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2121件中 551~600件 を表示しています。
70点
≪ラブコメ&パニック映画≫

韓国のいいところは、遠慮のないところである。

などというと、前田は韓国嫌いだとかまたあらぬ誤解を受けそうだがとんでもない。整形だろうが豊胸だろうが脱毛だろうが、男子にとって喜ばしい努力をしてくれる女子を私は高く評価する。よもや嫌いになろうはずがない。

いや、そもそも今回の記事に女性うんぬんは関係ない。のっけから話がずれてややこしいので元に戻すが、『TSUNAMI-ツナミ-』は冒頭に書いた「誰にも遠慮せず好きなものを作る」韓国人気質が、良いほうに影響した良作である。

70点
≪自分の知らない妻の内面≫

新品のパソコンを購入するのはいいものだ。トラブルも少なく、末永く付き合っていける。本来、それ以上の楽しみを知る必要はないのだが、何かの拍子に中古パソコンの魅力に取り付かれたら大変である。

中身のパーツに意外ないいものが使われていたときの喜び。ときにはハードディスクの中にお宝を発見することもあるだろう。もしこれでまだ本体が比較的新しく、性能もよく、HDDだけ徹底的に使い込んでいるような固体に出会ったらたまらない。

気に入ったパソコンが、過去誰に、どのように使われてきたのか。その歴史を味わうだけで好奇心と嫉妬心は際限なく刺激される。こうなるともう、新品のパソコンなど味気なくて買う気は起きなくなる。

70点
≪ソ連に圧力をかけつぶされた、貴重な樺太史実映画≫

すでに公開されている反捕鯨お笑いムービー「ザ・コーヴ」だが、いまだにとんでもない内部情報が次々と入ってくる。ウェブでの公開は残念ながら遠慮するが、よくこんなものがアカデミー賞を取れたものだと呆れる話ばかりである。

それはともかく、あの映画が上映自粛されて上映館に空きができたため、『樺太1945年夏 氷雪の門』はモーニングショーからロードショーへ格上げ公開となった。

『樺太1945年夏 氷雪の門』は74年の製作当時、問答無用の武闘派超大国だったソ連の政府から直々に政治的圧力をかけられ、公開を止められたいわくつきの作品。うっとうしい抗議団体の相手をしてまで上映する価値はない(儲からない)と判断され取りやめられたイルカ映画とは違い、本当の意味で「表現の自由」を奪われた悲劇の映画作品である。

70点
≪こんな会社があったら嫌だ≫

英国発の傑作サスペンス『エグザム』は、しかし悲しいかな日本ではレイトショー公開である。内容は、非人道的な課題を押し付けるトンデモ企業の採用試験の様子を描いたもので、時節がらシャレにならないリアルさだ。やはりこういう映画こそ、大人が楽しむのにふさわしい。

ある企業の最終採用試験に、8人の男女が残った。彼らが集められたのは窓ひとつない殺風景な部屋。ひとつしかない出入り口には武装したガードマンが立っており、試験監督は奇妙な3つのルールを口頭で伝えると、さっさと部屋を出ていってしまった。怪訝な表情で各自が問題用紙を見ると、それはなんと白紙。大混乱に陥った8人は、先ほど聞いた「3つのルール」に抵触しない「互いに協力し合う」提案を誰からともなく行う。彼らは互いを完全に信用したわけではなかったが、このおかしな就職試験の謎解きに、とりあえずは共同して挑むのだった。

汚れたバスルームで拘束された状態で目覚める「SAW」、看守と囚人役を設定した社会実験「es [エス]」など、異常なシチュエーションで繰り広げられるスリラーには秀作が目立つ。『エグザム』の舞台はそうしたライバル作の中でもかなり限定的で、登場人物は両手の指で足りる数。目だったスターはおらず、撮影場所は試験部屋だけ。いかしたアイデアだけで勝負する、低予算映画の鑑のような作品である。

70点
≪いかにも今どきのアメリカ向き映画≫

人工臓器の回収人という、素っ頓狂な設定が楽しい『レポゼッション・メン』は、いかにもいまどきのアメリカ人向きブラックジョークに満ちたSF映画だ。

近未来、人々は優れたテクノロジーによる人工臓器を取り替えていくことで、かつてない寿命を生きている。そのトップメーカーのユニオン社は、しかしあまり表ざたにしたくない"回収人"を多数雇っていた。高額な人工臓器の長期ローン滞納者から、強引に自社製品を回収する汚れ仕事を担当する人員だ。ベテラン回収人で腕利きのレミー(ジュード・ロウ)は相棒のジェイク(フォレスト・ウィッテカー)と手際よく回収業務を行っていたが、あるとき事故で自らが人工臓器を埋め込まれてしまう。

ミイラ取りがミイラになるお話。回収人が回収される側になって、気の毒な貧乏人の気持ちを味わう教訓話といってもいい。斬新な世界観、中国語があふれる近未来のアメリカの風景、容赦ない回収から、必死に逃げ回るハードアクションなど見所はたくさん。

70点
≪マニア受けが悪そうな分、一般人には普通に楽しい≫

多くのホラーヒーローが活躍した80年代。ここ数年はあたかもブームのように、「ハロウィン」のブギーマンや「13日の金曜日」のジェイソンが、リメイクによりカムバックを果たした。そしていよいよ『エルム街の悪夢』のフレディが、満を持して登場する。

友人の一人が信じられない死に方をしたナンシー(ルーニー・マーラ)らエルム街の若者たちは、自分たちが被害者と同じ夢を見ていることに気づく。夢に登場するのは派手なストライプのセーターを着た男(ジャッキー・アール・ヘイリー)。この夢の中の不気味な男が、なんらかの鍵を握っているのだろうか。

オリジナルから時がたっているため、最も重要なフレディ・クルーガー役が御大ロバート・イングランドからジャッキー・アール・ヘイリーへと変更された。ジャッキー・アール・ヘイリーは、「がんばれ!ベアーズ」一連の作品で、強打者の不良少年の役をやっていた元子役。最近は「ウォッチメン」のロールシャッハ役などで再ブレイクを果たしている。苦労人だけに、キャリア最大といってもいい大役に対する意気込みは相当に強い。

