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65点
敗戦のトラウマをヤマトが晴らす

『宇宙戦艦ヤマト』がなぜ中高年に人気があるかといえば、ぶっちゃけた話、この物語が日本人の敗戦のトラウマを晴らすものだからである。しかも、来年2010年の実写版を控えたこのアニメ版『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』の場合、敗戦コンプレックスの権化のような石原慎太郎が原案にクレジットされているのだから、なおさらだ。

宇宙戦艦ヤマトが自沈することで、回遊惑星アクエリアスから人類を救って17年。地球は移動性ブラックホールにより、再び消滅の危機に見舞われていた。対処法はなく、人々は3ヵ月後のブラックホール遭遇を前に、はるか遠くアマール星の衛星へと移民船団を出発させた。ところが、古代雪(声:由愛典子)率いる第一次移民船団は途中で謎の大艦隊に襲われ全滅。宇宙科学局長官の真田志郎(声:青野武)は、雪の夫で歴戦の勇者、古代進(声:山寺宏一)を地球に呼び寄せ、出発を控えた第三次移民船団の護衛を依頼する。

熱い。とにかく熱い、昭和オヤジのためのアニメーション作品である。

65点
終盤の対決シーンが良くできている

サバゲーをやっていたら、相手がBB弾ではなく実弾を撃ってきました。ルール違反にもほどがあると思うのですが、どうしたらいいでしょうか?

そんな、Yahoo!知恵袋もビックリの嫌過ぎるシチュエーションを描いた『サバイバル・フィールド』は、期待を上回るアクション作品である。

大規模なペイントボール(日本のサバイバルゲームの元となった、ペイント弾で撃ち合う屋外競技)大会に出場するため、各国から集まってきた男女は、広大なフィールドや本格的なミッション指令に期待を高めていた。初対面ながらなかなかの団結力で、敵チームより先にチェックポイントに向かおうとする彼らは、しかし途中の銃撃戦で恐るべき事態に遭遇する。なんと敵側から飛んできた銃弾が、すべて本物、実弾だったのだ。

65点
密室サスペンスとしては、充分楽しめる

「MKウルトラ」計画は、陰謀論好きやオカルト方面では有名な洗脳実験である。冷戦時代にCIAにより行われたが、資料がすべて破棄されたことから公式に認めさせるのは難しい。だが奴らならこうした非人道的な実験もやりかねない。おおむねそんな感じに認識されている。ネタにした映画も複数ある。『実験室KR-13』は、そんな定番ネタを、現代を舞台に蘇らせたサスペンス作。

若き研究者エミリー(クロエ・セヴィニー)は、ある政府機関に志願しやってきた。そこで彼女は、今後の任務にかかわるビデオ映像を見せられる。そこには明るい実験室内部が写っており、やがて部屋に若い女性ケリー(クレア・デュヴァル)ら4人の男女がやってくる。彼らは治験バイトに応募してきた若者で、最初に質問表に回答したあと博士(ピーター・ストーメア)の説明を受けるが、その最後に驚くべき光景を目にすることになる。

のっけから重苦しい音楽とムードで、こいつは意外といいかもと思わせる。その期待は裏切られることなく、「SAW」のような密室恐怖劇が94分間ノンストップで繰り広げられる。開始18分あたりで起こる出来事に、たぶん観客のほとんどは度肝を抜かれ、そこから心拍数はあがりっぱなしとなるだろう。

65点
内容は悪くないが、宣伝が大ネタバレ

『あの日、欲望の大地で』という、先日公開されたサスペンス映画があるが、それについての記事で私は、ネタバレに無頓着な宣伝会社の姿勢を静かに批判した。こういう事を書くと業界では嫌われるのだが、あの記事に反応して送られてきたメールはすべて、よくぞ言ってくれた、という好意的なものであった。

それらに勇気をもらったことと、私の立ち位置は常に100パーセント消費者側であるからまた今回も書くが、『ホースメン』の宣伝のネタバレ度合いはさらにひどい。本年度ネタバレ宣伝会社大賞、最有力候補である。イントロダクションどころか、キャッチコピーの段階ですでにアウトなので、これはもうどうにもならない。本記事以外のものを先に読んでしまったお客さんには、ご愁傷様というほかない。

刑事エイダン(デニス・クエイド)は妻亡き後、息子のアレックス(ルー・テイラー・プッチ)、ショーン(リアム・ジェイムズ)と暮らしていた。愛する二人と満足なコミュニケーションをとれずにいたエイダンだが、その多忙さに輪をかける事件が勃発。聖書のヨハネの黙示録をモチーフにしたと思しき猟奇連続殺人がおきたのだ。発見者で、被害者の養女のクリスティン(チャン・ツィイー)と接したエイダンは、自分と息子の関係が頭によぎり、彼女を気にかけるようになる。

65点
日本人がいま見ておくべき「先輩」の姿

自民・公明から民主党へ、政権交代が起きたばかりの日本。世襲を繰り返してきた結果、若手に優れた人材が不足する自民党が没落するのは世の必然。結果的にポテンシャルの高い才能が集まり、政権をとったことで今後、さらに人材流入が加速するであろう民主党に、人々が期待を抱くのも当然であろう。

ただ、そんな新政権・民主党に対して漠然とした不安が残るのもまた事実。とくに、移民に対して彼らがどう考えているかは多くの人が気になる所。

例によってネット上では、やつらは中韓から何千万人も受け入れるつもりだ、売国政党だ、などと怪しげな情報が飛び交っている。少し考えれば、経団連とべったりの自民党が移民政策を推進するならともかく、労組が支持基盤のひとつである民主党がそんなバカげた政策(移民を入れれば労働者の給料は下がる)を実行できるとはとても思えないのだが……。

65点
ハイビジョンで送る、日本の原風景

誰もが思うNHKの強みというのは、他と比べて潤沢な予算や期間等、製作体制が整っている分、質の高いドキュメンタリーが作れるという点だろう。本作のもととなった『里山』シリーズはその際たるもので、これほどの仕事に挑める場があるだけでも、菊池哲理ディレクター以下スタッフは下手な映画業界の人々よりも恵まれている。

「NHKスペシャル」で3部にわたり好評を得たこのシリーズの、第三部に新規映像を加え、再編集したのがこの劇場版。NHKの誇るハイビジョン機材を駆使した超高画質で、日本の財産ともいうべき雑木林の息遣いを描く「映像詩」。日本人すべての琴線に触れる緑の光の洪水に、誰もが酔いしれることだろう。

