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2166件中 551~600件 を表示しています。
70点
≪わがままな神々は誰の比喩か≫

「300 <スリーハンドレッド>」のスタッフによる本作は、あの美しいスローモーションな格闘戦闘の進化形を3Dで楽しめるゴージャスなアクション映画。おまけに今回画面で殺しあっているのはギリシャ神話の神々。ある意味不謹慎な内容に苦笑してしまう一本でもある。

野望を秘めた王ハイペリオン(ミッキー・ローク)は、闇の神の封印を解くカギを探してギリシャに侵攻をはじめた。一方、闇の神の復活を防ぎたいゼウス(ジョン・ハート)は、その望みを託した人間テセウス(ヘンリー・カヴィル)のそばで、密かにその成長に力を貸していた。

人間世界の比喩でもあるのだろうが、ギリシャ神話の俗っぽさは現代向き、映画向きだなと実感する。まして当のギリシャがあんな状況で、そのテキトーな国民性が明らかになっているからなおさらだ。

70点
≪試合シーンは脇役だがれっきとした野球映画≫

旧態依然とした考えで野球をしている連中に、まったく新しい理論で立ち向かう。日本で作ればあっちゃん主演のアイドル映画になり、ハリウッドで作れば本格野球ムービーになる。両者が同じ年に公開されるというのは、少々酷な偶然である。

資金不足気味のアスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)に就任したビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、選手補強どころか人気選手を半ば資金繰りのため放出しなくてはならぬ状況に頭を抱えていた。そんなとき彼は、見るからに運動はダメそうなオタク然としてはいるが、超一流大卒で斬新なデータ分析を行っていた青年ピーター(ジョナ・ヒル)に出会う。やがてビーンは彼の分析をもとに、年俸は安いがポテンシャルの高い選手を集め始める。だが彼らの発想を理解できぬフロント陣は猛反発、それでもビーンは意にも介さず画期的なチーム作りを進めてゆく。

打率や本塁打ではなく、出塁率を重視する。当時としては画期的だったこのデータ野球のことを、マネーボール理論などと呼ぶ。ドラッカーの経営学を無理やりあてはめるトンデモではなく、れっきとした野球論だ。

70点
≪前作よりいろいろな意味で出来がいい≫

前作は四川大地震の直後に中国で公開され、上映中止運動など物議をかもしたが、この続編の直前には東日本大震災が起こった。時代を代表する映画作品には特別な引力があるものだが、このシリーズの災害との因縁も相当なものである。

伝説の龍の戦士となり、マスターファイブの仲間とともに国の平和を守るパンダのポー(声:山口達也)。そんな彼の前に新たな敵、シェン大老が現れる。世界征服を狙うシェンを阻止するため、早速旅支度をするるポーだったが、彼はこの旅で自らの出生の謎とも向き合うことになる。

アクションがよかった前作より、さらに進化した動きが見どころ。前後左右はもちろん、底知れぬ谷や崖を落下するなど上下方向の動き、さらには出来のいい3Dによる奥行きを生かした、文字通り360度を目いっぱい使った素晴らしいカンフーアクションを見ることができる。体はメタボだが、動きは高速。実写では不可能なアングルを大胆に動き回るカメラワークも派手派手で、子供向きアニメながら大人をも唸らせる映像的な見せ場が連続する。

70点
≪やるべきことはすべてやった≫

気が付けば10年、8作品目。21世紀最大の超大作シリーズも、いよいよこれで幕を閉じる。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』は、ここまで付き合ったお客さんにとっては見逃せない完結編だ。

最大の敵ヴォルデモートを倒すカギとなる分霊箱探しの旅も終わりに近づいている。17歳になったハリー(ダニエル・ラドクリフ)や仲間たちは、暗黒に飲み込まれつつある世界を前に命がけの探索を続けるが、その行く手には、ハリーの出生の秘密にもかかわるあまりに切ない幕切れが待っていた。

この最終作では、シリーズで残された謎がすべて明らかになる。といっても、世の中10年8作品の長大な物語を詳細に覚えているファンばかりではない。多くの人にとっては、そもそもどんな謎が残っていたっけ、程度の認識だろう。その意味で、本作のクライマックス周辺における伏線回収のスパンは異常なまでに長く、快感度は低い。可能ならば全作品を前日にイッキ見しておくくらいの事をしておいたほうがいいだろうが、それはあまりに大変か。

70点
≪人は何を残して死ぬべきか≫

この映画の題名にもあるビューティフル(beautiful)とは、私のような人間を英語で表現するときに使うメジャーな単語だが、なぜか題名のほうはスペルが間違っている。

照明と同じように映画の演出も、間接的に行ったほうがより通好みで、しゃれた感じに仕上がる。本作のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督はそうした手法を、今回これでもかと多用する。題名のスペル違いはその最たるもので、映画を見ればこの誤りが何を表現しているのかがわかる。そして皆さんは、そのときたぶん涙する。

スペイン、バルセロナの一角で不法移民に違法な仕事のあっせんを行い、日銭を稼いでいる男ウスバル(ハビエル・バルデム)。妻と別れ、いまは2人の幼い子供たちと暮らしているが、あるとき彼は末期がんで余命2か月と診断される。自分が死んだらこの子たちはどうなるのか。焦りと恐怖に支配されそうになりながら、ウスバルは手段を選ばず金を稼ぎ、子供たちに残そうと考える。

70点
≪面白いが一味足りない≫

『ロシアン・ルーレット』は、本物の銃と実弾でロシアンルーレットをするという、ただそれだけのアイデアが97分間続くシンプルな映画である。そういえば最近日本にも放射能健康論を押し付ける人たちがいるが、あれなどは福島の子供たちに自動拳銃でロシアンルーレットをやらせるようなものである。この映画に出てくるギャンブルバカとも互角に戦える逸材といえるだろう。

父親の入院加療費で家計が逼迫する中、青年ヴィンス(サム・ライリー)は謎めいた儲け話を耳にする。思わず大金を手にできる会場への招待状を盗み出した彼は、その指示通りに森の中の屋敷に到着する。だが彼はそこで自分の浅はかさを後悔することになる。そこは17名の参加者のロシアンルーレット対決に、富豪たちが大金を賭ける秘密の賭博場だったのだ……。

たくさんお金を持っていれば、若者たちに命を賭けさせる遊びくらい見てみたくなるだろうという、たぶんに無茶苦茶な偏見に満ちた設定がまず笑える。スナッフビデオの都市伝説に代表されるこうしたホラ話は、金持ちの心理など想像もできない貧乏人にとって妙にリアリティがあるわけだ。

