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70点
河瀬直美監督が長谷川京子をハダカにする

カンヌ国際映画祭グランプリ受賞監督の最新作ということで、満員の完成披露試写会場を前に、「注目度、凄いんだなと思っています」と満足げに語った河瀬直美監督。その自信満々なキャラで今後も突っ走ってほしいものだが、今回は主演の長谷川京子が公開直前に結婚を発表する話題性にも恵まれ、これ以上ないスタートを切れそうだ。

30歳の彩子(長谷川京子)は一人でタイへ旅立った。ところが言葉が思うように通じず、ホテルを告げたはずのタクシーは怪しげな森の中へ。危険を感じて逃げた先には、ゲイのフランス人(グレゴワール・コラン)が居候する現地民の素朴な家があった。

アラサーな女性が、タイの森で古式マッサージに出会い、その習得とともに心の癒しを得る物語。言葉の通じぬ人々相手に苦労するヒロインの姿は、コミュニケーション下手で悩む現代女性の投影。日常に疲れたとき、海外へ一人旅をするようなタイプの女性にとっては、理屈ぬきで共感できる作品といえるだろう。じつに女性監督らしい、うまい作りになっていると思う。

70点
ジョン・カーペンター監督の有名殺人鬼ホラーをリメイク

オリジナルの78年版『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督)は、なんといっても殺人鬼映画の金字塔であり、のちに『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』といった大ヒットシリーズを生み出す源泉にもなった。今回のリメイクも、力の入った本格的ホラー映画で、大のホラーマニアとしても知られるロブ・ゾンビが脚本と監督を担当した。

イリノイ州、ハロウィンの夜。孤独な少年マイケル(ダエグ・フェアーク)は、家族に魔の手を振るう。ルーミス医師(マルコム・マクダウェル)の手にゆだねられたマイケルは17年後、精神病院から脱走して故郷に向かう。

オリジナルもリメイク版も、怖さのポイントは「混乱」ではないかと私は考える。じつのところ、重大な箇所をロブ・ゾンビは変更しているのだが、このツボ部分はきちんと押さえている。少々異なるやりかたで客を混乱させ、原版と似たような後味の悪さを残している。伝統とも言うべき傑作メロディはいつまでも耳に残り、ぞっとする思いを胸のうちに残しながら、私たちは席を立つことになる。

70点
綾瀬はるかが女座頭市に

公開したばかりの『ICHI』が苦戦していると聞く。報じられたところによると、客層はやや高めとのこと。これには少々悔しい気持ちがした。私はこの映画を、「座頭市」など知らぬ若い人にこそ見てほしいと思っている。

一人旅を続ける盲目の旅芸人=瞽女(ごぜ)の市(綾瀬はるか)。彼女はあるとき、とばっちりで悪党の襲撃を受けるが、そこに十馬(大沢たかお)という名の侍が助けに入る。ところが十馬は、なぜか刀を抜こうとせず、二人は逆に窮地に陥る。

刀を抜けなくなった侍と、暗い過去を持つ盲目の女剣士。かつて勝新太郎が演じたヒーロー座頭市は、この男女二人のキャラクターに分かれ、受け継がれている。強き面は市に、どこかユーモラスな部分は十馬に。だからこの映画は二人のラブストーリーではなく、むしろ異色のバディムービーとして見るのが正しい。

70点
レンタル店員が超大作を激安リメイク

今週公開の映画は、どうしてこうろくでもない邦題ばかりなのだろうと頭を抱えてしまうが、中でも『僕らのミライへ逆回転』は群を抜いてひどい。私は原題原理主義者ではないから、日本公開版がオリジナルと違った題名になろうとかまわないが、この邦題で客が入るとはどうしても思えない。映画の中身がいいだけに、それはちょいと悔しい事なのである。

舞台はさびれたレンタルビデオ店。しばらく留守にするオーナー(ダニー・グローヴァー)に店を任された店員マイク(モス・デフ)は、悪友のジェリー(ジャック・ブラック)に店内のビデオを台無しにされてしまう。そこにオーナーの知り合いの女性から、ビデオを借りにくるとの連絡が。弱った二人は、なんと自分たちで『ゴーストバスターズ』を撮影してごまかすことに。

映画を愛する人々に見てほしいコメディー映画である。原題「Be Kind Rewind」は「巻き戻して返してね」といった意味。言うまでもなく、ビデオレンタル店の注意書きだ。

70点
人気米ドラマSATCがゴージャス映画化

日本では、テレビドラマの映画化は内容が薄っぺらということで、映画ファンからはそっぽを向かれている。では、本場アメリカの場合はどうか。

6年間にわたりHBO(米のCATV局)で放送され、女性たちの共感を集めまくった『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画化は、公開されるやロマコメ映画史上一位。女性が主演する映画としても「トゥームレイダー」を抜き歴代一位という記録的スタート。「TVドラマの映画化は手堅くヒットする」という法則は、とりあえず日米共通といえそうだ。

テレビ版最終話から4年後。人気コラムニストのキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)は、ついにミスター・ビッグ(クリス・ノース)との結婚を決める。一夜限りの男を渡り歩いてきたサマンサ(キム・キャトラル)は、乳がん発覚時に支えてくれた年下の俳優スミス一筋。そのエージェントとしてハリウッドで暮らしている。中国から養子を取ったシャーロット(クリスティン・デイヴィス)は、愛する夫との間に思いがけず妊娠が発覚。だがミランダ(シンシア・ニクソン)だけは、夫の浮気や仕事と家庭の両立に深く悩んでいた。

70点
70年代に米国に実在した、エンタ性重視のバスケリーグとは?

アメリカトップクラスの人気コメディアン、ウィル・フェレルは、あちらのコメディに疎い日本ではご多分に漏れずまだまだ無名だ。しかし小規模公開ながら高いパフォーマンスを記録した「俺たちフィギュアスケーター」(2007)の成功のおかげで、続く本作も無事公開にいたった。

そして予想通り、映画会社は原題とは無関係な「俺たち」を邦題にくっつけた。今後のウィル・フェレル作品の邦題における「俺たち」率は、きっと恐るべき高さになるであろう。

70年代のミシガン。この時代には、競技志向のNBAに対してエンターテイメント性を重視したABA(アメリカン・バスケットボール・アソシエーション)が存在した。

70点
明るくたくましい、ブラジルスラムで抗争を続ける子供たち

ブラジルの貧民街における子供たちの暴力抗争を描いた衝撃作『シティ・オブ・ゴッド』(02年、ブラジル)は、世界中で好評を博した。

その大人気によりフェルナンド・メイレレス監督はその後、同作のテレビシリーズも手がけることになった。この『シティ・オブ・メン』は、そのテレビ版の完結編にあたる。だが初心者に優しい構成により、シリーズ未見でも問題なく楽しめるようになっている。なお今回フェルナンド・メイレレスは製作にまわり、テレビ版の脚本や監督を担当したパウロ・モレッリが後を継いだ。

