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2121件中 51~100件 を表示しています。
90点
時代にマッチしている上、脚本の骨格がきわめて頑健

たぶんこの映画についてほとんどの方は、こんな風に考えているだろう。

「え、日本映画? 安っぽそう」「え、フジテレビの映画? 軽そう」「え、テレビドラマの映画化? 映画だけ見てもわかんなそう」「とにかく、つまんなそう」

その気持ちはわからぬでもないが、なんと本作に限ってはすべてよい意味で裏切られた。こういうことはめったにあるものではない。

90点
全日本人がみるべき作品

『海角七号/君想う、国境の南』という映画を考えるときもっとも重要なポイントは、「この映画が台湾で爆発的にヒットした」(同国映画としては史上一位)という事実である。

ミュージシャンの夢破れ、故郷に戻ってきた青年(ファン・イーチェン)は、郵便配達のバイト中、あて先人不明郵便を発見する。それは日本統治時代の住所表記あてに送られた60年前の郵便だった。そんなある日、地元で行われる日本人歌手のコンサートの前座を頼まれた彼は、その仕事の中で知り合った日本人女性(田中千絵)にその手紙を見せる機会を得る。そして、その手紙に大切な内容が書かれていることを知る。

半ニート若者を主人公にしたユーモラスな下町人情ドラマ風に始まる本作は、まともなギタリストさえいない田舎町の急造バンドのどたばた騒動でまずは楽しませる。

90点
ぜひ小さい息子さんとご一緒に

手塚治虫の代表作で、日本アニメの元祖的存在「鉄腕アトム」は、意外だがこれが初の劇場版となる。製作したのは香港発のアニメ制作会社「イマジスタジオ」。そこにハリウッドスターが声を当て、米国では300スクリーン越えの大規模公開、その他50カ国以上で上映が予定されている。日本原産のコンテンツとしては、大本命といってよい話題作である。

未来都市メトロシティの科学省長官で天才的科学者のテンマ博士(声:ニコラス・ケイジ、役所広司)は、幼い息子のDNA情報を埋め込んだ最新鋭ロボット、トビー(声:フレディ・ハイモア、上戸彩)を作り上げるが……。

オリジナルの66年版アニメーションはもちろん、80年のリメイク版を楽しんだ世代でさえ、今はとっくに"父親"になっていることだろう。そうした事情を受けてかこの映画版は「父と子の関係、息子への愛」に焦点を当てた、感動ドラマとなっている。

90点
今年ナンバーワンのショッキング映画

ナチスものというのは、私を含め多くの日本人が、ほとんど興味をもてないテーマだろうと思う。ユダヤ人優位のアメリカ映画界では永遠の定番テーマだが、それに私たちが付き合う必要はまったくない。だから本作に対しても、相当冷めた目で見始めたことを最初にお伝えしておく。

第二次大戦下のベルリン、8歳の少年ブルーノ(エイサ・バターフィールド)の父親はナチス将校。その転属に伴う引越し先は、片田舎の森の中だった。そこにはフェンスに囲まれた「農場」があり、大勢の大人が働いている。ある日、ブルーノはこっそり近づいた塀の向こうに、同じくらいの歳の子供を発見する。顔色が悪く、がりがりにやせた少年はシュムエル(ジャック・スキャンロン)と名乗った。塀の中の他の大人たちと同じ「縞模様のパジャマ」を着ている彼との奇妙な交流が、その日を境に始まった。

これを見終わったとき、私は大きな認識違いをしていたことに気づかされた。これは古びた「ナチス映画」などではなかった。きわめて普遍的なテーマを持つ、現代的な映画であった。ショックを受けたという意味では、今年始まって以来ダントツのナンバーワンといっても過言ではない。

90点
2009年夏のイチオシ

今年2009年の夏シーズン、忙しい中、たった1本だけ映画を見られるとするなら、私は迷わず『アマルフィ 女神の報酬』を選ぶ。夏休みらしいスケールの大きな大作であること、邦画の枠内でなく、世界標準からみても優れたサスペンス映画であることが理由だ。

と同時に、このような意欲作がコケることになったら、もはやマジメに日本でエンタテイメントをやろうという人はいなくなってしまうのでは、と危惧する。人気テレビドラマをチョチョイと2時間に引き伸ばし、洗脳のごとき繰り返し宣伝で純情な視聴者を映画館に集め、1800円を搾り取るビジネスモデルが通用するようでは、あまりにクリエイターたちが可哀相だ。

クリスマス直前のローマに派遣された外交官・黒田(織田裕二)は、偶然にもある旅行者(天海祐希)の娘が誘拐される事件に遭遇する。とっさの機転で犯人からの電話を黒田が処理したことにより、彼も巻き込まれ、事件解決のため奔走することに。だが外交官には捜査権がなく、徐々に黒田は孤立していく。

90点
マイケル・ベイらしさ全開のすてきなトンデモ映画

『トランスフォーマー/リベンジ』は、いかにもマイケル・ベイ監督らしい、華やかで楽しくて、かつゴーマンな超大作であった。

激しい戦いを生き残ったリーダーのオプティマス率いる金属生命体・オートボット(日本版でいうサイバトロン)軍団は、いまや人類と協力して、悪の軍団ディセプティコン(同:デストロン)の残党を狩っていた。ところがあるとき、その一体が新たな大戦争を匂わす不気味な台詞を残して死ぬ。そして今回もカギを握るのは、オールスパークのかけらを持つサム(シャイア・ラブーフ)とそのガールフレンド、ミカエラ(ミーガン・フォックス)だった。

都内のTHX劇場で先行上映に行ってきたが、いやはや、これは面白いものを見せていただいた。断続的に続くお祭りのような見せ場が150分間もたっぷり続く、「量が少なくて文句を言われるのが怖い」アメリカの料理店特有のてんこもり料理のような、ワイルドな娯楽作品であった。

90点
アニメによるドキュメンタリー・エンタテイメント

アニメーションでドキュメンタリーをつくり劇場公開するなんて、ずいぶんと思い切った企画だ。そうした珍しいアイデアで出資者を説得するには、相当なクォリティの高さが必要になるはず。少なくとも、巷にはびこる原作人気頼りの安直映画とは、まったく違ったものになるだろう。そう読んだ私は真っ先に試写に出向いたが、案の定、まぎれもない力作、傑作であった。

