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2121件中 501~550件 を表示しています。
70点
意欲は感じるが、これでは平凡な若者に届かない

北野映画の中でも一般人気の高い『キッズ・リターン』公開から17年。日本社会の空気はさらに重くなり、若者の活力もなくなっているように見える。

そんな現状に危機感を抱き、なんとか励ましたいとの思いから、そのプロデューサーと本作の清水浩監督は「キッズ・リターン」をもう一度世に出すことを決めた。

設定はあの二人の10年後。続編とはあえてうたっていないが「キッズ・リターン」の鑑賞は必須、DVD等で予習してから出かけたい。

70点
才能は引き継がれる

作品数が多く、穏やかなパステル調の色合いから、誰より日本人が好む画家といわれるルノワール。「ルノワール 陽だまりの裸婦」はその晩年を描いた伝記映画だが、彼のミューズというべき再重要な女性を、きわめて斬新な形で描いた佳作である。

巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール(ミシェル・ブーケ)の、古木に囲まれた住居地レ・コレットにモデル志望の美少女デデ(クリスタ・テレ)がやってくる。持病のリウマチに悩まされていたルノワールだったが、彼女の才能を見込んだ彼は、さっそく雇い入れることにする。

ルノワール伝記をドラマとして描くとしたら、こうするほかないという構成である。すなわちそれは、

70点
役に立つお勉強ドキュメンタリー

飢餓問題を語るとき、ちょいと詳しくなるとこんな事をいうようになる。「世界の食糧生産はもう十分人類全員をまかなえるだけある。つまり飢餓問題は食料の量ではなく配分の問題だ、食料が足りないのではなく、買えない貧困こそが問題なのだ」と。

たしかに一理あるのだが、その認識は不十分である。

「もったいない!」は、その段階でとどまっているレベルの観客に驚きと新事実を与え、さらなる高見につれていってくれる良質なドキュメンタリーである。

70点
変更多いが違和感はさほどなし

東映アニメーションとしては史上最大の製作費をつぎ込んだ「キャプテンハーロック」は、第三者から見ると大きな賭けであった。米国ではともかく2D全盛の日本では受けがいいとは言えない3DCGアニメ、それも実写志向である点、あまりにも有名すぎる原作である(つまり熱烈なファンが多い)点、知名度重視の有名人キャスティングと、地雷要素が多数見受けられたからである。

遠い未来、広大な宇宙を開拓した人類はやがて地球への帰還を望むようになった。そんなエゴがカムホーム戦争とよばれる争いを引き起こすが、地球を聖地として立ち入り規制することで決着した。それから100年、地球統治機構が不倶戴天の敵と認める宇宙海賊アルカディア号の艦長ハーロック(小栗旬)が新規乗組員を募集しているのを見て、彼らは暗殺者を送り込む。

さて、このリスキーな企画は初登場2位(1位は「風立ちぬ」)という大健闘によって関係者をまずはホッとさせた。

70点
つかず離れず大阪の魅力を描く

いまの日本のメジャー映画は驚くほど低調な作品がごろごろしているため、質的な面での比較に限定するならば、低予算のインディーズ作品でも下剋上を起こすチャンスは非常に高い。潤沢な資金力により他を圧する米国ではなかなかそうもいかず、ウォッチする側からすると面白い部分でもある。

定年退職を機に、パチンコと公民館くらいしか娯楽のない大分の田舎町から大阪へやってきた天本(平田満)。ここで大学に通っている娘ユキ(咲世子)を訪ねてきたのだが、実はもう何年も会っていない。不案内な土地で戸惑っていると通りすがりの親切な女の子あかね(真凛)が助けてくれた。彼女はユキとの待ち合わせ時刻までの間、大阪のディープな裏側を案内してくれたが、天本が再会したユキを見て、なぜか表情を曇らすのだった。

「ソウル・フラワー・トレイン」は、ロビン西の原作コミックに惚れ込んだ西尾孔志監督が、原作者との綿密なやり取りを経てアレンジした脚本をもとに実写化した人情ドラマ。西尾監督の、事実上の商業映画デビューとなる作品ながら、上映を見た人々から高く評価されている話題作である。

70点
オンナノコのスポ根映画

スポ根映画の雛形で女の子の自己実現物語を描く「タイピスト!」は、いますぐ元気になりたい女の子にぴったりな、おしゃれでレトロなエンターテイメントである。

1950年代のフランス。人気職業の秘書になりたい田舎娘のローズ(デボラ・フランソワ)は、必死のアピールで保険会社に就職するが、わずか1週間で経営者のルイ(ロマン・デュリス)に首を言い渡される。しかし彼女唯一の才能である早打ちタイプの選手権で優勝すれば話は別、と持ちかけられる。

世間知らずで怖いもの知らずの純朴田舎娘が、かっこいい上司に才能を見いだされ、住み込み特訓を受けてタイピング大会に挑む。なんとまあ都合のいい職場があったものだと思わせるお気楽設定である。

70点
母は息子のために、息子は母のために

アメリカ製日本風ロボット映画「パシフィック・リム」が話題だが、「オーガストウォーズ」はそのロシア版……というふれこみではあるのだが、これはむしろロシア版「ライフ・イズ・ビューティフル」(97年、伊)。感動的な、そしてまじめな戦争映画である。

08年8月。5歳の少年チョーマ(アルチョム・ファディエフ)は別居中の父親がいる南オセチアに向かった。ところが突然グルジア軍が進攻、再開の地は最前線となってしまう。それをニュースで知った母親(スヴェトラーナ・イワノーワ)は、無謀にも徒手空拳で現地へと向かう。

ロシア映画としては真新しいVFXによるロボットアクションがまずは目を引く。これらは物語のキーとなる幼い息子、ロボット好きのチョーマが目前の過酷すぎる戦争=現実を脳内でファンタジーに変換した映像である。敵軍は凶悪なロボット、それに対抗する正義のヒーローは……。

70点
リア充安心の新鮮なゾンビ映画

ゾンビ映画というのは「オタクの、オタクによるオタクのための」ジャンルというべきものだが、超A級スター=ブラッドピット主演のゾンビ映画大作「ワールド・ウォーZ」は、きわめて珍しいアンチオタクな作りになっている。