リオデジャネイロの丘の上には、貧民街が広がっている。そこでは二つのグループが利権をめぐり、抗争を繰り広げていた。ここで生まれ育った18歳のアセロラ(ドグラス・シルヴァ)とラランジーニャ(ダルラン・クーニャ)は、父親がいない共通項もあってずっと親友同士だ。ところがあるとき、行方不明だったラランジーニャの父親を発見。父子の暮らしを尊重したいラランジーニャと離れ、孤立気味のアセロラは抗争相手のグループに身を寄せるようになる。

70点
怒ると巨大化、超人ハルクがヒーロー映画として帰ってきた

怒ると巨大化し、緑のマッチョマンとなってあたりかまわず破壊する。マーベル・コミックの誇るヒーロー「超人ハルク」は本国アメリカはもちろん、過去にテレビシリーズが放映された日本でも根強い人気がある。

だがそのハリウッド実写版は今からほんの5年前、アン・リー監督によって行われたばかり。この『インクレディブル・ハルク』はその続編というわけでもないし、いまさら別のメンバーで作り直すのはなぜなのか。それにこの新作、所々よくわからない場面があるし、とくにラストシーンの不可解さはいったい何なのだ?

科学者のブルース・バナー(エドワード・ノートン)は、実験中に大量のガンマ線を浴びて体質が変化。心拍数が200を超えると、緑の巨人ハルクに変身してしまう。彼を利用しようとたくらむ軍とロス将軍(ウィリアム・ハート)から逃げるため、ブラジルのスラムに身を潜めるバナーは、将軍の娘で恋人のベティ(リヴ・タイラー)を想いながら、必死に特異体質の治療法を探っていた。

70点
リヨンの虐殺者といわれたナチスの戦犯の数奇な人生

能力の高い人材は職場を問わず活躍できるので、不況になっても食いっぱぐれることがない。諜報の分野にもどうやらその法則は当てはまるようで、裏社会の人脈に通じ、たくさんの拷問法を知っていて、かつ自分の手でそれを実行できるような才能はそう簡単に裁かれる事はない。

ナチスの中でも極悪と称される戦犯でありながら、戦後ものうのうと生き延び億万長者になった男、クラウス・バルビー。このドキュメンタリーは、彼の奇妙な人生を追いながら、なぜ戦後の世界が彼を必要としたのかを考察する。正義だの悪だのといった建前より重要な、あるいはそれを遂行するために必要な国際社会の裏側を理解する助けになる作品だ。

クラウス・バルビーはナチス・ドイツの親衛隊中尉として、フランスのリヨン市の治安責任者となり、そこで数々の共産主義者やユダヤ人をひどい目にあわせた。文章にするのもおぞましい拷問や虐殺は、何の罪もない子供たちにまで及んだ。部下に命ずるのみならず、自分の手で直接行った点が特徴的とされる。

70点
ウエンツ瑛士による鬼太郎、第二弾

前作『ゲゲゲの鬼太郎』(07年、日本)が予想を上回る大ヒットを記録したため、比較的スムースにこの続編は実現したようだ。鬼太郎役のウエンツ瑛士はじめ、主だったキャスト・スタッフは同じ。原作を実写変換するのではなく、あえて役者の個性を思い切り前面に押し出すコンセプトも変えていない。守りを固めた、手堅い布陣のパート2といえるだろう。うまくいっているものは大きく変える必要はない。戦略立案の基本である。

若い女性の失踪事件が続き、鬼太郎(ウエンツ瑛士)は猫娘(田中麗奈)や事件に巻き込まれた人間の女子高生(北乃きい)と共に調査を開始する。原因はどうやらねずみ男(大泉洋)の失態により蘇った悪霊とわかり、鬼太郎軍団は手分けして封印のため必要な古の楽器を探すことにする。

ウエンツ瑛士は前作よりはるかに違和感のない演技で堂々の主演ぶり。間寛平の子泣き爺や室井滋の砂かけ婆もすっかり板についている。アニメとも原作とも違う、映画版独自の世界観はどうやら完成の域に達した。

70点
東西に分かれたドイツは、セックス観も大きく変化した

こんな映画を見ようと思っている皆さんは、きっとよそ様のセックスが気になって仕方がないタイプに違いない。そりゃ誰だって気にはなるさと言い訳しても、『コミュニストはSEXがお上手?』を見ると、それが人類不変の法則でもなんでもないことがわかる。

この52分間のドキュメンタリーは、ドイツで放映されたのち山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映され話題を呼んだもの。貴重な資料映像をふんだんに使った、社会学的好奇心を満たす作品となっている。

ご存知のとおりドイツは戦後、同じ民族でありながらベルリンの壁によって東西に分けられた。西は資本主義、東は共産主義となり、1989年に壁が壊されるまで両者はまったく違う道を歩んだ。

70点
激動の90年代の出来事と、ある夫婦の悲劇を並行させたドラマ

前作『ハッシュ!』公開後にうつになったと語る橋口亮輔監督は、そこから抜け出した経験を生かして最新作『ぐるりのこと。』を作った。

1993年。零細出版社に勤める妻・翔子(木村多江)と、靴修理店でアルバイトする夫・カナオ(リリー・フランキー)。日本画家になる夢を捨てきれないカナオは、あるとき法廷画家の仕事を頼まれる。妊娠した翔子のお腹も徐々にふくらみ、幸せいっぱいの二人に悲劇が訪れる。

比類なき悲しみに見舞われ、ぼろぼろになりながらも歩いていく夫婦の物語。妻は夫とセックスをする日まで事前に決めているような性格。木村多江のような美人であっても、そんな事されたら逃げ出したい。それはともかくその几帳面さが災いしてか、やがて彼女は精神を病んでしまう。時が癒すほかはない出来事を前に、夫は自らの無力を悟るかのように静かに仕事に没頭する。はたして二人の希望はどこにあるのか。

70点
二組の夫婦が互いの相手と不倫してしまったら?

「他人の奥さんはかわいく見える」という人は、他人から自分の奥さんがかわいく見られているという事実に案外気づいていない。

建築会社の副社長ヨンジュン(イ・ドンゴン)と照明デザイナーのソヨ(ハン・チェヨン)は誰もが認めるセレブなカップル。一方彼らとビジネスでつきあう事になったファッションアドバイザーのユナ(オム・ジョンファ)とその夫でホテルマンのミンジェ(パク・ヨンウ)は、長い恋愛の末一緒になった仲良し庶民夫婦。ひょんな事から互いのパートナーに惹かれあってしまう両カップルの行く末は……?

