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2166件中 1101~1150件 を表示しています。
60点
イ・ビョンホンが日本の忍者を好演

『G.I.ジョー』は、テレビ番組で流される紹介映像や予告編を見てから本編を見たとき、「このシーン、そういえば前に見た気がする」感を味わえる典型的な映画である。

ナノテクを駆使して作られた究極のウィルス兵器を輸送中のNATO軍が襲われた。しかも謎の襲撃軍は、デューク(チャニング・テイタム)、リップ・コード(マーロン・ウェイアンズ)ら優秀な隊員らの奮闘を一息で吹き飛ばすかのような強力な装備を持っていた。やがて絶体絶命のNATO軍の前に、見たこともない別の兵士が現れる。

私の場合は、試写などで本編をみてから冒頭に書いたような映画紹介番組等を見ているわけだが、これが笑ってしまうほどにネタバレで参る。勘のいい人なら、そのコーナーを見るだけで、最初から最後までストーリーを言い当てられるほどだろう。あわせて映像的な見せ場もほぼ紹介されているので、映画館に行く必要はほとんど感じられない。最近のは、見ずとも記事をかけるよ、などと映画専門でないライターに言われても、反論すらできないのが情けない。

60点
男子禁制の女の子ムービー

いつからか、ちょっと微妙なタレントが女性誌でヌードになる事例が増えてきた。「オンナが憧れる自立した姿をアピール」「男に見てほしくて裸になっているわけじゃない」等の思いがそこには感じられる。

映画『そんな彼なら捨てちゃえば?』も100パーセント女性向けの作品であるが、その中には当代きっての美人女優二人の激しいラブシーンが存在する。もちろん、それは登場人物のオンナゴコロを体を張って表現した、必要不可欠な演出だ。

この二つに共通する真理は、女性の観客の前で表現するときの女優、タレントは、女である前に一人の人間としての魅力を振りまいているということ。そして、どこで彼女らが脱ごうと男たちはエロい目で見るということである。

60点
よりにもよって、こんなトコからやりなおすの?!

学校の子供たちが、成長後に開けるいわゆるタイムカプセル。連中が入れるものといったら、ガラクタだのよげんの書だの、たいていろくでもない物と相場が決まっているが、『ノウイング』に出てくる少女が入れたものは格別だ。なんと将来起きる災害・大事故の類を網羅した、ノストラダムスもびっくりの暗号表だったのだ。

マサチューセッツ工科大学に勤める宇宙物理学者ジョン(ニコラス・ケイジ)の息子(チャンドラー・カンタベリー)が、小学校の記念式典で50年前に埋められたタイムカプセルの中から、一枚の手紙をもってきた。無意味な数字の羅列のように見えるそれは、しかしジョンのインスピレーションを刺激し、隠された予言を彼に伝えることになる。

偶然にも、主人公が天下のMITの教授だったおかげで、やがてとんでもない内容があきらかになる。この前半のテンポよさ、面白さは上々。スケールがどんどん大きくなっていく展開にもワクワクする。

60点
苦労したことはわかるが、そればかり前面に出すのはどうか

日本地図最後の空白地を埋めるため、命がけの挑戦をした男たちの実話ドラマ。『劔岳 点の記』は、かように魅力的な題材であるが、初監督作品特有の限界が見える、惜しい一品であった。

明治39年、ロシアの南下に備えるため、日本陸軍は国内地図最後の空白地、劔岳の測量を決定する。その任を命じられた参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎(浅野忠信)とそのチームは、現地民で山に詳しい宇治長次郎(香川照之)を頼りに、この未踏峰に挑む。一方、日本山岳会のリーダー小鳥烏水(仲村トオル)もこの山を狙っており、あたかも二人の登頂対決のごとき構図となってゆく。

海外の最新装備でクレバーに攻める民間チームと、現地ガイドの豊富な経験を頼りに根性で進む軍チーム。ドラマに乏しい本作のストーリーに花を添える設定だ。ちなみにこれは脚色で、史実では二者の登頂時期は微妙にずれている。

60点
ロマンチック戦争ムービー

『真夏のオリオン』は、戦後ニッポンらしく反戦イデオロギーの人ばかり出てくるが、なかなか力の入った潜水艦ムービーである。

第二次大戦末期、米軍の本土上陸を防ぐため、日本海軍は最後の防衛線として残存する潜水艦を沖縄沖に展開していた。艦長・倉本(玉木宏)のもと、意気盛んなイ-77号クルーも、数々の修羅場を潜り抜け、いまだ健在であった。やがて彼らは、米海軍の誇る歴戦の勇士マイク・スチュワート率いる駆逐艦パーシバルと遭遇。双方一歩も引かぬ、壮絶な戦いが開始された。

50年もたって、潜水艦映画の金字塔『眼下の敵』(57年、米)の後追いをやっているというのも切ない話だが、一応最新映画だから戦闘シーンはこなれていて、それなりに盛り上がる。

60点
ただし出演者に興味を持っただけの人にはまったくすすめない

先日書き下ろし新作「1Q84」が発売されたばかりの村上春樹。その代表作「ノルウェイの森」の待望の映画化企画が進行中だが、松山ケンイチ、菊地凛子といったキャストに加え、監督に決定したのがトラン・アン・ユン。ベトナム出身、フランスで活躍中の監督だが、その最新作が『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』。木村拓哉、イ・ビョンホン、ジョシュ・ハートネット……日米韓のハンサム俳優勢ぞろいの話題作だ。

刑事時代のトラウマをかかえた私立探偵(ジョシュ・ハートネット)は、ある大富豪から失踪した息子シタオ(木村拓哉)の捜索依頼を受ける。LAからフィリピン、香港と探し回る中、やがてマフィアの若きボス(イ・ビョンホン)もシタオを探している事が明らかになる。

キムタクをさがせ! という、この表面的なストーリーにさほどの意味はない。私立探偵は到底マジメに探しているようには思えないし、そもそも捜索のセオリーを監督らが取材した形跡もない。頭で考えただけの、とってつけたような筋書き、キャラクター設定にすぎない。そこを見ていてもイラつくだけである。

60点
≪オジサン向け冒険映画≫

いかにもオトコが考えたような初恋の人キャラクターを演じる清水美沙が、妙にエロかわいい本作。演じる本人も、監督も、「リアリティより観客受け」をよく理解している事もあり、えらく魅力的なヒロインとなった。ただし、女性にとってどう見えるかは不明だが。