70点
≪凶悪度はダウンしたが、相変わらずぶっとんだ映画≫

「東京はセックスに取り付かれた街だから(ロケ地に)選んだ」と、本作の監督ギャスパー・ノエは言った。このフランス映画界の鬼才は、よく日本を理解していらっしゃる。確かにある意味、日本人の性に対するこだわりはハンパではない。セックスと輪廻をテーマにした『エンター・ザ・ボイド』の舞台として、これ以上ふさわしい場所はないだろう。

新宿、歌舞伎町。ドラッグディーラーとして細々と生きているオスカー(ナサニエル・ブラウン)は、愛する妹リンダ(パス・デ・ラ・ウエルタ)を日本に呼びよせ、ようやく念願の二人暮らしを始めた。ところがあるとき、店に踏み込んできた警官に誤射され、あっけなく死んでしまう。

映画はすべてこのオスカー(とその魂)の主観映像で、高度なCG・編集技術により一切のカットを感じさせない。つまり143分間ワンカット&主観映像という、とてつもない変化球映画となっている。さすが前衛作家の名をほしいままにするノエ監督である。

70点
国内専用ミュージカル

『矢島美容室 THE MOVIE 〜夢をつかまネバダ〜』を見ると、身の程を知るという言葉がいかに大事かがよくわかる。誰がどう見てもキワモノなこの企画を、本作のスタッフたちは予算人員等限られたリソースを自らの得意分野に集中させる事で、それなりに見られる形にした。自分たちにできる事とできない事を冷静に判断できたからこその成功例である。いかにもテレビ的な発想だが、それが良い方向に働いたといえる。

アメリカ、ネバダ州で美容室を営み暮らす母マーガレット(本人、以下同)、長女ナオミ、次女ストロベリー。彼女たちの平凡な暮らしを、あるとき父親の家出という大事件が襲う。ストロベリーは学校でライバルのラズベリー(黒木メイサ)にソフトボール対決を挑まれ、ナオミはミスコンテスト本選に挑む最中の出来事であった。

木梨憲武や石橋貴明の女装顔のドアップを大スクリーンで見たときには、おそらく金を払ってなんでこんなモノを見なくてはならないのだろうと切ない気持ちになること請け合いだが、それを補って余りある楽しさが本作にはある。

70点
SFの体裁を借りて労働問題を描く

同週公開『第9地区』が社会派SFアクションなら、『月に囚われた男』はそれ以上に社会風刺の効いたSFドラマだ。こうした優れたSFが、同じ週に二本も見られると言うのはうれしい限り。私としても、ぜひ両方見てほしいと思う。

舞台は近未来、月面基地に3年契約で派遣されたサム(サム・ロックウェル)だが、契約満了までいよいよ2週間となった。ところがそんなとき、彼は月面車で事故をおこしてしまう。なんとか生き延びるサムだが、その後彼はありえないものを見るハメになる。

序盤、「3年間、月面に単身赴任する男」の事情というか普段の生活のようなものが描かれるが、この時点ですに終盤への伏線が着々と張られている。原作はなく、映画オリジナル脚本ということで、テーマも現代的。低予算だが監督はPVの経験があるので特撮には強い。面白くなりそうな条件がそろっている。

70点
失業者ガンバレのメッセージを素直に受け取れないのはなぜか

どんな国でも多かれ少なかれ、映画業界というのはプロパガンダの役割を担いがちだ。とりわけアメリカはその傾向が強く、私はハリウッドをアメリカ5番目の軍隊(沿岸警備隊を入れるなら6番目?)と呼んでいる。むろん、そこで働く人たちにそんな自覚はないだろうが、そのように利用されているという意味での話だ。そして、そう称されるだけの価値がある業界ということでもある。実際は日本のように、内外どちらに対してもそんな影響力などない国がほとんどなのだから。

訴訟を恐れる企業に代わり、リストラ対象者にくびを言い渡す仕事をしているライアン(ジョージ・クルーニー)。この不況で彼の会社は大忙しで、ライアン自身も年に322日間も出張している。そんな彼の趣味……というより人生の目的はマイレージポイントを貯めること。そして、ついに最終目標とするポイント寸前で、新入社員(アナ・ケンドリック)によって思わぬ横槍が入る。

全米中を飛び回って、行く先々で労働者をクビにする男の物語。画面には墓標のように次々と都市名が現れ、不況に逃げ場なしの印象を強く持たざるを得ない。リストラシーンの多さでは類を見ない失業映画、世界でもっともイヤなロードムービーである。

70点
ライト感覚の古風な犯罪ドラマだが、決して古臭くはない

毎週同じ場所でジャズを演奏し、毎年ほとんど同じフォーマットで映画を作る。そんな神経症的な映画監督ウディ・アレンの新作は、監督本人が「悲劇」と呼ぶ犯罪ドラマ。

舞台はロンドン。労働者階級として、しがない父の食堂を手伝う兄(ユアン・マクレガー)と、自動車修理工場で働く弟(コリン・ファレル)は、あるとき思い切って中古のヨットを購入する。ヨットとともに運気も上昇する二人だったが、その先に思わぬ落とし穴が待ち受けていた。

ウディ・アレン自身は出演していないし、確かに悲劇といえばそうなのだが、見ようによっては喜劇そのもの。どちらも表裏一体ということか。

70点
心を傷つけるおそれのある犯罪映画

少女を監禁して筆舌に尽くせぬ虐待をした事件といえば、日本人なら誰でもあの悲劇を思い出すことだろう。だが、世界に冠たる犯罪大国アメリカにも当然のこと、類似の事件がないはずはなく、シルヴィア・ライケンス事件という65年におきた痛ましいケースが有名である。かつてエレン・ペイジ主演で映画化もされているが、『隣の家の少女』はこの実在の事件を大きくアレンジした犯罪ドラマだ。

58年のアメリカ。自然豊かな郊外で暮らす12歳の少年デヴィッド(ダニエル・マンチ)の家の隣に、年上の少女メグ(ブライス・オーファース)とその美しい妹が越してくる。二人はひどい事故で両親をなくし、妹は脚に障害を負ってしまっていた。デヴィッドは姉のメグに惹かれ急速に仲良くなるが、隣家の主、ルース夫人(ブランチ・ベイカー)はなぜか姉妹に厳しくあたるのだった。