六本木ヒルズのモーニングショーで公開されるこの映画。いいトコの奥様が集いそうなあの場所で、朝っぱらから不倫ドラマとはシャレが効いている。

70点
ケヴィン・コスナー演じる殺人鬼の正体は意外なことに……

ここ7、8年ぱっとしないケビン・コスナー(「ボディガード」(92)「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(90)など)は、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターに匹敵する個性的な殺人鬼キャラをなんとかこの作品で誕生させ、自らも表舞台に返り咲くべく並々ならぬ意気込みで挑んでいる。

殺人依存症ともいうべき快楽殺人犯ブルックス(ケヴィン・コスナー)は、万全の準備と慎重さで今夜も手際良い殺人を成功させた。だが、現場となった被害者の寝室の窓が開いているのを見て自分が致命的なミスを犯したことを知る。案の定、成功した実業家としての顔も持つブルックスのオフィスに、後日犯行時の写真が送られてくる。

冷静で完璧な殺人者が、一人のカメラ小僧に追い詰められながらも反撃を狙うサイコサスペンス……といいたいところだが、本作はそんな月並みな展開にとどまらない。製作もかねるケヴィン・コスナーは、山ほどある類似のシリアルキラーものとは一線を画す、サービス精神旺盛なめくるめく脚本によって、この映画を一味もふた味も違ったものにさせることに成功した。

70点
S・スタローンのミリタリーアクション、20年ぶりの復活

不滅のアクションスター、シルベスター・スタローンは自身の代表シリーズたる「ランボー」を「現代の西部劇」と称したが、まさに言い得て妙だと思う。

タイ北部で隠遁生活を送るベトナム戦争の英雄ランボー(シルヴェスター・スタローン)は、迫害されているキリスト教徒らに医療物資を届けたいNGO職員サラ(ジュリー・ベンツ)から、ミャンマーまで船で送ってほしいと依頼される。危険すぎると反対するも、その熱意に打たれ無事送り届けたランボーだったが、その直後にサラと仲間の職員は襲われ政府軍に拉致されてしまう。

数十年間続くミャンマーの軍事政権が、ここではまるで鬼か悪魔のごとき悪役。か弱き人民を陵辱虐殺、殺人ゲームを無理やりやらせ、地雷に手足を吹っ飛ばされる様子を見てゲラゲラと笑っている。人間味などゼロ、まるで人食い土人である。

70点
トム・ハンクスの新作は、世界を変えたエロ代議士のお話

"事実は小説より奇なり"というが、こと政治テーマにおいてはその"小説より奇なる事実"さえ、疑ってかかる必要がある。

ときは80年代の冷戦時代。テキサス州選出の民主党下院議員チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は、女と麻薬に目がない不良代議士。ただ、テキサス男らしいおおらかな性格で、どこか憎めない男だった。ある日彼は、巨乳ギャル二人を含む4P状態のジャグジーで、ソ連が侵攻したアフガニスタンの悲惨な現状を知る。

さて、そのニュースで何かに目覚めたチャーリーは、セフレでパトロンの大富豪夫人(おまけに反共闘士の)ジョアン・ヘリング(ジュリア・ロバーツ)のツテでパキスタン大統領に謁見。アフガンの戦士たち(=ムジャーヒディーン)がソ連の重武装ヘリに対抗できる強力な武器を必要としていることを知る。幸い国防委員会の重職に就いていたチャーリーは、強引に予算をぶんどり、やり手のCIA局員(フィリップ・シーモア・ホフマン)の力を借りつつ信じられない方法で武器弾薬を調達し始める。

70点
OL必見のオフィスビル内閉じ込めサスペンス

外敵をシャットアウトする鉄壁のセキュリティの内側に犯人がいた場合、ガードの強さはそのまま脱出の困難さに変貌する。『P2』は、その防犯設備があだとなり、勤め先のビルに閉じ込められてしまう哀れな女の子の話だ。

クリスマスイブのニューヨーク。アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は残業のため、オフィスビルで最後の一人になってしまった。夜勤のガードマンらに挨拶して急ぎ地下駐車場に向かうが、なぜか車のエンジンがかからない。表玄関は遠隔ロックされ、エレベーターは止まり、携帯も圏外。弱りきった彼女は照明が落ち薄暗い中、当直の警備員に助けを求めるが……。

『P2』は、一言でいえば監禁サスペンス。クリスマスの夜という、特別だがありふれた設定により"がらんどうのオフィスビル"という「恐怖の場」を準備。電話や非常口といった「誰もが考えるであろう選択肢」が丁寧にひとつづつつぶされていく。その度に不安と恐怖が高まり、やがて何者かに襲撃され、アンジェラはビル内に監禁されてしまう。

70点
ロバート・レッドフォードらしい社会派政治ドラマ

ここ最近、政治的なアメリカ映画が多いのは、ひとえに今年が大統領選挙の年だから。その意味では、それらの政治映画がことごとくプロパガンダであるという見方は決して間違ってはいない。

将来の大統領候補と目される共和党の上院議員(トム・クルーズ)は、執務室に旧知のジャーナリスト(メリル・ストリープ)を呼び、アフガンにおける対テロ戦争の新作戦について極秘情報を交え語り始める。彼女に独占スクープをプレゼントしようというのだ。おなじ頃、あるリベラルな大学教授(ロバート・レッドフォード)は、最近授業に出ない優等生に、その理由を問いただしている。さらに同時刻、教授のかつての教え子二人が、いままさにアフガンで新作戦に出撃しようとしていた。

時差のある三箇所での物語が、絶妙に絡み合いながら同時進行する政治ドラマ。きわめて会話量の多い社会派ものだ。ハリウッドきってのリベラル映画作家で俳優のロバート・レッドフォード7年ぶりの監督作品で、かなり露骨に自身の政治的立場を表明したものになっている。

70点
自ら指を切って保険金を請求する人々

後出しじゃんけんの結果はわかりきっているという意見もあるが、韓国版『黒い家』の出来は予想以上に良いものであり、貴志祐介の同名原作のファンには(大竹しのぶ主演の99年公開の日本版でなく)こちらをオススメする。

生命保険調査員のチョン(ファン・ジョンミン)は、見知らぬ男パク(カン・シニル)から名指しで指名される。やがてその周辺で死体を発見したチョンは、あまりに不審な一連の出来事から、この事案はパクによる保険金詐欺だと確信する。しかもチョンが調査を続けると伝えると、パクは異常な嫌がらせをはじめるのだった。

原作でも映画でも、私が一番好きなのはこの前半の展開。実際に生命保険会社に勤めた経験のある貴志祐介だからこそ書ける、あまりにリアルな"異常客"の描写に背筋が凍る思いがする。

