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60点
≪だいぶ器用になってきた≫

この仕事をしていると、やがて試写室ボケの症状が出る。それは端的にいうと、批評家にとって重要な「一般のお客さんの感覚」を失うこと。

私は試写室で何百本みようが「映画」を味わったことにはならないと考えている。小さいスクリーンにささやかな音響設備、客席には一人で来場するプロばかり。それはあくまで「映画館」とよく似た別物である。

愛する恋人や家族友人とやってきた人々の、作品への期待にあふれた空気の中、大スクリーンで見る。それは試写室とは大違いである。その誤差を修正するため、私は話題作のいくつかは一般の劇場で見ることにしている。

60点
≪ほとんど笑いがでるほどのヒーロー量≫

いまの日本の不況の原因ははっきりしていて、どの経済学者に聞いても需要不足と回答が来る。こういうときは政府が無理にでも需要を作り出すべきと主張する人も多い。国債発行や信用創造量を増やし、積極的に内需を喚起して経済のエンジンをぶん回せというわけである。

そう考えると、投票権めあてに何千枚もCDを買って聞かずに捨てるAKB48ファンというのも案外悪くないのかもしれない。考えてみれば、これぞまさにケインズ経済学の成功例。菅総理は消費税アップの代わりに秋元康を財務大臣に迎えるべきであろう。

さて、AKB48の優位性を強引に明らかにしたところで「ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦」の話である。

60点
≪前田敦子の魅力爆発、これで1位は確実か≫

絶賛開催中のAKB48第3回選抜総選挙では、グループの代名詞的存在として引っ張ってきた前田敦子が2位に甘んじるという意外な途中結果が発表された。やはり顔より胸なのかと全女子を落胆させるところであったが、ミスター5500枚こと熱烈な大島優子ファンの存在が明らかになるなど、その要因はいまだ明らかではない。

もっとも武道館で行われる6月9日の最終開票日直前には、前田敦子初主演作『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が公開となるので、ここで彼女が逆転勝利を収めれば映画の興行も選挙も大変盛り上がること必至である。おそらくそんなシナリオになるのではないかと科学的に予想するが、これは私があっちゃん推しであるなどといった根も葉もない噂とはまったく関係がない。

友達思いの女子高生、川島みなみ(前田敦子)は、病弱な親友の代わりにマネージャーとして弱小野球部に入部した。だらけた部員や煮え切らない監督を前に思わず「あんたたちを甲子園に連れて行く」と宣言してしまったみなみは、マネージャー業務を勉強しようと本屋で指南書を探してもらう。ところが書店員(石塚英彦)の勘違いで経営学者ピーター・ドラッカーの「マネジメント」を買う羽目に。だがそのエッセンスを生かした野球部改革は、意外なことに目覚ましい成果を上げてゆく。

60点
≪美しい複葉機が舞い散るノスタルジック空中戦≫

日本という国は主に米国による洗脳プロパガンダの壮大な実験場であると同時に、見事な成功例でもある。

それは具体的には戦後、有名なルース・ベネディクトの研究などをもとに被占領地のコントロールを目的に始まった。戦時中の行為について過度な罪悪感を受け付ける教育や、非武装平和主義のような現実性ゼロの主張をする団体をひそかに財政支援するなど、彼らの行為は多岐にわたる。

すべては、自主独立を目指すまともな現実主義者を根絶させるためであった。米国にとっては、無防備マンを信奉する無邪気な反米平和主義者は大歓迎(むしろ一定の勢力を得てほしい)だが、自主防衛を言い出す勢力は国益に反する。親米保守なる珍妙な方向に言論の主流が流れるよう、彼らが望んでいることは明らかである。

60点
≪日本人のリハビリにちょうどいい≫

震災後、延期されたり上映中止された作品というのが結構あって、排泄物ぶちまけ映像が売りの「ジャッカス3D」などはその最たるもの。この空気の中、そういう笑いはさすがに不謹慎との判断については、否定のしようがない。

だが逆に、今だからこそ見るべき作品というものもいくつかあり、『まほろ駅前多田便利軒』もそのひとつ。ほかにも「阪急電車 片道15分の奇跡」とか「名前のない少年、脚のない少女」がそれにあたる。これらの作品群は、日本人の心のリハビリにぴったりなものばかりといえる。

まほろ駅前(と自称するがじつは徒歩数分)で便利屋を営む多田啓介(瑛太)の前に、中学生時代の同級生、行天春彦(松田龍平)がぶらりと現れる。多田は中学生時代、自分の不注意で彼の指に傷が残る大けがをさせた経験があり、その負い目もあって宿無しの彼と共同生活を始める羽目になる。

60点
≪アトラクションとしてはそこそこだが≫

寝室にビデオをしかけたら大変なものが映ってました、で知られる「パラノーマル・アクティビティ」(07年)は、生産者側にとってトップクラスのコストパフォーマンスを記録した作品で、当然ながらさっそく続編の話が持ち上がった。

『パラノーマル・アクティビティ2』がそれだが、本作の前にも前作の配給会社が続編製作権を買って作った「パラノーマル・アクティビティ 第2章/TOKYO NIGHT」なる日本版の関連作品が公開されたばかり。このシリーズ自体、劇中のお屋敷同様なにやら騒がしいことになっている。もっともわが日本にはすでに「アブノーマルアクティビティ」なる作品もあるのだが、本稿で触れることはない。

空き巣の被害にあったレイ一家は、自宅内にいくつもの防犯用カメラを設置することにした。ところがその晩から、原因不明の怪奇現象に彼らは悩まされる。防犯カメラは原因究明のため使われることになったが、そこに映っていたのは……。

60点
≪現代的なテーマを生かしきれてないのが残念≫

これはドイツ映画「es [エス]」(01年)のハリウッドリメイクだが、今では禁じられている心理実験の顛末を描いたサスペンスだ。「es [エス]」がカルト的人気を博するまでは、そんな実験があったことは一般人はあまり知らなかった。だからあの映画が実話だったと聞いて、人々はいいしれぬ不安と恐怖、不気味さを感じた。ようするに、リアルな都市伝説を聞いた時のような、アンダーグラウンドの知識に触れた喜び、面白さのようなものが受けたのである。

