最近の日本の映画ファンは見応えある脚本に飢えている。それも当然、これだけ製作・公開本数が多ければ、作る側としてもじっくり脚本を練り上げる時間などそう確保できない。結果、よくできたミステリのように複雑に組み上げられたストーリーが登場する確率はどんどん減っていく。
自他ともに認めるモテ男で外科医の亘(松坂桃李)は、はずみで一度だけ抱いた対人恐怖症のあゆみ(戸田恵梨香)から、突然妊娠を告げられる。今日が4月1日ということもあり、相手にもしなかったところ、なんとあゆみは亘がいるレストランに武装して踏み込んでくるのだった。
実績ある脚本家古沢良太によるオリジナルストーリー「エイプリルフールズ」は、前述のような良質脚本飢餓組にとっては期待の作品である。なにしろいまだに映画ファンの語り草となっている「キサラギ」(07年)以来、古沢良太の手による脚本には佳作が多い。