。

85点
じつは最高のファミリー向けムービー

「若いころに戻ってやりなおしたい」とは、12歳から90歳まで、それこそオールエイジの共感を得られるテーマである。たとえ相手が小学生だって、「過去に戻れるなら、いつに戻ってみたい?」と聞けば、大いに盛り上がることは間違いない。それが人間というものだ。

さえない中年マイク(マシュー・ペリー)は、自社製品であるED治療薬のプロジェクト会議で、またもろくでもない目にあい、落ち込んでいた。女子高生の娘(ミシェル・トラクテンバーグ)にはバカにされ、息子の尊敬も得られない。何より大恋愛の末結ばれた妻(レスリー・マン)との関係が、破綻寸前に陥っていた。そんなある日、母校を訪れたマイクは怪しげな用務員の力により、17歳当時の姿(ザック・エフロン)へと変身してしまう。

この話の面白いところは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように実際に"過去に戻る"のではなく、主人公の"外見だけが17歳になる"という設定。

85点
大人の男のための、本格ハードボイルド

いつも一人だからさびしいけど、世界中に出かけられて、報酬はいい。ニコラス・ケイジ演じる男がそんな風に自分の仕事を紹介する場面からはじまる本作。そんな仕事があったら応募が殺到しそうだが、その業務内容はひとごろし。『バンコック・デンジャラス』は、引退を願う殺し屋の苦悩と恋心を描く、大人の男のためのハードボイルドである。

成功率100%を誇る凄腕の暗殺者ジョー(ニコラス・ケイジ)は、タイ・バンコクで請け負った4件の殺しを最後に引退を決意する。自らに厳しいルールを課すことで生き抜いてきたジョーだったが、口のきけない薬局の店員フォン(チャーリー・ヤン)の純朴でやさしい人柄にふれ、惹かれあう状況の中で、完璧な計画に狂いが生じていく。

ニコラス・ケイジの声には、どこか安心させられるような魅力があり、そのモノローグで進行する冒頭から、観客はこのキャラクターに魅了される。

85点
本格映像で楽しむ銃撃戦

自称「100年に一度」の金融危機とやらで、世界中のお金持ちがヒーヒーいってる今日この頃。そこで、このたび「金融の裏側」を描いた、タイムリーな映画が公開されることになった。

……とはいえ、じつのところ本作は「100年の一度の金融危機」とはほとんど関係がなく、タイムリーでもなんでもない。そう宣伝したほうがウケるだろうという大人の事情で、邦題もそれらしくつけているだけの事。

本当は「1991年のBCCI破綻に着想を得た、アクションサスペンス」と説明するのが正しい。ただ、そう言われても、ほとんどの日本人はピンとこないだろう。

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