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55点
上野樹里&玉木宏は最高に面白い

映画「踊る大捜査線」が邦画史上に残る大ヒットを記録したので誤解している人が多いが、フジテレビはテレビドラマの映画化というものに、それほど熱心ではない。ちなみにその反対はTBSやテレビ朝日。彼らに比べればフジは、オリジナル脚本に力を入れるなど、きわめてまっとうな映画作りに力を注いできた。だが残念ながら彼らの勇気ある挑戦は、(われわれ批評家の責任でもあるが)人々に浸透せず、興収面では低調に終わった。

だから、というわけでもなかろうが、2010年のお正月シーズンに彼らは大ヒットテレビドラマ『のだめカンタービレ』の映画版をもってきた。内容は、のだめと千秋の恋の結末を描く真の完結編。二部構成の映画として、まずはその前編が公開される。

指揮者として認められた千秋(玉木宏)は、名門ルー・マルレ・オーケストラの常任指揮者に引き抜かれる。ところがその実態は、経営難でベテラン奏者がごっそり抜け、残ったものにも覇気がなく、皆バイトで生計を立てるほかないダメっぷり。公演まで日がなく焦る千秋は、のだめこと野田恵(上野樹里)にチェレスタ(鍵盤付きの打楽器の一種)の演奏を頼む。愛する千秋との初競演に、一人浮かれるのだめだが、団員たちの演奏はまるで揃う気配がなく……。

55点
アニメのレベルは高いのだが

古典を含む文学作品というものは、そうそう爆発的に売れるものではない。誰だってエンタテイメントの方が楽しいのだから当たり前だが、それを覆し、出版業界を驚かせた事件が2007年に起こった。それは、週刊少年ジャンプの人気漫画家たちに、そうした小説の表紙を描いてもらったところバカ売れしたというものだ。

太宰治の『人間失格』を、『DEATH NOTE』の主人公ライト風に描いた小畑健による表紙を覚えている人も多いだろう。有名な古典は、きっかけさえあれば読みたいと思っている人が多く、文字通り表紙買いを狙う戦略が有効であることを示した形だ。

このインパクトは、やがて今年2009年の秋からはじまったマッドハウス制作によるテレビアニメ・青い文学シリーズにつながる。『人間失格 ディレクターズカット版』は、その中で放映された全4話の『人間失格』を再編集。冒頭に主人公の声を演じた堺雅人による語りと、本編に数カットの新シーンを加えた劇場版である。

55点
不況になると登場するヒーロー

景気が悪くなり、世の中が殺伐としてくると、昔の犯罪者を肯定的に描く映画作品が作られる。かつては「社会の敵」といわれたほどの凶悪犯でも、手口が稚拙だったり、カタギに手を出さない律儀なところがあったりと、今どきの心無い連中に比べれば妙にのどかだ。人々はそれを見て、古きよき時代を懐かしんだりする。

仲間を決して裏切らず、女に優しく、一般客の金は奪わない。大恐慌に苦しむアメリカ国民は、そんな銀行強盗犯ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)のニュースを痛快にすら感じていた。ジョンは美しい女性ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に出会い、永遠の愛を誓い合うが、彼らの前には国民にジョンの逮捕を宣言したFBI長官J・エドガー・フーバー(ビリー・クラダップ)とメルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)ら、厳しい捜査の手が迫っていた。

ジョン・デリンジャーを描いた映画には、名脚本家であり監督のジョン・ミリアスによるものをはじめ、何本かあるが、そのジョン・ミリアス版が製作された73年ごろのアメリカも不景気だった。デリンジャー自身、不況時代のヒーローであるから、そうした企画が通りやすくなるのも当然か。

55点
今の段階ではこれが限界か

09年6月25日に突然この世を去ったスーパースター、マイケル・ジャクソン最後の姿を見られるということで、本作の前売りチケットは爆発的な売れ行きだったと聞く。諸般の事情で期間限定上映となったため、一部上映館では常識はずれの高回転体勢でいよいよ本日から公開となったわけだが、プレス向け試写会も今日、上映初日という異例の日程で行われた。(一般上映は夜から、プレス試写は昼間だったが)

内容は、彼の死で幻と消えたロンドン公演のリハーサル模様が中心。スリラーの3D版新作の映像や、MJを尊敬し、オーディションを勝ち抜いたバックダンサーらのインタビューも織り込まれるが、量的にもほとんどはマイケルが私用に撮影させた練習風景、との触れ込み。

貴重な映像には違いないし、あの大スターが気さくに周りを励まし、前向きなメッセージを連発して団結力の中心となっている様子はたいへん感動的。ただ、やはり肝心のパフォーマンスは「練習」である以上、迫力不足は否めない。どんな歌手だって、合わせの段階で本気を出すものなどいない。本作を見る人は、わかっちゃいるけど忘れがちなこの事実を認識し、これはあくまでライブのメイキング、と割り切って見るとよい。そうでないとフラストレーションがたまる。

55点
究極の投資ははたして幸福を生むのか?

昨今は投資ブーム、というより、FXだの株式投資といったものはもうすっかり人々の生活になじんでいる。正社員以上の人ならば、誰でも何かしら行っているのではと思うほどだ。私の周りでも、ホリエモンのせいですっかり資金を溶かした人から、億単位の儲けを出している人まで、様々な話が聞こえてくる。

そんな時代に森田芳光監督(『椿三十郎』ほか)は、ユニークなオリジナル作品を送り出した。『わたし出すわ』は彼の13年ぶりの、原作ものではない映画作品だが、そのテーマはずばり「お金の使い方」だ。

山吹摩耶(小雪)は、故郷に戻ると次々と昔の同級生に再会する。高校以来、変わらぬ町と友情。そんなクラスメートたちの「夢」や「将来」の話を聞きながら、最後に彼女は言う、「私がそのお金、だしてあげる」。

55点
タイムトラベラーとの恋はこうなる?

