「前田有一の超映画批評」をランキング形式で紹介するサイトです。 週末の映画選びなどにご利用ください。

2121件中 801~850件 を表示しています。
65点
華やかな一般向けアクション映画

香港映画としては大作の部類に入る10億円の製作費、アーロン・クォックとレオン・カーフェイという2大スターを中心とした華やかなキャスト陣。「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」は、(香港人にとってはとくに)分かりやすいルックスのエンターテイメントである。

繁華街モンコックで爆破事件がおこり、かけつけた特殊部隊員らが車両ごと拉致される事件が香港警察を揺るがしている。ところが副長官のリー(レオン・カーフェイ)とラウ(アーロン・クォック)は、捜査の方向性をめぐって対立。とくに被害者の中に息子が含まれるリーの、職権乱用ともいうべき暴走ぶりを、ラウは激しく批判するのだが……。

本作は、ハンサムなおっさん二人のよくできたハードボイルド。日本での知名度は多少落ちるが、それでもこれをみれば、二人のスターに思い切り感情移入して楽しむのが正しいやり方だとわかるだろう。

65点
見どころは壇蜜の裸だけじゃない

本作の3ヶ月前に撮影した「私の奴隷になりなさい」(12年、日)で大ブレイクした壇蜜の最新作「甘い鞭」。公開こそ「私の奴隷になりなさい」の約1年後となったが、内容の過激さは勝るとも劣らずで、ご期待の壇蜜のハダカも、今となってはいい具合にプレミア感が感じられる。

女医の奈緒子(壇蜜)には、会員制SMクラブのM嬢というもう一つの顔があった。思春期の頃の体験によるトラウマがその背景としてあるのだが、それでも彼女は自らの性癖のすべてを理解していなかった。夜な夜なサディストの客の相手をしながらその謎を解き明かそうとする彼女は、しかし予想だにせぬ運命に巻き込まれてゆく。

悲惨な事件の被害者となったヒロインの話という事で、エロより前にグロさ、凄惨さが印象的なビジュアルとなった映画である。17歳時代を演じる間宮夕貴もぴちぴちの見事な身体を見せてくれるが、熾烈な暴力行為に遭いあっという間に血だらけ傷だらけになってしまう。

65点
格差社会を描くSF

SF作品というのは設定の奇抜さやおもしろさ、それらが必然的に語るメッセージ性がしっかりしていれば、リアリティについてはさほど問われない。

「エリジウム」は「第9地区」(09年、米ほか)でそれらを高いレベルでクリヤーしたニール・ブロムカンプ監督による新作。当然ながら強い期待をもって見られると思うが、結論としてはもう一歩といったところ。

2154年の地球は、人口増加による環境破壊で荒廃していた。富裕層はそんな地上からスペースコロニー「エリジウム」へと脱出。一家に一台、あらゆる病気を治す医療ポッドと共に、尽きぬ寿命を悠々自適に暮らしている。そんな中、地上の工場で劣悪な労働環境の元働いているマックス(マット・デイモン)は、職場の放射能事故によって余命5日を宣告される。絶望した彼は一か八かエリジウムの医療ポッドをめざすため、イリーガルな組織に近づくのだった。

65点
熟年のセックスレス問題を赤裸々に描く

長年連れ添った夫婦の愛が枯れていくのは万国共通だが、それに対する回答は各国・各民族で大きく異なる。中でも「31年目の夫婦げんか」をみると、アメリカ人の特異な考え方がよくわかる。

結婚31年目を迎えたアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)は、妻のケイ(メリル・ストリープ)から突然滞在型の結婚カウンセリングを受けたいといわれて戸惑う。そりゃ夜のお勤めはめっきり減ったが、それでも二人の絆は失われていないと彼は思いこんでいたのだ。だが半ば強引に怪しげなカウンセラー(スティーヴ・カレル)の元に連れられて行った彼は、そんな自分の認識が甘かったことをやがて認識させられる。

ほのぼのしたタイトルが付いているが、何のことはない、これは熟年夫婦のセックスレス問題に対する傾向と対策。若い世代の観客にとっては、そうとう過激で恥ずかしい現実を描いた作品である。

65点
「ファミリー」映画

本国の批評家筋からはひどい評価で、興行収入の伸び悩んでいる「アフター・アース」だが、期待すべき点を間違えなければそれなりにイケる。

西暦3072年、人類はすでに他の惑星に移住し高度文明を築いている。恐怖を感じた時のフェロモンを察知する究極の生物兵器アーサに対し、恐怖心を克服することで勝利した伝説の将軍サイファ(ウィル・スミス)は、息子キタイ(ジェイデン・スミス)を連れ最後の任務に出る。一匹のアーサと兵士たちを積み込んだ宇宙船で、ある星に向かい軍事演習を行う予定だったが、彼らは予期せぬトラブルに遭遇。傷ついた宇宙船は、人類が離れて久しい「地球」へと不時着する。

オカルト色が強く一般からは敬遠されがちな上、どんでん返し脚本を期待されることを嫌がったのだろう。M・ナイト・シャマラン監督作品であることをあえて強調せぬマーケティングだがこれは正解。と同時に消費者にとっても親切な配慮といえる。

65点
三人寄れば文殊の知恵

「犬の力」で知られるミステリ作家ドン・ウィンズロウ原作の映画化である本作は、オリヴァー・ストーンが監督することによりユニークな味わいが加わった。

植物学者ベン(アーロン・ジョンソン)と元海兵隊のチョン(テイラー・キッチュ)は、ベンの専門知識とチョンの暴力を生かして大麻栽培ビジネスで成功した。親友同士の彼らは恋人(ブレイク・ライヴリー)の愛も分け合い、奇妙な3人生活を送っている。そんなある日、メキシコの巨大麻薬組織が業務提携名目で、なかば強引な契約を持ちかけてきたが……。

若者二人がベンチャービジネスで成功し、その収益でアフリカ慈善事業に精を出す。そんな序盤の説明からして、IT長者たちへの皮肉である。なにしろ扱う商品が麻薬というだけで、やってることは同じ。海兵隊としてアフガニスタンで戦ったチョンが、帰国しても殺人を屁とも思わぬ戦闘機械になっている設定も、どこかブラックさを感じさせる。