70点
≪低予算映画とは思えない高品質映像とサービス精神≫

ロサンゼルスは異星人の侵略を受けやすい街のようで、古くは大戦中にも多数のUFOが観測されたなどの報道記録がある。日本公開延期中の「世界侵略:ロサンゼルス決戦」や本作「スカイライン-征服-」など、最近の映画でも立て続けにエイリアンのお宅訪問を受けており、多くの観客を喜ばせている。

ジャロッド(エリック・バルフォー)とエレイン(スコッティー・トンプソン)のカップルは、成功した友人テリー(ドナルド・フェイソン)のペントハウスに招待される。高層階に位置するその豪華な部屋は、ロサンゼルスを一望できる抜群のロケーション。ところがその日、ジャロッドは窓のブラインドの隙間から、信じがたい街の光景を見ることになる。

『スカイライン-征服-』の監督の一人グレッグ・ストラウスは「僕らはイベントムービーを少ない予算で作りたかった」と言っている。この言葉はそのまま、この映画の魅力を端的に表している。

70点
≪後半失速≫

銀座にH&Mがオープンしたとき、しばらくは中央通りに入店待ちの長い行列が出来ていた。ラーメン屋じゃあるまいし、服屋に入店行列とはビックリだが、一方で私はユニクロの驚異的なレジ処理を思い出していた。ユニクロならば、この客数をさばけていたかもしれないと夢想していたわけだ。

あれは業界的には画期的なシステムで、世界中のアパレル関係者に影響を与えたと聞く。「匠」(ベテラン技術者集団)と呼ばれる同社の素材、縫製の徹底した開発・管理体制も、それまで名ばかりで低品質な服を作ってきた世界中の有名ブランドを駆逐するに十分なインパクトであった。まるで日本車のように無個性すぎて、いかに高品質でも私は着たいとは思わないが、ユニクロの革命性については高く評価している。

また、パリコレなど伝統あるプレタポルテコレクションで、古くから多数のメゾンが活躍していることからもわかるとおり、日本のアパレル・ファッション業界はアジアでは突出している。日本人デザイナーの服がハリウッド映画に登場することも稀ではなく、プレステージの高さでも欧米にひけはとらない。

70点
≪コメディーながら描くテーマは意外性に富む≫

豊臣秀吉の子孫がひそかに大阪に生き残っていた──『プリンセス トヨトミ』について私は、そこから始まる歴史フィクションのようなドラマかと当初想像していた。万城目学の原作は未読だったし、タイトルから勝手にそんな予想を立てていた。

だが本作は、その予想を大きく裏切る内容だった。

東京の会計検査院から、鬼の松平の異名をとる松平元(堤真一)率いる3人の精鋭調査員が大阪にやってきた。直感型の鳥居忠子(綾瀬はるか)と優等生型の旭ゲンズブール(岡田将生)は、松平の元次々と成果を上げてゆく。次に彼らは財団法人OJO(大阪城趾整備機構)を訪れたが、一見何の問題点もないこの古びたビルに、しかし松平は異様なまでの違和感を感じるのだった。

70点
≪往年のライダーファンが子供と見る映画としてはほぼ満点≫

映画界にとって仮面ライダーは優良コンテンツで、頻繁に作られる劇場版はつねにそこそこの成績を記録する。言うまでもなくそれは、長い歴史というほかにはない強みを持っているからだ。じっさい親子二代で楽しめる特撮ものを楽しみにしている人は多いようで、当サイトにも批評を心待ちにするメールが時折届く。

そんな仮面ライダーは、最初の放映から40年。その記念すべき年に公開される一大企画がこの『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』だ。

デンライナーでやってきたNEW電王とオーズは、敵を追って1971年の日本へと向かう。やがて首尾よく敵を始末し現代に戻ってきた彼らは、そこがまったく元の世界と異なっていることに気付く。秘密結社ショッカーが日本を支配し、あの仮面ライダー1号、2号は悪のライダーとして君臨している。どうやら過去で行った何かが原因で、歴史が改変されてしまったのだ。味方のいない世界で、ライダーたちの孤独な戦いが始まる──。

70点
≪なんとか無事公開にこぎつけたファンタジー大作≫

「ナルニア国ものがたり」は聖書を下敷きにしたファンタジーということもあって、教訓的な一面を持っている。今回紹介する映画版3作目『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』は、とくにその傾向が強く感じられる。

現在日本では、ファンタジーやアニメの世界から戻ってこれない大人のおともだちが多数発生しており、ゆゆしき事態といわれているが、そうした国でこのファンタジー超大作をみると、なかなか新鮮である。めくるめく冒険の世界に酔わせた後に、「さあみんな、映画はこれで終わりだよ。元の暮らしに戻って頑張りなさい」と語りかける。そんな大きなお世話、いや親切なファンタジー作品は、いまどきあまりないだろう。

かつてナルニアで大活躍したエドマンド(スキャンダー・ケインズ)と妹ルーシー(ジョージー・ヘンリー)は、兄ピーターと姉スーザンが両親とアメリカに行ってしまったため、気難しいいとこのユースチス(ウィル・ポールター)の家に居候中。そんなある日、ユースチスの部屋の帆船の絵が入り口となり、兄妹とユースチスはナルニアの海へと誘われる。そこで旧知の王カスピアン(ベン・バーンズ)やネズミの騎士リーピチープらが乗る朝びらき丸に乗船した彼らは、成り行きから伝説の7つの剣を集める旅に同行する。

70点
≪イーストウッド版・大霊界≫

世の中には見る前に予備知識を入れたほうがいい映画とそうでない映画があるが、『ヒア アフター』は間違いなく後者である。とくにこの作品の予告編は、ストーリー上もっとも意外、かつ重要なクライマックスまで余すところなく体験できる親切設計。推理小説を読む前に犯人を知りたいタイプの人以外は、見ないでおくことをオススメする。

さてストーリーだが、この映画はまったく無関係な3つのドラマが同時進行する。

臨死体験をしたパリ在住のテレビキャスター(セシル・ドゥ・フランス)は、あの体験がいったいなんだったのか、仕事もそっちのけで追及を始める。サンフランシスコで静かに暮らす男(マット・デイモン)は、じつは本物の霊能力者だったが何もかも見えてしまう事に嫌気がさし、今では「仕事」から手を引いている。ロンドンに住む少年(ジョージ&フランキー・マクラレン)は、あるとき大好きな双子の兄に降りかかった運命を前に、ひとりで立ち向かうことになる。

