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55点
三島ファンも納得の出来

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」(2007)で新左翼運動を描いた若松孝二監督は、次は「右」も撮らなくてはとの思いから今回、三島由紀夫の割腹自殺事件を新作の題材に決めた。「自分は決して左翼ではない」と、世間の認識を否定する若松監督だが、少なくともこの映画における事件認識からは、私が見た限り極端に偏ったものは感じられない。

文豪、三島由紀夫(井浦新)はいまやノーベル文学賞候補になるほど世界的な人気を博していたが、当の本人は文学への情熱を失いつつあった。代わりに彼の頭の中を占めていたのは憂国の思いであり、やがて三島は私財をつぎ込んで民兵組織「楯の会」を結成する。日本学生同盟の持丸博(渋川清彦)、森田必勝(まさかつ)(満島真之介)ら熱心な若者たちによって運営された「楯の会」だが、自衛隊の体験キャンプを繰り返すうち、やがて法でがんじがらめにされたその実情に失望を感じ始める。と同時に、おさまらない森田らの情熱は、三島を決起の方向へと煽りはじめるのだった。

何にも知らない方にざっくり説明すると、当時三島由紀夫は今のままでは日本はダメになると判断し、とくに手足を縛られた自衛隊の現状に強い危機感を持っていた。そこで文字通り命を懸けて彼ら(と国民)の目を覚ますため、市ヶ谷の駐屯地で演説した後、壮絶な割腹自殺を遂げた。この作品は、その事件を三島を中心とした純粋なる愛国者たちのドラマとして映画化したものだ。

55点
世界は広い

この世の中で、あらゆるビデオカメラに最も多く撮られている被写体といえばおそらく赤ん坊であろう。それまで撮影に興味のなかった人でも、子供が生まれれば記録に残しておきたいものである。

とはいえ、同じ赤ちゃんでも素人が撮ったホームビデオは5分とみていられないが、プロ製はやはり違う。ドキュメンター作家のトマ・バルメ監督が5年間の月日をかけて世界4か国の赤ちゃんの誕生以降を追いかけた「ベイビーズ-いのちのちから-」は、多様な価値感を実感できるすぐれた作品となっている。

本作はドキュメンタリーとしては異例の大ヒット、アメリカでは興収ベスト10にも入った。多くの人が興味を持つ「赤ちゃん」を被写体に選択したのがその要因の一つだが、ユニークなのがアフリカのナミビア、日本、モンゴル、そしてアメリカといった4か国4人の赤ちゃんを選んだこと。文化も政治体制も異なる国を選んだあたりがなかなかのバランス感覚だ。世界の縮図とまでは言わないが、この4つを比べるだけでも随分と違いがあることに驚かされる。

55点
≪途中でばれてしまってはすべてがパー≫

純粋な人ほどだまされやすいとよく言われる。自称情報強者な人たちでさえ、純度が上がればバカ度も上がる。韓国がねぶた祭りの起源を主張と聞けば沸騰し、自衛隊の戦車にウィンカーがついているのは平和憲法のせいだと激怒する。デマや誤報を疑うことすら忘れている。

『容疑者、ホアキン・フェニックス』を見たのがもしこうした人たちばかりだったならば、もっと長く人々をだまし続けることができただろう。

アカデミー賞2度のノミネートを誇る名優ホアキン・フェニックスが、突如引退を表明した。その後彼は、うまくもないラップでミュージシャンを目指すなど奇行を繰り返し、世間からはトチ狂ったかとさえ思われていた。そんな彼を見守り続けた親友のケイシー・アフレックは、その様子をカメラに納め続けるのだが……。

55点
≪死体不法投棄の名所≫

AKB48の前田敦子が卒業宣言をしてから、あらゆるメディアが彼女の話題一色になったように、ハリウッドでも話題の人、人気者には仕事が集中するのが普通である。この映画の主演サム・ワーシントンもそうで、公開時期のズレなどもあって、日本では今年、彼の映画が立て続けに5本も公開される状況になっている。

中でもこの『キリング・フィールズ 失踪地帯』は、リアリティーにこだわった犯罪ドラマ。『アバター』(09年)や『タイタンの戦い』(10年)などスーパーヒーロー的なイメージがある彼としては珍しい、地道に捜査を続ける刑事の役を演じている。

テキサスにはキリングフィールズと呼ばれる殺害死体発見の多発地帯がある。気の荒い刑事マイク(サム・ワーシントン)は、NYからやってきた相棒のブライアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)とその近くで起きた連続少女失踪事件を捜査していた。そんな折、別の少女殺人事件の協力を依頼されたブライアン。これもまたキリングフィールズに引き寄せられるように発生した関連事件なのだろうか……。

55点
≪期待が大きすぎて不発≫

ディズニー生誕110周年記念作品、社運をかけた超大作として登場した本作は、しかし興業的には悲劇の一本となってしまった。

1868年、元南軍のジョン・カーター(テイラー・キッチュ)の日記を手にしたバローズ(ダリル・サバラ)は、その内容に驚愕する。そこには高度な文明のもと、多民族が暮らすバルスームなる惑星でカーターが繰り広げた様々な冒険が描かれていた。なぜかそこに瞬間移動したカーターは、その惑星においては驚異的な運動能力を持っていたことで、星の運命がかかる戦いに参加することになったのだった。

映画「スター・ウォーズ」や「アバター」に多大な影響を与えた原作「火星のプリンセス」の実写化として期待されていた企画だが、完成してみれば映画「スター・ウォーズ」や「アバター」の二番煎じなどと言われる始末。いや、こっちが先なんだと作り手は言いだろうが、ビジュアル的には確かにそうとしか見えないのは気の毒なところである。

55点
アメリカ人が心安らぐメッセージ

映画「戦火の馬」は、構想から撮影開始までわずか7ヶ月で行われたスピード企画である。一つの企画が2年や3年泳いでいるのも珍しくないハリウッドにおいては、この速度は異例ともいえる。そしてその中身を見てみると、監督のスティーブン・スピルバーグが映画化をそれ程急いだのもよく理解できる、極めて今のアメリカ映画の流行に即した作品である。

第一次大戦前夜の英国。農家の息子アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)が何より愛して育てた馬ジョーイは、不本意ながら様々な事情によりイギリス軍へ軍馬として売られてしまう。ジョーイは最前線を駆け抜け、敵味方の軍を行きかいながら、それでも必死に生き、走り続ける。その瞳は戦場で何を見、何を思うのだろうか……。