65点
社会派ドラマか、プロパガンダか

現職の再選が危ぶまれる大統領選挙の年に、それも投票日の直前に現職大統領の最大の功績をヒロイックに映画化したものを公開する。

どう見ても言い訳のしようがない、完全無欠のプロパガンダである。それを違うと評する人間は単なる脳内お花畑なのであって、外の人間から見ればこれは失笑が漏れるほどの、ああまたやってるね、の世界である。

テロリスト関係者をとっ捕まえては拷問を繰り返すも、CIAはいまだオサマ・ビンラディンの行方をつかめずにいた。やがて赴任してきた若き女性マヤ(ジェシカ・チャスティン)は優秀な情報分析官だったが、CIAの拷問手法への風当たりが強くなってきたこともあり、彼女は別の形でオサマの居所をつかもうとする。だが、敵は常に上手であり、やがてCIAにも大きな被害が出てしまう。

65点
山田洋次版「東京物語」

全国民の共通言語を失いつつあるアメリカにおいて、その最後のテーマである家族愛を描いた作品が量産されていることは何度も述べた。いつの時代でも、どの国においても、家族のすばらしさを描いた映画はいいものだ。だが、クリエイターがそんな話しか思い浮かばなくなったら、それは末期症状だ。

久々に上京してきた平山周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)だが、長男の幸一(西村雅彦)ら東京の子供たちの生活があまりにせわしなく、どこか孤独感を感じ始める。そんな中、とみこは問題児と思っていた次男(妻夫服聡)から紹介したい彼女(蒼井優)がいると打ち明けられる。

ホームドラマといえば小津安二郎監督。中でも「東京物語」(1953)は、先ごろ英国の映画誌が世界映画史上ベストワンに選び話題になったほどの、誰もが認める不朽の名作。「東京家族」はその「東京物語」を、現代のホームドラマの巨匠というべき山田洋次監督が現代的に翻案した作品である。実質的なリメイクといってよい。

65点
ヤクザの命で宝くじ

今年、アメリカでは「ハンガー・ゲーム」が大ヒット。貧乏地区の若者を集めて最後の1名まで殺し合いをさせるルールは高見広春による小説「バトルロワイヤル」そのものだが、その映画版で殺し合いゲームを統括する教師を演じたのがビートたけしこと北野武監督。彼が、このタイミングでやくざのサバイバルゲームというべき「アウトレイジ ビヨンド」を公開するのだから、偶然とは面白いものだ。

前作のラストから5年、策略により加藤(三浦友和)は山王会会長の座に上り詰めていた。かつて大友組組長(ビートたけし)のもとにいた若き経済ヤクザ石原(加瀬亮)は加藤の右腕となり、彼らは古参幹部を軽んじる実力主義、金もうけ主義を進めていた。そんな状況を好機と見た悪徳刑事片岡(小日向文世)は、花菱会若頭の西野(西田敏行)らを焚き付け、東西の大組織同士の対立を進めていく。

前作同様、だれが死ぬかわからぬ緊張感のもと、こわもてのヤクザたちが殺し合いをするバイオレンスアクション。今回は黒澤明監督の「用心棒」風味がより強くなり、トリックスターの小日向文世があからさまに両ヤクザ組織をあおりまくり、共倒れを狙う展開となる。即興演出で知られる北野監督にしては珍しい、脚本の面白さを楽しむタイプのサスペンスにもなっている。

65点
もっと突き抜けててもいい

最近のテレビはお年寄りの安否確認までするそうだが、こうした細かいところに手が届く式の発想は日本の良い所でもある。だが、ときにこうした心遣いがおせっかいであったり、息苦しく感じるのもまた事実である。

その点、他国は皆おおらかである。特にその最たる国といえばインド。彼らは、あまり細かいことは気にしない。それが映画作りにも現れているのが、「ロボット」の姉妹編というべき「ラ・ワン」である。

英国のバロン社は、デジタル世界のデータを物質化する画期的な技術を開発する。そのテクノロジーを応用した対戦格闘ゲーム「ラ・ワン」をプレイした同社のシェカル(シャールク・カーン)の息子プラティクは、ゲームを途中でやめたことからゲーム内のキャラクターに、現実世界で追われることになる。

65点
良くできているが前作ほどでは

日本には160万人以上のひきこもりの人がいて大変な社会問題になっているが、この映画のダークナイト=バットマンもまさにそれ。クリストファー・ノーラン版バットマン3部作のラストを飾る本作で、主人公バットマンは、前作のジョーカー戦で精神的に消耗したため完全に元気をなくしている。たとえお母さんが作った食事に手紙を挟んでも、屋敷から出てくる気配はない。

ヒーローの存在意義を揺るがした強敵ジョーカー戦から8年。ゴッサム・シティの治安は大富豪ブルース・ウェインことバットマン(クリスチャン・ベイル)自ら地方検事ハービー・デントの悪行をかぶり、デントを英雄とすることでかろうじて保たれていた。だが凶悪なテロリスト、ベイン(トム・ハーディ)の出現によって、そんなかりそめの平和も終わりを告げる。さらに女泥棒セリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)の働きにより、ブルースは致命的なダメージを受けることになる。

アメリカンヒーローものの頂点に位置するバットマンは、当然ながらアメリカ自身の投影であり、「ダークナイト ライジング」はその復活を高らかに宣言する一作となっている。

65点
刺激不足

日本に少なくアメリカにあるものに、実名で何かを批判する文化がある。とくに日本の芸能界は狭くしがらみだらけなので、他人の悪口はタブーである。たまに怖いもの知らずで会社名や人物名を名指しで批判する人がいるが、そうした人の末路は悲惨である。国民的美少女女優と離婚することになったり、仕事を干されて反原発芸人として祭り上げられる人生を歩むことになる。

離婚にリストラとろくでもないことが続く中年男フランク(ジョエル・マーレイ)は、不治の病を宣告されついに自殺を決意する。だが死のうとする瞬間、テレビのリアリティーショーでバカ女子高生がふざけたわがままぶりを発揮しているのを見てぶち切れ。自分が死ぬ代わりに彼女を殺すべく、銃を片手に他人の車を奪い取って現場へと向かう。

「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、幾多のセレブ達を実名でけちょんけちょんにけなしまくった事から、アメリカをはじめ各国で拍手喝采されたカルトムービーである。

65点
的確すぎるジョディ・フォスター監督

日本人は鬱気質が多いなどといわれるから、そうした症状に苦しむ人々に寄り添ったジョディ・フォスター監督最新作「それでも、愛してる」は、多くの共感を得られるであろう。

