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2121件中 951~1000件 を表示しています。
60点
アメリカの変態仮面

他者を激しく攻撃する政治家はカリスマを感じさせ、信者のような支持者を増やすことがある。だが、だからこそヘタを打つとかっこ悪さ100倍でたたかれまくる。

最近では、「国会にプラカードを掲げても何も生まれない」と、だれがどう見ても民進党のことを皮肉った安倍首相に抗議した蓮舫代表に対し、別に民進党なんて一言も言ってないよと首相みずからうまいこと切り返した事件が思い浮かぶ。

ここで終わっていれば良かったが、完全論破の陶酔感に浸ってしまった油断か、彼は直後に「訂正でんでん」などと痛恨の恥ずかしミスをしでかしてしまった。当然、翌日から全マスコミでこのみっともない失敗を報道されまくることになってしまった。教祖様のあまりにカッコ悪い姿に、信者たちも頭を抱えたことだろう。

60点
天才一人では世に出ることはできないという真理

ノーベル賞を取った大隅良典教授には、共同受賞も期待された研究パートナーがいたという。また、米国で活動していた彼を東大に呼び戻した安楽泰宏氏もまた、大隅教授の研究人生におけるある種のターニングポイントだったかもしれない。

1914年のイギリス、ケンブリッジ大学の数学者G・H・ハーディ(ジェレミー・アイアンズ)のもとに、インドから手紙が届く。それによると港湾事務局で働く元路上生活者のラマヌジャン(デヴ・パテル)が、画期的な研究成果を上げたという。それが自らの研究を否定するものだったにもかかわらず、才能を感じたハーディはラマヌジャンを大学に呼び寄せる。

大隅良典にしろ、数学界の巨人ラマヌジャンにせよ、天才はその才能を見出す誰かによってチャンスを与えられ、初めて世に出ることができる。また研究にしても一人でできることには限りがあり、優れた助力者によるブースト効果というものは無視できない。

60点
闇を歩く17歳の視点

17歳をテーマにした映画は数多い。それだけ人間にとって節目の年、あるいは何か言及したくなるようなユニークな年代ということであろう。湊かなえ原作小説の映画化「少女」もそんな17歳の女の子二人を中心としたドラマだが、これをいったい誰に見せるのか、という点があやふやなために傑作になり損ねた印象である。

幼馴染の女子高生、由紀(本田翼)と敦子(山本美月)。かつては明るかった二人は、今は暗い高校生活を送っている。由紀は少女時代に負った醜い傷跡のトラウマを上書きするかのように自作の小説執筆に明け暮れる。敦子は特技だった剣道でミスをして同級生に迷惑をかけ、未だひどいいじめにあっている。ありふれた二人の悩みは、しかし閉塞的な世界で生きる17歳には死の影すら感じさせるものだった。

主演の本田翼が素晴らしい演技を見せる。無表情で大人びた様子は一見女子高生には見えないが(実際の年齢もかなり上だが…)、大事なものがなくなったときや性的な危機に対する狼狽の様子や、自分が大きなミスをしてしまったことへの絶望の叫びなど、その「強さ」が崩れる瞬間、もろさのような感情の発現が秀逸である。誰もが認める整いすぎた顔立ちは、本作では近寄りがたさを感じさせるが、これも17歳の不気味さ、理解不能さを表現するにはふさわしい。

60点
完成度は下がったが見られるのはうれしい

映画史上稀に見るテンションを保ったまま完結したボーンシリーズ三部作。しかしその後、世界観を同じくするスピンオフ的作品「ボーン・レガシー」(2012)は、三部作に比べればいまいちな反応であった。

やはりファンはマット・デイモンのボーンを待ち望んでいたわけだが、その希望がかない、このたびポール・グリーングラス監督による堂々の続編、新章が始まることとなった。

世間から隠れてひっそり暮らすジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の前にかつての同僚ニッキー(ジュリア・スタイルズ)が重大な情報を持ってくる。彼女の情報には、ボーンの父親に関する事柄が含まれていたのだった。彼は、CIAから追われることになりながらも新たな戦いへと旅だつのだった。

60点
ライアン・レイノルズも歓喜のブレイク推しサメ映画

安直な邦題、安っぽいCGサメ、いかにも金のかかっていない少数キャストのワンシチュエーションもの……。「ロスト・バケーション」は、ブレイク・ライヴリーの名前がなければ「マツコ&有吉の怒り新党」の新3大サメ映画あたりにノミネートされそうな鮫パニックである。

秘境のビーチにやってきた医学生でサーファーのナンシー(ブレイク・ライヴリー)。沖合にある奇妙な物体をみつけた彼女は、そこで突然サメに襲われ負傷する。必死に近くの岩場に泳ぎ着くが、血液の臭いからか、サメは彼女のそばを離れない。まもなく満潮になり、彼女の岩場は水面下に沈む。岸は目に見えるほど近い。残された時間はわずか。はたして彼女の運命は……。

件の番組でサメブームを仕掛けた張本人の映画批評家としては、「ロスト・バケーション」のようなキワモノパニック映画は外せない。喜び勇んで見に行くと、なかなかどうして、ギャグ抜き、超真剣につくられたガチンコのサバイバルドラマであった。

60点
CGキャラとの演技合戦

夏の大作群に先駆けて公開される「ウォークラフト」は、プレイヤーの登録数がギネス記録を持つ超人気オンラインゲームの実写化。圧倒的知名度と期待を背負った実写版だけに、早くも世界19か国で興収トップを記録した大ヒット作だ。

人間が住む王国アゼロスに、故郷を失ったオークの軍団が侵略してきた。全面戦争の危機の中、ひとりのオーク氏族長だけは共存の可能性を探っていたが……。

ジャンルは「ゼルダの伝説」や「ドラゴンクエスト」、映画でいえば「ロード・オブ・ザ・リング」と同じく中世ファンタジーに属する。エルフやドワーフ、ゴブリンが闊歩する定番の世界観は比較的なじみやすい。