東京でIT企業を経営する泊哲郎(石黒賢)は、久しぶりに北海道江差に帰郷した。東京の暮らしに疲れ果てていたところに、再会した同級生・杉山由紀(清水美沙)の励ましもあり、彼はこのまま地元で少年時代の夢を追いかけることにする。北海道無寄港一周というその目標を、漁師となったかつての友人たちと共に、着々と準備していく。

オヤジのための冒険啓蒙映画であると同時に、ちょっぴり社会派なテーマも含んでいる。それは、主人公の「真の目的」にかかわる事だが、北方領土問題と向き合うそのクライマックスは、この手の小規模な作品にしては迫力がある。

60点
タブーだらけのタイ製リアルアクション

試写会でこれを見終わった後、熱心な映画会社のお兄さんが追いかけてきて感想を聞いてきた。それに対し私は「申し訳ないけどこれは(マスコミでは)紹介できないよ」と回答した。

2時間を6時間ほどに感じさせるような、時空を捻じ曲げるパワーを持つ駄作の場合も似たようなことを言う場合があるが、本作はそれには当たらない。むしろ、世界的に見てもすぐれた部類に入るアクション映画なのに、だ。

日本のヤクザ(阿部寛)とタイ人の母を持つゼン(ジージャー)。彼女は、アクション映画で一度見た動きはすぐに体得してしまう動物的本能を持ち、その結果、若い女の子とは思えぬ身体能力を誇っていた。そんなある日、母親が白血病で入院。多額の治療費にあてるため、ゼンはかつて母が金を貸した先を尋ね、回収して回ることにする。

60点
ハリウッドマッチョ対決

かねてから映画界に興味津々のK1の番長、ジェロム・レ・バンナは、今回なんと数少ないマッチョスターの生き残り、ヴィン・ディーゼルの主演作で共演し、格闘シーンまで演じるという話題性を提供してくれた。

荒廃した近未来のセルビア。金で何でも運ぶ凄腕の傭兵トーロップ(ヴィン・ディーゼル)は、モンゴルの修道院からアメリカのニューヨークまで、一人の娘(メラニー・ティエリー)を送り届ける仕事を依頼される。保護者としてついてきたシスター・レベッカ(ミシェル・ヨー)を加え、3人で長い旅に出たトーロップだが、次々と強力な追っ手に襲われる。いったいこの娘の正体はなんなのか。

批評家からも観客からもそっぽを向かれ、米国ではコケてしまった本作だが、退屈しない程度には楽しめるSFアクションとなっている。

60点
チェホンマンとキャシャーンが大暴れする時代劇

各方面に衝撃を与えた『CASSHERN』(04年、日)一作で、紀里谷和明監督が娯楽映画作りのコツを学んでしまったのだとしたら、ある意味日本映画界は貴重な才能を失ったことになるのかもしれない。

本能寺の変を経て、秀吉が天下統一したつかの間の平和。そこでは庶民の人気を集める義賊、石川五右衛門(江口洋介)が活躍していた。あるとき彼は、盗んだ品物の中に奇妙な箱を見つけるが、値打ちなしと判断し捨ててしまう。ところが舎弟格の猿飛佐助(ゴリ)からの情報で、それが重要なものと知り、彼らは再度探しに出かける。

なんと『GOEMON』は驚くべきことに、普通に面白い。監督独特のビジュアルセンスはそのままに、退屈しらずのアクション時代劇として成立している。しかも、キャシャーン並のトンデモな魅力まで兼ね備えているのだから文句なしだ。前作を批判した私としても、これは認めざるを得ない。

60点
加護亜依、サモ・ハン・キンポーと世界に打って出る

何かと世間を騒がせている加護亜依の世界デビュー作となった『カンフーシェフ』は、加護ちゃんやサモ・ハン・キンポーをはじめするキャスト、および主題である料理の魅力を引き出した、なかなか小気味いいアクション作品となった。

陰謀により店を去ることになった名シェフのホアン(サモ・ハン)は、縁のあるレストラン"四海一品"へ身を寄せる。美人姉妹のチン(チェリー・イン)とイン(加護亜依)が必死に守るこの店は、しかし実力ある料理人の不在で経営ピンチに陥っていた。

カンフーと料理と元モー娘。。先行き何も考えていないような組み合わせのノーテンキさが、往年の香港映画を思わせる本作の魅力とマッチしている。

60点
貧乏労働者の生々しい日常

本物のビンボー派遣社員が、自らの生活のすべてを自己撮りした超リアルドキュメンタリー『遭難フリーター』は、見ようによっては最底辺の労働者を勇気付けてくれる。

ただそれは、映画の内容が希望に溢れている、という意味ではまったくない。むしろ逆で、これを見ると、彼らがいかに救いようのない絶望的な状況におかれているか、嫌になるほど実感できる。

普通に働いていても、彼らが中流階層にまで上る可能性はほぼゼロだろう。経済的な面以外で人生の目的を見出せなければ、こうした人々の自殺者は増える一方になるに違いない。

60点
ニクソン大統領の歴史的メディア対決を描く

『ウォッチメン』と合わせ、リチャード・ニクソン大統領関連の映画が、偶然にも同週公開となる。

ニクソン大統領といえば、ベトナム戦争からの撤退や変動為替相場制を取り入れた、歴史に残る数々の政策で知られる。アメリカの歴代大統領の中でも重要な人物であることに疑いはないが、もうひとつのイメージとして「メディアの力に負けた」というものがある。

ケネディとの大統領選では、勝利目前の最終局面で行ったテレビ討論で、白黒テレビに映えないグレースーツとノーメーク、汗っかきの体質のせいで一気に逆転されてしまった。一方、ケネディはプロのスタイリストの助言を取り入れた濃色のスーツや明るいメークで、政治の専門知識の乏しさを補って余りある効果を得ていた。

60点
専門家お墨付きの医療シーンが見所

『チーム・バチスタの栄光』の続編となる本作は、前作と同じ監督、同じメインキャスト、同じムードの作品として作られた。海堂尊の原作では男であるはずの狂言回しのキャラクターを、竹内結子に変更することで、でこぼこ男女ペアの楽しい謎解きモノにした点も、もちろん変わっていない。

だが、このコンセプトが2作目では完全に裏目に出た。

チーム・バチスタの事件から立ち直りつつある東城大学付属病院で、再び事件がおきた。ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)の異名をとる救命救急センター長の速水(堺雅人)が、医療メーカーと癒着し、多額の金銭を享受しているとの内部告発があったのだ。無理やり倫理委員会の委員長に任命されていた女医・田口(竹内結子)は、偶然にもケガで運ばれてきた厚生省の切れ者官僚・白鳥(阿部寛)と共に、再び院内の調査に当たるハメになるのだった。