公開したばかりの『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』を私はオススメにしたが、幸い見た人たちの満足度も高かったようだ。この『きみがぼくを見つけた日』も同じくタイムトラベルものだが、あのシリーズからサスペンス色を消し、甘いラブストーリー仕立てにしたような一品。

ヘンリー(エリック・バナ)の前に、クレア(レイチェル・マクアダムス)と名乗る二十歳ほどの女性が姿を現した。なぜか自分に対しラブラブ状態のクレアを前に、わけもわからぬままとりあえず部屋につれこんだヘンリーは、やがて驚くべき告白を受ける。彼女ははるか昔、幼い頃から何度もヘンリーと会っており、ずっと憧れていたというのだ。

ヘンリーさんが忘れんぼうというわけではもちろんない。いくらなんでもレイチェル・マクアダムス(年齢やや不詳)のような美人を口説いた経験を忘れるはずはない。じつはヘンリーの正体はタイムトラベラー。しかし時間移動を制御することはできない。つまり、ヘンリーは将来、過去にタイムスリップして、その時代のクレアと出会う運命ということだ。

55点
リアルな人間破壊シーンを最新デジタル3Dで

『ファイナル・デッドサーキット 3D』のメインイメージをみて、私は思わず噴き出した。エスカレーターの上で絶叫しているカップルの写真なのだが、なぜか「手すり」がない。一体全体なにがおきればこんな状況になるのか。これはさぞぶっ飛んだ「死に様」を見られるぞと、期待を高め試写室へと向かった。

恋人同士のニック(ボビー・カンポ)とローリ(シャンテル・ヴァンサンテン)は、サーキット場でレースを観戦していた。観客や、同行した友人らのボルテージがあがったころ、ニックはおそろしい「光景」を見る。車はクラッシュし、客席を巻きこんだ大惨事は、彼と友人らの命を残酷に奪う。あまりのリアルさにこれは予知夢だと直感した彼は、急ぎレース場を後にし、数名の命を救ったかに見えたが……。

立体メガネでこれを見る観客は、基本的に日本語吹き替え版を楽しむことになる。洋画を映画館で吹き替えで見るのは少々違和感がある上、声を当てるのが例によって知名度重視の有名人キャストなので、作品の魅力はいくらかスポイルされる。

55点
フランスらしさを感じるが、もう少し大盛で食べたい

このシリーズは、実際に動ける2人の男を主演に、そのリアルアクションを楽しもうという明快なコンセプトで作られている。核となるのはスパルタンな雰囲気のカンフーと、ハイレベルなパルクール。肉体ひとつで敵と戦い、障害物を乗り越える。彼らの非常識な身体能力に驚愕する娯楽ムービーだ。

2013年、パリ。前作で主人公らが交わした約束と違い、バンリュー13地区はいまだ無法地帯として塀で囲まれている。そんな中、内部で警官射殺事件が発生。政府はついにこの地区の一掃を開始する。だが事件に裏があると嗅ぎ取ったレイト(ダヴィッド・ベル)は、親友で潜入捜査官のダミアン(シリル・ラファエリ)と再び手を組み、真相解明に挑む。

前作は、「やってることはすごいのにカメラがせわしなく動きすぎて失敗」の典型例。本作はそれより落ち着いた、素直な撮り方がなされており安定感がある。ただし、なぜかアクションの純度は下がった印象。この撮り方で前作並のアクションをやったら良かったのだが……。

55点
木村のバカ美人がいい

最初に一番大事なことを書いておく。『キラー・ヴァージンロード』はハイテンションなコメディなので、冒頭のミュージカルシーンで一気に気持ちの乗せないとダメだ。映画館に入るまで、たとえ武蔵野線の陰気な満員電車にうんざりしていたとしても、常磐線のじべたに座る女子高生を見て嘆いていたとしてもすべて忘れ、このノーテンキな空気に乗り切らないと、その後の時間がもったいない。

見た目はそこそこだが、なぜかさえない人生を送ってきたOLひろ子(上野樹里)。そんな不運の集大成か、ある日ひょんな事からアパートの大家を殺害してしまう。おりしも明日はようやくめぐって来た幸福=結婚式。彼女は熟考?の結果、死体をスーツケースにいれ、富士の樹海に捨てようと車を走らせる。

さて、この後ヒロインは自殺願望はあれど死に切れない、薄幸の美女(木村佳乃)と出会う。この二人の珍道中に笑う、という作品。

55点
小栗の好演が光るが

芥川龍之介の『藪の中』は、いうまでもなくリドルストーリーの傑作で、長い間ミステリファンを魅了してきた。リドルストーリーとは、結末がはっきりしない、させない物語のことで、本作の場合も、真相はこうだ、いやこいつが嘘を言っているんだと、喧々諤々の議論を読者間に巻き起こしつつ今に至る。

原作は、幾人かの証言者に同じ事件を語らせ、その矛盾をどう解釈するか読者に問うテクニカルな構成。知的遊戯たるミステリの真髄を味わえる短編小説だ。黒澤明が『羅生門』として映画化し、ハリウッドの映画作家に大きな影響を与えたのも有名な話。

同じ原作を実写化した『TAJOMARU』は、ある意味黒澤版よりオリジナルに近く、また遠い。あえて説明するなら、原作の内容をすべて取り込みながらも世界観をぐーんと広げ、その周辺要素を描くことでさらなるエンタテイメントの高みに到達しようとしたチャレンジである。

55点
台湾で高く評価された青春ドラマ

青春映画というジャンルは、万国共通に作ることもできるがその逆もできる。エピソードに時代性・地域性を加えるほど、深い領域まで観客に共感してもらうことが可能だが、作品としては後者に近づく。広く浅くか、狭く深くか。『九月に降る風』は比較的後者、ドメスティックな台湾人アラサー男子向けの青春ドラマだ。

96年、台湾球界がスキャンダルに揺れる事になる時代。野球好きの高校3年生タン(チャン・チエ)は、不良の烙印を押されながらも、かけがえのない仲間たちと遊びまわる幸せな日々をすごしている。グループのリーダー、イェン(リディアン・ヴォーン)とは親友同士だったが、浮気っぽい彼の態度に悩む恋人ユン(ジェニファー・チュウ)の相談に乗るうち、恋心が芽生えていく。

その年の台湾映画界で最高の評価を得た青春ムービーは、時代を表す球界の大事件をうまく物語に絡めつつ、なつかしエピソードを畳み掛ける構成。

55点
80代の老人が強盗に転職

ハンガリー映画の小品『人生に乾杯!』は、彼らの国で高齢者が抱える問題をチクリと風刺する作品だが、奇しくも我々日本人にとっても共感できる内容になっている。

かつて50年代、共産党員の運転手エミル(エミル・ケレシュ)が、ある貴族の館の収用に立ち会った際、運命的に出会った伯爵令嬢のヘディ(テリ・フェルディ)。身分の差を乗り越え一緒になった二人だが、政治制度の大転換や東欧革命を経て、いまや貧しい年金暮らしでさえ破綻寸前であった。やがて思い出の品を借金のかたに取られたエミルは、ついに郵便局強盗を決意する。