70点
≪反グローバリズムな食ドキュメンタリー≫

最近、アイピーピーいやTPPなるものが流行っている。加盟国の間で関税を撤廃して、自由貿易を推進しようという取り決めだ。

しかし注意せねばならないのは、国際政治の世界で発せられる「自由」なる用語は、正確には「米国にとっての」という部分が、常に省略されているという点である。

案の定、今回もTPPなる「自由」サークルに日本を強引に勧誘しているのは、自由業界総大将の米国である。となれば、どう見ても私たちにとって得になる話ではなさそうだ。細かいことなど考えずとも、ジャイアンが強引に誘ってくるイベントに参加して、はたしてのび太にメリットがあるかどうかを考れば判断を誤ることはない。

70点
≪韓国の力技に苦笑しつつも感心≫

『ハーモニー 心をつなぐ歌』は、韓流スターの来日時に空港に集まるようなお姉さまたちを対象にした映画なので、どう考えても私のようなひねくれ韓流ファンには向いていない。

そこで私は、知り合いの韓流ライターと共に試写室に出向く事にした。本作品本来の客層にドンぴしゃな彼女の意見を聞くことで、公平な記事を書くためである。よく誤解されがちなのだが、けっして彼女が美人人妻だからではない。

女子刑務所で男児ミヌを出産したジョンヘ(キム・ユンジン)には、生後18か月まで獄中で母子ともに暮らすことが規則で許されている。愛らしいミヌは同室の囚人からも愛され、その存在は比類のない癒しを彼女たちにもたらしていた。そんなある日、慰問合唱団に感動したジョンへは、自分たち女囚でも合唱団を作れないかと思いつき、理解者のコン刑務官(イ・ダヒ)に相談する。

70点
≪監督40作品目は笑いと皮肉が効いた佳作≫

『人生万歳!』は、例によって監督のウディ・アレンらしさがつまった最新作だが、近年ではかなりの佳作だ。しかしこれは、アレン映画をあまり意識してみたことのないライトユーザーに対して、の意味合いが大きい。

自称天才物理学者だが今は落ちぶれ、さえない日々を送る男ボリス(ラリー・デヴィッド)。ある日彼は21歳の家出娘メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)を、ひょんなことから自分のぼろアパートに泊めてやることに。偏屈で神経症的なボリスは、能天気なメロディの無教養ぶりにあきれ返るが、成り行きからそのまま同居生活を始めることになってしまう。

偏屈な独身ジジィの家に、金髪巨乳ギャル21歳が転がり込むなど、日本のエロ漫画の世界であるが、それを無理なく軽快な実写コメディーに仕立てる手腕がまさにアレン節。冒頭にカメラに向かって登場人物が語りかける倒錯した演出を取り入れることで、その先に待ち構えるこのエロゲ設定の突飛さを希釈、すんなり観客に受け入れさせてしまう。

70点
≪起業家にとって、忘れがちな初心がある≫

金儲けというのは難しいが面白い。たとえば中国には、乾燥わかめと偽って黒ビニールをつめて売る会社があるそうだが、詐欺的手法もそこまでいくと怒りを通り越して笑いしか出ない。昔はペンキで塗っただけのカラーひよこなんてのが売られていたが、黒ビニールはもやは食品ですらない。後先考えないにもほどがある。

そんなわけで、金もうけをしようと奮闘する人を見るのも案外面白いものだ。『10億円稼ぐ』は、そのあたりの心理を刺激する「金儲け実践ドキュメンタリー」。才人テリー伊藤が、初監督と出演を兼ねた、娯楽性の高い一本である。

今回テリーが目を付けたのは、サンリオのキティちゃんのようなキャラクタービジネス。老若男女に受け入れられ、国境すら超えるキャラクターひとつで、天井知らずの版権料が手に入る点が気に入ったらしい。たしかにタイトル通り「10億円」を目標額にするならば、このくらいデカい事をやらないとだめだろう。

70点
≪河瀬直美が自然派出産医院を描くドキュメンタリー≫

河瀬直美といえば、カンヌ映画祭でグランプリ(「殯(もがり)の森」)を取るなど華々しい実績を誇る映画監督だが、過去の巨匠らにさえ遠慮せぬ物言いで、映画マニアからは意外と批判されがちだ。ようするにもっと謙虚になれという意味なのだろうと思うが、私にいわせればそのオレ様ぶりこそがこの監督最大の武器であり、魅力だ。それを批判するとは的外れもいいところ。大物に遠慮するような小心者など腐るほどいる。河瀬監督は、そうでないからこそいいのだ。彼女にはこれからも何も変わらず、誰にはばかることなく撮ってほしいと願っている。

さて、彼女の映画はそんなわけで一般的には非常にとっつきにくい。これまでの作品の中で、正直なところ万人向けに手放しですすめられる映画はほとんどない。しかしこの『玄牝 -げんぴん-』は違う。自然派出産を表掲するある産婦人科医院を取材したこのドキュメンタリーは、(彼女が見つけたのではなく)外部から依頼された企画、被写体だったからこそ成功した珍しいパターン。

つまり、監督に被写体への過剰な思い入れがなく、ある意味突き放した距離感があるからこそ、自然派出産のプロモーションに堕すことなく、それなりに中立的な視点を保ったままその魅力を伝えることに成功している。私はこの作品を、河瀬映画アレルギーの方を含む一般のお客さんにも広くすすめたいと思っている。

70点
≪ヤンキー時代劇≫

オリジナルの『十三人の刺客』は、世間の流行が時代劇から東映任侠映画に移り変わるころ、1963年に公開された。リアリティ重視の演出に、30分間にも及ぶ集団白兵戦闘の見せ場が印象的な本格時代劇作品である。

それを、バイオレンス描写に定評がある三池崇史監督(「ヤッターマン」(2008)、「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」(2010))がリメイクする。オリジナルの演出はどう考えてもこの監督のカラーとは違う。はたしてどうなるのか、映画ファンは不安と期待を胸に見つめていたに違いない。

ときは江戸時代末期。残虐な性格で横暴の限りを尽くす明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)は、しかし将軍の弟という立場から幕府でさえ手が出せぬ存在だった。そこで老中・土井利位は、御目付・島田新左衛門(役所広司)に暗殺部隊の編成を密かに指示。島田はさっそく腕利きの浪人や武士ら精鋭13人を集め、標的一行を待伏せるが……。