60点
ナチスドイツの手から逃れ、森に集まったユダヤ人たちの運命

イスラエルによるガザ侵攻で多数の死者が出ている今、『ディファイアンス』のような映画が上映されるのは興味深い。

聖書の出エジプトのエピソードをモチーフにしたこの「ユダヤ人受難もの」は、しかしこれまでの同種の作品とは趣が異なる。ようは過去作品の一部にある、うんざりするような被害者意識のようなものがあまり見受けられないから、そうしたものが苦手な人にもオススメできる。

1941年、ソ連領ベラルーシの森。ここには隣国ポーランドから、ナチスに追われたユダヤ人たちが多数逃げ込み、さまよっていた。自らも家族をドイツ兵に殺されたトゥヴィア(ダニエル・クレイグ)らビエルスキ三兄弟は、こうした同胞を見捨てることができず、彼らを保護しつつ森の奥へと隠れ場を探して進んでいく。だがその数は予想以上に膨れ上がり、トゥヴィアはリーダーとして大量の食料などを調達せねばならなくなる。

60点
ABBAの楽曲を使ったミュージカル映画

日本公開の時期が世界でもどん尻の方、ということもあり、この映画最大の宣伝文句は「ミュージカル映画史上、もっともヒットした作品」ということになっている。わが国でも劇団四季の公演が人気を博しているとおり、原作ミュージカルは様々な国で広く受け入れられている。映画化にかかる期待は大きいものがあったわけだが、結果は予想通りの快進撃といったところだ。

ギリシャの美しい小島、カロカイリ島で小さなリゾートホテルを営むドナ(メリル・ストリープ)は、女手ひとつで育てた一人娘のソフィ(アマンダ・セイフライド)の結婚式を明日に控え、準備に忙しい。一方ソフィは、「バージンロードを父親と歩く」夢をかなえるため、ドナが語ろうとしない父親の正体を調べていた。母親の古い日記からその候補を3人に絞ったソフィは、ドナに内緒でなんと全員を結婚式に招待してしまう。

きらきらと輝くエーゲ海をバックにヒロインが「Honey Honey」を歌いだすと、観客の幸福感はのっけから最高潮。この曲を歌うアマンダ・セイフライドが魅力的な声質で、アレンジもノリがよく、アバのオリジナルを凌駕するほどイイ、と感じさせる。舞台となる架空の島(ロケ地はスコペロス島)の景色がまた、この世のものとは思えぬほど素晴らしい。

60点
『恋空』を超えるケータイ小説がついに映画化

ケータイ小説『赤い糸』は、あの『恋空』よりも面白く、そしてエロシーンが過激だという話を聞いていた。あらすじを聞かせてもらったが、あまりにも色々と無茶が起きるので、途中で爆笑する羽目になった。これは期待できる。

初恋に破れた中学2年生の芽衣(南沢奈央)は、次に優しいアツシ(溝端淳平)と出会った。運命的なつながりを感じた二人は急激に惹かれあう。やがて修学旅行の季節がやってきた。大好きな同級生の仲間たちとの楽しい旅行になるはずだったが、芽衣の不用意な行動が誤解を招き、悲劇が起きてしまう……。

南沢奈央や相手役の(いろいろな意味で)カッコよすぎる少年たちを見ると到底信じられないが、一応中学生のお話である。ただしこんなご時世であるから、原作で話題を呼んだエロ関連はまったくない。

60点
仁科仁美が大胆演技に挑戦した初主演作

仁科亜季子の端正な横顔にかぶさるように、よく似た若い女性が現れる。本作の主演女優、仁科仁美の登場場面は思わせぶりで目を引かれる。二人は劇中と同じく実の母子。娘の仁科仁美にとっては初主演作となる。

女子大生の奈々子(仁科仁美)は7年前、幼い弟が死んだショックからいまだ立ち直れずにいる。そのせいで父母との関係がぎくしゃくしていることを、感受性の豊かな彼女は誰よりも深く理解していた。思い悩む彼女の前に、ある思い出と関わるピエロが現れたときから、止まっていた奈々子の時計が動き出す。

ある若い女性の再生と成長を描く物語。なんといってもヒロインが抱える強烈なトラウマの正体を描く場面が圧巻。具体的には弟のためにお弁当を作るところだが、このシークエンスにおける弟役(嘉数一星)の演技力、劇伴音楽との親和性などは、まれにみる出来映えといえる。

60点
監視カメラの映像を集めた問題作

人は、誰も見ていないところでは予想外のバカをやる。それをのぞき見ると、ときにはコメディ、ときにはエッチな、そしてときには恐怖の犯罪ドラマを味わうことになる。

『LOOK』が始まると、スクリーンに下着の試着室の映像が映し出される。そこにいかにも頭の弱そうな女子高生二人が入ってくると、ためらいもなく服を脱ぎ始め、少々過激なブラやTバックに着替え出す。やがて互いのカラダの品評会が始まり、尻の穴をもっと白くしたいなどと、親が聞いたら2歳くらいから教育をやりなおしたくなるような、どうしようもない会話をし始める。

ここまでで観客はすでに気づいているが、これは姿見の裏側に設置された監視カメラによる盗撮映像。

60点
好きな女との初夜を50年以上待ち続けた男

コロンビアの小説家、ガブリエル・ガルシア=マルケスは、日本の大江健三郎や筒井康隆らを含む世界中の知識人に影響を与えたノーベル賞受賞作家。これまで幾多の誘いを断ってきた彼を、本作の制作会社スタッフは3年間にわたり説得。ついにその代表作『コレラの時代の愛』の映像化に成功した。

1897年、コロンビア。電報配達人フロレンティーノ(ハビエル・バルデム)は、配達先の令嬢フェルミナ(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)に一目ぼれ。熱烈な手紙を契機に、二人は恋に落ちる。ところがそれをよしとせぬ彼女の父親により、二人は離れ離れに。数年後、フェルミナは医師のフベニル(ベンジャミン・ブラット)と結婚。それを知ったフロレンティーノは悲嘆にくれるが、フベニルが死に、再度愛を告白できる日まで彼女を待ち続けることを心に誓う。

この作品のストーリーは、ありそうでありえない、リアルだが荒唐無稽とでもいうべきメインアイデア(50年以上も待ち続ける男)に支えられている。エピソードの多くがマルケス本人や近しい人の体験談を基にしており、それが作り物と切り捨てられない質感を作品に与えているのではないかと言われている。

