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80点
原作と違う結末が秀逸

ギリシャ経済のゴタゴタに伴う暴落で、GW明けに即死状態となった投資家も少なくあるまい。金というものは……というより、そこにかける人々の情熱とは、なんとパワフルで恐ろしいものか。すっかりポジションを失い、抜け殻のようになったFX初心者などに、私はこの『運命のボタン』をすすめたい。

76年の冬、ヴァージニア州の郊外で暮らす一家の妻(キャメロン・ディアス)は奇妙な訪問者に応対する。初対面の彼女に対し、彼は大きなボタンがついた箱を渡す。それを押せば、一家は100万ドルを受け取れる。ただし代わりに見知らぬ誰かが死ぬ。期限は24時間。その間に押さない場合は装置を回収する。そう言って去った男が残したボタン装置は、仲むつまじい夫婦と息子たち一家の運命をどう変えるのだろうか。

押せば1億円。70年代の設定だから今ではその数倍の価値といったところか。ただし憎らしいことに、それは誰かを殺すことになる。さてアナタならどうするか……。

80点
お笑いプロパガンダ

『グリーン・ゾーン』を見ると、この映画を作った製作者らスタッフが、現代アメリカの本流というべき立場にいることがよくわかる。アメリカウォッチャーは、今後はこの人たちの作る映画から絶対に目を離すべきではないだろう。

フセイン失脚直後のイラク、バグダッド。米陸軍のミラー准尉(マット・デイモン)のチームは、大量破壊兵器を探す任務についている。ところが情報は常に誤りで、一向に見つかる気配はない。犠牲ばかりが増え続ける現状に納得できないミラーは、ようやくつかんだ重要情報を国防総省のクラーク(グレッグ・キニア)が握りつぶしたのをみて、何かがおかしいと感じ始める。

私はこの映画を見て、内心笑いが止まらなかった。イラク戦争の大義だった「大量破壊兵器」が実在せず、プロパガンダだったことは今では常識。ところがこの映画ときたら、この世紀の大嘘は一人の悪い小役人のせいで、国民もいたいけな米軍兵たちも、それにだまされた被害者だというのだ。

80点
≪必死過ぎ米国、国威発揚大作を堪能できる≫

この映画は、東日本大震災で日本公開が延期された作品の一つだが、一刻も早く見ておくべき重要なアメリカ映画である。

流星群が各大陸の沿岸部近海に降り注ぐ事件が起きた。あるトラウマから退役届を出したばかりのマイケル・ナンツ2等軍曹(アーロン・エッカート)も、この非常事態を受けLAの基地に召集される。だがたたき上げのベテラン海兵隊員であるナンツは、事態がたんなる気象現象ではない事にやがて気づかされる。NASAでさえその軌道を把握できなかったこの未確認物体は、単なる隕石ではなかったのだ。そしてその直後、ナンツはかつてない過酷な地上戦に巻き込まれる。

本作は、次々と公開されているエイリアン侵略映画の決定版。いまやアメリカ合衆国は、ホームレスのエイリアンから引っ張りだこ、地球一の人気スポットなのである。あんな不景気で治安の悪いところを侵略するより、のんびりした南国にでも行けばいいのにと思うが、情弱エイリアンたちは懲りずに毎回アメリカと戦ってばかりいる。

80点
≪笑いの陰に苦しみがチラリ≫

笑いというのは偉大なもので、人生における苦しみのほとんどを緩和する働きがある。とくにカネの悩みや恋愛、人間関係などは多くの人が深刻に考えすぎである。こうした悩みで毎年多くの自殺者が出るが、そういう人たちは一度、広い目で世界を見るといい。

大金を借りまくって豪遊した挙句、仕事や嫌いだよ昼寝はやめない嫌なら借金額を4分の1に減らせフフン、とのたまっているギリシャ人を見るといい。青くなっているのはカネを貸してる金持ちだけで、はたから見ればコメディーである。同じように、どうせ90まで生きればアナタの今の悩みなど、年寄りの笑い話になるのではないだろうか。

もし、こうした話に少しでも共感したなら、「50/50 フィフティ・フィフティ」を見るといい。

80点
逆輸入本格ソードアクション

コンピュータグラフィックスによるアニメーションの世界では、なんといってもピクサー社が傑作を量産し、第一人者と称されている。

いつの時代も先駆者というのは尊敬され、長く人々の心に残る。その業績を上回り、人々の固定されたイメージを覆すのは容易なことではない。とくにこのCGアニメの世界では、日本は大きく出遅れた感が否めない。

