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65点
現実を語る寓話

カンヌのコンペに6作連続で出品を果たしている、名実ともに世界最高の監督の一人ダルデンヌ兄弟。ドラマから不自然さを廃したその演出力は、なるほどこの非現実的な寓話をリアルに見せるに十分だが、今回はいきすぎて完成度を損ねている部分も見受けられる。

精神的な病で休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は復帰早々、社長からクビを言い渡される。その撤回にはこの土日のうちに、従業員の半数がボーナスを返上すること。厳しい経営状況の中、そうしないと人件費が足りないというのだ。サンドラは夫の手を借り同僚の自宅を回って説得を開始するが……。

まず観客が感じるのは、こんな無茶なパワハラ的前提条件がありうるのだろうか、との疑問だろう。

65点
素の韓国が味わえる

韓国という国は対外的な宣伝活動に国家をあげて取り組んでいる。政府が映画業界に金をつぎ込んでいるのもその一環であるとされている。だから、素朴な韓流ファンがそうした映画作品やドラマを見てイメージする韓国と、実際のギャップがきわめて大きい。とくに、独特の差別問題などは、深く関わってみないと理解しにくい問題だ。

その点「私の少女」は、もともと外国向けにマーケティングされた商業作品ではないために、私たちの知らない、素の韓国が味わえる貴重な一品といえる。

ソウルから左遷されてきた派出所長ヨンナム(ぺ・ドゥナ)は、血のつながっていない義父と暮らす少女ドヒ(キム・セロン)が虐待されているのではと気づく。排他的な村社会独特のルールに苦労しつつ、なんとか彼女を救おうとするヨンナムだが、彼女は意外な方向から迫害を受けることになるのだった。

65点
難民から学ぶ逆転の構造

世の中には難民を第三国に移住させる制度というのがあって、日本でもここ数年で86人のミャンマー難民が移り住んでいるという。

この程度の規模では国民の誰もがそんな制度のことを知らないのは当然だが、かつて米国は3600人ものスーダン難民を移住させたことがある。その史実をヒントに作られたのが「グッド・ライ〜いちばん優しい嘘〜」だ。

マメール(アーノルド・オーチェン)ら3人は、内戦からの壮絶な脱出行と難民収容所での過酷な暮らしを経てアメリカ、カンザスシティにやってきた。彼らの職探しは、職業紹介所の職員キャリー(リース・ウィザースプーン)が担当となるが、彼らは電話の使い方すら知らない。価値観から生活様式まで、あまりにもギャップがある彼らは、はたして米国での暮らしになじめるのだろうか。

65点
時間移動ミステリ

時を超える式のSFというと「バタフライ・エフェクト」(04年)、「オーロラの彼方へ」(00年)など傑作が多い。打率の高さはあらゆるジャンルの中でも相当高い方だろう。まて原作が「宇宙の戦士」「夏への扉」のロバート・A・ハインラインとくれば、いやがうえにも期待が高まる。

70年のニューヨーク。青年ジョン(セーラ・スヌーク)はバーテンダー(イーサン・ホーク)に自らの数奇な半生を語る。するとバーテンは彼の運命を変えた人間への復讐をしないかなどと提案する。バーテンは、未来からある目的でやって来たエージェントだったのだ。

結論からいうと「プリデスティネーション」は、頑張ったのはよくわかるがまだまだ、といったところ。

65点
陸上短距離エンタテイメント、にとどまらない

「ミルカ」は珍しい陸上短距離映画であると同時にインド映画界で高く評価された伝記映画──にして、きわめてタイムリーなテーマも内包する興味深い作品である。

1960年、ローマオリンピック。インド国民の期待を背負ったスプリンター、ミルカ(ファルハーン・アクタル)は、しかしゴール直前に奇妙な狼狽を見せ敗北する。はたしてミルカは何を見たのか、その謎は彼の壮絶な過去にあった……。

宣伝文句にある、ファルハーン・アクタルの体脂肪率5パーセントの肉体はどうやらサバ読みなしのようで、ほれぼれするキレっぷりである。高地トレーニングの場面なども、実際に数千メートルの高地に行って撮影したという。そのうち死人が出るぞインド映画界。

65点
ドラフトだけで映画を作ってしまう

もし忠臣蔵の映画で討ち入りシーンがなかったらお客は怒るだろう。小向美奈子のDVDを買って水着だけで終わったら、10年前ならともかく金返せといわれてしまう。

ものごと、絶対必要な要素というものがあるわけだが「ドラフト・デイ」はすごい。アメフト映画だというのに、なんとアメフトをする場面がない。厳密には少しだけあるが、見せ場ではない。

クリーブランド・ブラウンズのゼネラルマネージャー、サニー(ケヴィン・コスナー)はチームの不振を今回のドラフトで取り戻すことができなければ、クビというところまで追いつめられていた。その焦りからか、序盤に極端に不利な事前取引をしてしまい、彼はさらに苦境に追い込まれる。

65点
親日野球映画

「KANO 〜1931海の向こうの甲子園〜」はまごうかたなき親日映画、それも超がつくような日本マンセー作品である。そんな作品が台湾本国で社会現象的大ヒットを記録したというニュースは、もっと日本で広まっていいことだ。

1929年、日本統治下の台湾。鬼コーチで知られる近藤(永瀬正敏)は、日本人、台湾育ちの漢人、台湾原住民の混成チームである嘉義農林野球部に就任する。厳しいが心のこもった指導に部員たちは食らいつき、弱小だった部はやがて本土の甲子園大会を目指すまでに成長する。

台湾の大作とはいえ予算規模は普通の日本映画と大差ないから、たとえばCGなどVFXの出来などはそこそこだ。普通にみられるものの、時代映画としてさしたる映像的見せ場があるわけではない。

65点
日本にもつながる移民問題ドラマ

「サンバ」は、明るくコメディ色を前に出した予告編と、ヒット作「最強のふたり」のネームバリューに頼った宣伝から、軽妙な感動コメディ的なイメージが強いものの、そうしたものを期待していくと肩透かしを食らう可能性が高い。

