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55点
縮小再生産

東京で暮らしているとわかりにくいが、ちょっと地方に行くと今でも時代が止まったような風景に出くわし驚かされる。たとえば先日映画祭の取材で滞在した沖縄本島では、レッドカーペットの最前列でキャーキャーいう東京と大差ないオサレな夏ギャルがいたかと思うと、いつの昭和だよと思わせる暴走族が夜中の国道をかっ飛ばしていた。その服はいったいどこで売っているのかと思うようなファッションだが、少なくともこうしたマーケットは確実に、それもかなりのボリュームで存在するのである。

激しい抗争から時がたち、鈴蘭高校では新たなトップ争いが勃発していた。実力は折り紙つきながらそこから距離を置く鏑木旋風雄(東出昌大)は、凶暴な新入生・加賀美遼平(早乙女太一)とのいざこざからやがて戦いに巻き込まれていく。

「クローズEXPLODE」は高橋ヒロシの人気コミックを原作とする学園アクションドラマ。こうした不良もの作品は、ストリートレースを題材にしたクルマ映画などと共に、地方都市のヤンキー文化層の市場を視野に入れていると、以前関係者に聞いたことがある。劇場公開後もDVD市場で高稼働するのが特徴だという。

55点
ビールでも飲みながら

あらすじからは、ただのおバカえいがにしかみえない「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」は、しかしそう単純なものではない。だが、あえてそうした先入観をもってみる程度がちょうどいい。

イギリス郊外で生まれ育ったゲイリー・キング(サイモン・ペッグ)は、学生時代に失敗した12軒のバーのはしごに再び挑戦しようとかつての悪友たちを招集した。すでにアラフォーとなった中年男たちのバカげた挑戦が、いま再び始まる。

大して笑えないし、笑わそうともしていない。なんだこりゃ、と観客は戸惑うだろう。逆に言えば、この序盤を大笑いしている人よりは、そんな違和感を持った観客はするどい。やがて4軒目のバーから、ストーリーは仰天の大転換をみせる。

55点
現実のインパクトにもっと近づきたい

人気女優が風俗嬢などを演じることが、この日本でもよくある。だが本人に役柄のことを聞こうとすると、偉い人からそのことはあんまり聞かないでくださいねー、などと言われたりするそうだ。じゃあ何を聞けばいいのかと思ってしまうが、色々と大人の事情があるのでどうしようもないらしい。

敬虔なカトリックの家で育った21歳のリンダ(アマンダ・セイフライド)は、バーを経営するチャック(ピーター・サースガード)と出会い、あっという間に恋に落ちる。と同時にめくるめく性の世界を教えられた彼女は、よりチャックにはまり込んでいくが、やがて彼の金銭問題に巻き込まれる。

さすがはアメリカ、アマンダ・セイフライドほどの人気女優が、伝説のポルノ女優ラヴレースを、ヌードなど当然よといわんばかりにひょうひょうと演じきっている。

55点
どこまでもピントが合う世界

三部作の2作目はしっかりオチない宿命にあるが、それにしても「ホビット 竜に奪われた王国」の尻切れ感はひどい。

ホビット族のビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)は、魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)に誘われドワーフたち一行とともに旅を続けていた。彼らは邪悪なドラゴンが待つはなれ山に向かうが、途中でオークらの襲撃によりピンチに陥るのだった。

ドワーフの王国を取り戻す旅のくせに、ドワーフのほとんどがその他大勢扱いだったり、大ボスであるドラゴンがどこか大味で怖さを感じなかったりと、上映時間が161分もあるわりには前作同様、首を傾げるクオリティ。

55点
猪瀬事件も早く映画化したら

法律や慣例、常識といったものは、長い間の社会生活の中で人が暮らしやすく、トラブルを防止して穏やかに過ごせるよう、工夫を重ねられた結果生まれたものだ。

だからほとんどの場合、それらは有効に機能するが完全ではない。いつの世もそれら「きまりごと」の枠をはみ出す人間が存在し、彼らは自らの価値観にあわない「きまりごと」からの攻撃に耐えながら生きている。

詐欺師アーヴィン(クリスチャン・ベイル)と愛人のシドニー(エイミー・アダムス)は、ついに年貢の納め時でFBIに逮捕されるが、担当捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)は彼らに意外な提案をする。それは、罪のおとがめなしを条件に、カジノ利権に群がる政治家とマフィアを架空の投資話に引き込み、一斉逮捕するおとり捜査への協力であった。

55点
不完全な世界で生きている人間たち

男の子には、成長の過程で師匠が必要なのだという。それは父親ではない、外部の人でなくてはならない。だとするならば、父親と息子の距離というものは、人生において一度は必ず離れるということなのか。

ピアニストとして成功したティモ(サムリ・エデルマン)は、しかし代償として家庭を失ってしまった。そこに3歳で生き別れて以来の父親レオ(ヴェサ=マッティ・ロイリ)がいきなり訪ねてくる。会わせたい人物がいると強引にドライブに連れ出すレオに、当初はうんざりするティモだったが、飲んだくれのダメ人間ながら底抜けに明るく前向きなその姿に、徐々に影響を受けていく。

この映画の二人のように、一度は離れた父子が再び近づくのは考えてみれば幸運なことだ。ほとんどは巣立った鳥のように、息子は勝手に遠くに飛んでいくだけ。それを邪魔しないのが粋な父親というもの、というわけだ。

55点
予算規模の割には魅せる

ウエンツ瑛士が主演でタイガーマスクを実写化する。そんな企画案を聞いて真っ先に思うのは、プロレスシーンをどうするつもりなんだ、という点であろう。その後、ビジュアルイメージで全身を衣装で覆ったタイガーマスクの姿が発表されたときは、なるほどこれなら身体を見せずにすむよね、と妙な説得力を感じた人も多いはずだ。本物の初代タイガーだっていまや全身タイツだし、まあいいかと、そんなところだ。

ミスターXお手製のマスクをつけると潜在能力の多くが引き出され、超人的な戦いを繰り広げる。そんな虎の穴の戦士として頭角を現してきた伊達直人(ウエンツ瑛士)。児童養護施設ちびっこハウスで育った彼は、それでも優しい心を失わずにいたが、あるとき非道なやり方で親友を奪われてしまう。