元国連捜査官のジェリー(ブラッド・ピット)は、人間をゾンビ化するウィルス感染者に目の前で遭遇する。その後彼は、世界的規模で拡大するウィルス汚染の対策を、伝染病防疫に関する専門的技能に期待され命じられる。人類を、そして何より愛する家族を守るため、米軍の庇護を受け各国を回るジェリーだが……。

血しぶきの量や飛び方、肉片を喰らうエグさを熱く語る映画オタクは蚊帳の外。今夏一番大勢の人間が死ぬ映画だというのに、その手の残虐シーンはオールカット。ファミリーで安心してみられる、家族愛の物語になっている。

70点
死亡シーンばかり集めた悪趣味オムニバス

夏にはホラーということで、確たる合理的理由はないが夏には怖い映画を見るのが風物詩となっている。そんなわけでいくつか今年も公開されているわけだが「ABC・オブ・デス」はなかなかの異色作。なにしろアルファベットの数だけ(26人)の監督が、それぞれ死にまつわる5分間の短編を持ち寄るオムニバスというのだから突っ込みどころは満載だ。

まず、5分間という制限がいい。つまらなくてもちょいと我慢していれば次に行くので、各作家が実験的なチャレンジをするための精神的ハードルはとても低い。次の打者が強力だから凡退覚悟で思い切って振りに行こう、ってな気分で挑める。実際、普段以上にぶっとんだ映像表現に挑戦している監督ばかりで、その結果、5分に数回は見せ場を楽しめるテンポのいいオムニバスになっている。

テーマが「死」というのも、誰にでも共感できるもので正解だ。この映画に作品を持ち寄った監督は、アメリカ、フランス、日本といった映画大国をはじめ、イギリス、インドネシア、カナダ、セルビア、ベルギー、タイ、デンマーク、メキシコ、ノルウェー、オーストラリアと百花繚乱。だが、テーマがテーマなので理解しにくいものは少なく、直感的に感じ取れるものばかり。台詞がない作品もあるが、真意はちゃんと伝わる。

70点
真木は熱演だが同時にボトルネック

異形なる男女の愛の姿を描いたドラマである本作において、ヒロインを演じた真木よう子は、演技派の面目躍如の見事なパフォーマンスを見せたものの、それでもわずかに届かぬその限界がつくづく惜しいと思わせる。

幼児殺害事件の容疑者として、被害児童の母親が逮捕された。その隣人として公営住宅に暮らす尾崎俊介(大西信満)は、同居中のかなこ(真木よう子)の告発によって共犯者と疑われ拘束されてしまう。だが、事件を調べ始めた週刊誌記者(大森南朋)には、愛し合う二人がなぜそんな事をするのかわからなかった。

すべての真相が明らかになるとき、私たちは「ここまでして相手を愛する形もあるのか」と驚く。観客の想像力を上回る愛の形を提示した点は、高く評価できる。

70点
モンサント社員と安倍晋三はこれを100回見ろ

中村義洋というのは近年とくに人気のある監督だが、その多作ぶりからすると相当忙しいのではないかと想像する。そしておそらくその多忙さが、いつも肝心な部分の詰めの甘さとなって作品に出ているようで私は毎度悔しい思いをしている。「奇跡のリンゴ」も、日本映画の平均よりははるかに上回るものの、もう何か月かかけて脚本と演出を詰めておけば相当な傑作になれたであろう一本である。

1970年代の青森。リンゴ農家の一人娘(菅野美穂)と結婚した秋則(阿部サダヲ)だが、あるとき最愛の妻が農薬被害に悩まされていることを知り、リンゴの無農薬栽培を決意する。だがそれは「神の領域」として、他の農家全員が必死に止めるほどの難関であった。それでも笑顔で進み始めた秋則だが、それが想像を絶する苦難への道だということを、その時は何一つわかってはいなかった。

石川拓治原作のノンフィクションを基にした感動ドラマで、日本農家の職人気質と生真面目さを表す象徴的なエピソードがつづられている。アベノミクスが嬉々として進めるTPP政策で農業壊滅といわれる今、なかなかタイムリーな企画である。

70点
何かを捨てて何かを得る

断捨離、という言葉がある。人の容量とは、すなわち脳みそのハードディスクも生物的時間も有限であるから何かを捨てないと新しいものが得られない。これがよき人生を送るための肝であると、そういうことを言う人もいる。大切なものを失っても、しばらくするとすっかり忘れて、前よりも明るくなれた経験をした人も少なくないだろう。

だが、だからといって何でもかんでも捨てられないのが人の性。かくしてあなたの部屋の押入れには、とてもゲストには見せられない人生の宿便が際限なくたまることになる。ああ、本当ならもっとも大切なもの以外はシャットアウトして生きてみたいのに。そうしたら、誰よりもその分野で羽ばたくことができるのに。

「ビル・カニンガム&ニューヨーク」は、そんな、誰もが思いながらもそう簡単にはできない生き方を実践した男のドキュメンタリー。50年以上もニューヨークの町を自転車で走り回りながら、際立つオシャレをしている人物と服をスナップし続けてきたカメラマンの物語だ。

70点
日本映画史上最高の変態映画

あんど慶周原作の「究極!!変態仮面」が実写化されると聞いて、色めきだったあなたは間違いなくオッサンである。

もちろん私は違うわけだが、いち早く本作を鑑賞してその感動をまわりの(気持ちだけは)同世代の女子たちに伝えたところ、誰一人原作のことを知らなかったのでその件に気付いた次第である。パンティーをかぶって強くなる男の話を嬉々として解説する姿に、彼女たちが笑顔のまま、しかし徐々に引き始める様子をみたときのせつない気持ちが、はたしてあなたにわかるだろうか。

高校拳法部に所属する色丞狂介(鈴木亮平)は、父親譲りの正義感あふれる若者だったが、いかんせん実力が伴わず、ダメダメな日々を過ごしていた。一目ぼれした転校生の姫野愛子(清水富美加)にもうまくアプローチできず悶々としていたが、銀行強盗の人質にされた彼女を助けようと無謀な突入をした時、彼のその後の人生を変える出来事が起きる。

70点
あるべきリーダー像

政府が映画産業に深くかかわる韓国は、いわばプチハリウッドといえる。親玉のハリウッドは「ゼロ・ダーク・サーティ」を送り出したが、韓国は同じく大統領選挙(12月)の直前(9月)に「王になった男」を公開し大ヒットさせた。その、きわめて政治的な両作品が日本では同じ週に公開されるのだから、奇遇というほかはない。