60点
IMAX-3Dの最高の環境で見てもこのくらい

20年前に公開された前作「インデペンデンス・デイ」は、日本でも113億円もの興収を記録。アメリカ万歳な内容から、ハリウッド史上まれにみる成功を収めた米軍プロパガンダ映画、などと評価されたりもしたが、この続編「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」も、専門家でさえ予想できなかったブレグジット直前に英国で公開されていたことから、同様の評価(?)を得ることになるかもしれない。

96年のエイリアン襲撃から20年、人類は次なる戦いに備えていた。エイリアンのテクノロジーを利用した動力システムやシールドをはじめ、月面基地には強力な母艦迎撃用の主砲も備え付けた。そしてついに「彼ら」はやってきた。だがその宇宙船のデザインは大きく異なっていた。前回の襲撃を知る技術者(ジェフ・ゴールドブラム)は、とっさに「攻撃するな」と進言するが……。

本作が英国紳士たちの独立心をどれほど刺激したのかはともかく、これみよがしな中国人キャラクターなど、相変わらず政治的な香りの高いエンタメ映画である。とくに大統領が「女」という設定は、前作をホワイトハウス試写会で絶賛してくれた民主党クリントン大統領(当時)への、まるで恩返しのようだ。

60点
シャーリーズ・セロンの境遇と似すぎ

「ダーク・プレイス」は、「ゴーン・ガール」の大好評が記憶に新しいギリアン・フリン原作「冥闇」のミステリードラマである。私は「ゴーン・ガール」クオリティの作品がこんなにも早く見られるなんてと期待して見に行ってみたのだが、あちらほど万人には進めがたい内容であった。

85年にカンザス州の田舎でおきた凄惨な事件。家族を次々と惨殺されながらも当時8歳の少女リビーの証言が決め手となり、兄のベンが逮捕された。それから28年後、生活に困窮するリビー(シャーリーズ・セロン)のもとに、過去の事件の再検証を行う同好会「殺人クラブ」から事件の話を会合でしてくれないかとの誘いが来る。

まず、シャーリーズ・セロン演じるリビーの役柄が面白い。幼い頃、ひどい事件の被害者となった彼女の元には、全米から億単位の寄付が寄せられた。その大金によってなに不自由なく暮らせた彼女だが、しかしその金は28年間でつきてしまった。気づけばリビーは、なんのスキルもない中年女というおよそ社会のヒエラルキーのなかでも最下層に放り込まれてしまっていたのである。

60点
ディズニーの自信を感じる一本

かつてはドリームワークスアニメの得意技だったアンチディズニー的なるものを、今や本家がやっていると私は何年も前に指摘した。それほど自らの築き上げてきた世界観、ポリシーに自信を持ち始めているわけだが、この最新作「ズートピア」もそうした最近のディズニーらしさがよく出た作品である。

あらゆる動物たちが生きられるよう、エリアごとに気候を調整した動物たちの楽園ズートピア。ここでは肉食草食とわず、動物たちが共存している。そしてウサギのジュディは必死に努力し、ついにここで警官になる夢を果たした。そんな新人警官ジュディはキツネの詐欺師ニックと出会い、ひょんなことから一緒にある事件を追いかけることになるが……。

怖いもの知らず&ちょいと世間知らずだからこそ、猪突猛進で夢をかなえてきたジュディ。対照的に、夢も善意も信じず、その見返りに抜群に世渡りがうまくなったニック。この二人が補完しあい、互いによい影響を与えていく。まあ、子供向けアニメとしてはありがちな大筋である。

60点
機械人形が目指す夢?

コンピュータが自らを改良することができたら、彼らはどこまで進化するのだろう。少なくとも人類のポテンシャルを、あっという間に越えてしまうことは間違いない。それは古くから技術者、SF作家たちが考え続けている魅力的な思考実験でもある。そして映画「オートマタ」は、そうした妄想が好きな人におすすめの、静かで世界観重視のSF映画である。

環境破壊と砂漠化が進んだ2044年。オートマタと呼ばれる人型汎用ロボットは、社会生活に欠かせない存在となっていた。厳密に管理、プログラムされたオートマタだが、ある場所で一体のロボットが予期せぬ挙動を見せ始めるのだった。

この作品に出てくる人型ロボットオートマタには、二つのプロトコルが実装されている。アシモフの昔からお馴染みの、ロボットに必須の制限ルールというやつだ。本作では一つ目が「生命体に危害を加えない」、二つ目が「自分で自分を修理改造しない」となっている。

60点
漂流物原型

ハーマン・メルヴィルの「白鯨」の真実に迫るノンフィクション「復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇」を基に描いたドラマ「白鯨との闘い」は、「白鯨」未読者でも十分に楽しめる海洋アクションの一面も持つ。

19世紀初頭、鯨油の獲得を目指すエセックス号の一等航海士オーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース)は、平民出身ながら船員の信頼も厚いたたき上げの実力派。だが名家の息子である船長(ベンジャミン・ウォーカー)は、そんな彼のアドバイスを聞かず無理な命令を強行し、船を窮地に追い込んでしまう。

漂流物の原型のようなお話で多くの類似品が存在するがために、この手の作品はストーリーへの興味だけではなかなか難しい。そこで本作でもいろいろと膨らませてはいるが、「白鯨」の裏話実話という付加価値がないと少々厳しいであろうレベル。

60点
いまアメリカが求めるリーダー像

2016年のいま、こういう映画がハリウッド大手から出てくると、ああこの映画の裏テーマは「いまあるべき理想のリーダー像」なんだろうなと予想がつく。なにしろ今年はそういうものにアメリカ人が興味を持つ、4年に1度の特殊な年なのだから。

1950年代、北大西洋上で遭難した巨大タンカー、SSペンドルトン号はSOSを出すが、運悪く当夜は大嵐で救助船は出払っていた。残っていたのは定員わずか12名の小型救助艇のみ。しかもとても船を出せるような天候ではない。果たしてこの状況の中、沿岸警備隊員たちはどういう選択をするのだろうか。