この映画を実際に見て驚いたのは、そもそもプロレス設定が消え去っているということだ。考えてみれば、初の実写版タイガーマスクとはいうものの、佐山タイガーの一連の活躍こそが実写版そのものと考えているファンは多い。いまさら普通に映画にしたところで、その二番煎じは免れない。そんな作り手の認識は、確かに間違ってはいまい。

55点
チェーン店のランチセット

アメリカ映画はいまでも人種差別問題の映画を作り続けている。だがそれを見たからといって、昔はひどかったけど今はよくなったね、と思えないところが一番の皮肉である。

ブルックリン・ドジャースのGMであるブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、戦力補強をニグロリーグに求めた。若く、差別に対して強い反抗心をもつタフガイであるジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)を気に入ったリッキーは、さっそくスカウト。だが時代は黒人差別が強く残っていた1947年。MLB初の黒人選手となるジャッキーのまえに立ちはだかる苦難は、予想を超える激しいものであった。

メジャーリーグが白人だけでおこなわれていた時代、史上初の黒人選手として迫害を受けながらも不屈の闘志で乗り切った野球殿堂入りのスター、ジャッキー・ロビンソンの伝記ドラマ。

55点
消費者レベルでできることはあまりない

公開中の「もったいない!」といい、ゴミ問題の映画が花盛りである。いまや、世界に名だたる放射性ゴミ排出国家に落ちぶれてしまったこの日本で、こういう公開ブームが起きるのもやむなし。ここは謙虚にお・も・て・な・し、の心で歓迎するべきであろう。

廃棄食品にスポットを当てた「もったいない!」と比べ、こちらはもう少し広い意味での廃棄物、ゴミ問題を追いかける。世界中に存在するこうした話題を集めて紹介し、こちらをたっぷりと絶望させたあとに、いくらかの画期的な挑戦を紹介することでほのかな希望をいだかせる。社会問題ドキュメンタリーとしては王道のつくりである。

驚くのは、まるでパニック大作かアクション映画のようなオープニング。本編も出ずっぱりで各地を取材して回る名優・ジェレミー・アイアンズのナレーションがじつにシブい。さらに、エイリアンか何かの大規模侵略を受け人類は壊滅寸前……なんてシチュエーションを思わせるスリリングなスコアは、なんと「南極物語」(1983)や「ブレードランナー」(1982)、「炎のランナー」(1981)でおなじみのヴァンゲリスときた。根本的にドキュメンタリー映画の人選じゃないだろうと、思わず苦笑する。

55点
ファン向け限定品

フジテレビ「ノイタミナ」枠は、深夜ということもあって視聴者が大人に限定されるため、意欲的な企画が出てくることで評価されている。「あの花」「花の名前」などと略される本作もそこから出てきた人気作で、なかなか異色のドラマながら泣けると評判。この映画版も期待通りの大ヒットとなっている。

じんたん(入野自由)、めんま(茅野愛衣)ら仲良し6人組は超平和バスターズと名乗り、山の中の秘密基地で遊んでいた。ところがめんまが急死したことで、残りのメンバーの間には修復しきれぬ亀裂が入る。時は過ぎ、高校生となったじんたんはひきこもりとなっていたが、突然目の前にあの時のめんまが現れる。自分以外に見えないめんまはじんたんに、願いをかなえてほしいというが、彼にはその願いがなんなのかが思い出せないのだった。

テレビ版ストーリーの集大成に加えさらなる感動のエンディングを擁すると評判の本作。テレビ版を見ていないものにとっては謎だらけの展開となる。

55点
肯定されたい人に

運命や境遇はそれとして前向きに受け入れ、気楽にいこうぜ──との価値観はラテン的とされるが、案外世界中のあちこちにあるものという気がする。なんくるないさーとか、ケセラセラとか、似たようなニュアンスの言葉もいろいろあるが、最近ではSCIALLA!、とのスラングがイタリアあたりで流行中らしい。本作は、そのシャッラ!をタイトルに持つ、国境をこえて広く受け入れられた、観客に愛されるタイプの作品である。

元教師で、いまはしがないゴーストライターにまで落ちぶれた男ブルーノ(ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ)は、あるとき日銭稼ぎの家庭教師で教えているルカ(フィリッポ・シッキターノ)の母親から、留守にする半年間ルカを預かってくれとのぶしつけな依頼をされる。彼女によると、なんとルカは15年前にブルーノとの間にできた実の息子だというのだ。

主人公はもう老境だというのに、社会に反発していつも不満ばかり抱えて生きている。その結果、生活はツケすら満足に支払えぬほど困窮。そのくせ自らの悪いところを決して認めない、じつに面倒くさい頑固老人である。かつては高い理想のもとに学問の道に進んだというのに、今ではポルノ女優の伝記本を、彼女の尻に敷かれつつ書かされる始末で、だれがどう見てもこの人生が好転する気配はない。そこに持ってきて、子供ができたことを15年も知らなかったとの絶望的な事実まで知らされる。こりゃひどい、とだれもが感じる序盤である。

55点
評価は高いが停滞を感じさせる

今年のアカデミー賞はCIAイヤーだと別の記事で書いたが、「奴隷制度を扱った映画」が複数ノミネートされている点も特徴的だった。「ジャンゴ 繋がれざる者」もその一つで、異才クエンティン・タランティーノが10年間も構想を続けたマカロニ・ウェスタン(風)冒険活劇である。

南北戦争の直前、1859年のアメリカ南部。ドイツ人賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、道中で奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)を半ば強引に我が物とする。当初は彼の持つターゲットの情報が目当てだったが、聡明かつ行動力にあふれたジャンゴを気に入ったシュルツは、彼をパートナーとして扱うようになる。

さて、シュルツは合理主義のドイツ出身なので、アメリカ南部の風習など屁とも思わず、当時この地で劣等人種とさげすまれていた黒人ジャンゴの才能をいち早く見抜く。一方ジャンゴは、別れた妻を何としても探し出したいとの執念を心に秘めている。二人の活躍を、タランティーノ得意の容赦ない、だけどどこかコミカルなバイオレンス描写で描く。

55点
青春小説は映画化が難しい

意外と映画にすると難しいのが青春小説で、『パレード』『悪人』の原作者・吉田修一による「横道世之介」を映画化した本作もその一つ。平均以上の出来栄えなのに、どこかもやっとした印象なのはなぜなのか。