81歳の老人が強盗せざるをえないとは、考えてみれば恐ろしいほどに絶望的な状況である。……が、だからこそ、それはコミカルなタッチで描かれ、夫婦の逃亡劇はある種のロードムービー的な面白さをかもし出す。

55点
ダンボールでお城を作ってしまうとは

古波津陽(こはつよう)監督が、わずか300万円で作った本作のオリジナルは、意外なことにアメリカ(サンフェルナンドバレー国際映画祭)で高く評価された。そこで、もっとお金をかければよくなるはず、と考えた日本のプロデューサーの尽力により、このたび製作費3億円でリメイクされることになった。まさに、映画界のわらしべ長者である。

ある町の過疎化対策で、二派が対立していた。城跡に戦国の城を再建して観光名所にしようとする勢力と、工場誘致を唱える一派。そんなとき、遺跡から戦国武将の霊が復活、さえない公務員(片岡愛之助・2役)に乗り移る。城を完成できなかった無念をはらしたいと語る武将は、なんと住民らに「築城せよ」と命じるのだった。

その異様な風貌に半ば気おされ、大学で建築を学ぶ女子学生ナツキ(海老瀬はな)をリーダーに、住民たちの築城計画が開始。だが、さまざまな困難を前に彼らが出した結論は「ダンボールで城をつくること」だった。

55点
精神病をテーマにしたドキュメンタリー

いきなり、超ブルーな女性のカウンセリングの場面から始まる。見た瞬間、こりゃヤバイ、放っておくと死ぬぞと思わせるような顔つきをしている。聞くと、昨日オーバードーズ(致死量を超えるような薬の大量摂取)したばかりという。なるほど、これが実際死の淵まで行ってきたばかりの顔か、と観客は納得する。

『精神』は、海外の映画祭で高い評価を受けた、想田和弘監督によるドキュメンタリー。鬱病や統合失調症といった、現代人の多くが罹患する心の病、その患者や医療従事者に迫る、タブーだらけの内容である。

冒頭の女性は、自殺未遂の原因を延々と語り続けるが、それを聞いていると観客はきっとこう思う。「こいつは間違いなく、何度も同じ事を繰り返しているはずだ」と。それは、救いようの無い絶望感をわれわれにもたらす。のっけからキツい。

55点
普通すぎてガッカリ

ここ数週間の興行予定をみると、「ヤッターマン」「釣りキチ三平」「昴」そして今週末のドラゴンボールと、春休みらしいコミック、アニメの実写化作品が百花繚乱の様相を呈している。

どれもこれも、よくまあ企画が通ったなと感心せざるをえない微妙なラインナップだが、中でももっとも期待されているのはこの『DRAGONBALL EVOLUTION』ではないだろうか。誰に? もちろん、ダメ映画フリークに、だ。

祖父の悟飯(ランダル・ダク・キム)からドラゴンボールのひとつを受け取った高校生・孫悟空(ジャスティン・チャットウィン)。世界を滅ぼすピッコロ大魔王(ジェームズ・マースターズ)の復活を受け、彼は出会ったばかりの発明好きの女の子ブルマ(エミー・ロッサム)と共に、他の六つのボールと鍵を握る亀仙人(チョウ・ユンファ)を探す旅に出る。

55点
成海璃子にコメディは似合わないが

何事も経験、習うより慣れろというが、演劇界から映画に殴り込みをかけてきたケラリーノ・サンドロヴィッチ監督も、この3作目(劇場公開用映画として)で大きな手ごたえを感じとったようだ。

人気崖っぷちのグラビアアイドル・アヤメ(成海璃子)は、コンビニでの衝動的な万引きを見つかってしまう。そのもみ消しと引き換えに、一日警察署長をやらされるが、折り悪く重大事件が発生。本来お飾りのはずのアヤメが、なぜか捜査の指揮をとらされるハメになる。

単純なギャグ映画のあらすじに見えるかもしれないが、この脚本は実のところかなり凝っており、時系列は飛ぶわ、伏線も張ってあるわと、なかなか本格的。もっともそれは副菜のようなもの。個人的にはのっけからかまされる、「手段でなく目的としての笑い」(監督談)をこそ、大いに堪能してほしいと思う。

55点
自閉症の妹を25年間も撮り続けた監督

自閉症は、日本だけでも数十万〜百万単位の患者がいるといわれており、決して珍しい障害ではない。だが、たとえ家族に自閉症患者がいたとしても、その成長をビデオカメラで記録し、映画にして発表してしまう人はまずいまい。ところがフランスで演技派として知られる人気女優、サンドリーヌ・ボネールはそれをやった。

カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した話題作『彼女の名はサビーヌ』は、彼女が自閉症の妹サビーヌの日常と成長を25年間にわたって記録したドキュメンタリー。

映画のチラシに写っている若いころのサビーヌと、現在の彼女の外見の差に、まず観客は強い衝撃を受ける。いったいなぜこんな事になってしまったのか、その疑問にサンドリーヌ・ボネール監督はゆっくりと答えていく。

55点
CATVで火がついた学園ミュージカルが日本上陸

この映画が、あの「マンマ・ミーア!」のオープニング成績を抜く特大ヒットを本国でぶちかましたと聞いて、アメリカってのは相変わらずCATVの国なんだなあと強く思わされた。

高校最後の年、バスケチームのエース、トロイ(ザック・エフロン)は、早くも強豪大学への進学を決めていた。だが、それは父が望み続けた道でもあり、内心は複雑。ガールフレンドのガブリエラ(ヴァネッサ・ハジェンズ)と、遠距離恋愛になってしまうことも問題だった。そんなある日、恒例行事の学内ミュージカルのオーディションが開催される。ジュリアード奨学生の選考もかねたこのイベントに、なぜかトロイの名前も記されていて……。

私が冒頭のようなことを思ったのは、本作が少々変わった成り立ちの企画だから。

55点
乳癌をテーマにした感動ドラマ

女性がもっとも関心を寄せる病気といえば、乳がんをおいてほかにない。女性にとって、がんの中で最も多い死因という事実も重大だが、手術で乳房を失うケースがあることも、その理由のひとつだろう。心理的に、これほど恐ろしい病もあまりないから、30代以降、定期的に検診を受ける人も多い。

谷村志穂による感動小説『余命』は、そんな乳がんを題材とした作品。「手紙」(2006)の生野慈朗監督による、真剣味あふれる本格ドラマとして、このたび映画化された。

外科女医の百田滴(ももたしずく)は、結婚10年目にして待望の妊娠が判明する。売れないフリーカメラマンで、いまは妻の収入をあてに暮らす夫・良介(椎名桔平)も大喜び。ところが滴は、すぐに自らの胸の異常に気づく。それは、かつて手術で右胸を摘出した彼女がもっとも恐れていた、全身性乳癌の再発だった。

55点
クラスで飼った豚を最後に皆で食べる?!