1616年、朝鮮王朝。暴君とよばれた光海君(イ・ビョンホン)は、常に暗殺を恐れる身であった。そんな折、彼にそっくりな道化師(イ・ビョンホン 2役)が発見され、影武者として採用される。だが、心優しく陽気な性格は王と正反対。側近たちは正体がばれないよう尽力するが……。

影武者ものとしてはほとんど王道と言っていい設定だが、韓国映画とこの手のコミカルかつライトな万人向けドラマは相性がよく、だれにでもおすすめできるエンターテイメント時代劇である。

70点
気軽なフレンチコメディー

日本でもミシュランの格付けグルメ本東京版が発売されたばかりだが、星が増えるか減るかは、飲食店にとってはときに死活問題になるようだ。とくに問題なのは星が減るほうで、予約数は激減して経営を揺るがすこともあるという。

「シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜」は、そんな苦労をシェフの側から見せてくれるユニークなコメディー作品。ジャン・レノが、頑固一徹ながらその性格ゆえに星落ちの危機に瀕するベテランシェフを好演している。

ジャッキー(ミカエル・ユーン)は優れた「舌」の記憶力をもつ料理人だが、わがままな性格が災いしていつも職場が長続きしない。だが恋人が妊娠しているのにいつまでも職探しというわけにはいかず、ペンキ塗りのアルバイトを始める。たまたまそこにやってきた一流シェフのアレクサンドル(ジャン・レノ)は、彼が作ったスープを一口飲み驚愕する。それはかつて自分が考案したレシピそのものだったのだ。

70点
前作より良くなった

男女逆転設定によるユニークな時代劇「大奥」シリーズの第二弾。特殊な伝染病により男子が激減した江戸時代を舞台に、将軍職をつとめる「女性」の生きざまを描いた物語だ。

この奇妙なアイデアは、いったい何のために(どんなテーマを描くために)採用されたのか。

このシリーズを鑑賞するにあたって私が真っ先に思ったのはそこで、両作品とも注目していたわけだが、このパート2は前作よりもその点においてはっきりとしたポリシーが感じられて好感を持った。なんといっても、この男女逆転設定に必然性を持たせられなければ、この作品はただの奇をてらった腐女子向けハーレム疑似体験に落ちてしまうのだから。

70点
民主主義の恐ろしさを指摘する

総選挙を前に、日本の政界では裏切りが渦巻いている。

たとえば大阪の弁護士はあっさりと主要政策を変更し、騙されやすい純朴な保守ネット民の期待を裏切った。それならばと彼らが次に支持したのが東京の老作家だが、これまた中国軍部と地主一味の術中にはまり、尖閣で無用な騒ぎを起こして日本企業に大打撃を与えた上、件の弁護士と合流する始末。たったの一週間で沈む太陽とは、天国の裕次郎もびっくりである。

何年も前から両者ともインチキだと言い続けてきた私などは、自らの予測能力の高さに惚れ惚れしてしまうが、人前でカツカレーを食ったり変なコスプレをするのは嫌なので、自民党のスカウト担当者は連絡してこないように。

70点
公開タイミングが悪かったか

韓国大統領が竹島に強硬上陸した上、天皇をよこして膝まづかせろなどとハッスルしているため、日韓関係は悪化の一途である。我が国の誇るネットの愛国紳士たちもいいように踊らされ仲良くハッスルしているようだが、考えてみれば日本と近隣諸国の仲が悪くなって一番得をするのは、いうまでもなく世界の警察官さまである。

YoutubeのC級映画に端を発するリビアの暴動も含め、都合よく現職大統領の支持率が上がりそうな事件が、常に選挙の年に集中して起こるのも、きっとほほえましい偶然なのであろう。

こうした視点で見ると、オーディションでもしたのかと思うほどのイケメン&美女508人を、外務省に無理を言ってまで急きょ送り込んできたプーチン率いるロシアは老練である。中韓への旅行者が3割以上激減したとのニュースの直後に、金髪美人女子大生数百人が日本を絶賛する観光コメントを連発するのを見て日本人はどう思うか。

70点
追跡アクションは一見の価値あり

「マダガスカル3」は、沢山の動物たちとサーカスという、子供たちの大好きな組み合わせのアニメ映画。アメリカでは大ヒットし、2005年の1作目から続く3部作の最後を飾った。

ニューヨークの動物園出身ながら、あれやこれやでマダガスカル島からアフリカ大陸までたどりついたアレックス(声:ベン・スティラー)たち。ホームシックになったアレックスらは、音沙汰ないペンギンズを追ってモンテカルロへと泳ぎ渡る。ところがそこには、恐ろしい動物公安の女警部デュボア(声:フランシス・マクドーマンド)が待っていた……。

シリーズが始まって7年。7年といえば、リアルタイムで見ていたら小学校を卒業してしまう程の年月である。──とはいえまだ大人になっていない歳でもあり、リアルタイム世代を取り込むのにぎりぎりの年数。さらに途中参加の観客にも、DVDという鑑賞手段が準備されているから問題なくすそ野を広げられる。つまり過去のシリーズ遺産を活性化させられる。まさに登場タイミングはばっちり、一石二鳥の最新作である。

70点
本気できた

前作「ムカデ人間」の批評記事において、「過激な描写や展開はあえてセーブして、完全版と称する続編にひっぱろう」としている事を看破した。それが図星だったことは、このパート2で作り手たちが作風を180度変更し、私が命じた通り「本気」を出してきたことで証明された。

あの程度の生ぬるい作品に簡単に釣られて絶賛した世界中の純朴なカルト映画レビュアーの目は騙せても、この私の目はごまかせないのである。そして、素直に白旗を掲げた監督らの態度と作品の仕上がりを見れば、この続編についてはさすがに認めざるを得ない。

駐車場警備を仕事とする気味の悪い中年男マーティン(ローレンス・R・ハーヴィー)は、フィクション映画「ムカデ人間」を見て勤務中に興奮する異常な性質を持っていた。やがて自分もムカデ人間を作りたくなった彼は、人々を拉致しては来たるべき「ムカデ人間12人バージョン」作成の日に向け、借り上げた倉庫に監禁していくのだった。