失職したばかりのトラヴィス(エイドリアン・ブロディ)は、何気なく参加した平和デモ中に魅力的な女性と知り合う。しかし金がないために彼女との旅行に行けなかった彼は、日給1000ドルという破格の被験バイトに身を投じる。集められた24人の被験者を看守役と囚人役に分け、疑似監獄の中で2週間すごさせる大学の実験だ。トラヴィスはそこで気のいい黒人労働者バリス(フォレスト・ウィッテカー)と意気投合。楽なバイトと思った矢先、実験を始めた彼らの間に、予想外かつ不穏な空気が流れ始める。

71年にスタンフォード大学で行われた実験の結果や、「es [エス]」を見ている人にはあまり新味のないストーリーであることは否めない。実験者側を一切うつさず、観客にいやおうなしに被験者の疑似体験をさせる試みはユニークだが、それにしてもオチがわかっていたら面白さは半減以下だろう。

60点
≪人生とはワインづくりのごときもの≫

この映画の監督ニキ・カーロは、「映画作りはワイン造りと似ている」と言ったが、人生そのものも似ているよ、とのテーマも同時に込めたのだろう。とっぴでばかげた設定だととられかねない難しい原作を、重厚な人間ドラマに仕立てたその手腕は健在であった。

1808年、フランスのブルゴーニュ地方。若きブドウ農家ソブラン(ジェレミー・レニエ)は、いつか自分の手で最高のワインをつくろうと考えている野心家。そんな彼の前に、翼をもった天使ザス(ギャスパー・ウリエル)が現れ、的確なアドバイスを送る。ソブランは彼の助言どおり、思い人のセレスト(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)に告白し、みごと妻とする。それ以来、ザスと手を取り合ってめきめきと醸造技術を磨いていくソブランだったが……。

ワインづくりにかけた醸造家の一生を描くドラマかと思ったら、いきなり生々しい半裸の天使が出てくるので観客は腰を抜かす。CGではなくあえて実体のある巨大な羽をくっつけたこの美男子は、まずは土を味わえといきなりワイン造りのヒントを教える。鉱物だのミネラルだのが場所によって微妙に含有量が違うからと熱く語る。まるでワイン博士である。

60点
≪女性を誘えるAVドラマ≫

アダルトビデオには、男女とも興味を持っている。もっとも、その方向には多少の違いがある。男性は出来上がった作品をみればそれで終わりだが、女性はむしろ「なんであんなコトをカメラの前で出来ちゃうんだろう」といった疑問から、女優さんの心境や出演に至った経緯、境遇といった内面の部分にまで興味を持つのではなかろうか。

つまり、女性たちは男どものように卑猥なエロ心だけでAVを見ているのではない。むろん、単なる技術的探究心およびエロ心のみで鑑賞する女性がいるならば、今後の研究のため携帯番号と暇な曜日を添えて当方までお知らせ頂きたい。

ともあれ、引退したトップAV女優みひろの自伝的小説を映画化した『nude』のプレス試写会に、タレントを中心に女性ばかりが押し掛けたというのもうなづける話である。私は見る前からこれは女性のための女性映画だと認識していたが、どうやら世間でもそのように正しく認識されそうだ。

60点
≪美しい映像でみせる等身大の恋愛模様≫

人間は美しいものが好きである。花にしても美術品にしても、美しいから人は惹かれるわけだ。

もちろん、美しさには目に見えないものもある。女性と付き合うときだって、さりげなく皆に料理をとりわけてあげる姿や、一途にメールを返信するなど、思いやりの心が現れるのを思わず見かけた瞬間、男は恋をするのだ。むろん、意地悪でも浮気性でも、結局のところ黒髪ロングで細身の美人なら恋をすることもあるが、それは決して表に出してはいけない極秘事項である。

家業の電気工事の仕事をしている守(片山亨)は、最近友人たちが続けざまに恋人や婚約者をみつけるのを見て、自分にそんな相手が全くいないことを痛感している。仕事先の親切な女性、雨宮さん(古川りか)にちょっとした憧れを抱いているが、ささやかな仕事上のサービスをするくらいで、思いを伝える勇気もない。そんなある日、守はなぜか友人のカノジョの親友(玲奈)に気に入られ、強引に押し倒されて交際を始めるが……。

60点
≪自称「実話」のトンデモ軍隊話≫

右だろうが左だろうが、極端に行き過ぎれば似たようなもの。まず、人は何か政治運動をはじめると、たいてい最後は自分の無力感に気づかされる事になる。ここで理想と現実の折り合いをつけ路線修正できればいいが、それができない一部の人間はどんどん先鋭、過激化し、やがて誰からも支持されなくなる。

世間はバカだ、マスコミはバカだ、なぜ誰も気づいてくれないんだ、わかってくれないんだ。そんな風に思い出したらもう末期である。

そういうテンパった人たちは一度、街で黒髪ロングの痩せた女の子をナンパして楽しく恋をして、脳みそをリフレッシュしたほうがいい。そうすれば、現実社会と自分の距離感を正確につかみなおすこともできる。ちなみに黒髪うんぬんは単なる私の好みであり、本記事の主張とは何の関連も無い。

60点
≪竹島防衛キャンペーンなんかに利用しなきゃ可愛げがあるのだが≫

「あんなオトコ大嫌いよ」といいながら、別れた男の影響を受け続ける女性がたまにいる。音楽の好みだったり、服装のセンスだったり、あるいは性癖だったり。嫌よ嫌よといいながら、高いプライドと自己愛の結果、影響を受けた自分を変えられない。日本と韓国の関係は、そんな滑稽な男女関係に似ている。

テコンドー選手のフン(声:キム・ボミ)は、並み居る強敵を倒してついに世界大会を制した。彼の父キム博士は、ガールフレンドのヨンヒやその父らと共に、正義の巨大ロボットテコンVの開発に精を出していた。だがその影では、テコンVの設計図を奪い世界征服をたくらむ謎の組織の魔の手がキム博士に迫っていた。

『テコンV』は76年に韓国で公開され、国民的人気を博したアニメ映画。このたびデジタル処理で綺麗なフィルムへと生まれ変わり、めでたく公開となった。

60点
≪好きな女性を思うと何も手につかない男性にすすめたい≫

仕事すら手につかない状態になるほど、誰かを好きになる人がいる。

本当は好きな人のことを思うだけで生活にハリがでて元気が出る、なんて「白い恋」が理想かもしれない。だが、思えば思うほど活動意欲を失い、前に進めなくなる「黒い恋」もそう悪いものではない。そのくらい誰かを思える恋を一度くらいしなければ人生は味気ない。人を愛するのも一種の才能。自分の中にそれほどの恋愛意欲があったことを、まずは肯定してやるべきであろう。