70点
≪ラブコメ&パニック映画≫

韓国のいいところは、遠慮のないところである。

などというと、前田は韓国嫌いだとかまたあらぬ誤解を受けそうだがとんでもない。整形だろうが豊胸だろうが脱毛だろうが、男子にとって喜ばしい努力をしてくれる女子を私は高く評価する。よもや嫌いになろうはずがない。

いや、そもそも今回の記事に女性うんぬんは関係ない。のっけから話がずれてややこしいので元に戻すが、『TSUNAMI-ツナミ-』は冒頭に書いた「誰にも遠慮せず好きなものを作る」韓国人気質が、良いほうに影響した良作である。

70点
≪自分の知らない妻の内面≫

新品のパソコンを購入するのはいいものだ。トラブルも少なく、末永く付き合っていける。本来、それ以上の楽しみを知る必要はないのだが、何かの拍子に中古パソコンの魅力に取り付かれたら大変である。

中身のパーツに意外ないいものが使われていたときの喜び。ときにはハードディスクの中にお宝を発見することもあるだろう。もしこれでまだ本体が比較的新しく、性能もよく、HDDだけ徹底的に使い込んでいるような固体に出会ったらたまらない。

気に入ったパソコンが、過去誰に、どのように使われてきたのか。その歴史を味わうだけで好奇心と嫉妬心は際限なく刺激される。こうなるともう、新品のパソコンなど味気なくて買う気は起きなくなる。

70点
≪ソ連に圧力をかけつぶされた、貴重な樺太史実映画≫

すでに公開されている反捕鯨お笑いムービー「ザ・コーヴ」だが、いまだにとんでもない内部情報が次々と入ってくる。ウェブでの公開は残念ながら遠慮するが、よくこんなものがアカデミー賞を取れたものだと呆れる話ばかりである。

それはともかく、あの映画が上映自粛されて上映館に空きができたため、『樺太1945年夏 氷雪の門』はモーニングショーからロードショーへ格上げ公開となった。

『樺太1945年夏 氷雪の門』は74年の製作当時、問答無用の武闘派超大国だったソ連の政府から直々に政治的圧力をかけられ、公開を止められたいわくつきの作品。うっとうしい抗議団体の相手をしてまで上映する価値はない(儲からない)と判断され取りやめられたイルカ映画とは違い、本当の意味で「表現の自由」を奪われた悲劇の映画作品である。

70点
≪こんな会社があったら嫌だ≫

英国発の傑作サスペンス『エグザム』は、しかし悲しいかな日本ではレイトショー公開である。内容は、非人道的な課題を押し付けるトンデモ企業の採用試験の様子を描いたもので、時節がらシャレにならないリアルさだ。やはりこういう映画こそ、大人が楽しむのにふさわしい。

ある企業の最終採用試験に、8人の男女が残った。彼らが集められたのは窓ひとつない殺風景な部屋。ひとつしかない出入り口には武装したガードマンが立っており、試験監督は奇妙な3つのルールを口頭で伝えると、さっさと部屋を出ていってしまった。怪訝な表情で各自が問題用紙を見ると、それはなんと白紙。大混乱に陥った8人は、先ほど聞いた「3つのルール」に抵触しない「互いに協力し合う」提案を誰からともなく行う。彼らは互いを完全に信用したわけではなかったが、このおかしな就職試験の謎解きに、とりあえずは共同して挑むのだった。

汚れたバスルームで拘束された状態で目覚める「SAW」、看守と囚人役を設定した社会実験「es [エス]」など、異常なシチュエーションで繰り広げられるスリラーには秀作が目立つ。『エグザム』の舞台はそうしたライバル作の中でもかなり限定的で、登場人物は両手の指で足りる数。目だったスターはおらず、撮影場所は試験部屋だけ。いかしたアイデアだけで勝負する、低予算映画の鑑のような作品である。

70点
≪いかにも今どきのアメリカ向き映画≫

人工臓器の回収人という、素っ頓狂な設定が楽しい『レポゼッション・メン』は、いかにもいまどきのアメリカ人向きブラックジョークに満ちたSF映画だ。

近未来、人々は優れたテクノロジーによる人工臓器を取り替えていくことで、かつてない寿命を生きている。そのトップメーカーのユニオン社は、しかしあまり表ざたにしたくない"回収人"を多数雇っていた。高額な人工臓器の長期ローン滞納者から、強引に自社製品を回収する汚れ仕事を担当する人員だ。ベテラン回収人で腕利きのレミー(ジュード・ロウ)は相棒のジェイク(フォレスト・ウィッテカー)と手際よく回収業務を行っていたが、あるとき事故で自らが人工臓器を埋め込まれてしまう。

ミイラ取りがミイラになるお話。回収人が回収される側になって、気の毒な貧乏人の気持ちを味わう教訓話といってもいい。斬新な世界観、中国語があふれる近未来のアメリカの風景、容赦ない回収から、必死に逃げ回るハードアクションなど見所はたくさん。

70点
≪マニア受けが悪そうな分、一般人には普通に楽しい≫

多くのホラーヒーローが活躍した80年代。ここ数年はあたかもブームのように、「ハロウィン」のブギーマンや「13日の金曜日」のジェイソンが、リメイクによりカムバックを果たした。そしていよいよ『エルム街の悪夢』のフレディが、満を持して登場する。

友人の一人が信じられない死に方をしたナンシー(ルーニー・マーラ)らエルム街の若者たちは、自分たちが被害者と同じ夢を見ていることに気づく。夢に登場するのは派手なストライプのセーターを着た男(ジャッキー・アール・ヘイリー)。この夢の中の不気味な男が、なんらかの鍵を握っているのだろうか。

オリジナルから時がたっているため、最も重要なフレディ・クルーガー役が御大ロバート・イングランドからジャッキー・アール・ヘイリーへと変更された。ジャッキー・アール・ヘイリーは、「がんばれ!ベアーズ」一連の作品で、強打者の不良少年の役をやっていた元子役。最近は「ウォッチメン」のロールシャッハ役などで再ブレイクを果たしている。苦労人だけに、キャリア最大といってもいい大役に対する意気込みは相当に強い。

70点
≪凶悪度はダウンしたが、相変わらずぶっとんだ映画≫

「東京はセックスに取り付かれた街だから(ロケ地に)選んだ」と、本作の監督ギャスパー・ノエは言った。このフランス映画界の鬼才は、よく日本を理解していらっしゃる。確かにある意味、日本人の性に対するこだわりはハンパではない。セックスと輪廻をテーマにした『エンター・ザ・ボイド』の舞台として、これ以上ふさわしい場所はないだろう。