横道世之介(高良健吾)は、東京の大学に通うべく生まれ故郷の長崎県から上京してきた。素朴で純粋で、憎めない魅力のある彼の周りには多くの個性的な人物が集まってきた。お嬢様なのに貧乏金なしの世之介にべったりな祥子(吉高由里子)もその一人だが、彼には彼で片思いの年上女性がおり、二人の恋はあきれるほどに進展しないのだった。

若者の日常を描くこの手の小説は、作中のあちこちに共感を覚えながら読者の脳内で心地よい世界観として最終的に仕上げていくのが魅力である。だから映画のように、最初から完成品をビジュアルとしてバーンと目の前に出されてしまうと、どこか戸惑ってしまう。

55点
ディープなインドを疑似体験

世界を旅する人たちに聞くと、インドは特別な国らしい。たとえば人生で行き詰った時、ひきこもりになったりニートになったり、あるいはうつ病になったり。そういうときはインドに行くと何かに開眼し、生き返るらしい。

なにしろ川に遺体が流れてくる国である。欧米とも、日本を含む東アジアともまったく異なるその価値観が、結果的に自分自身の寛容と肯定感を与えてくれるというわけだ。

そんな憧れのインド旅行だが、その生まれ変わりを疑似体験させてくれるのが「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(11年、英・米・アラブ)。しかもインドを訪れるのが、英国人の老人グループときた。ガチガチの頑固者の英国人とくれば、世界で一番変わりそうにない人種。そこに本作の設定の面白さがあるわけだ。

55点
悪くはないが、アレはティム・バートンにとっても苦渋の選択だったのでは

最近、いろいろと復活する人が多い。自民党の総裁とか、コケても高得点なフィギュアの金メダリストとか、麻薬と逃亡劇でおなじみの美人タレントとか枚挙にいとまがない。

そんな中公開されるディズニーアニメ冬の勝負作「フランケンウィニー」のテーマもまさに「復活」。先ほど挙げたのは永遠に戻ってこないほうがいい連中ばかりだが、本作で復活するのは交通事故で死んだ愛犬。そのせつないファンタジーは、あなたの心の中にさざ波を立てるだろう。

アメリカのどこか、郊外の住宅街。科学が大好きな少年ヴィクターは、友達はいなかったが愛犬スパーキーがいたので寂しくはなかった。だが、不幸なことに交通事故でスパーキーはこの世から去ってしまう。悲観に暮れる中、学校の授業で筋肉が電気で動くことを知った彼は、ある方法をひらめき、スパーキーを甦らせようと決意する。

55点
豪華コスプレ劇

原稿を書き上げておきながらアップロードが遅れたせいで、渾身の書き出しを全部削除することほどむなしいものはない。ともあれ本作も公開後、かなり時間がたっているので速やかに本題に入ろう。

幕末の戦場で「人斬り抜刀斎」と恐れられた剣客、緋村剣心(佐藤健)は、しかし新しい時代の訪れとともに殺さずの誓いをたて、逆刃刀を腰に旅を続けていた。そんな折、神谷道場の若き師範代、薫(武井咲)を助けたことで、彼はそこに居候することになる。

5000万部突破の大ヒットコミック、待望の実写映画化である。しかし真っ先に思うのは、なぜ今ごろになってコイツを実写映画化するのかという点。その納得いく理由を描いてくれなければ、10年前でもよかったじゃんという事になってしまう。

55点
レイトショーにはいい感じだが

同じ映画鑑賞でもレイトショーにおける期待というのはちょっぴり他と異なる。残業で遅くなった男性や、デートで少し飲んだカップルなどがその途中で立ち寄る。そんな気軽さというものがレイトショー鑑賞にはある。

何人もの美女がロンドンとニューヨークの街をかけ巡るお気楽なサスペンスは、そうした用途にピッタリではないかと期待しつつ「4.3.2.1」を鑑賞した。

シャノン(オフィリア・ラヴィボンド)は家庭内環境の悪化に耐えかね、衝動的に自殺を考えている。いままさに飛び降りようというそのとき、彼女の手にはなぜか大量のダイヤモンドが握られていた。次の瞬間、シャノンの3人の女友達が現場に到着。いったいなぜ今夜はこんなコトになってしまったのか。4人それぞれの、複雑に絡み合った謎解きの物語がいま始まる。

55点
三島ファンも納得の出来

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」(2007)で新左翼運動を描いた若松孝二監督は、次は「右」も撮らなくてはとの思いから今回、三島由紀夫の割腹自殺事件を新作の題材に決めた。「自分は決して左翼ではない」と、世間の認識を否定する若松監督だが、少なくともこの映画における事件認識からは、私が見た限り極端に偏ったものは感じられない。

文豪、三島由紀夫(井浦新)はいまやノーベル文学賞候補になるほど世界的な人気を博していたが、当の本人は文学への情熱を失いつつあった。代わりに彼の頭の中を占めていたのは憂国の思いであり、やがて三島は私財をつぎ込んで民兵組織「楯の会」を結成する。日本学生同盟の持丸博(渋川清彦)、森田必勝(まさかつ)(満島真之介)ら熱心な若者たちによって運営された「楯の会」だが、自衛隊の体験キャンプを繰り返すうち、やがて法でがんじがらめにされたその実情に失望を感じ始める。と同時に、おさまらない森田らの情熱は、三島を決起の方向へと煽りはじめるのだった。

何にも知らない方にざっくり説明すると、当時三島由紀夫は今のままでは日本はダメになると判断し、とくに手足を縛られた自衛隊の現状に強い危機感を持っていた。そこで文字通り命を懸けて彼ら(と国民)の目を覚ますため、市ヶ谷の駐屯地で演説した後、壮絶な割腹自殺を遂げた。この作品は、その事件を三島を中心とした純粋なる愛国者たちのドラマとして映画化したものだ。

55点
世界は広い

この世の中で、あらゆるビデオカメラに最も多く撮られている被写体といえばおそらく赤ん坊であろう。それまで撮影に興味のなかった人でも、子供が生まれれば記録に残しておきたいものである。

とはいえ、同じ赤ちゃんでも素人が撮ったホームビデオは5分とみていられないが、プロ製はやはり違う。ドキュメンター作家のトマ・バルメ監督が5年間の月日をかけて世界4か国の赤ちゃんの誕生以降を追いかけた「ベイビーズ-いのちのちから-」は、多様な価値感を実感できるすぐれた作品となっている。