そうした情熱的、猪突猛進的な恋心が抑えられなくなると、相手の事をとにかく知りたくてたまらなくなる。知らない事すなわち不安。こうなると、いわゆるストーカーとの違いがあまりなくなってくる。恋人ストーカー状態である。

60点
≪高品質ではあれど、どうもスッキリしない≫

スタジオジブリのアニメーション作品の質の高さはいまさら言うまでもないが、宮崎駿監督作品のとっつきにくさだけは別格だと私は思っている。ぱっと見そうはみえないものの、この監督の作品はきわめて作家性が強く、毎回解釈に頭を悩まされる羽目になる。それでも物語をおろそかにせず、若々しい感性と高い娯楽性を兼ね備えていたジブリ初期あたりまでの作品は良かったが、最近のものはどうもスッキリ楽しめないというのが私の大まかな印象である。

その点『借りぐらしのアリエッティ』は、ジブリの誇る実力派アニメーター米林宏昌監督の初監督作品。聞くところによれば、この監督は強い政治的思想性などを持たない人らしい。なるほど、それならジブリの美しい美術とアニメーション技術だけを、純粋に楽しむことが出来るだろう。私はそんな期待を抱いてこれを見に行った。

祖母(声:竹下景子)がお手伝いさん(声:樹木希林)と暮らす郊外の大きな家へ、心臓病の療養をかねてやってきた少年、翔(声:神木隆之介)。死と隣り合わせの日々をすごす感受性豊かな彼は、誰も気づかないような小人がこの家の中に住んでいることに気づく。アリエッティ(声:志田未来)という名のその小さな少女は、一家でこの家の地下に暮らしており、必要な物資を時折「借りにくる」事で生存していた。決して人間に見つかってはならぬという掟を破る形になったアリエッティは、思い切って翔に説明しに行こうと決意するが……。

60点
≪偽善者ホイホイ≫

和歌山県・太地町で行われているイルカの追い込み漁を止めようとする、反捕鯨活動家たちのアウトローな活躍の姿を、けれん味たっぷりの演出で描いたドキュメンタリー。冗談好きなオスカー会員たちの悪ふざけか何かで、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した話題作だ。多数の捕鯨反対派へのインタビューと、太地町のイルカ捕殺現場への侵入アクションで構成されている。

なおこの点数はトンデモ映画として見た場合のものであり、内容の正確性への評価は一切含まれていない。

いきなりだが、私と「ザ・コーヴ」のかかわりは案外古い。まだこの作品がアカデミー賞にノミネーションすらされない頃、すでに権利元は日本での公開を目指し、あちこちに打診をかけていた。私の周辺にもその話が来て、じゃあとりあえず見てみるかと皆で見たのが最初である。

60点
自分を好きになれない女の子へ

『プレシャス』は、究極のいじめられっこのお話である。主人公は16歳の女の子で、プレシャスという素敵な名前を持っているが、見た目は猛烈な肥満体。アメリカといえば、世界からプロフェッショナルなデブたちが集う地上最強のデブ大国だが、彼女の場合はそこでデブデブばかにされるのだから筋金入り。日本人には到底太刀打ちできないそんなぽっちゃり少女の、悲惨な半生のドラマである。

87年のニューヨーク。黒人文化の中心地ハーレムで気性の激しい母親と暮らす16歳のプレシャス(ガボレイ・シディベ)は、妊娠が明らかになり高校をドロップアウトしてしまう。しかし彼女の真の悲劇はそのあとにあった。子供の父親はいったい誰なのか、彼女が長く受け続けてきた虐待とはどんなものなのだろうか。

ケータイ小説1本分ほどの悲劇フルコースが明らかになったとき、ふと時計を見るとまだ上映開始後13分。そこからプレシャスの希望なき転落の日々と、それでもたくましくあがき、いき続ける姿が感動的に描かれる。とはいえ、無理に泣かせる演出は皆無なので、わざとらしいものが嫌いな人でも大丈夫。どんな人生でも、あきらめさえしなければ今より多少はよくなるよと、そんな自己肯定のテーマを伝える作品である。

60点
意外にも3Dがすごい

立体映画元年などともてはやされるデジタル3Dだが、『コララインとボタンの魔女 3D』はそれに昔ながらのストップモーション・アニメーションを組み合わせた一品。ストップモーション・アニメとは、被写体を1コマずつ撮影することで、粘土人形やぬいぐるみなどを、あたかも動いているように見せかける特撮技法のこと。CGで何でも動かせる現代においても、撮影者の技術や個性によって独特の「味」が出るこの手法の愛好者は多く、こうしてときおり新作が登場する。

新しく越してきた家の中で、忙しい両親から取り残され退屈を感じる少女コラライン(声:ダコタ・ファニング)は、あるとき家の中に隠された扉を発見する。その扉の反対側にはそっくり同じ家と両親が存在し、本物以上にコララインにとってもやさしくかまってくれる。ただ気になるのは、彼らの目がなぜかボタンになっていること。それでもすっかりこの世界に居心地のよさを感じてしまうコララインだったが……。

願いをかなえる代わりに悪魔に魂を──式の物語はキリスト教圏で散見されるものだが、コララインの場合は「眼」を要求される。とはいえ、ボタン縫い付けを強制されてるわけでもないし、とりあえず楽しく過ごしますか〜などと思っていると、だんだん恐ろしいこの世界の正体が見えてきて……という展開。原作者ニール・ゲイマンがヒューゴー賞(SF界の最高賞)を受賞したベストセラーの映画化である。

60点
デヴィッド・リンチの反対を押し切った監督

鬼才デヴィッド・リンチ(製作総指揮)と、それに負けないくらい個性的な娘のジェニファー・リンチ監督が、父子協力して黒澤明の「羅生門」を撮る。そう聞いただけで、いいようのない疲労感を感じさせる、マニアにはたまらない一品。それが『サベイランス』だ。

サンタフェの田舎町でおきた殺人事件を捜査する二人のFBI捜査官、エリザベス(ジュリア・オーモンド)とサム(ビル・プルマン)は、現場に居合わせた3人の目撃者を聴取する。悪徳警官、麻薬中毒の女、8歳の少女と、どの証言者も一筋縄では行かない。それぞれが不都合な「真実」を懐に隠し持っている状況で、二人ははたして真実に迫れるのだろうか。