70点
本格受験指南ムービー

『受験のシンデレラ』は、異業種監督が最初に作るべき映画の見本のような作品である。

東大合格率第一位の名門予備校のカリスマ教師・五十嵐(豊原功補)は、あるとき末期がんで余命1年半の宣告を受ける。絶望の最中、彼はコンビニで貧しそうな少女・真紀(寺島咲)と出会う。レジでの消費税計算において、真紀に数学的センスを見出した五十嵐は彼女に向かって言う。「お前は人生を変える気はないか?」

格差社会の最底辺ともいうべき、貧しい母子家庭の高校中退の少女を、日本一のカリスマ教師は人生最後の生徒に選んだ。チャンスは一回のみ、1年半後の東大合格に向け、500円コイン一枚の授業料で、二人の無謀な挑戦が始まる。

70点
これが第一作目ならよかったのに

パート1の威光を受けた二作目は、興行面の有利さと反比例して、評価の面では苦戦を強いられるのが普通である。しかし、『口裂け女2』の前作にはそもそも高評価なるものが存在しないため、いわゆる「二作目のジンクス」は通用しない。

1970年代の岐阜。三姉妹の末っ子・真弓(飛鳥凛)は、陸上部の先輩を密かに想う元気で純朴な女子高生。結婚する長女・幸子(川村ゆきえ)、美容師として独立したばかりの次女(岩佐真悠子)とも仲良く、幸せに暮らしていた。しかしある夜、逆恨みした幸子の元彼が、暗がりで幸子と勘違いした真弓の顔面に硫酸をかける。

復讐相手の顔くらいきちんと確認しなさいというほかないが、このあわてんぼうの元カレのせいで、真弓と家族の運命は転落を始める。

70点
アカデミー賞最多4部門を受賞した、コーエン兄弟最新作

最多4部門を受賞し、今年のアカデミー賞最大の話題作となった『ノーカントリー』は、噂どおりの味わい深い一品であった。

ベトナム帰還兵のモス(ジョシュ・ブローリン)は、テキサスの荒野で狩をする最中、銃撃戦の跡と思しき死体の山を発見する。そこで麻薬と200万ドルの現金を見つけ、思わず持ち逃げしたモスは、しかし追っ手に気づかれてしまう。その瞬間から彼は、殺人マシンのような暗殺者シガー(ハビエル・バルデム)に追われるハメになる。

ハイエナのように死体から金をあさる男とそれを追う化け物のようにタフな処刑人。事件の残虐さと異常性に、ただただ無力感をつのらせる昔気質の保安官(トミー・リー・ジョーンズ)。この3者を主人公とするクライムアクションだ。

70点
『アメリ』のオドレイ・トトゥが憎ったらしい小悪魔に

『ダ・ヴィンチ・コード』のようなトンデモ映画もたまにはあるが、『アメリ』『愛し

てる、愛してない...』『堕天使のパスポート』と、人気女優オドレイ・トト

ゥが選ぶ作品はどれも優れたものばかり。主演最新作『プライスレス 素敵

70点
日本人としての誇りを失わず、戦犯裁判を戦い抜いた男の物語

戦勝国の一方的な論理でA級戦犯らを裁いた東京裁判の欺瞞は、近年の保守ブームで一般にもだいぶ知られるようになってきた。しかし、B級戦犯とされた岡田資(おかだたすく)中将が、命がけで米国側と法廷で戦った史実については、まだそれほど知られてはいない。

『明日への遺言』は、その法廷闘争の様子を描くことで、現代の日本人が失いつつある"真摯な生き方"を伝えようとする歴史ドラマ。

昭和23年3月、スガモプリズン(巣鴨拘置所)。そこには元東海軍管区司令官・岡田資中将(藤田まこと)が収監されていた。彼とその部下たちの起訴理由は、38名の米軍捕虜を不当に処刑したというものであった。しかし岡田は、無差別爆撃は国際法上の戦争犯罪であり、その実行者である彼らはジュネーブ条約でいう捕虜にはあたらないと主張。弁護人のフェザーストン(ロバート・レッサー)と共に、検察側と真っ向から対決するのだった。

70点
笑って笑って、最後は第九の大合唱に涙

シネカノンという映画会社はよほど歌が好きなのか、あるいはヒットの方程式を確立したのか、もうながいこと「音楽&人情ドラマ」の娯楽映画に関わっている。『のど自慢』(1999年)や『ゲロッパ!』(2003)、そして『フラガール』(2006)といった具合だ。

そしてその集大成的作品がこの『歓喜の歌』。下手すりゃドイツ以上によく歌われているのではないかと思われる、ベートーベンの第九(交響曲第9番)。あの年末恒例の合唱曲=第4楽章を題材にした、涙と笑いのコメディドラマだ。

12月30日、とある市民ホールで大事件が勃発した。やる気の無い担当者・飯塚主任(小林薫)のミスにより、2つのママさんコーラスを大晦日の夜にダブルブッキングしてしまったのだ。典型的な小役人体質で、これまでトラブルから逃げ続けてきた飯塚だったが、今回ばかりは一歩も譲らぬ両者の間で右往左往するハメになる。

70点
全国の佐藤さんは、捕まったら殺されます

私はこの映画を見た後に、山田悠介の原作小説を読んだ。だれかが「すごい本だよ」と言っていたが、確かにそうだった。ここ数年読んだエンタテイメント小説の中で、一番驚かされたといっても過言ではない。

"佐藤"姓をもつ人たちが、各地で変死する事件が相次ぐ現代の日本。足がめっぽう速い高校生、佐藤翼(石田卓也)は、今日も佐藤洋(大東俊介)率いる不良グループから追い回されていた。やがてついに囲まれたところで、彼はどこかへ瞬間移動してしまう。そこはもとの日本とそっくりだが、どこかが違う世界。言葉も感情も持たない病気の妹(谷村美月)はなぜか雄弁で、翼を追いかけていた洋は気のいいヤツに変わっていた。だが一番の違いは、この世界の"佐藤"さんは、黒装束の殺人者たちに追いかけ殺される、「リアル鬼ごっこ」の真っ最中だったということだ。

私がなぜ原作小説に驚いたかといえば、それがケータイ小説以上に無茶苦茶な文章で書かれていたから。主語と述語がつながっていなかったり、意味不明な修飾語があったりと、とにかくびっくり。校正するはずの編集者は、よほどのイタズラ好きか眠っていたかのどちらかだ。ちょっと調べたところによると、この問題はずいぶん前からネット等で話題だったらしい。実例が並べてあってとても笑える。興味のある方は検索のほどを。

70点
ダコタ・ファニングのライバル女優の魅力大爆発

『テラビシアにかける橋』は、VFXをたくさん使ったまるで『ナルニア国物語』のごときファンタジックな映画だが、根底には比較にならないほどシリアスな何か、言ってみれば"死"の空気が流れている。