60点
パンダによる本格カンフーアクション

カンフー映画が大好きなお父さんも、動物好きの女の子も、アニメ好きの少年も、あるいは吹き替え声優のファンたちも、全部まとめてとりこもうという『カンフー・パンダ』は、目論見どおり全米では大ヒットを記録した。

カンフーオタクだが実技は丸っきり素人のパンダ、ポー(声:ジャック・ブラック、山口達也)は、偶然の積み重ねにより、修行者たちが目指す最高峰"龍の戦士"に選ばれてしまう。シーフー老師(声:ダスティン・ホフマン、笹野高史)や弟子の筆頭マスター・タイガー(声:アンジェリーナ・ジョリー、木村佳乃)は不満と不安を感じるが、脱獄した最強最悪の戦士タイ・ラン(声:イアン・マクシェーン、中尾彬)を迎え撃つため、皆でポーの突貫修行を開始する。

ドリームワークスの長編アニメーションとしては、大成功の部類に入る話題作。声の出演には上記のほかジャッキー・チェンやルーシー・リューといった大物が顔をそろえた。そんなわけで字幕版には興味があったのだが、私が見たときは日本語吹き替え版が上映されていた。

60点
男女を越えた仲と思っていた女の子が"オンナ"に見えるとき

『近距離恋愛』は一見よくあるラブコメだが、その内容はいかにもリセッション時代のアメリカらしいもので、大変興味深いものがあった。

遊び人のトム(パトリック・デンプシー)に対し、いつでも誠実なハンナ(ミシェル・モナハン)。性格は対照的だが二人は毎週末ごとに仲良く出かける。学生時代から続き、今では互いの恋愛遍歴まで語り合う、男女を越えた親友同士なのだ。ところがハンナがスコットランドへ長期出張し、あえない日々が続くと、トムは自分が彼女を女性として愛していたことに気づく。だがときすでに遅し、ハンナは出張先で地元の貴族と出会い即婚約、トムの気も知らず結婚式の花嫁付添い人=MADE OF HONOR を頼んでくるのだった。

親友として信頼されているからこそのMOH依頼なわけだが、すでに恋愛感情に変わった男にとってこれは地獄。よりにもよって最愛の女性とどこの馬の骨とも知らぬ男の結婚式を成功させねばならないとは! そんなマヌケな立場に追いやられ、しかし必死に二人の仲を裂こうとする男が滑稽だ。

60点
ファンの熱烈な署名嘆願によりついに日本公開決定

『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』は日本以外でいち早く評判になり、その面白さを知った評論家らが呼びかけた署名運動の結果、遅れていた日本公開がめでたく決まったコメディー映画。同様のケースに『ホテル・ルワンダ』という傑作があるが、はたしてこちらの出来やいかに。

首都ロンドンで大活躍、治安悪化を一人でくいとめている優秀な警官ニコラス(サイモン・ペッグ)は、あまりにガチガチな性格と有能さを同僚に妬まれ、田舎町に左遷されてしまう。ロンドンと違って何の事件もおこらぬのどかなこの場所で、彼は能天気な警察映画マニアのダニー(ニック・フロスト)と組まされる。そんな凸凹コンビの前で次々と変死事件がおき、ニコラスは捜査を開始する。だが住人たちは、どんなに異常な状況を前にしても、ただの事故だと思い込んでいるのだった。

単純な100%おバカ映画というわけではない。警察アクションものを中心とする過去作品への尊敬をこめた引用が随所に見られる、作り手の熱い情熱を感じられる一本。こういう映画は業界関係者やディープなファンににウケる傾向があり、絶賛評が多いのも理解は出来る。

60点
虫が体内に入る妄想にとりつかれた男の崩壊過程

妄想と現実の境目はどこにあるのか。マトリックスの仮想現実を人々は本物と信じ過ごしたように、たとえ幻でも信じるものには主観的に現実との差異はない。三枚目の男性でも、恋人の目にはハンサムな王子様に映るのだ。その様子は幻(現実?)の外側の人間にとっては、どこか滑稽だったりする。

オクラホマ州のレストランでウェイトレスをするアグネス(アシュレイ・ジャッド)は、同僚の友人から最近知り合ったピーター(マイケル・シャノン)という男を紹介される。元夫からDV被害にあっていたアグネスは、どこか陰のあるピーターとうまがあった。ピーターが語るには、自分は人に見えないほど小さい"虫"に長年悩まされているという。

ヒロインが住むモーテルにもその虫はやってきた。アグネスには虫じたいは見えないが、ピーターの体には刺された無数の痕があり、その数は日々増えていく。アグネスはピーターの語る"真実"の世界に取り込まれ、外界から徐々に孤立。体内に侵入する虫との闘いにあけくれる二人の姿は、やがて狂気そのものの様相を呈していく。

60点
大きなオッパイが好きな人のためのフルコース

巨乳はバカだなどと良く言われるが、あれはむしろ、「おバカな巨乳の女の子はカワイイ」という男性心理を誰かが誤解して受け取ったのではないかと思う。

警察組織では解決できぬ難事件を担当する、えりすぐりの秘密潜入捜査官「ワイルドキャッツ」。今回も腕利きのコンビ、クールな先輩捜査官ハニー(かでなれおん)と、おっとり型のバニー(森下悠里)の前に、とてつもない謎が襲い掛かる。なんと清純派アイドル(中村知世)が、イベント中に無意識のうちに服を脱いで全裸になり、引退を余儀なくされたというのだ。

どうやらストリップ光線を浴びたんではないかなどと推理する展開からわかるとおり、思い切りナンセンスなセクシードラマ。お目当てのアイドルが出ている男性が、レイトショーで楽しむノーテンキ娯楽だ。

60点
2000万もの本物の命が殺しあう姿を延々と映す衝撃の"戦争映画"

最近、ネイチャー系なる映画が若い婦女子に人気という。『ディープ・ブルー』(03年)や『アース』(07年)といった、大自然体感型のドキュメンタリー作品のことだ。以前はこの手の作品は商売的に難しいと考えられており、買取ったもののどの程度のヒットが見込めるのか、担当者さえもわからなかったという。だが今はもう違う。自然映画はウケる、これはひとつの定理となりつつある。

……が、その流れにある(と思われがちな)『バグズ・ワールド』は、どう考えても女性ウケはしないだろう。ムシキングに夢中の子供たちならいざ知らず、足が何本もウネウネするシロアリの映画を、癒し大好きスイーツ女性に提供するのは無謀というもの。宣伝対象は子供メインにシフトしたほうが良いと思う。