混戦模様の大統領選真っ只中にこういう映画を見せられると、はたしてアメリカ人はどう思うのだろう。そんな風に考えながら見るとなかなかおつな一本である。

60点
倉科カナがあんなセリフを……

人気女優、倉科カナがお下劣セリフを連発する「珍遊記」は、山口雄大監督らしいおバカ度たっぷりな不条理劇に仕上がっている。

乱暴者として知られていた山田太郎(松山ケンイチ)は、天竺を目指す玄奘(倉科カナ)に屈服させられその旅に同行することになる。だがその旅路は波乱に満ちており……。

あのきれいな顔をした倉科がつるっぱげ状態で、ちんこだの放屁だのと明瞭な発音で語るたびに、自分はなんてくだらない絵図を見ているのだろうと思わず笑いが漏れそうになる。それでも、そんなばかばかしいものに笑わされることにある種のプライドで抵抗しているところを、山口監督は必死にこじ開けようとする。やがて、じじい(田山涼成)とばばあ(笹野高史)の気持ち悪いラブシーンを見せつけられたあたりで、完全にこちらの我慢は崩壊する。

60点
天才を生み出すというのは非人間的なことなのか

天才とは、誰がどう見ても貴重でかけがえのない存在だが、その才能が本人を幸せにするとは限らない。15年最大の傑作の一つ「セッション」もそうだが、今年最後の公開作品「完全なるチェックメイト」もまた、そんな苦い後味と想像をかきたてる良作である。

天才的なチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)は、現チャンピオンのソ連人ボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)との対戦を切望していた。ところがときは冷戦中、仮想敵国に長年チャンピオンを奪われ続けていた米国世論はボビーの思惑を超え、ほとんど代理戦争のごとき盛り上がりを見せるのだった。そんな異様な状況下、ボビーの脳は限界近くまで酷使され、やがて彼の行動は常軌を逸してゆく……。

将棋と違ってチェスが早い時期からコンピュータに勝てなくなったのは、この競技が些細なミスを許さず、リカバリがしにくいシビアなものだから、との説がある。劇中のボビーも言っているが、銀河の星ほどの選択肢があるように見えながら勝つためのルートは一つだけ。それを一刻も早く探し出し、先読みし、ミスせずに打ち込めるか。それがこの競技の神髄だという。

60点
こんな時代があったのか

1981年というと多くのアメリカ人は、非常に治安が悪かった年、とのイメージを持つという。NYの地下鉄は落書きだらけ、銃声が聞こえるのも日常茶飯事。そんな乱世はしかし、底辺からのしあがる成功物語が似合うときでもある。

独立系の石油会社を経営する移民のアベル(オスカー・アイザック)は、一か八かの事業拡大のためユダヤ人から将来性ある土地を購入するため頭金に全財産をつぎ込むことを決めた。ところがその途端、会社に災難が降りかかり、銀行融資の雲行きが怪しくなる。ライバル社のような違法行為に手を染めたくない潔癖の価値観を持つアベルは、はたして自分の会社とポリシーを守り切れるのだろうか。

「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」は、重苦しい映像がよく似合う不穏な時代に不穏な業界で一発当てようとする男の物語である。

60点
愛がある人間の物語は心を打つ

「シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人」は、タイトルにもなっている二人の婆さんが、今の殺伐とした時代を嘆き、なぜこんなことになってしまったのかを知るためにウォール街の偉い人に質問しに行くドキュメンタリーである。

シアトルに暮らす86歳のヒンダは口が悪く、テレビや新聞を見ては悪態をつく毒舌婆さん。親友のシャーリー92歳はそんなヒンダをなだめつつ、穏やかに見守るお婆さんだ。そんな二人に共通するのは、なぜアメリカはこんなせちがらい国になってしまったのだろうと疑問を持っていること。

その彼女らなりの予想は、経済成長至上主義が元凶ではないかというものだ。効率を求め、労働や社会から人間味を排除するこのシステムは、アメリカのいいところを徐々に削っていったのではないか。本当に経済成長とは、必要不可欠なものなのか。

60点
ジャンル読みしにくい点がいい

「THE JUON/呪怨」でハリウッドを制した清水崇監督の新作は、旅客機を舞台にしたシチュエーションスリラーである。もっとも、清水監督のことだから単なるパニックムービーにはなるまいと警戒しつつ、私たちは彼の敷いたお化け屋敷へのレールを進むことになる。

ロサンゼルス発東京行きの旅客機の中には、どこかクセのある乗客が乗っている。そんな不穏な空気の中、機体が乱気流に巻き込まれたことをきっかけに、次々と奇妙な事件が巻き起こる。

夜便とはいえ、こんな飛行機あるのかねと思わせるほどに機内照明が暗くて不気味である。離陸時からその調子だから、どこかホラーっぽさを感じさせる。この監督らしさといってもいい。

60点
究極の「自分探し」

「どこにもアタシの居場所がない気がする……」と悲劇のヒロインを気取って自分探しの旅に出る。そんな若いムスメの話ときけば、何を甘ったれたことを言ってんだ、そんなことより働け! と一喝したくなる。

その手の「オンナノコの自分探し」モノにはウンザリだというそうした男性たちも、『奇跡の2000マイル』にはぶったまげるはずだ。

24歳のロビン・デヴィッドソン(ミア・ワシコウスカ)は、母国オーストラリアの自然やアポリジニの文化に興味があったこと、そして何より都市での生活に疎外感を感じていたことから町を離れる決心をする。持ち金6ドルで中部の町アリススプリングスに到着した彼女は、手近な店に飛び込んでこう言う。「仕事はない?」

60点
せっかくのアイデアも先を越され

中国の新作アニメが「カーズ」をパクったとのニュースは、同情とともにさすがはピクサーだと人々を感心させた。だがそんなことより、自分のところの最新作が極東のマンガ映画のアイデアの二番煎じであることのほうが、よほど深刻な問題である。