本作はドキュメンタリーとしては異例の大ヒット、アメリカでは興収ベスト10にも入った。多くの人が興味を持つ「赤ちゃん」を被写体に選択したのがその要因の一つだが、ユニークなのがアフリカのナミビア、日本、モンゴル、そしてアメリカといった4か国4人の赤ちゃんを選んだこと。文化も政治体制も異なる国を選んだあたりがなかなかのバランス感覚だ。世界の縮図とまでは言わないが、この4つを比べるだけでも随分と違いがあることに驚かされる。

55点
≪途中でばれてしまってはすべてがパー≫

純粋な人ほどだまされやすいとよく言われる。自称情報強者な人たちでさえ、純度が上がればバカ度も上がる。韓国がねぶた祭りの起源を主張と聞けば沸騰し、自衛隊の戦車にウィンカーがついているのは平和憲法のせいだと激怒する。デマや誤報を疑うことすら忘れている。

『容疑者、ホアキン・フェニックス』を見たのがもしこうした人たちばかりだったならば、もっと長く人々をだまし続けることができただろう。

アカデミー賞2度のノミネートを誇る名優ホアキン・フェニックスが、突如引退を表明した。その後彼は、うまくもないラップでミュージシャンを目指すなど奇行を繰り返し、世間からはトチ狂ったかとさえ思われていた。そんな彼を見守り続けた親友のケイシー・アフレックは、その様子をカメラに納め続けるのだが……。

55点
≪死体不法投棄の名所≫

AKB48の前田敦子が卒業宣言をしてから、あらゆるメディアが彼女の話題一色になったように、ハリウッドでも話題の人、人気者には仕事が集中するのが普通である。この映画の主演サム・ワーシントンもそうで、公開時期のズレなどもあって、日本では今年、彼の映画が立て続けに5本も公開される状況になっている。

中でもこの『キリング・フィールズ 失踪地帯』は、リアリティーにこだわった犯罪ドラマ。『アバター』(09年)や『タイタンの戦い』(10年)などスーパーヒーロー的なイメージがある彼としては珍しい、地道に捜査を続ける刑事の役を演じている。

テキサスにはキリングフィールズと呼ばれる殺害死体発見の多発地帯がある。気の荒い刑事マイク(サム・ワーシントン)は、NYからやってきた相棒のブライアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)とその近くで起きた連続少女失踪事件を捜査していた。そんな折、別の少女殺人事件の協力を依頼されたブライアン。これもまたキリングフィールズに引き寄せられるように発生した関連事件なのだろうか……。

55点
≪期待が大きすぎて不発≫

ディズニー生誕110周年記念作品、社運をかけた超大作として登場した本作は、しかし興業的には悲劇の一本となってしまった。

1868年、元南軍のジョン・カーター(テイラー・キッチュ)の日記を手にしたバローズ(ダリル・サバラ)は、その内容に驚愕する。そこには高度な文明のもと、多民族が暮らすバルスームなる惑星でカーターが繰り広げた様々な冒険が描かれていた。なぜかそこに瞬間移動したカーターは、その惑星においては驚異的な運動能力を持っていたことで、星の運命がかかる戦いに参加することになったのだった。

映画「スター・ウォーズ」や「アバター」に多大な影響を与えた原作「火星のプリンセス」の実写化として期待されていた企画だが、完成してみれば映画「スター・ウォーズ」や「アバター」の二番煎じなどと言われる始末。いや、こっちが先なんだと作り手は言いだろうが、ビジュアル的には確かにそうとしか見えないのは気の毒なところである。

55点
アメリカ人が心安らぐメッセージ

映画「戦火の馬」は、構想から撮影開始までわずか7ヶ月で行われたスピード企画である。一つの企画が2年や3年泳いでいるのも珍しくないハリウッドにおいては、この速度は異例ともいえる。そしてその中身を見てみると、監督のスティーブン・スピルバーグが映画化をそれ程急いだのもよく理解できる、極めて今のアメリカ映画の流行に即した作品である。

第一次大戦前夜の英国。農家の息子アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)が何より愛して育てた馬ジョーイは、不本意ながら様々な事情によりイギリス軍へ軍馬として売られてしまう。ジョーイは最前線を駆け抜け、敵味方の軍を行きかいながら、それでも必死に生き、走り続ける。その瞳は戦場で何を見、何を思うのだろうか……。

「戦火の馬」は、普通に見れば、何の変哲もないお馬さんの感動映画である。イギリスのダートムーアで撮影された雄大な自然、疾走する馬体、そんなネイチャーな映像美とは対照的なリアルな戦争シーン。どれをとっても平均以上の出来栄えだが、しかし群を抜いて心に残る要素があるとも言えないのが泣き所。

55点
≪人気キャストによるイクメンムービー≫

予期せぬ子育てを引き受ける中年男の物語は、チャップリンの昔から数多くあるが、そうした流れの中で『うさぎドロップ』はかなりの薄味で、物議をかもした原作の実写化としてはやや物足りない。

27歳のダイキチ(松山ケンイチ)は祖父の葬式のさなか、祖父の6歳の隠し子と初めて対面する。その娘りん(芦田愛菜)のことは親類一同誰も知らなかったようで、みな戸惑うばかり。その場で始まった親類会議でりんを押し付けあう大人たちの身勝手さに、思わずダイキチは自分が引き取ると宣言。だが突然はじまった育児生活は、働き盛りの独身会社員であるダイキチにとって、想像以上に過酷なものだった。

原作第一部のみを映画化したものなので、コンセプトはほのぼのイクメン話といったところか。もっともそうした、ハリウッドのシチュエーションコメディのようなライトなエンタテイメント映画に個性派のSABU監督というのは明らかにミスマッチで、この映画もなんだか中途半端な、目指すところがぼやけた薄味な印象になっている。彼を監督にするならコンセプトを変え、衝撃の原作ラストまで持っていったらよかったのに、なんだかやっている事がよくわからない。

55点
≪鈴木杏のヌードが話題≫

男と女は対等な関係を保ったまま愛し合えるのか。できる、と信ずる女の純愛を描いた『軽蔑』は、ヒロインを演じる鈴木杏の、初めてのヌードを含めた熱演が見もののドラマである。

新宿でばくちに明け暮れるチンピラ、カズ(高良健吾)は、歌舞伎町のダンスバーでナンバーワンの踊り子、真知子(鈴木杏)と惹かれあい駆け落ちする。「五分と五分だからね」と語った後に結ばれた二人は、その後カズの故郷へと向かう。しかしそこには、地元の名士で資産家のカズの両親や、彼にまとわりつく大勢の友人や女たちが待ち受けていた。