だいたいこの映画、コンセプトからして凄い。

60点
是枝裕和監督の「あるある」ホームドラマ

カンヌ国際映画祭最優秀男優賞をとった「誰も知らない」に続く是枝裕和監督最新作は、ある家族の一日を描いた現代劇。大それた事件が起こるわけでなく、とりわけ面白いストーリーがあるわけでもないのに、その人間観察力の鋭さだけで2時間持たせる力技には舌を巻く。

長男の命日のため、横山良多(阿部寛)は妻(夏川結衣)とその連れ子とともに自分の実家にやってきた。頑固者の父親(原田芳雄)とそりが合わぬ良多にとって気の進まぬ帰郷だったが、案の定彼らはのっけから重苦しい空気を味わうことになる。

日本のどこにでもいそうな一家の24時間。開業医として人々の尊敬とそれなりの成功を得た父親は、老いてなお"独裁者"として君臨する(したがっている)。一方、いい年をして安定した職に就けぬ主人公は、父の威光、優秀だった亡き長男の存在がいまだ大きなコンプレックスとなっている。結婚したばかりの妻につれ子がいる事もまた、無関係ではないだろう。

60点
"財布が主人公"の宮部みゆきミステリを映像化

日本を代表するミステリ作家、宮部みゆき。その文章は比較的癖がない方だが、彼女はときおり強烈な変化球を投げる。本作の原作『長い長い殺人』もそのひとつで、11章立ての連作短編はすべて誰かの"財布"による一人称で語られる。各短編の主人公が異なるだけでも難しい構成だが、それが全部無生物の財布というのだから驚かされる。

ひき逃げ事件で死亡した男には、妻(伊藤裕子)を受取人とした3億円もの保険金がかけられていた。妻には愛人(谷原章介)がおり、その婚約者(西田尚美)も殺されていた。見るからに怪しすぎる二人は一躍マスコミの寵児となるが、二つの事件当時、彼らには鉄壁のアリバイがあるのだった。

すわ、交換殺人かといったところだが、この一連の事件の背後はもっと入り組んでおり、巻き込まれた私立探偵(仲村トオル)と刑事(長塚京三)らが謎を追う。ロス疑惑を髣髴とさせるワイドショー報道の加熱ぶりには苦笑する。

60点
天才奇術師はハプスブルグ家を騙せるか

実在の人物や事件を大胆に織り交ぜた『幻影師アイゼンハイム』は、この時代のもろもろが好きな人にはたまらない魅力がある。

長きにわたり隆盛を誇ったハプスブルグ家も斜陽にさしかかった19世紀末のオーストリア、ウイーン。天才イリュージョニストのアイゼンハイム(エドワード・ノートン)のショーを観に、皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)が許婚のソフィ(ジェシカ・ビール)とやってくる。出し物に参加させるためソフィを舞台にあげたアイゼンハイムは、彼女がかつて自分とかけおちを誓った幼馴染だと気づく。

さて、アイゼンハイムは身分の差により引き裂かれた彼女との恋をずっと忘れられずに生きてきた男。一方ソフィも、傲慢なDV男のレオポルドとの政略結婚などイヤイヤ。今でもアイゼンハイムだけを愛している。キツい監視下で再び互いを求めあう二人だが、その先には過酷な運命が……。

60点
ジャーナリスト3人が踏み込んだ先は……

チベット問題について一貫して中国批判の態度をとり、積極的に発言もしているリチャード・ギアの日本最新作は、その社会派としての面を強調する作品となった。

かつて人気テレビリポーターだったサイモン(リチャード・ギア)は、放送中にキレて今では酒代にも事欠く日々。一方その相棒の元戦場カメラマン、ダック(テレンス・ハワード)は大出世を遂げていた。あるとき、久々にダックの前に姿を現したサイモンは、NATOや国連が血眼になって探す戦争犯罪人フォックスの居所を知っているぞと、ド級のスクープを持ちかけてくる。

こうしてかつての盟友は、若きプロデューサー(ジェシー・アイゼンバーグ)を加えた3人で、命の保障などまったくない危険地帯へと乗り込んでいく。無鉄砲な男どもがイケイケでスクープに迫る姿を描く社会派ムービー、ズッコケ三人組のジャーナリスト宣言だ。

60点
スキンヘッドな暗殺者・全員集合

『ヒットマン』は、(ヒット作だが)洋物ゲームが原作という、日本では集客面での不利を抱えている。そのため「女子を助ける暗殺者」との共通点をむりやりこじつけ、「名作『レオン』を彷彿とさせるエモーショナルドラマ」などと宣伝

されている。担当者の苦悩が垣間見える瞬間である。

孤児を暗殺者に育てあげる闇組織でダントツの能力を誇った"ナンバー47"(ティモシー・オリファント)は、ロシアの政治家の暗殺依頼を受ける。首尾よく狙撃に成功したと思ったが、組織からの報告では相手は生きており、おまけに娼婦ニカ(オルガ・キュリレンコ)に現場を目撃されたので消せという。不審を抱いた47は命令を無視、自分と似た境遇のニカを守りながら、真相解明に挑むのだった。

60点
NYの未曾有の大災害を記録した奇跡のホームビデオ映像

徹底した秘密主義で公開まで突っ走ってきた『クローバーフィールド HAKAISHA』。もしあなたがこの映画を映画館で楽しみたい

なら、少しでもネタバレを食らう前に見に行く必要がある。

もともとこれ、アメリカでは今年2008年の1月に公開されたもの。超話題作『トランスフォーマー』上映前の匿名予告編を皮切りに、

60点
裏卓球界ナンバーワンを決めるピンポンデスマッチ

ハリウッド史上初?の卓球エンタテイメント『燃えよ!ピンポン』を見ると、いまのアメリカ映画界の変態っぷりがよくわかる。

かつての天才卓球少年で、今はメタボ中年のランディ(ダン・フォグラー)。彼は場末のステージで曲芸ピンポンを披露して糊口をしのいでいたが、ある日FBI捜査官から中国系マフィア組織の開催する卓球大会に出てくれと頼まれる。そこで組織のボス(クリストファー・ウォーケン)を逮捕する段取りだというのだ。しぶしぶ承諾したランディは、しかしさび付いた腕を磨きなおすため、まずは盲目の老師とそのセクシーな教え子(マギー・Q)に弟子入りする。

目が見えない卓球の達人とか、4人の男を同時に相手にして圧倒する女卓球選手とか、のっけからバカげている。しかもランディが目指す大会とやらは、裏卓球界のトップを決める大イベントで、敗北=即死のデスマッチときた。ほとんど漫画バキの世界である。