フランスに来て10年になるアフリカ移民のサンバ(オマール・シー)は、ビザ更新のちょっとしたミスで国外退去命令という理不尽な命令を下される。そんな彼には移民を助けるボランティアのアリス(シャルロット・ゲンズブール)が頼りだったが、燃え尽き症候群で心のバランスを欠いた彼女もまた、サンバのタフで明るい心に励まされてゆくのだった。

「サンバ」はコミカルな場面もあるが、基本的にはきわめてシリアスな移民問題を扱ったドラマである。オマール・シー演じる主人公のサンバは、あれほど前向きで誠実な「よきひと」なのに、ほんの不運で転落人生を歩むことになる。その理不尽さと、それを修正しない、あるいはしようとしないフランス社会の事情というものを、きわめてディテール豊かに描いた佳作である。

65点
アンチエイジングなヒーロー

この映画を見てから主演のインドの大スター、アーミル・カーンが現49歳だと聞いて驚かない者はいまい。まさにインド映画界の誇る生きるアンチエイジング、アクション映画界の水谷雅子である。

父親のサーカスで生まれ育ったサーヒル(アーミル・カーン)だが、その愛する父は冷酷な銀行から融資を断られたことが原因で命を落とした。やがて成長し、自らサーカスのスターアーティストとなったサーヒルは、しかし父の敵であるシカゴの銀行支店を次々と派手に襲う裏の顔を持っているのだった。

バイクアクションを売りにしたシリーズの第3弾だが日本初登場ということで、シリーズのキャラクターやお約束などは一部伝わりにくいところがある。しかし、細かいことは気にするな精神により、上映時間も大きく短縮(それでも2時間27分ある)して、派手なアクションでガンガン押すパワフルな作品となっている。

65点
イスラエルの一面を浮き彫りに

「オオカミは嘘をつく」はイスラエル映画だが、まさにあの国らしさを出している点で、高く評価できる一本である。

連続少女殺害事件を捜査する刑事のミッキ(リオル・アシュケナージ)は、教師のドロール(ロテム・ケイナン)を犯人と確信するがどうしても尻尾をつかめない。だが、被害少女の父親ギディ(ツァヒ・グラッド)はそんな彼に対し、ドロールを拷問してでも吐かせようと考え実行に移そうとしているのだった。

イスラエルという国はいうまでもないが、建国以来ひっきりなしに戦争をしているようなもので、ある意味アメリカ以上に暴力が満ちあふれた国といえる。これはイスラエル人のアハロン・ケシャレス監督もいっていることだが、この映画にはそうしたイスラエル独特の空気、ようするに「暴力が日常的に存在する」空気感を疑似体験できるように作られている。

65点
ファンタジーの中に見え隠れする異常性

「アメリ」(01年)の監督ジャン=ピエール・ジュネは、たとえ大作でも一風変わった映画を作ることで知られるが、「天才スピヴェット」も独特の雰囲気を持つ映画作品である。初めて監督が3Dを採用した作品でもあり、その遊び心あふれる起用法を映像発明と称する人もいるほど。

10歳の天才少年スピヴェット(カイル・キャトレット)は、スミソニアン学術協会から最優秀発明の受賞の連絡が入る。頑固一徹保守オヤジの父親に言って、すんなり受け取りに行けるとは思えない。そこで彼は親に無断で、モンタナからワシントンへ旅立つことに。

少年のちょっとした冒険の旅を3Dで演出した、かなり個性的な感動ドラマ。

65点
邦題がすごい

ディズニー配給作品ということで、なんだか空からパラソル持ったおばさんがおりてきそうな題名になっているが、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」はそうしたファンタジー映画でも、女の子向けお気楽極楽映画でもないl。

インドからやってきた料理店一家の息子ハッサン(マニシュ・ダヤル)は、天才的な舌の感覚と料理の腕を持っている。彼らは家長の父親(オム・プリ)の独断で南仏の物件を居ぬきで借り上げるが、その真向かいには頑固者マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営するミシェラン一つ星レストランが建っていた。

いや、確かに女性たちが喜ぶグルメ映画にして、気楽な文化ギャップコメディではある。ヘレン・ミレンとオム・プリの掛け合い漫才のようなやりとりは笑えるし、裏山でとれた野生のキノコで作るソテーなどは、みるからにおいしそうで腹が鳴る。

65点
女の子が受ける現実という名の洗礼

女の子が「若さ」の持つブースター効果の大きさと、それを失いつつあることに気付く瞬間は、はたからみるとドラマの題材としては魅力がある。それを悲劇と描くか喜劇とするかは料理人しだいだが。

ニューヨークのブルックリンでダンサーを目指す27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)。どこかタイミングのずれた彼をあっさりフり、今は親友のソフィーとルームシェアで楽しく暮らしているが、ソフィーがアパートの部屋を更新せず同居を解消すると言い出し彼女は狼狽する。仕事に住居、恋愛……望むものは手に入るどころか、あちらか拒絶される。27歳ってもう若くはないのかしらと、彼女は初めて焦り始める。

ノア・バームバック監督は「イカとクジラ」(2005)で繊細な人間ドラマを描く力があることを証明したし、グレタ・ガーウィグ自身が脚本にも参加しているので、同年代の女性の共感を集めるに十分な、誰もに身近なドラマに仕上がっている。

65点
豪華キャスト大会

前作の大ヒットをうけての続編ということでさすがの好景気。すごい豪華キャストである。しかし、実にもったいないことであるがそれでも本作が「世界を驚かす」ことはない。

人斬り抜刀斎こと緋村剣心(佐藤健)は、いまや殺さずの誓いを立てて静かに暮らしている。だが、かつての自分の立場を継いだ凶暴な男、志々雄真実(藤原竜也)が京都で復活、政府からその阻止を依頼される。

主演をはれる役者が何人もそろっている中、頭一つ抜け出ているのが志々雄役、藤原竜也の存在感。あれだけの役者たちが、あれだけのバトルを見せているのに、一番印象的なのが藤原による一方的な口げんか=あおりのテクニックというのが笑える。スーパーヒーロー佐藤健も、彼の前ではまるで子供。どう考えても勝てる気がしない。藤原竜也は大した役者である。