ショッキングな描写が多数あるということで話題になっているが、現実の事件とはいろいろな部分で異なっている。犯人の女が虐待にいたった動機がまったく異なるし、姉妹が越してくる理由、妹の障害の理由なども違う。この変更の理由が、今の時代に映画化する必然性としてリンクしていればなお良かったと思うが、あまりそうした印象は受けない。

70点
アカデミー賞受賞も当然の、いまアメリカに一番必要な映画

アカデミー賞はアメリカ映画界の業界人の政治的思惑で決まるものであり、作品の出来は二の次ですよと私は常日頃から言っているが、それを陰謀論だのユダヤのなんとかだのと批判する人がいる。

だが誰かの陰謀と政治的決定とは似てまったく異なるもので、そもそも多数の会員の投票で決めるアカデミー賞に、陰謀だの八百長の余地はない。ただ会員の構成を見れば、そこに「暗黙の了解」「みんな空気読めよ」的なものがあるのは当然の事だよと言っている。

そんなわけで、別に私は誰かの陰謀で『アバター』が受賞する可能性はゼロだと(受賞式前日のTBSラジオで)断言したわけではなく、ビジネス的視点から論理的に予測しただけだ。その根拠は2010年3月11日、東池袋で行ったトークライブで詳しく話したが、簡単に言えば『アバター』が作品賞など重要な賞を受賞してしまうと、アカデミー賞にとっての大事なスポンサーが大ダメージを受けるという事だ。

70点
仙台ロケは迫力満点

『ゴールデンスランバー』は、首相暗殺の容疑をかけられたいち市民の逃亡劇を描いたアクションである。この新首相は、ケネディよろしくオープンカーでパレードしているところを狙われる。

ところで普通の人々にはまったくうかがい知れぬ話と思うが、いま民主党政権はいわゆる外国人地方選挙権を推し進めようとしていることから保守の人々に死ぬほど恨まれており、「こうなったらテロしかない」などと物騒な声すら聞こえてくるほど。映画の総理大臣も政権交代したばかりで、なんとなくしゃれにならない符合である。

ちなみに件の外国人参政権であるが、そんなものを通しても小沢幹事長の悲願である参院選勝利にはほとんど直接的集票効果がない以上、どこかで取り下げるに決まっている。地検特捜部もいい具合に踊ってくれており、小沢氏としても取り下げる機会到来ということで、内心ほくそ笑んでいるのではなかろうか。

70点
幼女と労働者に向けたアニメーション

案外盲点であるが、幼児向けの映画というものは、幼児だけが見るものではない。

幼稚園児がクラスメートと手をつないで映画館までやってくることは(たまにはあるかも知れないが)まず無いわけで、通常は親御さんが一緒にやってくる。そこで目ざとい業界人は考える。子供が見たがる映画を作れば、親の人数分よけいに儲かる、と。ここまではよくある話。

だが、商売よりもいい作品を作りたいと考えるクリエイターならば、きっとこう考えるはずだ。子供を楽しませながら、(同時に必ず見に来るであろう)親の世代にユニークなメッセージを伝える事はできないか、と。

70点
意外な社会派ものであることに注目してほしい

アメリカ最大のプロレス団体WWEは、かなり前から映画制作にも進出している。そこでは自団体の選手を積極的に起用しているわけだが、みな第二のザ・ロックを目指せとがんばっている。

最高の肉体と、それなりの演技力を持つ大男たちを大勢擁するプロレス団体が作るのだから、当然アクション映画はお手の物。プロレスのバトルロイヤル(大勢をリングで乱戦させ、最後に勝ち残った選手が優勝)そのもののプロットである、『監獄島』のような映画ならなおさらであろう。

絶海の孤島に世界中から極悪死刑囚10人が集められた。その一人コンラッド(スティーヴ・オースティン)は、他の連中と同じように足首に爆弾を巻かれた上で、ルールの説明を受ける。それは、時間制限の元に殺し合い、一人だけ生き残った場合は恩赦と大金が得られるというものだ。主催者はそれをネットで生中継し、莫大な利益をあげようとしているらしい。

70点
猛烈な感情を感じる、静かだが激しい映画

ある程度の数をみると、映画にはざっと二種類あることがわかる。商業的成功を主目的にしたものと、儲けを二の次にしても(映画作家たちが)作りたくて作る作品である。むろん、映画づくりはバカみたいに金がかかるから、他人の金を集めて作る限り、完全な意味での好き勝手が出来るはずはないが、それでも後者の方が、(たとえ予算規模は少なくとも)より情念のこもった作品になるのは当然である。

そんな中でも「カティンの森」は、特別に監督の情念に溢れた作品。なぜならこの戦争映画は第二次大戦下のポーランドで起きた虐殺事件(カチン事件)を描いたもので、アンジェイ・ワイダ監督の父親は、その虐殺の被害者の一人だからだ。

1939年のポーランド。この時代この国は、ナチスドイツとソ連により、分割占領されている。ドイツ軍から逃げるように東進するアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)とその娘ニカは、夫のアンジェイ大尉(アルトゥル・ジミイェフスキ)と野戦病院で再会する。共に逃げようという妻子に、アンジェイは仲間を見捨てられぬと語り、ソ連軍によって東へ移送されてゆく。

70点
説明できない良さ

『マイマイ新子と千年の魔法』は、たぶん興行的には相当厳しいのではないかと心配している。

なぜならこのアニメーション作品は、その良さを理解してくれるであろう対象年齢層が非常に高いためだ。はたしてそうした人々に、適切なプロモーションを行っていけるか。宣伝会社の手腕が問われるところだ。

昭和30年代、山口県防府市。空想好きな小学三年生の少女・新子(声:福田麻由子)は、東京からの転校生でこの土地になじめない貴伊子(声:水沢奈子)と仲良くなる。やがて新子の友達である男の子たちも加え、豊かな自然の中で遊ぶうち、貴伊子も本来の明るさを取り戻していく。

70点
高校生に授業で見せるべき映画

この秀逸なタイトルは、原作となった2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板におけるスレッドの名前から取ったという。とくに「ブラック会社」という、最近よく聞く用語の名づけが上手いと思う。

若いころに勤務した会社が倒産したりして、結果として多数の職場を転々とする事になった私も、「ブラック会社」については身をもってよく知っている。当時のつらい経験のおかげで、求人広告を見ればその会社が黒か白かだいたい判別できる能力を得たが、現代はそんな苦労をせずともインターネットのおかげで若い人は「ブラック企業」を避ける事が出来る。