11歳の少女ライリーの頭の中には5人の感情が日々会議をしてライリーの行動を決めていた。リーダー格のヨロコビ(声:エイミー・ポーラー)はライリーが大好きで、彼女が幸福でいられるように奮闘している。ところが常にマイナス思考のカナシミ(声:フィリス・スミス)が、いつも足を引っ張ってくる。いったいぜんたい、なぜカナシミみたいな何の役にも立たない感情がここにいるのだろうか。

アイデアが似ている程度の作品は数あれど、脳みその中で数名が会議をして紛糾するプロットは、偶然にしてはあまりに……と思われても無理はない。公開時期が近すぎるてんもまたしかり、だ。親会社のディズニーも似たような疑惑を繰り返しているのでなおさらである。

60点
印象に残るも、もう少し突き抜けたい

「新宿スワン」(2014)、「リアル鬼ごっこ」(2015)、「映画 みんな!エスパーだよ!」(2015)と立て続けに監督作が続く園子温監督。公開頻度もハイペースとなっているが、そんな中でも「ラブ&ピース」は、監督自身のパーソナルな好みが色濃く出た印象のシュールなドラマだ。

ミュージシャンの夢もやぶれさり、しがないヒラ社員で生きる鈴木良一(長谷川博己)。同僚の寺島裕子(麻生久美子)の思いは打ち明けられぬ引っ込み思案な彼は、あるときカメ売りから手に入れたミドリガメに心奪われる。ピカドンと名付けたそのカメに話しかけるのが心の平安となった彼だが、あるときそれを職場に見つかってしまい……。

コミュ障のごとき青年が、ミドリガメと痛々しい交流(というより一方的な語りかけ)を描く前半と、なぜか怪獣映画になる後半。いったいその二つがどうつながるのか、見る前はさっぱりわからないであろう。そんなナンセンスな物語である。

60点
非現実風味を消せていないが面白い

「予告犯」は今の日本の重大な社会問題であるワーキングプアを扱っている意欲的な社会派エンターテイメント。だが、この問題の重大さをいまいち伝え切れていない点が惜しい一本である。

新聞紙で覆面した男がネットの動画サイトで不気味な予告をした。それはずさんな管理で集団食中毒をおこした食品会社への制裁であった。当初はまったく見向きもされなかったが、その予告通りに会社が炎上し、世間は騒然とする。

「予告犯」は、すばらしいアイデアとストーリーを兼ね備えた、邦画としてはなかなかの一本。

60点
映画に騙される面白さ

世界一のスリと称される本物の詐欺師が監修しただけあって、「フォーカス」の犯行手口のディテールは興味深い。

だが終わってみれば、むしろこの映画全体にうまくだまされていただけだなと気づく。ある意味壮大な詐欺映画だった点には感服せざるを得ない。

美人だが経験不足の詐欺師ジェス(マーゴット・ロビー)は、今日もバーでカモを探して美人局にひっかけようと企んでいた。だが彼女が声をかけたのは、よりにもよって超一流の詐欺師ニッキー(ウィル・スミス)だった。

60点
脚本重視の企画には好感

最近の日本の映画ファンは見応えある脚本に飢えている。それも当然、これだけ製作・公開本数が多ければ、作る側としてもじっくり脚本を練り上げる時間などそう確保できない。結果、よくできたミステリのように複雑に組み上げられたストーリーが登場する確率はどんどん減っていく。

自他ともに認めるモテ男で外科医の亘(松坂桃李)は、はずみで一度だけ抱いた対人恐怖症のあゆみ(戸田恵梨香)から、突然妊娠を告げられる。今日が4月1日ということもあり、相手にもしなかったところ、なんとあゆみは亘がいるレストランに武装して踏み込んでくるのだった。

実績ある脚本家古沢良太によるオリジナルストーリー「エイプリルフールズ」は、前述のような良質脚本飢餓組にとっては期待の作品である。なにしろいまだに映画ファンの語り草となっている「キサラギ」(07年)以来、古沢良太の手による脚本には佳作が多い。

60点
ディスニー的なもののスクラップ・アンド・ビルド

大ヒット作「アナ雪」など、近年のディズニーは王道崩しが王道になっているという奇妙な状況にある。主だったコンテンツホルダーを買収しつくした帝国の余裕といったところだが、中でも「イントゥ・ザ・ウッズ」はきわめつけだ。

魔女(メリル・ストリープ)の呪いで子供に恵まれないパン屋の夫婦。魔女がいうには、4つのアイテムを森から持ち帰ることで呪いが解けるという。それらを集める過程で、赤ずきん、ラプンツェル、ジャック、シンデレラといった奇妙な連中と深くかかわっていく彼らだが……。

ディズニーランドが大好きなメルヘン少女がみたら仰天確実な、ディズニー自らによるディズニー壊し。数々のお姫様物語の幻想を完全崩壊させる、破壊力抜群の実写ミュージカルである。

60点
ホーキング博士の(奥様執筆の)自伝

スティーヴン・ホーキングは、おそらく世界で一番有名な物理学者だろう。だが、車いすに乗って人工音声で話す彼の、過去の半生は案外知られていない。「博士と彼女のセオリー」は、そんな天才博士の伝記物語である。

ケンブリッジ大学院生のスティーヴン(エディ・レッドメイン)は、将来を期待された若者だったが、あるときジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い恋に落ちる。ところが直後にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症。余命2年を宣告されてしまう。

この映画は、人生の節目というものを的確に描いている。我々が想像しうる彼の人生の節目とは、たとえば病気を発病する瞬間、そして重度障害者となるとき、結婚などいくつかある。

60点
2本で一つの物語

「ラブストーリーズ コナーの涙」「ラブストーリーズ エリナーの愛情」はそれぞれ独立した映画作品だが、2本ともみていただくことが大前提の企画のため、特例として2本分を一つの記事で取り扱うことにする。