さらにこの劇場版は、音声も5.1chにした上、映像をデジタル処理でさらに美しくしたという。すでに海外の映画祭では高い評価を得たが、日本人にどうしても見てほしい「あるシーン」を追加してあるということで、テレビ版のファンも一見の価値があろう。

65点
井村空美がすべてを見せる官能演技

おっぱい先生の綾瀬はるか、セミヌード公開決定の磯山さやか、入浴ドロンジョ深田恭子と、ホリプロの快進撃(H方面)が止まらない。

かつてホリプロといえば、本格アイドルを次々輩出した名門のイメージだったが、いまやセクシー路線真っ只中。アイドルのお手軽リサイクルなどと陰口をたたく輩もいるが、考えてもみて欲しい。バラドルに再生されるのと、お脱ぎくださるのと、どちらのチェンジが世のためになるのか。オバマ大統領に聞くまでもなく、結論は明らかであろう。

というわけで、井村空美である。

65点
トム・クルーズのおかげでわかりやすくなった

ナチス関連の映画は、日本人にはわかりにくいと言われる。ドイツではハーケンクロイツを提示しただけでも違法とされ、今でもこの手の映画撮影は困難をきわめる。

本作の撮影隊、およびユダヤ人監督ブライアン・シンガーも、このジャンルの経験があるだけあり、ドイツロケでは慎重にコトを運んだが、それでも訴訟沙汰に巻き込まれた(撮影地を提供した地主が、鉤十字マークの提示の件で訴えられた)。

純粋な愛国心から、ヒトラーの暴走に反発していたシュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)は、軍内部のレジスタンス組織に深く関わるようになる。やがて彼は、他の仲間とともに総統暗殺計画「ワルキューレ作戦」の根回しに取り掛かる。

65点
野心的アイデアをほめたい

新鋭監督は、野心あふれるほうがいい。85分間リアルタイム進行、一回もカットなし(全編ワンカット)。そんな個性的な実話映画『PVC-1 余命85分』を撮った、コロンビアのスピロス・スタソロプロス監督のように。

南米のコロンビアで信じがたい事件が発生した。ある農場主(ダニエル・パエス)の家に強盗グループが押し入り、家族を監禁。だが金がないと知った犯行グループは、あろうことか一家の妻(メリダ・ウルキーア)の首に、時限爆弾入りの極太リングを装着して去ったのだ。

ここまで一度もカットされず話は進む。そしてその後も、ずっと1台の手持ちカメラで事件の顛末が描かれていく。舞台は室内でなく屋外、しかもいくつも場所を変えるという困難な撮影を、綿密な計画通り成し遂げたこの監督の手腕には驚かされる。『ロープ』(48年)で同じ挑戦をしたA・ヒッチコックもびっくりである。

65点
話題の反日描写とは?

インターネットの普及以来、映画会社は様々な気苦労を背負い込むことになった。違法ダウンロードの蔓延など、世界共通の悩みも多いが、おそらく日本独特のものとして、「反日的映画は徹底的に叩かれる」というものがある。

オーストラリア映画人が、その威信をかけて作り上げた大作『オーストラリア』も、その落とし穴(?)に見事はまりこみ、作品のよしあしとは無関係な部分で話題を呼ぶことになった。

英国上流階級のレディ・サラ(ニコール・キッドマン)は、一向に帰国しない夫に業を煮やし、その行き先オーストラリアまで追いかけていく。ところが夫の領地"ファラウェイ・ダウンズ"にその姿はなく、粗暴な管理者ドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)がいるだけだ。性格も身分も正反対の二人は出会ったその日から反発しあうが、彼らの行く先には命がけで協力せざるを得ない過酷な運命が待ちうけていた。

65点
沖縄にあこがれる人にピッタリ

それはあながち間違いでもないようで、短期で滞在するはずがそのままいついてしまった、という東京人も少なくない。『カフーを待ちわびて』は、そんな癒しの地・沖縄にあこがれる都会人にすすめたい一本。

沖縄の離島で古い雑貨屋を営む青年アキオ(玉山鉄二)は、愛犬カフーとのんびり暮らしている。ある日、彼に一通の手紙が届く。アキオがかつて冗談で「嫁に来ないか」と書いた絵馬を、神社で読んだという女性サチ(マイコ)が、本当にたずねて来るというのだ。

まるで昭和40年代のような、リアルALWAYS状態というべき個人商店のたたずまい。30円くらいで売ってそうな、昔ながらのアイスキャンデーが溶けない距離にある紺碧の海、貸しきり状態の白浜。傍らにはリードでつなぐ必要がないほど慣れ、ストレスもなさげな大型犬。確かにとんでもなく「豊か」な暮らしである。

65点
エログロ全開の18禁アニメ

本来、子供のためにある「人形アニメ」で、エログロナンセンスをやってしまう。初めての試みではもちろんないが、そのギャップはやっぱり笑いを呼ぶものだ。

そんなR-18作品『モトリー・クルーのディザスター! 〜アルマゲドン危機一発〜』に出てくるマヌケな粘土人形の顔をみるたびに、それでもこの撮影は大変だったろうな、とか、この人形を作るのに大真面目な職人たちの努力があったんだろうと考えると、それがまたおかしかったりする。

自慰行為にふける天文台職員による幸運な偶然により、地球激突間近の小惑星が発見される。政府機関は、この危機を脱するため、数名の専門家を呼び寄せる。その一人で、リーダーのハリー(声:ジム・カミングス)は、小惑星に穴を掘り核爆弾をしかけるため、仲間とともにシャトルに乗り込む。

65点
「幸せのちから」に続くウィル・スミス主演・感動作

キリスト教圏の映画で数字の7が出れくれば、それは彼らの宗教にかかわるテーマやモチーフということ。『7つの贈り物』ももちろんそうで、最初のモノローグで主人公は、7日間で世界を創造した主と自らの人生を比べ、自嘲気味に語る。それがいったい何を意味するのか、ラストで驚きとともに明らかになる。

国税局の役人ベン(ウィル・スミス)は、7人のリストを手にある計画をすすめていた。まず、それぞれにアプローチし、彼らがベンの意に沿う人物かどうか確かめる。「合格」だった場合は、その運命を変えるほどの「贈り物」をするのだ。だがその計画は、魅力的な女性エミリー(ロザリオ・ドーソン)と出会い、徐々に狂っていく。いったいベンの最終目的は何なのだろうか。

見た後、よく似た話やアニメーション作品がすぐに頭に浮かんだが、タイトルを書くと結末が一発でばれるので自粛する。

65点
もし、人生の時間が逆に流れたら?