70点
ビジュアルだけなら満点

相変わらず映画界では3Dが流行中だが、実のところ必ずしもそれがアドバンテージになるわけではない。年に1度か2度の映画鑑賞だから、どうせなら3Dにしようと選択する人がほとんどと思うが、年に何百本も見る身としては、2Dのほうが向いていると感じる作品がほとんどだ。これからのレビュアーは、本当にその作品の鑑賞に3D追加料金が不可欠なのかを判断し伝える必要があるし、それがユーザーのためになるだろう。

そんな中で公開される3Dアニメーション作品「夜のとばりの物語」は、決してゴージャスな超大作でもなければクモ男も出てこないが、意外と3Dで見る価値があるのではないかと思わせる。影絵と3Dの組み合わせという、ユニークな一本である。

一作ごとに新しいチャレンジをするミッシェル・オスロ監督の最新作。影絵じたい、ある意味アナログな3D効果を含んだものだから、この映画を3D作品にしたのは当然なのかもしれない。

70点
ロマンチック男子に

インターネットで流行中の女性叩きをしているオタクの人たちは、よく意見を聞いてみるとかなりのロマンチストである。彼らが求めてやまないのは、今どきどこに生息しているのかと思うような黒髪ロングな清純女子の、一途な純愛物語。そういうものは、彼らが一番嫌いな韓国映画が最も得意とするジャンルなのだが、そのことについては誰も指摘しない。くれぐれも、同族嫌悪という単語は禁句である。

エマ(アン・ハサウェイ)とデクスター(ジム・スタージェス)は大学時代からの知り合いだが、互いを特別に思いながらも一線は超えない親友関係の道を選んだ。二人の関係にとっての節目となる7月15日、何度も繰り返されるその日、二人はいつもそれぞれの道を歩んでいる。だが、本当に信頼できるのはお互い一人だけなのだと、彼らは気づいていた。

「ワン・デイ 23年のラブストーリー」は、日本の誇るネットオタクも満足のとびっきり一途な純愛物語。そこにロマンチックな主題歌と、意外性ある結末をぶちこんだ不思議なお話である。

70点
オチだけが惜しい

映画を安く撮ろうと思えば、なにしろ短期間で撮り上げるのが一番だ。そのためには移動をなるべくなくし、登場人物を減らし、できればスタッフも減らす。それが行き着くところまでいくと、この映画のような作品になる。

ある男ジェレミー(スティーヴン・ドーフ)は、車のトランク内で目を覚ます。どうやら誰かに誘拐されたらしい。目の前にはデジタル時計が残り4分を刻んでいる。いったいこれは何なのか。4分後に何が起きるのだろうか……。

『ブレーキ』は、いきなり狭苦しいプラスチック棺桶で男が目覚めるところから始まる。この棺桶は車のトランク内に設置されており、どうやら運転席方面とつながる細い穴があいている。ときおりそこから何がしかのアイテムが出てきたりするのは、なんだかシュールで笑いを誘う。

70点
ただでさえ今更感なのに

社会派で知られるケン・ローチ監督がイラク戦争を描いた戦争映画「ルート・アイリッシュ」は、入念なリサーチによるディテールの正確さ、ストーリテリングのうまさ、そして結末の奥深さと、全てが優れた佳作である。しかし同時に、外国映画配給業の限界を痛感する作品でもある。

イギリス、リバプール。イラク戦争で戦死した友人の葬儀に参列したファーガス(マーク・ウォーマック)は、「大事な話がある」との謎めいた最後の留守電のメッセージと、その後に送られてきた携帯電話の中身を見て、友人がある事件に巻き込まれた確信に至る。彼ら二人はかつて同じ戦争請負会社に所属し、民間兵=コントラクターとしてイラク戦争に参加した経験があった……。

なぜ今更イラク戦争の映画なのだろうと思うだろうが、本作は2010年の製作。いま日本では洋画の興行成績が芳しくなく、ケン・ローチの新作であっても買い手がつかない状況となっている。その結果、このような優れた社会派作品が、完全に時期を逸してから公開される(そして人々の注目から外れる)という負のループが生じている。

70点
黒人差別の特異性

日本もアメリカも家政婦がブームなのか、「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」の原作本はアメリカで大ヒットとなった。その映画化である本作は、いまなぜ黒人差別の映画なのかとの疑問は残るもののさすがに賞レースを賑わしただけあって出来は安定していた。

60年代のアメリカ。南部の上流階級の娘ながら黒人メイドに理解と共感を示すスキーター(エマ・ストーン)は、虐げられる彼女たちの生の声をノンフィクションとして出版するため、知り合いのメイド(ヴィオラ・デイヴィス)に相談する。だが、想像以上に彼女たちの心の壁は厚いのだった。

アカデミー賞がいいかげんなのは、誰が見てもヴィオラ・デイヴィスの演技こそが魂を振るわせる見事なものだとわかるのに、別の家政婦役オクタヴィア・スペンサーをノミネートしていることでわかる。むろん彼女も悪くはないが、本作のヴィオラ・デイヴィスの横にいたら明らかに劣る。

70点
テンポ良すぎ

前作「センター・オブ・ジ・アース」(08年)は、デジタル3D黎明期の作品とあってか、ぎこちないまでにそうした演出に力を入れたものであった。だがこの続編は監督もキャストも一新。新しいブラッド・ペイトン監督は、かつて「キャッツ&ドッグス」シリーズでも続編から登板、それも3Dで手がけて手堅くまとめた経験がある人物ということで、本作でも期待される。

17歳になったショーン(ジョシュ・ハッチャーソン)は、暗号解読のプロである元海兵隊の義父(ドウェイン・ジョンソン)の協力を得て、新たな冒険の地パラオへと向かう。だが目指す場所は危険すぎて、地元のガイドは誰も名乗り出ない。だが唯一、おんぼろヘリを駆るガバト(ルイス・ガスマン)とその気丈な娘(ヴァネッサ・ハジェンズ)だけは別だった。

いろいろともめ事起こして降板した前作の主演俳優に代わるのがドウェイン・ジョンソンだが、これが功を奏し、このパート2はアメリカで大ヒットした。古巣のプロレス界にも復帰した彼だが、ファミリー層に強くアピールできることを証明した形だ。

70点
世界一の萌えキャラ

ミシェル・ウィリアムズが往年の大スター、マリリン・モンローを演じて高く評価されたこの映画は、しかしマリリン世代以外の若い人にとっても楽しめるユニークな恋愛ドラマである。