大恋愛の末に結ばれたエリナー(ジェシカ・チャステイン)とコナー(ジェームズ・マカヴォイ)は、しかし愛する子供を失って以来、笑いのない生活を送っていた。エリナーの心にコナーがなかなか踏み込めないうちに、彼女はどんどん病んでいく。はたしてこの二人の行方はどうなるのだろうか。

ひとつの恋愛の始まりから終わりまでを、男女それぞれの視点で2本の映画にする。観客はどちらの映画からみてもかまわない。男と女それぞれの観客がいることを考えたら、少なくとも4つの感じ方ができるというユニークな企画である。

60点
これでも大ブーム中

「ミュータント・タートルズ」はアメリカでえらいブームとなっていて、おもちゃの世界一を決める「トイ・オブ・ザ・イヤー賞」も受賞したほど。自費出版から始まったキャラクターものがここまで育つというのは、ある意味なかなか健全な話かもしれない。

シュレッダー率いる犯罪組織フット軍団により、ニューヨークの治安は悪化する一方であった。テレビレポーターのエイプリル(ミーガン・フォックス)は彼らを硬派な報道で追いたかったが、回ってくる仕事はナンパなヒマネタばかり。だが、そんな彼女は偶然にもフット軍団を成敗する謎の亀ヒーローを目撃、追い始める。

プロデューサーとして名を連ねるマイケル・ベイの強い意向で映画化された本企画は、なるほど彼らしい大仰なスペクタクルシーンとユーモア満載の、お気楽娯楽超大作である。

60点
沖縄らしい異色のヒーローもの

2011年から始まった特撮テレビドラマの映画化「ハルサーエイカー THE MOVIE エイカーズ」は沖縄のご当地ヒーローものだが、なるほど、東京のそれとは大きく違ってなかなかユニークな価値観の作品である。

ハルサーエイカーの末裔である田畑ハル(AKINA)は、すぐれたハルサーエイカーである妹アイの陰に隠れていた。だが神の宿る森で開発が強行されるとの話を聞いて、自分が現地に向かう。するとゴミから誕生した怪物、ドブーとチリーに遭遇するのだった。

「ハルサーエイカー THE MOVIE エイカーズ」の特徴は、主人公ハルが極力戦いを避け、話し合いで化け物たちと和解しようとする点である。

60点
退屈せずに教養を

子供と楽しく見られて教養になる映画というのはなかなかない。普段からそんな不満を持つ小学生の親御さんにとって「アマゾン大冒険〜世界最大のジャングルを探検しよう!〜」は、そこそこ役に立つ一本となるだろう。

フサオマキザルのサイは、人間の少女に飼われていたが、あるときアマゾンのジャングルに迷い込んでしまう。そこでサイはこれまで見たこともない野生動物や植物、想像を絶する自然の驚異に遭遇する。はたして彼の冒険の終着点はどこにあるのだろうか。

実際にアマゾンのジャングルで撮影した映像素材を使って、フィクションのドラマを作る。ユニークだが相当な編集力、演出力を問われる企画である。動物も昆虫もお望みどおりの動きをしてくれるわけじゃないが、いくらイラついたとしても踏み潰してしまうわけにはいかない。下手なドキュメンタリーを作るより苦労が多かったことだろう。

60点
スパイ映画好きな中高年向き

ジェームズ・ボンドが活躍する007シリーズを支えてきた中高年層には、伝統的というべきスパイアクション映画のニーズがあることを「スパイ・レジェンド」は改めて教えてくれる。

往年の凄腕CIAエージェントとしてレジェンド的な存在であるピーター・デベロー(ピアース・ブロスナン)は、スイスで引退生活を送っていた。ところがかつての同僚たちが次々と殺されていることを知らされ、かつ自分の大切な人まで失ったことで、事件の真相を探ることを決意する。

「スパイ・レジェンド」は、重要人物が真横で撃ち殺される場面をはじめ、映像面でいくつかはっとさせられる切れ味鋭いスパイ映画である。

60点
壊れた人間がつきつけるこの世の現実

全米最大の個人邸宅の建築ドキュメンタリーのはずがリーマンショックで頓挫。それどころか彼らの転落物語になってしまった「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」は、映画史上に残るダイナミックな「リアル」を記録した映画となった。

不動産で成功したデヴィッド・シーゲルと、元ミセスフロリダでその妻ジャッキーは、全米で最も大きな邸宅を作ることに夢中になっていた。総工費100億円のその夢は、リーマンショックではかなく頓挫するが……。

アメリカの富豪がいかに常軌を逸した金持ちか、前半はそのスケールに驚かされる。はじめて専用機ではなく民間の旅客機に乗ったティーンエイジャーの子供たちが「なんで知らない人が乗ってるの」とマジ顔で質問したり、訳知り顔で「アタイも昔は貧しかったわ」などと語っていたり。112へーべーの家に住んでいたことを貧乏などといわれたら、東京都民の圧倒的過半数が貧乏人になってしまうのだが……。

60点
女の子感涙映画

試写室で女の子たち(40代)が泣いているのを見て、確かにこの映画は悪くないが、自分は範疇外なのだなと痛感させられた。

どこにいても強い孤独感を感じていた14歳の宮市和希(能年玲奈)は、友達に連れられた暴走族の集会で春山洋志(登坂広臣)と出会い、惹かれあってゆく。

美化した湘南、美化したバイク、美化した族に美化した彼氏、そして忘れちゃいけない美化したアタシ。アラフォーな女性たちがはるか昔に生きた、これぞ青春時代。そんな80年代を描いた、まさに美化映画。ALWAYS 三丁目のヤンキーである。

60点
定番の幽霊もの

「想いのこし」は「黄泉がえり」のヒット以来、「天国の本屋〜恋火」(04年)「いま、会いにゆきます」(04年)「ツナグ」(12年)「トワイライト ささらさや」(14年)などといった類似作品にコンセプトだけ受け継がれている、「泣ける死後の世界」シリーズ最新作。