大阪の小学校の話。クラスでブタを数年間飼育し、最後にみんなで食べるという、ぶっとんだ授業を実践した教師がいた。「いのちの教育」というやつだが、手法がエキセントリックだったため、3年後の93年にはドキュメンタリーとして放映された。『ブタがいた教室』は、その実話をドラマ映画化したものだ。

6年2組を担任することになった新任教師(妻夫木聡)は、1年間クラスで豚を飼育する授業を考えた。校長(原田美枝子)の許可を得てはじまったこの試み。子供たちも大喜びで、豚にPちゃんと名づけ、苦労しながら世話をはじめた。やがて彼らの卒業が近づいてくると、最後にPちゃんを本当に食べるべきか否か、クラスは真っ二つに割れるのだった。

この映画の見所は一点、この最後の大激論である。そこをしっかり理解していると思われる妻夫木聡は、最初から撮影外でも妻夫木の名を一切子供たちに呼ばせないという、リーダーシップあふれる役作りをした。

55点
YOUTUBEや監視カメラ、ブログ等々の再現で描く米兵レイプ事件

『リダクテッド 真実の価値』は、誰もがビデオカメラを操り、インターネットの動画サイトを楽しむ今だからこそ出来る映像表現に挑戦した異色の反戦映画だ。

イラク戦争時のサマラ駐屯地。映画業界を目指す若き兵士サラサール(イジー・ディアス)は、持参したビデオカメラで仲間の日常を撮っている。検問担当の彼らは戦時とはいえ退屈な日々だったが、あるとき自爆テロと思しき暴走車がつっこんでくる。

識字率50パーセントの国で、ゲートに立ち入り禁止と書いて気休めとしている兵士も間抜けだが、それ以上にこの車の行動は理解しかねる。のっけからリアリティを欠いた展開にげんなり。

55点
11歳の小学生が妊娠!

『コドモのコドモ』をめぐる騒動を見ていると、フィクションに対する許容範囲の低い人がこれほど多いのかと驚かされる。

見ていない作品に対し、「ローティーンの妊娠出産を映画にするとは何事だ」という一部の人々による主張は、いくらなんでも説得力に欠ける。見て本気にする人がいたら大変との親心はわからぬでもないが、ならば自分の娘息子に見せなければ良いだけの話。センセーショナルな問いかけで問題提起するやり方は、別に本作の専売特許ではなく、問われているのは受け取る側のリテラシーにすぎない。

小学5年生、11歳の持田春菜(甘利はるな)は、仲の良いヒロユキ(川村悠椰)と"くっつけっこ"なるオリジナル遊びをはじめた。のちに担任の八木先生(麻生久美子)の性教育授業を受け、春菜はそれが性行為で、自分はどうやら妊娠しているらしいと知る。だが周りの大人たちは、よもや小学生が妊娠など本気で考えてもいない。誰ひとり異変に気づかぬまま、やがて春菜のお腹は大きくなり……。

55点
ホリプロとケータイ小説大手サイトの連動企画

『恋空』のようにケータイ小説が映画になり、場合によっては大ヒットする時代であるが、同ジャンルの『愛流通センター』の成り立ちはかなり凄い。大手携帯小説サイト内で、なんと201万人から選ばれた原作コンテスト最優秀作品を映像化したというのだ。しかも主演は5万人以上参加のアイドルオーディションで選ばれた金の卵。莫大な数の少年少女の夢と憧憬がつまった映画というほかない。

彼氏募集中の女子高生チカコ(足立梨花)は、携帯のスパムメールに誤って登録してしまう。『愛流通センター』なるそのサイトは、失った愛を有料で取り戻すことができるという。バカバカしいと相手にもしなかったが、そんなチカコの前にセンターの営業マンを名乗る男(水橋研二)が実際に現れる。

ワンクリック詐欺をクリックしても、せいぜい頭の悪そうな支払い催促メールが来るだけなので放置しておけば良いが、生身の人間が目の前に現れるとはずいぶん手の込んだ話である。

55点
あれから1300年が過ぎたナルニア国は滅亡の危機に瀕していた

映画「ナルニア国物語」シリーズは見た目が子供じみているため、宗教的教訓要素を見出し楽しもうといった大人っぽい味わい方がどうもやりにくい。

摂政ミラースにより命を狙われたカスピアン王子(ベン・バーンズ)が伝説の角笛を吹くと、人間界からペベンシー家の4兄弟がやってきた。彼らが君主として君臨した頃(前作のラスト)から1300年経つナルニア国は、人間であるテルマール民族により荒らされ、それ以外の種族は森の奥に追いやられ滅亡寸前であった。ピーター(ウィリアム・モーズリー)やスーザン(アナ・ポップルウェル)は生存者を結集してテルマール軍との決戦に備える一方、末っ子のルーシー(ジョージー・ヘンリー)は姿を隠した創造主アスランを探しに行く。

4兄弟が長いこと王様としてナルニアを統治した経験があることは、前作をみて頭ではわかっている。民衆の前で堂々たる態度を発揮するのも当然だろう。

55点
イーサン・ホークの自伝的小説を映画化

個性的な作品に出演し続ける俳優で、小説や脚本も書けば監督もできる。そんな多才なイーサン・ホークの、集大成のような映画が『痛いほどきみが好きなのに』だ。

ニューヨークで新米俳優として暮らすウィリアム(マーク・ウェバー)は、行きつけのバーで出会ったサラ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)と恋に落ちる。ウィリアムは新作映画の撮影地メキシコにサラを連れて行き、わずか1週間で結婚まで誓う仲になる。だが先に帰国した彼女に再会すると、まるで別人のようなよそよそしい態度に変わっていた。

『痛いほどきみが好きなのに』は、失恋の危機を前に混乱に陥る男の心理を描く恋愛ドラマ。主人公はわずか二十歳の若者で、これまではせいぜい気軽な女遊び程度の恋愛経験しかなく、本気でのめりこむのは始めてだ。

55点
ラブホテルの屋上にちっぽけな公園が?!