監督は西久保瑞穂。押井守作品の高品質を支える名演出家としても知られる彼だが、今回はその押井守を「うんちく担当」として脚本に迎え、相変わらずのチームワークを見せている。そしてアニメーション制作はProduction I.G。タランティーノ監督から米映画『キル・ビル』のアニメパートを直接依頼された、日本有数の技術を誇るスタジオだ。じつに強力な布陣である。

72分間の上映時間は、「宮本武蔵はなぜ巌流島の勝利を後世語ろうとしなかったのか?」を最大の謎としてクライマックスに配置。それを解きあかす過程では、幾多の小さな謎解きがなされ、テンポがよい。見せ方も解説の手法も、とてもわかりやすい。

90点
イーストウッドの暖かい励ましが心にしみる

いろいろなテーマやみどころが混ざり、深読みしがいもある『グラン・トリノ』だが、この超映画批評では、これを(例によって?)一風変わった視点からオススメしたい。

自動車メーカー、フォードの元工場員で朝鮮戦争の帰還兵ウォルト(クリント・イーストウッド)。頑固者で通る彼は、年寄り扱いする息子連中や、移民が増えて治安が悪化するわが町の姿に日々、悪態をつき暮らしていた。そんなある日、隣家のアジア系移民の息子タオ(ビー・ヴァン)が、同じモン族の不良メンバーにそそのかされ、ウォルトの愛車72年型グラン・トリノを盗もうとしているのを発見する。

この事件を契機に隣家とかかわりを持つようになった主人公は、やがて人間味ある彼らの暮らしぶりを知ることになる。相変わらず民族差別的な悪態をつきながらも、父性不在の一家に代わり、タオの導師的役割をも演じるようになっていく。

90点
アカデミー作品賞は、まさにいまの時代にピッタリな一本だった

今年のアカデミー賞は、未曾有の大不況&新大統領(しかも黒人)誕生という大ニュースがあったおかげで、例年に増して予想しやすい年であった。とくに作品賞ほか計8部門受賞した『スラムドッグ$ミリオネア』については、私も100%の自信で選ばれるだろうと考えていた。

もっとも私の場合は、作品の出来不出来でこれが本命と読んだわけではなく、この映画イベントの投票システムから、ほとんど自動的にこれしかないとの結論に至ったにすぎない。アカデミー賞の本選は、6000名以上の会員によるごった煮投票。見る目のあるプロが、映画の良し悪しを選ぶわけではないから、出来ばえから予測しても意味はない。同じ理由で「あの映画のほうがよく出来ているのに、選ばれないのはおかしい」などと言うのは、的外れもいいところである。

大勢のごった煮会員が、「米映画業界振興のため(平たく言えばギョーカイが儲かるために)」もっとも適した作品に投票するのがアカデミー賞の根幹。ならば、そのときの米世論とかけ離れた作品を選ぶ可能性は低い。

90点
綾瀬はるか先生の就任挨拶が、個人的なオススメシーン

『おっぱいバレー』は、じつのところ中高年男性向きのオススメ品である。だが、いい年をしたオジサンが、娘のような年頃の受付嬢に「『おっぱいバレー』、大人一枚!」と、キョドった笑顔で言った日には、末代までの大恥だ。だから私は、いっそ題名を『哀愁の旅路』とかに変えたらいいと、4年ほど前から言ってきた。

というのはもちろん嘘だが、いろいろな媒体で似たようなことを言っていたところ、先日映画会社が「恥ずかしい人は、略語の『OPV』(おっぱいばれー)でも買えるようにします」と、大々的にマスコミを使って発表してくれた。おかげで、よけいにチケットを買いにくくなった。

1979年の北九州。とある中学校の弱小バレー部に、新任教師(綾瀬はるか)が顧問としてやってきた。ところがバレー部の面々は、そもそもスポーツなどやる気のないダメ生徒ばかり。誰かが拾ってきたビニ本にむらがるような、エロの事しか頭にない悪ガキだった。そんな彼らにやる気を出させようとする教師だったが、口だけは達者な中学生どもに逆に約束させられてしまう。「一勝したらおっぱいを見せること!」

90点
アナタは24時間後に死にますという「イキガミ」が届いたら?

漫画の映画化が最近目立つが、よもやこれほど高く評価できる作品に出会えるとは思わなかった。

現代日本に良く似た場所。この国では、「国家繁栄維持法」により安定した社会が実現している。それは全国の18から24歳の中から、1000分の1の確率で無作為に選び死んでもらう制度。通称・逝紙(イキガミ)を当人に配り、24時間後の死亡宣告を行う公務員(松田翔太)は、今日も様々な人間ドラマに立ち会うことになる。

わずかな犠牲で誰もが命の大切さを実感するこの制度により、犯罪も減り、活気あふれる社会が生まれるという設定。小学校入学時に国民へ一斉接種されるナノカプセルにより、誰かに理不尽な死が訪れる。イキガミを受け取った若者は、はたして残された24時間をどう過ごすのか。

90点
納棺師の仕事を描いた本格作品

ヴェネチアが大カントクにリップサービスしているのを真に受けて、日本のマスコミはそちらばかり報道していたが、真に注目すべきはモントリオール世界映画祭だった。ここでグランプリを受賞した『おくりびと』こそ、まさしく世界に誇るべき日本映画の傑作である。

念願だったチェロ奏者になった途端オーケストラが解散、莫大な借金を残し失業した大悟(本木雅弘)は、夢をあきらめ故郷の山形に戻った。それでも優しいけなげな妻の美香(広末涼子)のため、少しでも高給の仕事を探していた彼は、一つの求人広告に目をとめる。"旅のお手伝い"ということで、旅行代理店か何かと思い面接に行ってみると、旅は旅でもあの世への旅。遺体を浄め最後の別れを演出する、納棺師の仕事だった。

遺族の前でご遺体の仏衣を手際よく着せ替え、同時に手早く浄めていく。張り詰めた空気と真摯な表情が、観客までも緊張させる。普段見ることのない、このような技術と仕事が存在していたことに対する驚き。強力なオープニングである。

90点
16歳で妊娠した女の子はどんな行動をとるか?