新宿、歌舞伎町。ドラッグディーラーとして細々と生きているオスカー(ナサニエル・ブラウン)は、愛する妹リンダ(パス・デ・ラ・ウエルタ)を日本に呼びよせ、ようやく念願の二人暮らしを始めた。ところがあるとき、店に踏み込んできた警官に誤射され、あっけなく死んでしまう。

映画はすべてこのオスカー(とその魂)の主観映像で、高度なCG・編集技術により一切のカットを感じさせない。つまり143分間ワンカット&主観映像という、とてつもない変化球映画となっている。さすが前衛作家の名をほしいままにするノエ監督である。

70点
国内専用ミュージカル

『矢島美容室 THE MOVIE 〜夢をつかまネバダ〜』を見ると、身の程を知るという言葉がいかに大事かがよくわかる。誰がどう見てもキワモノなこの企画を、本作のスタッフたちは予算人員等限られたリソースを自らの得意分野に集中させる事で、それなりに見られる形にした。自分たちにできる事とできない事を冷静に判断できたからこその成功例である。いかにもテレビ的な発想だが、それが良い方向に働いたといえる。

アメリカ、ネバダ州で美容室を営み暮らす母マーガレット(本人、以下同)、長女ナオミ、次女ストロベリー。彼女たちの平凡な暮らしを、あるとき父親の家出という大事件が襲う。ストロベリーは学校でライバルのラズベリー(黒木メイサ)にソフトボール対決を挑まれ、ナオミはミスコンテスト本選に挑む最中の出来事であった。

木梨憲武や石橋貴明の女装顔のドアップを大スクリーンで見たときには、おそらく金を払ってなんでこんなモノを見なくてはならないのだろうと切ない気持ちになること請け合いだが、それを補って余りある楽しさが本作にはある。

70点
SFの体裁を借りて労働問題を描く

同週公開『第9地区』が社会派SFアクションなら、『月に囚われた男』はそれ以上に社会風刺の効いたSFドラマだ。こうした優れたSFが、同じ週に二本も見られると言うのはうれしい限り。私としても、ぜひ両方見てほしいと思う。

舞台は近未来、月面基地に3年契約で派遣されたサム(サム・ロックウェル)だが、契約満了までいよいよ2週間となった。ところがそんなとき、彼は月面車で事故をおこしてしまう。なんとか生き延びるサムだが、その後彼はありえないものを見るハメになる。

序盤、「3年間、月面に単身赴任する男」の事情というか普段の生活のようなものが描かれるが、この時点ですに終盤への伏線が着々と張られている。原作はなく、映画オリジナル脚本ということで、テーマも現代的。低予算だが監督はPVの経験があるので特撮には強い。面白くなりそうな条件がそろっている。

70点
失業者ガンバレのメッセージを素直に受け取れないのはなぜか

どんな国でも多かれ少なかれ、映画業界というのはプロパガンダの役割を担いがちだ。とりわけアメリカはその傾向が強く、私はハリウッドをアメリカ5番目の軍隊(沿岸警備隊を入れるなら6番目?)と呼んでいる。むろん、そこで働く人たちにそんな自覚はないだろうが、そのように利用されているという意味での話だ。そして、そう称されるだけの価値がある業界ということでもある。実際は日本のように、内外どちらに対してもそんな影響力などない国がほとんどなのだから。

訴訟を恐れる企業に代わり、リストラ対象者にくびを言い渡す仕事をしているライアン(ジョージ・クルーニー)。この不況で彼の会社は大忙しで、ライアン自身も年に322日間も出張している。そんな彼の趣味……というより人生の目的はマイレージポイントを貯めること。そして、ついに最終目標とするポイント寸前で、新入社員(アナ・ケンドリック)によって思わぬ横槍が入る。

全米中を飛び回って、行く先々で労働者をクビにする男の物語。画面には墓標のように次々と都市名が現れ、不況に逃げ場なしの印象を強く持たざるを得ない。リストラシーンの多さでは類を見ない失業映画、世界でもっともイヤなロードムービーである。

70点
ライト感覚の古風な犯罪ドラマだが、決して古臭くはない

毎週同じ場所でジャズを演奏し、毎年ほとんど同じフォーマットで映画を作る。そんな神経症的な映画監督ウディ・アレンの新作は、監督本人が「悲劇」と呼ぶ犯罪ドラマ。

舞台はロンドン。労働者階級として、しがない父の食堂を手伝う兄(ユアン・マクレガー)と、自動車修理工場で働く弟(コリン・ファレル)は、あるとき思い切って中古のヨットを購入する。ヨットとともに運気も上昇する二人だったが、その先に思わぬ落とし穴が待ち受けていた。

ウディ・アレン自身は出演していないし、確かに悲劇といえばそうなのだが、見ようによっては喜劇そのもの。どちらも表裏一体ということか。

70点
心を傷つけるおそれのある犯罪映画

少女を監禁して筆舌に尽くせぬ虐待をした事件といえば、日本人なら誰でもあの悲劇を思い出すことだろう。だが、世界に冠たる犯罪大国アメリカにも当然のこと、類似の事件がないはずはなく、シルヴィア・ライケンス事件という65年におきた痛ましいケースが有名である。かつてエレン・ペイジ主演で映画化もされているが、『隣の家の少女』はこの実在の事件を大きくアレンジした犯罪ドラマだ。

58年のアメリカ。自然豊かな郊外で暮らす12歳の少年デヴィッド(ダニエル・マンチ)の家の隣に、年上の少女メグ(ブライス・オーファース)とその美しい妹が越してくる。二人はひどい事故で両親をなくし、妹は脚に障害を負ってしまっていた。デヴィッドは姉のメグに惹かれ急速に仲良くなるが、隣家の主、ルース夫人(ブランチ・ベイカー)はなぜか姉妹に厳しくあたるのだった。

ショッキングな描写が多数あるということで話題になっているが、現実の事件とはいろいろな部分で異なっている。犯人の女が虐待にいたった動機がまったく異なるし、姉妹が越してくる理由、妹の障害の理由なども違う。この変更の理由が、今の時代に映画化する必然性としてリンクしていればなお良かったと思うが、あまりそうした印象は受けない。