「ブラック企業・会社」がいかに労働者の人権を踏みにじり、人間の尊厳を破壊するか。それを考えれば、彼らの情報が広まるのは大変良いことであろう。

70点
中国人とイラン人とロシア人がアメリカで

『千年の祈り』は、アメリカの中で、中国人とイラン人が仲良くするというお話。いうまでもなく、前者は不況の米国がいまもっとも頼りにする経済大国。一方、後者のイランは軍産複合体による次期大規模公共事業の現場候補の筆頭である。

どちらも完全なる友好国とは言い難いが、アメリカにとって不可欠なパートナーであるわけで、そんな構図を持つ本作に私は強く興味を持った。

アメリカで離婚したばかりの娘(フェイ・ユー)を心配して、12年ぶりに北京から父親(ヘンリー・オー)がたずねてきた。だがアメリカ生活にすっかりなじみ、中華なべさえ持たぬ娘はもはや、父親とまったく心を通わすことはない。そんな状況を嘆きつつも、父親は日々散歩にでかけ、娘が暮らすこの国を知ろうとする。やがて彼は、隣人のイラン人女性(ヴィダ・ガレマニ)と知り合い、ほとんど通じぬ英語で交流を始めるが……。

70点
3時間22分、途中休憩10分の大長編

『沈まぬ太陽』は、山崎豊子の長編小説の映画化。この原作は彼女の作品の中でも「映像化されていなかった最後の傑作」という位置づけらしい。これまでなぜ映画化、ましてテレビドラマ化されなかったのか。様々な理由があるだろうが、その一つは内容が猛烈なJAL批判にならざるを得ない、という点と無縁ではないだろう。

ナショナルフラッグキャリア「国民航空」の労組委員長・恩地(渡辺謙)は、副委員長の行天(三浦友和)とともに労使交渉を勝ち抜き、労働者の待遇改善を勝ち取った。だが、決して妥協しない恩地には厳しい懲罰人事が待っていた。一方行天は経営陣と関係改善し、出世のメインストリートを登り続けていく。そして、長きにわたる僻地勤務の末に恩地に与えられた任務は、御巣鷹山に墜落したジャンボ機被害者遺族の世話係という過酷なものだった。

『沈まぬ太陽』どころか、JAL本体が沈みかけている今日この頃だが、もちろん本作はすべてフィクション。パンフレットにもやたらと目立つ文字で強調されているが、もちろんそんなものは建前に過ぎない。戦後、日本航空の内部で何が起きていたか、航空史上最悪の墜落事故の裏に何があったのか。スタッフ、キャストが一丸となってその謎に挑む本格社会派作品である。

70点
ラジオ好きのための感動群像ドラマ

ラジオファンにとって、パーソナリティーとは憧れの存在。なまじ声しか聞こえないから、妄想いや想像によっていくらでも膨らませることができる。一家団欒でラジオを囲んで食事する人などいないように、このメディアは出演者と一対一で向き合うような、パーソナル感が最大の魅力である。パーソナリティーとの距離感は、テレビとは比較にならないほどに近い。

父親の反対を押し切ってパーソナリティーになった久保田真生(常盤貴子)は、和解できぬまま死別したことが心の傷となっている。彼女はあるとき「父と祖父が長年喧嘩して険悪だ」との番組宛の手紙に目を留める。送ってきたのは函館の男子高校生(林遣都)。自身の境遇に重ね、助言の言葉が見つからなかった真生は、思い切って少年をたずねていく。

常盤貴子のように美人で美乳のパーソナリティーが突然たずねてくるとは、まさにラジオファンの願望かなったりである。そこで彼女は、一家の複雑きわまりない確執をほどこうと身を投じ、一騒動起こすことになる。

70点
ノーテンキ世紀末アクション

『ドゥームズデイ』は、モヒカン刈りに肩パットをつけてヒャッハー! の世界をあますところなく映像化した痛快アクション劇である。

ぷんぷんとB級カルトのにおいがするが、製作費は堂々の30億円クラス。ニール・マーシャルという監督は「ディセント」(05年)だの「ドッグ・ソルジャー」(02年)といった、微妙なB級C級娯楽映画が得意な人で、本来1000万円も与えればそれで十分な映画を作る人物。

そんな男に30億円も与えてしまったからさあ大変。バイクの前に妙にリアルなドクロをつけるわ、ハイテク軍隊の最新装甲車をヒャッハー!な男たちがひっくりかえすわ、バカバカしい事ばかりにエネルギーとお金をつぎ込んだ、強烈な一本が誕生した。

70点
男性こそ見るべき、現代の西部劇

「決断の3時10分」(57年)を07年にリメイクした本作は、好評ではあったが公開がかなり遅れた。西部劇の新作じたいほとんど見られない昨今、日本で劇場公開されたことだけでも御の字といったところか。西部劇で映画の楽しさを知った身としては、少々寂しい気もする。

南北戦争で脚を負傷し、いまだ不自由なダン(クリスチャン・ベイル)。そのせいで牧場経営もうまくいかず、生活は苦しくなるばかり。そんなある日、ダンは、有名な強盗団のリーダー、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が捕まる場に出くわす。ウェイドを裁判所まで護送するため、3日後の3時10分に発車するユマ行きの電車に乗せねばならないが、駅までの道のりにはウェイドの部下が多数待ち伏せ、命の保証はない。そこで保安官は護送を手伝うボディガードを募集、ダンは借金を返すために名乗りを上げる。

息子との重要な関係性を、リメイク版オリジナルの要素として織り込み、現代人を共感させる脚本へと蘇らせた。責任感から、命がけの無茶な仕事をひとり成し遂げようとする主人公の姿は同じだが、その動機付けが少々異なる。50年もの時代を隔てた新旧の主人公が、それぞれ何に責任を感じているのか、その違いを考察するのも面白い。

70点
『時かけ』の監督が送る近未来ホームドラマアクション?!≫

『サマーウォーズ』を一言で言えばとっぴなお話、ということになるが、これを全国公開の長編作品にまでまとめあげた細田守監督の力はさすがだ。きっとアニメーション版『時をかける少女』(06年)の成功が大きな自信となり、いい意味で迷いを吹っ切れているのだろう。