のっけから無音で、断片的な不気味映像、そして残酷シーンからはじまる。そんなところから、すでに異常な空気の映画だが、出てくる連中も一人残らず変な人間ばかりで、「リンチ映画」に身構えている観客をニヤリとさせる。ふむふむ、この程度ならなんてことはない。

60点
水問題を、おどろおどろしい編集で危機感をあおりまくる

石油をめぐり、世界の国々が戦争も辞さぬ獲得競争をしていることは常識だが、そうした時代が永遠に続くことはない。エネルギー源としてのみ見るならば、石油の代替になるものはすでにいくつもあり、あとはコスト次第というところまで来ている。

一方、どう考えても今後は足りなくなる重要な物質として、投資家や政治家に注目されているのが「水」である。石油がなくとも人は生きていけるが、水がなければ無理。考えてみれば良質な飲料水は、すでにガソリンよりも高い値段で売られている。「007」シリーズの最新作がこの問題を扱ったことでもわかるとおり、いまや水資源をめぐる話題はきわめて重要かつホット。石油よりも、水のほうがはるかに大事なのである。

『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』は、そんな水問題を扱うドキュメンタリー。世界中でおきている水の奪い合い、水ビジネスに群がる人々の実態を、危機感あおりまくりの恐怖演出で見せる。

60点
凄い映画だが、その凄さが伝わることはないだろう

「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督、構想15年の大作「アバター」を見て思うのは、こういう作品を普通の映画館でみてもダメだな、という事だ。

下半身不随の重傷を追った海兵隊員ジェイク(サム・ワーシントン)は、事故死した双子の兄の代わりに惑星パンドラに派遣される。そこで彼は、神経レベルでリンクする人造の肉体「アバター」を操り、パンドラの原住民と交流、彼らの秘密を探る任務を命ぜられた。

「もう3D以外の映画はつくらない」と語る監督が、満を持して送る162分の超大作。私はこれをXpanD社の液晶シャッター方式のメガネをかけて見たが、これがどうにも難ありの代物であった。もともとこの方式のメガネは重いし、おまけに形がフィットせずかけにくい。同行した小顔の女性も、自前の眼鏡の上にかけていたのに大きすぎて落ちてきて弱ったと言っていた。作品に集中したい身として、これはつらい。このあたりは個人差があるが、私には合わなかった。

60点
カリスマブロガーの美味しい挑戦

最近若い女の子と食事をすると、みなこぞって料理の写真をとる。合コン中だろうが一流レストランだろうが、彼女たちはおかまいなしだ。対面にいるこちらが相手にされていないという事実は置いておいて、可愛い若い子たちにも、その中にはあつかましいオバサンの要素が含まれるということかと思う瞬間である。

1949年、夫とパリにやってきたアメリカ人女性ジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)。ほがらかで、何より食べることが大好きな彼女は、フランス料理の繊細かつ深い味わいにハマる。早速ル・コルドン・ブルー(世界的に有名な料理学校)に通いはじめたジュリアは、やがてズボラなアメリカ人でもカンタンに作れるフランス料理の本を執筆し始める。

冒頭の女の子たちの撮った写真は、彼女たちの書くブログの材料となるわけだが、アメリカにもそんな「今日たべたもの日記」を書いて、有名になってしまった女性がいる。それが『ジュリー&ジュリア』のもう一人のヒロインであるジュリー・パウエル(エイミー・アダムス)。

60点
なぜかいつも裸のマッチョくん

若い女性の皆さんが思い切り感情移入して楽しむファンタジック・ラブストーリーのパート2である本作は、相変わらず障害だらけの恋にイケメン&美少女が悩まされる胸キュンな展開が楽しめる。

18歳の誕生日を迎えたベラ(クリステン・スチュワート)は、普段なら楽しいバースデーを憂鬱な気分で迎えた。なにしろ恋人のヴァンパイア、エドワード(ロバート・パティンソン)は不老不死な上、外見は永遠に17歳で止まったまま。このままでは、自分だけが老いてしまう。はたしてそれでもエドワードは変わらず愛してくれるだろうか。そもそも、そんないびつな恋に自分自身が耐えられるのか。悩めるベラを支えたのは幼馴染のジェイコブ(テイラー・ロートナー)。献身的かつ積極的な彼は、やがてベラとエドワードの間に割り込んでいく。

前作「トワイライト〜初恋〜」で主演の二人が大ブレイクした上、私生活でも噂になっていることもあり、観客の期待と話題性は段違いの第二弾。監督が変更になったため、作風が多少変わってしまったのがやや残念。パート1の、常に雨雲に包まれどこかロマンティックな独特の作品世界は、無味乾燥な灰色世界になってしまった。

60点
ナチス兵がぶち殺されるさまを皆で楽しむ

ロッテリアの絶品バーガーのヒットを受け、本作も「つまらなくて途中退場した人は無料」キャンペーン(公開から4日間限定)を行うという。

同バーガーは、もしまずかったら半分食べる前なら返品可能、なる触れ込みで話題を呼んだが、この映画は5章立てなので、3章まで見てつまらなかったらどうぞご退場くださいということらしい。クエンティン・タランティーノ監督にとっても自信作だから、快く承諾したそうだ。

実のところ私が食べた絶品バーガーは、絶品というより絶句ものの味だったが、さすがに返金を言い出す気にはなれなかった。幸いにして『イングロリアス・バスターズ』はそれとは違い、タランティーノファンであれば、間違いなく楽しめるだろう。

60点
独裁制の発生原理を実験したら大変なことに

ある大学の実験で、募集して集めた人間たちをそれぞれ囚人役と看守役に分け、擬似刑務所を運営することになった。だが何日もたたぬ内に虐待行為など、シャレにならない変化がおきたので、実験は急遽中止されたという。

有名な都市伝説……というわけではなくこれは実際にあったことで、スタンフォード監獄実験と呼ばれ71年に行われた。それを大幅にフィクションを加えて映画化した『es [エス]』(01年、独)は、怖いもの好きな人々の間で大いに人気がある。

その同じドイツ映画界から、スタンフォード監獄実験より以前に行われた、もっと恐るべき心理実験の映画が登場した。もとになった実話は、67年にやはりアメリカの高校で行われた、ある実習授業である。映画は舞台をドイツに移し、衝撃の実験結果を余すところなく伝える。