その理由は、原作者で米国児童文学の第一人者キャサリン・パターソンが、執筆当時癌にかかっていた事と、息子の周辺で起こったある悲劇にショックを受けた直後だったため。この映画版も、その空気感をよく表現しており、心温まるドラマを描きながらも、全編に異様な緊張感が張り詰めている。

小学五年生の少年ジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)は、おとなしい性格のうえ貧しい事もあり学校ではいじめられっ子。一方、隣に越してきた転入生のレスリー(アンナソフィア・ロブ)は、裕福な作家夫婦の一人っ子。運動も勉強もよくできるレスリーは、しかし想像力が豊かすぎてちょっと変わり者。クラスでも浮きまくりだった。仲間はずれ同士意気投合した二人は、家の裏の森をテラビシアと名づけ、その空想の国で日々冒険を楽しむのだった。

70点
国家による偽札製造事件の真相

がんさつ、ではなく"にせさつ"と読む。マヌケな犯罪者がコピー機で作るようなチンケな代物ではない。ナチス・ドイツが軍事作戦として敢行した大プロジェクトを、紙幣贋造に従事したものの立場から語る、実話を基にしたドラマだ。

第二次世界大戦のさなか。ナチスは敵国イギリス国内経済に打撃を与えるため、大規模なニセポンド札の製造に着手する。各地の収容所から印刷技術の専門家のユダヤ人をかきあつめ、ヘルツォーク親衛隊少佐(デーヴィト・シュトリーゾフ)のもと、作戦は開始された。当時、一介の捜査官だったヘルツォークに逮捕されたニセ札作りのプロ、サロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)も、リーダーとしてそこに加わった。

これまでの収容所と違い、柔らかなベッドやまともな食事が提供される"破格"の待遇。やがて彼らユダヤ人捕虜たちはポンド札の偽造に成功し、つかの間の開放感を味わう。この作戦が続く限り、彼らの命も保証されているためだ。

70点
Mr.ビーンがフランスに行くとどうなるか

ローワン・アトキンソンの名キャラクター"Mr.ビーン"は、およそ10年ほど前、日本でもブームになった。寸足らずのツイードスーツに濃すぎる顔で、いつも問題をややこしく増幅させるマヌケな英国人の姿は、いまも記憶に新しい。……というより、忘れたくともインパクトがありすぎて無理か。

97年には、あまり好評ではなかった映画版も作られ、やがて長い沈黙を経て、このたび本国イギリスのBBCにおける新作の放映と同時に、第2弾となるこの映画版が公開された。同時にこれが、ローワンいわく最後のビーンになるという。

慈善くじでフランス旅行を当てたビーン(ローワン・アトキンソン)は、カンヌ国際映画祭でにぎわう南仏へと旅立つ。ところがのっけから彼は、偶然居合わせた映画監督の息子を巻き添えにTGV(フランス高速鉄道)を乗り過ごすというポカをやらかす。やがて新進女優のサビーヌ(エマ・ドゥ・コーヌ)をも巻き込んだ、3人の予想不能な珍道中が始まる。

70点
キモい男二人がフィギュアスケートでペアを組む?!

アイデアを聞いただけで「これは見たい」と思わせる映画がある。飲み屋で思いついてメモ用紙になぐり書きした企画書が、一発で通ってしまうようなパターンだ。『俺たちフィギュアスケーター』は、(企画書がペラ紙一枚だったかは知らないが)その典型例。

フィギュアスケート男子シングルで、常にトップ争いをしているチャズ(ウィル・フェレル)とジミー(ジョン・ヘダー)。実力は拮抗するも犬猿の仲の二人は、同点優勝の表彰式で乱闘騒ぎを起こしてしまう。事態を重く見たアメリカフィギュア界は二人を永久追放。しかし彼らは規約の穴を見つけ、シングルでなくペア部門でカムバックする。

男同士のペアでフィギュアスケートの頂点を目指すスポーツコメディー。なぜキモい男ペアかという理由付けも、なかなか説得力があって良い。実力は十分なれど、はたして二人は優勝できるのか?!

70点
食の安全性を徹底追求したドキュメンタリー

賞味期限や産地の偽装が一段落したと思ったら、テラ豚丼やらケンタッキーフライドゴキブリといった問題が持ち上がっている。どちらもKYなアルバイト店員の悪ふざけが、ミクシーやニコニコ動画といった巨大サイトを通じてネット上で広まったニュースだ。日本のフード業界は、もはや最上位の料亭から最底辺のファストフードまで、腐敗しきってしまったのか。

──と思ったところで今度は、不祥事のディフェンディングチャンピオン中国から、殺鼠剤入りの猛毒ラーメンが売られていたとの仰天話が飛び込んできた。お湯を注いで……ではなく、食べると数分であの世行きだという。知らん顔して輸出したら、これはもう生物兵器となんら変わりない。中国産食品は、いまや大量破壊兵器の粋に達している。米国は中国をテロ支援国家指定してはどうか。

さて、そんな今ぜひ見てほしいのがこの『食の未来』。誠実な語り口で、冷静に、かつ論理的に食の安全性の問題を解説するまじめなドキュメンタリーだ。米国では04年3月の選挙前にカリフォルニアで上映され、この地域での遺伝子組み換え作物(GMO)栽培禁止法案を通過させる力となった。情報量が多く、一部専門的な内容にも突っ込むため、字幕でなく日本語吹き替え版での上映となる。画面のみに集中して見られるのはありがたい。

70点
キテレツなのに引き込まれる、少年アイスホッケー映画

アイスホッケーを題材にしたスポーツ映画である本作は、原作および監督の陣内孝則らしさが良いほうに出た、個性的で楽しい一本となった。

都会でタップダンサーになる夢が破れた修平(森山未來)は、恋人(加藤ローサ)の待つ北海道にやってくる。早速プロポーズするも、彼女の父が許してくれない。必死に食い下がった結果、父親が所有する少年ホッケーチームを優勝させたらOKとの条件を得る。が、チームはいまだ未勝利の弱小で、修平はスケートさえすべれぬズブの素人だった。

乱暴もののフィギュア少女や、すぐに足を"滑らせて"負ける少年力士など、一芸に秀でた逸材(?)を次々スカウトしたり、まったくの畑違いぶりを逆手に取った奇策により、チームが生まれ変わる変化球中心の展開。よって、努力と根性で勝ち上がるスポ根の王道を期待する人には向かない。