65点
連続テレビアニメ枠でやるべきだったか

若者の総底辺化により女性の晩婚化、行き遅れ化が顕在化してきている。だからこそ「でも、いつだって頑張ってるアタシ」──を肯定する話が大受けすることは、「アナと雪の女王」の超絶ヒットをみれば誰にでもわかる。

しかし、そのヒットをみる前に似たテーマの原作「思い出のマーニー」をアニメ化しようと考えたスタジオジブリ(鈴木敏夫プロデューサー)の目はさすがといわざるを得ない。

中学1年生の杏奈(声:高月彩良)は喘息の療養のため、この夏を親類の住む北海道の海辺の家で過ごすことになった。彼女はやがて入江で無人だがどこか懐かしい洋館を発見する。その日から、夢にまで登場するその屋敷だが、ある晩杏奈がその場に出かけてみると、夢で見た金髪の少女マーニー(声:有村架純)が実際に現れるのだった。

65点
時系列順でわかりやすい

史上まれにみる大量遭難事故が起きたり、そのあおりをうけ芸能人の登山企画がぽしゃるなど、何かと話題のエベレスト登頂。「ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂」は、冒険家なら誰もがあこがれるそんな世界最高峰に、初めて登頂成功した男たちの物語である。

53年、ジョン・ハント大佐(ジョン・ライト)をリーダーとするイギリス遠征隊は、エベレストに挑むことになった。ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリー(チャド・モフィット)と、シェルパのテンジン・ノルゲイ(ソナム・シェルパ)は、その能力の高さから隊に加わったメンバーだが、精鋭揃いのこの隊とて、そう簡単に登れる山ではないのだった。

ドキュメンタリーながら再現ドラマを中心とした構成。3Dという外連味はあれど、過剰な美談や演出があるわけでもなくむしろ淡々としている。ただ、時系列順に見せてくれるし、素人には驚き以外の何者でもないトリビアも適度に入れてくれるので非常にわかりやすく、面白い。

65点
中島映画のハードルは高い

超話題作「進撃の巨人」の監督に決まったとのニュースは、この監督自身が原作にこだわりがあるということもあり大変な期待感とともに一瞬で日本中をかけ巡った。

ところがやんごとなき事情により降板し、彼は「渇き。」を作った。中島映画というただでさえ高いハードルを、「進撃の巨人」という幻のビッグタイトルがさらに上げてしまったのが、本作の不幸である。

娘・加奈子(小松菜奈)が失踪したとの知らせを別れた妻から知らされた元刑事の藤島(役所広司)。警察とは別に、独自の捜査を開始した彼が徐々に知ることになるのは、思い込んでいたものとはまるで異なる異様な娘の私生活であった。そのいらつきは、やがて暴力的な藤島の本質をも呼び起こす。そして失踪事件の真相に近づくにつれ、彼自身もその深い闇へとはまり込んでゆく。

65点
ハードボイルドな魅力

ジェイソン・ステイサムは並み居るアクションスターの中でもハードボイルドが似合う役者だ。ハンサムだし男臭いし、実際に肉体も強い。「ハミングバード」はそんな彼の特長を生かした、まさにハードボイルドな魅力たっぷりのドラマ。

特殊部隊兵士のジョゼフ(ジェイソン・ステイサム)は、事情があって逃亡兵となり、ロンドンでホームレスのごとき酒浸りの暮らしを余儀なくされていた。そんな折、彼はチンピラに襲われ仲のいい少女とも離れ離れになってしまう。逃亡中、偶然隠れた高級マンションの部屋が10月まで留守だと知った彼は、とりあえずそこで暮らしながら彼女と自らの人生を取り戻すため、手段を選ばず金を稼ぎ始める。

あらすじから想像できるような「レオン」風の恋愛ものではなく、意外にも男の人生再挑戦をメインにしたドラマであった。

65点
警察アクションというより犯罪サスペンス

前作において、スタントが売りの映画は卒業したと宣言したジャッキーチェンが、よりにもよってスタント、アクションの極みといってよいポリスストーリーシリーズを次回作にする。アクション抜きであれを作るのか? だとしたら何とも過激な挑戦といえる。

クリスマスの北京。仕事人間の刑事ジョン(ジャッキー・チェン)は、半年ぶりに会った愛娘ミャオ(ジン・ティエン)の豹変ぶりに動揺する。退廃的な服装、メイクな上、怪しげなクラブのオーナー(リウ・イエ)を恋人と紹介する。さらに店内の揉め事に巻き込まれたジョンは、そのまま昏倒してしまうのだった。

最初から何かがおかしい、ファンが知るポリスストーリーシリーズとは何もかも違う最新作である。コミカルな動きは無く、功夫も激しいスタントも少ないが、その分ジャッキーの演技で見せる。かつて「新ポリス・ストーリー」(93年)なる同様のシリアスな作風のものもあったが、シリーズとは無関係な作品に無理やりそんな邦題をつけたと聞く。はたして本作はどう展開するのか。

65点
苦しむ若者に寄り添う

一流のスタッフが流し運転で作ったような映画が公開される週に、「リュウセイ」のような若い監督の本気のデビュー作が並ぶ。前者を見て感じた不満が、そのままこちらで解消される。ユニークな偶然もあるものだ。

中学生時代のある日の夜、話題の流星群を見るため、偶然にも同じ場所にやってきた3人。彼らはやがて成長し、それぞれの道を歩き始めた。亨(遠藤要)はバンドの夢を半ばあきらめ居酒屋で働き、竜太(佐藤祐基)はキャバクラ嬢の送迎の仕事をしていた。一方、晴彦(馬場良馬)はいっぱしの企業に勤めながらも借金取りに追い詰められていたが、それを秘密にしたまま実家に戻ってくる。

谷健二監督は若い、といっても76年生まれだから人生の苦労を知る年ごろだろう。よどんだ生活を送る3人の若者が、はたしてちょいと方向修正して気合を入れなおせるかどうか……といった物語をデビュー作に選んだのは、彼らの不器用な生きざまに暖かい共感を寄せる思いがあったからだと思いたい。