1956年、ハリウッドのスーパースター、マリリン(ミシェル・ウィリアムズ)は、映画「王子と踊り子」撮影のためイギリスへとやってきた。だが、監督でもあるローレンス・オリヴィエ(ケネス・ブラナー)とはそりが合わず、セックスシンボル脱却を目指す演技面でも満足がいかない。神経症的な彼女はやがて仕事をボイコットし、雑用担当の若者スタッフ、コリン(エディ・レッドメイン)とお忍びデートを始める始末だった。

この物語は、実際にマリリンが1956年に主演した「王子と踊り子」の助監督だったコリン・クラークによる原作を元にしている。彼が23才だった頃、その映画の撮影中に起きた知られざる2人の恋愛の様子を、瑞々しい純愛物語に仕上げたものだ。

70点
病んだ天才が作り上げた終末の映像美

心の病について描いたり、精神病患者が出てくる映画は数多くあるが、実際に精神を患っている映画監督が作った映画というのはあまりない。ましてそれが、誰もが認める超一流の監督であればなおさらだ。映画「メランコリア」は、鬼才ラース・フォン・トリアーが鬱病でにっちもさっちもいかない時期に構想し、作り上げた映画である。

新婦ジャスティン(キルステン・ダンスト)は、自身の結婚パーティーが開かれる姉夫婦の豪華な邸宅にやってきた。しかし彼女は到着から大幅に遅れ、かつわがままな振る舞いにより周囲に迷惑をかけ続ける。情緒不安定なジャスティンは、到底まともな結婚式をあげられる精神状態にはなかったのだ……。

鬱状態で作り上げた映画というだけならまだしも、よりにもよってそのテーマが「世界の終わり」である。やぶれかぶれになったときなど、誰もが「このまま世の中が終わってしまえばいいのに」とか「苦しまずに一瞬で死んでしまえたらいいのに」と思うことはあるだろうが、本当に地球ごと終わりにしてしまうとは、さすがは映画監督である。

70点
タイトルはやや先走りすぎだが…

韓国映画は国策で保護されているとあって、最近めきめき力をつけてきた。日本の下請けなど地道な経験を積むことによって、アニメーションのジャンルでも高い技術を身につけてきた。そんな破竹の勢いの韓国映画にとって、唯一の弱点はオリジナリティがないことである。

だが、そんな弱点も今日で終わりだ。

ここに、そうしたこれまでの常識を打ち破る、極めてオリジナリティの高い、そして韓国らしいアニメーション映画が誕生した。「アーチ&シパック 世界ウンコ大戦争」がそれで、いまだかつてないウンコを題材にしたアニメーション映画ということで、早くも各地で話題を呼んでいる。

70点
≪見た目は古いが中身は未来を先取り≫

世界経済は今緩やかに衰退している。それでもアメリカなどは、ヨーロッパに嫌がらせをしつつイランにもちょっかいを出し、日本の懐に手を突っ込むなど世界中でなりふり構わず必死にドルを防衛しようと動いている。それでもこれまでの成長を前提とした価値感自体がもう通用しなくなりつつあるのではと、多くの人が言及している。

そんな中、ひとり異質な存在感を放ち続けるのはこの日本である。バブル崩壊でもう二度と日は昇らないなどと言われつつ、気づいたら独歩高。成長していないのに、さほど弱ってもいる様子もない。アメリカのかわいい財布犬なのに、主人が朽ち果てた後も生き残りそうなオーラを醸し出している。

そんな日本の映画界が満を持して送り出す『ALWAYS 三丁目の夕日'64』は、知ってか知らずかそうした現在の世界情勢の中に、新たな価値感を示すような作品となっている。

70点
≪豪華特盛エンターテイメント≫

「セックス・アンド・ザ・シティ」という作品がある。50も過ぎようかというお姉さんが、惚れたはれたを繰り返すアメリカの人気ドラマだが、ゴージャスな洋服やライフスタイルが目の保養ということで若い女性にも人気がある。トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は、いわば男性向けのSATCのごときエンターテイメントである。

アメリカの極秘諜報機関IMFのエージェント、イーサン・ハントと彼のチームは、クレムリンの爆破テロの容疑をかけられる。それを受け、米国大統領はIMFごと解散を命じ、イーサンたちは政府の後ろ盾を完全に失った。追われる身となりながら、単身真犯人を追い続けるイーサンは、黒幕たちがドバイに集まるとの情報を入手する。

主演のみならず企画から製作すべてに関わったトム・クルーズ。彼にとって最も大切なシリーズの最新作というべき本作は、さすがにあらゆる面がゴージャスである。アクションシーンにもふんだんに予算をつぎ込んでいるから、出てくるのは高級車ばかり。身に着ける服も高級なスーツ。それで砂漠の砂だらけになってアクションを繰り広げるのだから贅沢極まりない。

70点
≪もう少し毒があればなおよかったが≫

男が結婚を決める決定打とはなんだろうか。外見のかわいらしさ? 確かに男にとって妻とは社交のパートナーでもあるから、その属性や外見が良ければプラスに働くであろう。料理やセックスの相性もよく言われるが、後者は代用が効く分、前者ほど重要ではあるまい。とはいえ、どれも決定的とまでは言い難く、結局のところ最も大事なのは「勢い」であるとの結論が導き出される。

『指輪をはめたい』は、山田孝之版モテキというようなストーリーだが、こちらはミステリかつファンタジックな要素を含む。完成版をみた山田孝之は、その出来の良さに予想以上の満足を得た様子だったというが、それも納得できるなかなかの出来ばえである。

製薬会社の敏腕営業マン、片山輝彦(山田孝之)はあるときスケートリンクで転倒して記憶喪失に。彼が思いだせないのは、自分のカノジョが誰だったのかということ。思い出せぬまま仕事に復帰しようとする彼の前に現れたのは3人の女性。キャリアウーマンの先輩(小西真奈美)、営業先の風俗嬢(真木よう子)、公園で一人人形劇をしている地味な女の子(池脇千鶴)。カバンの中の婚約指輪を、彼はいったい誰に渡そうとしていたのだろうか?