「戦火の馬」は、普通に見れば、何の変哲もないお馬さんの感動映画である。イギリスのダートムーアで撮影された雄大な自然、疾走する馬体、そんなネイチャーな映像美とは対照的なリアルな戦争シーン。どれをとっても平均以上の出来栄えだが、しかし群を抜いて心に残る要素があるとも言えないのが泣き所。

55点
≪人気キャストによるイクメンムービー≫

予期せぬ子育てを引き受ける中年男の物語は、チャップリンの昔から数多くあるが、そうした流れの中で『うさぎドロップ』はかなりの薄味で、物議をかもした原作の実写化としてはやや物足りない。

27歳のダイキチ(松山ケンイチ)は祖父の葬式のさなか、祖父の6歳の隠し子と初めて対面する。その娘りん(芦田愛菜)のことは親類一同誰も知らなかったようで、みな戸惑うばかり。その場で始まった親類会議でりんを押し付けあう大人たちの身勝手さに、思わずダイキチは自分が引き取ると宣言。だが突然はじまった育児生活は、働き盛りの独身会社員であるダイキチにとって、想像以上に過酷なものだった。

原作第一部のみを映画化したものなので、コンセプトはほのぼのイクメン話といったところか。もっともそうした、ハリウッドのシチュエーションコメディのようなライトなエンタテイメント映画に個性派のSABU監督というのは明らかにミスマッチで、この映画もなんだか中途半端な、目指すところがぼやけた薄味な印象になっている。彼を監督にするならコンセプトを変え、衝撃の原作ラストまで持っていったらよかったのに、なんだかやっている事がよくわからない。

55点
≪鈴木杏のヌードが話題≫

男と女は対等な関係を保ったまま愛し合えるのか。できる、と信ずる女の純愛を描いた『軽蔑』は、ヒロインを演じる鈴木杏の、初めてのヌードを含めた熱演が見もののドラマである。

新宿でばくちに明け暮れるチンピラ、カズ(高良健吾)は、歌舞伎町のダンスバーでナンバーワンの踊り子、真知子(鈴木杏)と惹かれあい駆け落ちする。「五分と五分だからね」と語った後に結ばれた二人は、その後カズの故郷へと向かう。しかしそこには、地元の名士で資産家のカズの両親や、彼にまとわりつく大勢の友人や女たちが待ち受けていた。

真知子が望むような関係は、このうざったい連中によって崩れゆき、二人の暮らしはやがて崩壊に向かう。逃亡先で徐々に明らかになる、互いを軽蔑しあう人間たちの構図。悲劇を予感させるこのドラマを、自身の代表作「ヴァイブレータ」(2003)をほうふつとさせる生々しいタッチで廣木隆一監督が描いてゆく。

55点
≪冷酷になりきれなかった男たちの青春≫

福島第一原子力発電所の事故は様々な方面に影響を与えているが、私が驚いたのはいわゆる保守業界(のうち原発擁護派)の狼狽ぶりであった。

普段は現実主義的視点で議論できる人々が、そろって感情に振り回され論理性を失っている。左翼憎しで目が曇ったか、異端の域を出ぬ低線量放射線有益論に、すがるように飛びついてしまう。平時に何を信じようと勝手だが、有事に珍奇な説を振り回すのは人の生き死にに関わる。

発言力、影響力の強い文化人や元軍人たちが、福島の子供たちの命で行うハイリスクノーリターンなギャンブルにお墨付きを与える恰好になっている。自分らが万が一間違っていたら、誰も責任などとれない悲惨な事態になる事にさえ、想像力が及ばないのだろうか。なぜ彼らは極論に走ってしまったのか。

55点
≪中国の不可解な行動を理解したい人に≫

バブル経済華やかりし頃、ジャパンマネーは世界を席巻し、その勢いの前には欧州も米国も歯が立たなかった。その邁進力たるや、現在でいえば絶好調の中国経済よりも上であったのではないか。

だがそんなイケイケドンドンの時代でも、日本人は軍備を増強しようとか隣国に進出しようとか、そんな考えは思いもしなかった。

だから最近、尖閣諸島問題で牙をむくお隣さんのふるまいが理解できない。かの国は、経済が好調になったとたん空母を作り、堂々と国境を拡大しようとふるまっている。

55点
≪ディテールの甘さで萎える≫

ハリウッドスタイルの撮影方法を導入し、脚本や役者の役作りに時間をかけるなど、邦画にしてはなかなかの意欲作『SP 野望篇』は、狙いはいい線いっているのに細部の甘さが目につく惜しい作品であった。

過去のトラウマにより危険に対する同調能力を得たセキュリティポリス(SP)の井上薫(岡田准一)。彼ら警視庁警備部警護課第四係は、六本木ヒルズのイベントに出席する国土交通大臣の行動を見守っていた。そんなとき、猛烈な悪意とテロリストの存在を察知した井上は、持ち前の行動力とチームワークで犯行阻止にいち早く動き、同時に犯人の追跡を開始した。

この冒頭から、本映画最大の売りである激しい肉体アクションが繰り広げられる。プレス資料にはフリー・ランニングとあるがこれは誤りで、岡田准一がやっているのはパルクールだ。ちなみにフリーランニングとは宙返りをわざと加えたりして魅せる移動技術のことで、パルクール(純粋な高効率移動技術)の中の一種。

55点
≪この落としどころしかないという現実が怖い≫

今年のノーベル経済学賞は、失業のメカニズムを解明し「求人があるのになぜ失業者が増えるのか」といった謎を解き明かしたノースウエスタン大のデール・モルテンセン教授らに与えられた。

続けても何のスキルも実績も労働の達成感も得られない、人生を無駄にしている感を味わうだけのクズ仕事しか無いのだから、求人が多くあるように見えても失業者が減らないのは当たり前だ。腹が減ってるからと言っても、差し出されたのが腐った果物ばかりなら、拒否する権利は誰にでもある。今後は経済理論からもこうした現状を、広く伝えてくれるようになればいいが。

人様のつくった映画に言いたい放題点数をつける仕事もろくなものではないが、それでも映画と支持する読者がいる限り、なんとか生きてはいける。とはいえ安定など皆無だから、もしこういう仕事をやりたいなら、いざという時のためダンボールハウスの組み立て方くらいは知っておく必要がある。

55点
≪食べずに生きている人たちのドキュメンタリー≫

女の子はそろって痩せたい痩せたいというものだが、その答えは簡単だ。食わなきゃいいのである。物事はかようにシンプルなものだが、それがなかなかできない。ピザやアイスクリームは食べたいが痩せたい。嫉妬深い独身のAちゃんを好きだが、人妻のBちゃんとも付き合いたい。そんな不条理を追い求めるから人は苦労するわけだ。