60点
アル・パチーノ先生の命はあと88分

『88ミニッツ』は、作り手の努力と熱意のわりにその凄さが伝わらない、一人相撲なサスペンスだ。

FBI異常犯罪分析医ジャック・グラム(アル・パチーノ)が、9年前に決定的な判断を下して有罪に追い込んだ連続猟奇殺人犯フォースター(ニール・マクドノー)の死刑執行直前、同手口の殺人事件がおきた。被害者はジャックの教え子で、しかもフォースターは犯人ではないとのメッセージが残されていた。捜査当局やマスコミが騒然とする中、ジャックの携帯が鳴り「お前の命はあと88分だ」と宣告される。

哀れなアルパチーノ先生は、しかしまぎれもない切れ者。冷静かつ論理的な推理力により、卑劣な脅迫犯および殺人犯へ逆に迫っていく。よくよく考えてみると、単に手当たり次第に周りを犯人扱いして右往左往しているだけに見えるが、あえてそこは大人のスルー。

60点
伊坂幸太郎の魅力全開! だそうだ

いまや映画界で大人気の作家・伊坂幸太郎の連作短編集『死神の精度』が、ついに実写化された。映画化を何度も断り続けた伊坂氏が、金城武主演ならと承諾したとのこと。結果、"Sweet Rain"というイカす題名がついた、見事な珍作に仕上がった。

不慮の死を遂げる人間の前に現れ、7日間の観察のあと、実際に死なすか否かを決める死神のチバ(金城武)。今回の対象は、27歳のネクラなOL藤木一恵(小西真奈美)だ。いつもは迷わず"実行=死"を選択するチバだったが、あまりに薄幸な彼女の姿を見て、ほんの少し"見送り=生かす"へ心を動かされる。

ファンにとって念願となる傑作の映画化は、伊坂ワールドの魅力全開! と喧伝されている。B級ラブコメくずれが伊坂ワールドだと言うのなら、まことに的確な表現である。

60点
瞬間移動で、お金も女の子もゲットしまくり

望むところへどこへでも行ける瞬間移動=テレポーテーションの能力があったらどんなにいいか。『ジャンパー』の主人公は、そんな私たちの(ちょっとイケナイ)妄想を、次々とやってのける。

主人公デヴィッド(ヘイデン・クリステンセン)は高校生時代、自分に瞬間移動の能力が備わっていることを偶然知る。やがて成長した彼は、銀行の金庫室からせしめた大金で、実家を出て自由気ままに暮らしはじめた。今では、毎日エジプトのスフィンクスの上でコーヒーブレイク、パリもローマも行き放題。しかし、まだデヴィッドは知らなかったが、この世には彼のような"ジャンパー"の存在を許さず、ひたすら命を狙う集団がいるのだった。

この主人公は、高畑くんのいないエスパー魔美のようなもの。後先考えず超能力を使いまくり、バカ行動に歯止めがかからずあら大変、となる。主人公がアホすぎる上、まったく成長しないので、違った意味でギャグ映画にしか見えない。

60点
友人の違法な人工妊娠中絶につきあう女子大生の一日

ルームメイトの中絶手術を手助けする女子大生の、長い一日を描いた『4ヶ月、3週と2日』は、ルーマニア映画として初めてカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞した。

1987年のルーマニア。大学生オティリア(アナマリア・マリンカ)は、同室のガビツァ(ローラ・ヴァシリウ)の中絶手術を手伝うべく、二人で準備をしていた。恋人から金を借り、安ホテルに向かったオティリアは、予約したはずの部屋が取れておらず狼狽する。しかも体調不良のガビツァからは、手術を頼んだモグリの医者を代わりに迎えにいってくれと頼まれる。オティリアにとって、想像以上につらく苦しい一日が始まった。

中絶する本人ではなく、友達として彼女の世話をする女の子の物語。彼女が、本人以上に苦しい思いをするのはなぜなのか。どうしてそこまで尽くすのか。そもそも妊娠させた相手は誰なのか。なぜ出産ではなく、怪しげなヤミ医者で中絶するのか。

60点
華やかな芸能界から悲惨な戦場まで

全裸のジョン・レノンが服を着たオノヨーコに抱きついている、誰もが一度は見たであろう有名な写真がある。あれは1980年12月8日の朝に撮影した写真で、ジョンはその4時間後に銃撃されこの世を去った。本作はこの"最期の日の写真"を撮影した女流カメラマン、アニー・リーボヴィッツの半生を描くドキュメンタリー。

彼女は世界中の有名人の間でもっとも人気のあるカメラマンの一人であり、作中の関係者の言葉を借りれば、ニコール・キッドマン(いわずと知れたハリウッドのトップ女優)を撮影したい場合、彼女以外の撮影者が依頼すると翌月になるが、アニーであればその日の夜にやってくる、というほど尊敬を受けている。

ジョン・レノンのポートレート以外の代表的な仕事としては、ヴァニティ・フェア誌の表紙を飾った女優デミ・ムーアの妊婦ヌード、ゴルバチョフ元ソ連大統領を起用したルイ・ヴィトンの広告など、世間を騒然とさせる作品で知られている。

60点
心臓手術中に殺人事件発生?!

現役のお医者さんという強力な武器をひっさげて2005年に登場した作家、海堂尊は、デビュー作の『チーム・バチスタの栄光』から日本ミステリ界を快進撃。はやくも今回、初の映画化に恵まれた。

拡張型心筋症に有効な"バチスタ手術"において、天才的な腕を持つ外科医・桐生恭一(吉川晃司)。彼が率いる医大の専門チームは、"チーム・バチスタの栄光"と称され、通常6割の成功率といわれるこの手術で26連勝の快挙を達成していた。ところがここ数例、彼らは立て続けに失敗してしまう。女医・田口公子(竹内結子)は原因調査にあたるが、突然現れた厚生労働省の高級官僚・白鳥(阿部寛)は、「これは殺人である」などと言い出すのだった。

さて、中村義洋監督というと、前作『アヒルと鴨のコインロッカー』(06年)のヒットが記憶に新しい。伊坂幸太郎の代表作に続き、今回も(広義の)ミステリの映画化を担当することになったわけだ。どちらも平均よりやや上の映像化といって良いが、この人はどうも詰めが甘い部分がある。

60点
両親が突然左翼活動家になってしまった9歳少女の受難

タイトルのフィデルとはキューバの国家元首フィデル・カストロのこと。フランスのアッパーミドル一家のお嬢様だった9歳の少女が、共産主義にのめりこんだ両親のせいでその暮らしが一変してしまい、その不満を一言にしたタイトルだ。