金と女にしか興味がないろくでなしのガジロウ(岡田将生)の前に、彼が遠因で事故死したポールダンサー(広末涼子)ら4人の幽霊が現れる。成仏できない彼女たちは、ガジロウにしか姿が見えぬことから、彼に生前「想いのこし」た事をやってくれと半ば無理やり頼み込む。

「想いのこし」は、観客にさわやかな涙を流してもらい、増税オタクの総理大臣のせいでよどみきった日常のストレスを洗い流すことを目的とする映画である。その意味では、そこそこ泣ける、コンセプトに忠実なつくりになっている。

60点
高級品の使い捨て

使い捨て傭兵の映画に、往年のアクションスターを集めて次々と出演・再生させる。企画自体が自虐的ジョークのようなエクスペンダブルズシリーズだが、今回も質量たっぷり。カリフォルニアのボディビルジム近くの食堂のような大盤振る舞いになっている。

傭兵集団エクスペンダブルズを率いるバーニー(シルヴェスター・スタローン)は、CIAのドラマー(ハリソン・フォード)から新たな依頼を受ける。それはかつての仲間ながら自らの手で倒したはずのストーンバンクス(メル・ギブソン)を拘束しろというもの。多数の犠牲を避けられないと予測したバーニーは、あえてチームを解散して彼らを遠ざけようとするが……。

お皿に載りきれないほどのアクションと筋肉量で、もはやストーリーなんていらないよ、てな声が聞こえてきそうな第3作。確かにひたすらアクションと爆発を見せてくれればいい気もするが、ちゃんと各出演者のファン歓喜の見せ場は細やかに用意されている。

60点
9.11後の諜報戦を描く

イスラム国、シリア、イラン、アフガニスタン……アメリカはいったい誰と戦っているのか。全員か、それとも誰とも戦っていないのか。多極化を絵にかいたような国際情勢の全貌が見えてくるのはいつになるのか。

ドイツのハンブルグで、チェチェン人青年(グリゴリー・ドブリギン)の密入国が当局にキャッチされる。イスラムのテロリストと疑う彼らは即座に逮捕しようとするが、テロ対策チームのリーダー、ギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は彼を泳がせ、さらなる大物との関係を探るべきだと主張する。

元Mi6の原作者ジョン・ル・カレによる同名小説の映画化。映画では9.11事件によって大きく様変わりした諜報戦の現場を、リアリティたっぷりにみせる。フィクション作品ながら、他とは一線を画するディテールの丁寧な描写が見所のスパイドラマだ。

60点
贅沢なつくりの本格時代劇

本格から新味あるものまで、時代劇映画が久々に台頭してきた背景には、テレビ時代劇の減少による飢餓感と、愛国ドラマが金になるとのマーケティングの結果による。

城内で刃傷沙汰を起こしてしまった檀野庄三郎(岡田准一)は、家老から許される代わりに幽閉中の戸田秋谷(役所広司)の見張りを命ぜられる。戸田は不祥事を起こし、10年後の切腹を命じられるという前代未聞の罪に服していたが、その期限が3年後に迫っていたのであった。

時代劇というものは、基本的に日本マンセーというか、古き良き日本の良さを無条件でフィーチャーできる数少ないジャンルである。高齢のファンにくわえ、若者にもアピールできる要素がそこにはある。というわけで、大河ドラマ出演中の岡田准一のスケジュールを見事に押さえ、武士の覚悟の崇高さを描く本作は完成を見た。

60点
見た目が気持ち悪いヒーロー

「アベンジャーズ」でおなじみのマーベル・コミックス共通の世界観の中で、宇宙を舞台にした異色のヒーローもの。それが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」だ。いわば宇宙版アベンジャーズといったところだが、だいぶとっちらかってきて途中参加のハードル高いアチラと違い、本作は誰もが笑って楽しめる気軽なアクションものに仕上がっている。

幼いころから宇宙で育ったピーター(クリス・プラット)は、今ではトレジャーハンター「スター・ロード」として宇宙を飛び回っていた。あるとき彼は宇宙の命運を握るパワーストーンを手にするが、それにより星間戦争に巻き込まれてしまう。

さて、そんな主人公が組むことになる仲間たちがユニーク。モンサントもびっくり、口の悪い遺伝子組み換えアライグマ(声:ブラッドリー・クーパー)やその用心棒的存在の歩く植物(声:ヴィン・ディーゼル)。女殺し屋(ゾーイ・サルダナ)に乱暴者(デイヴ・バウティスタ)ときた。誰一人まともなやつがいない、前科者と変わり者の集まりである。

60点
坂の会話が最大の見せ場

「るろうに剣心 伝説の最期編」の翌週に、浅田次郎の短編を映画化した「柘榴坂の仇討」が公開というのは、じつに鮮やかなコントラストを感じさせる。どちらも幕末から明治という比較的近い時代を舞台にしながら、次世代感たっぷりの「るろ剣」とは対照的に、こちらはオーソドックスな本格時代劇である。

安政七年(1860年)、桜田門外の変で大恩ある主君・井伊直弼(中村吉右衛門)を救えなかった志村金吾(中井貴一)。古き時代の武士そのものといえる忠義心ある志村は、切腹すら許されずその後の人生をひたすら実行犯の佐橋十兵衛(阿部寛)を探す、それだけに費やすことになる。

浅田次郎原作らしく、泣ける場面多数。短編の映像化だからか強引なダイジェスト感もない、無理ない作りの時代劇である。

60点
コテコテのフランス人情アクション

「すべて彼女のために」(08年)、「この愛のために撃て」(10年)で知られるフレッド・カヴァイエ監督は、ドストレート、電車道のようなアクション映画で高い人気がある。大切な人のため、愛するものを救うため。その迷いなき主題を高らかに歌いあげる潔さはアメリカ人の心をも撃ち抜き、次回作ではいよいよハリウッドデビューも予定される。