人生はままならない事の連続だが、この映画の主人公ベンジャミンほど極端な例はない。彼はなんと、80歳の赤ん坊として生まれ、年を経るほどに若返っていく。通常の反対の加齢(減齢?)現象。そんなダークかつファンタジックな架空伝記を見て、観客は何を感じるだろうか。

1918年のニューオーリンズに生まれた赤ん坊ベンジャミンは、老人の風貌をしていた。ショックを受けた父親は、思わず手近な老人養護施設の前にベンジャミンを捨ててしまう。幸いこの子は施設の心ある黒人女性(タラジ・P・ヘンソン)に拾われ、すくすくと育つ。そして驚くべきことに、彼は成長するに従いどんどん若い姿(ブラッド・ピット)に変貌していく。

ベンジャミンが拾われる場面から、早くも涙腺の弱い方は要注意の感動ドラマ。死期の迫った老人たちに囲まれて、施設で育つ幼少時代。これがじつに味わい深い。幼いころから他者の死、あるいは自らの死と間近に接し、育ったベンジャミンは、まるで悟りを開いたように自らの運命を静かに受け入れ、逆らわずに生きていく。

65点
愛と革命の闘士チェ・ゲバラ最後の戦いを描く

キューバ革命を戦うチェ・ゲバラの姿を描いた前編『チェ 28歳の革命』(公開中)は、あまりに説明皆無で初心者お断りなつくり。キューバ史をよく知るジャーナリストは「それでも見てて疲れた」と言い、キューバ政府にパイプを持つほどの、あるゲバラフリークは「(自分は楽しめたが)はたして一般人がついてこれるのか心配になるほど」と私に語った。

無理もない。私に言わせれば、あの前編はこの『チェ 39歳 別れの手紙』、すなわち後編の後付け補足であり、あくまでこちらの満足度をUPさせるための先鋒という位置づけ。

よって、『28歳の革命』だけで必死に何か解釈しようとしている人を見ると、ちょいと気の毒になる。スティーヴン・ソダーバーグ監督が見せたかったものは、こちらにこそあると私は確信する。つまり、後編だけ見るのはまったく問題ないが、前編だけ見るというのはありえない。だから映画会社はせめて、あの前編に来た人には後編の半額チケットでもつけてやったらよかった。

65点
09年初笑いはうすた京介の代表作アニメで

元旦に公開される映画はかなり珍しいが、『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』に関しては、この日がもっともふさわしいように思える。とくに理由はない。

フリーマーケットでピヨ彦(声:金丸淳一)がたまたま買った笛のネックレスは、異世界の扉を開く鍵だった。そこから出てきた謎の王女(声:真木よう子)と奇跡的な対話を成功させたピヨ彦は、いつの間にやら王女の探し物を手伝う羽目になっていた。気づくとジャガー(声:藤原啓治)らいつものメンバーも背後に集まっており同行することに。そんな彼らに、王女らを狙う闇世界の住人が襲い掛かる。

不条理マンガの雄、うすた京介の人気コミックを、Flashアニメ出身のFROGMAN監督がアニメ化。一見テキトーに見える絵柄ながら、高度な不条理ギャグを繰り出す原作の雰囲気をつかんだ映画作品となっている。

65点
中原俊監督が最高傑作「櫻の園」を自らの手でリメイク

芸能事務所のオスカープロモーションが本格的に映画参入するにあたり、幾多の企画から選んだのが中原俊監督『櫻の園』(90年)のセルフリメイクであった。担当者の中にきっとあの作品の熱烈なファンがいたのだろうと思うとちょっとおかしいが、さすがはアイドル育成のプロたち。日本の青春映画屈指の傑作に目を付けるとは、さすが侮れない。

東京の音楽学校から、故郷の名門私立女子高・櫻華学園に編入してきた女子高生の桃(福田沙紀)。お嬢様学校らしい、"伝統"という名の束縛に早速嫌気が差した彼女は、今は使われていない旧校舎の演劇部室から、チェーホフ「桜の園」の台本を見つける。かつて伝統だったこの演題は、なぜ封印されたのか。興味を持った桃は、生徒を集め演劇部の復活を試みるが……。

オリジナルを見た方はあらすじでわかるとおり、内容はまったくの別物。その意味では、リメイクと呼ぶべきではないかもしれない。

65点
「インクレディブル・ハルク」に続くアメコミ超大作

美やパワーに対する内なる欲求、憧れが強いのか、アメリカ人は肉体改造が大好きだ。

ボディビルやプロレスの大会は、アナボリックステロイドをバンバン入れた大男ばかり。誰が見たって違法薬物を使用しているのに、当たり前のようにテレビで放映するなど、競技自体が市民権を得ている。それどころか街のジムや高校スポーツ界にだって、使用者は珍しくもない。

一方女性もダイエット熱が高く、美容整形に手を出すセレブは後を絶たない。効果が出ているかは微妙であるが。

65点
マキノ雅彦監督最新作は、マキノ家伝家の宝刀、清水の次郎長もの

今から100年前、初めての時代劇『本能寺合戦』(1908年)から日本映画の歴史は始まった。その監督・牧野省三の思いは、邦画の基礎ともいうべき作品群を作り上げた、いわゆるマキノ家の面々に受け継がれる。そして、その末裔たるマキノ雅彦=津川雅彦らの手により、今も息づいている。

ちょっぴりエッチな、大人のための粋な娯楽作『寝ずの番』(06年)に続く彼の新作は、上記牧野省三の息子で往年の名監督、マキノ雅弘の代表シリーズ『次郎長三国志』。マキノ家の伝家の宝刀とも言うべき本命の一本だ。古き良き時代、大勢の日本人に愛された映画作品を、装いも新たに、しかし根本的な部分はしっかり踏襲して送り出す。今回も「大人による、大人のための娯楽」だ。

江戸時代の清水湊。恋女房のお蝶(鈴木京香)を残し渡世修行に出ていた博徒の次郎長(中井貴一)が3年ぶりに帰ってきた。彼は大政(岸部一徳)、小政(北村一輝)、そして森の石松(温水洋一)ら大勢の子分を引き連れ、いまや東海道に名をとどろかす立派な親分となっていた。だがその代わりに敵も増え、一家は心休まる間もなく戦いに巻き込まれていく。