『JUNO/ジュノ』はアメリカの映画業界にとって、間違いなく年度を代表する作品のひとつである。

わずか数館から始まった上映は、口コミや効果的なプロモーションで最終的には2千数百もの劇場へと拡大。製作費10億円足らずの低予算映画ながらその十数倍の興行収入をたたき出す作品なんてのは、さすがの米国においてもめったにあるものではない。

これはプロ野球で言えば、プロテストの補欠で一応取っておいた最低年収の選手が、いきなりホームラン王になるような抜群のコストパフォーマンス。アカデミー賞の司会者が本作をネタにジョークを飛ばした(「今年は殺人鬼の映画ばっかりだけど、10代の妊娠の話が入っててほっとしたよ」の"10代の妊娠の話"とは本作のこと)ことでもその注目度がよくわかる。

90点
スティーブン・キングの原作を変更、凌駕した大傑作

フランク・ダラボン監督とスティーヴン・キング原作のコンビには、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」という傑作がある。鬼門とさえ言われるほど難しいキング作品の映画化を、ほとんど唯一成功させているのがこの監督なのだ。だから、ファンに人気の中篇『霧』をフランク・ダラボンが手がけたのはある意味必然。そしてその期待に彼は、三たび完璧にこたえた。映画『ミスト』は、必見の衝撃作である。

メイン州の田舎町。荒れ狂った台風が去った翌朝、物資の買出しに地元のスーパーマーケットに集まった住民らを、今度は視界ゼロの霧が襲う。ちょうど買い物に来ていた主人公デヴィッド(トーマス・ジェーン)と幼い息子のビリー(ネイサン・ギャンブル)は、やがて霧の中に恐ろしい"何か"がいることに気づく。

ホームセンターのような巨大な雑貨店が深い霧につつまれる様子は大迫力で、まさに映画芸術の真骨頂。

90点
2007年韓国映画のベストワン

いま韓国映画界では、"日流"なんて言葉があるくらい日本の原作ものが大人気だが、彼らが鈴木由美子の少女漫画『カンナさん大成功です!』を映画化すると聞いたときは、思わずお茶を吹いた。

高見盛級のデブで、かつ不細工なカンナさん(キム・アジュン)は、大好きな歌の世界に飛び込んだものの、回ってきた仕事は人気歌手アミ(ソ・ユン)のゴーストシンガー。歌の下手なアミの代わりにレコーディングしたり、コンサートでは口パクに合わせて舞台裏で歌うのだ。そんなカンナはイケメンプロデューサー、サンジュン(チュ・ジンモ)に片思い中だったが、ある日彼が、自分の容姿に対して心無い言葉を吐いているのを思いがけず聞いてしまい、ついに自殺を決意する。

さて、カンナさんはこの後色々あって自殺を取りやめ、代わりに全身整形で169cm、48kgの超ナイスバディ美女(キム・アジュン、二役)へと変身する。そう、『カンナさん大成功です!』は、「ブスでデブな女の子が、ある日、真逆のスレンダー美人になったらどうなるか」を描く物語である。映画でも原作でも、ヒロインのカンナは正体を隠したまま(整形をカミングアウトせず)、片思いの相手へと接近する。

90点
近年最高のミュージカルムービー

入場者全員にサントラCDを配るわ、試写会招待状は派手にばらまくわと、宣伝GAGAの異様なまでの太っ腹ぶりが目立った本作。東京を見下ろす、映画会社中ナンバーワンの瀟洒な試写室に招待された一般のお客さんも多かろう。公開までに見たいヤツは全員みちまうんじゃないかと思うほどの勢いは、しかしそれだけ作品の出来(今回はサントラのそれも)に自信があるということだ。一般に、期待はずれの作品の試写は少なく(知名度がある場合はいっそ行わず)、知名度はないがいい作品の場合は口コミ効果を期待して多くの人に見せたくなるものだ。

1962年、ボルチモア。超ポジティブでおデブな女子高生トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)は、大好きなテレビ番組コーニー・コリンズ・ショーのオーディションに果敢に挑戦、みごと新人ダンサーの座を勝ち取る。おまけにその風貌と明るい性格からお茶の間でも大人気に。これが面白くない旧人気ナンバーワンアイドルの金髪美少女アンバー(ブリタニー・スノウ)とその母でプロデューサーのヴェルマ(ミシェル・ファイファー)は、様々な邪魔をするが……。

ジョン・ウォーターズ監督(本作の冒頭にもマヌケなチョイ役で登場)のカルトムービーとして一部で知られていた同名作品が、トニー賞を独占したブロードウェイ・ミュージカル版を経て、再度映画に。その流れの中で元々のカルトっぽさは完全に払拭され、とにかく明るく楽しい、ストレートで前向きなミュージカルに生まれ変わった。オリジナルのいかがわしい雰囲気が好きな方には、まるで別物のような本作は受け入れにくいかもしれないが、個人的には既存のコンテンツを発掘育成、発展させた大成功例だと思っている。

90点
CGの進化によるアクションシーンの迫力の違いが歴然

30代くらいの人に聞くと、ダイハード第一作目こそアクション映画の最高傑作と推す人が多い。ブルース・ウィリスの出世作となったあの88年の傑作には、確かに文句の付け所がない。今見たら私も100点を献上するだろう。

だが、この4作目も相当なものだ。コンセプトが違うので単純に比較はできないが、期待すべき点を誤らなければこれだけ面白い映画はそうない。

久々に会う愛娘ルーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に冷たくあしらわれたジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、本部から近所に住む若いハッカーのマット(ジャスティン・ロング)を連行せよとの指令を受ける。つまらぬ任務に乗り気ゼロで向かったマクレーンだったが、マットの部屋に入ったとたん何者かによる激しい銃撃を受ける。

90点
特攻隊の真髄を完璧に表現

石原都知事の『俺は、君のためにこそ死ににいく』に加え、日系アメリカ人監督リサ・モリモトの『TOKKO-特攻-』など、最近は特攻隊をテーマにした映画の製作が相次いでいる。だが皮肉なことに、カミカゼ特攻隊とはまったく無関係の『300<スリーハンドレッド>』ほど、その歴史的意義を表現した映画はない。