しかも面倒なことに、シンプルに見えた真理もじつはそう単純ではない現実がある。食わなきゃ確かに痩せるが、それはある程度まで。人間には基礎代謝量というものがあって、それは心臓やら脳みそやらがスムースに動くための、ようは生命維持に最低限不可欠なカロリーのことである。

食べなきゃ痩せると思って摂取カロリーを減らし、やがてこの限界ラインに近づいてくると何が起きるか。

55点
≪AV版、下妻物語≫

日本のアダルトビデオは一日に50本以上も作られており、もはや世界トップ級の映像産業といっても差し支えない。ファンの熱狂度も半端ではなく、そうしたマニアが集まる掲示板等で無名女優の写真を一枚見せると、それだけで即座に出演作から名前まで返答があるほど。くれぐれも、ふざけ半分で奥さんの若いころの写真などは見せないことである。知らぬが仏という、えらい人の言葉もある。

ともあれ、この業界では年間のべ数万人の女優たちが働いているわけで、ちょっと想像しただけでも人間ドラマの宝庫だとわかる。中でも、様々な理由(身内バレ防止、容姿がイマイチ等)で名前を出さない、いわばその場限りの「企画女優」の存在は、誰もが多少なりとも興味を持つところ。『名前のない女たち』は、そんな彼女たちの内面に迫るドラマである。

人並み以下の服装センスと引っ込み思案な性格のせいで、誰からも本気で愛されたことの無い平凡なOL純子(安井紀絵)。そんな彼女が、偶然街でAV女優にスカウトされた。「人生を変えたくない?」の一言に惹かれた彼女は、そのまま企画女優として集団学園ものAVに出演する。そのショッキングな体験は、しかし彼女に大きな満足感を与えるものだった。

55点
≪デニーロ主演、プロデューサーはつらいよ≫

スレンダーな黒髪ロングの美女とめくるめく夜をすごす濡れ場が映画の中であったとすれば、男の観客は相手の男を羨ましく、幸せな奴だと思うだろう(むろん、美女の修飾語句は各自の好みに読み替えていただいて結構だ)。

だが実際のところ、その男がノーテンキに幸せを感じているとは限らない。その美女は浮気者かもしれないし、そのセックスとて疲れている所を強要されているのかもしれない。つまり、見た目とは裏腹に、案外不幸というパターン。

『トラブル・イン・ハリウッド』は、まさにそんな映画。主人公であるプロデューサーは、この映画の中でほとんど何一ついい思いをすることが無い。これはそんな男の一週間を描いたドラマだ。

55点
≪弱いアイデアだけで、いきなり撮り始めたような印象≫

することは一緒なのに、どうしてこうも違うものが生まれるのか。各国のトイレ事情は、それだけで一冊本が出せるほどバラエティに富んでいる。便器の形や大きさはもちろん、紙で拭くのか水なのか、はたまた砂なのかといったところまで、さまざまな違いがある。

そんな中で日本トイレの特徴といえば、過剰なまでの無人くんサービス。水を流す音のでる機械はもちろん、近づけば勝手にふたが上がり、ワンタッチで便座のポリカバーが交換され、そしてご存知ウォシュレットに代表される温水洗浄システムさえ備える。

世界広しといえど、ここまでいたれりつくせりなトイレを発明した国は無い。完全個室の確固たるプライバシー保護思想も心地よく、最近では便所飯なる習慣も根付いている。中国のニーハオトイレでは絶対にできない、まさにシャイな日本人のための粋な慣習である(ちょっと違う)。

55点
≪個性に欠ける上、迫力不足≫

若手セクシー女優世界一といわれるミーガン・フォックスの主演作が公開される週に、元祖セクシー女優というべきアンジェリーナ・ジョリーのアクション映画が公開される。ミーガンはアンジェリーナ・ジョリーの再来と言われている程よく似たタイプであり、日本でめでたく直接(?)対決が実現したことになる。

CIAロシア担当部の優秀な局員イヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、直属上司で任務上の恩義もあるウィンター(リーヴ・シュレイバー)とともに、ロシアからの緊急亡命者の尋問をすることになった。この男はロシア大統領の近くにいた大物であったが、各種スキャンの結果、嘘を言っていないことが証明された。ところが最後に男が発した証言が、二人と局内に衝撃を与える。彼はこう言ったのだ。「わがロシアの誇る優秀なスパイがすでにアメリカに潜入している。彼女の名はソルトだ」

サービス残業のつもりで気軽にひきうけた尋問が、主人公をいきなり大ピンチに陥れる。この証言の瞬間、仲間だった周りのCIAスタッフの目つきが豹変する。盟友のウィンターだけは彼女の味方をしてくれたが、それでも彼の表情から狼狽の色は隠せない。さあどうする、すぐに逃げなければスパイ扱いされ大変なことになる!

55点
≪山田監督の偉大さ再確認≫

山田洋次監督が手がけた多くは大衆に愛される映画作品だが、その最高峰に「幸福の黄色いハンカチ」(77年)を独断で挙げたとしても、反論の声はそう多くあるまい。国産ロードムービーの大成功例にして、あまりにも有名な号泣エンディング。日本人の琴線に触れる一途な愛の物語の、しかし原作はベトナム帰還兵のエピソードを綴ったアメリカ人ピート・ハミルによるコラムである。そんな縁もあってか、このたびアメリカで「幸福の黄色いハンカチ」がリメイクされることになった。

刑務所を出たばかりのブレット(ウィリアム・ハート)は、街で若い男女ゴーディ(エディ・レッドメイン)、マーティーン(クリステン・スチュワート)と知り合う。奇妙な縁でドライブする事になった3人は、やがて自分たちの事を話し始める。じつはブレットには、かつて愛した妻にもう一度だけ聞きたい事があった。

山田洋次監督の傑作と、舞台は違えど骨格はまったく同じ物語。配役を見ただけで、往年のファンは次々としゃべりたくなるに違いない。個人的にはクリステン・スチュワート(「トワイライト」サーガで吸血鬼にモテまくるヒロイン役)が、若いのに話のわかるいい女役を好演していたと感じた。

55点
≪北野監督らしいトンガリ感が感じられず≫

近年の内向きな作品「TAKESHIS’」(2005)「監督・ばんざい!」(2007)「アキレスと亀」(2008)をへて北野武監督は、もうひとつの顔、バイオレンス作品に戻ってきた。最新作『アウトレイジ』は群像ヤクザ映画で、全編にあふれた暴力シーンが見所となっている。