65点
理想と現実の間のどこに軸足を置くべきか

昨年あたりから人種差別問題、奴隷制、またはその時代を描いた映画が、アメリカではちょっとしたブームになっている。この「大統領の執事の涙」もその一つだが、こうした差別問題に対する運動史、すなわち公民権運動についてコンパクトに理解できる教科書的映画だとあちらではもっぱらの評判である。

綿花畑の奴隷の息子として生まれ育ったセシル(フォレスト・ウィテカー)は、成長してからは給仕の仕事をひたすら真面目にこなしていた。やがて認められ、幸運な出会いが重なりホワイトハウスに勤めることになるが、長男はそんな父親をしり目に反政府的運動にのめりこんでいくのだった。

とはいえ、こいつをお勉強映画としてだけ見るのは惜しい。実在の人物をモデルにしただけあって、リアリティと両立された波瀾万丈の人生はそれだけで見応えがあるし、彼が仕えたそれぞれの大統領の個性や人間臭いエピソードの数々には親近感を感じられる。アメリカ近代史に興味がある人にとっては、いずれも興味を引く内容だろう。

65点
テーマこそが18禁

R18+指定のコメディ「フィルス」は、あまりに不謹慎な警官が出てくるためのレーティング審査結果かと思っていたが、よくよく見るとむしろ作品のテーマこそがショッキングで、若者には見せたくないなと思わせる。

署内一の敏腕だと自負するブルース刑事(ジェームズ・マカヴォイ)は、日本人留学生殺害事件の指揮を任され鼻息を荒くする。証拠の少ないこの通り魔的事件を解決すれば、署内の出世競争で抜きんでることができるからだ。妻だってそうなれば喜ぶ。だがその事件捜査は、予想外の運命を彼にもたらすのだった。

ここでいう同僚・上司がろくでもない連中ばかりで、じつは脚本家志望なんてグータラなやつから、隠れゲイ、ヤク中新人と救いようがない。それを知らされた観客は、なるほどこの中ならキレ者主人公がトップに躍り出るのは当然だよな、とそう思う。

65点
華やかな一般向けアクション映画

香港映画としては大作の部類に入る10億円の製作費、アーロン・クォックとレオン・カーフェイという2大スターを中心とした華やかなキャスト陣。「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」は、(香港人にとってはとくに)分かりやすいルックスのエンターテイメントである。

繁華街モンコックで爆破事件がおこり、かけつけた特殊部隊員らが車両ごと拉致される事件が香港警察を揺るがしている。ところが副長官のリー(レオン・カーフェイ)とラウ(アーロン・クォック)は、捜査の方向性をめぐって対立。とくに被害者の中に息子が含まれるリーの、職権乱用ともいうべき暴走ぶりを、ラウは激しく批判するのだが……。

本作は、ハンサムなおっさん二人のよくできたハードボイルド。日本での知名度は多少落ちるが、それでもこれをみれば、二人のスターに思い切り感情移入して楽しむのが正しいやり方だとわかるだろう。

65点
見どころは壇蜜の裸だけじゃない

本作の3ヶ月前に撮影した「私の奴隷になりなさい」(12年、日)で大ブレイクした壇蜜の最新作「甘い鞭」。公開こそ「私の奴隷になりなさい」の約1年後となったが、内容の過激さは勝るとも劣らずで、ご期待の壇蜜のハダカも、今となってはいい具合にプレミア感が感じられる。

女医の奈緒子(壇蜜)には、会員制SMクラブのM嬢というもう一つの顔があった。思春期の頃の体験によるトラウマがその背景としてあるのだが、それでも彼女は自らの性癖のすべてを理解していなかった。夜な夜なサディストの客の相手をしながらその謎を解き明かそうとする彼女は、しかし予想だにせぬ運命に巻き込まれてゆく。

悲惨な事件の被害者となったヒロインの話という事で、エロより前にグロさ、凄惨さが印象的なビジュアルとなった映画である。17歳時代を演じる間宮夕貴もぴちぴちの見事な身体を見せてくれるが、熾烈な暴力行為に遭いあっという間に血だらけ傷だらけになってしまう。

65点
格差社会を描くSF

SF作品というのは設定の奇抜さやおもしろさ、それらが必然的に語るメッセージ性がしっかりしていれば、リアリティについてはさほど問われない。

「エリジウム」は「第9地区」(09年、米ほか)でそれらを高いレベルでクリヤーしたニール・ブロムカンプ監督による新作。当然ながら強い期待をもって見られると思うが、結論としてはもう一歩といったところ。

2154年の地球は、人口増加による環境破壊で荒廃していた。富裕層はそんな地上からスペースコロニー「エリジウム」へと脱出。一家に一台、あらゆる病気を治す医療ポッドと共に、尽きぬ寿命を悠々自適に暮らしている。そんな中、地上の工場で劣悪な労働環境の元働いているマックス(マット・デイモン)は、職場の放射能事故によって余命5日を宣告される。絶望した彼は一か八かエリジウムの医療ポッドをめざすため、イリーガルな組織に近づくのだった。

65点
熟年のセックスレス問題を赤裸々に描く

長年連れ添った夫婦の愛が枯れていくのは万国共通だが、それに対する回答は各国・各民族で大きく異なる。中でも「31年目の夫婦げんか」をみると、アメリカ人の特異な考え方がよくわかる。

結婚31年目を迎えたアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)は、妻のケイ(メリル・ストリープ)から突然滞在型の結婚カウンセリングを受けたいといわれて戸惑う。そりゃ夜のお勤めはめっきり減ったが、それでも二人の絆は失われていないと彼は思いこんでいたのだ。だが半ば強引に怪しげなカウンセラー(スティーヴ・カレル)の元に連れられて行った彼は、そんな自分の認識が甘かったことをやがて認識させられる。

ほのぼのしたタイトルが付いているが、何のことはない、これは熟年夫婦のセックスレス問題に対する傾向と対策。若い世代の観客にとっては、そうとう過激で恥ずかしい現実を描いた作品である。