1970年のフランス、パリ。雑誌記者の母(ジュリー・ドパルデュー)と弁護士の父(ステファノ・アコルシ)、無邪気な弟(バンジャマン・フイエ)となに不自由なく暮らす9歳のアンナ(ニナ・ケルヴェル)は、カトリック女子小学校に通う優秀な生徒だ。そんな我が家にあるとき、父の故郷スペインのフランコ独裁政権から逃げるように叔母と従姉妹がやってくる。彼女らの影響で共産主義活動に目覚めた両親は、子供たちをほっぽらかしてチリで左翼政権樹立のため奔走。やがて暮らしは貧窮し、アンナたちは狭いアパートで他の活動家と共同生活するハメになる。「前の暮らしが大好きだったのに、私たちどうしてこんな目にあわなきゃならないの?!」

70年代の混沌とした世界情勢、そして左翼運動に興味がある人向け。親のワガママに振り回される少女の成長物語としても見られるが、ジュリー・ガヴラス監督は初長編とあってか、不器用で中途半端な印象。

60点
パラダイスに住むエンジェルの、ほろ苦い人生

男性でありながら、オンナ以上に女性の内面を鋭く描くフランソワ・オゾン監督。その類まれな感性は、もしかしたら彼自身ゲイである事が寄与しているのかもしれない。この最新作『エンジェル』も、多くの共感を集めそうな女性映画だが、オゾン作品としては珍しく全編英語で、25億円もの予算をかけたコスチュームプレイ(豪華衣装が見所の時代ドラマ)となっている。

20世紀初頭の英国。上流階級に憧れる少女エンジェル(ロモーラ・ガライ)は、貧しい現実から目をそむけるようにロマンス小説を書き綴る。それはやがて有力な発行人(サム・ニール)の目に留まり、出版された作品はベストセラーに。望んだ暮らしを手に入れたエンジェルだが、はたしてその先に幸せな人生が待っているのだろうか。

読書嫌いの下層階級の少女が、リサーチもせず想像だけでセレブな暮らしを書いた小説だけに、「シャンパンをコルクスクリューで抜く」といったおかしな描写を指摘される場面がある。ところがエンジェルは、「句読点ひとつ書き換えない」と言い張り、発行人と観客を仰天させる。その傲慢な性格(かつ世間知らずっぷり)がよく現れた瞬間だ。

60点
フルチンヒーロー大活躍

映画が大ヒットしたこともあって、本格ファンタジーというと『指輪物語』を思い浮かべる人が多いと思うが、その作者J・R・R・トールキンは、現存する最古の英語叙事詩「ベオウルフ」の研究者であり、作品にそのエッセンスを生かしたといわれている。『ベオウルフ 呪われし勇者』は、過去にも何度か映画化されているその英雄叙事詩を、パフォーマンス・キャプチャーの技術を用いて映像化した作品。

パフォーマンス・キャプチャーとは、役者の動きをコンピュータに取り込むモーションキャプチャーを、より精密緻密にしたものと考えればよいだろう。平たく言えば、気持ち悪いくらい実写そっくりなCGアニメ、だ。ロバート・ゼメキス監督は、04年に『ポーラー・エクスプレス』でも、同じ技術を使っている。

デンマーク王(アンソニー・ホプキンス)の宮殿に、宴の騒ぎを嫌った巨大な化物グレンデルが襲い掛かった。甚大な被害を受け途方にくれる王たちの前に、海の向こうから勇者ベオウルフ(レイ・ウィンストン)が仲間とともにやってくる。誇り高いベオウルフは、栄誉のため怪物退治に名乗りを上げ、おとりとして再び宴を開くことを提案する。

60点
国連・国際刑事裁判所の活動現場に興味がある人に

国際連合という組織に対し「国家の枠組みを超えて世界平和の実現を目指している」などと幻想を抱いている人たちにとって、このドキュメンタリーはいくらか期待にこたえてくれる。

タイトルのカルラとは、カルラ・デル・ポンテという女性の名前。彼女は旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷(ICTY)という国連組織の検事長として活躍する人物だ。ICTYとは旧ユーゴで起きた戦争犯罪人を裁くために作られた国際刑事裁判所で、彼女は日夜世界中を駆け巡って『カルラのリスト』に載った犯人たちの手がかりを探している。

人道に対する罪、というと近代史に多少詳しい日本人にとっては、あの悪名高い東京裁判での事後法を思い出すが、それを堂々と対象犯罪に入れているこの組織も本質的には変わらない。彼女らが追う犯罪人は、それを匿う当事国の政府や組織にとっては、犯罪者どころか逆に英雄扱い。そんな連中をテロ支援国家と決め付けるのもひとつの正義だが、現実には彼らにもまた別の正義が存在する。

60点
抜群のストーリーテリング

家族には大きく分けて2種類ある。いわゆる遺伝子上のつながりがある肉親と、血はつながっていないが家族同然の存在。養子の類もこちらに含まれるだろうか。赤ちゃんポストの概念を発明したり、不妊というわけでもない有名人が積極的に養子を迎えるなど、後者を受け入れる土壌が広まっている欧米に比べると、現代日本は比較的血縁を重視する印象だ。婚外子への相続差別など、法律上にもその痕跡が残っている。

また、国や民族の違いに限らず、収入や家柄によっても"血"にこだわる度合いは違ってこよう。『アフター・ウェディング』は、そんな富豪のきまぐれに振り回される、ある中年男の物語だ。

万年貧乏なインドの孤児院で働くデンマーク人のヤコブ(マッツ・ミケルセン)。ある日、彼のもとに本国の実業家から巨額の寄付金の申し出が届く。条件はヤコブ本人との面談。怪訝に思いつつ帰国した彼は、そのまま実業家の娘の結婚式にむりやり出席させられるが、会場には意外な人物が立っていた。

60点
外見はいい、内面があと少し

遠い未来、クローン技術が普及した社会における仮定の話。顔面を含めた体のほとんどが機械になってしまったオリジナル彼氏と、100%生身のクローンが同時に存在したとしたら、あなたはどちらを選ぶだろうか。『APPLESEED アップルシード』(04年、日)の続編となる本作のヒロインは、そのような三角関係に巻き込まれる。