巨大組織山王会本家の若頭(三浦友和)は、傘下の池元組が対立する村瀬組と近づいていると聞き、池元組長(國村隼)に村瀬(石橋蓮司)をしめろと命令する。だがもともと池元はこうした汚れ仕事に手を出す気は無く、さらなる下部組織である大友組にすべて任せてしまう。いつもこうした面倒事ばかり押し付けられる大友(ビートたけし)は、いいかげんうんざりしていたが、武闘派のメンツにかけ全力で敵をつぶしにかかる。

どこの社会にもある上下関係。中間管理職、最下層の下っ端労働者、あるいは最高経営者。それぞれ悩みをもち、それは尽きることが無い。そんな、誰もが共感できる人間模様を、ヤクザ社会というある意味極端にデフォルメされた舞台で描く。娯楽性豊かなドラマである。

55点
≪娯楽性の高さを主張しないつくり≫

映画「孤高のメス」の原作者・大鐘稔彦は現役医師で、「輸血不可」の教義を持つ新興宗教団体の患者を、無輸血手術で救った実績などで知られている。その小説の映画化となれば、これは「かつてないリアルな医療シーン」を見せ場に持ってくることは最低限のハードル。そして幸い、それはほぼ達成された。医療映画ファンにバカにされない程度のリアリティは、なんとか確保されているといえるのではないか。

1989年、ある総合病院の内部は腐敗していた。提携する大学病院とその派遣医師に牛耳られたこの病院では、権威主義で患者の命をなんとも思わぬ悪徳医師が我が物顔に振舞っていた。ところが米国帰りの新任外科医(堤真一)は、そんな院内の内部事情などどこふく風と患者第一の施術を行い、次々と難手術を成功させてゆく。

夏川結衣演じる看護婦の視点から、この立派なお医者さんの活躍が描かれる。全体が回想シーンとなった構成だが、主たるお話はこの1989年の病院内の幾多のエピソード。外科医の話だから、手術シーンがたくさん出てくる。精巧な撮影用臓器や、大学病院で実際に手術シーンを見学した堤真一らの徹底した役作りにより、嘘っぽさはまったく感じない。大したものだ。

55点
≪キャスティングD頑張りすぎ≫

ボクシング映画にはずれなしとよくいわれるが、その原因は見る側の目が肥えていることが大きい。昭和の昔から国民的スポーツであるこの格闘技を、映画という作り物の上で再現するには、相当な工夫が要る。映画監督になるような世代の人なら誰もがそれを理解しているから、安直な実写映画が生まれにくいのではないかと想像する。

弱気な優等生ユウキ(高良健吾)は、ワルに絡まれたところを幼馴染のカブ(市原隼人)に助けられる。カブは勉強は苦手だったがケンカはめっぽう強く、高校生となった今では気鋭の天才ボクサーとして活躍していた。そんなカブに誘われ、やがてユウキもボクシングを始めることに。

その後の展開はどこかで見たようなパターンで物語重視派には物足りないが、青春の挫折を市原隼人が切ない演技で再現しており、大いに共感を誘う。形を変えてどこにでもある思い、友情とライバル心の葛藤に悩む男同士ならではの関係性を、穏やかなこの監督の視線で味わうのは心地よい。

55点
技巧はあれど、成功するとは限らず

「アリス・イン・ワンダーランド」でティム・バートン監督とジョニー・デップが7度目のタッグを組んだように、映画界にはうまの合うコンビというものがある。本人同士の相性だったり、興行面での有利であったりと理由はさまざまだが、『シャッター アイランド』が4回目の顔合わせとなるレオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシ監督も、そうした相思相愛カップルのひとつだろう。

舞台は1950年代、ボストン沖の孤島にある精神病院から一人の女性患者が失踪した。捜査のため相棒(マーク・ラファロ)と島に渡った連邦保安官(L・ディカプリオ)だが、悪天候とどこか異様な職員たちに翻弄され、一向に捜査は進展しない。

原作は結末が袋とじという、典型的な謎解きミステリ。作品のテーマは……これは結末に言及しないと説明しにくいので省略。ただ、それがスコセッシ向きであることは間違いない。

55点
ディズニーが本気で送るネズミ映画

前代未聞の欠陥商品が多数登場するこのコメディー映画の後半を、決して笑ってみることはできないであろう。──世界でただ一人、トヨタ社長だけは。

遺伝子操作で生まれたスーパーモルモットを、ベン博士(ザック・ガリフィナーキス)が厳しい訓練で育て上げたFBIのエリート特殊スパイ部隊「G-FORCE」。人間では不可能な潜入捜査をその小さな体で成し遂げる彼らだったが、FBI上層部からは誤解され、部隊の解散を命じられる。捕獲寸前のところを逃げ出したモルモットたちは、なんとか手柄を上げて再起したいと考えるが……。

子供向けの3D実写(とCGアニメの融合)映画だが、こんなファミリームービーでもちゃんといまどきのアメリカ映画のポイントを押さえているあたりが面白い。

55点
最後は暴力にものをいわせる豪快なホームズ映画

原作者アーサー・コナン・ドイルが19世紀に作り出した名探偵シャーロック・ホームズは、実写映画からテレビドラマ、はては犬アニメまで、何度も映像化されてきた。ミステリファンならずともその知名度は絶大で、彼が住んでいるベーカー街221B宛てに手紙を出せば、今でもちゃんと届くなどと言われている。本作はその、ドイルの原作に忠実な最新の実写映画化である。

19世紀末のロンドン。儀式めいた手口で女性が殺される難事件を探偵のホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)は、持ち前の直観力と行動力で一気に解決に導く。しかし黒幕のブラックウッド卿(マーク・ストロング)が残したなぞめいた言葉とさらなる大事件が、のちに彼と助手のワトソン(ジュード・ロウ)を悩ますことに。

たしかに原作のホームズはヤク中の元ボクサーであるが、それをロバート・ダウニー・Jrに演じさせて「原作に忠実」とは、さすがガイ・リッチー監督は冗談のわかる男である。

55点
メキシコを舞台に

ワールドカップ南ア大会も近いし、ここらでサッカー映画でも。──というわけで(もないだろうが)登場したのが『ルドandクルシ』。ノー天気な明るさに満ちたこのハートフルコメディは、しかしメキシコ映画界の誇る才能たちが本気で作った入魂の一本。