65点
「ファミリー」映画

本国の批評家筋からはひどい評価で、興行収入の伸び悩んでいる「アフター・アース」だが、期待すべき点を間違えなければそれなりにイケる。

西暦3072年、人類はすでに他の惑星に移住し高度文明を築いている。恐怖を感じた時のフェロモンを察知する究極の生物兵器アーサに対し、恐怖心を克服することで勝利した伝説の将軍サイファ(ウィル・スミス)は、息子キタイ(ジェイデン・スミス)を連れ最後の任務に出る。一匹のアーサと兵士たちを積み込んだ宇宙船で、ある星に向かい軍事演習を行う予定だったが、彼らは予期せぬトラブルに遭遇。傷ついた宇宙船は、人類が離れて久しい「地球」へと不時着する。

オカルト色が強く一般からは敬遠されがちな上、どんでん返し脚本を期待されることを嫌がったのだろう。M・ナイト・シャマラン監督作品であることをあえて強調せぬマーケティングだがこれは正解。と同時に消費者にとっても親切な配慮といえる。

65点
三人寄れば文殊の知恵

「犬の力」で知られるミステリ作家ドン・ウィンズロウ原作の映画化である本作は、オリヴァー・ストーンが監督することによりユニークな味わいが加わった。

植物学者ベン(アーロン・ジョンソン)と元海兵隊のチョン(テイラー・キッチュ)は、ベンの専門知識とチョンの暴力を生かして大麻栽培ビジネスで成功した。親友同士の彼らは恋人(ブレイク・ライヴリー)の愛も分け合い、奇妙な3人生活を送っている。そんなある日、メキシコの巨大麻薬組織が業務提携名目で、なかば強引な契約を持ちかけてきたが……。

若者二人がベンチャービジネスで成功し、その収益でアフリカ慈善事業に精を出す。そんな序盤の説明からして、IT長者たちへの皮肉である。なにしろ扱う商品が麻薬というだけで、やってることは同じ。海兵隊としてアフガニスタンで戦ったチョンが、帰国しても殺人を屁とも思わぬ戦闘機械になっている設定も、どこかブラックさを感じさせる。

65点
社会派ドラマか、プロパガンダか

現職の再選が危ぶまれる大統領選挙の年に、それも投票日の直前に現職大統領の最大の功績をヒロイックに映画化したものを公開する。

どう見ても言い訳のしようがない、完全無欠のプロパガンダである。それを違うと評する人間は単なる脳内お花畑なのであって、外の人間から見ればこれは失笑が漏れるほどの、ああまたやってるね、の世界である。

テロリスト関係者をとっ捕まえては拷問を繰り返すも、CIAはいまだオサマ・ビンラディンの行方をつかめずにいた。やがて赴任してきた若き女性マヤ(ジェシカ・チャスティン)は優秀な情報分析官だったが、CIAの拷問手法への風当たりが強くなってきたこともあり、彼女は別の形でオサマの居所をつかもうとする。だが、敵は常に上手であり、やがてCIAにも大きな被害が出てしまう。

65点
山田洋次版「東京物語」

全国民の共通言語を失いつつあるアメリカにおいて、その最後のテーマである家族愛を描いた作品が量産されていることは何度も述べた。いつの時代でも、どの国においても、家族のすばらしさを描いた映画はいいものだ。だが、クリエイターがそんな話しか思い浮かばなくなったら、それは末期症状だ。

久々に上京してきた平山周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)だが、長男の幸一(西村雅彦)ら東京の子供たちの生活があまりにせわしなく、どこか孤独感を感じ始める。そんな中、とみこは問題児と思っていた次男(妻夫服聡)から紹介したい彼女(蒼井優)がいると打ち明けられる。

ホームドラマといえば小津安二郎監督。中でも「東京物語」(1953)は、先ごろ英国の映画誌が世界映画史上ベストワンに選び話題になったほどの、誰もが認める不朽の名作。「東京家族」はその「東京物語」を、現代のホームドラマの巨匠というべき山田洋次監督が現代的に翻案した作品である。実質的なリメイクといってよい。

65点
ヤクザの命で宝くじ

今年、アメリカでは「ハンガー・ゲーム」が大ヒット。貧乏地区の若者を集めて最後の1名まで殺し合いをさせるルールは高見広春による小説「バトルロワイヤル」そのものだが、その映画版で殺し合いゲームを統括する教師を演じたのがビートたけしこと北野武監督。彼が、このタイミングでやくざのサバイバルゲームというべき「アウトレイジ ビヨンド」を公開するのだから、偶然とは面白いものだ。

前作のラストから5年、策略により加藤(三浦友和)は山王会会長の座に上り詰めていた。かつて大友組組長(ビートたけし)のもとにいた若き経済ヤクザ石原(加瀬亮)は加藤の右腕となり、彼らは古参幹部を軽んじる実力主義、金もうけ主義を進めていた。そんな状況を好機と見た悪徳刑事片岡(小日向文世)は、花菱会若頭の西野(西田敏行)らを焚き付け、東西の大組織同士の対立を進めていく。

前作同様、だれが死ぬかわからぬ緊張感のもと、こわもてのヤクザたちが殺し合いをするバイオレンスアクション。今回は黒澤明監督の「用心棒」風味がより強くなり、トリックスターの小日向文世があからさまに両ヤクザ組織をあおりまくり、共倒れを狙う展開となる。即興演出で知られる北野監督にしては珍しい、脚本の面白さを楽しむタイプのサスペンスにもなっている。

65点
もっと突き抜けててもいい

最近のテレビはお年寄りの安否確認までするそうだが、こうした細かいところに手が届く式の発想は日本の良い所でもある。だが、ときにこうした心遣いがおせっかいであったり、息苦しく感じるのもまた事実である。

その点、他国は皆おおらかである。特にその最たる国といえばインド。彼らは、あまり細かいことは気にしない。それが映画作りにも現れているのが、「ロボット」の姉妹編というべき「ラ・ワン」である。