前作から7年後の西暦2138年、中立都市オリュンポスでは人間、サイボーグ、そしてバイオロイド(クローン)が共存していたが、いまだテロリズムを根絶するにはいたっていなかった。ヒロインのデュナン(声:小林愛)は、最新鋭のサイボーグであり恋人のブリアレオス(声:山寺宏一)と特殊部隊ES.W.A.T.でコンビを組み、治安維持にあたっていた。ところがある日、新パートナーのテレウス(声:岸祐二)の顔をみてデュナンは激しく動揺する。彼は人間だったころのブリアレオスの遺伝子から作られたバイオロイドだったのだ。

デュナンの恋人ブリアレオスは、戦闘中の負傷により人間だったころの面影などまったくない機械的な人工ボディになってしまっている。だが、テレウスは違う。彼の性格、外見は、かつて普通の恋人同士として愛し合ったブリアレオスそのものだ。デュナンにとって、いまでもオリジナルのサイボーグ・ブリアレオスとの心の結びつきは強い。だが、まだ若い女の子である彼女には、肌を寄せ合った時のぬくもりなど、決してそれだけで埋められぬ要素も少なくあるまい。

60点
とても食べあわせが悪い

『HERO』や『リーサル・ウェポン4』などの大ヒット作に出演、本物の少林拳の使い手として人気のジェット・リー。一方『トランスポーター』等で、元水泳の飛び込みトップアスリートらしい華麗な身のこなしを見せたジェイソン・ステイサム。この二人のアクションスターが共演となれば、かつてない凄いものを見せてくれるに違いない。本作品を見る前に多くの人が思うであろうそうした期待は、しかしいろいろな意味で裏切られる。

サンフランシスコのFBI捜査官クロフォード(ジェイソン・ステイサム)は、3年前に相棒とその家族を殺した裏社会の伝説的な殺し屋ローグ(ジェット・リー)が、再びこの街に舞い戻ってきたことを知る。中国マフィアと日本ヤクザの抗争が激化する今、ローグの真の狙いは何なのか。復讐に燃えるクロフォードは、徐々にローグに迫っていくが……。

日本のヤクザ社会が主な舞台となるので、日本人の観客にとっては退屈しない映画だ。しかも、洋画にありがちな"ヘンな描写"が多数。ヤクザの親分を演じる石橋凌以外、日本語の台詞すら怪しいという有様であるから、ほかは推して知るべし。奇妙なセットや風習など、それは見てのお楽しみだ。

60点
次は製作費100億円の大作で

わが国の安倍晋三首相は、美しい国にはあまりふさわしくない、みっともない格好で退陣してしまったが、もしアメリカ大統領が何者かに暗殺され、突然いなくなってしまったらどうだろう? この映画は、そんな不謹慎な想定のもとに、米国内の情勢を予測した擬似ドキュメンタリー(=モキュメンタリー)だ。

映画は大統領警護主任や補佐官、容疑者の妻らへのインタビューを中心に構成される。役者はみな無名、しかも脚本の全容を知らされずに撮影したとあってやたらとリアリティがある。途中にはさまれる実際のニュース映像の画質などは、監督の偏執的なまでの微調整によって、新規撮影部分との違和感が徹底して埋められている。

そうそう、この映画は『大統領暗殺』という邦題だが、宣伝会社は『ブッシュ暗殺』にすべく最後まで頑張ったという。結局、映倫の審査拒否によりその夢は破れたが、じっさい本作の内容は、アメリカ合衆国第43代大統領、ジョージ・ウォーカー・ブッシュを映画の中で(本人にはもちろん無断で)ブチ殺してしまうという、とんでもないものである。

60点
面白くて飽きないが、それだけ

スリラーやサスペンスでは、脚本が映画そのものの出来を大きく左右することについては異論のないところだろう。ベテラン脚本家のラリー・コーエンの場合、このサイトでもオススメした『フォーンブース』(02年)、『セルラー』(04年)と、近年その分野で変わらぬアイデアマンぶりを発揮しており、その最新作である本作にかかる期待もおのずと大きいものになる。

トップモデルのジェニファー(エリシャ・カスバート)は、見覚えのない部屋で目覚める。彼女は何者かに拉致、監禁されてしまったのだ。必死に脱出を試みるが部屋は密室で、しかも犯人がどこかから監視しているらしい。八方ふさがりの状況下、ジェニファーは剥がれ落ちた壁の塗料の先に、意外なものを発見する。

謎だらけの冒頭から、見るものをひきつけて離さない。美人でスタイル抜群のヒロインが味わう恐怖と、必死に抵抗する姿に観客は思い切り感情移入し、その行方を固唾を飲んで見守る体験型スリラーだ。

60点
端々から感じられる不気味な違和感の正体とは?

アメリカで製作の話が進む『新世紀エヴァンゲリオン』実写版に先駆け、オリジナルテレビアニメ版の主要スタッフ・キャストによる"リビルド"3部作が作られることになった。その期待の一作目がこの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE』。

テレビ版ダイジェストの劇場用Zガンダム3部作がヒットしたため、エヴァンゲリオンで二番煎じをするのかなと、当初私は思っていた。実際普通にみれば、「なんだよ、テレビん時と同じじゃん、見る価値無し」で終わってしまいかねないほど、ストーリーも絵柄も同じである。

映画版ストーリーの具体的な流れとしては、シンジが召集されるトコから始まり、日本中の電力を戦略自衛隊の長距離砲に集中させ、使徒ラミエル(青いプリズム体みたいなヤツね)を狙撃するヤシマ作戦までが描かれる。

60点
火災を経て不気味さを増した伽椰子屋敷が必見

『呪怨 パンデミック』は、清水崇監督が日本人監督として史上初の全米興行成績一位を取った『THE JUON/呪怨』の続編だが、その副題の意味するところも含め、終わってみれば現在製作中のパート3へのつなぎ的位置づけの作品ということがよくわかる。しかし、だからといって退屈ということはまったく無く、見ている間大いに楽しめる(怖がれる?)優れたホラー作品である。

インターナショナル・スクールに通うちょっとイケてない少女アリソン(アリエル・ケベル)は、正反対のタイプの同級生ヴァネッサとミユキ(宇野実彩子)に連れられ、幽霊屋敷と評判の一軒屋にやってくる。火災の跡も痛々しいその家の押入れにふざけて閉じ込められたアリソンは、そこで恐ろしいものを見る。じつはその家こそ、かつて佐伯伽椰子(藤貴子)とその息子の俊雄が虐殺された、怨念に満ちた家であった。

呪怨シリーズではおなじみ、いくつかのエピソードを平行して描き、マシンガンのようにテンポよくつないでいくパターンだが、今回はそれぞれの話が有機的なつながりを持ち、ちょっとした仕掛けもあって楽しませてくれる。

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