65点
キャメロン・ディアスとアシュトン・カッチャー共演のロマコメ

初来日したアシュトン・カッチャーは、16歳上の奥さんデミ・ムーアを引き連れ、結果的にキャメロン・ディアスを加えた3ショットという、ゴージャス極まりない絵を日本のマスコミに提供してくれた。

まだ50代だった父親を亡くしたばかりで顔色の悪いキャメロンに比べ、全米ティーンからダントツの人気を誇るハンサムボーイの寵愛を受けるデミ・ムーアの貫禄は圧倒的。ハリウッド有数の高給取りであるはずのキャメロンが、逆に気の毒になるほどであった。

そんなわけで、日本でも徐々にそのカリスマ性が広まりつつあるアシュトンは、本作でもすさまじいオーラ、あるいはフェロモンを発している。ちなみにデミ・ムーアはこの映画には出ていない、念のため。

65点
スターシップ・トゥルーパーズ、一作目の正当なる続編

『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズは日本では特別な人気がある。本国ではDVD販売用だった超低予算のパート2も劇場公開されたし、この3作目も世界に先駆けて一番早く映画館で見ることができる。

なんといってもハインラインの原作『宇宙の戦士』に登場するパワードスーツのアイデアは、ガンダムをはじめとするロボットアニメとして日本で花開いたのだ。しかもこのパート3には、予算と技術上の都合によりパート1の監督ポール・バーホーベンが涙をのんで諦めたそのオリジナルパワードスーツ"マローダー"が満を持して登場する。何をおいても見に行ってやるのがSFファンの礼儀というものだ。

一時は優位に立った対バグズ戦争はさらに激化、泥沼化の様相を呈していた。高まる反戦運動を強引な取り締まりと処刑によって抑えてきた連邦政府は、実用化された惑星破壊兵器に戦況の打開を託していた。そんな中、英雄ジョニー・リコ大佐(キャスパー・ヴァン・ディーン)率いる惑星ロク・サン防衛軍に、国民的人気歌手でもある総司令官アノーキ(スティーヴン・ホーガン)が現れる。時を同じくして、基地に不審な出来事がおき始める。

65点
中国の想像を絶する環境大破壊をご紹介

『いま ここにある風景』は、いまの中国のとんでもない実態を自らの目で見たい人にはたまらない一品である。

カナダの写真家エドワード・バーティンスキーは、社会の発展が環境に与える変化を撮り続けてきたカメラマン。彼が撮れば、産廃も環境破壊も美しいアートになってしまう。本作は、彼が新たに目をつけた地上最大の経済発展地区=中国の風景を、彼と共に切り取ったドキュメンタリー。

冒頭から度肝を抜かれる。機械がうなり声を上げるアイロン工場の内部を、移動撮影で延々と見せるだけなのだが、これがいつまでたっても終わらない。だが観客はひとつのショットが終わらない事よりも、"この建物ははいったいどこまで続いているのか?"に驚くことになるだろう。

65点
10日間で親友をつれてこないと破産?!

フランスの名監督パトリス・ルコントは、この最新作の後3本の長編映画を監督したところで引退すると宣言した。才能とは永遠に湧き出るものではないと悟った上での引き際の判断なのかもしれないが、潔くも寂しい話である。

美術商のフランソワ(ダニエル・オートゥイユ)は、自身の誕生パーティーの席で気の強い女共同経営者(ジュリー・ガイエ)に「アナタは友達がいない」と煽られ、ならば10日以内に親友を連れてくると反論。落札したばかりの20万ユーロの壷を賭けるとまで宣言してしまう。さっそく翌日親友候補リストを作成し、上から順に当たった彼は、しかし自分が誰からも好かれていなかった事を知る。

成功と富を手にし、順風満帆と思っていた自分の人生が、じつは大いなる欠陥品だったかもしれないと知らされる。そこで狼狽する中年男の悲哀を軽いコメディタッチで描いていく。こっそり書店の店員に『友達のつくりかた』なんて本を問い合わせる後姿が笑え、いや泣ける。

65点
ネルソン・マンデラの公式半生記

ネルソン・マンデラといえば反アパルトヘイト運動。その偉大なる指導者にして、南アフリカ初の黒人大統領にまで登りつめた男だ。『マンデラの名もなき看守』は、99年に政界引退した彼がはじめて映画化を許可した伝記もの。現在のところ唯一の、ネルソン・マンデラ公式半生記といえる。

1968年、アパルトヘイト(人種隔離政策)全盛の南アフリカ共和国。白人看守のジェームズ(ジョセフ・ファインズ)は、幼いころ黒人の子と遊んだ経験から彼らの言語「コーサ語」を理解できた。その能力を買われ、国家反逆罪で終身刑服役中の反アパルトヘイト運動指導者マンデラ(デニス・ヘイスバート)付きを命じられる。言葉のわからぬふりをしつつ、密かに黒人同士の伝令内容を聞き取り報告せよというわけだが、マンデラの人柄に直接触れた彼は、逆にその理想に心奪われていくのだった。

タイトルどおり、"マンデラの名もなき看守"とマンデラの交流・友情を軸にした構成。黒人差別が当たり前の社会にどっぷり浸かっていた白人男が、「常識を疑う」事からやがて目覚めていく姿を通しマンデラの人柄、思想の偉大さを謳う。

65点
マンモスと人が共存した時代のアドベンチャー

バイオリズムがマゾ期に突入しているアメリカ映画界は、愛国プロパガンダの雄ローランド・エメリッヒ監督にさえ、古代アドベンチャーの形を借りて反省ゴメンナサイ映画を作らせるほど絶好調である。

紀元前一万年、場所は地上のどこか。年に一度のマンモス大移動の際、一頭だけ狩り日々の糧とする平和な種族がいた。その若きリーダー、デレー(スティーヴン・ストレイト)は、ある日騎馬兵たちに集落を襲われ、愛する新妻(カミーラ・ベル)を仲間たちの身柄と共に奪われてしまう。デレーたちより進んだ文明を持つ騎馬軍団は、はるか離れた土地にこうした奴隷を集め、巨大ピラミッドを建築しているのだった。

いたいけな人民が力をあわせて立ち上がり、無法な権力者に怒りの鉄槌を食らわせる。『スターゲイト』(94)、『インデペンデンス・デイ』(96)でおなじみローランド・エメリッヒ得意の人民革命ムービーである。

65点
誤って人を殺してしまった16歳少年は、その後どうするのか?