英国のバロン社は、デジタル世界のデータを物質化する画期的な技術を開発する。そのテクノロジーを応用した対戦格闘ゲーム「ラ・ワン」をプレイした同社のシェカル(シャールク・カーン)の息子プラティクは、ゲームを途中でやめたことからゲーム内のキャラクターに、現実世界で追われることになる。

65点
良くできているが前作ほどでは

日本には160万人以上のひきこもりの人がいて大変な社会問題になっているが、この映画のダークナイト=バットマンもまさにそれ。クリストファー・ノーラン版バットマン3部作のラストを飾る本作で、主人公バットマンは、前作のジョーカー戦で精神的に消耗したため完全に元気をなくしている。たとえお母さんが作った食事に手紙を挟んでも、屋敷から出てくる気配はない。

ヒーローの存在意義を揺るがした強敵ジョーカー戦から8年。ゴッサム・シティの治安は大富豪ブルース・ウェインことバットマン(クリスチャン・ベイル)自ら地方検事ハービー・デントの悪行をかぶり、デントを英雄とすることでかろうじて保たれていた。だが凶悪なテロリスト、ベイン(トム・ハーディ)の出現によって、そんなかりそめの平和も終わりを告げる。さらに女泥棒セリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)の働きにより、ブルースは致命的なダメージを受けることになる。

アメリカンヒーローものの頂点に位置するバットマンは、当然ながらアメリカ自身の投影であり、「ダークナイト ライジング」はその復活を高らかに宣言する一作となっている。

65点
刺激不足

日本に少なくアメリカにあるものに、実名で何かを批判する文化がある。とくに日本の芸能界は狭くしがらみだらけなので、他人の悪口はタブーである。たまに怖いもの知らずで会社名や人物名を名指しで批判する人がいるが、そうした人の末路は悲惨である。国民的美少女女優と離婚することになったり、仕事を干されて反原発芸人として祭り上げられる人生を歩むことになる。

離婚にリストラとろくでもないことが続く中年男フランク(ジョエル・マーレイ)は、不治の病を宣告されついに自殺を決意する。だが死のうとする瞬間、テレビのリアリティーショーでバカ女子高生がふざけたわがままぶりを発揮しているのを見てぶち切れ。自分が死ぬ代わりに彼女を殺すべく、銃を片手に他人の車を奪い取って現場へと向かう。

「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、幾多のセレブ達を実名でけちょんけちょんにけなしまくった事から、アメリカをはじめ各国で拍手喝采されたカルトムービーである。

65点
的確すぎるジョディ・フォスター監督

日本人は鬱気質が多いなどといわれるから、そうした症状に苦しむ人々に寄り添ったジョディ・フォスター監督最新作「それでも、愛してる」は、多くの共感を得られるであろう。

おもちゃ会社を経営するウォルター(メル・ギブソン)は、しかし重いうつ病に苦しんでいた。二人の息子も妻(ジョディ・フォスター)も、彼にしてやれることはほとんどなかった。そんなウォルターは、あるとき町で古ぼけたビーバーのパペットを拾いその「声」を聞く。以来彼は、そのビーバー越しにしか会話ができなくなるが、それでもみるみる社交性と自信を取り戻していくのだった。

メル・ギブソンが大真面目にビーバーを操るシュールな姿を、笑わずにみられる自信があるなら、本作はなかなかの佳作である。こいつをコメディー色なしの誠実なドラマに仕上げた人気女優ジョディ・フォスターは、監督としてもなかなかのセンスを持っている。

65点
この高校生、マッチョすぎ

『トワイライト』シリーズで、ヒロインを寝取ろうと頑張る狼男を演じたテイラー・ロートナーの主演最新作。中身は『トワイライト』シリーズを男の子向きにしたような、俗にいう中二病的な内容だが、そんなイタ恥ずかしい内容でも沢山のお金といい俳優をそろえれば、何とか見られる形になる事がよくわかる一品である。

パーティーで羽目を外すのが好きな、ある意味平凡な高校生ネイサン(テイラー・ロートナー)は、意外なウェブサイトで自分の少年時代の写真を発見する。それは、誘拐され消息不明の子供たちの画像を集めたサイト。だが自分には優しい両親もいる──。それでも疑念を払拭できぬネイサンは、独自に過去を調べてゆくうち、悲惨な事件に巻き込まれる。その場にいた気になるクラスメート、カレン(リリー・コリンズ)を連れ、逃亡するはめになったネイサンを待ち受ける衝撃の真実とは……。

自分の正体は何なのか──?

65点
心あたたまる良質な「家族」映画

数千年間続く皇族を戴く日本人にとって「国」とは不変なる存在だが、世界中の多くの人にとっては違う。

アメリカは建国してわずか数百年だし、中国は数十年、ロシアだってソ連崩壊からはいくらも経っていない。お隣の韓国などは80年代後半まで軍事政権で、今とは大きく体制が異なる国だった。日本のように異様なまでに安定した国というのは世界中にほとんど存在しない。

人は人生の中で自分が属する国が大きな体制変換を経験すると、自らのルーツに対する信念が揺らぐのかもしれない。この映画を見て、私はそう感じた。

65点
妄想か、予知夢か

「テイク・シェルター」は2011年の映画だが、脚本は2008年に書かれたもの。この映画を解釈するには、この事実がまず大切となる。

カーティス(マイケル・シャノン)は、ブルーカラーながら安定した雇用に守られ、妻(ジェシカ・チャステイン)や耳の不自由な娘と幸せに暮らしていた。ところが大災害の悪夢を見るようになって以来、庭に頑丈なシェルターを作らねばとの強迫観念にとらわれる。彼が予感する終末の日は、はたして妄想なのか、それとも……?