真知子が望むような関係は、このうざったい連中によって崩れゆき、二人の暮らしはやがて崩壊に向かう。逃亡先で徐々に明らかになる、互いを軽蔑しあう人間たちの構図。悲劇を予感させるこのドラマを、自身の代表作「ヴァイブレータ」(2003)をほうふつとさせる生々しいタッチで廣木隆一監督が描いてゆく。

55点
≪冷酷になりきれなかった男たちの青春≫

福島第一原子力発電所の事故は様々な方面に影響を与えているが、私が驚いたのはいわゆる保守業界(のうち原発擁護派)の狼狽ぶりであった。

普段は現実主義的視点で議論できる人々が、そろって感情に振り回され論理性を失っている。左翼憎しで目が曇ったか、異端の域を出ぬ低線量放射線有益論に、すがるように飛びついてしまう。平時に何を信じようと勝手だが、有事に珍奇な説を振り回すのは人の生き死にに関わる。

発言力、影響力の強い文化人や元軍人たちが、福島の子供たちの命で行うハイリスクノーリターンなギャンブルにお墨付きを与える恰好になっている。自分らが万が一間違っていたら、誰も責任などとれない悲惨な事態になる事にさえ、想像力が及ばないのだろうか。なぜ彼らは極論に走ってしまったのか。

55点
≪中国の不可解な行動を理解したい人に≫

バブル経済華やかりし頃、ジャパンマネーは世界を席巻し、その勢いの前には欧州も米国も歯が立たなかった。その邁進力たるや、現在でいえば絶好調の中国経済よりも上であったのではないか。

だがそんなイケイケドンドンの時代でも、日本人は軍備を増強しようとか隣国に進出しようとか、そんな考えは思いもしなかった。

だから最近、尖閣諸島問題で牙をむくお隣さんのふるまいが理解できない。かの国は、経済が好調になったとたん空母を作り、堂々と国境を拡大しようとふるまっている。

55点
≪ディテールの甘さで萎える≫

ハリウッドスタイルの撮影方法を導入し、脚本や役者の役作りに時間をかけるなど、邦画にしてはなかなかの意欲作『SP 野望篇』は、狙いはいい線いっているのに細部の甘さが目につく惜しい作品であった。

過去のトラウマにより危険に対する同調能力を得たセキュリティポリス(SP)の井上薫(岡田准一)。彼ら警視庁警備部警護課第四係は、六本木ヒルズのイベントに出席する国土交通大臣の行動を見守っていた。そんなとき、猛烈な悪意とテロリストの存在を察知した井上は、持ち前の行動力とチームワークで犯行阻止にいち早く動き、同時に犯人の追跡を開始した。

この冒頭から、本映画最大の売りである激しい肉体アクションが繰り広げられる。プレス資料にはフリー・ランニングとあるがこれは誤りで、岡田准一がやっているのはパルクールだ。ちなみにフリーランニングとは宙返りをわざと加えたりして魅せる移動技術のことで、パルクール(純粋な高効率移動技術)の中の一種。

55点
≪この落としどころしかないという現実が怖い≫

今年のノーベル経済学賞は、失業のメカニズムを解明し「求人があるのになぜ失業者が増えるのか」といった謎を解き明かしたノースウエスタン大のデール・モルテンセン教授らに与えられた。

続けても何のスキルも実績も労働の達成感も得られない、人生を無駄にしている感を味わうだけのクズ仕事しか無いのだから、求人が多くあるように見えても失業者が減らないのは当たり前だ。腹が減ってるからと言っても、差し出されたのが腐った果物ばかりなら、拒否する権利は誰にでもある。今後は経済理論からもこうした現状を、広く伝えてくれるようになればいいが。

人様のつくった映画に言いたい放題点数をつける仕事もろくなものではないが、それでも映画と支持する読者がいる限り、なんとか生きてはいける。とはいえ安定など皆無だから、もしこういう仕事をやりたいなら、いざという時のためダンボールハウスの組み立て方くらいは知っておく必要がある。

55点
≪食べずに生きている人たちのドキュメンタリー≫

女の子はそろって痩せたい痩せたいというものだが、その答えは簡単だ。食わなきゃいいのである。物事はかようにシンプルなものだが、それがなかなかできない。ピザやアイスクリームは食べたいが痩せたい。嫉妬深い独身のAちゃんを好きだが、人妻のBちゃんとも付き合いたい。そんな不条理を追い求めるから人は苦労するわけだ。

しかも面倒なことに、シンプルに見えた真理もじつはそう単純ではない現実がある。食わなきゃ確かに痩せるが、それはある程度まで。人間には基礎代謝量というものがあって、それは心臓やら脳みそやらがスムースに動くための、ようは生命維持に最低限不可欠なカロリーのことである。

食べなきゃ痩せると思って摂取カロリーを減らし、やがてこの限界ラインに近づいてくると何が起きるか。

55点
≪AV版、下妻物語≫

日本のアダルトビデオは一日に50本以上も作られており、もはや世界トップ級の映像産業といっても差し支えない。ファンの熱狂度も半端ではなく、そうしたマニアが集まる掲示板等で無名女優の写真を一枚見せると、それだけで即座に出演作から名前まで返答があるほど。くれぐれも、ふざけ半分で奥さんの若いころの写真などは見せないことである。知らぬが仏という、えらい人の言葉もある。

ともあれ、この業界では年間のべ数万人の女優たちが働いているわけで、ちょっと想像しただけでも人間ドラマの宝庫だとわかる。中でも、様々な理由(身内バレ防止、容姿がイマイチ等)で名前を出さない、いわばその場限りの「企画女優」の存在は、誰もが多少なりとも興味を持つところ。『名前のない女たち』は、そんな彼女たちの内面に迫るドラマである。

人並み以下の服装センスと引っ込み思案な性格のせいで、誰からも本気で愛されたことの無い平凡なOL純子(安井紀絵)。そんな彼女が、偶然街でAV女優にスカウトされた。「人生を変えたくない?」の一言に惹かれた彼女は、そのまま企画女優として集団学園ものAVに出演する。そのショッキングな体験は、しかし彼女に大きな満足感を与えるものだった。