しかし、アメリカ勢に独占を許したかに見えたこの分野で、新境地を切り開いた男がいる。曽利文彦監督がその人で、彼のアニメ映画の代名詞というべき3Dライブアニメのテクノロジーは、ほとんど新ジャンルと呼んでいいインパクト。俳優の動きをトレースしたモーションキャプチャーにトゥーンレンダリングを施したものだが、どこか日本アニメ調の色合いに仕上がっているのがポイントで、そのクールなルックスは世界中のアニメファンを感心させた。

80点
「JUNO/ジュノ」の奇跡再び

女のコとは自己矛盾の生き物である。忙しくてデートを断れば、私より仕事が大事なのねとキレるし、

また別の日には、あれが欲しいこれが欲しいと高い服を要求する。仕事しなけりゃそんな服も変えない

ぞと思うのだが、本人の中では全く矛盾なく二つの要求が存在するらしい。

80点
≪タイトルの意味がわかる瞬間に注目≫

先日発射された北朝鮮のロケットこと弾道ミサイルを警戒していたイージス艦は、自衛隊の誇る最強の護衛艦である。だが、こうした近代的な戦闘艦と、第二次大戦時に最強艦とされていた「戦艦」では設計思想が全く異なる。

大和に代表されるような戦艦は、巨砲を積むための巨大な船体を頑丈な装甲で覆い、多少の攻撃を食らってもびくともしない。イージス艦のような現代の戦闘艦は、それにくらべれば紙でできているような無装甲の軽量艦にすぎない。戦艦武蔵のように、40発近い魚雷や爆弾を食らってもまだ戦闘を続けるようなマネは絶対に無理である。

その代わり高性能な多機能レーダーや、人工衛星・警戒機と連携した索敵能力、およびミサイルによる長距離攻撃能力によって先制攻撃、先制撃破するわけで、だからこそ「無敵の盾」と言われている。

80点
高所恐怖症の人は無理

人生、突然がけっぷちが訪れることがよくある。圧倒的な魅力を持つセンターが卒業し、人気ナンバー4からいよいよ下剋上を狙うかというその時、撮影好きな元彼に恥ずかし写真をばらされる。リアル「ノッティング・ヒルの恋人」を気取ってみたが、現実は厳しかった。ロマコメを信じると高くつくことを身をもって知ったそんな彼女に贈りたい、それがこの「崖っぷちの男」である。

元ニューヨーク市警のニック(サム・ワーシントン)は、ダイヤ強盗の濡れ衣を着せられ投獄されていたが隙を見て脱獄する。その後、ニューヨークど真ん中のホテル高層階に姿を現した彼は、意を決して窓の外に踏み出す。無実を晴らすため、もはや彼には自殺という手段しか残されていないのか。眼下には騒然としたやじ馬たちが次々と集まり、やがてマスコミや警察のヘリも飛んでくる。

人気絶頂サム・ワーシントン、今年4本目の日本における主演公開作にして最高傑作。それがこのスリリングなサスペンスだ。

80点
すぐれた大人SF

時間移動ものSFには佳作が多い。「バタフライ・エフェクト」(04)、「時をかける少女」(06)、「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(07)など、内外に多くの作品がある。過去の改変が未来に影響を与えるタイムパラドックスとは、一見絵空事のように思えるが、実際はいわば現代を生きる者の共通認識を象徴している。誰もが無意識にそう考えて今を頑張って生きているからこそ、映像の形でそれを具現化した時間移動ものSFにすんなり共感できるわけだ。

「LOOPER/ルーパー」はそんな暗黙のルールを、ユニークな設定に生かした一本。おそらく以下に紹介するあらすじを読んだだけでも思わず見たい!となるはずだ。

完璧な管理社会である2074年では、マフィアたちもそう簡単に邪魔者を消すことができなかった。そこで彼らは使用が禁止されているタイムマシンを入手する。この発明品はいまだ不完全で、30年前の過去にしか行けない一方通行。だがマフィアにとっては、邪魔者を縛り上げてこれに乗せ、他の時代で殺害すれば完全犯罪となる。彼らは30年前にエージェントを送り込みルーパーと称する殺し屋集団を組織させ、その時代の闇組織に殺害を依頼することにした。