カンヌ、トロントに並ぶ世界三大映画祭のひとつベルリン国際映画祭(08年)で、日本人初となる最優秀新人作品賞を受賞した『パーク アンド ラブホテル』は、熊坂出(くまさかいずる)監督の長編デビュー作。

ポラロイドカメラを手に街を徘徊する家出少女(梶原ひかり)は、ホテル街で奇妙な光景を目にする。古びた和風のラブホテルに、似つかぬ子供たちや老人が次々と入っていくのだ。好奇心から彼らについていった彼女は、その屋上に手作りの公園が存在し、人々の癒しの場となっていることを知る。

デパートの屋上にプレイランドがあるのは昭和らしい風景のひとつだが、ラブホの上に公園というのは聞かない。とくに地方の感覚では、高速の出口付近などもともと辺鄙なところに建つものであるから、これほど奇妙な取り合わせはないだろう。住宅地と繁華街が混在する建物密集地にホテル街が存在する都市部ならではの発想といえる。

55点
安良城紅が、音楽に発情する女子高生を好演

『ブラブラバンバン』は、(俳優でなく)歌手の安良城紅(あらしろべに)を主演に起用したことで、異様な迫力を持つ音楽映画になった。

県立高校生の白波瀬歩(しらはせあゆむ)(福本有希)は、ある夜『ボレロ』を吹く少女と出会う。とっさに自分のトランペットで合奏すると、不思議なことに彼女は空に舞い上っていった。後日、彼は学校の音楽室でその少女(安良城紅)を見つける。同じように演奏をはじめると、突然彼女は欲情し、白波瀬の服を脱がして襲い掛かるのだった。

良い音楽には人並みはずれて興奮(発情?)し、思わず脱いだり脱がしたりする特異体質の女子高生。そんな不思議なヒロインを中心にした、一風変わった青春ブラスバンド映画だ。

55点
ネットで話題の"犬の十戒"を実写映画化

『犬と私の10の約束』は、良くも悪くも昔ながらの犬(動物)映画、である。

北海道、函館。大学病院の勤務医師の父(豊川悦司)と母(高島礼子)と3人で暮らす14歳の少女あかり(福田麻由子)。彼女の家の庭に、ある日一匹の子犬が迷い込む。その愛らしいゴールデンレトリーバーをいたく気に入ったあかりは、ソックスと名づけて飼うことにする。

そこからソックスとあかり、そして父母との、(決して長くない)かけがえのない時間が始まる。引越しや家族との永遠の別れ、就職、そして恋と、あかりの人生にソックスは寄り添い、忘れえぬ思い出の一部となる。映画はそれをほのぼのと、そしてせつなく描いていく。

55点
小島可奈子がすべてを脱ぎ捨てる

脱ぐか否かのボーダーラインにいる女優さん(および関係者)にとって、どうせ裸を見せるなら文芸作品で……、と考えるのはごく当然のこと。見る側にとっては、映画のジャンルなんてどうでも良いのだが、オンナノコには納得できる理由を与えてやるのが大人の優しさというものである。

その理由として丁度いいのが、毎度おなじみ渡辺淳一原作もの。『失楽園』(97)の黒木瞳から『愛の流刑地』(07)の寺島しのぶまで、幾多の作品で主演女優の"体当たり熱演"が話題にされてきた。

この最新作では、写真集がバカ売れしている人気グラビアアイドル小島可奈子が、その系譜に連なることになる。しかも、監督はかつてピンク映画四天王の一人といわれた瀬々敬久(ぜぜたかひさ)。おのずと期待は高まる。

55点
夢のようなおもちゃ屋さん……?

子供の目で見たおもちゃ屋さんは、こんな風に見えるのだろうか。『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』をみると、きっとそう思うはず。

御年243歳のマゴリアムおじさん(ダスティン・ホフマン)が経営するおもちゃ屋は、都市のビルの谷間にありながら内部はまるで別世界。紙ひこうきや動物たちが飛びまわり、世界中のあらゆるおもちゃがまるで生きているかのように輝いている。そこで働く若者モリー(ナタリー・ポートマン)も、この店とマゴリアムが大好きだった。ところがある日、彼が唐突に引退宣言。しかもモリーに跡継ぎになってくれという。

このモリーは元天才ピアノ少女だが、成長して才気が鈍り、自信を失っていることがやがて観客に知らされる。子供たち相手に堂々と笑顔をふりまく彼女の素顔は、まるでマゴリアムのもとでリハビリをしているがごとき、壊れやすい少女だったのだ。

55点
キャリアウーマンと帝国軍人の、時をこえた恋物語

『恋する彼女、西へ。』は、明るい話を作ろうというコンセプトのもとに作られた。なぜかというと、この映画の舞台が広島だから。これまでヒロシマの映画というと、どうしても原爆被害の悲惨なイメージがつきまとう、暗いムードのものばかりであった。だからこの映画の制作者たちは、本作では前向きで暖かいドラマを作りたかったのだ。

建築会社で働くキャリアウーマンの杉本響子(鶴田真由)は、出張中の広島でバイクと事故を起こしそうになった男を救う。「矢田貝少尉」と名乗る白軍服を着たその若者は、昭和20年8月3日から突然ここに来た、などと狼狽している。あきれる響子ではあったが、病院などの世話をするうちに、矢田貝のヨタ話を信じざるをえない出来事が起こる。

古いフィルム映画風の外見ではあるが、中身はバブル期のトレンディドラマのごときロマコメ。不思議な作品である。

55点
ブラッド・ピットをストーキング

ジェシー・ウッドソン・ジェイムズといえば、西部開拓時代を古きよき……と表現するようなアメリカ人の間で、一種のヒーローとして扱われる伝説のギャング。南北戦争の生き残りの荒くれ男たちをまとめ上げ、列車強盗や銀行強盗など華やかな犯罪を繰り返した無法者のリーダーだ。本作はその悲劇的な一生を、人気スター、ブラッド・ピット主演で描く伝記映画。

19世紀のアメリカ。南北戦争で負けた南部の人々は、北軍政府の圧政に苦しんでいた。彼らの間では、大犯罪を繰り返す有名な賞金首、ジェシー(ブラッド・ピット)は英雄であった。兄フランク(サム・シェパード)と次の計画を練っていたジェシーの前に突然現れ、自分を売り込むロバート(ケイシー・アフレック)も、伝説の男にあこがれる一人。渋るフランクに対し、心の広いジェシーは快くロバートを仲間に迎え入れるのだったが……。