意図せず他人を殺してしまった少年の心理を描く『パラノイドパーク』は、同じガス・ヴァン・サント監督がコロンバイン高校銃乱射事件犯人への理解を試みた『エレファント』(03年)の姉妹編ともいうべき作品。

スケボー好きの16歳の少年アレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は、アナーキーな若者が自分たちで作った公園"パラノイドパーク"に出入りするようになる。基本的にはマジメ学生のアレックスとは違う、ちょっと悪くてカッコイイ奴らがそこには大勢いた。やがて彼らと行動を共にするアレックスは、ほんの冒険心で挑んだ列車飛び乗り遊びの最中、とんでもない事件を起こしてしまう。

さて、思い出すのもおぞましい形で人を死なせてしまうアレックスだが、わずか16歳のティーンはそんな時、何を考え行動するのか。離れて背後から見つめるだけだった『エレファント』から一歩踏み込み、ガス・ヴァン・サント監督は少年の横顔をクローズアップする。

65点
母親のため、マラソンに挑戦した知的障がいの息子の感動実話

『裸足のギボン』は、2年間の準備を経て撮影された、実話をもとにしたシンプルな感動ドラマだ。

タンレイ村のギボン(シン・ヒョンジュン)は、幼いころの熱病がもとで、40歳になった今でも知能は8歳のまま。靴を履かずに裸足で駆け回り、村人の下働きをして二人暮しの母親(キム・スミ)を支えている。ある日、ギボンの足が意外と速いことをしった村長(イム・ハリョン)は、彼を全国ハーフマラソンに出場させようと考える。賞金が出ると聞いたギボンは、それで母親に入れ歯を贈ろうと、村長と二人で特訓に励むのだが……。

当初村長は、自分の功績にしようという下心もあって、(周りの反対を無視して)ギボンをバイクで引きまわす。だが、自分を100%信頼し、母親のため純粋な笑顔でひたすら頑張る姿を見て、やがて誰よりギボンの事を思うようになる。人情味あふれる雰囲気が持ち味のイム・ハリョンは、こういう役をやらせると右に出るものがいない。なにしろ悪態をついても善人にしか見えない。

65点
タイトルの意味が明らかになるとき、観客は大きなショックを受ける

こちらを不安にさせる不協和な音楽に、のっけから異様な緊迫感。何かとんで

もない事がおきると予感させるドラマだ。最大の特徴は、誰もが予想だにせ

ぬ凄まじい結末で、主演の小池栄子にとってはこの場面、間違いな

65点
浮気相手と夫のガチンコ対決サスペンス

傑作戯曲の2度目の映画化である本作は、現代的な舞台設定と多少の結末変更があるため、72年版の映画を見た人も大いに楽しめる。むろん、未見の人ならなおさら面白いサスペンスドラマだ。

ベテランミステリ作家のアンドリュー(マイケル・ケイン)の豪邸に、売れない若手役者のマイロ(ジュード・ロウ)がやってくる。マイロはアンドリューの妻と不倫中であり、今日の招待はその件だろうと覚悟していた。マイロは堂々たる態度で逆に離婚を迫るが、そんな彼にアンドリューは意外な提案をするのだった。

舞台は一軒の屋敷。登場人物はほぼこの二人のみ。騙し、騙しあう若者と老人。彼らの、会話を中心とした演技合戦こそがすべて。この上ないミニマムさが魅力の、優れたサスペンスだ。

65点
ロシアで進化するガン=カタ・アクション

いま、ロシアは原油高騰による好景気に沸いており、壊滅寸前に追い込まれていた国内映画産業も活気を取り戻しつつある。この国では、アメリカ製アクションエンタテイメントが大人気であり、若者向け作品はおのずとその強い影響を受けている。ロシア製・特殊部隊アクションである本作が、ハリウッドのような娯楽一辺倒のつくりになっているのもまた、当然のことといえる。

軍縮が現実のものとなっている近未来。大雪に覆われたロシアの実験施設からの連絡が途絶えた。この地下にひそかに弾道ミサイルを配備していた軍当局は、機密保持と原因解明のためグッドウィン隊長(ユーリ・クッシェンコ)率いる特殊部隊を送り込む。そこで彼らは研究員の死体を次々と発見するが、同時に致死性のウィルスに感染してしまう。

レイトショー公開のロシア映画ということでか、チラシのあらすじ紹介がまったく本編の内容と異なっていたのには苦笑した。資料には、映画バイオハザードのように生物兵器と化した研究員と特殊部隊が戦うなどと書いてあるが、そんな話は出てこない。

65点
エジプトの音楽隊が、"敵国"イスラエルで迷子に

カンヌ映画祭で好評を得、東京国際映画祭の最高賞(東京サクラグランプリ)を受賞した本作は、ミニシアターで映画を見るのが好きな映画通にとって、この冬期待の一本だろう。

1990年代の初頭。エジプトの警察音楽隊が、イスラエルに招かれやってきた。だが手違いのためか、空港に迎えがいない。誇り高きベテラン楽団長(サッソン・ガーベイ)は、自力で目的地を目指すが、わずかな地名の聞き違いで見当違いな村に到着。翌朝のバス便まで動きが取れなくなってしまう。

エジプト(アラブ人)とイスラエル(ユダヤ人)といえば、しょっちゅう戦争しているまさに不倶戴天の敵。すわ、緊張か?! と思うとそうではない。この映画のポイントは90年代初頭という年代設定で、このとき両国は、和平進行中の数少ない「雪解け」のとき。舞台が辺鄙な集落ということもあり、住民たちものんびりしている。

65点
日本最強子役が挑む難病もの

神木隆之介といえば天才子役。デビュー当初よりその演技力は高く評価されている。個人的には演技うんぬんより、性別を超えた透明感溢れるルックスとムードこそが持ち味と思っている。誰もが一目で好感を抱いてしまう、このオーラこそ神木隆之介最大の武器であり、それは14歳になった本作でも衰える気配がない。

1977年の函館。野球とラジオが大好きな少年、太郎(神木隆之介)は、試合中に倒れ、そのまま入院することに。そこで"大先生"(原田芳雄)と知り合った彼は、そのはからいで翌日から院内放送のDJを任される。番組は好評で、すっかり院内で有名人となった太郎は、一人の少女(福田麻由子)と出会い、急速に惹かれていく。