おもちゃ会社を経営するウォルター(メル・ギブソン)は、しかし重いうつ病に苦しんでいた。二人の息子も妻(ジョディ・フォスター)も、彼にしてやれることはほとんどなかった。そんなウォルターは、あるとき町で古ぼけたビーバーのパペットを拾いその「声」を聞く。以来彼は、そのビーバー越しにしか会話ができなくなるが、それでもみるみる社交性と自信を取り戻していくのだった。

メル・ギブソンが大真面目にビーバーを操るシュールな姿を、笑わずにみられる自信があるなら、本作はなかなかの佳作である。こいつをコメディー色なしの誠実なドラマに仕上げた人気女優ジョディ・フォスターは、監督としてもなかなかのセンスを持っている。

65点
この高校生、マッチョすぎ

『トワイライト』シリーズで、ヒロインを寝取ろうと頑張る狼男を演じたテイラー・ロートナーの主演最新作。中身は『トワイライト』シリーズを男の子向きにしたような、俗にいう中二病的な内容だが、そんなイタ恥ずかしい内容でも沢山のお金といい俳優をそろえれば、何とか見られる形になる事がよくわかる一品である。

パーティーで羽目を外すのが好きな、ある意味平凡な高校生ネイサン(テイラー・ロートナー)は、意外なウェブサイトで自分の少年時代の写真を発見する。それは、誘拐され消息不明の子供たちの画像を集めたサイト。だが自分には優しい両親もいる──。それでも疑念を払拭できぬネイサンは、独自に過去を調べてゆくうち、悲惨な事件に巻き込まれる。その場にいた気になるクラスメート、カレン(リリー・コリンズ)を連れ、逃亡するはめになったネイサンを待ち受ける衝撃の真実とは……。

自分の正体は何なのか──?

65点
心あたたまる良質な「家族」映画

数千年間続く皇族を戴く日本人にとって「国」とは不変なる存在だが、世界中の多くの人にとっては違う。

アメリカは建国してわずか数百年だし、中国は数十年、ロシアだってソ連崩壊からはいくらも経っていない。お隣の韓国などは80年代後半まで軍事政権で、今とは大きく体制が異なる国だった。日本のように異様なまでに安定した国というのは世界中にほとんど存在しない。

人は人生の中で自分が属する国が大きな体制変換を経験すると、自らのルーツに対する信念が揺らぐのかもしれない。この映画を見て、私はそう感じた。

65点
妄想か、予知夢か

「テイク・シェルター」は2011年の映画だが、脚本は2008年に書かれたもの。この映画を解釈するには、この事実がまず大切となる。

カーティス(マイケル・シャノン)は、ブルーカラーながら安定した雇用に守られ、妻(ジェシカ・チャステイン)や耳の不自由な娘と幸せに暮らしていた。ところが大災害の悪夢を見るようになって以来、庭に頑丈なシェルターを作らねばとの強迫観念にとらわれる。彼が予感する終末の日は、はたして妄想なのか、それとも……?

2008年といえばアメリカは金融危機の真っ最中で、悪夢のような不幸がそこいらじゅうで実際に起きていた年である。

65点
森田芳光監督の遺作

楽しめる趣味こそが幸せを呼び込む──いくら仕事をしても生活が上向かないこの時代にとって「僕達急行 A列車で行こう」が語るそうしたテーマは耳に心地よい。万能薬ではないにしても、生きるのが大変な現代に対する、これが一つの回答であることは確かだろう。この映画自体も、鉄道マニアが喜ぶたくさんの車両やその名前をつけた登場人物名などによって、じつに趣味的な装いを備えている。そんな森田芳光監督の遺作は、心やさしい視点に彩られたほのぼの人間ドラマである。

大手不動産開発会社の有望な若手社員(松山ケンイチ)と、零細町工場の跡取り息子(瑛太)は、同世代ならではの仕事や恋への悩み、そしてなにより同じ鉄道ファンとしての共通項から、旅先でであった後に意気投合する。次々と壁に遭遇する若き彼らはしかし、趣味と友情の力で真っ向から立ち向かっていく。

森田芳光はホラーから不倫ドラマ、ミステリーなど様々なジャンルの中で一貫して人間を描いてきた監督である。その森田監督が、映画人生の最後にこうしたハートウォーミングコメディーで、やはり同じ人間というものを描いている。その暖かいタッチは震災後で弱った私たちの心にしみいるものがある。遺作がこのようにタイムリーな佳作であったことは、彼が映画監督として、実力と強力な運に恵まれていた証拠であろう。

65点
大風呂敷が気持ち良い

「私のどこが好き?」ときかれ、前から大好きだったきれいな目が一番好きだよと答えたら、じつはプチ整形済み箇所だった──。真実は人を幸せにするとは限らない。知らない方が幸せということは世の中多々ある。

しかし、それでも知りたいのが真実である。そんな真の探求者にとって、ピラミッドほど魅力的な存在はない。特にエジプトのギザの大ピラミッドは、一応の定説はあれどその目的も建造方法も全くの謎。厳然と目の前にあるにもかかわらず、何もわかっていない。異様に整った顔を持つ、黒髪ロングの女のコの過去くらい、何もわからないのである。

「ピラミッド 5000年の嘘」は、そんな謎に魅入られたパトリス・プーヤール監督が10年間の歳月をかけ、あらゆる学説を、徹底的に検証したドキュメンタリーの決定版である。

65点
今年のオスカー候補作はどれも同じ?