70点
≪わがままな神々は誰の比喩か≫

「300 <スリーハンドレッド>」のスタッフによる本作は、あの美しいスローモーションな格闘戦闘の進化形を3Dで楽しめるゴージャスなアクション映画。おまけに今回画面で殺しあっているのはギリシャ神話の神々。ある意味不謹慎な内容に苦笑してしまう一本でもある。

野望を秘めた王ハイペリオン(ミッキー・ローク)は、闇の神の封印を解くカギを探してギリシャに侵攻をはじめた。一方、闇の神の復活を防ぎたいゼウス(ジョン・ハート)は、その望みを託した人間テセウス(ヘンリー・カヴィル)のそばで、密かにその成長に力を貸していた。

人間世界の比喩でもあるのだろうが、ギリシャ神話の俗っぽさは現代向き、映画向きだなと実感する。まして当のギリシャがあんな状況で、そのテキトーな国民性が明らかになっているからなおさらだ。

70点
≪試合シーンは脇役だがれっきとした野球映画≫

旧態依然とした考えで野球をしている連中に、まったく新しい理論で立ち向かう。日本で作ればあっちゃん主演のアイドル映画になり、ハリウッドで作れば本格野球ムービーになる。両者が同じ年に公開されるというのは、少々酷な偶然である。

資金不足気味のアスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)に就任したビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、選手補強どころか人気選手を半ば資金繰りのため放出しなくてはならぬ状況に頭を抱えていた。そんなとき彼は、見るからに運動はダメそうなオタク然としてはいるが、超一流大卒で斬新なデータ分析を行っていた青年ピーター(ジョナ・ヒル)に出会う。やがてビーンは彼の分析をもとに、年俸は安いがポテンシャルの高い選手を集め始める。だが彼らの発想を理解できぬフロント陣は猛反発、それでもビーンは意にも介さず画期的なチーム作りを進めてゆく。

打率や本塁打ではなく、出塁率を重視する。当時としては画期的だったこのデータ野球のことを、マネーボール理論などと呼ぶ。ドラッカーの経営学を無理やりあてはめるトンデモではなく、れっきとした野球論だ。

70点
≪前作よりいろいろな意味で出来がいい≫

前作は四川大地震の直後に中国で公開され、上映中止運動など物議をかもしたが、この続編の直前には東日本大震災が起こった。時代を代表する映画作品には特別な引力があるものだが、このシリーズの災害との因縁も相当なものである。

伝説の龍の戦士となり、マスターファイブの仲間とともに国の平和を守るパンダのポー(声:山口達也)。そんな彼の前に新たな敵、シェン大老が現れる。世界征服を狙うシェンを阻止するため、早速旅支度をするるポーだったが、彼はこの旅で自らの出生の謎とも向き合うことになる。

アクションがよかった前作より、さらに進化した動きが見どころ。前後左右はもちろん、底知れぬ谷や崖を落下するなど上下方向の動き、さらには出来のいい3Dによる奥行きを生かした、文字通り360度を目いっぱい使った素晴らしいカンフーアクションを見ることができる。体はメタボだが、動きは高速。実写では不可能なアングルを大胆に動き回るカメラワークも派手派手で、子供向きアニメながら大人をも唸らせる映像的な見せ場が連続する。

70点
≪やるべきことはすべてやった≫

気が付けば10年、8作品目。21世紀最大の超大作シリーズも、いよいよこれで幕を閉じる。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』は、ここまで付き合ったお客さんにとっては見逃せない完結編だ。

最大の敵ヴォルデモートを倒すカギとなる分霊箱探しの旅も終わりに近づいている。17歳になったハリー(ダニエル・ラドクリフ)や仲間たちは、暗黒に飲み込まれつつある世界を前に命がけの探索を続けるが、その行く手には、ハリーの出生の秘密にもかかわるあまりに切ない幕切れが待っていた。

この最終作では、シリーズで残された謎がすべて明らかになる。といっても、世の中10年8作品の長大な物語を詳細に覚えているファンばかりではない。多くの人にとっては、そもそもどんな謎が残っていたっけ、程度の認識だろう。その意味で、本作のクライマックス周辺における伏線回収のスパンは異常なまでに長く、快感度は低い。可能ならば全作品を前日にイッキ見しておくくらいの事をしておいたほうがいいだろうが、それはあまりに大変か。

70点
≪人は何を残して死ぬべきか≫

この映画の題名にもあるビューティフル(beautiful)とは、私のような人間を英語で表現するときに使うメジャーな単語だが、なぜか題名のほうはスペルが間違っている。

照明と同じように映画の演出も、間接的に行ったほうがより通好みで、しゃれた感じに仕上がる。本作のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督はそうした手法を、今回これでもかと多用する。題名のスペル違いはその最たるもので、映画を見ればこの誤りが何を表現しているのかがわかる。そして皆さんは、そのときたぶん涙する。

スペイン、バルセロナの一角で不法移民に違法な仕事のあっせんを行い、日銭を稼いでいる男ウスバル(ハビエル・バルデム)。妻と別れ、いまは2人の幼い子供たちと暮らしているが、あるとき彼は末期がんで余命2か月と診断される。自分が死んだらこの子たちはどうなるのか。焦りと恐怖に支配されそうになりながら、ウスバルは手段を選ばず金を稼ぎ、子供たちに残そうと考える。

70点
≪面白いが一味足りない≫

『ロシアン・ルーレット』は、本物の銃と実弾でロシアンルーレットをするという、ただそれだけのアイデアが97分間続くシンプルな映画である。そういえば最近日本にも放射能健康論を押し付ける人たちがいるが、あれなどは福島の子供たちに自動拳銃でロシアンルーレットをやらせるようなものである。この映画に出てくるギャンブルバカとも互角に戦える逸材といえるだろう。

父親の入院加療費で家計が逼迫する中、青年ヴィンス(サム・ライリー)は謎めいた儲け話を耳にする。思わず大金を手にできる会場への招待状を盗み出した彼は、その指示通りに森の中の屋敷に到着する。だが彼はそこで自分の浅はかさを後悔することになる。そこは17名の参加者のロシアンルーレット対決に、富豪たちが大金を賭ける秘密の賭博場だったのだ……。

たくさんお金を持っていれば、若者たちに命を賭けさせる遊びくらい見てみたくなるだろうという、たぶんに無茶苦茶な偏見に満ちた設定がまず笑える。スナッフビデオの都市伝説に代表されるこうしたホラ話は、金持ちの心理など想像もできない貧乏人にとって妙にリアリティがあるわけだ。