80点
ハードボイルドなヒーロー映画

ヒーロー不在の時代である。世界の警察官は日がなプロパガンダ映画作りに必死、日本の警察官は交番で賭け麻雀に必死。新聞を見ていてもしらけるばかりである。

ヒーロー映画作りがこんなに難しい時代もないわけだが「ジャッジ・ドレッド」は頑張った。シルベスター・スタローン主演の珍作扱いされていた95年版を無かったことに再スタートした本作は、由緒ある英国コミックの実写化。イギリス・南アフリカ合作の、決して背伸びしないシンプルなアクション3D映画としてよみがえった。

近未来のアメリカ。核戦争で荒廃した東海岸における唯一の都市メガシティ・ワンは、人口過密で治安は最悪であった。その対策として市民を守る最後の砦であるジャッジたちには、警察と司法の両方の機能と権限が与えられていた。中でも最強のジャッジと称されるドレッド(カール・アーバン)は、新米の女性ジャッジ、アンダーソン(オリヴィア・サールビー)の教育を命じられる。さっそく出かけた現場は、しかし想像を絶する過酷なものだった。

80点
3つの楽しみが味わえる

一見立派に見える人でも、ときには英雄とみられるような人物でさえ、心に闇を抱えていることがある。品行方正、誰もが羨む理想的な人物といわれる私でさえ、悩みの一つや二つは持っている。

「フライト」は、偶然の事故から嘘を積み重ねてきた過去と向き合い、清算せざるをえない立場に追いやられるパイロットを名優デンゼル・ワシントンが熱演したドラマ。受賞はできなかったが主演男優および脚本賞にノミネートされた一本である。

アメリカ国内便の機長ウィップ(デンゼル・ワシントン)はベテランのパイロット。今日も恋人のCA(ナディーン・ヴェラスケス)と徹夜で飲み明かしたばかりだが、コカインで眠気を払い操縦席に座る。そんな状態でも誰より安定した飛行の腕前を持つ彼だったが、その日の機体には致命的な問題があった。

80点
若者の苦しみが描けている

85年生まれの若いジョシュ・トランク監督による低予算映画ながら、全米初登場1位となった「クロニクル」は、スタイリッシュな映像が見所のSF映画。と同時に、迫真の青春学園ヒエラルキードラマでもある。

高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)、マット(アレックス・ラッセル)、スティーヴ(マイケル・B・ジョーダン)は、偶然触れた謎の物質により超能力を身に着ける。スカートめくりや空中アメフトなどたわいもない事に力を使う彼らだったが、その緊張感のなさから大事故を巻き起こしてしまう。その日以来、3人の絆も徐々にひび割れていく。

ビデオ撮りオタクのアンドリュー主人公ということで、いわゆるPOV=主観映像による作品となっている。だが途中から彼も超能力者になるので、遠隔操作も空撮も自由自在。POV映画としてはありえない豊潤なカメラワークを味わえる。と同時に登場人物に寄り添うような映像からは、身近な青春ものとしての味わいもある。

80点
マッチョ二人の意外な大人向けテーマ

女囚もの含む刑務所映画はアクション映画の定番として、かつて高い人気があった。日本でも木曜洋画劇場などで楽しんだオールドファンも多いだろう。いたいけな主人公たちが一致団結、理不尽な支配や虐待に立ち向かう構図は、革命の暗喩でもあり暗い時代の労働者たちの溜飲を下げる働きがあった。

だがバリエーションのアイデアが出尽くした後、観客の間にそうした荒唐無稽を受け入れる余地は年々せばまり、今ではすっかり時代遅れとなった。l

セキュリティ対策のプロ、ブレスリン(シルベスター・スタローン)は自ら収監され脱獄することで施設の脆弱性を探る手法をとっている。だが、あるとき高額で依頼された民間の収容施設において彼は依頼者から裏切られる。外部との連絡とサポートを絶たれた彼は単独で脱出するほかなくなったが、そこでクセのありそうな囚人のボス(アーノルド・シュワルツェネッガー)と出会う。

80点
シリーズ2作目としては相当な完成度

マーベルの看板ヒーロースパイダーマンは、大人の事情でマーベルヒーロー総登場の「アベンジャーズ」には出演できない。しかしこの映画版(リブート版)は、かのオールスター映画に引けを取らない完成度の高さを誇る。

今日もニューヨークの平和を守るスパイダーマンことピーター(アンドリュー・ガーフィールド

)は、「娘を巻き込むな」との父親の願いが常に頭から離れなかったが、それ以上に愛するグウェン(エマ・ストーン)と離れられずにいた。そんな折、親友のハリー(デイン・デハーン)がオズコープ社に戻ったことを契機に、自分を捨てた実父との別れの真相に迫ることになる。