ケイシー・アフレック演じる気弱な若者と、その憧れの人ブラッド・ピット、という二人の関係を中心に構成される。地味で淡々としたドラマであり、決してジェシーの英雄的活躍を描く痛快な西部犯罪ムービー、というわけではない。ちょっとしたアクションもあるが、あくまで見所は英雄的ガンマンの大らかで奔放な生き方、そして潔い死に様である。

55点
あのショッキング日本ホラーをハリウッドがリメイク

黒沢清監督の「回路」(2000年、日本)という映画がある。世界の終わりを描いたホラームービーの傑作で、異様な雰囲気で観客を盛り上げる手法は、多くの人々をうならせた。とくに、予測できないショックシーンの見せ方などは、はじめて見た人にある種のトラウマを残すほどであった。

この『パルス』はその待望のハリウッドリメイク。幸いオリジナルと大きく異なるため、こちらを先に見ても(個人的には黒沢版を先に見てほしいが)破壊的なネタバレで興味を失うといった事にはなるまい。オリジナルのファンにとっても、いかにもアメリカ映画らしい、VFXを多用したにぎやかな映像をそこそこ楽しめる。

ハッキングが趣味のオタク学生ジョシュが音信普通になった。不安になったガールフレンドのマティ(クリステン・ベル)が訪ねると、部屋は荒れ果て、やつれきったジョシュがいた。目はうつろで会話はまるで成り立たない。そして混乱するマティの前で、彼は信じられない行動に出るのだった。

55点
韓国社会のタブーに挑む

1979年10月26日に実際におきた、韓国大統領暗殺事件。その当夜の様子をコミカルに描いた本作は、案の定、遺族からソウル地裁に訴えられた。

パク・チョンヒ=朴正煕大統領(ソン・ジェホ)は、日課となった小宴会を今日も開催。チュ課長(ハン・ソッキュ)が手配した二人の美少女をはべらせ、彼女らに大好きな日本の演歌を歌わせ悦に入っている。だがそのすぐそばには、不満と殺意が満水位に達した中央情報部=KCIAのキム部長(ペク・ユンシク)の姿があった。

ソウル地裁の判断により、冒頭から4分間映像はなし。プレス試写会では真っ黒な画面に意味不明の音声だけ流れるという、異常事態であった。本筋に影響は無さそうだから、むしろ話題づくりの意味で最高だったが、裁判が進んだ結果、日本公開版では世界で初めてすべての映像が写るらしい。

55点
「こんな子がホントに脱ぐの?」

職業柄、この手のエロティック作品にx麻痺している身としては、いまさら見たところで何の刺激も感じないのが普通。しかし『マリッジリング』は違った。それは本作のヒロイン、小橋めぐみのせいだ。

25歳のOL千波(小橋めぐみ)は、多忙な恋人とすれ違いの日々に寂しさが募っている。そんなある日、新任課長の桑村(保阪尚希)から残業帰りに食事に誘われる。おしゃれなレストランにエスコートされ、久々に女を意識した千波は、桑村のマリッジリングに罪悪感を覚えながらも、強く惹かれていくのだった。

原作は渡辺淳一の短編。エッチな小説ばかり書いていると思われている渡辺淳一だが、元は医学博士として医療ものも書いていた。しかし映画化されるのはやっぱりエロばかり。本作でもバッチリ、期待にこたえてくれる。

55点
ハリー・ポッター童貞喪失

ダニエル・ラドクリフといえば、ご存知ハリー・ポッター役で知られる子役スター(……といっても、もう18歳)。彼が、ハリポタ新作の撮影前に、どうしても出ておきたかったという脚本がこれ。メガネっ子魔法使い以外の役を演じる主演映画としては、もちろん初めてとなる。

ダニエルが演じるのは、孤児院の仲良し4人組の一人。12月生まれという共通点を持つ彼ら"ディセンバー・ボーイズ"は、真夏(12月)のオーストラリアの海辺の集落で、夏休みを過ごすことに。カトリック系の厳しい戒律の元で暮らしていた彼らにとって、これは初めての"バカンス"。この映画は、そうした少年たちの"忘れられない特別な夏"をほろ苦く描いた青春ドラマだ。

この映画は、家族の形態と家族愛という、普遍的なテーマを扱う感動作。しかし、表面的にはかなりケレン味ある設定となっている。

55点
社会派というより宗教プロパガンダ

『マイティ・ハート/愛と絆』は、ある理由により妙に腰の落ち着かない映画となった。

フランスのラジオ局記者のマリアンヌ(アンジェリーナ・ジョリー)は、ウォール・ストリート・ジャーナル特派員の夫と二人、パキスタンにやってきた。だが、この国での最後の取材にでかけた夫ダニエルが、夜になっても戻ってこない。彼は、そのまま神隠しにあったように消えてしまった。やがて夫婦の事務所兼自宅には、現地捜査官やアメリカ領事館のスタッフ、夫のインド人の部下など、さまざまな人種、文化的背景を持つ人々が集結。ダニエルの救出というひとつの目的に向かって、全力をつくす体制が整いつつあった。

この作品は実話をもとにしている。ダニエル・パール誘拐事件は、その後の驚きの展開や奥さんの意外な発言などから、今では全米中に知れ渡っている。そこでブラッド・ピットが映画化権を買い取り、私生活でのパートナー、アンジェリーナ主演で映画化した。

55点
竹内結子と吉田栄作に55点

つまり、それ以外の合計はプラマイ0点ということだ。

戦場カメラマンの西崎(大沢たかお)は、北アルプスに墜落する謎の光を目撃する。反射的にシャッターを押した彼は、後日それが米軍のステルス機と知る。死に別れた妻の妹で週刊誌記者の慶子(竹内結子)にその事実を知らせたあと、彼は盟友の新聞記者、落合(玉木宏)と共に入山、墜落現場を目指す。

高嶋哲夫の原作はよくできたポリティカルサスペンスで、かつ安全保障や戦争の矛盾をきっちり描いた小説であった。この映画版のもっともまずい点は、その「矛盾」という大テーマを正反対に捻じ曲げてしまった点にある。

55点
日本版『エイリアンズvs.プレデター』誕生か

絶世の美貌と不死身の肉体で、男たちを悩ませる美少女富江。美人も不老不死となれば迷惑この上ないという事がよくわかる、人気ホラーシリーズの7作目にして完結編。

恋人が目の前で殺された一樹(八戸亮)は、ようやくそのトラウマから立ち直りつつあった。ところが就職したマネキン工場の秘密部屋には、その恋人そっくりの富江(あびる優)なる女がおり、工場長ら大の男たちをあごで使っていた。一方そこの従業員の同居人にも同じ名の美少女(松岡恵望子)がおり、なぜか工場の富江の血液を狙っていた。

今年(2007年)の年末には、人気ホラー映画のキャラクター同士が戦う第二弾『エイリアンズvs.プレデター』が公開されるが、本作はその日本版ということらしい。もっともこちらはどちらも富江だが。

55点
犯罪者が犯罪者になりすます?!