70点
アカデミー賞受賞も当然の、いまアメリカに一番必要な映画

アカデミー賞はアメリカ映画界の業界人の政治的思惑で決まるものであり、作品の出来は二の次ですよと私は常日頃から言っているが、それを陰謀論だのユダヤのなんとかだのと批判する人がいる。

だが誰かの陰謀と政治的決定とは似てまったく異なるもので、そもそも多数の会員の投票で決めるアカデミー賞に、陰謀だの八百長の余地はない。ただ会員の構成を見れば、そこに「暗黙の了解」「みんな空気読めよ」的なものがあるのは当然の事だよと言っている。

そんなわけで、別に私は誰かの陰謀で『アバター』が受賞する可能性はゼロだと(受賞式前日のTBSラジオで)断言したわけではなく、ビジネス的視点から論理的に予測しただけだ。その根拠は2010年3月11日、東池袋で行ったトークライブで詳しく話したが、簡単に言えば『アバター』が作品賞など重要な賞を受賞してしまうと、アカデミー賞にとっての大事なスポンサーが大ダメージを受けるという事だ。

70点
仙台ロケは迫力満点

『ゴールデンスランバー』は、首相暗殺の容疑をかけられたいち市民の逃亡劇を描いたアクションである。この新首相は、ケネディよろしくオープンカーでパレードしているところを狙われる。

ところで普通の人々にはまったくうかがい知れぬ話と思うが、いま民主党政権はいわゆる外国人地方選挙権を推し進めようとしていることから保守の人々に死ぬほど恨まれており、「こうなったらテロしかない」などと物騒な声すら聞こえてくるほど。映画の総理大臣も政権交代したばかりで、なんとなくしゃれにならない符合である。

ちなみに件の外国人参政権であるが、そんなものを通しても小沢幹事長の悲願である参院選勝利にはほとんど直接的集票効果がない以上、どこかで取り下げるに決まっている。地検特捜部もいい具合に踊ってくれており、小沢氏としても取り下げる機会到来ということで、内心ほくそ笑んでいるのではなかろうか。

70点
幼女と労働者に向けたアニメーション

案外盲点であるが、幼児向けの映画というものは、幼児だけが見るものではない。

幼稚園児がクラスメートと手をつないで映画館までやってくることは(たまにはあるかも知れないが)まず無いわけで、通常は親御さんが一緒にやってくる。そこで目ざとい業界人は考える。子供が見たがる映画を作れば、親の人数分よけいに儲かる、と。ここまではよくある話。

だが、商売よりもいい作品を作りたいと考えるクリエイターならば、きっとこう考えるはずだ。子供を楽しませながら、(同時に必ず見に来るであろう)親の世代にユニークなメッセージを伝える事はできないか、と。

70点
意外な社会派ものであることに注目してほしい

アメリカ最大のプロレス団体WWEは、かなり前から映画制作にも進出している。そこでは自団体の選手を積極的に起用しているわけだが、みな第二のザ・ロックを目指せとがんばっている。

最高の肉体と、それなりの演技力を持つ大男たちを大勢擁するプロレス団体が作るのだから、当然アクション映画はお手の物。プロレスのバトルロイヤル(大勢をリングで乱戦させ、最後に勝ち残った選手が優勝)そのもののプロットである、『監獄島』のような映画ならなおさらであろう。

絶海の孤島に世界中から極悪死刑囚10人が集められた。その一人コンラッド(スティーヴ・オースティン)は、他の連中と同じように足首に爆弾を巻かれた上で、ルールの説明を受ける。それは、時間制限の元に殺し合い、一人だけ生き残った場合は恩赦と大金が得られるというものだ。主催者はそれをネットで生中継し、莫大な利益をあげようとしているらしい。

70点
猛烈な感情を感じる、静かだが激しい映画

ある程度の数をみると、映画にはざっと二種類あることがわかる。商業的成功を主目的にしたものと、儲けを二の次にしても(映画作家たちが)作りたくて作る作品である。むろん、映画づくりはバカみたいに金がかかるから、他人の金を集めて作る限り、完全な意味での好き勝手が出来るはずはないが、それでも後者の方が、(たとえ予算規模は少なくとも)より情念のこもった作品になるのは当然である。

そんな中でも「カティンの森」は、特別に監督の情念に溢れた作品。なぜならこの戦争映画は第二次大戦下のポーランドで起きた虐殺事件(カチン事件)を描いたもので、アンジェイ・ワイダ監督の父親は、その虐殺の被害者の一人だからだ。

1939年のポーランド。この時代この国は、ナチスドイツとソ連により、分割占領されている。ドイツ軍から逃げるように東進するアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)とその娘ニカは、夫のアンジェイ大尉(アルトゥル・ジミイェフスキ)と野戦病院で再会する。共に逃げようという妻子に、アンジェイは仲間を見捨てられぬと語り、ソ連軍によって東へ移送されてゆく。

70点
説明できない良さ

『マイマイ新子と千年の魔法』は、たぶん興行的には相当厳しいのではないかと心配している。

なぜならこのアニメーション作品は、その良さを理解してくれるであろう対象年齢層が非常に高いためだ。はたしてそうした人々に、適切なプロモーションを行っていけるか。宣伝会社の手腕が問われるところだ。

昭和30年代、山口県防府市。空想好きな小学三年生の少女・新子(声:福田麻由子)は、東京からの転校生でこの土地になじめない貴伊子(声:水沢奈子)と仲良くなる。やがて新子の友達である男の子たちも加え、豊かな自然の中で遊ぶうち、貴伊子も本来の明るさを取り戻していく。

70点
高校生に授業で見せるべき映画

この秀逸なタイトルは、原作となった2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板におけるスレッドの名前から取ったという。とくに「ブラック会社」という、最近よく聞く用語の名づけが上手いと思う。

若いころに勤務した会社が倒産したりして、結果として多数の職場を転々とする事になった私も、「ブラック会社」については身をもってよく知っている。当時のつらい経験のおかげで、求人広告を見ればその会社が黒か白かだいたい判別できる能力を得たが、現代はそんな苦労をせずともインターネットのおかげで若い人は「ブラック企業」を避ける事が出来る。

「ブラック企業・会社」がいかに労働者の人権を踏みにじり、人間の尊厳を破壊するか。それを考えれば、彼らの情報が広まるのは大変良いことであろう。

70点
中国人とイラン人とロシア人がアメリカで

『千年の祈り』は、アメリカの中で、中国人とイラン人が仲良くするというお話。いうまでもなく、前者は不況の米国がいまもっとも頼りにする経済大国。一方、後者のイランは軍産複合体による次期大規模公共事業の現場候補の筆頭である。