今年の米アカデミー作品賞は、不思議な符合を持つ作品がいくつも存在する。具体的にいうと、有力な3作「ヒューゴの不思議な発明」「戦火の馬」そして本作「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、物語のプロットがほとんど同じである。

どの作品も、天災もしくは戦争によって運命を狂わされた「無垢なる存在」を主人公にした作品。それが馬か、人間の少年かは別として、「理不尽に降りかかった災厄によって、被害を受けるかわいそうな者の物語」である骨格部分はまったく同一。

特に、本作と「ヒューゴの不思議な発明」の共通点は極めて多い。どちらも「唐突に失った父親が遺したもの」を完成させようと必死になる少年のお話。そしてほぼ同じセリフが、クライマックスの最も感動的な場面に流れる点でも共通している。ちなみに本作の主人公の少年の名前はオスカー。最初からノミネートが決まっていたのではないかと思う程の、奇妙な偶然といえる。

65点
≪フツーが心地よい、脱オタク向けホラー≫

リメイクはいまやすっかり定番の手法だが、そう簡単にリメイクできない要素というものがある。たとえば1985年の映画「フライトナイト」は、ホラーファンの間ではカルト作として知られるが、そのカルトな空気感などはその一例である。

だから、そのリメイク版『フライトナイト/恐怖の夜』が、そうしたカルト感をきっぱりあきらめ、万人向けのあたりさわりないホラー映画として作ったのは正解である。ホラー映画にあたりさわりがないというのもおかしな話だが、その中道さがこの映画のいいところである。

ラスベガス郊外に住む高校生チャーリー(アントン・イェルチン)は学園のアイドル的存在エイミー(イモージェン・プーツ)とつき合っているのが何よりの自慢。しかし、ひょんなことから隣に越してきた男(コリン・ファレル)が、本物の吸血鬼だということに気づく。しかもその男は、エイミーの血液を虎視眈々と狙っているのだった。はたしてチャーリーは、エイミーを守り切ることができるのだろうか。

65点
≪ムーディーな少林寺映画≫

少林寺という単語は、30代くらいの人にはちょいと琴線に触れるものがある。今よりずっと香港映画が活況だったころ、見たこともないストリクトなカンフーの動きで彼らを魅了したのは、一連の少林寺ムービーであった。やっぱりガチなのは少林寺だよね、との認識が自然となされていたのも記憶に残る。

中国の山寺では、めっぽう強いやつらが修行をしている。そんな魅力的な想像をかきたてたカンフー映画の数々は、しかし本家本元の少林寺が作ったものではなかった。本当の少林寺とはどんなところなのか、そこで研鑽された武術体系とはどんなものか。それを知るためにも、やはりオフィシャルな少林寺映画が観たい。

そんな人のために『新少林寺/SHAOLIN』が登場した。史上初めて少林寺が公式に製作許可を出し、監修までした本作は、そこで修行をつむ僧侶たちの日常風景や思想信条、素朴だが誠実な、禅の精神のもとで生きる姿を堪能できる。

65点
≪あまりに日本不在すぎて意外≫

『第7鉱区』は、韓国初の自国技術のみによるCGの見せ場や、3Dという目玉があったにもかかわらず、本国ではさほどヒットすることなく終わった悲運の作品。決して悪い出来ではないのだが、普通すぎて物足りないのは否めない。この題材を扱うならば、もっと「日本」を出さねば韓国映画らしくない。それさえやっておけば、もっともっとウケたに違いないのだが。

東シナ海に位置する第7鉱区。ここで海底資源調査を続けているボーリング船「エクリプス」には、男勝りのヘジュン(ハ・ジウォン)をはじめ、士気の高いスタッフが揃っていた。そんな折、船内でクルーが謎めいた死に方をするが、これは悲劇の始まりに過ぎなかった。

『第7鉱区』はジャンルバレ厳禁な映画だと思うので、当サイトではこれ以上のあらすじは明かさない。何も知らないままに見に行って驚いてもらったほうが良いと私は判断している。ちなみに予告編製作者はそのように考えなかった模様なので、盛大にネタバレしている。これからこの映画を見たい方は要注意のこと。

65点
≪テレビドラマ+アルファ程度の仕上がりだが、それなりに楽しめる≫

映画版の前作「アンフェア the movie」(2007)は、佐藤嗣麻子監督の苦手分野だったかテロリスト周辺のリアリティ欠如が目立つ凡作だったが、興行面では27億円を超えるヒットとなった。そこで出産後、本格的に復帰してきた篠原涼子を再び主演に据えて、このたびその続編が作られた。おまけに完成後、篠原涼子の第2子の妊娠が発表されるなど、なにやら子宝に恵まれたシリーズとなった。

元警視庁捜査一課の刑事・雪平夏見(篠原涼子)は、(前作で描かれた)警察病院占拠事件後に左遷され、今では北海道の平凡な警察署に勤務している。そんな彼女の前に現れたのは元夫でジャーナリストの佐藤(香川照之)。彼は都内で連続発生している猟奇殺人の容疑者として追われていた。雪平には新しい恋人である同僚の一条(佐藤浩市)がいたが、佐藤の話に彼女は思わず狼狽するのだった。

雪平が握る、警察組織が恐れる決定的な情報と、夫が容疑者となって追われる事件がどうかかわってくるのか。すべての謎が解けるラストには仰天度100の驚きが待っているというのが売り。

65点
≪2010年の映画ながらタイムリーなテーマ≫

お金のある人からない人まで、いまハリウッドの映画人はたくさんのUFO映画を作って、それが歓声で迎えられている。英国発『モンスターズ/地球外生命体』は製作費がたったの130万円と、プリウスより安いエコロジーな低予算映画だが、このトレンドに乗っていたためアメリカでもそれなりに人気が出た。おかげでギャレス・エドワーズ監督は、ハリウッド版ゴジラの次回作を任されることが決まったほど。130万円の投資のリターンとしては、これ以上のものはないだろう。

09年、地球外生命体を回収して帰還中のNASAの探査機が、メキシコ上空で爆発した。その数年後、怪獣のような生命体の宝庫となったメキシコは封鎖され、米国との国境には高い城壁が建設されていた。カメラマンのコールダー(スクート・マクネイリー)は社長令嬢サマンサ(ホイットニー・エイブル)を現地から救出せよとの命令をうけ、彼女と接触するが、様々なトラブルから彼らは安全な移動方法を失ってしまう。

日本で低予算映画を作るとなると、パーソナルな人間ドラマとか、シュールなギャグとか、最初からチープなB級を狙ったものなど、小さい企画ばかりが目につく。予算ではなくて企画力とアイデアが貧弱なのである。

65点
≪傲慢不遜な主人公は何を象徴しているのか≫

「マイティ・ソー」の全米公開は今年の5月だが、その内包するテーマ(後述)は、そろそろアメリカが本当にやばい瀬戸際となっているこの7月に見ると、時期遅れな印象を受ける。

なお、7月第1週目の映画を今頃紹介している当サイトの遅れっぷりよりはマシだろうとのクレームは一切受け付けていない。

神の世界最強の戦士ソー(クリス・ヘムズワース)は、血の気の多い性格から問題児として知られている。敵国に殴り込みをかけるなどその過激な行動はエスカレートする一方だったが、やがてその傲慢さを戒めようとする神の王から一切の力を奪われ、地上へ追放されてしまう。