バナナ園で働く兄弟ベト(ディエゴ・ルナ)とタト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、たまたま出会ったスカウトマンの目にとまり、プロサッカー選手としてデビューする。あれよあれよと人気も急上昇、暮らしもどんどん豊かになっていくが……。

この映画、新鋭カルロス・キュアロン監督を周りで支えるメンバーがすごい。実兄のアルフォンソ・キュアロン(「トゥモロー・ワールド」監督)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(「バベル」監督)、ギレルモ・デル・トロ(「パンズ・ラビリンス」監督)など早々たるメンバーが製作として名を連ねている。

55点
ルームシェアする若者たちの、どこか異質な関係

日本の都市部の家賃は世界的にみても高額だが、欧米のようにルームシェアが普及することはあまり無い。間取りや国民気質の問題もあるが、不動産関連の慣例や契約が案外ガチガチで、居住者ががんじがらめにされているのも理由のひとつだろう。

映画会社に勤める伊原(藤原竜也)は、売れないイラストレーターの未来(香里奈)、大学生の良介(小出恵介)、人気俳優のカノジョで無職の琴美(貫地谷しほり)ら3人を自らのマンションに住まわせ、共同生活を送っていた。どこか上っ面だけのつきあいながら、バランスの取れた関係を保っていた彼らの前に、あるとき男娼を自称するサトル(林遣都)が現れる。

ミステリ要素のあるドラマで、テレビで流れる近所の連続暴行事件のニュースが、なにやら不穏な空気を演出する。出てくる連中は、本人理解のためにもっとも重要な「本音・本性」を、心の闇の中に隠している様子。一緒に暮らしていながらすべてをさらけ出すわけではない、見ている側はどうにも居心地の悪いコミュニティを、狭いマンション内で形成している。

55点
バレンタインデー、およびカップル専用

誰にでも、憎らしい奴というのはいるものである。その悪意は、ときに凶悪な事件となって社会を不安定化させ、人々を震撼させる。よって社会人ともなれば、いかに相手を憎んでいても、それを顔に出さぬよう我慢して生きるのが当然である。

だがどうしても許せない相手がいた場合、その相手が運良くシングルであったならば、恋愛群像劇『バレンタインデー』のチケットを買って渡すといい。

舞台はロサンゼルス、バレンタインデーの朝。最愛の恋人(ジェシカ・アルバ)にプロポーズを受けてもらった花屋のオーナー、リード(アシュトン・カッチャー)は大喜び。一年で一番忙しいこの日も、誰より幸せな気分で訪れるお客さんたちに笑顔を振りまいていた。そんな彼の周りには、たくさんの愛に悩む人々がいて……。

55点
ペネロペ・クルスの脱ぎっぷりは健在

ゲイながら巨乳大好きなスペインの巨匠ペドロ・アルモドバルは、この最新作でもお気に入りのペネロペ・クルスの胸の谷間を追い掛け回す。『抱擁のかけら』は、そんな罪作りなおっぱいの物語である。

かつて優れた映画監督だったマテオ・ブランコ(ルイス・オマール)は、いまや盲目となりハリー・ケインと名乗っていた。彼はなぜ光を失ったのか。なぜ本名を捨てたのだろうか。その謎の謎は、14年前の映画撮影現場で、彼が愛をささげたレナ(ペネロペ・クルス)という女性が握っていた。マテオは、盲目の自分に新作を依頼しにきた怪しげな若者(ルーベン・オチャンディアーノ)の訪問を契機に、レナとの過去を振り返る……。

「罪作りなおっぱい」の意味は見ればわかるので割愛するが、相変わらずこの監督の映画はユニークなつくりになっている。

55点
飛び出す濡れ場は見ごたえあり

『完全なる飼育』は日本映画界の至宝というべき純愛シリーズだが、ここしばらくの不況下で新作が途切れた状態であった。

だが、名作「バトル・ロワイアル II〜鎮魂歌(レクイエム)〜」(03年)の深作健太監督がついにやってくれた。「アバター」に代表される立体映画ブームの勃発により、その最新作『完全なる飼育 メイド、for you』は、世界初の3Dおっぱいが堪能できる超絶体験映画として登場したのだ。

秋葉原のメイドカフェで働く少女(亜矢乃)は、仕事で嫌な思いをした日、出待ちしていたファンの椛島(柳浩太郎)を思わずじゃけんにしてしまう。そのまま二人はもみあいになり、打ち所悪く失神した彼女を、椛島は自分が働く近所のネットカフェの個室に連れ帰ってしまう。

55点
ヒース・レジャーの遺作

「ダークナイト」撮影後に急逝したヒース・レジャーが最後に撮影していたのがこの『Dr.パルナサスの鏡』。主演俳優が事故死するなどと、場合によってはそのままお蔵入りになりかねない大事件に遭遇しながら、本作は何とか完成した。ジョニー・デップらヒースの親友たちが彼の役を引き継ぎ、テリー・ギリアム監督もそれに合わせて内容を変更したからである。役を引き継いだ3人が、それぞれのギャラを当時2歳のヒースの娘に寄贈したという美談も有名である。

現代のロンドン。パルナサス博士(クリストファー・プラマー)を座長とする旅芸人一座のウリは、本物の別世界へとつながる鏡。そこに入る人の心により、鏡の中の世界は鮮やかな変化を見せるのだった。一座はあるとき、なぞめいた青年トニー(ヒース・レジャー)と出会うが、この出来事が彼らの運命を大きく変えることに。

鏡の中の世界は、まさにテリー・ギリアムワールドで、本作最大の見所。よくこんなものを思いつくなと思わせる、不思議なファンタジー世界の具現化には、誰もが驚かされるに違いない。と同時に、監督のファンにとってはその完成度の高さに喜びの声をあげる事になるだろう。

55点
個別の動きは素晴らしいが……

『マッハ!』(03年)で世界のアクション映画ファンに衝撃を与えたトニー・ジャーも、気づいてみればはや33歳。類まれなる運動能力も、ほうっておけば陰りが見えだす年齢である。

だから──というわけでもなかろうが、出世作の続編『マッハ!弐』で彼は、初の監督にチャレンジした。

15世紀半ばのタイ。山賊一味に育てられたティン(トニー・ジャー)は、あらゆる格闘技で突出した才能を見せ、やがてリーダーとして皆を率いるほどに成長する。だが彼には、そんな大任の前にやるべき復讐があった。

55点
霞のような敵と戦っているようなもの

マイケル・ムーア監督が「反資本主義!」を叫ぶ最新作『キャピタリズム マネーは踊る』の制作中、偶然にも例の金融危機が起きた。ムーアはそのとき内心しめた、と思ったという。自ら選んだ題材のタイムリーさを確信したというわけだ。