人身事故の不始末から立ち直れずいまだ荒んだ生活を送る元刑事シモン(ヴァンサン・ランドン)と、それを放っておけないかつての相棒フランク(ジル・ルルーシュ)。あるときシモンの息子がマフィアの殺人現場を目撃したことから、彼らは再びコンビを組み、悲壮な戦いに挑むことになるのだった。

全米進出を前に全勝で行きたかったフレッド・カヴァイエ監督だが、予告編の出来栄えの良さに比較して、本編は少々凡庸である。絶対伝えてはならない事項を売り文句にする一部の紹介も、期待を台無しにする要素の一つである。これはいってみば、友達にミステリを手渡しながら、「結末はもちろんいわないけど、叙述トリックだよ」というのに等しい(この作品がそうという意味ではない)。

60点
映像はいいのにもったいない

ディズニーアニメには、劇場公開はされずDVDのみの続編・スピンオフが多数存在する。そういう作品を専門に作るスタジオがあるからなのだが「プレーンズ」シリーズもその一つ。世界観を同じくする大本の「カーズ」(06年)とその続編はピクサーによるものだが、そんなわけで本シリーズは彼らが作っているわけではない。

超A級のスタッフと大予算を擁するピクサーに比べれば、質が大きく落ちるのは当然だが、それでも前作「プレーンズ」(13年)はなかなかよく出来たということで、劇場公開が決定した経緯がある。

世界一周レースを制した元農薬散布機のダスティ(声:デイン・クック)だが、致命的なギヤボックスの故障でもはやエンジンを全力で回すことができなくなってしまった。やけになって町の皆に迷惑をかけてしまった彼は、その責任をとるため山岳レスキューチームで新人研修を受ける羽目になる。消防のプロたちは、レース機のそれとはまったく違った逞しさを備えており、ダスティは彼らに一から根性を叩き直されることになるのだった。

60点
ディズニーの変化球

いつのころからか、おそらくドリームワークスがディズニーのパロディ的王道くずしで天下を取ってからだと思うが、ディズニー自身も変化球を投げてくるようになった。

その集大成がまさに話題の「アナと雪の女王」で、これにはなんと魔女も運命の王子様もでてこない。ディズニー自ら、自社製品の代名詞である王道を崩しているのであり、しかもそれが大受けしている。ウォルトさんがみたらびっくりしてしまいそうだが、そんなわけで近年の王道くずしは、ディズニー映画の重要な戦略方針として存在しているといって良い。

人間の王国に待望の姫、オーロラ(エル・ファニング)が誕生するが、そこに邪悪な妖精マレフィセント(アンジェリーナ・ジョリー)が現れ、「16歳の誕生日までに姫は永遠の眠りに落ちる」と呪いをかけてしまう。なぜ彼女はそんなことをしたのだろうか。じつは、かつて彼女も美しい妖精であったが、愛した人間の男に裏切られた過去があったのだ──。

60点
すっきり整理されてはいるが

面白いストーリーは、誰しもリメイクしたくなる。ただし、国や場所を変えるだけで、そのストーリーが持つ輝きが鈍ることも、また珍しくない。

1993年。イケイケ状態の広告代理店重役ジョー(ジョシュ・ブローリン)は、致命的な失敗から泥酔。目覚めるとホテルらしき一室に監禁されていた。その監禁生活は、すぐに終わると思っていた。だがジョーの過酷な運命は、まだはじまったばかりなのだった。

韓国の名監督パク・チャヌクの同名作品のリメイクである本作は、舞台をアメリカに変更。それ以外はほとんど韓国版を踏襲している。

60点
やや長すぎる

中国は広大な内陸国家でかつ多民族国家であるから、気を抜くとすぐに内戦が起き分裂してしまう。だからそのリーダーは、のんきに民主主義などいっていられないとの事情がある。独裁国家などといわれようが、ぬるい態度では足下をすくわれ、よりひどい状況になるのだから仕方がないと、そういうわけだ。

貧しい雲南省の精神病院・隔離病棟では、200人以上もの人間が暮らしている。その多くはもちろん正当な病名がつけられているが、中には政府の意向に逆らったものも含まれているようだ。ワン・ビン監督はこの病院から撮影許可を得ることに成功、遠慮なく彼らの生活の中心に入り込み、その実態を記録し始める……。

ワン・ビンという監督は、こうした中国共産党の統治方法について、中国にいながらにして厳しい批判を投げ続けている映画監督である。だが彼は先述の事情をよく知っているから、けっしてストレートな批判はしない。中国内でそんなことをすれば、本気で命が危ない。だから芸術映画のごとき退屈でわかりにくい作風の中に、ちらりとその片鱗を伺わせるにとどめる。それでも中国内部からの情報発信は貴重で、かけがえがないものである。

60点
おもしろいがテレビ向き

本作がロケをしたルーヴル美術館など世界の有名どころは、誰もがいきたがるが簡単にいけるところばかりではない。ルーヴルひとつにしたって真面目に見れば何日もかかるほどだ。だからそこを舞台に映画を作って気軽に楽しむとの企画には、ある種の正義がある。

モナ・リザが40年ぶりに来日することが決まり、臨時のキュレーターとして万能鑑定士と称される莉子(綾瀬はるか)が採用される。彼女にこだわり密着取材している記者・悠斗(松坂桃李)を引き連れる形でパリに出向いた彼女は、同僚の美沙(初音映莉子)とともに贋作を見分ける訓練も難なくクリアしてゆく。だが、やがて原因不明の不調に見舞われ、持ち前の天才的な鑑識眼を失ってしまうのだった。

まず本作は「ダ・ヴィンチ・コード」(06年)以来、二作品目となるルーブルロケだが、もう少しかの地の魅力を伝えてほしかったところ。湯けむり温泉殺人事件並の観光案内を……とまではいわないが、本作も軽いテイストのミステリなのだから、単なる舞台装置以上に、そこはもう少しこだわってもらってかまわない。