60点
作り手の高い技量を感じさせるコメディ

『なくもんか』は、タイトルから想像できるとおり最後にホロリと泣かせるコメディドラマであり、作り手、役者の高いテクニックを感じられる作品である。しかしながら、あるいは、だからこそというべきか、その手法は時にあざとさのようなものを強く感じさせる。大きく好みが分かれそうな作品といえるだろう。

祐太(阿部サダヲ)は、幼いころ父に捨てられたが、親切な「デリカの山ちゃん」店主一家にわが子のように愛され、幸せに育った。そのためか、彼は絶対に頼まれごとを断らず、どんな仕事でも、たとえ無償でも喜んで働いた。やがて商店街の名物となった祐太だが、彼には生き別れた弟といつか会いたいという長年の願いがあった。

この映画の手練れたつくりは、個人的には相当苦手な部類であるのだが、その上手さ、良さはもちろん理解できる。クドカン脚本らしい強引気味なギャグにノれる人であれば、気分良く楽しんで帰ってこれるだろう。泣かせるシーンの直後に笑いを入れるタイミングなど、完璧すぎてコメディのお手本のようだ。ようはそれを素直に笑えるかどうか、である。

60点
東野圭吾の社会派ミステリを映画化

手元にはあるのだが、あまりの分厚さにいまだ原作を読んでいない。だから映画との違いはわからないが、なんとなく想像がついてきた。というのはすなわち、なぜこの映画がイマイチなのか、という理由についてである。

長峰重樹(寺尾聰)にとって、妻が死んで以来、唯一の家族で希望そのものだった高校生の娘、絵摩(伊東遥)が殺された。絶望に打ちひしがれる重樹の元に、ある日匿名で電話が入る。それは、犯人の名前と住所を密告する内容だった。

愛するものを奪った犯人に、警察も法も届かない。そんなとき人間は何を考え、どう事態(と自らの心)に決着をつけようとするのか。重いテーマをもつ犯罪ドラマだ。その主題に合わせるように、映像も重苦しい質感。深い悲しみを内に秘める中年男、といった人物は、主演の寺尾聰にとってもハマり役だろう。

60点
ヒロインはいい女だが、だからこそ男は耐えられない

同じ週に公開される『カイジ 人生逆転ゲーム』が新世代のだめ人間を描いているとしたら、『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』の主人公は元祖ダメ人間。生誕100年となる太宰治による短編『ヴィヨンの妻』をベースに、他のさまざまな作品の内容を組み込んだ、太宰文学(の中のダメ的側面)集大成のごとき内容となっている。

敗戦の混乱が収まらぬ時代の東京。才能あふれる小説家、大谷(浅野忠信)は、しかし精神的な重圧に抵抗しきれず、酒と女に溺れ、自殺のことばかり考えている。仕事もせず飲み歩くばかりで金もない彼は、ついに行きつけの小料理屋から大金を盗みだす。それを知った大谷の妻、佐知(松たか子)は、小料理屋の店主夫妻に頼み込み、とりあえず店で働き出すが、その朗らかな性格と美貌から、一躍人気者になってしまう。

傍目にはダメ夫の尻拭いをしてくれる最高の奥さんであるが、主人公は逆に嫉妬に狂い、さらに欝へと落ち込んでいく。

60点
へんな映画

松本人志監督の『大日本人』に続く第二弾は、試写会を行わなかった前回より、ある意味で秘密主義の宣伝戦略がなされた。ようは、一応マスコミに見せはするが、あれは書くなこれは書くなと細かい注文をつけ、監督のメディア露出も謎のパジャマ姿のみという、視聴者の興味を引く作戦だ。

このパジャマ姿の男は、2つのストーリーが同時進行する本作の、作品世界の根幹を成す側の主人公。年齢不詳、国籍不詳、四面を真っ白な壁と天井に囲まれた何もない部屋で、彼は目覚める。どこかから拉致されて監禁されているのか? それとも夢の中か。あるいはあの世なのか。いや、そもそもここは"死後"の世界ではなくむしろ……。

ともかく、観客にも男にもそれはわからない。ただ彼は生物としての本能か、とにかく脱出しようと試みる。ただしできることはほとんどない。「あること」をするのみだ。それが何かは見ればわかるし、もう公開日を過ぎているのだから律儀に宣伝会社のNGリストなど守る必要はありゃしないが、知らないほうが楽しめると判断し、あえて伏せておきたい。

60点
ライアン・レイノルズに猛省と筋トレを勧告する

東京メトロの壁には大きなヒュー・ジャックマンの宣伝ポスターが張ってあり、「今度はオレが主役だ」とのコピーが書いてある※前公開作へからの交代、という意味の絵柄でしたのでこの後の箇所を訂正しました(2009/09/14)。そんなわけでスピンオフ超大作『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』である。

舞台は19世紀。不死身の能力を持つ少年ローガンは、同じ力を持つ兄ビクターと家を飛び出し、二人きりで生きることに。彼らはあらゆる戦場でその能力を生かし、やがて他の追随を許さぬ戦闘能力を身に着ける。その活躍を知った軍人ストライカーは、兄弟を特殊部隊「チームX」にスカウトする。

ウルヴァリン誕生までを描く本作のストーリーは、やがてX-MENシリーズの一作目へとつながる。よって、映画でおなじみのキャラクターもチラと出るし、ガンビットやデッドプールなどこれまで原作限定だった人気キャラクターも続々と登場してくる。

60点
普通の刺激じゃ感じないアナタに

どの映画紹介をみても、これ以上ないほど煽りまくっている『マーターズ』だが、確かに強烈なグロ描写、容赦ない「痛み」の疑似体験効果は映画というジャンルの中では最高レベル。

しかしながら、その内容は一般的なホラームービーとは180度異なる、きわめて真面目・真剣なもので、描くテーマは笑って見られるようなものではまったくない。残酷スプラッターB級ホラーでは決してなので、ご注意を。

70年代のフランス、食肉加工工場跡に監禁されていた少女リュシーは、孤児院に保護される。そこでの親友アンナ(モルジャーナ・アラウィ)の存在によってトラウマを癒し、やがて彼女は美しい娘(ミレーヌ・ジャンパノイ)へと成長する。だが、アンナはリュシーの内面を、いまだ完全には理解していなかった。