だが、残念ながら彼の認識は間違っていた。

タイムリーどころの騒ぎではないのだ。そのとき起きた出来事の真の意味は、「現実が映画を追い越した」すなわち「このネタはとっくに過去のものとなりつつある」ということであった。だから彼は喜ぶどころか、焦るべきだった。完成・公開がもっと早かったならば、この映画における彼の主張がこれほど陳腐にみえることなどなかっただろう。つくづく残念である。

55点
出てくる韓国人は天然のコメディスター

今年の韓国映画界最大のニュースをあげろといわれたら、間違いなくこの作品のお化けヒットということになるだろう。

小規模公開の地味なドキュメンタリー映画なのだが、瞬く間に口コミで評判が広がり、やがてあらゆる話題作、大作をうちやぶりついに興行成績1位に。最終的に300万人が見たというのだから尋常ではない。これは人口比率でいえば、日本における「ロード・オブ・ザ・リング」以上の特大ヒットだ。まったくもって、韓国人の好みはよくわからない。

で、どんな内容かというと、まず主人公は韓国の田舎に住む老夫婦。爺さん(79歳)の方は長年、一頭の牛とともに昔ながらの非機械化農業をやっている。通常、牛というのは寿命が15年だそうだが、この爺さんの牛はもう40年も生きているというからすごい。映画はこの牛と爺さんの奇妙な友情(愛情?)と、婆さんとの三角関係を淡々と追いかける。

55点
上野樹里&玉木宏は最高に面白い

映画「踊る大捜査線」が邦画史上に残る大ヒットを記録したので誤解している人が多いが、フジテレビはテレビドラマの映画化というものに、それほど熱心ではない。ちなみにその反対はTBSやテレビ朝日。彼らに比べればフジは、オリジナル脚本に力を入れるなど、きわめてまっとうな映画作りに力を注いできた。だが残念ながら彼らの勇気ある挑戦は、(われわれ批評家の責任でもあるが)人々に浸透せず、興収面では低調に終わった。

だから、というわけでもなかろうが、2010年のお正月シーズンに彼らは大ヒットテレビドラマ『のだめカンタービレ』の映画版をもってきた。内容は、のだめと千秋の恋の結末を描く真の完結編。二部構成の映画として、まずはその前編が公開される。

指揮者として認められた千秋(玉木宏)は、名門ルー・マルレ・オーケストラの常任指揮者に引き抜かれる。ところがその実態は、経営難でベテラン奏者がごっそり抜け、残ったものにも覇気がなく、皆バイトで生計を立てるほかないダメっぷり。公演まで日がなく焦る千秋は、のだめこと野田恵(上野樹里)にチェレスタ(鍵盤付きの打楽器の一種)の演奏を頼む。愛する千秋との初競演に、一人浮かれるのだめだが、団員たちの演奏はまるで揃う気配がなく……。

55点
アニメのレベルは高いのだが

古典を含む文学作品というものは、そうそう爆発的に売れるものではない。誰だってエンタテイメントの方が楽しいのだから当たり前だが、それを覆し、出版業界を驚かせた事件が2007年に起こった。それは、週刊少年ジャンプの人気漫画家たちに、そうした小説の表紙を描いてもらったところバカ売れしたというものだ。

太宰治の『人間失格』を、『DEATH NOTE』の主人公ライト風に描いた小畑健による表紙を覚えている人も多いだろう。有名な古典は、きっかけさえあれば読みたいと思っている人が多く、文字通り表紙買いを狙う戦略が有効であることを示した形だ。

このインパクトは、やがて今年2009年の秋からはじまったマッドハウス制作によるテレビアニメ・青い文学シリーズにつながる。『人間失格 ディレクターズカット版』は、その中で放映された全4話の『人間失格』を再編集。冒頭に主人公の声を演じた堺雅人による語りと、本編に数カットの新シーンを加えた劇場版である。

55点
不況になると登場するヒーロー

景気が悪くなり、世の中が殺伐としてくると、昔の犯罪者を肯定的に描く映画作品が作られる。かつては「社会の敵」といわれたほどの凶悪犯でも、手口が稚拙だったり、カタギに手を出さない律儀なところがあったりと、今どきの心無い連中に比べれば妙にのどかだ。人々はそれを見て、古きよき時代を懐かしんだりする。

仲間を決して裏切らず、女に優しく、一般客の金は奪わない。大恐慌に苦しむアメリカ国民は、そんな銀行強盗犯ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)のニュースを痛快にすら感じていた。ジョンは美しい女性ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に出会い、永遠の愛を誓い合うが、彼らの前には国民にジョンの逮捕を宣言したFBI長官J・エドガー・フーバー(ビリー・クラダップ)とメルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)ら、厳しい捜査の手が迫っていた。

ジョン・デリンジャーを描いた映画には、名脚本家であり監督のジョン・ミリアスによるものをはじめ、何本かあるが、そのジョン・ミリアス版が製作された73年ごろのアメリカも不景気だった。デリンジャー自身、不況時代のヒーローであるから、そうした企画が通りやすくなるのも当然か。

55点
今の段階ではこれが限界か

09年6月25日に突然この世を去ったスーパースター、マイケル・ジャクソン最後の姿を見られるということで、本作の前売りチケットは爆発的な売れ行きだったと聞く。諸般の事情で期間限定上映となったため、一部上映館では常識はずれの高回転体勢でいよいよ本日から公開となったわけだが、プレス向け試写会も今日、上映初日という異例の日程で行われた。(一般上映は夜から、プレス試写は昼間だったが)

内容は、彼の死で幻と消えたロンドン公演のリハーサル模様が中心。スリラーの3D版新作の映像や、MJを尊敬し、オーディションを勝ち抜いたバックダンサーらのインタビューも織り込まれるが、量的にもほとんどはマイケルが私用に撮影させた練習風景、との触れ込み。

貴重な映像には違いないし、あの大スターが気さくに周りを励まし、前向きなメッセージを連発して団結力の中心となっている様子はたいへん感動的。ただ、やはり肝心のパフォーマンスは「練習」である以上、迫力不足は否めない。どんな歌手だって、合わせの段階で本気を出すものなどいない。本作を見る人は、わかっちゃいるけど忘れがちなこの事実を認識し、これはあくまでライブのメイキング、と割り切って見るとよい。そうでないとフラストレーションがたまる。

55点
究極の投資ははたして幸福を生むのか?