小さな恋と不条理な運命、懸命に生きる少年の生きがいとなるDJ……。すべて予想の範囲内の物語ながら、どこか心ひかれる作品だ。これは本作が、脚本でなく画面と役者で魅せる映画だから。

65点
会話で笑わせる、沈黙シリーズ中でもかなりの佳作

全主演作で、無敗の大活躍を見せるスティーヴン・セガールの強さは、もはやギャグの粋に達している。実生活で、犯罪組織とのつながりを指摘されたFBIに対して、事実無根との抗議声明をだしたときにも、むしろ誰もが「これでFBIも壊滅だな」と思ったに違いない。

『沈黙の報復』は、そのセガール映画のあまりに非常識なムテキさ加減を、上手い具合に笑いに取り込んだ、ファンなら大ウケの一品。もちろん今回も、ストーリーやキャラクター設定そっちのけで、"スティーヴン・セガール"が大暴れするアクション映画であることは言うまでもない。

しかも本作では、"息子を殺された父親"という、これ以上ない理由付けにより、際限ない大暴力の正当化を行っている。復讐に燃えるセガールを相手にしたら、地球上のどんな巨大組織だってかなうわけがない。最初から全員死亡が決定しているのと同じだ。

65点
まわりに溢れる幸せに気づかせてくれる感動ドラマ

ものの本によれば、女性には2種類のタイプがいるという。それは、女王様型とボランティア型。(男に)つくされて喜ぶか、それともつくして喜ぶか。ブサメンなのに美人にモテる男たちは、アカギが捨て牌をエリアで分けるがごとく、ボランティアタイプを本能的に見分け、アプローチしている。

もっと具体的にいうと、酔っ払って強引に迫られると断れない、「きれいだね」より「いつもありがとう」と言われる方が嬉しい、歴代彼氏が俗に言うダメンズばかりというアナタは、間違いなくボランティアタイプである。運が悪いとヒモまがいのろくでなしを一生養い続ける事になるから要注意だ。

『自虐の詩』のヒロインもその典型で、ハタからみるとどうしようもないヤクザものの面倒をみている。この男ときたら、一切働かないどころか籍すら入れない。短気で暴力は振るう、酒とタバコとパチンコが好き、彼女のなけなしの給料は持っていってしまう。いったい何が楽しくて一緒に暮らしているのかと周囲は思うが、本人はこれが幸せという(あるいは思い込もうとしているのか)。

65点
あたふたする完璧女はかわいらしい

私たちの日常生活においては、出産にせよ恋人にせよその前段階で心の準備をする余裕があるものだ。たとえば、友人関係から徐々に盛り上がっていくとか、10ヶ月の妊娠期間中に精神的にも母となっていったりという具合に。しかし映画の中では、突然それらがやってくるシチュエーションを設定し、意図的にドラマを作り出していくのが常道である。ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』(01年)を丁寧にリメイクした『幸せのレシピ』も、その例に漏れない。

NYで人気のフレンチレストランでシェフを務めるケイト(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)。真面目一徹、完璧主義者の彼女は、ある日突然、姪っ子のポーラ(アビゲイル・ブレスリン)と暮らすことに。実母にジャンクフードを与えられて育ったポーラは、ケイトの繊細な料理には見向きもしない。おまけに久々に出勤すると、ラテンな性格のイタリア料理人(アーロン・エッカート)が新任の副シェフに。緊張感に満ちていたケイトの厨房は、彼によって妙にお気楽なムードに変えられてしまっていた。

まさに、ケイト受難の日々、である。キャリアを苦労して積み上げてきた彼女のような人物には、もともと完成された生活リズムというものがある。それを、突如やってきた二人によりかき乱されてしまう。ご飯を食べてくれない子供と、想像を絶する能天気男(しかも自分の大ファンときた)。どちらもケイトの経験では、とても対処しきれぬ難関だ。

65点
ただのスリラーと思えばまあまあ

名高いカルトムービーのリメイクである本作は、むしろオリジナルを知らない観客こそ楽しめるようなアレンジが加えられている。

誠実な性格の白バイ警官(ニコラス・ケイジ)は、ある交通事故現場で少女を救えなかった体験に悩まされていた。そんな折、突然姿を消したかつての婚約者(ケイト・ビーハン)から手紙が届く。それは、故郷のサマーズアイル島で産んだ彼女の娘が行方不明になり、手を貸してほしいとの内容だった。

ニコラス・ケイジ演じる警官は正義感が強く、また愛情深い男であり、自分の前から理由も告げずに姿を消した不誠実な恋人のため、単身この離れ小島にやってくる。どこからどうみても善人であり、物語の展開上、彼に落ち度はない。そこが大きなポイントとなってくる。

65点
こういう意欲作がどんどん増えたらいい

かつて『Returner リターナー』(02年、山崎貴監督)と『ピンポン』(02年、曽利文彦監督)をみたとき私は、明らかに世界レベルのエンターテイメントを志向するこの二人の監督が、やがて邦画界を変えてくれるかもしれないと大いに期待した。

作品はまだ荒削りではあったが、ともにCGなどVFXの専門畑から監督業に進出してきた彼らからは、従来の映画監督にはない発想と、それを形にするだけの実力が感じられたものだ。なにより既存の枠組みから脱することをいとわぬ怖いもの知らずな勇気、面白いものを見せてやろうというサービス精神が作品からにじみ出ていた。

その後、山崎貴監督のほうは『ALWAYS 三丁目の夕日』で、見事その年の日本の映画賞を総なめにした。そして曽利文彦監督の、『ピンポン』以来5年ぶりとなる最新作がこの『ベクシル 2077 日本鎖国』である。

65点
擬似父娘関係がせつないホラードラマ

世に吸血鬼映画は数あるが、『ブラッド』は父と娘の独特の距離感による愛情を描くことをベースにしたことで、大人の観客が注目するに足る一本になった。

敏腕記者セイディー(ルーシー・リュー)が、過去にカルト教団について取材した若い女性が殺された。不審に思ったセイディーは再度調査を始めるが、逆に教団関係者に拉致され殺されてしまう。だが、何らかの理由で吸血鬼として蘇生した彼女は、殺された娘の父親で刑事のローリンズ(マイケル・チクリス)と協力しながら、教団への復讐を開始するのだった。

この映画のみどころは、小型のボウガン片手にルーシーが跳び回るホラーアクションとしての立ち回りとか、あるいは彼女のスレンダーなヌードなどわかりやすい部分だけでもいくつかある。だがその最たるものは、無実の人間たちを(生き血をすするため)殺めなくては生存できない吸血鬼としての運命に葛藤するヒロインの姿。そして彼女とその宿命をはじめて理解した刑事との友情ドラマだ。