紀元前480年、覇権国家ペルシア帝国はギリシャのいち都市国家スパルタを服従させるべく、使いを出した。しかし、スパルタのレオニダス王(ジェラルド・バトラー)はこれを拒否。迫りくるペルシアの大軍勢100万を、手勢わずか300で迎え撃つ覚悟を決める。

「シン・シティ」のフランク・ミラーによる劇画が原作というだけあり、一般的な歴史ものとはまったく異なる。徹底したエンタテイメント志向の作品で、歴史考証はあくまで二の次三の次。面白さのために躊躇なく史実のほうを変えている。

90点
他人を支配する面白さをサスペンス仕立てに

密室殺人やアリバイトリックに縁のない、ごく普通の人々の生活の中にも、スリリングな局面というものは存在する。そんな「何も事件がおこらない」日常で、サスペンス映画を一本作ってしまった、それが『あるスキャンダルの覚え書き』だ。

舞台はロンドン郊外にある労働者階級の中学校。頑固な性格で、毒舌と世間を斜に見る態度で孤立気味だったベテラン女教師バーバラ(ジュディ・デンチ)は、新任の若き美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)に目をつける。豊かな家庭の幸せな妻でもあり、高い教養と素直な性格をもつシーバとなら、友情を築けると直感したのだ。

さて、ホントは友達がほしかった孤独なバーバラは、あるときシーバの不倫現場を見つけてしまう。しかも相手は15歳の教え子、場所は学園内ときた。こりゃまた羨ましいなどと思うのは私だけで、バーバラは違った。怒りと失望、そして相手の弱みを握った優越感の間で葛藤した彼女は、後者を優先させることにする。

90点
楽しめる層はかなり限定されるが、当てはまれば敵なしの面白さ

この映画は「期待せずに見たら大当たり」という典型例のような作品であった。

とうとう破綻のときを迎えた日本経済を救うため、ある 財務官僚(阿部寛)はタイムマシンでその発明者(薬師丸ひろ子)を1990年に送り込むことを決めた。バブル崩壊の引き金となった大蔵省通達、いわゆる総量規制を止めるためだ──というあらすじ自体は、なかなか面白そうと思ったものの、日立製作所とのタイアップによる「ドラム型洗濯機タイプのタイムマシン」などというバカげた設定をみて、どうせろくでもないバカ映画だろうと、高をくくっていたのだ。

むろん、上記ストーリーから一瞬連想するような社会派SF、すなわち経済問題等を過去からシミュレーションする知的な作品なんぞを期待してはダメだが、タイムスリップをネタにしたコメディとして見れば、すこぶる出来のよい一本であった。

90点
見終わって大いに考えさせられる一本

米国を代表するスターであり映画監督のクリント・イーストウッドは、保守的な思想を持つ人物として広く知られている。しかし意外にも彼が作る映画は、思想的に極端に偏ることがなく、公平かつ冷静な視点で物事を見たものが多い。

今回二部作として映画化される史実、"硫黄島の戦い"は、私たち日本人も当事者の一方であるが、彼のような監督が撮るという事には、一種の安堵感すら感じられる。とくに、プロパガンダくさい戦争映画を嫌う観客(例:『パール・ハーバー』のトンデモ度の高さに閉口した皆々様)にとっては、なおさらだ。

さらに、現在公開中の序章にあたる『父親たちの星条旗』を観た方にとっては、その出来栄えが平均以上であるから、期待もより大きいに違いない。

90点
8分間ワンカット、映画史に残る衝撃の映像体験

環境ホルモンや電磁波の影響と思われる若い男性の精子の減少、女性の社会進出による晩婚化、そして格差社会による低所得者層の増加に伴い、少子化が叫ばれて久しい。しかしながらこの『トゥモロー・ワールド』の世界は、少子化を飛び越えて"無子化"になってしまった近未来だ。

舞台となるのは西暦2027年。この時代の人類最年少はなんと18歳。つまり18年間、新生児は誕生していない。原因は不明で、希望を失った世界には内戦やテロが頻発し、国家はことごとく壊滅状態に。ほぼ唯一、強力な軍隊で国境を守る英国だけが、ぎりぎりの秩序を保っている状況だ。

さて、主人公の官僚(クライヴ・オーウェン)は、かつて共に学生運動を戦った元妻(ジュリアン・ムーア)率いる反政府組織に拉致される。聞くと、彼女らが保護する移民集団のひとり、ある黒人女性が妊娠しているという。

90点
他の追随を許さない、圧倒的な完成度の高さ

『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』に続く、ディズニー/ピクサーによる3D-CG長編アニメーション。冬に公開された前二作と違い、今年は満を持して、最激戦区たる夏シーズンにぶつけてきた。今回の内容は、擬人化された車たちが繰り広げるファンタジードラマだ。

主人公は、天才新人レースカーのマックィーン(声:オーウェン・ウィルソン)。圧倒的な才能を持ち、自己中心的な性格の彼は、ひょんなことから地図にも載っていない田舎町ラジエーター・スプリングスに迷い込んでしまう。

『カーズ』は、実在のルート66の物語からヒントを得て作られている。それは、わずかな時間を短縮するため建設されたバイパス道路のせいで、うち捨てられた小さな町の衰亡の物語だ。その町をモデルに作られたラジエータースプリングスには、あらゆる場所にノスタルジックな思い出がつまっていて、日本人である私たちの琴線にも大いに触れる。

90点
大人が楽しめる、本格的な犯罪娯楽映画

銀行強盗を描く映画は数あれど、この映画の犯行の手口にははっとさせられる。なんとこの犯人は、人質全員に自分たちと同じ服を着せてしまうのだ。

白昼堂々と、ニューヨークのマンハッタン信託銀行を襲った犯人(クライヴ・オーウェン)とその仲間たちは、人質全員の服を脱がし、自らと同じ没個性な黒スーツを着せる。前例のない犯行に翻弄される警察だが、現場を指揮する刑事(デンゼル・ワシントン)は出口を固め、犯人たちを完璧に閉じ込めることに成功する。しかし、犯人と人質の区別がつかないため、下手に突入できない状況が続いていた。そんな中、銀行の会長は、やり手の弁護士(ジョディ・フォスター)を呼び出し、犯人たちとある交渉をさせるべく、現場に送り込むのだが……。

『インサイド・マン』は、アメリカ映画らしい重厚な大傑作をみたと満足できる、すばらしい一本である。クールなタイトル、見事なトリック、鑑賞後に思い起こすと、いくつも気づくことが出来る伏線の数々、優れたユーモア、そして役者の演技。けなすところが一切ない、見事なクライムムービーだ。

90点
ショッキング映画、妊婦その他心臓の弱い人は絶対鑑賞禁止!