数学だけは得意だが内気な健二(神木隆之介)は、学園のアイドル的な先輩夏希(桜庭ななみ)から「私と二人で実家に戻り、数日過ごすこと」という素敵なアルバイトの申し出を受ける。彼女の実家は由緒ある戦国武将の家系で、その日は現当主、栄(富司純子)の90歳の誕生日とあって、大勢の親類が集まっていた。すると夏希は、そこで健二にとんでもない真意を明かす。

田舎で大勢が集まって、あれやこれや大騒ぎするというと、いかにも日本的ホームドラマだが、正直あまり興味はない──それが、事前に私が感じていたすべてだった。

70点
アラフィフ女性がダイエットに挑む姿を、全世界に赤裸々公開

女性監督みずからダイエットに挑むという、やけっぱちドキュメンタリー『THE ダイエット!』。これを見ると、たくさんの笑いと涙を与えられ、明日から自分もダイエットを頑張ろうという気になれる。もちろんその努力はきっと失敗するが、面白い映画を1本見たという事実だけはとりあえず残るだろう。

この映画の監督・関口祐加は49歳のシングルマザー。自他共に認めるスーパーデブだ。映画が始まると、いきなり彼女のふくよかすぎる肉体がボヨンボヨンと画面に踊り、あげくの果てにはヘアヌードまで登場する。

ギャスパー・ノエだったら間違いなく警告するであろう「観客の感受性を破壊しかねない危険シーン」に、私は大きなショックを受けた。このトラウマをどうしてくれる。

70点
スパイク・リー監督の戦争映画は、ミラクルな感動もの

『セントアンナの奇跡』は、社会派スパイク・リー監督らしいブレない主張性と、老練な映画作りのテクニックの両方を楽しめる、通向きの一本だ。

1983年ニューヨーク。定年間近の老郵便局員が、ドイツ製の拳銃でひとりの客を射殺した。犯人の部屋からは、イタリアのある彫像の頭部が発見される。謎だらけのこの事件を解く鍵は、1944年のトスカーナ、大戦中のイタリア戦線にあった。

ここから長い回想シーンに入り、最後に謎がすべて明らかになるとき、その奇跡に観客は感動、涙を流すという仕組み。

70点
アナソフィア・ロブの可愛さは地球最高レベル

ゲームの『アステロイド』が映画化決定したり、ドリームワークスのアニメ『モンスターVSエイリアン』がお化けヒットしたりと、最近はUFOネタが流行中。この『ウィッチマウンテン/地図から消された山』もそのひとつで、ロズウェル事件で有名な「エリア51」に並ぶ怪しいスポット、という触れ込みの「ウィッチマウンテン」を舞台に冒険が繰り広げられる。

タクシー運転手のジャック(ドウェイン・ジョンソン)は、ラスベガスで奇妙な姉妹を乗せる。兄のセス(アレクサンダー・ルドウィグ)と妹のサラ(アンナソフィア・ロブ)。どこか浮世離れした二人が指定したのは荒野のど真ん中の廃屋。様子がおかしいと降りて見に行ったジャックは、そこでとんでもないものを見る。

ディズニーらしい、ファミリー向けのアドベンチャームービー。小学生くらいの子供をつれて、お父さんが見に行く、というような映画だ。

70点
シュワちゃん登場シーンの盛り上がりがすごい

2作目の公開後、制作会社の倒産による権利関係のトラブルがようやく沈静化し、待望の新章の幕開けとなった「ターミネーター」。シュワちゃん大活躍のT3や、女子高生ターミネーターが登場するテレビ版に続き、製作費190億円超の超大作として、いよいよこの映画版4作目が公開となる。(ここから先は脳内にテーマ曲を流しつつお楽しみください)

2018年、核戦争で荒廃した地上では、機械と人類の壮絶な戦いが繰り広げられていた。機械軍「スカイネット」は、T-600など強力なターミネーターを野に放ち、生き残った人類を狩り続けていた。レジスタンスの小部隊を率いるジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)は、総司令官と対立しつつも、運命に導かれるように人々の支持を集めていた。

超話題作として期待されていた本作だが、米国ではまさかの初登場2位。コメディ映画「ナイトミュージアム2」に敗北を喫し、翌週には4位にまで転落した。

70点
NHK発、愛国経済ドラマ

最近NHKは、看板番組NHKスペシャル「JAPANデビュー」において、内容が反日偏向しているとの批判にさらされている。視聴者からの苦情が、なんと数千件も寄せられているそうだ。インタビューされた台湾人が、「話の主旨を正反対に捻じ曲げられる編集をされた」と怒っているのだから、制作者としても逃げ場がない。放送局設立以来のピンチである。

ところが、彼らがかつて放映したテレビドラマの映画化『ハゲタカ』は、むしろ中国政府の方から苦情がきそうな反共的内容。映画がどんな思想の元に作られていてもかまわないと私は思っているが、今回ばかりは時期が時期だけに、面白く見させていただいた。

かつて数々の企業買収劇の主役として、ハゲタカの異名をとった鷲津政彦(大森南朋)。彼の元に、現在は大手自動車会社の役員である盟友・芝野(柴田恭兵)がたずねてくる。その話によると、日本を代表するこのメーカーが、中共の息がかかった新興ファンドから敵対的買収をかけられており、鷲津になんとか救ってほしいというのだ。

70点
他に類を見ないガチンコ女子高生格闘アクション

映画会社社員として「マッハ!」(03年、タイ)を買い付け大ヒットに導き、トニー・ジャーを日本に紹介した西冬彦監督は、しかし一抹の寂しさを感じていた。香港にも、ハリウッドにも、そしてタイにもこんなに凄いアクション映画があるのに、なぜ日本にはないのか。

いてもたってもいられなくなった彼は会社をやめ、なんと自分で金を集め、作ることにした。

『ハイキック・ガール!』は、ひとりの情熱的な男が、一歩間違えば派遣村の一員になる危険を冒しながら作り上げた、渾身のアクション映画である。

70点
無用なほどに熱い男の野球ドラマ

森田まさのりによる原作の野球漫画も、そのドラマ版も私は見ていない。どう考えても置いていかれるに違いないと思いつつの鑑賞だったが、これが意外なほど面白い。チョイワル男たちの熱いドラマを、私はすっかり気に入ってしまった。