ドン・ウィンズロウの原作をポール・ウォーカー主演で映画化。そんな触れ込みもタイトルの吸引力も、日本ではまずヒットに結びつくことはないであろうと最初からわかりきっているあたりが気の毒だ。

もちろんミステリファンにとってドン・ウィンズロウは、『ストリート・キッズ』シリーズでニール・ケアリーというキャラクターを生み出した名作家であり、映画ファンにとってポール・ウォーカーは『ワイルド・スピード』の顔、そこそこの人気スターだ。よって、日本国内での知名度はイマイチでも質的には期待できるはずなのだが、それにしてもこの押し出しの弱さはいかがなものか。

元海兵隊員の主人公ティム(ポール・ウォーカー)は、服役中に別の囚人とトラブルを起こし、いまや塀の中でも命を狙われていた。そんなある日、DEA(麻薬取締局)がたずねて来て、刑の免除と引き換えに麻薬王のボビー・Zになりすまし、捜査協力せよとの取引を持ちかけてきた。

55点
増築を重ねすぎた異形の建築物のような映画

年々味が落ち、行列こそできるがリピーターは激減中という、どこかの人気ラーメン店のごとき『ソウ』シリーズの最新作。毎年一本のハイペースで続編を作り続け、4作目まで続いたホラーシリーズというのはこれまでに例が無いらしい。まさにホラー界の「男はつらいよ」だ。

2作目からの担当のくせして、シリーズの生みの親のごとき態度があちこちで顰蹙を買っているダーレン・リン・バウズマン監督は、『ソウ』シリーズは一生続けたいなどと語っている。いつかジグソウにお仕置きされると思う。

※注意 作品の性質上、この先1〜3作目までのネタバレを避けることができません。本作に興味がある人は1から3まで順番にご覧になった上で、以下の記事をお読みください。

55点
柳楽優弥の押尾学化に驚く

柳楽優弥は、『誰も知らない』(04年)で、カンヌ国際映画祭男優賞を史上最年少(14歳)で受賞した華麗な経歴を持つ。ピュアな風貌のこの子供が、この先どんな方向に進むのか、当時の映画関係者は期待と不安をもってみていたものだ。あれからわずか3年、彼は本作で早くも役者としてのターニングポイントを迎えた。そして、あのときのあどけない少年は、意外な方向へと歩き始めた。

病院の屋上にひとりたたずんでいるワラ(石原さとみ)をみて、自殺を心配したディノ(柳楽優弥)は声をかける。インチキな関西弁を話すディノは、やがて「手当てや」などといい包帯を屋上のフェンスに巻きつける。その奇妙な行動にしかし癒されたワラは、親友のタンシオ(貫地谷しほり)やメル友のギモ(田中圭)らと共に、包帯クラブを結成する。

奇妙な役名と思うかもしれないがこれは友人間で呼び合うニックネームで、その実態はごく普通の現代青春ドラマである。彼ら包帯クラブは、何かに傷ついた人をネットで募集し、その原因となる場所に包帯を巻きつけ写真を送付してあげる活動を行う。たとえばサッカーの試合でオウンゴールをして落ち込む少年のために、サッカーゴールを包帯でぐるぐる巻きにした写真を撮影、彼にメール送信するといった具合だ。

55点
小沢真珠のひとり濡れ場

江戸川乱歩といえば、大正から昭和にかけて活躍した、日本ミステリ界黎明期の大作家。少年向けのシリーズものも有名だが、マニア好みの怪奇趣味を生かしたダークな作品も数多い。抜群の知名度があることから、平成になった今でも映像化される事は珍しくない。

この「人間椅子」は、ラストの衝撃度の高さでミステリファンの間ではあまりにも有名な作品。何度か映像化されているが、なにしろこのトリックは映像向きではない。また、有名すぎるということもあってか、本作では設定とストーリーが変更されている。

大御所作家・大河内の弟子だった佳子(小沢真珠)は、今では失踪した彼に代わって人気女流作家として鳴らしていた。新しく担当になった真里(宮地真緒)は、佳子が大河内の愛人として変態プレイをしていたという噂に興味を示す。なぜなら真里も、有名人が使用したスプーンなどのゴミを集める性癖があったからだ。

55点
女優を綺麗に撮ろうという執念だけは凄い

さだまさしの小説はここ数年映画界で人気のようで、『精霊流し』『解夏』と立て続けに公開されている。どちらもさっぱり面白くないのだからもうよせばいいのに、人が入るとなれば懲りずにまたやるのがこの業界の常。今回は天下の松嶋菜々子を主演にした、堂々の映画化だ。

東京の旅行代理店でバリバリ働く咲子(松嶋菜々子)は、母(宮本信子)が入院したと聞き、急ぎ徳島へ帰郷する。母は末期ガンであった。しかし、元々神田の飲み屋の有名女将だった彼女は、相変わらずの江戸っ子気質で看護婦を元気にしかりつけている始末。そんな姿にあきれた咲子は、しかし母から死んだと聞かされていた父の生存を偶然知る。咲子は母が生きているうちに彼女の本当の人生を知りたいと、父の消息を探りはじめる。

この映画の途中のつまらなさときたら、凄まじいの一語につきる。開始後1時間くらいは何とかつきあったが、いいかげんさっさと話を先に進めろと、お客様相談室にクレーム電話のひとつもかけたくなった。久々に映画で見た母親役の宮本信子と、やはり圧倒的な存在感を放つ松嶋菜々子の魅力的な演技がなかったら、どうにもならないところであった。あとはクライマックスの阿波踊りの圧倒的な迫力。その3つしかみるところがない。

55点
一歩進んで二歩下がる

アメコミ原作の大人気アクションシリーズ第三弾である本作は、背負うプレッシャーもシリーズ最大。なにしろ、あれだけ面白かったパート1を上回るほど二作目の出来栄えが良かったのだ。数を重ねりゃネタは減る、しかしお客の期待は膨れ上がる。作り手の悩みどころだ。