60点
役者はそろった、あとは覚悟だけ

厳しすぎる現実が連載を秒速で追い越してしまったことで各方面から心配の声が挙がる真鍋昌平による人気コミック「闇金ウシジマくん」が、このたび再び映画版になった。

トゴ=10日で五割の暴利で知られる闇金、カウカウファイナンスのウシジマ社長(山田孝之)のもとに、いい年をして暴走族のヘッドを務める愛沢(中尾明慶)がやってきた。自分のバイクを盗み傷つけた慰謝料を払わせるため、マサル(菅田将暉)に金を貸せということだが、ウシジマは承知しないどころかマサルを自分の元で働かせることにするのだった。

キャストはテレビドラマ版から続投。原作と体型はちがえど、持ち前の演技力とカリスマでウシジマくんを演じきる山田孝之は、これはこれでありだなという映像版らしさを確立している。そのほか柄崎役やべきょうすけなどもハマっているし、この映画版から登場するウシジマのブレーン戌亥役・綾野剛、頭のネジが抜けたストーカー役・柳楽優弥あたりも悪くない。とくに柳楽の怪演は、この役者の良さを改めて感じさせた。

60点
BBCのすごみを感じさせる

撮影期間573日! とこの映画の宣伝文句にある。そんなに長期間かけて集めた貴重な映像素材の数々──といいたいのだろうが、私にいわせれば話は全く逆だ。573日かけて撮影したことが凄いのではなく、これだけの映像素材をたったの573日間で集める能力、それこそがBBCの凄味なのである。

ジャンルは文字通りネイチャー系ドキュメンタリー。「ディープ・ブルー」(2003)、「アース」(2007)などこの分野のトップランナーであるbbcが、2トン以上もの4K、5Kカメラ&3D機材を駆使して世界中で撮り集めた動物たちの生態だ。

映像こそすべての映画だから、内容をここで書き連ねてもどうにも魅力が伝わるはずはないのだが、印象深いものを紹介するならたとえばワニ。ネット動画なんかでは猫にも勝てないヘタレ動物のレッテルをはられているが、本作のそれは違う。怪力とローリング攻撃で、巨大な草食動物が犠牲になる。恐ろしい光景である。

60点
想像力の欠如という悲劇

「家路」の久保田直監督は、こいつを反原発の作品にしたくなかったと語っている。見終わった今となっては何の悪い冗談かと思うものの、じつは彼の態度こそ、原発という病巣の深さを物語っている。

誰がみたって「家路」は強烈きわまる反原発のメッセージドラマであり、それ以外の解釈の余地はない。

だが、それでもこうしたコメントを言わなくてはどこかに致命的な問題が起きる。それを恐れているから監督はあんな事を言う。映画は大勢から金を集め、公開劇場を決め、つつがなく初日を迎えなくてはならない。その複雑な過程のあちこちに、ちょっとしたアクシデントでお蔵入りになる危険が潜んでいる。たとえこうした松ケン主演の作品であっても、である。

60点
猫好きは世間の非常識?

猫好きというのはやっかいなもので、われわれ犬派のように一般的な社会常識というのが通じない。たとえば楽しくデートしていても、飼い猫が心配だからなどと言ってさっさと帰る。家に遊びに行きたいと言っても、猫が怖がるからだめなどと無茶苦茶な理屈で断る。

単にこちらが嫌われているだけという噂もあるが、かように猫好きというのはお猫様最優先で生活を組み立てている。

ときは幕末、かつて百人切りと恐れられた元加賀藩・剣術指南役の斑目久太郎(北村一輝)も、いまや傘張り浪人の身。そんな彼の元、江戸で敵対する二大勢力「犬派」「猫派」の前者から、敵親分の飼い猫暗殺の依頼が入る。金に目がくらんで思わず引き受けたものの、実際に愛らしい猫を見ると……。

60点
成金描写がステレオタイプすぎ

いまの時代は、カネを稼ぐほど偉いとの風潮がある。カネの価値に変わりはない、色は付いていないというわけだが、実際は違う。稼ぎ方によって、カネの価値は明らかに異なる。

テキトーぶっこいて大して価値のないものに大金を投資させて莫大な手数料をぶんどるなんてものは、もっとも「価値」の低いカネ=報酬である。それに比べ、人々を楽しませる文章を書いたり、楽しい映画を紹介して喜ばれたりして、そうして幸せになった人々からいただくお金というのは、大変な価値がある。50年もすれば、両者の幸福度の違いは人相に現れる。死ぬときに、堂々と生きたと満足して死ねるのはどちらか。自分の稼ぐカネの価値を考えて生きることは、かように重要である。

なおこの文章について、誰か特定の人物の経済的窮状を嘆いているわけでは絶対にないことを、ここに強調しておく。

60点
古臭いし平均的

「マラヴィータ」をみると、リュック・ベッソンの微妙なギャグセンスは相変わらずだなと改めて思うとともに、今となってはずいぶんオヤジくさく見えるものだなあと感じてしまう。むろん、書いている自分のことは棚に上げている。

舞台はフランスのノルマンディー地方。越してきたばかりのアメリカ人一家には秘密があった。一家の主フレッド(ロバート・デ・ニーロ)は元マフィアの大物で、FBIの証人保護プログラムによってこの地に隠れ住んでいるのだ。各地を転々としてきた一家は偽装生活には慣れたものだが、それでも妙に自己顕示欲が強く、回顧録なんぞを書き始めたフレッドの暴走によって、血眼になって彼らを探しているマフィアの殺し屋たちに居場所が知れようとしていた。

さて、このデ・ニーロ演じる主人公は、いい年をしてめっぽう血の気が多く、ちょいと気に障れば残酷きわまり無い方法でそいつをぶち殺す……のだが、今は隠れている身なので一応妄想だけにとどめている。マフィア映画のイメージ強いデ・ニーロが演じているからこそ笑える、セルフパロディというべきブラックジョークの数々である。

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