65点
≪愛しい映画≫

3D全盛といわれて久しいハリウッドだが、イベントムービーとしては珍しいことに『SUPER 8/スーパーエイト』は2D作品である。その理由は、30代以上のおじさまたちがこの映画を見ればすぐにわかる。この作品は、絶対に最新のデジタル3Dなどというものであってはならない。

金も技術もあるというのに、あえて昔ながらの2Dである必然性のある最新作を企画し、作り出すところにアメリカ映画界の余裕と論理性を感じざるを得ない。

スリーマイル島原子力発電所事故がおきた1979年、オハイオ州に住む映画や模型好きの少年ジョー(ジョエル・コートニー)は、母親を不幸な事故で亡くしたばかり。だが、親友チャールズ(ライリー・グリフィス)や気になる少女アリス(エル・ファニング)らとの自主映画づくりが心の支えとなり、徐々に立ち直りつつあった。そんなある晩、駅舎で深夜のゲリラ撮影をしていると、彼らの目の前で貨物列車が大事故を起こす。そしてその事故以来、町には軍が駐留し、怪現象が頻発し始める。

65点
≪福島原発事故後の日本人に見てほしい作品≫

男なら、東北出身の女の子というと、とたんに色めき立つのが常識。秋田小町なんて言葉があるように、実際はどうあれ、色白で気立てがよくお嫁さん候補には最適との評価が一般的なところだろう。

だが、3.11を境にその「常識」は消えてしまうかもしれない。

日本人は気づいているのだろうか。福島原発の事故を見て、なぜこの国から外国人が一目散に逃げ出したのか、その本当の理由を。

65点
≪激安6000円の製作費で作られたホラー≫

金がないからゾンビ映画というのは若いクリエイターにとってド定番で、世界中の貧乏監督が似たような安ホラーを量産している。一説によるとそうしたゾンビ物は年間数百本も作られているという。そんなにしょっちゅう蘇らされたら、死体としても落ち着いて死んでいられない。

『コリン LOVE OF THE DEAD』もそんなデフレホラーの一本だが、マーク・プライス監督が他の新人監督と違ったのは、誰もがやりつくされたと思っていたこのジャンルに、ささやかな新風を吹き込んだ点。お金がない分、アイデアと情熱でカバーする、そうしたごく当たり前の姿勢が好感を呼んでいる。各国の映画賞でも大人気だったと聞くし、すでに監督にはハリウッドからオファーが殺到しているとのことだ。

舞台は英国のロンドン。街はゾンビで溢れ、すでに社会秩序は崩壊している。主人公は誰かに噛まれゾンビになったばかりの青年コリン(アラステア・カートン)。朦朧とする意識の中、彼はかすかに残った人間の頃の記憶に誘われるように、どこかへ向かって歩き続ける。

65点
≪計量シーンがすごすぎる≫

山下智久主演で『あしたのジョー』を映画化すると最初に聞いた時、容易に想像できたのは、原作ファンのおじさまたちはあくまでサブ、あくまでキャストのファンを主要な見込み客と想定して話を進める製作会議の様子であった。その場合危惧されるのは、ボクシングシーンの下手さであったり、過剰なロマンス要素の搭載など。ジョーと白木葉子がチュッチュする話など、想像するだけでぞっとする。

映画を見るのは女性が中心という、各種アンケート結果に映画業界は必要以上に毒されているような気がしてならない。そもそも、山谷のドヤ街を舞台にした汗臭いボクシング作品に、女性客を呼び込もうという発想が無茶である。

それでも曽利文彦監督以下、本作のスタッフとキャストはうまくバランスを取った。実写版「あしたのジョー」は、きわめてスタイリッシュで女性のライトユーザーも呼び込めるつくりの中に、うるさ型も納得する俳優たちの本気の役作りが見られるという、本格エンタテイメントとして仕上がった。

65点
≪世界と戦う日本アクション≫

映画会社が次々と倒産する中、日本映画の先行きは不透明だと業界人の多くが認識している。映画は国境を越えたエンタテイメントであるからして、邦画もこれからは世界と戦っていかなくてはならない。そこは注射や中盆など存在しない、厳しいガチンコ市場である。

そこでふと考える。日本が世界に誇れるものは何だろうか。

「KG カラテガール」を木村好克監督とともに作り上げた西冬彦(脚本 アクション監督)は、「空手」と「女子高生」という二枚看板をこの最新作にも掲げた。「ハイキック・ガール!」(09年)で発掘しためっぽう強い美少女・武田梨奈を主演に、彼らは再び映画界の大乃国になるべく、ガチンコ格闘アクションを繰り広げる。

65点
≪『ザ・コーヴ』に敗れたガチンコ米批判映画≫

『ザ・コーヴ』の日本公開が決まった時、自称愛国者の特攻野郎な人たちが、よりにもよって配給会社社長の自宅兼事務所に怒鳴り込む事件が起きた。頭に血が上りやすいにも程があるものだと、多くの人をドン引きさせたわけだが、もし彼らが、同じ映画会社が『フード・インク』の配給権を買った事実を知ったら何というだろう。それでも彼らを反日呼ばわりするのだろうか。

なにしろこの映画は、アカデミー賞で『ザ・コーヴ』と長編ドキュメンタリー映画賞を争った、いわくつきの食問題ドキュメンタリー。ただし日本の太地町を狙い撃ちした『ザ・コーヴ』と違い、『フード・インク』はきわめて強烈なアメリカ批判である。製作者に、「ファストフードが世界を食い尽くす」で世界最大の某ファストフードチェーンを名指しで批判したエリック・シュローサーの名がある時点で、そのガチンコぶりが想像できる。

じっさい、いい加減な主張と事実誤認、ねつ造の連続により、教養ある人にとってはコメディーでしかないイルカ映画にくらべ、『フード・インク』の主張は本質をついており、米国の食糧戦略とそのプロパガンダ勢力にとってじつに都合が悪いものだ。

65点
≪かっこいい、ただそれだけでいい≫

世界的エンタテイメント企業ディズニーは、地道に歴史を積み上げた結果、2世代にわたるコンテンツをたやすく製作できるようになった。『トロン:レガシー』などその最たるもので、これはなんと1982年に公開された「トロン」の28年ぶりの続編である。しかも今度は前作の主人公の息子が主役。