80点
まさかの共演によるボクシング映画

「ロッキー」や「ランボー」の新作をとってみたり、忘れられていたベテランアクションスターを集めてオールスターな作品を作ってみたり。最近のシルヴェスター・スタローンはハリウッド一、サービス精神旺盛な企画に絡んでいる。

そんな彼の最新作「リベンジ・マッチ」もその一つ。なんと、体重増加の役作りが伝説となった「レイジング・ブル」(80年)のロバート・デ・ニーロとふたり、因縁あるライバルボクサーを演じて初共演する離れ業をやってのけた。

80年代に一世を風靡したボクサーのビリー(ロバート・デ・ニーロ)とヘンリー(シルヴェスター・スタローン)。対戦成績五分のまま迎えた第3戦直前にヘンリーが引退したことをビリーはいまだに根に持ち、ヘンリーもまた別の因縁から二人は犬猿の仲となっていた。そんな二人に目を付けた売り出し中のプロモーター、ダンテ(ケヴィン・ハート)は、30年ぶりに二人を対戦させようという無茶な企画を考えるが……。

80点
お父さんの選択肢

子を持つ親にとって、誘拐犯罪ほど恐ろしいものはない。デパートでわが子が迷子になっただけでも胃が痛むような苦しみと恐怖にとらわれるのが親というもの。まして誘拐確定となった日には、いかな強靱な男といえど、ただではすまない。

感謝祭のパーティーのさなか、ケラー(ヒュー・ジャックマン)の幼い娘が失踪する。ロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)はそれなりに優秀な男で即座に容疑者(ポール・ダノ)を拘束、取り調べるが、警察はあろうことか証拠不十分で男を釈放してしまうのだった。

「プリズナーズ」は、愛する娘の誘拐を前に、普通の父親に何ができるのかを考えさせられるサスペンスドラマ。

80点
感動の裏話もの

映画界の巨人ディズニーには膨大な作品アーカイブがある。きっとその一本一本にはそれぞれ興味深いトリビアがあるのだろう。だがこれまで彼らはそうした自社の裏舞台ものには手を出してこなかった。

ディズニーランドでは園内の二カ所で同時にミッキーが現れることは無いそうだが、「舞台裏」を隠し続けるのがある意味社風のこの映画会社で、初めて作られた内幕ものが「ウォルト・ディズニーの約束」だ。

61年のハリウッド。業界一の権力を持つとさえいわれたディズニー社長のウォルト(トム・ハンクス)は、しかし20年来、映画化を説得できない相手がいた。それが「メアリー・ポピンズ」の原作者で、自他ともに認める頑固者P.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)。このたび彼女を英国からようやく招くことに成功したウォルトは、ここぞとばかりにゴージャスなもてなしで迎えるのだが……。

80点
戦争の発生原理を描く

アメリカはシリア領内のイスラム国を空爆、ローマ法王は現状を第三次世界大戦だと懸念、マレーシア機は落とされ、尖閣諸島には中国の不審船がうろついている。いまや世界中が戦争の当事者となる時代に突入している。そんな中、公開される「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は、その公開タイミングも含め、映画の神様の祝福を受けたと思わせる抜群の出来映えである。

前作のラストから10年、ウィルスによって人間はほぼ死滅し、猿たちは驚異的な進化を遂げていた。わずかに残った仲間たちとサンフランシスコで暮らす人間たちは、山で猿のリーダーであるシーザー(アンディ・サーキス)と出会う。一触即発の中、人間たちがシーザーに求めたものとは……。

旧・猿の惑星はなんといってもショッキングな落ちと、時間を行き来するストーリーの輪が完全に閉じた終幕により、シリーズものとしては高評価を得ている。

80点
男の子が学ぶべきものがある映画

ギリシャ神話に登場する英雄で、ゼウスと人間の女アルクメネの間に生まれたヘラクレス。その勇姿と英雄伝説は多くの映画で見ることができるが、今年は奇しくも2作品がほぼ同時期に公開される、ヘラクレスイヤーとなった。

並外れた戦闘力を持つヘラクレス(ドウェイン・ジョンソン)は、5人の仲間たちとともに傭兵稼業にいそしんでいた。やがて彼らはその強さを見込まれ、トラキア王の兵たちを鍛える任務に就く。