いまやニューヨーク市民すべてのヒーローとなったスパイダーマン。その正体ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)も内心鼻高々だ。恋人の新人女優メリー・ジェーン=MJ(キルステン・ダンスト)との仲も好調で、いよいよプロポーズを考えている。しかしMJのほうは初の主演舞台を干され、どん底気分。そんな折、ピーターの叔父を殺した真犯人が脱獄したとの驚くべき知らせが入る。

この3におけるテーマは「復讐」。登場する敵は複数いるが、みなその一念を腹に持つことで共通している。そして毎度おなじみウジウジ君であるピーターの今回の悩みもまさにそれ。最強のパワーを手にした今、愛する叔父を殺した凶悪犯への復讐心を抑えることはできるのか。

55点
尻に魅力がない

『バベル』は多くの人々にとって、役所広司や菊地凛子といった日本人キャストが、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェットら当代きってのハリウッドスターと共演するという点がもっとも気になる事だろう。そもそも映画とは、テレビでは味わえない何がしかの楽しみを与えてくれるべきもの。映画とテレビにほぼ同じ顔ぶれの俳優が並ぶわが国の現状をみれば、人々が本作のキャスト表を見て感じるそうしたワクワク感は当然のことと言えよう。

この映画の構成は、3カ国でそれぞれ進行するドラマを交互に描いていく群像劇。メインとなるのは、モロッコへやってきたアメリカ人夫婦(ブラッド・ピット&ケイト・ブランシェット)の物語。ある事情により夫婦仲の危機を迎えたこの二人は、子供をシッターに預けてゆっくり話し合うためここにやってきたが、現地の子供がいたずら半分で撃ったライフルの弾が、偶然妻に当たってしまう。辺鄙な山間部で十分な手当てもままならず、右往左往する夫の姿が描かれる。

一方アメリカでは、予定通り戻ってこないこの夫婦に業を煮やしたシッターが、息子の結婚式に間に合わないため預かった子供を連れて強引に祖国メキシコに戻ってしまう。

55点
新鮮味はないものの、いまどきの女性映画としてはそれなり

映画『さくらん』がどんな人に向けて作られた映画なのか、それはきわめてわかりやすい。まずは今回初監督となる写真家の蜷川実花、そして主演の土屋アンナ、音楽(主題歌だけでなく本編の映画音楽も)担当の椎名林檎、さらには原作の安野モヨコ。この4人の名前に反応する人に向けた作品だ。

彼女らは、若い女性の一部にとってある種のカリスマを持つアーチストであり、それが力をあわせてひとつの仕事をするとなれば、これは凄いものが出来上がるに違いない。そう期待するファンは少なくあるまい。実際本作は、彼女ら(主に20代の自立志向の高い女性?)にそれなりの満足を与えてくれるレベルには仕上がっている。

江戸時代、吉原遊郭の「玉菊屋」にきよ葉という名の一人の少女が売られてきた。古い慣習や女が金でどうにかなると思っているバカな男たちに決して屈服しない彼女は、やがてその美貌とまっすぐな性格で吉原のナンバーワンおいらんへと成長する。

55点
服を着てても意外に上手な蒼井そら

AV女優が芸能界にステップアップを狙う例は枚挙に暇がないが、成功例は飯島愛などほんのわずかしかなく、コースとしては狭き門だ。そんな中でも比較的健闘している蒼井そらの主演作が『聴かれた女』。彼女は一人暮らしの部屋に盗聴器を仕掛けられたヒロインを演じている。

雑誌編集の仕事をしている若者(大野慶太)は、毎夜アパートの薄い壁の向こうに耳を澄まし、隣室の女の子(蒼井そら)を盗聴している。彼氏と愛し合う声などに興奮しつつも男は、最近彼女が何者かによる脅迫電話に悩まされている事に心配を寄せていた。

盗聴・ストーカーものであるが、この男はこっそり聞いているだけではなく、職業柄のアングラ人脈を利用して彼女の部屋に侵入、盗聴器等をさぐってみたり、隣人という立場を利用して実際に彼女に近づいていったりする。

55点
傷ついた女性の再生物語

2003年に『死ぬまでにしたい10のこと』という作品が、ミニシアター系としては記録的な大ヒットとなった。本作はその監督&主演女優が再びタッグを組んだ人間ドラマ。『死ぬまでにしたい10のこと』については、作品の出来というより心に残る邦題が勝因だったのではないかと私は思っていたが、似たような邦題で公開するあたり、なるほどなと思う。

他人との交流を断ち、黙々と工場での仕事に打ち込むハンナ(サラ・ポーリー)。休みもとらないその異常な様子をみて、上司は半ば無理やり1ヶ月の休暇を与えた。無目的な旅に出たハンナはその途中、油田掘削所で介護士を募集していることを知る。心得があった彼女は、完全に外界から閉ざされた海上に浮かぶ掘削所で、事故で一時的に視力をなくしたジョゼフ(ティム・ロビンス)の介護を行うことにする。

正体のわからぬ子供の声でナレーションが入ったりする謎めいた進行。ヒロインのハンナはなにやら訳アリな様子だが、それがなぜなのかはわからない。異様なまでに勤勉な姿、毎昼まったく同じ弁当(しかもメニューがかなり変)、バスルームに積み上げられた一種類のみの石鹸……。そうしたディテールを丁寧に積み重ねることで、このヒロインが何か過去にとんでもない目に合い、精神に重大な傷を負った人物なのだと伝えてくる。

55点
日本人の被害者、関根さんの不在ぶりに泣けた

2001年、JR新大久保駅のホームに転落した人を助けるべく、韓国人留学生と日本人のカメラマンが線路におり、そのままやってきた電車にひかれ亡くなったという痛ましい事件があった。本作はその映画化。日韓合作で、両国の変わらぬ友情を願う気持ちを込めて製作されたという。

李秀賢=イ・スヒョン(イ・テソン)は、日本のバンドが好きな好青年。彼は母国韓国で兵役を終えた後、日本に留学した。やがて、音楽界を目指して道端で歌い続ける日本人少女(マーキー)と知り合い、付き合いはじめるが、理不尽なまでに韓国人を嫌う彼女の父(竹中直人)をはじめとする日韓の差別の壁に苦労することになる。

自分の命も顧みず、異国の名もなき他人を助けるためホームを飛び降りた勇気ある韓国人青年。その話に感銘を受けたプロデューサーの強い思い入れにより、映画化されたという。実名で登場する主人公は、しかし現実とは大きく異なるストーリーを歩む。

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