60点
ワニ川に取り残された一家の悲劇

外洋でダイビングを楽しんで水上に出たら、船がいなくなっておりました。で知られる『オープン・ウォーター』シリーズは、しゃれにならない実話ものとしてそこそこの成功を収めたが、本作もその系統の実話もの。今回犠牲になるあわれな3人は、世にも恐ろしい、ワニだらけの水泳大会を体験することになる。

バカンスでオーストラリアにやってきた姉妹グレース(ダイアナ・グレン)とリー(メーヴ・ダーモディ)、姉グレースの恋人アダム(アンディー・ロドレーダ)。3人は楽しみにしていた「野生動物見学ツアー」の船に乗り遅れ、やむなく小船で川釣りに出る。ところがそこは巨大ワニ、クロコダイル(体長3メートル)の巣窟だった。

初デートで井の頭公園のボートに乗ると別れる、なんて都市伝説があるが、そんなカップル用ボートに毛がはえたような小船で出かけたのが運のつき。観客の期待、いや危惧通り、3人とガイドを乗せたボートはワニくんの体当たりでひっくり返る。

60点
スケールアップした続編に、アメリカ人の気弱な本音が垣間見える

『ナイト ミュージアム2』は、全米興行ランキングで本命視されていた『ターミネーター4』を打ち破り、堂々のトップを飾った。確かにこれを見ると、いまどきのアメリカ人の心理、何を求めているのかがわかるようで興味深い。

前作から数年後。相変わらず毎夜動き回るNY自然史博物館の展示物たちは、改装のためワシントンのスミソニアン博物館へと移送されることになった。ところが例の魔法の石版のせいで、スミソニアンの展示物まで動き始めたからさあ大変。元警備員のラリー(ベン・スティラー)は再び騒動を静めるべく、現地に向かうが……。

石版の力で博物館の展示物が動き出すというアイデアの第二弾。世界最大の博物館(群)、スミソニアンに舞台を移したことにより、スケールは大幅アップ。世界的に有名な博物館であるから、アメリカ人以外にもおなじみのあれやこれやが動き出す姿に、私たちは驚かされる。ハリウッドにとっても世界中の博物館の数だけ続編ができる、いい鉱脈が見つかったというわけだ。次はぜひ上野の山に来ていただきたい。

60点
オーガニック生活に誘う入門編

先日ある経済学者が、俗に言う「食糧安全保障」の考え方を否定し、穀物自給率にこだわる愚かさを指摘していた。たとえば農業には石油も必要だし、生活には他の物資も不可欠だ。なのに食糧の自給率ばかり気にしてどうするのかと、そんな主張だった。

これが机上の空論というやつかと、しばし呆然とした。

論には事実(ファクト)で反論するのが原則というが、学者が何を言おうと世界の国々は「食糧は最強の武器」(=食糧安全保障)との認識で動いている。

60点
泣ける度は100

『HACHI 約束の犬』の主人公ハチ役は秋田犬、いわば日本人だから、この映画がアカデミー主演男優賞をとれば初の日本人受賞。

そんな冗談を飛ばしたくなるほど、この犬の演技はすごい。とくに老犬バージョン、いったい誰があんなメークをしたんだと叫びたくなるほど、出てきた瞬間「これはヤバい」と思わせる。いずれにしてもこの映画、泣ける度だけなら100点。フジテレビ開局50周年記念、『ハチ公物語』(87年)のアメリカ映画版リメイクの名にふさわしい、号泣実話動物映画である。

舞台はアメリカ郊外のベッドリッジ駅。迷い犬の子犬を拾ったウィルソン教授(リチャード・ギア)はハチと名づけ、家族の反対を押し切って自宅で飼うことに。強い絆で結ばれた教授のため、ハチは毎日駅まで送迎するほどで、駅前の人々の間でも有名であった。ところがあるとき、勤務先の大学で教授の身に事件がおきる。

60点
イ・ビョンホンが日本の忍者を好演

『G.I.ジョー』は、テレビ番組で流される紹介映像や予告編を見てから本編を見たとき、「このシーン、そういえば前に見た気がする」感を味わえる典型的な映画である。

ナノテクを駆使して作られた究極のウィルス兵器を輸送中のNATO軍が襲われた。しかも謎の襲撃軍は、デューク(チャニング・テイタム)、リップ・コード(マーロン・ウェイアンズ)ら優秀な隊員らの奮闘を一息で吹き飛ばすかのような強力な装備を持っていた。やがて絶体絶命のNATO軍の前に、見たこともない別の兵士が現れる。

私の場合は、試写などで本編をみてから冒頭に書いたような映画紹介番組等を見ているわけだが、これが笑ってしまうほどにネタバレで参る。勘のいい人なら、そのコーナーを見るだけで、最初から最後までストーリーを言い当てられるほどだろう。あわせて映像的な見せ場もほぼ紹介されているので、映画館に行く必要はほとんど感じられない。最近のは、見ずとも記事をかけるよ、などと映画専門でないライターに言われても、反論すらできないのが情けない。

60点
男子禁制の女の子ムービー

いつからか、ちょっと微妙なタレントが女性誌でヌードになる事例が増えてきた。「オンナが憧れる自立した姿をアピール」「男に見てほしくて裸になっているわけじゃない」等の思いがそこには感じられる。

映画『そんな彼なら捨てちゃえば?』も100パーセント女性向けの作品であるが、その中には当代きっての美人女優二人の激しいラブシーンが存在する。もちろん、それは登場人物のオンナゴコロを体を張って表現した、必要不可欠な演出だ。

この二つに共通する真理は、女性の観客の前で表現するときの女優、タレントは、女である前に一人の人間としての魅力を振りまいているということ。そして、どこで彼女らが脱ごうと男たちはエロい目で見るということである。

60点
よりにもよって、こんなトコからやりなおすの?!