ニコガク(二子玉川学園高校)野球部の面々も3年生となり、いよいよ甲子園への最後の挑戦が始まった。熱血教師・川藤(かわとう)(佐藤隆太)のもと、エースの安仁屋(あにや)(市原隼人)たち部員の士気はきわめて高い。ところが大リーグ志望の新入部員・赤星(山本裕典)は、高校野球などはなから眼中になく、自分勝手な行動でチームワークを乱し始める。

平川雄一朗監督は撮影前、脚本を読みながら号泣。キャストの面々もクランクアップが近づくにつれ大泣きしたそうだ。撮るほうも撮られるほうもオイオイ泣きながら作っているという、想像すると笑ってしまいそうな話だが、なるほどたしかに画面からは熱い何かを感じられる。世間体など気にせず、やりたい道へ突き進む人間だけが持つ潔さとでもいおうか、どこか爽やかな空気が漂っている。

70点
まさに「地獄の車窓から──」

80年の同名サスペンスのリメイクとなる本作は、その内容を大きく変え、電車ファンを凍りつかせるスプラッターホラーとして蘇った。

国際大会出場のためリトアニアに遠征中の、インディアナ大レスリング部の面々。アレックス(ゾーラ・バーチ)や部員たちは、男女連れ立って街でハメをはずしまくり、翌朝の列車に乗り遅れてしまう。言葉も通じず途方にくれていたところ、親切な現地女性がやってきて乗るべき列車を教えてくれた。

外国で親切に寄ってくるヤツにろくなのはいない、ということで、哀れな体育系大学生たちは殺人列車の旅を満喫する羽目になる。

70点
妙に政治的なアメコミ映画

『パニッシャー:ウォー・ゾーン』を見ると、本当に今のアメリカ映画界ってのは、ヒーロー映画の一本も素直に作れないんだなぁと思わされる。正義の味方というものが、この国においてさえ、いかに白々しい存在になってしまったか。つくづく時代の流れを思わせる。

家族を殺され、復讐の鬼と化したフランク(レイ・スティーヴンソン)。彼はやがて、法で裁けぬ悪を処刑してまわる完全武装のアンチヒーロー"パニッシャー"となった。だが、ある犯罪組織に突入したとき、知らぬこととはいえFBIのおとり捜査官を殺してしまう。それ以来、フランクは葛藤し、"仕事"が出来なくなってしまう。

マーベルコミックの人気ヒーロー"パニッシャー"は、すでに何度か映画化されている。本作は、もともと04年版の続編となる予定だったが、紆余曲折を経て結局独立した作品となった。フランクを演じる役者も変更となった。

70点
邦画の好調を象徴するような、ドメスティックな娯楽作品

『クローズZERO II』は決して悪い作品ではないが、前作のほうがずっといい。このパート2が面白いのは、ひとえに前作からのキャラクターの魅力による。それぞれの人物の魅力をしっかりと描き分けられている点が、シリーズ成功の要因といえるだろう。

だが、今後もこの路線を続けるならば、三池崇史監督は各キャラクターのドラマを描き分けるだけでなく、戦い方にまでその個性を反映させる何らかのアイデアを出さねばなるまい。

なぜなら『クローズZERO II』のケンカシーンは、ちょっと目を離すと今戦っているのが誰だかわからなくなるほど、みな同じ動きをしている。本気でこれら格闘シーンを盛り上げたいならば、本作のように「三池崇史監督の分身A」VS.「三池崇史監督の分身B」の繰り返しではダメだ。この作品には、テクニシャンの監督がチョチョイと仕上げたような、器用だが底の浅い印象があり、そこはマイナスとしたい。

70点
メモ片手にみたい、映画業界裏話

ハリウッドと日本の映画作りにおける違いに興味がある人にとって、『ハリウッド監督学入門』はとても楽しいドキュメンタリーとなるだろう。

本作の監督で、ハリウッドの業界関係者たちに自らインタビューするのは『リング』(1998)などでJホラーブームを巻き起こした中田秀夫。『ザ・リング2』(2005)でハリウッドデビューをはたした彼は、米国での企画進行のあまりの遅さに「なぜ? なぜ? なぜ?」が頭に渦巻き、本作の製作を思い立ったという。

そんなこともあり、このドキュメンタリーは日米映画界の違いを、3つのキーワードで浮き彫りにする。

70点
「踊る大捜査線」のスタッフが社会派に挑戦

「踊る大捜査線」のミーハーな客層に、社会派映画ぽいものを見せる。『誰も守ってくれない』が挑んだコンセプトはえらく大胆で、そしてほぼ成功している。

15歳の女子高生(志田未来)の兄が、ある日突然逮捕された。世間を騒がす猟奇殺人事件の犯人としてだ。その日から彼女の世界は一変した。押し寄せるマスコミ。際限なく広がるインターネット上での中傷、そして個人情報の暴露。そんな彼女をただ一人守る男がいた。加害者家族を世論から守り、その自殺を防ぐ非公認任務の警察官(佐藤浩市)だ。

そんな事をする警察官がいるのかと思うが、君塚良一監督は「踊る」シリーズの脚本用リサーチの過程でその存在を確信し、一度この問題を描いてみたかったのだという。つまり「踊る」にはそぐわないこのシリアスなテーマを追求するがために、このオリジナルドラマは企画された。

70点
怪人二十面相の秘話を描くアクションドラマ

江戸川乱歩の子供向け推理シリーズに登場するダークヒーロー、怪人二十面相を主題にしたこのアクション映画は、お正月にぴったりな気楽な娯楽作となった。

日本が戦争に巻き込まれずに更なる発展を遂げた架空の1949年、帝都。サーカス団のスター曲芸師、遠藤平吉(金城武)は、見知らぬ編集者からその運動能力を見込まれ、名探偵・明智小五郎(仲村トオル)と羽柴華子(松たか子)の結納式の盗撮を高額で依頼される。だが、その結納式には巷を騒がす大泥棒、怪人二十面相も陰謀を仕掛けていた。

推理小説好きには、すぐに話の展開が読めてしまう内容だが、それでもラストにはちょっとした驚きが隠されている。怪人二十面相の新解釈で話題になった北村想の原作を、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの制作プロ、ROBOTが映画化。よって、VFXを駆使した華々しい見せ場も用意される。

70点
ディカプリオがアラビア語を駆使するスパイを好演

『ワールド・オブ・ライズ』は、中東に潜むテロリストの親玉を探るCIAの作戦を描く本格政治アクション。この手の社会派ムービーは、いかにタイムリーであるか、または時代を先取りしているか、新しい視点を与えてくれるかが大事な評価点となる。