55点
≪デニーロ主演、プロデューサーはつらいよ≫

スレンダーな黒髪ロングの美女とめくるめく夜をすごす濡れ場が映画の中であったとすれば、男の観客は相手の男を羨ましく、幸せな奴だと思うだろう(むろん、美女の修飾語句は各自の好みに読み替えていただいて結構だ)。

だが実際のところ、その男がノーテンキに幸せを感じているとは限らない。その美女は浮気者かもしれないし、そのセックスとて疲れている所を強要されているのかもしれない。つまり、見た目とは裏腹に、案外不幸というパターン。

『トラブル・イン・ハリウッド』は、まさにそんな映画。主人公であるプロデューサーは、この映画の中でほとんど何一ついい思いをすることが無い。これはそんな男の一週間を描いたドラマだ。

55点
≪弱いアイデアだけで、いきなり撮り始めたような印象≫

することは一緒なのに、どうしてこうも違うものが生まれるのか。各国のトイレ事情は、それだけで一冊本が出せるほどバラエティに富んでいる。便器の形や大きさはもちろん、紙で拭くのか水なのか、はたまた砂なのかといったところまで、さまざまな違いがある。

そんな中で日本トイレの特徴といえば、過剰なまでの無人くんサービス。水を流す音のでる機械はもちろん、近づけば勝手にふたが上がり、ワンタッチで便座のポリカバーが交換され、そしてご存知ウォシュレットに代表される温水洗浄システムさえ備える。

世界広しといえど、ここまでいたれりつくせりなトイレを発明した国は無い。完全個室の確固たるプライバシー保護思想も心地よく、最近では便所飯なる習慣も根付いている。中国のニーハオトイレでは絶対にできない、まさにシャイな日本人のための粋な慣習である(ちょっと違う)。

55点
≪個性に欠ける上、迫力不足≫

若手セクシー女優世界一といわれるミーガン・フォックスの主演作が公開される週に、元祖セクシー女優というべきアンジェリーナ・ジョリーのアクション映画が公開される。ミーガンはアンジェリーナ・ジョリーの再来と言われている程よく似たタイプであり、日本でめでたく直接(?)対決が実現したことになる。

CIAロシア担当部の優秀な局員イヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、直属上司で任務上の恩義もあるウィンター(リーヴ・シュレイバー)とともに、ロシアからの緊急亡命者の尋問をすることになった。この男はロシア大統領の近くにいた大物であったが、各種スキャンの結果、嘘を言っていないことが証明された。ところが最後に男が発した証言が、二人と局内に衝撃を与える。彼はこう言ったのだ。「わがロシアの誇る優秀なスパイがすでにアメリカに潜入している。彼女の名はソルトだ」

サービス残業のつもりで気軽にひきうけた尋問が、主人公をいきなり大ピンチに陥れる。この証言の瞬間、仲間だった周りのCIAスタッフの目つきが豹変する。盟友のウィンターだけは彼女の味方をしてくれたが、それでも彼の表情から狼狽の色は隠せない。さあどうする、すぐに逃げなければスパイ扱いされ大変なことになる!

55点
≪山田監督の偉大さ再確認≫

山田洋次監督が手がけた多くは大衆に愛される映画作品だが、その最高峰に「幸福の黄色いハンカチ」(77年)を独断で挙げたとしても、反論の声はそう多くあるまい。国産ロードムービーの大成功例にして、あまりにも有名な号泣エンディング。日本人の琴線に触れる一途な愛の物語の、しかし原作はベトナム帰還兵のエピソードを綴ったアメリカ人ピート・ハミルによるコラムである。そんな縁もあってか、このたびアメリカで「幸福の黄色いハンカチ」がリメイクされることになった。

刑務所を出たばかりのブレット(ウィリアム・ハート)は、街で若い男女ゴーディ(エディ・レッドメイン)、マーティーン(クリステン・スチュワート)と知り合う。奇妙な縁でドライブする事になった3人は、やがて自分たちの事を話し始める。じつはブレットには、かつて愛した妻にもう一度だけ聞きたい事があった。

山田洋次監督の傑作と、舞台は違えど骨格はまったく同じ物語。配役を見ただけで、往年のファンは次々としゃべりたくなるに違いない。個人的にはクリステン・スチュワート(「トワイライト」サーガで吸血鬼にモテまくるヒロイン役)が、若いのに話のわかるいい女役を好演していたと感じた。

55点
≪北野監督らしいトンガリ感が感じられず≫

近年の内向きな作品「TAKESHIS’」(2005)「監督・ばんざい!」(2007)「アキレスと亀」(2008)をへて北野武監督は、もうひとつの顔、バイオレンス作品に戻ってきた。最新作『アウトレイジ』は群像ヤクザ映画で、全編にあふれた暴力シーンが見所となっている。

巨大組織山王会本家の若頭(三浦友和)は、傘下の池元組が対立する村瀬組と近づいていると聞き、池元組長(國村隼)に村瀬(石橋蓮司)をしめろと命令する。だがもともと池元はこうした汚れ仕事に手を出す気は無く、さらなる下部組織である大友組にすべて任せてしまう。いつもこうした面倒事ばかり押し付けられる大友(ビートたけし)は、いいかげんうんざりしていたが、武闘派のメンツにかけ全力で敵をつぶしにかかる。

どこの社会にもある上下関係。中間管理職、最下層の下っ端労働者、あるいは最高経営者。それぞれ悩みをもち、それは尽きることが無い。そんな、誰もが共感できる人間模様を、ヤクザ社会というある意味極端にデフォルメされた舞台で描く。娯楽性豊かなドラマである。

55点
≪娯楽性の高さを主張しないつくり≫

映画「孤高のメス」の原作者・大鐘稔彦は現役医師で、「輸血不可」の教義を持つ新興宗教団体の患者を、無輸血手術で救った実績などで知られている。その小説の映画化となれば、これは「かつてないリアルな医療シーン」を見せ場に持ってくることは最低限のハードル。そして幸い、それはほぼ達成された。医療映画ファンにバカにされない程度のリアリティは、なんとか確保されているといえるのではないか。

1989年、ある総合病院の内部は腐敗していた。提携する大学病院とその派遣医師に牛耳られたこの病院では、権威主義で患者の命をなんとも思わぬ悪徳医師が我が物顔に振舞っていた。ところが米国帰りの新任外科医(堤真一)は、そんな院内の内部事情などどこふく風と患者第一の施術を行い、次々と難手術を成功させてゆく。