学校の子供たちが、成長後に開けるいわゆるタイムカプセル。連中が入れるものといったら、ガラクタだのよげんの書だの、たいていろくでもない物と相場が決まっているが、『ノウイング』に出てくる少女が入れたものは格別だ。なんと将来起きる災害・大事故の類を網羅した、ノストラダムスもびっくりの暗号表だったのだ。

マサチューセッツ工科大学に勤める宇宙物理学者ジョン(ニコラス・ケイジ)の息子(チャンドラー・カンタベリー)が、小学校の記念式典で50年前に埋められたタイムカプセルの中から、一枚の手紙をもってきた。無意味な数字の羅列のように見えるそれは、しかしジョンのインスピレーションを刺激し、隠された予言を彼に伝えることになる。

偶然にも、主人公が天下のMITの教授だったおかげで、やがてとんでもない内容があきらかになる。この前半のテンポよさ、面白さは上々。スケールがどんどん大きくなっていく展開にもワクワクする。

60点
苦労したことはわかるが、そればかり前面に出すのはどうか

日本地図最後の空白地を埋めるため、命がけの挑戦をした男たちの実話ドラマ。『劔岳 点の記』は、かように魅力的な題材であるが、初監督作品特有の限界が見える、惜しい一品であった。

明治39年、ロシアの南下に備えるため、日本陸軍は国内地図最後の空白地、劔岳の測量を決定する。その任を命じられた参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎(浅野忠信)とそのチームは、現地民で山に詳しい宇治長次郎(香川照之)を頼りに、この未踏峰に挑む。一方、日本山岳会のリーダー小鳥烏水(仲村トオル)もこの山を狙っており、あたかも二人の登頂対決のごとき構図となってゆく。

海外の最新装備でクレバーに攻める民間チームと、現地ガイドの豊富な経験を頼りに根性で進む軍チーム。ドラマに乏しい本作のストーリーに花を添える設定だ。ちなみにこれは脚色で、史実では二者の登頂時期は微妙にずれている。

60点
ロマンチック戦争ムービー

『真夏のオリオン』は、戦後ニッポンらしく反戦イデオロギーの人ばかり出てくるが、なかなか力の入った潜水艦ムービーである。

第二次大戦末期、米軍の本土上陸を防ぐため、日本海軍は最後の防衛線として残存する潜水艦を沖縄沖に展開していた。艦長・倉本(玉木宏)のもと、意気盛んなイ-77号クルーも、数々の修羅場を潜り抜け、いまだ健在であった。やがて彼らは、米海軍の誇る歴戦の勇士マイク・スチュワート率いる駆逐艦パーシバルと遭遇。双方一歩も引かぬ、壮絶な戦いが開始された。

50年もたって、潜水艦映画の金字塔『眼下の敵』(57年、米)の後追いをやっているというのも切ない話だが、一応最新映画だから戦闘シーンはこなれていて、それなりに盛り上がる。

60点
ただし出演者に興味を持っただけの人にはまったくすすめない

先日書き下ろし新作「1Q84」が発売されたばかりの村上春樹。その代表作「ノルウェイの森」の待望の映画化企画が進行中だが、松山ケンイチ、菊地凛子といったキャストに加え、監督に決定したのがトラン・アン・ユン。ベトナム出身、フランスで活躍中の監督だが、その最新作が『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』。木村拓哉、イ・ビョンホン、ジョシュ・ハートネット……日米韓のハンサム俳優勢ぞろいの話題作だ。

刑事時代のトラウマをかかえた私立探偵(ジョシュ・ハートネット)は、ある大富豪から失踪した息子シタオ(木村拓哉)の捜索依頼を受ける。LAからフィリピン、香港と探し回る中、やがてマフィアの若きボス(イ・ビョンホン)もシタオを探している事が明らかになる。

キムタクをさがせ! という、この表面的なストーリーにさほどの意味はない。私立探偵は到底マジメに探しているようには思えないし、そもそも捜索のセオリーを監督らが取材した形跡もない。頭で考えただけの、とってつけたような筋書き、キャラクター設定にすぎない。そこを見ていてもイラつくだけである。

60点
≪オジサン向け冒険映画≫

いかにもオトコが考えたような初恋の人キャラクターを演じる清水美沙が、妙にエロかわいい本作。演じる本人も、監督も、「リアリティより観客受け」をよく理解している事もあり、えらく魅力的なヒロインとなった。ただし、女性にとってどう見えるかは不明だが。

東京でIT企業を経営する泊哲郎(石黒賢)は、久しぶりに北海道江差に帰郷した。東京の暮らしに疲れ果てていたところに、再会した同級生・杉山由紀(清水美沙)の励ましもあり、彼はこのまま地元で少年時代の夢を追いかけることにする。北海道無寄港一周というその目標を、漁師となったかつての友人たちと共に、着々と準備していく。

オヤジのための冒険啓蒙映画であると同時に、ちょっぴり社会派なテーマも含んでいる。それは、主人公の「真の目的」にかかわる事だが、北方領土問題と向き合うそのクライマックスは、この手の小規模な作品にしては迫力がある。

60点
タブーだらけのタイ製リアルアクション

試写会でこれを見終わった後、熱心な映画会社のお兄さんが追いかけてきて感想を聞いてきた。それに対し私は「申し訳ないけどこれは(マスコミでは)紹介できないよ」と回答した。

2時間を6時間ほどに感じさせるような、時空を捻じ曲げるパワーを持つ駄作の場合も似たようなことを言う場合があるが、本作はそれには当たらない。むしろ、世界的に見てもすぐれた部類に入るアクション映画なのに、だ。

日本のヤクザ(阿部寛)とタイ人の母を持つゼン(ジージャー)。彼女は、アクション映画で一度見た動きはすぐに体得してしまう動物的本能を持ち、その結果、若い女の子とは思えぬ身体能力を誇っていた。そんなある日、母親が白血病で入院。多額の治療費にあてるため、ゼンはかつて母が金を貸した先を尋ね、回収して回ることにする。

60点
ハリウッドマッチョ対決

かねてから映画界に興味津々のK1の番長、ジェロム・レ・バンナは、今回なんと数少ないマッチョスターの生き残り、ヴィン・ディーゼルの主演作で共演し、格闘シーンまで演じるという話題性を提供してくれた。

荒廃した近未来のセルビア。金で何でも運ぶ凄腕の傭兵トーロップ(ヴィン・ディーゼル)は、モンゴルの修道院からアメリカのニューヨークまで、一人の娘(メラニー・ティエリー)を送り届ける仕事を依頼される。保護者としてついてきたシスター・レベッカ(ミシェル・ヨー)を加え、3人で長い旅に出たトーロップだが、次々と強力な追っ手に襲われる。いったいこの娘の正体はなんなのか。

批評家からも観客からもそっぽを向かれ、米国ではコケてしまった本作だが、退屈しない程度には楽しめるSFアクションとなっている。

60点
チェホンマンとキャシャーンが大暴れする時代劇

各方面に衝撃を与えた『CASSHERN』(04年、日)一作で、紀里谷和明監督が娯楽映画作りのコツを学んでしまったのだとしたら、ある意味日本映画界は貴重な才能を失ったことになるのかもしれない。