70点
人類最後の一人になっちゃいました

何かの間違いで人類が滅び、地上最後の一人になってしまったらどうするか。『アイ・アム・レジェンド』は、そんな男の物語だ。

ガンを根絶する画期的な新薬が開発された。やがてその万能性から、人類を救う大発明ともてはやされる。それから数年後、無人化して荒廃するニューヨークの街で、一人の男(ウィル・スミス)と一匹の犬がサバイバルしていた。毎日AMラジオ全周波数で他の生存者に呼びかけているものの、いまだ誰からも返事はない。自分以外の人類は絶滅してしまったのだろうか。

朽ち果てていく大量の車の脇を、野生動物が走り去る。猟銃代わりの軍用自動小銃を片手に、それを狩る男。公園には彼の植えたトウモロコシ畑があり、家には保存食料が備蓄されている。そんなショッキングな暮らしぶりと、数年前、まだ繁栄していた大都会の様子が交互に写される。徐々に何がおきたのか、観客も理解していくという寸法だ。

70点
スリラーではなく、天然ギャグ映画

アクション映画の名手、故深作欣二の息子、健太監督は、真面目に作ってもカルトやギャグにしてしまう、ある種の天然監督だと私はずっと思っていた。とくに前作『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』は、記録的大コケではあったものの、バカ映画ギリギリのアクション映画としてなかなかの出来栄えであり、彼の"才能"を生かすにはやはりこの道だなと予感させた。この新作『XX エクスクロス 魔境伝説』は、同じ娯楽映画としてさらに良い出来で、その成長ぶりは嬉しい限り。

親友の愛子(鈴木亜美)に誘われ、ひなびた温泉地、阿鹿里村(あしかりむら)を訪れた女子大生のしより(松下奈緒)。彼氏の浮気で傷ついた心を癒すべくやってきたが、村人の様子はただただ不気味。しかも、部屋の押入れで拾った携帯の通話相手は、「早く逃げろ! 脚を切り落とされるぞ!」と不気味な警告を叫び続けるのだった。

のっけからエンジン全開。わけがわからぬ風習と信仰にとりつかれた不気味村人からの、ヒロインの逃亡劇が始まる。やがて親友と思っていた愛子に不審な点がみられたり、かと思いきや、突然愛子視点の物語へ急変したりと、数章立てのミステリホラーとして、この上なくハイテンポな一品。怪しげな謎が徐々に(といってもかなりの速度で)明らかになるが、先を読むのが困難なので最後まで楽しめる。話の全体像がなかなか見えてこない点も、余計に興味をそそられる。

70点
望まない妊娠、彼女の選択は……?

本作品はエイドリアン・シェリーが監督した、はじめての日本公開作品であると同時に、悲劇的な理由により最後のそれとなってしまった(後述)。

アメリカ南部の田舎町。小さなダイナーのウェイトレス、ジェンナ(ケリー・ラッセル)はパイ作りの名人。隣町のパイコンテストで優勝して、その賞金で人生を変えるのが夢だが、嫉妬深く乱暴なダメ亭主に自由を奪われていた。それでも長年少しずつ貯金をし、いよいよ町から逃げ出そうというとき、望まない妊娠が明らかになる。

ユーモアと女性の本音に満ちた、幸福感溢れるドラマだ。ヒロインのジェンナはしょぼくれた田舎町で、お互い何の精彩もない人生を歩んでいる同僚のウェイトレス二人と愚痴をこぼしあう日々。よくみれば美人だし、パイ作りの腕も相当なものだがそれらは彼女の人生に何のプラスももたらさず、徐々に中年に近づいている。おそらく多くの若い女性たちが恐れる「灰色の人生コース」を、ジェンナはまっしぐらに進んでいる。

70点
昭和しあわせ博物館・第二幕

日々進歩するVFX。多くの映画監督はこれを未来世界など、見たことがないものを描くために使おうと考える。やがて一部の人々は、実在した過去を映像化するためにこそ、役に立つ技術だと気づく。しかしこのテクノロジーの専門家である山崎貴監督は、さらに一歩進んで、「どうせならその映像を最大のウリにしよう」と考えた。

その狙いは前作の大ヒットという形で大当たりした。当然である。それこそが、過去を舞台にした映画が本来あるべき姿だからだ。映画でなければ決して出来ない、丁寧に作られた、あるいは集められた調度品。広い撮影所いっぱいに立てられたオープンセット。美術スタッフの職人芸が遺憾なく発揮されたそういうものが、かつては映画館に行く楽しみの一つだった。

ストーリーやキャラクターではなく、背景でお客さんをうならせる事ができるということ。多くの映画人が忘れつつあった、あるいはあきらめていた事を山崎監督は最新の映像技術によってやり遂げた。高く評価すべきと私は考えている。

70点
現実の女の子もこうなら楽なのに

ある日、流れ星が地上に落ちた。片思いの女の子にプレゼントすべく、流れ星のかけらを狙う主人公青年がそこにいくと、星は麗しきお姫様の姿に変わっていた。一方、悪の老魔女も、不老不死の効力をもつ彼女の心臓を虎視眈々と狙っていた。

壁に囲まれた村にすむ青年、その裂け目を守る番人、願った場所にテレポートできる蝋燭など、各種設定や細かいアイテムに魅力があり、かつストーリーに生かされているので世界観がしっかりと感じられる。空を飛ぶ海賊船が着水する場面の異様な力の入れ方など、どこを重視すれば舞台が生き生きとするか、この作り手はよくわかっているようだ。

また、映画ファンにとってはベテランスターのいじり度合いが笑えるだろう。たとえば海賊船長のロバート・デ・ニーロは、本当はやさしいくせに部下の前では恐怖の船長を演じているという設定。自室に一人でいるときの本音バージョンとのあまりの落差は、このハリウッド随一の演技派がやるとじつにキョーレツ。デニーロアプローチの新たなる伝説として、映画史に記録されることになるだろう。

70点
賛否両論の結末とはいうが……。

婚約者と公園を散歩中、理不尽な暴力ですべてを失ったラジオパーソナリティーのヒロイン。後日、護身用に拳銃を入手したもの

の、それで実際に悪党を殺めた瞬間、彼女は人として超えてはならない一線を踏み越えた事に気づく。

犯罪者とその暴力によりひどい目にあった女が、犯罪者から銃を得て、その圧倒的

70点
大人気原作ものらしく、力の入った出来のティーン向けアクション

この映画の対象年齢は比較的はっきりしている。スパイとして大活躍する主人公は14歳の設定だから、まずはそれより下の世代の男の子、そしてその父親。ところが、そのどちらにも当てはまらない私が見てなかなか面白いのだからあなどれない。世界的なベストセラーの映画化ということで、相当力を入れて作ったことが良くわかる本格的アクションスパイムービーだ。