凄い映画が現れた。万人向けではないが、たいへん知的で、インパクトの強い傑作の誕生である。

カンヌ国際映画祭でも絶賛された、このフランス映画『隠された記憶』は、ジャンルでいえばスリラーという事になろう。テレビキャスターとしてそこそこ成功し、妻や息子と幸せに暮らしている男の元へ、1本のビデオテープが送られてくるところから話は始まる。

そのテープの内容は、延々と自宅の玄関が映されているだけという、意味不明なものだった。しかし、やがて第2弾、第3弾が届くにつれ、家族の恐怖は増してゆく。そういうストーリーだ。

90点
前作より単純明快、ぜひ『ドッグヴィル』を見たあとに

『マンダレイ』は、あの斬新な佳作『ドッグヴィル』の続編だ。ちなみに『ドッグヴィル』最大の特徴は、床に白線を引いただけで壁も屋根も無い、だだっ広い体育館のような場所をひとつの村に見立て、そのセット内のみで3時間の映画を作りあげた点。役者たちがパントマイムで玄関のドアを開けると、キィとドアがきしむ効果音が挿入される。じつに斬新な演出の映画であった。

この『マンダレイ』も、まったく同じ手法で、ヒロインも同じ(ただし演じる女優は変更された)。彼女が別の場所(マンダレイという名の農園)で、別のドラマを繰り広げるPART2だ。

ときは1933年のアメリカ。ドッグヴィルを出たグレース(ブライス・ダラス・ハワード)は、ギャングのボスである父らと共に、南部のマンダレイという農園にたどりつく。そこはなんと、いまだに白人による黒人奴隷制が続く、驚くべき土地だった。正義感にかられたグレースは、父の部下のギャングたちの実力行使によりすぐに黒人奴隷を解放、父の反対を無視して民主的なルールをマンダレイに広めようとするが……。

90点
楽しくて心温まる、幸せになれる映画

犬の考えていることが人間の言葉でわかったら、どんなに面白いだろうという妄想は、犬好きなら一度はしたことがあるはずだ。そして、それをそのまま映画にしたのがこの『イヌゴエ』。登場する無愛想なフレンチブルドッグの「心の声」が、主人公に聞こえてくるというのがメインアイデアだ。

この主人公は、臭気判定士(この資格は実在する)として働く青年(山本浩司)。彼は、人間としてはずば抜けた嗅覚を持ち、鋭敏過ぎて普段はマスクをしていないと生活できないほどだった。そんなある日、彼は父親から、拾ったフレンチブルドッグを旅行の間預ってくれと頼まれる。臭いに敏感な彼にとって、犬などとんでもないと断ったが、父は勝手にアパートに犬を置いて出かけてしまった。

ここから彼と犬の共同生活が始まるのだが、この主人公、なんとこの犬の心が「声」として聞こえることに気づく。それも関西弁の無愛想なオッサンの声として。

90点
観るべき価値のある、本物の映画

今になってみると、この「スタンドアップ」が果たして社会派映画として本当に優れていたのかどうか、その点についてだけはどうも自信がない。なにか、うまく騙されたような、そんな気もするのである。しかし映画作品としては、よい脚本家、よい監督、よい俳優がパワーを出し切った、紛れもない傑作である事だけは確かだ。

舞台は80年代終わりのアメリカ。ミネソタの鉱山に、炭鉱夫として就職したヒロインの苦難を描いた物語。

長年、男の職場として存在してきた鉱山に、男女平等と法律の名のもと、女性が入り始めてきた時代。秩序を乱された職場の男たちの態度は、当然冷たい。早速、猛烈ないじめが始まる。いや、いじめやセクハラもどきを通り過ぎて、ほとんど犯罪である。それほど強烈な虐待、差別に、彼女をはじめとするわずか数名の女性労働者はさらされる。

90点
筋肉はT-レックスの牙よりも強し

『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の監督、ピーター・ジャクソンは、9歳のときにテレビで見た、『キング・コング』(1933)に衝撃を受け、映画監督を志したという。その情熱は、12歳のときにミニチュアを用意して、自らリメイクをはじめたほど。やがて彼は30年の時を経て、本作品を監督、ついに長年の夢を実現させたことになる。

この、ピーター・ジャクソン監督によるリメイク版『キング・コング』をみて、最も私が素晴らしいと感じる点は、まさにその、作品に対する愛情の深さにある。随所にキングコング、そしてオリジナル作品への思いの深さ、敬意が感じられるし、全身全霊をかけたと思わせるほどのパワーも感じられる。さすがは「33年のオリジナルが一番好きな映画」と公言しているだけのことはある。

舞台は1930年代、不況真っ只中のアメリカ。野心家の映画監督(ジャック・ブラック)は、未知なる島の伝説を聞き、そこで映画を撮るべく、主演女優(ナオミ・ワッツ)や脚本家(エイドリアン・ブロディ)を連れて、航海に出る。かくしてその島「スカル・アイランド(髑髏島)」に到着するが、そこには恐るべき巨大生物コングが、島の主として君臨していた。

90点
オトナが泣ける、優れたファンタジー

現在大ヒット中の「チャーリーとチョコレート工場」の監督・主演コンビによる、ストップモーションアニメの長編。

舞台は19世紀のヨーロッパ。主人公の内気な青年(声:ジョニー・デップ)は、ある成りあがり一家の息子。彼は親同士の都合で、没落貴族の娘(声:エミリー・ワトソン)と結婚することになっていたが、それでも彼女の清楚な美しさを何より愛していた。ところが式の前夜、慣れない「誓いの言葉」を森の中で一人練習していた主人公が、彼女の薬指に見立てた枯れ枝に結婚指輪をはめた瞬間、地中から半分腐りかけた花嫁の亡霊(声:ヘレナ・ボナム=カーター)が現れ、「喜んでお受けいたします」と嬉しそうにつぶやくのだった。