王道のギリシャ神話映画である「ザ・ヘラクレス」(レニー・ハーリン監督 公開中)に比べ、こちらはかなりの異色作。なにしろドウェイン・ジョンソン演じる主人公は「自称」英雄ヘラクレス。その無敵伝説でハッタリをきかせ、自分たちの生業である傭兵稼業の営業をしている男である。これではギリシャ神話ではなく、詐欺師の映画である。

80点
同じ俳優で12年間撮影し続けた劇映画

ドキュメンタリー映画で制作&取材期間ウン年なんてのは珍しくもないが、劇映画で撮影期間12年というのは尋常ではない。しかもキャストは最初から最後まで同じ俳優がやりとげる。「6才のボクが、大人になるまで。」は、そんな素っ頓狂な製作手法が話題の家族ドラマである。

テキサス州の小さな町で暮らす少年メイソン(エラー・コルトレーン)は、母オリヴィア(パトリシア・アークエット)が転職のため大学に再入するとういことでヒューストンに引っ越しする。そこで新しい義父の訪問や同居、暴力等々、ありふれてはいるが彼らにとっては波乱万丈の少年時代を過ごすことになる。

キャストのほとんどが12年間、断続的に撮影を続けたので、この映画の中では登場人物がリアルに歳をとってゆく。お母さん役のパトリシア・アークエットは年々ぽっちゃり度合いを高めていくし、登場時6歳だった主人公少年エラー・コルトレーンは映画の終盤では18歳の立派なヒゲ面青年になっている。

80点
犯すはずのない父親の罪の真相

父子の癒しの物語になっている「ジャッジ 裁かれる判事」には多くのサブテーマが含まれており、非常に見応えがある。とくに息子を持つ父親がみたら、これはたまらない心に残る一本となるだろう。

金のためならどんな悪人の弁護もする凄腕弁護士のハンク・パーマー(ロバート・ダウニー・Jr)。あるとき彼は、長く疎遠となっている判事の父親ジョセフ(ロバート・デュヴァル)が、殺人事件の容疑者となったことを知る。不良の申し子のようなハンクと違って堅物を絵にかいたような父親が、よもや法を犯すなどあり得ないと思った彼は、故郷に戻って事件を調べ始めるが、数々の状況証拠は父親に不利なものばかりだった。

この映画が描いているのは、人が人を裁く難しさとか、依頼人を救うために手段を選ばぬ弁護士ってどうなのよ、といった問題がまず挙げられる。さらに、息子の助けを素直に受け取れない父親の心情や、過去の罪をどう贖罪すればいいのかなど、様々なサブ要素もはらんでいる。事件の真相、鍵をにぎる父親の本音がなかなか明らかにならず、それで引っ張るミステリーとしても良質。

80点
絶妙なバランス感覚

高い壁に囲まれ、謎だらけの外の世界を渇望する世界観が「進撃の巨人」とほんのちょっぴり似ている映画版「メイズ・ランナー」は、アメリカにおけるティーン向けミステリアドベンチャーの大本命だ。

ティーンエイジャーのトーマス(ディラン・オブライエン)が目を覚ますと、高い壁に囲まれた広場だった。そこには同じような境遇の若者が大勢おり、すでに相当期間の共同生活を送っていた。なぜか過去の記憶がない以上に最大の問題は、唯一の出口と思われる巨大な扉の向こうには毎夜構造を変える巨大迷路があり、扉が閉まる夜の間にそこに閉じ込められてしまうと、生還の可能性が今のところゼロ打倒いことだった。はたしてトーマスは迷路を抜け、記憶を取り戻し、外の世界に脱出できるのだろうか。

あまりに面白すぎて、こりゃもう進撃はいらないや、おなかいっぱいと思ってしまうほどよくできたフィクションドラマである。

80点
すごい緊迫感

「誘拐の掟」というから、誘拐ものの脚本はリーアム・ニーソンにもっていけ、みたいな掟があるのかと思ったがそんなはずはなく、しかし彼のおかげで抜群に本作はおもしろくなった。

1999年、元刑事のマット(リーアム・ニーソン)に怪しげな男から依頼が舞い込む。それは、妻をさらわれた男からの、犯人探しの仕事だった。直感から危険な背後関係を察したマットだが、すべて承知で彼は引き受けることにする。

ものすごい緊迫感で、まるで「羊たちの沈黙」を思わせる。その理由は、この主人公が元敏腕刑事、すなわち捜査能力があるのに今は何の後ろ盾もない探偵もどき、との設定によるものが大きい。