昨今は投資ブーム、というより、FXだの株式投資といったものはもうすっかり人々の生活になじんでいる。正社員以上の人ならば、誰でも何かしら行っているのではと思うほどだ。私の周りでも、ホリエモンのせいですっかり資金を溶かした人から、億単位の儲けを出している人まで、様々な話が聞こえてくる。

そんな時代に森田芳光監督(『椿三十郎』ほか)は、ユニークなオリジナル作品を送り出した。『わたし出すわ』は彼の13年ぶりの、原作ものではない映画作品だが、そのテーマはずばり「お金の使い方」だ。

山吹摩耶(小雪)は、故郷に戻ると次々と昔の同級生に再会する。高校以来、変わらぬ町と友情。そんなクラスメートたちの「夢」や「将来」の話を聞きながら、最後に彼女は言う、「私がそのお金、だしてあげる」。

55点
タイムトラベラーとの恋はこうなる?

公開したばかりの『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』を私はオススメにしたが、幸い見た人たちの満足度も高かったようだ。この『きみがぼくを見つけた日』も同じくタイムトラベルものだが、あのシリーズからサスペンス色を消し、甘いラブストーリー仕立てにしたような一品。

ヘンリー(エリック・バナ)の前に、クレア(レイチェル・マクアダムス)と名乗る二十歳ほどの女性が姿を現した。なぜか自分に対しラブラブ状態のクレアを前に、わけもわからぬままとりあえず部屋につれこんだヘンリーは、やがて驚くべき告白を受ける。彼女ははるか昔、幼い頃から何度もヘンリーと会っており、ずっと憧れていたというのだ。

ヘンリーさんが忘れんぼうというわけではもちろんない。いくらなんでもレイチェル・マクアダムス(年齢やや不詳)のような美人を口説いた経験を忘れるはずはない。じつはヘンリーの正体はタイムトラベラー。しかし時間移動を制御することはできない。つまり、ヘンリーは将来、過去にタイムスリップして、その時代のクレアと出会う運命ということだ。

55点
リアルな人間破壊シーンを最新デジタル3Dで

『ファイナル・デッドサーキット 3D』のメインイメージをみて、私は思わず噴き出した。エスカレーターの上で絶叫しているカップルの写真なのだが、なぜか「手すり」がない。一体全体なにがおきればこんな状況になるのか。これはさぞぶっ飛んだ「死に様」を見られるぞと、期待を高め試写室へと向かった。

恋人同士のニック(ボビー・カンポ)とローリ(シャンテル・ヴァンサンテン)は、サーキット場でレースを観戦していた。観客や、同行した友人らのボルテージがあがったころ、ニックはおそろしい「光景」を見る。車はクラッシュし、客席を巻きこんだ大惨事は、彼と友人らの命を残酷に奪う。あまりのリアルさにこれは予知夢だと直感した彼は、急ぎレース場を後にし、数名の命を救ったかに見えたが……。

立体メガネでこれを見る観客は、基本的に日本語吹き替え版を楽しむことになる。洋画を映画館で吹き替えで見るのは少々違和感がある上、声を当てるのが例によって知名度重視の有名人キャストなので、作品の魅力はいくらかスポイルされる。

55点
フランスらしさを感じるが、もう少し大盛で食べたい

このシリーズは、実際に動ける2人の男を主演に、そのリアルアクションを楽しもうという明快なコンセプトで作られている。核となるのはスパルタンな雰囲気のカンフーと、ハイレベルなパルクール。肉体ひとつで敵と戦い、障害物を乗り越える。彼らの非常識な身体能力に驚愕する娯楽ムービーだ。

2013年、パリ。前作で主人公らが交わした約束と違い、バンリュー13地区はいまだ無法地帯として塀で囲まれている。そんな中、内部で警官射殺事件が発生。政府はついにこの地区の一掃を開始する。だが事件に裏があると嗅ぎ取ったレイト(ダヴィッド・ベル)は、親友で潜入捜査官のダミアン(シリル・ラファエリ)と再び手を組み、真相解明に挑む。

前作は、「やってることはすごいのにカメラがせわしなく動きすぎて失敗」の典型例。本作はそれより落ち着いた、素直な撮り方がなされており安定感がある。ただし、なぜかアクションの純度は下がった印象。この撮り方で前作並のアクションをやったら良かったのだが……。

55点
木村のバカ美人がいい

最初に一番大事なことを書いておく。『キラー・ヴァージンロード』はハイテンションなコメディなので、冒頭のミュージカルシーンで一気に気持ちの乗せないとダメだ。映画館に入るまで、たとえ武蔵野線の陰気な満員電車にうんざりしていたとしても、常磐線のじべたに座る女子高生を見て嘆いていたとしてもすべて忘れ、このノーテンキな空気に乗り切らないと、その後の時間がもったいない。

見た目はそこそこだが、なぜかさえない人生を送ってきたOLひろ子(上野樹里)。そんな不運の集大成か、ある日ひょんな事からアパートの大家を殺害してしまう。おりしも明日はようやくめぐって来た幸福=結婚式。彼女は熟考?の結果、死体をスーツケースにいれ、富士の樹海に捨てようと車を走らせる。

さて、この後ヒロインは自殺願望はあれど死に切れない、薄幸の美女(木村佳乃)と出会う。この二人の珍道中に笑う、という作品。

55点
小栗の好演が光るが

芥川龍之介の『藪の中』は、いうまでもなくリドルストーリーの傑作で、長い間ミステリファンを魅了してきた。リドルストーリーとは、結末がはっきりしない、させない物語のことで、本作の場合も、真相はこうだ、いやこいつが嘘を言っているんだと、喧々諤々の議論を読者間に巻き起こしつつ今に至る。

原作は、幾人かの証言者に同じ事件を語らせ、その矛盾をどう解釈するか読者に問うテクニカルな構成。知的遊戯たるミステリの真髄を味わえる短編小説だ。黒澤明が『羅生門』として映画化し、ハリウッドの映画作家に大きな影響を与えたのも有名な話。

同じ原作を実写化した『TAJOMARU』は、ある意味黒澤版よりオリジナルに近く、また遠い。あえて説明するなら、原作の内容をすべて取り込みながらも世界観をぐーんと広げ、その周辺要素を描くことでさらなるエンタテイメントの高みに到達しようとしたチャレンジである。

55点
台湾で高く評価された青春ドラマ

青春映画というジャンルは、万国共通に作ることもできるがその逆もできる。エピソードに時代性・地域性を加えるほど、深い領域まで観客に共感してもらうことが可能だが、作品としては後者に近づく。広く浅くか、狭く深くか。『九月に降る風』は比較的後者、ドメスティックな台湾人アラサー男子向けの青春ドラマだ。