65点
デートのお供に最適なお気楽犯罪ムービー

オールスターキャストをスティーヴン・ソダーバーグ監督の軽妙な演出で見せる犯罪シリーズの第3弾である本作は、前作『オーシャンズ12』の悪い点をものの見事に修正し、コンテンツとしての延命を決定付けた一本といえる。

ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)率いる職人的な泥棒チーム"オーシャンズ"の中で、もっとも手堅く資産を増やしていたルーベン(エリオット・グールド)は、ホテル王バンク(アル・パチーノ)が提案するベガスの豪華ホテルの共同経営に参加する。ルーベンの人の良さを心配する仲間たちが警告していたにも関わらず、彼は狡猾なバンクにだまされ財産を失い、ショックによる心筋梗塞で倒れてしまう。復讐に燃えるオーシャンズは、ホテルのグランドオープンを滅茶苦茶にし、バンクを破産させるべく水面下で動き出した。

前作はあまりにオフザケがすぎ、「出演者とスタッフの自己満足が見苦しい」と厳しい批判にさらされた。今回も「これだけのメンバーに適当に気の利いたセリフをしゃべらせとけば、とりあえず客は入るだろう」との認識に基づいたお気楽映画であることに違いは無いが、少なくともごく普通の、ストーリーを楽しませる犯罪映画として成立している。

65点
田中麗奈の自然体演技が作品の質を高めた

夏になると戦争関連の映画が増えてくるが、原爆とその傷跡をテーマのひとつとしたこの『夕凪の街 桜の国』は、試写を見た周辺の映画関係者の評判がすこぶる高かったので、私も個人的に気になっていた。

原爆投下から13年経った広島。復興目覚しいこの街で、平野皆実(麻生久美子)は事務員として働いている。ある日彼女は同僚(吉沢悠)から告白されるが、それを機に将来を意識するようになり、同時に被爆者としてのコンプレックスと原爆症への怯えが表面化してくるのだった。

上記あらすじは、二部構成の前半である『夕凪の街』の冒頭部分。その主人公平野皆実の報われない愛を追うことで、投下からわずか13年後における被爆者たちが当時感じていた恐怖、疎外感を浮き彫りにする。原作漫画の構成にほぼ忠実なまま、映画も進行する。

65点
素朴な反米感情が描かれている

『イラク 狼の谷』は、アメリカ大嫌い! という人のために作られた反米アクション映画である。

この映画の製作国であるトルコはNATOの一員であり、古くから軍事を含む政治経済面では米国やイスラエル、ヨーロッパに協力する立場を取ってきた。しかし、国民のほとんどはイスラム教徒であり、同じイスラム文化圏の国々を自国の基地を利用して空爆する米国に対して、複雑な感情を抱いている。

しかも、当のEU(とくにイスラム人口の増加に頭を悩ませているフランス)からは、(トルコもイスラム教圏の国なので)あからさまに加盟を嫌がられている。米国にしても、トルコが中東とヨーロッパの境目に位置する地政学上の要衝ゆえ友好的なだけで、本音はフランスと同じ。イスラム人口の増加は欧米各国最大の悩みの種であり、内心では疎まれ、単なる駒として利用されているにすぎない。

65点
斜め構図と後半の唐突な展開はNG

心は自分のままで、カラダだけ異性と入れ替わる。しかも相手はクラスメートの可愛い幼馴染。……そんな、思春期の少年少女の琴線に触れる設定が有名な「転校生」は、いうまでもなく青春ファンタジーの名手、大林宣彦監督の代表作。今回は、自身の手による25年ぶりのリメイクとなる。

両親の離婚により、母親と信州に越してきた一夫(森田直幸)は、転校先で幼馴染の一美(蓮佛美沙子)と再会する。懐かしい思い出を語り合いながら、二人にとって大切な場所「さびしらの水場」にやってきた彼らは、足を滑らせて転落、岸に上がったときは身体だけ入れ替わっていた。

「大人になったらお嫁さんになってあげるって、キスしたじゃない」 すっかり美少女中学生へと成長した幼少期の幼馴染が恥じらいもせずそんな事をいう。相変わらず大林監督は、少年どもの心(と下半身)を刺激する小技が上手い。この瞬間、萌えは世代を超えた。

65点
殺人をお茶の間のエンタテイメントにした実在の殺人鬼の物語

ゾディアックといっても、若い日本人にはぴんとこないかもしれない。だが、一定以上の年齢の米国人にとって、この人物は相当な有名人だ。

1969年の独立記念日、カルフォルニア州をドライブ中のカップルが何者かに拳銃で襲われた。女性は9発の弾丸を受けて死亡。その後、犯人を名乗る男から警察に電話があった。さらに犯人は新聞社に犯行の詳細と奇妙な暗号文を送りつけてきた。紙面にそれを掲載しなければ、さらに誰かを殺すというのだ。こうして全米犯罪史上に残る、劇場型殺人事件が始まった。

自らをゾディアックと名乗るこの連続殺人犯による一連の事件は、いまだに未解決のまま。「セブン」「ファイト・クラブ」のデヴィッド・フィンチャー監督は、劇中の好奇心旺盛な若きイラストレーターの口を借りて、この謎解きに挑戦する。

65点
マジメに死を描く

特定のヒット曲をモチーフにした映画は数多い(最近では長澤まさみの『涙そうそう』など)が、人気と知名度をあてこんだお手軽映画である場合も少なくない。しかし、荒井由実の有名曲と同じ名を持つ本作は、幸いにしてその手の安直な作品ではない。

末期がんで余命半年とされる元報道カメラマン(津田寛治)が、故郷である福岡県久留米市のホスピスへ転院してきた。中学時代からの親友らが多数訪れる中、彼の脳裏にはどうしても思い出せない少女の姿があった。

自分に写真の楽しさを教えてくれたこの少女についての詳細を必死に思い出しながら、主人公は故郷の風景や人々を撮った写真集の作成に余生をかける。

65点
撃たれても平気で動き回る

日本には「ゴルゴ13」があるおかげで、全年齢的に狙撃者ものを受け入れる層が一定数存在する。戦士の中でもっとも天才的で職人気質の印象が強いスナイパーは、日本人の性にも合うのだ。