アラビア語を駆使し、イラク社会に溶け込んでいる若きCIA局員フェリス(レオナルド・ディカプリオ)。現地の風習を理解・尊重する彼に対し、直属の上司ホフマン(ラッセル・クロウ)は「中東は人の住むところではない」とうそぶくような男。安全な本国から電話一本で部下をこき使うくせに、献身的な現地協力者でさえ必要とあれば平気で切る冷酷さを持っていた。

長年追うテロ組織のリーダーをなかなか探り当てられない彼らだったが、ある手がかりからホフマンはフェリスにヨルダン行きを命令。そこでヨルダン総合情報部(GID)の局長ハニ・サラーム(マーク・ストロング)の協力を得よという。

70点
東京が未曾有の大災害に見舞われるパニック大作

今年の冬は人助けが流行っているようで、やたらとレスキュー隊が活躍する映画が多い。自衛隊の航空救難団を描く『空へ —救いの翼 RESCUE WINGS—』しかり、感染症被害者を助ける医師団の物語『感染列島』しかり。

その中でも、「お助けもの」好きな人の心を一番つかむと思われるのが邦画大作『252 生存者あり』。未曾有の大災害に見舞われる東京と、救助活動にあたる東京消防庁ハイパーレスキューの活躍を描く感動ドラマだ。

直下型地震に見舞われた東京は、その数日後に大型台風の直撃を受ける。緩んだ地盤は決壊、高潮により銀座線新橋駅は水没した。そこに居合わせた元レスキュー隊員(伊藤英明)は、わずかな生き残りとともに廃駅である旧新橋駅に避難。一方、壊滅的被害を受けた地上でも、間もなくやってくる次の本格的暴風雨の到来を前に、消防庁や各省庁の担当者が対応に駆けずり回っていた。

70点
タカビーキャラの西川史子いじめがエロい、映画版『特命係長』

『特命係長 只野仁 最後の劇場版』は、いわゆる"お気楽テレビドラマ映画"の範疇を出ていないが、下手に背伸びしようとしない分、好感の持てる娯楽作となった。

大手広告代理店の窓際係長・只野仁(高橋克典)のもとに、今日も会長から特命が下る。社運をかけた大イベントのキャンペーンガール(秋山莉奈)が身元不明の人物から脅されており、なんとしてもその身を守れというものだ。会社の汚れ仕事を引き受ける特命係長という裏の顔を持つ只野は、さっそくパートナーの森脇(永井大)と調査を開始するが……。

原作ファンの身からすると、このシリーズほど配役がめちゃくちゃなドラマ化はない。只野の同僚OLでヒロイン的存在の山吹を演じる蛯原友里や、セフレの新水アナ役・三浦理恵子など、どう解釈すればそういうキャスティングになるのだろうという例ばかりだ。

70点
90億円かけたバカ映画

まず最初に言っておきたいのは、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』にゲスト出演しているある大物スターを、各媒体の映画紹介欄がこともなくバラしているのはいかがなものか、ということだ。本人もキャリア最高の怪演を決め、ベン・スティラー監督も最後の驚きとしているのだから、たとえすぐにわかってしまっても内緒にしてやるのが粋というものだと思うのだが。

何を書くかより、何を書かないか(隠すか)に頭を悩ますのが映画紹介の鉄則と考える私としては、そうしたレビューを見るたびに、読者が興味を失わないか心配になる。

ベトナム戦争の英雄の回顧録が戦争アクション映画になることに。落ち目のアクションスター、ダグ(ベン・スティラー)は、この主演に再起をかけていた。下ネタ芸人のイメージを払拭したいコメディアン、ジェフ(ジャック・ブラック)や、黒人役をやるため肌を黒く整形手術するなど、行き過ぎた演技派で知られるカーク(ロバート・ダウニー・Jr)も加わり、撮影は順調に進むに見えたが……。

70点
河瀬直美監督が長谷川京子をハダカにする

カンヌ国際映画祭グランプリ受賞監督の最新作ということで、満員の完成披露試写会場を前に、「注目度、凄いんだなと思っています」と満足げに語った河瀬直美監督。その自信満々なキャラで今後も突っ走ってほしいものだが、今回は主演の長谷川京子が公開直前に結婚を発表する話題性にも恵まれ、これ以上ないスタートを切れそうだ。

30歳の彩子(長谷川京子)は一人でタイへ旅立った。ところが言葉が思うように通じず、ホテルを告げたはずのタクシーは怪しげな森の中へ。危険を感じて逃げた先には、ゲイのフランス人(グレゴワール・コラン)が居候する現地民の素朴な家があった。

アラサーな女性が、タイの森で古式マッサージに出会い、その習得とともに心の癒しを得る物語。言葉の通じぬ人々相手に苦労するヒロインの姿は、コミュニケーション下手で悩む現代女性の投影。日常に疲れたとき、海外へ一人旅をするようなタイプの女性にとっては、理屈ぬきで共感できる作品といえるだろう。じつに女性監督らしい、うまい作りになっていると思う。

70点
ジョン・カーペンター監督の有名殺人鬼ホラーをリメイク

オリジナルの78年版『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督)は、なんといっても殺人鬼映画の金字塔であり、のちに『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』といった大ヒットシリーズを生み出す源泉にもなった。今回のリメイクも、力の入った本格的ホラー映画で、大のホラーマニアとしても知られるロブ・ゾンビが脚本と監督を担当した。

イリノイ州、ハロウィンの夜。孤独な少年マイケル(ダエグ・フェアーク)は、家族に魔の手を振るう。ルーミス医師(マルコム・マクダウェル)の手にゆだねられたマイケルは17年後、精神病院から脱走して故郷に向かう。

オリジナルもリメイク版も、怖さのポイントは「混乱」ではないかと私は考える。じつのところ、重大な箇所をロブ・ゾンビは変更しているのだが、このツボ部分はきちんと押さえている。少々異なるやりかたで客を混乱させ、原版と似たような後味の悪さを残している。伝統とも言うべき傑作メロディはいつまでも耳に残り、ぞっとする思いを胸のうちに残しながら、私たちは席を立つことになる。