96年、台湾球界がスキャンダルに揺れる事になる時代。野球好きの高校3年生タン(チャン・チエ)は、不良の烙印を押されながらも、かけがえのない仲間たちと遊びまわる幸せな日々をすごしている。グループのリーダー、イェン(リディアン・ヴォーン)とは親友同士だったが、浮気っぽい彼の態度に悩む恋人ユン(ジェニファー・チュウ)の相談に乗るうち、恋心が芽生えていく。

その年の台湾映画界で最高の評価を得た青春ムービーは、時代を表す球界の大事件をうまく物語に絡めつつ、なつかしエピソードを畳み掛ける構成。

55点
80代の老人が強盗に転職

ハンガリー映画の小品『人生に乾杯!』は、彼らの国で高齢者が抱える問題をチクリと風刺する作品だが、奇しくも我々日本人にとっても共感できる内容になっている。

かつて50年代、共産党員の運転手エミル(エミル・ケレシュ)が、ある貴族の館の収用に立ち会った際、運命的に出会った伯爵令嬢のヘディ(テリ・フェルディ)。身分の差を乗り越え一緒になった二人だが、政治制度の大転換や東欧革命を経て、いまや貧しい年金暮らしでさえ破綻寸前であった。やがて思い出の品を借金のかたに取られたエミルは、ついに郵便局強盗を決意する。

81歳の老人が強盗せざるをえないとは、考えてみれば恐ろしいほどに絶望的な状況である。……が、だからこそ、それはコミカルなタッチで描かれ、夫婦の逃亡劇はある種のロードムービー的な面白さをかもし出す。

55点
ダンボールでお城を作ってしまうとは

古波津陽(こはつよう)監督が、わずか300万円で作った本作のオリジナルは、意外なことにアメリカ(サンフェルナンドバレー国際映画祭)で高く評価された。そこで、もっとお金をかければよくなるはず、と考えた日本のプロデューサーの尽力により、このたび製作費3億円でリメイクされることになった。まさに、映画界のわらしべ長者である。

ある町の過疎化対策で、二派が対立していた。城跡に戦国の城を再建して観光名所にしようとする勢力と、工場誘致を唱える一派。そんなとき、遺跡から戦国武将の霊が復活、さえない公務員(片岡愛之助・2役)に乗り移る。城を完成できなかった無念をはらしたいと語る武将は、なんと住民らに「築城せよ」と命じるのだった。

その異様な風貌に半ば気おされ、大学で建築を学ぶ女子学生ナツキ(海老瀬はな)をリーダーに、住民たちの築城計画が開始。だが、さまざまな困難を前に彼らが出した結論は「ダンボールで城をつくること」だった。

55点
精神病をテーマにしたドキュメンタリー

いきなり、超ブルーな女性のカウンセリングの場面から始まる。見た瞬間、こりゃヤバイ、放っておくと死ぬぞと思わせるような顔つきをしている。聞くと、昨日オーバードーズ(致死量を超えるような薬の大量摂取)したばかりという。なるほど、これが実際死の淵まで行ってきたばかりの顔か、と観客は納得する。

『精神』は、海外の映画祭で高い評価を受けた、想田和弘監督によるドキュメンタリー。鬱病や統合失調症といった、現代人の多くが罹患する心の病、その患者や医療従事者に迫る、タブーだらけの内容である。

冒頭の女性は、自殺未遂の原因を延々と語り続けるが、それを聞いていると観客はきっとこう思う。「こいつは間違いなく、何度も同じ事を繰り返しているはずだ」と。それは、救いようの無い絶望感をわれわれにもたらす。のっけからキツい。

55点
普通すぎてガッカリ

ここ数週間の興行予定をみると、「ヤッターマン」「釣りキチ三平」「昴」そして今週末のドラゴンボールと、春休みらしいコミック、アニメの実写化作品が百花繚乱の様相を呈している。

どれもこれも、よくまあ企画が通ったなと感心せざるをえない微妙なラインナップだが、中でももっとも期待されているのはこの『DRAGONBALL EVOLUTION』ではないだろうか。誰に? もちろん、ダメ映画フリークに、だ。

祖父の悟飯(ランダル・ダク・キム)からドラゴンボールのひとつを受け取った高校生・孫悟空(ジャスティン・チャットウィン)。世界を滅ぼすピッコロ大魔王(ジェームズ・マースターズ)の復活を受け、彼は出会ったばかりの発明好きの女の子ブルマ(エミー・ロッサム)と共に、他の六つのボールと鍵を握る亀仙人(チョウ・ユンファ)を探す旅に出る。

55点
成海璃子にコメディは似合わないが

何事も経験、習うより慣れろというが、演劇界から映画に殴り込みをかけてきたケラリーノ・サンドロヴィッチ監督も、この3作目(劇場公開用映画として)で大きな手ごたえを感じとったようだ。

人気崖っぷちのグラビアアイドル・アヤメ(成海璃子)は、コンビニでの衝動的な万引きを見つかってしまう。そのもみ消しと引き換えに、一日警察署長をやらされるが、折り悪く重大事件が発生。本来お飾りのはずのアヤメが、なぜか捜査の指揮をとらされるハメになる。

単純なギャグ映画のあらすじに見えるかもしれないが、この脚本は実のところかなり凝っており、時系列は飛ぶわ、伏線も張ってあるわと、なかなか本格的。もっともそれは副菜のようなもの。個人的にはのっけからかまされる、「手段でなく目的としての笑い」(監督談)をこそ、大いに堪能してほしいと思う。

55点
自閉症の妹を25年間も撮り続けた監督

自閉症は、日本だけでも数十万〜百万単位の患者がいるといわれており、決して珍しい障害ではない。だが、たとえ家族に自閉症患者がいたとしても、その成長をビデオカメラで記録し、映画にして発表してしまう人はまずいまい。ところがフランスで演技派として知られる人気女優、サンドリーヌ・ボネールはそれをやった。

カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した話題作『彼女の名はサビーヌ』は、彼女が自閉症の妹サビーヌの日常と成長を25年間にわたって記録したドキュメンタリー。

映画のチラシに写っている若いころのサビーヌと、現在の彼女の外見の差に、まず観客は強い衝撃を受ける。いったいなぜこんな事になってしまったのか、その疑問にサンドリーヌ・ボネール監督はゆっくりと答えていく。

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