平凡に暮らしていた少年アレックス(アレックス・ペティファー)は、叔父(ユアン・マクレガー)の死後まもなくイギリス情報局秘密情報部(俗に言うMI6)からスカウトされる。実は叔父は凄腕の諜報員で、スキューバダイビングや射撃、登山など趣味の研鑽を通してアレックスを幼いころから一流のスパイにすべく育てていたのだった。彼は最初の作戦で、MI6がかねてからマークしているIT実業家(ミッキー・ローク)の元へ、PC雑誌のコンテスト優勝者を装って近づく事になった。

知らないうちにスパイとしての能力を、それも超一流のそれを身に着けていたアレックス。子供が活躍するストーリーは数あれど、こういう形で即戦力ぶりに説得力をあたえた点が絶妙。一緒に見に行ったお父さんたちは、次の日から息子にいろいろ習い事をさせたくなるだろう。心躍る導入部である。

70点
このくらいで十分と思わせる良質なミステリ映画

最近のウディ・アレン映画は、面白いか否かより、ほとんど好きか嫌いかで評されるようなところがあったが、『タロットカード殺人事件』は久々に"面白い"一本であった。

休暇でロンドンに来ているアメリカ人の女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、たまたま鑑賞した手品ショーで老マジシャンのシド(ウディ・アレン)から舞台上に呼ばれ、人体消失マジックのモデルにさせられる。巨大な箱に入れられたサンドラは、しかしそこでなぜか先日急死した有名記者の幽霊と遭遇、いま巷を騒がせている"タロットカード連続殺人事件"の犯人の名を告げられる。その後、なりゆきでシドと独自の捜査を始めることになった彼女は、幽霊が告げた犯人である若き貴族ピーター(ヒュー・ジャックマン)に、高貴な身分を装って近づくが……。

主要な登場人物はたった3人というシンプルさ。大それたどんでん返しはないが、得意のユダヤ人ネタをからめたユーモア溢れる大量の会話、途切れぬスリル、そしてひねりのあるオチと、よくまとまった作品だ。時折出てくる幽霊がヒントをくれるなど遊び心も満載。ミステリは大人の遊戯だということを、この監督が心底理解していることがよくわかり、見ていて気持ちがいい。

70点
シナリオは平凡だが、演出には光るものあり

劇場用アニメーションにおける時代劇アクションは、まだまだ開拓の余地があるジャンルの一つだ。少なくとも、ファンタジーやロボット、近未来ものに比べたら、ただそれだけで新鮮さを感じさせるだけの鮮度がある。『ストレンヂア -無皇刃譚-』を制作したアニメ会社のボンズは、そのあたりを重々理解したうえで、自分たちの作風をしっかりとこの個性的な映画に反映させた。

ときは戦乱の世。中国大陸から一人の孤児、仔太郎(声:知念侑李)がある禅僧に連れられ日本にやってきた。同時に、仔太郎に隠されたある秘密を求め、明国の軍団も追ってきた。彼らと利害の一致を見た赤池城領主による連合軍に追われる途中、仔太郎はなぜか刀を抜かない凄腕の剣士(声:長瀬智也)と出会い、彼を用心棒に雇うのだった。

無理に大風呂敷を広げぬ堅実な脚本のおかげで、荒唐無稽な要素を組み込みながらもぎりぎりのリアリティを維持することに成功した。命の価値が安かった時代を舞台とし、様式美的なチャンバラではない、血しぶき吹き出る実践的な戦闘シーンを組み込むことで、子供であろうと主人公であろうといつ死ぬかわからぬ緊迫感を生み出している。

70点
タランティーノ版とセットで見比べるのも一興

9月1日から公開されている『デス・プルーフ in グラインドハウス』(クエンティン・タランティーノ監督)に続く、「往年のB級アクション映画の復刻版」第二弾。本来この2本は同時上映するために作られたが、日本ではディレクターズカットとして長めに再編集され、おのおの単独で上映されることになった。こちらの監督はタランティーノの盟友、ロバート・ロドリゲス。

舞台はテキサスの田舎町。陸軍部隊長(ブルース・ウィリス)と怪しげな科学者による生物兵器の取引中、トラブルからガスが空気中に放出されてしまう。それを吸った住民らは謎のウィルスに感染しゾンビ化。街は阿鼻叫喚の地獄と化す。

あらすじからわかるとおり、ゾンビ集団からのサバイバルを基軸にしたアクションホラーだ。上映前には架空のアクション映画の予告編が流されたり、フィルムの傷を再現するなど例によって「チープな地元の映画館」風味に味付けされている。とくにこのロドリゲス版で笑えるのは、ヒロインとのベッドシーンにおけるある演出だろう。普段は無表情なマスコミ試写室でも、ここはさすがに笑いが出た。

70点
ヒーローものとしてのツボを押さえつつ、無理に背伸びせずまとめた

スパイダーマンやX-メンをはじめとするマーベル社のアメコミヒーローの中でも最古参であるファンタスティックフォーは、本国での人気がきわめて高い。

その期待の実写映画であった2年前の前作(『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』)は、しかし日本ではろくに知名度を上げる事も無く終わった。レイザーラモンHGによる、「フォー」に引っ掛けたプロモーションや、エンド曲にオレンジレンジの歌を使ってみたりなど、明らかに方向性を間違った話題づくりが原因のひとつであろう。だいたい、何もしらない人には4作目と思われてしまいかねない題名からしてまずい。

そんな宣伝マン泣かせのシリーズだが、そんなわけでこれがパート2となる。

70点
怖さから面白さへチェンジ

全身を金粉メイクした芸人が"皮膚呼吸"できずに死んだとか、中国の見世物小屋で両手両足を切断されたダルマ女性が日本語で助けを求めてきたとか、殺人場面を収録したスナッフビデオが高額で取引されているといった数々の都市伝説。そのほとんどは根拠のない嘘っぱちだが、「もしかしたらあるかもしれない」シンプルなリアリティが、我々の興味をひきつけてやまない。

そんな不気味ネタのひとつ、「金持ちの拷問同好会に、生贄となる若者を提供するホステル経営者」を、荒唐無稽さを抑えてホラームービーにしたイーライ・ロス監督『ホステル』の続編がこれ。万が一、都市伝説を信じてしまう純情な方が見たら、前作同様二度と海外の安宿に泊まることはできなくなるだろう。

アメリカ人の留学生少女3人組が、良質な天然温泉があると聞いてスロバキアのホステルにやってきた。だがそこは秘密拷問クラブと提携(?)する恐怖の館。彼女らは自分の知らぬ間に世界中のセレブ会員相手のオークションにかけられ、いつのまにか誰かに「自由なやり方で拷問して殺してよい」権利を買われているのだった。

70点
70年代B級アクション映画のレプリカ

米国と、日本でも先月六本木ヒルズで公開されたイベント上映『グラインドハウス』は、B級映画マニアとしてのクエンティン・タランティーノ(およびその仲間たち)らしい、遊び心に富んだ企画だった。