「ティム・バートンのコープスブライド」は、「チャーリーとチョコレート工場」の予想以上の大ヒットにより、その観客動員を受け継ぐという、最高の形でスタートを切る形になった。これは、この映画を高く評価している私としても嬉しいことだ。こういう素晴らしい映画は、なるべく多くの人に見てもらいたい。

90点
オリジナルの魅力をよく理解した素晴らしいリメーク

少年野球映画の不朽の傑作『がんばれ!ベアーズ』(76年)のリメイク。

かつてはメジャーリーガーだったが、いまやアル中の害虫駆除業者に落ちぶれた主人公(ビリー・ボブ・ソーントン)に、リトルリーグのチームのコーチの依頼がくる。単に金のために引き受けた彼だったが、そのチーム"ベアーズ"の恐るべきダメさに愕然とする。悪ガキやいじめられっ子、英語すら話せない外国人、車椅子の少年など、メンバーはやる気のない連中ばかり。案の定、なんの練習もせず挑んだ初戦において、ベアーズは想像を絶する大敗を喫してしまう。

いやはや、素晴らしいリメイクである。オリジナルの魅力をよく理解し、少しだけ新しさを加えた忠実なつくり。やはり、あれだけ完成度の高い脚本は、そうそう変えられるものではない。また、変えるべきではない。しかし、数十年を経て、何も変えていないこのリメイクをまったく古さを感じずに見ることが出来るとは、モトがいかに完成度の高い物語だったかということでもある。

90点
低予算なのに年間ベスト級の大傑作

新進気鋭の監督作品が集まるサンダンス映画祭でも大好評だったサスペンスホラー。今週は、今年で一番多数の傑作が揃った激戦区の週であるが、中でも私がイチオシにしたいのがこの「ソウ/SAW」だ。

目がさめるとそこはだだっ広いバスルームのような部屋。自分の足は太いチェーンで部屋の隅につながれている。部屋の対角線上には見知らぬ男が同じようにつながれている。そして恐ろしいことに、二人の中間点、部屋の中央部には、頭を打ち抜かれうつぶせに倒れた死体が横たわっていた。なぜこんな場所にいるのか、さっぱりわからないまま、二人に「6時間以内に相手を殺さないと、2人とも死ぬ」とのメッセージが告げられる。

低予算なのに安っぽさはなく、ものすごい面白さ。今年のホラー、サスペンスの中ではダントツの傑作の登場だ。こんなに恐ろしい映画は数年に1本あればいいほうだろう。怖くて怖くて、見ちゃいられない。

90点
大爆笑、最高のバイクアクション映画

アメリカのバカ若者たちが大型バイクで暴走する様子をけれん味たっぷりに描いたアクションムービー。

主人公(マーティン・ヘンダーソン)は、恋人とやり直すためこの町に戻ってきた。ところが町のバイカーギャング(暴走族みたいなもんだ)の中ボスとトラブり、そいつに大ボス(アイス・キューブ)の弟殺しの濡れ衣を着せられてしまう。

私が『トルク』の試写を見たのは、なんと今年の1月だ。著名なスターが出ているわけでもなく、監督も新人。要するにまったく売れる要素がないということか、公開も延び延びになってはや10月である。しかし、この映画ほど私が公開を望んでいた作品もない。早く大画面といい音響でもう一度見たいと願っていた一本なのである。

90点
アクション映画史に残るであろう強烈な個性の一本

タイの元スタントマン俳優トニー・ジャー主演のリアルアクション映画。今後の映画界を変える勢いを感じさせる、ものすごい一本である。

タイの田舎のある村の守り神“オンバク”像の首が何者かに持ち去られた。村の長老は像の奪回のため、村一番のムエタイの使い手である若者(トニー・ジャー)を送り出す。

「一つ、CGをつかいません!」「二つ、ワイヤーを使いません!」「三つ、スタントマンを使いません!」「四つ、早回しを使いません!」 という、時代に逆行した強烈なキャッチコピーによる予告編を初めてみたときは、「どうせチープでしょぼいおバカ系のC級アクション映画だろう」とたかをくくっていた。(公式サイトで見られる特報と予告編は爆笑もので必見だ)

90点
比較的一般人でも見やすい歴史超大作

トロイ戦争を描いた歴史超大作。ブラッド・ピット久々の主演作品で、彼の徹底した役作りも大きな見所だ。

『トロイ』は、ハリウッドで伝統的に作られてきた戦記もの超大作の流れにある作品だが、比較的娯楽要素が強く、万人受けすると思われる仕上がりだ。予告編でも流されている、何万人もの兵や帆船をCGで表現した戦争シーンなどは、『ロード・オブ・ザ・リング』等で類似の場面を体験済みの人にとっては真新しいものではないが、やはり見ごたえがある。

だが『トロイ』の真の見所はそうした大掛かりな映像スペクタクルよりも、伝説の英雄たちの魅力的な競演だろう。中でも映画版の中心となるのが、ブラッド・ピット演じる、無敵のギリシャ戦士アキレスと、トロイ王国の王子にして最強の戦士ヘクトルだ。こちらは190cm近い長身のエリック・バナが演じている。

90点
家族で見れる娯楽映画としてパーフェクト

ディズニーランドの人気アトラクションを元に映画化した作品。元のアトラクションがいわゆるホラーハウス、お化け屋敷に属する類の乗り物なので、私も最初、この映画も単なるお気楽ホラーなのかなと思っていた。しかし、実際のところはなかなかの力作、本格的な娯楽映画であった。

わずか88分間の上映時間のほとんどは、まさにアトラクションのように楽しいスペクタクルの連続。画面に迫りくるゴーストに対し、子供は素直に泣き叫び、大人は年甲斐もなくビックリしてしまう自分に苦笑しながら楽しめる。このゴーストたち、幽霊の癖にそれぞれ妙に人間味があって憎めない。