2008年といえばアメリカは金融危機の真っ最中で、悪夢のような不幸がそこいらじゅうで実際に起きていた年である。

65点
森田芳光監督の遺作

楽しめる趣味こそが幸せを呼び込む──いくら仕事をしても生活が上向かないこの時代にとって「僕達急行 A列車で行こう」が語るそうしたテーマは耳に心地よい。万能薬ではないにしても、生きるのが大変な現代に対する、これが一つの回答であることは確かだろう。この映画自体も、鉄道マニアが喜ぶたくさんの車両やその名前をつけた登場人物名などによって、じつに趣味的な装いを備えている。そんな森田芳光監督の遺作は、心やさしい視点に彩られたほのぼの人間ドラマである。

大手不動産開発会社の有望な若手社員(松山ケンイチ)と、零細町工場の跡取り息子(瑛太)は、同世代ならではの仕事や恋への悩み、そしてなにより同じ鉄道ファンとしての共通項から、旅先でであった後に意気投合する。次々と壁に遭遇する若き彼らはしかし、趣味と友情の力で真っ向から立ち向かっていく。

森田芳光はホラーから不倫ドラマ、ミステリーなど様々なジャンルの中で一貫して人間を描いてきた監督である。その森田監督が、映画人生の最後にこうしたハートウォーミングコメディーで、やはり同じ人間というものを描いている。その暖かいタッチは震災後で弱った私たちの心にしみいるものがある。遺作がこのようにタイムリーな佳作であったことは、彼が映画監督として、実力と強力な運に恵まれていた証拠であろう。

65点
大風呂敷が気持ち良い

「私のどこが好き?」ときかれ、前から大好きだったきれいな目が一番好きだよと答えたら、じつはプチ整形済み箇所だった──。真実は人を幸せにするとは限らない。知らない方が幸せということは世の中多々ある。

しかし、それでも知りたいのが真実である。そんな真の探求者にとって、ピラミッドほど魅力的な存在はない。特にエジプトのギザの大ピラミッドは、一応の定説はあれどその目的も建造方法も全くの謎。厳然と目の前にあるにもかかわらず、何もわかっていない。異様に整った顔を持つ、黒髪ロングの女のコの過去くらい、何もわからないのである。

「ピラミッド 5000年の嘘」は、そんな謎に魅入られたパトリス・プーヤール監督が10年間の歳月をかけ、あらゆる学説を、徹底的に検証したドキュメンタリーの決定版である。

65点
今年のオスカー候補作はどれも同じ?

今年の米アカデミー作品賞は、不思議な符合を持つ作品がいくつも存在する。具体的にいうと、有力な3作「ヒューゴの不思議な発明」「戦火の馬」そして本作「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、物語のプロットがほとんど同じである。

どの作品も、天災もしくは戦争によって運命を狂わされた「無垢なる存在」を主人公にした作品。それが馬か、人間の少年かは別として、「理不尽に降りかかった災厄によって、被害を受けるかわいそうな者の物語」である骨格部分はまったく同一。

特に、本作と「ヒューゴの不思議な発明」の共通点は極めて多い。どちらも「唐突に失った父親が遺したもの」を完成させようと必死になる少年のお話。そしてほぼ同じセリフが、クライマックスの最も感動的な場面に流れる点でも共通している。ちなみに本作の主人公の少年の名前はオスカー。最初からノミネートが決まっていたのではないかと思う程の、奇妙な偶然といえる。

65点
≪フツーが心地よい、脱オタク向けホラー≫

リメイクはいまやすっかり定番の手法だが、そう簡単にリメイクできない要素というものがある。たとえば1985年の映画「フライトナイト」は、ホラーファンの間ではカルト作として知られるが、そのカルトな空気感などはその一例である。

だから、そのリメイク版『フライトナイト/恐怖の夜』が、そうしたカルト感をきっぱりあきらめ、万人向けのあたりさわりないホラー映画として作ったのは正解である。ホラー映画にあたりさわりがないというのもおかしな話だが、その中道さがこの映画のいいところである。

ラスベガス郊外に住む高校生チャーリー(アントン・イェルチン)は学園のアイドル的存在エイミー(イモージェン・プーツ)とつき合っているのが何よりの自慢。しかし、ひょんなことから隣に越してきた男(コリン・ファレル)が、本物の吸血鬼だということに気づく。しかもその男は、エイミーの血液を虎視眈々と狙っているのだった。はたしてチャーリーは、エイミーを守り切ることができるのだろうか。

65点
≪ムーディーな少林寺映画≫

少林寺という単語は、30代くらいの人にはちょいと琴線に触れるものがある。今よりずっと香港映画が活況だったころ、見たこともないストリクトなカンフーの動きで彼らを魅了したのは、一連の少林寺ムービーであった。やっぱりガチなのは少林寺だよね、との認識が自然となされていたのも記憶に残る。

中国の山寺では、めっぽう強いやつらが修行をしている。そんな魅力的な想像をかきたてたカンフー映画の数々は、しかし本家本元の少林寺が作ったものではなかった。本当の少林寺とはどんなところなのか、そこで研鑽された武術体系とはどんなものか。それを知るためにも、やはりオフィシャルな少林寺映画が観たい。

そんな人のために『新少林寺/SHAOLIN』が登場した。史上初めて少林寺が公式に製作許可を出し、監修までした本作は、そこで修行をつむ僧侶たちの日常風景や思想信条、素朴だが誠実な、禅の精神のもとで生きる姿を堪能できる。

65点
≪あまりに日本不在すぎて意外≫

『第7鉱区』は、韓国初の自国技術のみによるCGの見せ場や、3Dという目玉があったにもかかわらず、本国ではさほどヒットすることなく終わった悲運の作品。決して悪い出来ではないのだが、普通すぎて物足りないのは否めない。この題材を扱うならば、もっと「日本」を出さねば韓国映画らしくない。それさえやっておけば、もっともっとウケたに違いないのだが。

東シナ海に位置する第7鉱区。ここで海底資源調査を続けているボーリング船「エクリプス」には、男勝りのヘジュン(ハ・ジウォン)をはじめ、士気の高いスタッフが揃っていた。そんな折、船内でクルーが謎めいた死に方をするが、これは悲劇の始まりに過ぎなかった。

『第7鉱区』はジャンルバレ厳禁な映画だと思うので、当サイトではこれ以上のあらすじは明かさない。何も知らないままに見に行って驚いてもらったほうが良いと私は判断している。ちなみに予告編製作者はそのように考えなかった模様なので、盛大にネタバレしている。これからこの映画を見たい方は要注意のこと。