"グラインドハウス"とは、アクションやバイオレンス、セックスの要素を盛り込んだ安っぽいB級映画を2〜3本立てで短期間公開する興行形態の映画館のこと。今ではほぼ全滅したが、日本にもかつては町にひとつくらいそんな映画館があった。ゴミひとつ落ちていない、総入れ替え制の綺麗なシネコン世代には想像できないかも知れないが、やたらと映画に詳しいオジサンたちの中には、こういう所で映画に親しんだ人が多い。

タランティーノももちろんその一人で、彼はあの独特のいかがわしさ、面白さを若い映画ファンにも知ってもらおうとこれを企画した。盟友ロバート・ロドリゲスにもその魅力を語って聞かせ、真っ先に引き込んだという。そして二人で長編を一本ずつ持ち寄り、間に架空の予告編(これも名だたる個性派監督が担当)を4本挟み、2本立てとして公開した。

70点
日本アニメの魅力がつまったオムニバス

短編を集めたオムニバスという形式は、全部が好みでなくとも楽しめるという点で、飽きっぽい人に向くと私は思っている。たとえ興味がなくとも15分待てば次が始まるのだ。120分間苦痛が続く可能性がある長編作品を見るよりは、圧倒的にリスクが少ない。

『Genius Party ジーニアス・パーティ』は、適度に前衛的・実験的な作品あり、万人ウケしそうな娯楽作品ありと、幅広いジャンルを誇るオムニバスアニメーション作品。真っ先に感じるのは、これだけいろいろなジャンルを平然と作ってのける日本アニメ界の層の厚さと、これまたそれを平然と受け入れるであろう日本のアニメファンの懐の深さである。

ジブリ作品のようなファミリーアニメから、それこそロリータ趣味のエロアニメまで、すべて一人でたしなむファンすらこの国では珍しくない。実写映画の世界では、なかなかそういう人はいない。だが、そんなアニメファンたちの存在によって、日本のアニメ文化は磨かれ、今では世界に誇るコンテンツに育った。彼らの情熱とスケベ心に、私は最大限の敬意を表する。

70点
加えたものはすばらしく、削ったものは致命的

乙一というミステリ作家の小説は、文章や構成はライトノベル的な子供向けの印象だが、その発想はなかなか鋭く、必死に読者を楽しませようというエンターテナー精神も旺盛なので個人的には好感度が高い。この映画の同名原作「きみにしか聞こえない」は彼の代表的短編のひとつだが、まさに上記の特徴が如実に現れた見所ある一篇だ。

リョウ(成海璃子)は学校で孤立しがちな女子高生。友達がいないからクラスでただひとり、ケータイを持っていない。ある日彼女は公園でおもちゃの携帯電話を拾うが、驚くべきことにそこに着信がはいる。恐る恐る出た電話の相手はリサイクルショップ店員を名乗るシンヤ(小出恵介)。やがて念じあうだけで通話できることがわかった二人は、四六時中の会話を通じて心を開きあっていく。

いまどきの高校生にとって、クラスでただひとり携帯を持っていないということがどんな意味を持つか。非常に現代的で、鋭いところをついた設定だと原作を読んだとき私は感じた。ケータイがほしいと願っているヒロインは、つまりは友達を渇望しているのだ。彼女の気持ちに痛々しい共感を覚える若い人は少なくあるまい。

70点
99%の人にとっては0点

なぜこの点数なんだと思うかもしれないが、そこだけ見て判断しないでほしい。これは「ビートたけしのやることならすべて受け入れられる」という特殊な人がみてギリギリこのくらいだろうという点数であり、それ以外の人にとってこの映画はおそらく0点である。

主人公の映画監督キタノ(ビートたけし)は、得意のギャング映画を「二度と撮らない」と宣言してしまった。そこで、これまで撮ったことのない小津安二郎風のドラマや流行の昭和ノスタルジーもの、ホラーやらラブストーリーに挑戦するがどれも性に合わない。そんな彼がたどりついた詐欺師とその娘を主人公にしたストーリーは、しかしそのどれよりも無茶苦茶なものだった。

『ALWAYS』風の昭和懐古ものを撮ってみたら、治安の悪い下町でとてつもなく貧乏なガキどもが暴れまくる、夢のかけらもないどころかあまりにリアルすぎてシャレにならない映画になった。北野監督が典型的な人気ジャンルを手がけると、こんな風になるよ的なショートムービーの連続で、前半は大いに笑わせる。冗談とはいえそれぞれの作品は豪華なキャストと本格的な撮影でクオリティが高く、大いに見ごたえがある。

70点
聖書&オカルトものとしては上質な部類

日本はキリスト教の国ではないので、聖書をネタにしたような映画はあまり受けない。クリスチャンなら誰でもわかるような「暗黙の事実」が私たちにはよくわからないし、そもそも興味が無いからだ。ましてそれがただでさえ人気の薄いオカルトジャンルの恐怖映画だとしたら、宣伝マン泣かせもいいところ、だ。

そんなわけで『リーピング』は、『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)の女ボクサー役でアカデミー主演女優賞に輝いたのも記憶に新しいヒラリー・スワンクの主演作でありながら、興行的には苦戦が予想される一本。

かつて聖職者だったキャサリン(ヒラリー・スワンク)は、ある事件を契機に信仰を捨てた。今では、涙を流すキリスト像や病気を治す棺など世界各地の「奇跡」を科学で解き明かしてしまう、無神論者としてその名をとどろかせていた。ところが今回の調査では、旧約聖書の十の災い(出エジプト記)をなぞる超常現象が連続。現代科学という絶対的価値観が揺らぎつつある彼女とそのチームは、村人が災いの元と迫害する森の中の少女(アンナソフィア・ロブ)に会いに行くが……。

70点
単なるドッキリカメラにとどまらない社会派

本作は、アメリカで爆発的な話題を呼んだ映画だ。しかしその特殊な性質から、日本では公開すらしないのではないかと危ぶまれた一本でもある。お国柄の違いといってしまえばそれまでだが、そのくらい"アメリカ人向け"に特化して作られた作品ということだ。

『ボラット』は、ジャンルで言えばモキュメンタリーということになる。モキュメンタリーとは、ドキュメンタリー"風"に撮られた作品のこと。事実を追いかけるドキュメンタリーと違い、あくまで"風"。平たく言えばニセドキュメンタリーということだ。

中でもこの作品の場合は、一言でいうとドッキリカメラ。「カザフスタンからやってきたテレビリポーター」という設定の主人公ボラットが、「文化交流」と称してアメリカ中を旅しながら一般人にイタズラを仕掛けて回るという、大迷惑なお話だ。

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