70点
≪低予算映画とは思えない高品質映像とサービス精神≫

ロサンゼルスは異星人の侵略を受けやすい街のようで、古くは大戦中にも多数のUFOが観測されたなどの報道記録がある。日本公開延期中の「世界侵略:ロサンゼルス決戦」や本作「スカイライン-征服-」など、最近の映画でも立て続けにエイリアンのお宅訪問を受けており、多くの観客を喜ばせている。

ジャロッド(エリック・バルフォー)とエレイン(スコッティー・トンプソン)のカップルは、成功した友人テリー(ドナルド・フェイソン)のペントハウスに招待される。高層階に位置するその豪華な部屋は、ロサンゼルスを一望できる抜群のロケーション。ところがその日、ジャロッドは窓のブラインドの隙間から、信じがたい街の光景を見ることになる。

『スカイライン-征服-』の監督の一人グレッグ・ストラウスは「僕らはイベントムービーを少ない予算で作りたかった」と言っている。この言葉はそのまま、この映画の魅力を端的に表している。

70点
≪後半失速≫

銀座にH&Mがオープンしたとき、しばらくは中央通りに入店待ちの長い行列が出来ていた。ラーメン屋じゃあるまいし、服屋に入店行列とはビックリだが、一方で私はユニクロの驚異的なレジ処理を思い出していた。ユニクロならば、この客数をさばけていたかもしれないと夢想していたわけだ。

あれは業界的には画期的なシステムで、世界中のアパレル関係者に影響を与えたと聞く。「匠」(ベテラン技術者集団)と呼ばれる同社の素材、縫製の徹底した開発・管理体制も、それまで名ばかりで低品質な服を作ってきた世界中の有名ブランドを駆逐するに十分なインパクトであった。まるで日本車のように無個性すぎて、いかに高品質でも私は着たいとは思わないが、ユニクロの革命性については高く評価している。

また、パリコレなど伝統あるプレタポルテコレクションで、古くから多数のメゾンが活躍していることからもわかるとおり、日本のアパレル・ファッション業界はアジアでは突出している。日本人デザイナーの服がハリウッド映画に登場することも稀ではなく、プレステージの高さでも欧米にひけはとらない。

70点
≪コメディーながら描くテーマは意外性に富む≫

豊臣秀吉の子孫がひそかに大阪に生き残っていた──『プリンセス トヨトミ』について私は、そこから始まる歴史フィクションのようなドラマかと当初想像していた。万城目学の原作は未読だったし、タイトルから勝手にそんな予想を立てていた。

だが本作は、その予想を大きく裏切る内容だった。

東京の会計検査院から、鬼の松平の異名をとる松平元(堤真一)率いる3人の精鋭調査員が大阪にやってきた。直感型の鳥居忠子(綾瀬はるか)と優等生型の旭ゲンズブール(岡田将生)は、松平の元次々と成果を上げてゆく。次に彼らは財団法人OJO(大阪城趾整備機構)を訪れたが、一見何の問題点もないこの古びたビルに、しかし松平は異様なまでの違和感を感じるのだった。

70点
≪往年のライダーファンが子供と見る映画としてはほぼ満点≫

映画界にとって仮面ライダーは優良コンテンツで、頻繁に作られる劇場版はつねにそこそこの成績を記録する。言うまでもなくそれは、長い歴史というほかにはない強みを持っているからだ。じっさい親子二代で楽しめる特撮ものを楽しみにしている人は多いようで、当サイトにも批評を心待ちにするメールが時折届く。

そんな仮面ライダーは、最初の放映から40年。その記念すべき年に公開される一大企画がこの『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』だ。

デンライナーでやってきたNEW電王とオーズは、敵を追って1971年の日本へと向かう。やがて首尾よく敵を始末し現代に戻ってきた彼らは、そこがまったく元の世界と異なっていることに気付く。秘密結社ショッカーが日本を支配し、あの仮面ライダー1号、2号は悪のライダーとして君臨している。どうやら過去で行った何かが原因で、歴史が改変されてしまったのだ。味方のいない世界で、ライダーたちの孤独な戦いが始まる──。

70点
≪なんとか無事公開にこぎつけたファンタジー大作≫

「ナルニア国ものがたり」は聖書を下敷きにしたファンタジーということもあって、教訓的な一面を持っている。今回紹介する映画版3作目『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』は、とくにその傾向が強く感じられる。

現在日本では、ファンタジーやアニメの世界から戻ってこれない大人のおともだちが多数発生しており、ゆゆしき事態といわれているが、そうした国でこのファンタジー超大作をみると、なかなか新鮮である。めくるめく冒険の世界に酔わせた後に、「さあみんな、映画はこれで終わりだよ。元の暮らしに戻って頑張りなさい」と語りかける。そんな大きなお世話、いや親切なファンタジー作品は、いまどきあまりないだろう。

かつてナルニアで大活躍したエドマンド(スキャンダー・ケインズ)と妹ルーシー(ジョージー・ヘンリー)は、兄ピーターと姉スーザンが両親とアメリカに行ってしまったため、気難しいいとこのユースチス(ウィル・ポールター)の家に居候中。そんなある日、ユースチスの部屋の帆船の絵が入り口となり、兄妹とユースチスはナルニアの海へと誘われる。そこで旧知の王カスピアン(ベン・バーンズ)やネズミの騎士リーピチープらが乗る朝びらき丸に乗船した彼らは、成り行きから伝説の7つの剣を集める旅に同行する。

70点
≪イーストウッド版・大霊界≫

世の中には見る前に予備知識を入れたほうがいい映画とそうでない映画があるが、『ヒア アフター』は間違いなく後者である。とくにこの作品の予告編は、ストーリー上もっとも意外、かつ重要なクライマックスまで余すところなく体験できる親切設計。推理小説を読む前に犯人を知りたいタイプの人以外は、見ないでおくことをオススメする。

さてストーリーだが、この映画はまったく無関係な3つのドラマが同時進行する。

臨死体験をしたパリ在住のテレビキャスター(セシル・ドゥ・フランス)は、あの体験がいったいなんだったのか、仕事もそっちのけで追及を始める。サンフランシスコで静かに暮らす男(マット・デイモン)は、じつは本物の霊能力者だったが何もかも見えてしまう事に嫌気がさし、今では「仕事」から手を引いている。ロンドンに住む少年(ジョージ&フランキー・マクラレン)は、あるとき大好きな双子の兄に降りかかった運命を前に、ひとりで立ち向かうことになる。