この『ザ・シューター/極大射程』もそんな狙撃者もののひとつ。宝島社の伝統あるランキング「このミステリーがすごい!」2000年の海外部門で一位となったスティーヴン・ハンターの原作を映画化したものだ。

かつてエリトリアでの軍事作戦中、上層部から見捨てられた米海兵隊の凄腕狙撃手ボブ・リー・スワガー(マーク・ウォールバーグ)は、生還後世捨て人となって山中でひっそり暮らしていた。そんな彼を、ある日ジョンソン大佐(ダニー・グローヴァー)らがたずねてくる。大佐によると、何者かによる大統領暗殺計画が発覚、遊説先のどこに警備の穴があるか、スワガーに調べてほしいというのだ。

65点
気の弱い女の子(エクステ装着済み)を誘うに最適な一本

ボディビルダーが行う大腿四頭筋の伸展運動であるレッグエクステンションとは、少なくともまったく無関係であろうとは思っていたが、ここでいう『エクステ』とは「ヘアーエクステンション」、すなわちお洒落な女の子がつける付け毛のこと。私などは、某ディレクターが見るたび鈴木みのるカットなどと呼ぶ、後頭部だけ長い坊主頭なのでまったく無縁なアイテムだが、巷では結構流行っているそうだ。

『エクステ』は、その題名どおり付け毛をめぐる恐怖体験を描くホラームービー。人毛で作ることもあるヘアエクステだが、もしもその材料となる毛髪の持ち主が恐ろしい怨念を持って死んだ少女だったとしたら……。これは、愛用者にはたまらない設定であろう。

横浜港のコンテナから、髪の毛に埋もれた少女の死体が発見された。死体安置所の管理人(大杉漣)は、そのあまりに美しい直毛に見惚れ、そのまま切断してエクステを作る。男は大の髪の毛フェチで、これまでも同様にして美容院に卸すなどしていた。そんなある日、男はその死体にも負けないほど美しい髪の少女(栗山千明)を街で見かけ、彼女が美容師だと突き止める。

65点
優等生的に作りすぎて、不自然な印象を受ける

阪神・淡路大震災を真っ向から描いた大作映画。震災を生き残ったあとに常識はずれの高齢でプロデビューし、今でも活躍する古市忠夫の原作を実話映画化したものだ。

神戸市で写真館を営む古市忠夫(赤井英和)は、1995年1月17日未明、自宅で大地震に遭遇する。必死の思いで外に出ると、商店街は壊滅、地獄の様相を呈していた。地域の消防団員でもある忠夫は、妻(田中好子)と娘らを公園に避難させると、生き埋めとなった生存者を探しに中心部へと戻っていく。

前半40分間かけて描かれる震災シーンの迫力がハンパじゃない。以前、阪神・淡路大震災の直後に作られた『マグニチュード 明日への架け橋』という映画があったが、同じ震災シーンのために用意されたのが、火事になる家屋セット1軒のみという、低予算にもほどがある内容であった。しかし今回は、まったくそんなことはない。

65点
いかにもアメリカ人が作った、いいかげんなニッポン描写が楽しい

『ワイルド・スピード』シリーズは、一言でいえばハリウッド製ヤンキー映画。毎回どこぞの街を舞台に、チョイワルな若者たちが改造車の公道レースに命をかける。シリーズのどれを見ても、ピカピカのカラフルなレースカーが爆音をあげる、迫力満点のチェイスシーンが見所になっている。クルマ好きのカップル向き娯楽映画だ。

このパート3最大の話題は、舞台が東京ということだろう。アメリカ映画界が日本を舞台にした映画を作ると、妙な勘違いによる独特の奇妙なムードが生まれることがよくあるが、この映画もまさにそれ。この映画を世界で一番楽しめるのは、おそらく日本人、それも東京をよく知る人だろう。

主人公はカリフォルニアの高校生(ルーカス・ブラック)。無類のクルマ好きを自認する彼は、今日も引き際を知らぬ無茶なレースで愛車をつぶしてしまった。いよいよ少年院行きかと思われたが、町を出ることを条件になんとか処分保留となる。彼は在日米軍基地に勤める父親を頼り、東京にやってくるが、彼の興味を引いたのはやはり公道レース。それも、日本ならではの狭い場所で行うドリフトレースだった。

65点
感動的な親子愛の物語

漫画家の一色まことがミスターマガジンに連載していた『花田少年史』は、かつて深夜枠でTVアニメ化されたことがあるが、このたびオリジナルエピソードを中心としたストーリーで実写映画化されることになった。

主人公の腕白少年、花田一路(須賀健太)は、凶暴ながら根は愛情深い母親(篠原涼子)、タクシー運転手をしている温厚な父親(西村雅彦)らとともに、少々度を越えて明るい花田家の一員として暮らしている。ある日一路は交通事故に遭い、天国に上りかけたところを女子高生の幽霊(安藤希)により救われる。その日以来、大の苦手だった幽霊が見えるようになってしまった一路の元に、様々な現世への未練を抱えた幽霊たちが現れるようになる。

『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』は、当初のポスターイメージがあまりに作品の内容とかけ離れており、私はひそかに心配していたが、どうやら別の絵柄のイメージを多用するようになったようで安心した。

65点
閉所恐怖症の方は見られない

『ディセント』は、ヨーロッパでたいへんな評判を呼んだイギリスのホラー映画だ。洞窟という、予算不足を補いつつも、観客の興味を引くに十分な舞台設定、女ばかり6人が出演という華やかさもホラーらしくて大変よろしい、身が凍る思いを存分に味わえる娯楽映画である。

主人公ら女6人は友達同士。一年に一回、秘境を探検する小旅行を企画して、友情を確かめあっている。今年は、彼女らのうち、一人の家族が不幸に逢ってから1年近くがたち、その気晴らしも兼ねていた。6人はアパラチア山脈奥地の地下にある、難易度が低めの洞窟探検を企画し、ロープで降下していくが、やがてなにかが違うような、不気味な違和感を感じ始めるのだった。

さて前半は、この洞窟探検が恐ろしい。人間一人がはって歩くのがやっと(身動きすらできないほどキツキツの狭さ!)の細い隙間を何メートルも進む場面などは、閉所恐怖症の方は絶対に見られまい。先がどうなっているかわからないのに、よく進めると思う。だって後退不可能なくらい狭いんだから。途中で一人が挟まり、あまりの恐怖に呼吸困難に陥るところでは、見ているこちらまで息苦しくなった。勘弁してくれと思う。

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