こういう企画をやられては、デジタル版不思議の国のアリスと称された史上初のCGアクションムービーに夢中になったお父さんたちは、幼い息子を連れて再度映画館に出かけないわけにはいかない。

かつて電子の世界に入り込み、プログラムたちに混じり大冒険をしたケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)は、いまではIT業界の大企業エンコムのCEOとして、息子サムと幸せな日々を送っている。ところがある日、ケヴィンは何の予告も無く失踪。やがて成長したサム(ギャレット・ヘドランド)は、自分を捨てた父のことなど胸の奥にしまいこみ、やんちゃな生活を送っていた。ところが信じがたいことに失踪から20年後、ポケベルを介して父親からのメッセージが届く。

65点
≪最初からクライマックス全力疾走≫

私はこのハリポタ最新作をちょっと前に試写会で見たが、気付いたらすでに公開していた。どうもせっかくのシリーズ完結編(の前編)だというのに、あまり世間が騒いでいる様子がない。それでも年間ランキング上位に顔を出す程度の興収はたたき出すのだろうが、どことなく影の薄い超大作である。

頼みの綱であるダンブルドア校長が死に、ホグワーツ魔法学校も安全地帯ではなくなった。それどころかヴォルデモートとその息のかかった者たちにより、魔法界すべてが陥落寸前であった。17歳になったハリー(ダニエル・ラドクリフ)は、親友ロン(ルパート・グリント)、ハーマイオニー(エマ・ワトソン)とともにヴォルデモート唯一の弱点である分霊箱探しの旅に出る。だが3人の友情の絆にも、最大のピンチが迫っていた。

大魔王と戦う割に緊張感がないとか、スロースターターすぎるなどと揶揄される映画版だが、前作のラストで大きく話が動いたおかげで、この最終話はのっけからクライマックス状態。ようやく最後の戦いを実感できるムードとなった。前作までのノーテンキ学園ラブコメは姿を消し、悲壮なる戦いに挑む3人の活躍に集中できる。

65点
≪大真面目だけど大爆笑、中国産ディザスタームービー≫

「THE LAST MESSAGE 海猿」に続き、「TSUNAMI-ツナミ-」とこの『超強台風』が公開されるが、日中韓3大災害ムービーの中で、ナンバーワンなのがこの『超強台風』である。何が一位かというと、言うまでもなく「笑える度」である。

観測史上最大級の台風が、中国沿岸部のある都市に向かっていた。どうせ進路がずれるだろうと、経済的損害が予想される住民避難をしぶる連中に対し、市長(ウー・ガン)の方針は違っていた。かつての恩師で気象専門家(ソン・シャオイン)の意見に力を得て、彼は堂々と経済より住民の命を最優先する指示を出すのだった。

この映画は、スーパー市長が八面六臂の活躍をする地方自治体ムービーである。その活躍たるや尋常ではなく、どれほどの経済的な損害が出ようともたった一人の人民の命さえ見捨てない。誰もがあきらめるような状況でも、救助隊よりも早く飛び込む。自分の体を張って助けに行き、また助けてしまうスーパーマンぶりだ。たとえ相手が犯罪者であろうとも差別せず、トップみずから命がけで助けに行くのである。

65点
≪迫力はあるが、どこかチグハグ≫

『バイオハザード IV アフターライフ』は、内容からプロモーションまで、チグハグ感の漂うほほえましい話題作である。

たとえば私が見た完成披露試写会は、世界最速公開と銘打たれたもの。警備も厳戒態勢で、携帯電話などは当然全員没収である。しかし本作は、もともと海賊版に強い3D作品(3Dが売りの映画をPCでダウンロードして見てもあまり意味がないため)。マスコミと関係者しか来ない試写会で、多大なコストをかけてここまでしなくても……と思えなくもない。たとえるなら、足首までの真っ黒なレギンスをはいているのに、必死にお尻を抑えて階段を上がるミニスカ熟女のようなものか。

おまけに場内アナウンスでは、本作の批評は9日まではNG、ぜったい発表してはだめよ(はーと)、とのお達しが。

65点
≪小向美奈子の文句なしストリップ映画≫

先日『キャタピラー』で久々に主演・寺島しのぶのハダカをみた。彼女は出世作の「ヴァイブレータ」(2003)から、節目ごとに脱ぎっぷりのよさを見せ付けてのし上がってきた女優だが、37歳になった今でもきれいな身体をしていた。やはり細身の37歳は、オンナとして一番の食べごろといえる。むろん、この件に関して私の好み以外の根拠はない。

とはいえ、いかなご馳走でも毎日食すれば感動は薄れるもの。

細身の黒髪30代もいいが、巨乳の茶髪20代もたまには食べたい。そんな読者諸氏には「花と蛇3」をおすすめする。団鬼六の原作を基にしたシリーズの3作目となる本作では、かつて15歳のFカップとして一世を風靡したグラビアアイドル小向美奈子が、成長した25歳のスライム乳のすべてを見せてくれる。

65点
≪いい原石、もっとよく磨いていたら≫

深夜のファミリーレストランにいくと、ドリンクバーで遊んでいる暇な若者をたまに見かける。普通の飲み物に飽きたのだろう、コーラとメロンソーダを混ぜてみたり、レモンを浮かべてみたりと斬新なオリジナルカクテル作りに夢中である。

私のようなプロからみれば、これはドリンクバー初心者ならではのほほえましい風景。すぐに彼はそのカクテルにも飽き、やがてアイスコーヒーをまぜたり、コーヒークリームを演出に使って受けをとろうとするはずだ。沈殿したヘドロを再現して相模湖スペシャルなどと称する日も遠くは無い。誰もが一度は通る道である。

ここで何がわかるかというと、意外な組み合わせが案外いけるということ。そしてそれを発見したときは、なんだかちょっとだけ嬉しくなるということ。もちろんその発見は苦労のわりに何の役にも立たないが、そんな小さな幸せを見つけるのも人生を楽しむコツといえる。

65点
≪傑作になりかけたが最後で台無し≫

基本的に、映画はその時代の人々の興味のあることをネタにするものだ。私なら、1970年代のボディビルダー、アーノルド・シュワルツェネッガーやフランコ・コロンブ、マイク・メンツァーらの確執を描いた映画があったら喜んで見に行くが、そんなものを2010年の日本で公開しようとしても、銀座シネパトスですら見向きもしないだろう。