70点
≪反グローバリズムな食ドキュメンタリー≫

最近、アイピーピーいやTPPなるものが流行っている。加盟国の間で関税を撤廃して、自由貿易を推進しようという取り決めだ。

しかし注意せねばならないのは、国際政治の世界で発せられる「自由」なる用語は、正確には「米国にとっての」という部分が、常に省略されているという点である。

案の定、今回もTPPなる「自由」サークルに日本を強引に勧誘しているのは、自由業界総大将の米国である。となれば、どう見ても私たちにとって得になる話ではなさそうだ。細かいことなど考えずとも、ジャイアンが強引に誘ってくるイベントに参加して、はたしてのび太にメリットがあるかどうかを考れば判断を誤ることはない。

70点
≪韓国の力技に苦笑しつつも感心≫

『ハーモニー 心をつなぐ歌』は、韓流スターの来日時に空港に集まるようなお姉さまたちを対象にした映画なので、どう考えても私のようなひねくれ韓流ファンには向いていない。

そこで私は、知り合いの韓流ライターと共に試写室に出向く事にした。本作品本来の客層にドンぴしゃな彼女の意見を聞くことで、公平な記事を書くためである。よく誤解されがちなのだが、けっして彼女が美人人妻だからではない。

女子刑務所で男児ミヌを出産したジョンヘ(キム・ユンジン)には、生後18か月まで獄中で母子ともに暮らすことが規則で許されている。愛らしいミヌは同室の囚人からも愛され、その存在は比類のない癒しを彼女たちにもたらしていた。そんなある日、慰問合唱団に感動したジョンへは、自分たち女囚でも合唱団を作れないかと思いつき、理解者のコン刑務官(イ・ダヒ)に相談する。

70点
≪監督40作品目は笑いと皮肉が効いた佳作≫

『人生万歳!』は、例によって監督のウディ・アレンらしさがつまった最新作だが、近年ではかなりの佳作だ。しかしこれは、アレン映画をあまり意識してみたことのないライトユーザーに対して、の意味合いが大きい。

自称天才物理学者だが今は落ちぶれ、さえない日々を送る男ボリス(ラリー・デヴィッド)。ある日彼は21歳の家出娘メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)を、ひょんなことから自分のぼろアパートに泊めてやることに。偏屈で神経症的なボリスは、能天気なメロディの無教養ぶりにあきれ返るが、成り行きからそのまま同居生活を始めることになってしまう。

偏屈な独身ジジィの家に、金髪巨乳ギャル21歳が転がり込むなど、日本のエロ漫画の世界であるが、それを無理なく軽快な実写コメディーに仕立てる手腕がまさにアレン節。冒頭にカメラに向かって登場人物が語りかける倒錯した演出を取り入れることで、その先に待ち構えるこのエロゲ設定の突飛さを希釈、すんなり観客に受け入れさせてしまう。

70点
≪起業家にとって、忘れがちな初心がある≫

金儲けというのは難しいが面白い。たとえば中国には、乾燥わかめと偽って黒ビニールをつめて売る会社があるそうだが、詐欺的手法もそこまでいくと怒りを通り越して笑いしか出ない。昔はペンキで塗っただけのカラーひよこなんてのが売られていたが、黒ビニールはもやは食品ですらない。後先考えないにもほどがある。

そんなわけで、金もうけをしようと奮闘する人を見るのも案外面白いものだ。『10億円稼ぐ』は、そのあたりの心理を刺激する「金儲け実践ドキュメンタリー」。才人テリー伊藤が、初監督と出演を兼ねた、娯楽性の高い一本である。

今回テリーが目を付けたのは、サンリオのキティちゃんのようなキャラクタービジネス。老若男女に受け入れられ、国境すら超えるキャラクターひとつで、天井知らずの版権料が手に入る点が気に入ったらしい。たしかにタイトル通り「10億円」を目標額にするならば、このくらいデカい事をやらないとだめだろう。

70点
≪河瀬直美が自然派出産医院を描くドキュメンタリー≫

河瀬直美といえば、カンヌ映画祭でグランプリ(「殯(もがり)の森」)を取るなど華々しい実績を誇る映画監督だが、過去の巨匠らにさえ遠慮せぬ物言いで、映画マニアからは意外と批判されがちだ。ようするにもっと謙虚になれという意味なのだろうと思うが、私にいわせればそのオレ様ぶりこそがこの監督最大の武器であり、魅力だ。それを批判するとは的外れもいいところ。大物に遠慮するような小心者など腐るほどいる。河瀬監督は、そうでないからこそいいのだ。彼女にはこれからも何も変わらず、誰にはばかることなく撮ってほしいと願っている。

さて、彼女の映画はそんなわけで一般的には非常にとっつきにくい。これまでの作品の中で、正直なところ万人向けに手放しですすめられる映画はほとんどない。しかしこの『玄牝 -げんぴん-』は違う。自然派出産を表掲するある産婦人科医院を取材したこのドキュメンタリーは、(彼女が見つけたのではなく)外部から依頼された企画、被写体だったからこそ成功した珍しいパターン。

つまり、監督に被写体への過剰な思い入れがなく、ある意味突き放した距離感があるからこそ、自然派出産のプロモーションに堕すことなく、それなりに中立的な視点を保ったままその魅力を伝えることに成功している。私はこの作品を、河瀬映画アレルギーの方を含む一般のお客さんにも広くすすめたいと思っている。

70点
≪ヤンキー時代劇≫

オリジナルの『十三人の刺客』は、世間の流行が時代劇から東映任侠映画に移り変わるころ、1963年に公開された。リアリティ重視の演出に、30分間にも及ぶ集団白兵戦闘の見せ場が印象的な本格時代劇作品である。

それを、バイオレンス描写に定評がある三池崇史監督(「ヤッターマン」(2008)、「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」(2010))がリメイクする。オリジナルの演出はどう考えてもこの監督のカラーとは違う。はたしてどうなるのか、映画ファンは不安と期待を胸に見つめていたに違いない。

ときは江戸時代末期。残虐な性格で横暴の限りを尽くす明石藩主・松平斉韶(稲垣吾郎)は、しかし将軍の弟という立場から幕府でさえ手が出せぬ存在だった。そこで老中・土井利位は、御目付・島田新左衛門(役所広司)に暗殺部隊の編成を密かに指示。島田はさっそく腕利きの浪人や武士ら精鋭13人を集め、標的一行を待伏せるが……。

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