運悪くこの幽霊屋敷、ホーンテッド・マンションに閉じ込められてしまうエディ・マーフィ一家は、それぞれ離れ離れになったりくっついたりしながら、数々の試練でその家族愛を試される。彼お得意のコミカルな演技が作風にぴったりで、コメディとしてもよくできている。

90点
インパクト強烈、美しい恋愛映画

マスコミ用試写室が連日騒然としたという、韓国製恋愛映画。たしかに、この映画の衝撃は半端ではない。

韓国だからできたのか、この監督だからできたのか、それはわからない。だが、一つだけはっきりといえるのは、この映画は決してハリウッドや日本では作れなかっただろうということだ。

もしあなたがスクリーンから強烈なインパクトを受けるという体験をしたいのなら、今週は『オアシス』を見るべきだ。この映画はほとんど映画界の突然変異のようなもので、今後も似たような作品が現れるとは、私には思えない。

90点
圧倒的な映像に興奮し、感動的な物語に涙する

アメリカの大恐慌時代に実在し、庶民の希望として愛された競走馬シービスケットと、その騎手ら3人の男たちの半生を描いた感動ドラマ。

世の中には超大作といわれ、派手な映像をウリにする映画が数多くある。だが、純粋に映像のパワーのみで感動させてくれる作品など、いったいいつくあるだろう。『シービスケット』は決して超大作とはいえない映画だが、その映像の迫力、観客の心に訴えかけるパワーは紛れもない一級品だ。

『シービスケット』のレースシーンの迫力は、工夫されたカメラワークとそれにシンクロする見事な音響、思いきり感情を揺さぶる音楽によって我々を圧倒する。ただの競馬の場面が、ここまでのスペクタクルになるとは、見る前は予想だにしなかった。

90点
2004年お正月シーズン最大のオススメ

全米アニメ映画史上最大のヒットとなり、今年の夏シーズン最大の話題作となったアニメーション映画。人間にさらわれたクラウンフィッシュのニモを、ふがいないお父さんが危険な外海を旅して探しに行くという物語である。

一見、子供でもわかる単純なストーリーなのに、なぜ大人が見てもこんなに面白いのか。その理由は、キャラクター作りの巧みさがまずあげられる。ニモは、人間で言えば軽度の障害者で、おまけに過保護に育てられ、社会性がやや不足気味である。そして真の主人公である父・マーリンは、自分が無力だったため、過去に大切な人を失ったというトラウマがあり、まともな子育てができない男である。

ほかにも主要なキャラクターがいくつか出てくるが、どれも単純な絵柄の中に複雑な過去をにおわせる、深みのある設定となっている。そのため、大人が見ても共感しやすい。感動的なセリフの数々も、こうしたキャラクターがしゃべってこそ客の心に届く。

90点
年間ベストクラスの傑作サスペンス

映画一本が、電話ボックスの中だけで展開されるという、斬新なアイデアのシチュエーション・スリラー。映画の中と実際の時間の経過がシンクロするつくりになっている。

それにしてもすごい映画である。電話ボックスひとつで、立派に映画を成立させてしまった。『フォーンブース』は、制約だらけのちっぽけな舞台へ、これでもかというくらい、たくさんのアイデアをつめこんだ、一級のサスペンスだ。その切れ味鋭い着想と出来映えには、ある種の嫉妬を覚えるほど。

脚本家によると、メインアイデア自体は20年も前に浮かんだものだという。そして最近、突然プロットを思いつき、わずか1週間で脚本を書き上げたのだそうだ。なるほど、そう言うものだろうと思う。長年寝かせてきたアイデアと、ストーリーの材料となる数々の断片が、あるときを機会に一気に組みあがるというのは、実感できる話ではある。

90点
アフリカの魅力が詰まったエンターテイメントの傑作

本国のフランスではアニメーション映画史上、最高のヒットを記録したという、アフリカを舞台にしたアニメ。アフリカをよく知る監督が、アフリカを舞台に、アフリカの赤ちゃんを主人公に描く、教訓的な話である。

ズバリいうと、『キリクと魔女』は超1級のエンターテイメントである。こんなに面白くて、心に残るアニメーション作品は、久しぶりに見た。

アニメと言っても、ディズニーの優雅なフルアニメーションorCGアニメーションや、いわゆるジャパニメーションともまったく違う。わかりやすく言えば、動く絵芝居といった素朴な味わいである。絵柄も独特で、インパクトが強い。だが、それになれる頃には、このアフリカの雰囲気溢れる傑作に、多くの方がどっぷりとはまっている事だろう。

90点
落ちこんでいる人必見の、弱者に対する応援歌

巨大えびをボクサーに育て、一攫千金を狙う中年男の話。TVドラマの中で取りあげられるなど、話題のイギリス映画である。動物愛護の観点から、日本以外ではほとんど上映されないそうだ。

「えびボクサー」などと聞けば、「いったいそれはなんだ?」と、内容をまったく想像できないのが普通の感覚であろう。私も、鑑賞前はなるべく予備知識を入れずに見るタイプなので、これがいったいどんな映画なのか、さっぱりわからない状況で見た。

結果からいえば、『えびボクサー』は、『フル・モンティ』のような、弱者への応援歌であった。イギリス労働者階級の、さえない頑固オヤジが主人公で、妙に素直な気のいい若者と、H大好きな、浮気もののちょっと頭の弱いそのGFを引き連れ、巨大えびを使って、なんとか一旗あげようと奮闘する物語である。人間味溢れる、憎めない連中の姿には、自然に感情移入ができる。

90点
夏休み最高のイベントになるほど面白い娯楽映画

アイマックスシアターなどの、大型スクリーンの劇場で、3D(立体)上映される

47分間のドキュメンタリー映画。巨大スクリーン上映のため、日本語吹き替え版のみの上映となる。

この手の3D映画というのは、日本よりアメリカで一般的で、あちらのシネコン(映画複合施設)には、だいたい1つはこうした大型スクリーンの上映館が併設されている事が多い。

90点
3部作のpart2としては、映画史上まれに見る出来のよさ

いわずと知れたSF3部作のPART2。今年の11月には、早くも完結編のPART3『マトリックス・レボリューションズ』が公開される。この2本と、テレビゲームの「エンター・ザ・マトリックス」のCGドラマ部分は、全て同時に撮影された。きっと俳優達は、今がいったいどの撮影なのか、ほとんど分かっちゃいなかったに違いない。

で、『リローデッド』であるが、前作のような、「革命的な映像・特殊撮影」は、素人目にはあまり感じられない。これは、あくまでCGの専門家で無い私の目でみて、という意味である。専門的に見れば、相当な進歩があると思われるが、普通に見て感じるのは、「前作ほどの衝撃的な映像は無いな。どっちかというと、既存の技術を洗練したって感じだな」ってな感じである。

だがしかし、このことは全くマイナスではない。たとえ前作と比べても『リローデッド』は、全く劣らないほどの出来映えとなっている。

90点
衝撃的で面白い、GW最大のオススメ

『アメリ』で、日本でも大人気になった女優オドレイ・トトゥの主演作。これは実に面白い!