娯楽映画は時代を映す鏡といわれるほどで、その時々の人々の嗜好を表すいい指標である。

そう考えると、リメイク版『ベスト・キッド』が中国人師匠と米国人少年の師弟愛、というか擬似親子愛を描いたことはたいへん興味深い。なんといっても84年のオリジナル版は、いうまでもないが日本人師匠とアメリカ人少年の師弟関係を感動的に描いたドラマだったのだから。

65点
≪寺島しのぶの演技と明快な主張が見どころ≫

この作品を語るとき、若松孝二監督は「反戦への思い」を常に強調していた。プロットは、戦場で負傷した夫が手も足も切断され、口もきけない「芋虫=キャタピラー」状態で戻ってくるというショッキングなもの。

そんなわけで私は、その後の悲惨な夫婦生活を描くことで、戦争の無益さ残酷さを訴えるような作品なのかなとおぼろげに想像していた。しかし映画『キャタピラー』のテーマは、まったくそんな次元のものではなかった。

時は戦時中。シゲ子(寺島しのぶ)の夫、久蔵(大西信満)は、幸いにして戦地から生還する。しかしその姿は、胴体と首以外は切断され、残った顔面の半分ほども焼け爛れており、声帯も耳も損傷しているという、恐るべきものだった。天皇陛下からは勲章をいただき、村人からは軍神とたたえられ新聞にも載ったが、シゲ子はどうしてもこの変わり果てた夫に慣れることができない。戦況とともに食糧事情も悪化の一途をたどる中、いったいこれから、どうやって暮らしていけばいいというのだろう。

65点
≪パロディ織り交ぜ笑わせるディズニー実写コメディ≫

ハリウッドのエンターテイメント映画は、長年の積み重ねにより必勝の方程式ともいえる雛形を多数手に入れた。ワンパターンといわれようが、この雛形に毎年面白い映画を生み出す力があるのは確か。だが、そのフォーマットも、誰が装飾をほどこすかで面白さは大きく変わってくる。

その意味でハリウッド最強のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーとニコラス・ケイジ(本作の企画は彼の持ち込みだとか)の二人は、鉄板といってもいいコンビ。雛形いじくりの能力にかけては、とくにブラッカイマー(およびディズニー)はトップクラスの実績・実力の持ち主といえるだろう。

ディズニーアニメの古典「ファンタジア」をモチーフに、現代を舞台にした魔法アクションに仕上げた本作は、彼らにとって得意のパターンといえそうだ。

65点
≪たいした超大作、休養をとって本気で挑むべき≫

どんな分野であろうと、すべてを知っている人間などいない。つまりは、誰もがあらゆる物事を、不十分、不完全にしか知らないということだ。だからすべてを把握し、忠実だと思っていた奥さんが隣の大学生と浮気していたとしても、あなたはショックを受ける必要などない。

そんな何の気休めにもならない事を書いてもしょうがないわけだが、そもそも「知らない方が幸せなのでは?」と感じる局面は、だれでも一度くらい経験したことがあるはずだ。

たとえば、日本経済の問題点を調べていけば借金の総額に誰もが唖然とする。だがより調べればそれが財務省による数字のトリックで、まだまだ挽回可能なものであることも同時にわかるだろう。ただし、より興味を持って追求していけば、そんな解決策を採用する政治はこの国にもう存在せず、もはや大増税の暗い未来しか事実上存在しないことを知ることになる。

65点
≪至福のラストシーン≫

近くに豊かな国があれば放っておいても……というより、たとえ禁止しても隣国の貧しい人々が殺到する。あらゆる豊かな国は、そうした不法移民をどう食い止めるかに日々悩まされている。「豊かな」宗主国にむりやり強制連行された、なんて主張する人もたまにはいるが、これは世界史の常識である。

問題は、その「豊かな国」も最近は絶不調だったりする点で、『闇の列車、光の旅』の主人公が目指すアメリカの経済も最近は調子が悪い。それでもかの国の南方面には、明日をも知れぬ暮らしの人々が多数暮らしており、不法移民の流入は絶えない。

この映画は、そうした移民たちの厳しい移動時の様子を背景に、ある少年少女の壮絶な逃亡劇を描いたサスペンスである。

65点
≪コメディ映画としていける≫

『アイアンマン2』は最新のVFXをたっぷり使った魅力的なアクション大作だが、コメディ映画としても一流である。もっとも、それを作り手が意図した形跡はない。

アイアンマンの正体を自ら世界に明かしたトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)。開き直った彼は世界の紛争地域で大活躍するが、その圧倒的な戦闘力を当の米軍はもっとも警戒していた。やがてアイアンマンスーツのテクノロジーを政府に提出せよと言われてしまうトニーだが、もちろんまるでその気はない。だがそんな傲慢な彼を、アイアンマンに勝るとも劣らぬ強力なスーツを制作しながら恨みの目で睨む男(ミッキー・ローク)がいた。

タリバンをバカにしまくった前作も笑えたが、このパート2も面白い。

65点
≪余裕ある大人向けコメディ≫

セックス・アンド・ザ・シティに夢中になる女子(参考年齢平均38歳)を見ていると、たしかに少々イタい。だが、セックス・アンド・ザ・シティの女性観を必死に叩く、余裕のない人たちの姿はもっとみっともない。なにごとも、ゆったりした心構えで楽しみたい。そんな大人のたしなみを理解したカップルなどにこの作品は、なかなか楽しい時間を与えてくれる。

長年の紆余曲折を経て結ばれたミスター・ビッグ(クリス・ノース)とキャリー・ブラッドショー(サラ・ジェシカ・パーカー)。しかし、毎夜のように着飾って外出したいキャリーに対し、ビッグは自宅でくつろぎたい。一方子育てや仕事に奮闘する親友のミランダ(シンシア・ニクソン)やシャーロット(クリスティン・デイヴィス)も、それぞれ人生にストレスを感じていた。そんな彼女らにサマンサ(キム・キャトラル)から、豪華アブダビ旅行に無料招待されたから一緒に行こうとの誘いが入る。

この話題作に私はどうも嫌われたようで、試写会にいけば超満員。公開初日に同行してくれそうな知り合いの熟女ガールズにもことごとく振られ、ようやく都合をつけて後日見に行ってみたら上映40分前にすでにチケットは売り切れ。仕方が無いので次の回まで真昼間からパブでエールを飲んで時間をつぶし、ようやく見られたという始末である。