どちらも完全なる友好国とは言い難いが、アメリカにとって不可欠なパートナーであるわけで、そんな構図を持つ本作に私は強く興味を持った。

アメリカで離婚したばかりの娘(フェイ・ユー)を心配して、12年ぶりに北京から父親(ヘンリー・オー)がたずねてきた。だがアメリカ生活にすっかりなじみ、中華なべさえ持たぬ娘はもはや、父親とまったく心を通わすことはない。そんな状況を嘆きつつも、父親は日々散歩にでかけ、娘が暮らすこの国を知ろうとする。やがて彼は、隣人のイラン人女性(ヴィダ・ガレマニ)と知り合い、ほとんど通じぬ英語で交流を始めるが……。

70点
3時間22分、途中休憩10分の大長編

『沈まぬ太陽』は、山崎豊子の長編小説の映画化。この原作は彼女の作品の中でも「映像化されていなかった最後の傑作」という位置づけらしい。これまでなぜ映画化、ましてテレビドラマ化されなかったのか。様々な理由があるだろうが、その一つは内容が猛烈なJAL批判にならざるを得ない、という点と無縁ではないだろう。

ナショナルフラッグキャリア「国民航空」の労組委員長・恩地(渡辺謙)は、副委員長の行天(三浦友和)とともに労使交渉を勝ち抜き、労働者の待遇改善を勝ち取った。だが、決して妥協しない恩地には厳しい懲罰人事が待っていた。一方行天は経営陣と関係改善し、出世のメインストリートを登り続けていく。そして、長きにわたる僻地勤務の末に恩地に与えられた任務は、御巣鷹山に墜落したジャンボ機被害者遺族の世話係という過酷なものだった。

『沈まぬ太陽』どころか、JAL本体が沈みかけている今日この頃だが、もちろん本作はすべてフィクション。パンフレットにもやたらと目立つ文字で強調されているが、もちろんそんなものは建前に過ぎない。戦後、日本航空の内部で何が起きていたか、航空史上最悪の墜落事故の裏に何があったのか。スタッフ、キャストが一丸となってその謎に挑む本格社会派作品である。

70点
ラジオ好きのための感動群像ドラマ

ラジオファンにとって、パーソナリティーとは憧れの存在。なまじ声しか聞こえないから、妄想いや想像によっていくらでも膨らませることができる。一家団欒でラジオを囲んで食事する人などいないように、このメディアは出演者と一対一で向き合うような、パーソナル感が最大の魅力である。パーソナリティーとの距離感は、テレビとは比較にならないほどに近い。

父親の反対を押し切ってパーソナリティーになった久保田真生(常盤貴子)は、和解できぬまま死別したことが心の傷となっている。彼女はあるとき「父と祖父が長年喧嘩して険悪だ」との番組宛の手紙に目を留める。送ってきたのは函館の男子高校生(林遣都)。自身の境遇に重ね、助言の言葉が見つからなかった真生は、思い切って少年をたずねていく。

常盤貴子のように美人で美乳のパーソナリティーが突然たずねてくるとは、まさにラジオファンの願望かなったりである。そこで彼女は、一家の複雑きわまりない確執をほどこうと身を投じ、一騒動起こすことになる。

70点
ノーテンキ世紀末アクション

『ドゥームズデイ』は、モヒカン刈りに肩パットをつけてヒャッハー! の世界をあますところなく映像化した痛快アクション劇である。

ぷんぷんとB級カルトのにおいがするが、製作費は堂々の30億円クラス。ニール・マーシャルという監督は「ディセント」(05年)だの「ドッグ・ソルジャー」(02年)といった、微妙なB級C級娯楽映画が得意な人で、本来1000万円も与えればそれで十分な映画を作る人物。

そんな男に30億円も与えてしまったからさあ大変。バイクの前に妙にリアルなドクロをつけるわ、ハイテク軍隊の最新装甲車をヒャッハー!な男たちがひっくりかえすわ、バカバカしい事ばかりにエネルギーとお金をつぎ込んだ、強烈な一本が誕生した。

70点
男性こそ見るべき、現代の西部劇

「決断の3時10分」(57年)を07年にリメイクした本作は、好評ではあったが公開がかなり遅れた。西部劇の新作じたいほとんど見られない昨今、日本で劇場公開されたことだけでも御の字といったところか。西部劇で映画の楽しさを知った身としては、少々寂しい気もする。

南北戦争で脚を負傷し、いまだ不自由なダン(クリスチャン・ベイル)。そのせいで牧場経営もうまくいかず、生活は苦しくなるばかり。そんなある日、ダンは、有名な強盗団のリーダー、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が捕まる場に出くわす。ウェイドを裁判所まで護送するため、3日後の3時10分に発車するユマ行きの電車に乗せねばならないが、駅までの道のりにはウェイドの部下が多数待ち伏せ、命の保証はない。そこで保安官は護送を手伝うボディガードを募集、ダンは借金を返すために名乗りを上げる。

息子との重要な関係性を、リメイク版オリジナルの要素として織り込み、現代人を共感させる脚本へと蘇らせた。責任感から、命がけの無茶な仕事をひとり成し遂げようとする主人公の姿は同じだが、その動機付けが少々異なる。50年もの時代を隔てた新旧の主人公が、それぞれ何に責任を感じているのか、その違いを考察するのも面白い。

70点
『時かけ』の監督が送る近未来ホームドラマアクション?!≫

『サマーウォーズ』を一言で言えばとっぴなお話、ということになるが、これを全国公開の長編作品にまでまとめあげた細田守監督の力はさすがだ。きっとアニメーション版『時をかける少女』(06年)の成功が大きな自信となり、いい意味で迷いを吹っ切れているのだろう。

数学だけは得意だが内気な健二(神木隆之介)は、学園のアイドル的な先輩夏希(桜庭ななみ)から「私と二人で実家に戻り、数日過ごすこと」という素敵なアルバイトの申し出を受ける。彼女の実家は由緒ある戦国武将の家系で、その日は現当主、栄(富司純子)の90歳の誕生日とあって、大勢の親類が集まっていた。すると夏希は、そこで健二にとんでもない真意を明かす。