65点
≪テレビドラマ+アルファ程度の仕上がりだが、それなりに楽しめる≫

映画版の前作「アンフェア the movie」(2007)は、佐藤嗣麻子監督の苦手分野だったかテロリスト周辺のリアリティ欠如が目立つ凡作だったが、興行面では27億円を超えるヒットとなった。そこで出産後、本格的に復帰してきた篠原涼子を再び主演に据えて、このたびその続編が作られた。おまけに完成後、篠原涼子の第2子の妊娠が発表されるなど、なにやら子宝に恵まれたシリーズとなった。

元警視庁捜査一課の刑事・雪平夏見(篠原涼子)は、(前作で描かれた)警察病院占拠事件後に左遷され、今では北海道の平凡な警察署に勤務している。そんな彼女の前に現れたのは元夫でジャーナリストの佐藤(香川照之)。彼は都内で連続発生している猟奇殺人の容疑者として追われていた。雪平には新しい恋人である同僚の一条(佐藤浩市)がいたが、佐藤の話に彼女は思わず狼狽するのだった。

雪平が握る、警察組織が恐れる決定的な情報と、夫が容疑者となって追われる事件がどうかかわってくるのか。すべての謎が解けるラストには仰天度100の驚きが待っているというのが売り。

65点
≪2010年の映画ながらタイムリーなテーマ≫

お金のある人からない人まで、いまハリウッドの映画人はたくさんのUFO映画を作って、それが歓声で迎えられている。英国発『モンスターズ/地球外生命体』は製作費がたったの130万円と、プリウスより安いエコロジーな低予算映画だが、このトレンドに乗っていたためアメリカでもそれなりに人気が出た。おかげでギャレス・エドワーズ監督は、ハリウッド版ゴジラの次回作を任されることが決まったほど。130万円の投資のリターンとしては、これ以上のものはないだろう。

09年、地球外生命体を回収して帰還中のNASAの探査機が、メキシコ上空で爆発した。その数年後、怪獣のような生命体の宝庫となったメキシコは封鎖され、米国との国境には高い城壁が建設されていた。カメラマンのコールダー(スクート・マクネイリー)は社長令嬢サマンサ(ホイットニー・エイブル)を現地から救出せよとの命令をうけ、彼女と接触するが、様々なトラブルから彼らは安全な移動方法を失ってしまう。

日本で低予算映画を作るとなると、パーソナルな人間ドラマとか、シュールなギャグとか、最初からチープなB級を狙ったものなど、小さい企画ばかりが目につく。予算ではなくて企画力とアイデアが貧弱なのである。

65点
≪傲慢不遜な主人公は何を象徴しているのか≫

「マイティ・ソー」の全米公開は今年の5月だが、その内包するテーマ(後述)は、そろそろアメリカが本当にやばい瀬戸際となっているこの7月に見ると、時期遅れな印象を受ける。

なお、7月第1週目の映画を今頃紹介している当サイトの遅れっぷりよりはマシだろうとのクレームは一切受け付けていない。

神の世界最強の戦士ソー(クリス・ヘムズワース)は、血の気の多い性格から問題児として知られている。敵国に殴り込みをかけるなどその過激な行動はエスカレートする一方だったが、やがてその傲慢さを戒めようとする神の王から一切の力を奪われ、地上へ追放されてしまう。

65点
≪愛しい映画≫

3D全盛といわれて久しいハリウッドだが、イベントムービーとしては珍しいことに『SUPER 8/スーパーエイト』は2D作品である。その理由は、30代以上のおじさまたちがこの映画を見ればすぐにわかる。この作品は、絶対に最新のデジタル3Dなどというものであってはならない。

金も技術もあるというのに、あえて昔ながらの2Dである必然性のある最新作を企画し、作り出すところにアメリカ映画界の余裕と論理性を感じざるを得ない。

スリーマイル島原子力発電所事故がおきた1979年、オハイオ州に住む映画や模型好きの少年ジョー(ジョエル・コートニー)は、母親を不幸な事故で亡くしたばかり。だが、親友チャールズ(ライリー・グリフィス)や気になる少女アリス(エル・ファニング)らとの自主映画づくりが心の支えとなり、徐々に立ち直りつつあった。そんなある晩、駅舎で深夜のゲリラ撮影をしていると、彼らの目の前で貨物列車が大事故を起こす。そしてその事故以来、町には軍が駐留し、怪現象が頻発し始める。

65点
≪福島原発事故後の日本人に見てほしい作品≫

男なら、東北出身の女の子というと、とたんに色めき立つのが常識。秋田小町なんて言葉があるように、実際はどうあれ、色白で気立てがよくお嫁さん候補には最適との評価が一般的なところだろう。

だが、3.11を境にその「常識」は消えてしまうかもしれない。

日本人は気づいているのだろうか。福島原発の事故を見て、なぜこの国から外国人が一目散に逃げ出したのか、その本当の理由を。

65点
≪激安6000円の製作費で作られたホラー≫

金がないからゾンビ映画というのは若いクリエイターにとってド定番で、世界中の貧乏監督が似たような安ホラーを量産している。一説によるとそうしたゾンビ物は年間数百本も作られているという。そんなにしょっちゅう蘇らされたら、死体としても落ち着いて死んでいられない。

『コリン LOVE OF THE DEAD』もそんなデフレホラーの一本だが、マーク・プライス監督が他の新人監督と違ったのは、誰もがやりつくされたと思っていたこのジャンルに、ささやかな新風を吹き込んだ点。お金がない分、アイデアと情熱でカバーする、そうしたごく当たり前の姿勢が好感を呼んでいる。各国の映画賞でも大人気だったと聞くし、すでに監督にはハリウッドからオファーが殺到しているとのことだ。

舞台は英国のロンドン。街はゾンビで溢れ、すでに社会秩序は崩壊している。主人公は誰かに噛まれゾンビになったばかりの青年コリン(アラステア・カートン)。朦朧とする意識の中、彼はかすかに残った人間の頃の記憶に誘われるように、どこかへ向かって歩き続ける。

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