夏川結衣演じる看護婦の視点から、この立派なお医者さんの活躍が描かれる。全体が回想シーンとなった構成だが、主たるお話はこの1989年の病院内の幾多のエピソード。外科医の話だから、手術シーンがたくさん出てくる。精巧な撮影用臓器や、大学病院で実際に手術シーンを見学した堤真一らの徹底した役作りにより、嘘っぽさはまったく感じない。大したものだ。

55点
≪キャスティングD頑張りすぎ≫

ボクシング映画にはずれなしとよくいわれるが、その原因は見る側の目が肥えていることが大きい。昭和の昔から国民的スポーツであるこの格闘技を、映画という作り物の上で再現するには、相当な工夫が要る。映画監督になるような世代の人なら誰もがそれを理解しているから、安直な実写映画が生まれにくいのではないかと想像する。

弱気な優等生ユウキ(高良健吾)は、ワルに絡まれたところを幼馴染のカブ(市原隼人)に助けられる。カブは勉強は苦手だったがケンカはめっぽう強く、高校生となった今では気鋭の天才ボクサーとして活躍していた。そんなカブに誘われ、やがてユウキもボクシングを始めることに。

その後の展開はどこかで見たようなパターンで物語重視派には物足りないが、青春の挫折を市原隼人が切ない演技で再現しており、大いに共感を誘う。形を変えてどこにでもある思い、友情とライバル心の葛藤に悩む男同士ならではの関係性を、穏やかなこの監督の視線で味わうのは心地よい。

55点
技巧はあれど、成功するとは限らず

「アリス・イン・ワンダーランド」でティム・バートン監督とジョニー・デップが7度目のタッグを組んだように、映画界にはうまの合うコンビというものがある。本人同士の相性だったり、興行面での有利であったりと理由はさまざまだが、『シャッター アイランド』が4回目の顔合わせとなるレオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシ監督も、そうした相思相愛カップルのひとつだろう。

舞台は1950年代、ボストン沖の孤島にある精神病院から一人の女性患者が失踪した。捜査のため相棒(マーク・ラファロ)と島に渡った連邦保安官(L・ディカプリオ)だが、悪天候とどこか異様な職員たちに翻弄され、一向に捜査は進展しない。

原作は結末が袋とじという、典型的な謎解きミステリ。作品のテーマは……これは結末に言及しないと説明しにくいので省略。ただ、それがスコセッシ向きであることは間違いない。

55点
ディズニーが本気で送るネズミ映画

前代未聞の欠陥商品が多数登場するこのコメディー映画の後半を、決して笑ってみることはできないであろう。──世界でただ一人、トヨタ社長だけは。

遺伝子操作で生まれたスーパーモルモットを、ベン博士(ザック・ガリフィナーキス)が厳しい訓練で育て上げたFBIのエリート特殊スパイ部隊「G-FORCE」。人間では不可能な潜入捜査をその小さな体で成し遂げる彼らだったが、FBI上層部からは誤解され、部隊の解散を命じられる。捕獲寸前のところを逃げ出したモルモットたちは、なんとか手柄を上げて再起したいと考えるが……。

子供向けの3D実写(とCGアニメの融合)映画だが、こんなファミリームービーでもちゃんといまどきのアメリカ映画のポイントを押さえているあたりが面白い。

55点
最後は暴力にものをいわせる豪快なホームズ映画

原作者アーサー・コナン・ドイルが19世紀に作り出した名探偵シャーロック・ホームズは、実写映画からテレビドラマ、はては犬アニメまで、何度も映像化されてきた。ミステリファンならずともその知名度は絶大で、彼が住んでいるベーカー街221B宛てに手紙を出せば、今でもちゃんと届くなどと言われている。本作はその、ドイルの原作に忠実な最新の実写映画化である。

19世紀末のロンドン。儀式めいた手口で女性が殺される難事件を探偵のホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)は、持ち前の直観力と行動力で一気に解決に導く。しかし黒幕のブラックウッド卿(マーク・ストロング)が残したなぞめいた言葉とさらなる大事件が、のちに彼と助手のワトソン(ジュード・ロウ)を悩ますことに。

たしかに原作のホームズはヤク中の元ボクサーであるが、それをロバート・ダウニー・Jrに演じさせて「原作に忠実」とは、さすがガイ・リッチー監督は冗談のわかる男である。

55点
メキシコを舞台に

ワールドカップ南ア大会も近いし、ここらでサッカー映画でも。──というわけで(もないだろうが)登場したのが『ルドandクルシ』。ノー天気な明るさに満ちたこのハートフルコメディは、しかしメキシコ映画界の誇る才能たちが本気で作った入魂の一本。

バナナ園で働く兄弟ベト(ディエゴ・ルナ)とタト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、たまたま出会ったスカウトマンの目にとまり、プロサッカー選手としてデビューする。あれよあれよと人気も急上昇、暮らしもどんどん豊かになっていくが……。

この映画、新鋭カルロス・キュアロン監督を周りで支えるメンバーがすごい。実兄のアルフォンソ・キュアロン(「トゥモロー・ワールド」監督)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(「バベル」監督)、ギレルモ・デル・トロ(「パンズ・ラビリンス」監督)など早々たるメンバーが製作として名を連ねている。

55点
ルームシェアする若者たちの、どこか異質な関係

日本の都市部の家賃は世界的にみても高額だが、欧米のようにルームシェアが普及することはあまり無い。間取りや国民気質の問題もあるが、不動産関連の慣例や契約が案外ガチガチで、居住者ががんじがらめにされているのも理由のひとつだろう。

映画会社に勤める伊原(藤原竜也)は、売れないイラストレーターの未来(香里奈)、大学生の良介(小出恵介)、人気俳優のカノジョで無職の琴美(貫地谷しほり)ら3人を自らのマンションに住まわせ、共同生活を送っていた。どこか上っ面だけのつきあいながら、バランスの取れた関係を保っていた彼らの前に、あるとき男娼を自称するサトル(林遣都)が現れる。

ミステリ要素のあるドラマで、テレビで流れる近所の連続暴行事件のニュースが、なにやら不穏な空気を演出する。出てくる連中は、本人理解のためにもっとも重要な「本音・本性」を、心の闇の中に隠している様子。一緒に暮らしていながらすべてをさらけ出すわけではない、見ている側はどうにも居心地の悪いコミュニティを、狭いマンション内で形成している。