田舎で大勢が集まって、あれやこれや大騒ぎするというと、いかにも日本的ホームドラマだが、正直あまり興味はない──それが、事前に私が感じていたすべてだった。

70点
アラフィフ女性がダイエットに挑む姿を、全世界に赤裸々公開

女性監督みずからダイエットに挑むという、やけっぱちドキュメンタリー『THE ダイエット!』。これを見ると、たくさんの笑いと涙を与えられ、明日から自分もダイエットを頑張ろうという気になれる。もちろんその努力はきっと失敗するが、面白い映画を1本見たという事実だけはとりあえず残るだろう。

この映画の監督・関口祐加は49歳のシングルマザー。自他共に認めるスーパーデブだ。映画が始まると、いきなり彼女のふくよかすぎる肉体がボヨンボヨンと画面に踊り、あげくの果てにはヘアヌードまで登場する。

ギャスパー・ノエだったら間違いなく警告するであろう「観客の感受性を破壊しかねない危険シーン」に、私は大きなショックを受けた。このトラウマをどうしてくれる。

70点
スパイク・リー監督の戦争映画は、ミラクルな感動もの

『セントアンナの奇跡』は、社会派スパイク・リー監督らしいブレない主張性と、老練な映画作りのテクニックの両方を楽しめる、通向きの一本だ。

1983年ニューヨーク。定年間近の老郵便局員が、ドイツ製の拳銃でひとりの客を射殺した。犯人の部屋からは、イタリアのある彫像の頭部が発見される。謎だらけのこの事件を解く鍵は、1944年のトスカーナ、大戦中のイタリア戦線にあった。

ここから長い回想シーンに入り、最後に謎がすべて明らかになるとき、その奇跡に観客は感動、涙を流すという仕組み。

70点
アナソフィア・ロブの可愛さは地球最高レベル

ゲームの『アステロイド』が映画化決定したり、ドリームワークスのアニメ『モンスターVSエイリアン』がお化けヒットしたりと、最近はUFOネタが流行中。この『ウィッチマウンテン/地図から消された山』もそのひとつで、ロズウェル事件で有名な「エリア51」に並ぶ怪しいスポット、という触れ込みの「ウィッチマウンテン」を舞台に冒険が繰り広げられる。

タクシー運転手のジャック(ドウェイン・ジョンソン)は、ラスベガスで奇妙な姉妹を乗せる。兄のセス(アレクサンダー・ルドウィグ)と妹のサラ(アンナソフィア・ロブ)。どこか浮世離れした二人が指定したのは荒野のど真ん中の廃屋。様子がおかしいと降りて見に行ったジャックは、そこでとんでもないものを見る。

ディズニーらしい、ファミリー向けのアドベンチャームービー。小学生くらいの子供をつれて、お父さんが見に行く、というような映画だ。

70点
シュワちゃん登場シーンの盛り上がりがすごい

2作目の公開後、制作会社の倒産による権利関係のトラブルがようやく沈静化し、待望の新章の幕開けとなった「ターミネーター」。シュワちゃん大活躍のT3や、女子高生ターミネーターが登場するテレビ版に続き、製作費190億円超の超大作として、いよいよこの映画版4作目が公開となる。(ここから先は脳内にテーマ曲を流しつつお楽しみください)

2018年、核戦争で荒廃した地上では、機械と人類の壮絶な戦いが繰り広げられていた。機械軍「スカイネット」は、T-600など強力なターミネーターを野に放ち、生き残った人類を狩り続けていた。レジスタンスの小部隊を率いるジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)は、総司令官と対立しつつも、運命に導かれるように人々の支持を集めていた。

超話題作として期待されていた本作だが、米国ではまさかの初登場2位。コメディ映画「ナイトミュージアム2」に敗北を喫し、翌週には4位にまで転落した。

70点
NHK発、愛国経済ドラマ

最近NHKは、看板番組NHKスペシャル「JAPANデビュー」において、内容が反日偏向しているとの批判にさらされている。視聴者からの苦情が、なんと数千件も寄せられているそうだ。インタビューされた台湾人が、「話の主旨を正反対に捻じ曲げられる編集をされた」と怒っているのだから、制作者としても逃げ場がない。放送局設立以来のピンチである。

ところが、彼らがかつて放映したテレビドラマの映画化『ハゲタカ』は、むしろ中国政府の方から苦情がきそうな反共的内容。映画がどんな思想の元に作られていてもかまわないと私は思っているが、今回ばかりは時期が時期だけに、面白く見させていただいた。

かつて数々の企業買収劇の主役として、ハゲタカの異名をとった鷲津政彦(大森南朋)。彼の元に、現在は大手自動車会社の役員である盟友・芝野(柴田恭兵)がたずねてくる。その話によると、日本を代表するこのメーカーが、中共の息がかかった新興ファンドから敵対的買収をかけられており、鷲津になんとか救ってほしいというのだ。

70点
他に類を見ないガチンコ女子高生格闘アクション

映画会社社員として「マッハ!」(03年、タイ)を買い付け大ヒットに導き、トニー・ジャーを日本に紹介した西冬彦監督は、しかし一抹の寂しさを感じていた。香港にも、ハリウッドにも、そしてタイにもこんなに凄いアクション映画があるのに、なぜ日本にはないのか。

いてもたってもいられなくなった彼は会社をやめ、なんと自分で金を集め、作ることにした。

『ハイキック・ガール!』は、ひとりの情熱的な男が、一歩間違えば派遣村の一員になる危険を冒しながら作り上げた、渾身のアクション映画である。

70点
無用なほどに熱い男の野球ドラマ

森田まさのりによる原作の野球漫画も、そのドラマ版も私は見ていない。どう考えても置いていかれるに違いないと思いつつの鑑賞だったが、これが意外なほど面白い。チョイワル男たちの熱いドラマを、私はすっかり気に入ってしまった。

ニコガク(二子玉川学園高校)野球部の面々も3年生となり、いよいよ甲子園への最後の挑戦が始まった。熱血教師・川藤(かわとう)(佐藤隆太)のもと、エースの安仁屋(あにや)(市原隼人)たち部員の士気はきわめて高い。ところが大リーグ志望の新入部員・赤星(山本裕典)は、高校野球などはなから眼中になく、自分勝手な行動でチームワークを乱し始める。

平川雄一朗監督は撮影前、脚本を読みながら号泣。キャストの面々もクランクアップが近づくにつれ大泣きしたそうだ。撮るほうも撮られるほうもオイオイ泣きながら作っているという、想像すると笑ってしまいそうな話だが、なるほどたしかに画面からは熱い何かを感じられる。世間体など気にせず、やりたい道へ突き進む人間だけが持つ潔さとでもいおうか、どこか爽やかな空気が漂っている。

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