70点
綾瀬はるかが女座頭市に

公開したばかりの『ICHI』が苦戦していると聞く。報じられたところによると、客層はやや高めとのこと。これには少々悔しい気持ちがした。私はこの映画を、「座頭市」など知らぬ若い人にこそ見てほしいと思っている。

一人旅を続ける盲目の旅芸人=瞽女(ごぜ)の市(綾瀬はるか)。彼女はあるとき、とばっちりで悪党の襲撃を受けるが、そこに十馬(大沢たかお)という名の侍が助けに入る。ところが十馬は、なぜか刀を抜こうとせず、二人は逆に窮地に陥る。

刀を抜けなくなった侍と、暗い過去を持つ盲目の女剣士。かつて勝新太郎が演じたヒーロー座頭市は、この男女二人のキャラクターに分かれ、受け継がれている。強き面は市に、どこかユーモラスな部分は十馬に。だからこの映画は二人のラブストーリーではなく、むしろ異色のバディムービーとして見るのが正しい。

70点
レンタル店員が超大作を激安リメイク

今週公開の映画は、どうしてこうろくでもない邦題ばかりなのだろうと頭を抱えてしまうが、中でも『僕らのミライへ逆回転』は群を抜いてひどい。私は原題原理主義者ではないから、日本公開版がオリジナルと違った題名になろうとかまわないが、この邦題で客が入るとはどうしても思えない。映画の中身がいいだけに、それはちょいと悔しい事なのである。

舞台はさびれたレンタルビデオ店。しばらく留守にするオーナー(ダニー・グローヴァー)に店を任された店員マイク(モス・デフ)は、悪友のジェリー(ジャック・ブラック)に店内のビデオを台無しにされてしまう。そこにオーナーの知り合いの女性から、ビデオを借りにくるとの連絡が。弱った二人は、なんと自分たちで『ゴーストバスターズ』を撮影してごまかすことに。

映画を愛する人々に見てほしいコメディー映画である。原題「Be Kind Rewind」は「巻き戻して返してね」といった意味。言うまでもなく、ビデオレンタル店の注意書きだ。

70点
人気米ドラマSATCがゴージャス映画化

日本では、テレビドラマの映画化は内容が薄っぺらということで、映画ファンからはそっぽを向かれている。では、本場アメリカの場合はどうか。

6年間にわたりHBO(米のCATV局)で放送され、女性たちの共感を集めまくった『セックス・アンド・ザ・シティ』の映画化は、公開されるやロマコメ映画史上一位。女性が主演する映画としても「トゥームレイダー」を抜き歴代一位という記録的スタート。「TVドラマの映画化は手堅くヒットする」という法則は、とりあえず日米共通といえそうだ。

テレビ版最終話から4年後。人気コラムニストのキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)は、ついにミスター・ビッグ(クリス・ノース)との結婚を決める。一夜限りの男を渡り歩いてきたサマンサ(キム・キャトラル)は、乳がん発覚時に支えてくれた年下の俳優スミス一筋。そのエージェントとしてハリウッドで暮らしている。中国から養子を取ったシャーロット(クリスティン・デイヴィス)は、愛する夫との間に思いがけず妊娠が発覚。だがミランダ(シンシア・ニクソン)だけは、夫の浮気や仕事と家庭の両立に深く悩んでいた。

70点
70年代に米国に実在した、エンタ性重視のバスケリーグとは?

アメリカトップクラスの人気コメディアン、ウィル・フェレルは、あちらのコメディに疎い日本ではご多分に漏れずまだまだ無名だ。しかし小規模公開ながら高いパフォーマンスを記録した「俺たちフィギュアスケーター」(2007)の成功のおかげで、続く本作も無事公開にいたった。

そして予想通り、映画会社は原題とは無関係な「俺たち」を邦題にくっつけた。今後のウィル・フェレル作品の邦題における「俺たち」率は、きっと恐るべき高さになるであろう。

70年代のミシガン。この時代には、競技志向のNBAに対してエンターテイメント性を重視したABA(アメリカン・バスケットボール・アソシエーション)が存在した。

70点
明るくたくましい、ブラジルスラムで抗争を続ける子供たち

ブラジルの貧民街における子供たちの暴力抗争を描いた衝撃作『シティ・オブ・ゴッド』(02年、ブラジル)は、世界中で好評を博した。

その大人気によりフェルナンド・メイレレス監督はその後、同作のテレビシリーズも手がけることになった。この『シティ・オブ・メン』は、そのテレビ版の完結編にあたる。だが初心者に優しい構成により、シリーズ未見でも問題なく楽しめるようになっている。なお今回フェルナンド・メイレレスは製作にまわり、テレビ版の脚本や監督を担当したパウロ・モレッリが後を継いだ。

リオデジャネイロの丘の上には、貧民街が広がっている。そこでは二つのグループが利権をめぐり、抗争を繰り広げていた。ここで生まれ育った18歳のアセロラ(ドグラス・シルヴァ)とラランジーニャ(ダルラン・クーニャ)は、父親がいない共通項もあってずっと親友同士だ。ところがあるとき、行方不明だったラランジーニャの父親を発見。父子の暮らしを尊重したいラランジーニャと離れ、孤立気味のアセロラは抗争相手のグループに身を寄せるようになる。

70点
怒ると巨大化、超人ハルクがヒーロー映画として帰ってきた

怒ると巨大化し、緑のマッチョマンとなってあたりかまわず破壊する。マーベル・コミックの誇るヒーロー「超人ハルク」は本国アメリカはもちろん、過去にテレビシリーズが放映された日本でも根強い人気がある。

だがそのハリウッド実写版は今からほんの5年前、アン・リー監督によって行われたばかり。この『インクレディブル・ハルク』はその続編というわけでもないし、いまさら別のメンバーで作り直すのはなぜなのか。それにこの新作、所々よくわからない場面があるし、とくにラストシーンの不可解さはいったい何なのだ?

科学者のブルース・バナー(エドワード・ノートン)は、実験中に大量のガンマ線を浴びて体質が変化。心拍数が200を超えると、緑の巨人ハルクに変身してしまう。彼を利用しようとたくらむ軍とロス将軍(ウィリアム・ハート)から逃げるため、ブラジルのスラムに身を潜めるバナーは、将軍の娘で恋人のベティ(リヴ・タイラー)を想いながら、必死に特異体質の治療法を探っていた。

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