お洒落で、映像もきれいで、実にフランス映画らしい、素敵な恋愛映画だと私は最初見ていて思った。

ところがどっこい、映画の中盤で信じ難い場面が出てくる。レティシア・コロンバニ監督は、わずか28歳で、実際私も本人をみたが、パリを普通に歩いていそうな普通のフランス娘って感じの人で、まさかこんな凄い事をやる人物には見えなかった。

85点
宇宙の果てで二人ぼっち

「パッセンジャー」は抜群に面白いシチュエーション設定とよくできたセット、説得力をもって描かれた人間ドラマの3点が揃った見事なSFである。

5000人を乗せた超長距離航行宇宙船のエコノミークラスに乗っていた乗客ジム(クリス・プラット)は、ふと目が覚める。信じがたいことに彼のコールドスリープの機械が故障し、予定より90年も早く覚醒してしまったのだ。クルーも誰一人起きておらず船は全自動で運航している。このままでは宇宙の果てでたったのたれ死ぬ。そんなジムは、同じように目覚めたファーストクラスの乗客オーロラ(ジェニファー・ローレンス)と協力して事態を打開しようと試みるが……。

この映画はネタバレ厳禁事項があるので紹介が難しいのだが、一言で言えば最も重要なのは、この二人の恋愛劇の側面といえるだろう。

85点
シリーズで最もライトユーザー向き

ロバート・ラングドン教授がアカデミックな観光名所で知的な大冒険を繰り広げる『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの第3弾は、上映時間短め、アクション風味強めの、万人が等しく楽しめる良質な娯楽映画になっている。

病院で目覚めたラングドン教授(トム・ハンクス)は、ここがどこなのか、なぜここにいるのかなど、記憶の一部を失っていた。だが確実なことは、自分が何者かに狙われているということ。その謎を考える暇もなく襲撃された教授は、担当女医のシエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)を巻き込んで激しい逃亡劇へと放り出されるのだった。

面白さだけなら間違いなくシリーズ一番。とくに序盤からのノンストップ感がものすごい。なにしろあのラングドンが登場した時から重症で、やたらと気の利く美人女医と逃げまくる。追いかけてくるのはこれまたT-Xのごとき、おっかない美人である。伝統的な巻き込まれ型サスペンスとでもいおうか、中高年でも若者でもすんなり入り込める見事な冒頭部といえる。

85点
キアヌに騙される

2月末にアカデミー賞授賞式があるため、3月は社会派ものとか賞レースに絡んだ地味な映画が多い。気軽なエンタメが見たい映画ファンは4月のGWまで待たなきゃならない事が多いのだが、『砂上の法廷』はこの時期には珍しい娯楽色の強い法廷サスペンスである。

恩師だった弁護士殺害事件で起訴された彼の息子の弁護を引き受けた弁護士ラムゼイ(キアヌ・リーヴス)は、証人たちのウソを見抜くが、なぜか被告人は固く口を閉ざしたままだった。

事件じたいは単純な殺人事件。傲慢な性格で亭主関白だった大物弁護士が自宅で刺殺され、傍らには血まみれの息子と凶器の包丁。しかも息子は「自分がやった」と言っている。ほとんど現行犯だし、争う余地などないように見える。

85点
拉致監禁された部屋で子供を産み育てた少女の物語

20代半ばとみられる美しい母親(ブリー・ラーソン)と、長い髪がきれいな5歳の子供(ジェイコブ・トレンブレイ)。二人は目覚めると朝食を作り、一緒に運動を始める。とても仲睦まじい、仲良し母子のほほえましい様子だ。思わず頬が緩むが、やがて観客は大きな違和感を感じ始める。不気味で、おそろしい違和感を……。

映画「ルーム」のオープニングは秀逸だ。なにしろ、はたからみてもわかるほど深い絆で結ばれる母子を見て恐怖感を感じ始めるというのは何よりインパクトある体験といえる。

たとえば、こんなに大きな子供なのに授乳をしている。美しく長い髪の子供は、しかし男の子だ。6畳かそこらのわずかなスペースに、浴槽やキッチン、ベッドが置かれているが、二人は外に出る気配はない。

85点
全アベンジャーズシリーズでも出色のアクション

私はかねてからアベンジャーズシリーズの問題点として、ヒーローの供給過剰と悪役の存在感不足をあげてきた。それを何とかしないとジリ貧だと予言していたわけだが、マーベルかディズニーの偉い人が感心にも当サイトを読んでいたか、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」ではその不安を払しょくする見事なストーリーを出してきた。

アベンジャーズは世界を救ってきたが、その代償として各地は深刻なダメージを受けていた。やがて、ただの民間組織ながら我が物顔で世界中を跋扈するアベンジャーズに対する世界の目は厳しいものとなっていった。あるテロ事件の捜査で犠牲者を出したことを契機に、ついに彼らを国際的な組織の管理下に置くべきとの声が高まってきたが、アベンジャーズのリーダー、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)は強く反対する。

キャプテンことスティーブ・ロジャースは、かつて裏切られた経験からもともと組織というものを信用していない。と同時に、アベンジャーズ随一の純粋な愛国心の持ち主であり、善悪に対する自分の判断というものに絶対の自信を持っている。合議制が常に正しい結論を出すわけでなく、まともなリーダーならば独裁制のほうが世の中がよくなる論すらあることを考えれば、彼の考えには十分な説得力がある。

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