55点
バレンタインデー、およびカップル専用

誰にでも、憎らしい奴というのはいるものである。その悪意は、ときに凶悪な事件となって社会を不安定化させ、人々を震撼させる。よって社会人ともなれば、いかに相手を憎んでいても、それを顔に出さぬよう我慢して生きるのが当然である。

だがどうしても許せない相手がいた場合、その相手が運良くシングルであったならば、恋愛群像劇『バレンタインデー』のチケットを買って渡すといい。

舞台はロサンゼルス、バレンタインデーの朝。最愛の恋人(ジェシカ・アルバ)にプロポーズを受けてもらった花屋のオーナー、リード(アシュトン・カッチャー)は大喜び。一年で一番忙しいこの日も、誰より幸せな気分で訪れるお客さんたちに笑顔を振りまいていた。そんな彼の周りには、たくさんの愛に悩む人々がいて……。

55点
ペネロペ・クルスの脱ぎっぷりは健在

ゲイながら巨乳大好きなスペインの巨匠ペドロ・アルモドバルは、この最新作でもお気に入りのペネロペ・クルスの胸の谷間を追い掛け回す。『抱擁のかけら』は、そんな罪作りなおっぱいの物語である。

かつて優れた映画監督だったマテオ・ブランコ(ルイス・オマール)は、いまや盲目となりハリー・ケインと名乗っていた。彼はなぜ光を失ったのか。なぜ本名を捨てたのだろうか。その謎の謎は、14年前の映画撮影現場で、彼が愛をささげたレナ(ペネロペ・クルス)という女性が握っていた。マテオは、盲目の自分に新作を依頼しにきた怪しげな若者(ルーベン・オチャンディアーノ)の訪問を契機に、レナとの過去を振り返る……。

「罪作りなおっぱい」の意味は見ればわかるので割愛するが、相変わらずこの監督の映画はユニークなつくりになっている。

55点
飛び出す濡れ場は見ごたえあり

『完全なる飼育』は日本映画界の至宝というべき純愛シリーズだが、ここしばらくの不況下で新作が途切れた状態であった。

だが、名作「バトル・ロワイアル II〜鎮魂歌(レクイエム)〜」(03年)の深作健太監督がついにやってくれた。「アバター」に代表される立体映画ブームの勃発により、その最新作『完全なる飼育 メイド、for you』は、世界初の3Dおっぱいが堪能できる超絶体験映画として登場したのだ。

秋葉原のメイドカフェで働く少女(亜矢乃)は、仕事で嫌な思いをした日、出待ちしていたファンの椛島(柳浩太郎)を思わずじゃけんにしてしまう。そのまま二人はもみあいになり、打ち所悪く失神した彼女を、椛島は自分が働く近所のネットカフェの個室に連れ帰ってしまう。

55点
ヒース・レジャーの遺作

「ダークナイト」撮影後に急逝したヒース・レジャーが最後に撮影していたのがこの『Dr.パルナサスの鏡』。主演俳優が事故死するなどと、場合によってはそのままお蔵入りになりかねない大事件に遭遇しながら、本作は何とか完成した。ジョニー・デップらヒースの親友たちが彼の役を引き継ぎ、テリー・ギリアム監督もそれに合わせて内容を変更したからである。役を引き継いだ3人が、それぞれのギャラを当時2歳のヒースの娘に寄贈したという美談も有名である。

現代のロンドン。パルナサス博士(クリストファー・プラマー)を座長とする旅芸人一座のウリは、本物の別世界へとつながる鏡。そこに入る人の心により、鏡の中の世界は鮮やかな変化を見せるのだった。一座はあるとき、なぞめいた青年トニー(ヒース・レジャー)と出会うが、この出来事が彼らの運命を大きく変えることに。

鏡の中の世界は、まさにテリー・ギリアムワールドで、本作最大の見所。よくこんなものを思いつくなと思わせる、不思議なファンタジー世界の具現化には、誰もが驚かされるに違いない。と同時に、監督のファンにとってはその完成度の高さに喜びの声をあげる事になるだろう。

55点
個別の動きは素晴らしいが……

『マッハ!』(03年)で世界のアクション映画ファンに衝撃を与えたトニー・ジャーも、気づいてみればはや33歳。類まれなる運動能力も、ほうっておけば陰りが見えだす年齢である。

だから──というわけでもなかろうが、出世作の続編『マッハ!弐』で彼は、初の監督にチャレンジした。

15世紀半ばのタイ。山賊一味に育てられたティン(トニー・ジャー)は、あらゆる格闘技で突出した才能を見せ、やがてリーダーとして皆を率いるほどに成長する。だが彼には、そんな大任の前にやるべき復讐があった。

55点
霞のような敵と戦っているようなもの

マイケル・ムーア監督が「反資本主義!」を叫ぶ最新作『キャピタリズム マネーは踊る』の制作中、偶然にも例の金融危機が起きた。ムーアはそのとき内心しめた、と思ったという。自ら選んだ題材のタイムリーさを確信したというわけだ。

だが、残念ながら彼の認識は間違っていた。

タイムリーどころの騒ぎではないのだ。そのとき起きた出来事の真の意味は、「現実が映画を追い越した」すなわち「このネタはとっくに過去のものとなりつつある」ということであった。だから彼は喜ぶどころか、焦るべきだった。完成・公開がもっと早かったならば、この映画における彼の主張がこれほど陳腐にみえることなどなかっただろう。つくづく残念である。

55点
出てくる韓国人は天然のコメディスター

今年の韓国映画界最大のニュースをあげろといわれたら、間違いなくこの作品のお化けヒットということになるだろう。

小規模公開の地味なドキュメンタリー映画なのだが、瞬く間に口コミで評判が広がり、やがてあらゆる話題作、大作をうちやぶりついに興行成績1位に。最終的に300万人が見たというのだから尋常ではない。これは人口比率でいえば、日本における「ロード・オブ・ザ・リング」以上の特大ヒットだ。まったくもって、韓国人の好みはよくわからない。

で、どんな内容かというと、まず主人公は韓国の田舎に住む老夫婦。爺さん(79歳)の方は長年、一頭の牛とともに昔ながらの非機械化農業をやっている。通常、牛というのは寿命が15年だそうだが、この爺さんの牛はもう40年も生きているというからすごい。映画はこの牛と爺さんの奇妙な友情(愛情?)と、婆さんとの三角関係を淡々と追いかける。

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