65点
≪疲れた女性たちの背中を押してくれる映画≫

この映画をエレン・ペイジの主演最新作とみるか、ドリュー・バリモアの初監督作品とみるか、まず分かれるところだろう。87年生まれのエレン・ペイジは若手女優の中では群を抜く異質さを感じさせる逸材で、その出演作(「JUNO/ジュノ」(07)、「ハード キャンディ」(05))を見た者なら、二度と忘れられないインパクトを受けたはずである。

かくいう私も、本作を彼女の主演最新作として期待してみた口だ。だがそれは間違いで、『ローラーガールズ・ダイアリー』はどこからみてもドリュー・バリモア色に染まった、彼女の個性がたっぷりと染み込んだ作品であった。

テキサスの田舎町に住む女子高生ブリス(エレン・ペイジ)は、娘を美人コンテストで勝たせる事が唯一の成り上がる道と信じる母親(マーシャ・ゲイ・ハーデン)にずっと振り回されてきた。あるとき彼女は、街で見たローラーゲームで激しくぶつかりあう女たちの戦いに衝撃を受ける。自分に無い選手たちの奔放さにすっかり魅了されたブリスは、家族に内緒で入団テストを受けに行ってしまう。

65点
ホームレスだらけのサッカー大会

私が生まれ育った東京の下町には山谷という、それこそホームレス世界大会をやれば準決勝くらいまでいきそうな気合の入った町がある。世界第2位とか第3位とか言われるこの経済大国、それも大東京の端っこに、明らかに物価と価値観が一桁ずれた町が存在するわけだ。ある意味その特殊性は、世界的に見ても珍しい部類に入るのではないか。

とはいえ『ホームレス・ワールドカップ』は、別にそんな奇特な大会の話ではない。このドキュメンタリー映画は、世界中からホームレスだけを集めてサッカーワールドカップをやっちまおうという、歴史ある大会の模様を描いている。

2001年から続くこのサッカー大会は、本家WC同様各国代表が集い、戦い抜くシステム。ホームレスに悩む町のひとつ、ダブリン出身の有名俳優コリン・ファレルが、そんなことを説明して映画が始まる。

65点
仲里依紗を味わいつくすギャグ映画

哀川翔主演作100本目という事で、Vシネで終わらせず公開してみたところ、そこそこ受けた前作「ゼブラーマン」。そこでこの2作目ではしっかりと予算をつけて、最初から劇場用映画として作った。結果、はるかにまともな作品となり、この2作目から見ても……というよりこれだけ見ておけば十分という出来栄えである。

西暦2025年、新都知事(ガダルカナル・タカ)とその娘ユイ(仲里依紗)が率いるゼブラシティでは、朝夕5分間だけ権力者が自由に人々を射殺していい「ゼブラタイム」の導入により、目覚しい治安維持効果を発揮していた。その路上で目覚めた市川(哀川翔)は、ゼブラーマンだった過去の記憶をすっかり失ったまま、ゼブラシティの陰謀に巻き込まれていく。

のっけからガラガラポンで、前作とは無関係に好きな物を作りますよ宣言である。それは大正解で、宮藤官九郎脚本と三池崇史監督の両個性が不協和音を起こしていた前作とは打って変わり、見事なコラボレーションを見せている。

65点
無法地帯、南アにエイリアンがやってきた

CS局での番組収録の合間、世界を駆け巡る女性ジャーナリスト(独身)に私は次のような質問をしてみた。「ここだけは行くのを躊躇するヤバい国ってどこ?」

私はてっきりソマリアとかアフガンとか言うのだろうと予想していたが、彼女は「ヨハネスブルグ」と即答した。あの九龍城砦にガイドなし単身で突入した事もある、命知らずの特攻野郎のごとき彼女でさえ、南アフリカ共和国の悪名高い大都市を恐れていたのだ。

南アの治安の悪さについては、どう見てもワルノリネタとしか思えぬコピペ情報がインターネット上に溢れているが、色々聞いてみたところ、あながちそれらも嘘ばかりではなさそうだ。映画『第9地区』は、そんな地上の無法地帯、南アを舞台にしたSF映画である。

65点
日本のひきこもり文化がついに世界を制した

グラフィックノベルを原作とする未来SF『サロゲート』の設定はユニークだ。14年前に開発された技術が発展し、今では人類の98パーセントが「サロゲート」と呼ばれる機械の分身を、自宅から遠隔操作することで生活している。

つまり、街にあふれる「人間」風の物体はすべて人造の機械。「本体」の姿はお互い誰も知らないというわけだ。まさに70億総ひきこもり。全員アバター状態である。

サロゲートにより、人々は事故や事件と無縁の安全な人生を手に入れた。ところがある日、2体のサロゲートが破壊される事件が起きる。捜査にあたったトム(ブルース・ウィリス)は、驚くべきことにその本体までもが死亡しているのを発見する。全サロゲートには安全装置があり、たとえ破壊されても本人に被害が及ぶはずは無いのだが……。トムは社会の根幹を揺るがしかねないこの大事件の背後を、早速探り始める。

65点
ギャグの切れ味は最高、映像面にも映画的な仕掛けあり

2009年の元旦は『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』だったが、2010年の初笑いは同じFROGMAN監督の『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3 〜http://鷹の爪.jp は永遠に〜』がおすすめだ。やはりこの監督のノーテンキな作風は、お正月によく似合う。あと2週間公開を早めればなおよかったのだが。

米合衆国大統領オババが、突如核兵器の放棄を宣言した。軍需産業の大手「サドルストーン・コーポレーション」は、その決定に激しくショックを受ける。だが彼らには、鷹の爪団やレオナルド博士を巻き込んだ一発大逆転の秘策があった。

一見稚拙にみえるFLASHアニメだが、キレのいい政治ネタやパロディが息つく間もなく連発される。おまけに今回は、日本映画界のトップを走るあの特殊効果制作会社(本物)が完全協力。重要な見せ場を担当するというオマケつき。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14
  15. 15
  16. 16
  17. 17
  18. 18
  19. 19
  20. 20
  21. 21
  22. 22
  23. 23
  24. 24
  25. 25
  26. 26
  27. 27
  28. 28
  29. 29
  30. 30
  31. 31
  32. 32
  33. 33
  34. 34
  35. 35
  36. 36
  37. 37
  38. 38
  39. 39
  40. 40
  41. 41
  42. 42
  43. 43