本能寺の変を経て、秀吉が天下統一したつかの間の平和。そこでは庶民の人気を集める義賊、石川五右衛門(江口洋介)が活躍していた。あるとき彼は、盗んだ品物の中に奇妙な箱を見つけるが、値打ちなしと判断し捨ててしまう。ところが舎弟格の猿飛佐助(ゴリ)からの情報で、それが重要なものと知り、彼らは再度探しに出かける。

なんと『GOEMON』は驚くべきことに、普通に面白い。監督独特のビジュアルセンスはそのままに、退屈しらずのアクション時代劇として成立している。しかも、キャシャーン並のトンデモな魅力まで兼ね備えているのだから文句なしだ。前作を批判した私としても、これは認めざるを得ない。

60点
加護亜依、サモ・ハン・キンポーと世界に打って出る

何かと世間を騒がせている加護亜依の世界デビュー作となった『カンフーシェフ』は、加護ちゃんやサモ・ハン・キンポーをはじめするキャスト、および主題である料理の魅力を引き出した、なかなか小気味いいアクション作品となった。

陰謀により店を去ることになった名シェフのホアン(サモ・ハン)は、縁のあるレストラン"四海一品"へ身を寄せる。美人姉妹のチン(チェリー・イン)とイン(加護亜依)が必死に守るこの店は、しかし実力ある料理人の不在で経営ピンチに陥っていた。

カンフーと料理と元モー娘。。先行き何も考えていないような組み合わせのノーテンキさが、往年の香港映画を思わせる本作の魅力とマッチしている。

60点
貧乏労働者の生々しい日常

本物のビンボー派遣社員が、自らの生活のすべてを自己撮りした超リアルドキュメンタリー『遭難フリーター』は、見ようによっては最底辺の労働者を勇気付けてくれる。

ただそれは、映画の内容が希望に溢れている、という意味ではまったくない。むしろ逆で、これを見ると、彼らがいかに救いようのない絶望的な状況におかれているか、嫌になるほど実感できる。

普通に働いていても、彼らが中流階層にまで上る可能性はほぼゼロだろう。経済的な面以外で人生の目的を見出せなければ、こうした人々の自殺者は増える一方になるに違いない。

60点
ニクソン大統領の歴史的メディア対決を描く

『ウォッチメン』と合わせ、リチャード・ニクソン大統領関連の映画が、偶然にも同週公開となる。

ニクソン大統領といえば、ベトナム戦争からの撤退や変動為替相場制を取り入れた、歴史に残る数々の政策で知られる。アメリカの歴代大統領の中でも重要な人物であることに疑いはないが、もうひとつのイメージとして「メディアの力に負けた」というものがある。

ケネディとの大統領選では、勝利目前の最終局面で行ったテレビ討論で、白黒テレビに映えないグレースーツとノーメーク、汗っかきの体質のせいで一気に逆転されてしまった。一方、ケネディはプロのスタイリストの助言を取り入れた濃色のスーツや明るいメークで、政治の専門知識の乏しさを補って余りある効果を得ていた。

60点
専門家お墨付きの医療シーンが見所

『チーム・バチスタの栄光』の続編となる本作は、前作と同じ監督、同じメインキャスト、同じムードの作品として作られた。海堂尊の原作では男であるはずの狂言回しのキャラクターを、竹内結子に変更することで、でこぼこ男女ペアの楽しい謎解きモノにした点も、もちろん変わっていない。

だが、このコンセプトが2作目では完全に裏目に出た。

チーム・バチスタの事件から立ち直りつつある東城大学付属病院で、再び事件がおきた。ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)の異名をとる救命救急センター長の速水(堺雅人)が、医療メーカーと癒着し、多額の金銭を享受しているとの内部告発があったのだ。無理やり倫理委員会の委員長に任命されていた女医・田口(竹内結子)は、偶然にもケガで運ばれてきた厚生省の切れ者官僚・白鳥(阿部寛)と共に、再び院内の調査に当たるハメになるのだった。

60点
ナチスドイツの手から逃れ、森に集まったユダヤ人たちの運命

イスラエルによるガザ侵攻で多数の死者が出ている今、『ディファイアンス』のような映画が上映されるのは興味深い。

聖書の出エジプトのエピソードをモチーフにしたこの「ユダヤ人受難もの」は、しかしこれまでの同種の作品とは趣が異なる。ようは過去作品の一部にある、うんざりするような被害者意識のようなものがあまり見受けられないから、そうしたものが苦手な人にもオススメできる。

1941年、ソ連領ベラルーシの森。ここには隣国ポーランドから、ナチスに追われたユダヤ人たちが多数逃げ込み、さまよっていた。自らも家族をドイツ兵に殺されたトゥヴィア(ダニエル・クレイグ)らビエルスキ三兄弟は、こうした同胞を見捨てることができず、彼らを保護しつつ森の奥へと隠れ場を探して進んでいく。だがその数は予想以上に膨れ上がり、トゥヴィアはリーダーとして大量の食料などを調達せねばならなくなる。

60点
ABBAの楽曲を使ったミュージカル映画

日本公開の時期が世界でもどん尻の方、ということもあり、この映画最大の宣伝文句は「ミュージカル映画史上、もっともヒットした作品」ということになっている。わが国でも劇団四季の公演が人気を博しているとおり、原作ミュージカルは様々な国で広く受け入れられている。映画化にかかる期待は大きいものがあったわけだが、結果は予想通りの快進撃といったところだ。

ギリシャの美しい小島、カロカイリ島で小さなリゾートホテルを営むドナ(メリル・ストリープ)は、女手ひとつで育てた一人娘のソフィ(アマンダ・セイフライド)の結婚式を明日に控え、準備に忙しい。一方ソフィは、「バージンロードを父親と歩く」夢をかなえるため、ドナが語ろうとしない父親の正体を調べていた。母親の古い日記からその候補を3人に絞ったソフィは、ドナに内緒でなんと全員を結婚式に招待してしまう。

きらきらと輝くエーゲ海をバックにヒロインが「Honey Honey」を歌いだすと、観客の幸福感はのっけから最高潮。この曲を歌うアマンダ・セイフライドが魅力的な声質で、アレンジもノリがよく、アバのオリジナルを凌駕するほどイイ、と感じさせる。舞台となる架空の島(ロケ地はスコペロス島)の景色がまた、この世のものとは思えぬほど素晴らしい。

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