80点
地味だがきわめて良質なアニメーション

最近の子供向けアニメーションは、ポケモンや妖怪ウォッチといったテレビのキャラクターもの、もしくはディズニーやピクサーなどの海外産が中心で、それ以外の国産のベーシックなものは影が薄い。

そんな風潮に立ち上がった……というわけでもなかろうが、かつて「世界名作劇場」シリーズで日本アニメのベーシックを作り上げた日本アニメーションが、その40周年記念にシンドバッドの冒険を持ってきた。本作はその3部作の1作目となる。

少年シンドバッド(声:村中知)はあるとき空から女の子と馬が起きてくるのに遭遇する。何者かに追われる彼女を非力ながら助けようとするシンドバッドを見ていたラザック船長(声:鹿賀丈史)は、そのガッツを見込んで自分の船にスカウトする。

80点
パージの本質が見えてきた続編

支持者が信じていることと政治家の本音が正反対というのはよくあることである。今の日本でも「アベノミクスは消費税増税さえなければ成功したんだ」などとズレた意見をよく聞くが、冷静に見れば増税こそアベノミクス定食のメインディッシュである。米国に倣った格差拡大=富の逆再分配が目的の政策なのだから当然だが、そこに気づかせないためにプロパガンダ技術というものがある。かくして、もっとも政策の犠牲者になる人たちが、なぜか一番の熱心な支持者になるという不可思議現象が起こる。

年に一夜限り、あらゆる犯罪が合法となるパージ法。そんな近未来のアメリカで、鍛え抜かれた肉体を持つレオ(フランク・グリロ)は完全武装でその夜を迎えた。彼は改造した防弾使用のマスタングを駆り、悲壮なる表情でパージの夜に発つ。

このシリーズの世界観の最大の特徴であるパージ法も、まさにアベノミクスと同じである。大勢が信じる「目的」と、為政者側の考える「目的」は真逆であり、強力なプロパガンダで国民を洗脳することで真相を隠している。前作含め、この2本の映画が言いたかったのは、要するにそういうことだ。

80点
トラウマのない人限定

日本ではタブーになってしまったが、アメリカでは「カリフォルニア・ダウン」のような津波や地震を主菜とするディザスター・ムービーが相変わらず作られている。しかも東日本大震災の凄惨な映像を入念に研究してから作られているわけで、皮肉にもその映像の迫力たるや過去最大級である。

消防レスキューヘリのパイロット、レイ(ドウェイン・ジョンソン)は、ある過去の出来事以来、妻エマ(カーラ・グギーノ)との仲が冷え切っていた。そんな折、未曽有の大地震が発生、幸い飛行中で難を逃れたレイはそのまま高層ビルに取り残されたエマを救いに行くが……。

ドウェイン・ジョンソン主演の家族愛ムービーであるから本来小中学生も含めて楽しめる娯楽映画なのだが、こと日本においてそれは不可能だ。東北の被災地はもちろん、それ以外の子供たちにとってもこの映像は余りに刺激が強すぎる。この映画における震災シーンは、地震、津波系の映画としてはこれまで例がないほどに強烈だ。

80点
懐かしゲームが襲ってくる

「ピクセル」の原案というべき2010年公開の短編ムービーは、ゲームキャラの攻撃を受けると爆発する代わりにキューブ上にばらけてしまうアイデアで意表を突いた。日本のアニメ映画「ガリバーの宇宙旅行」(65年)にも同様のアイデアが出てくるが、こちらはファミコン世代になじみぶかい、荒いドット絵に変身させられる点が笑いと恐怖感を感じさせる。なかなか秀逸なものだ。

NASAが外宇宙探査機に乗せた地球外生命体への友好的メッセージ。だがそれを曲解した宇宙人は、そこに含まれていた攻撃性の塊のような映像に自らの姿を変え、地球へ先制攻撃を開始した。緒戦で蹴散らされた米軍とアメリカ政府は、彼らの姿が80年代のアーケードゲームそのものであることから、当時の少年ゲームチャンピオンだったサム・ブレナー(アダム・サンドラー)らを人類最後の希望として招集する。

短編映画のアイデアを膨らませ、アダム・サンドラー映画としてまとめた「ピクセル」は、日本人にもなじみ深いゲームがたくさん登場するアクションコメディーだ。

80点
泣ける恐竜ファンタジー

ピクサー最新作「アーロと少年」は、「今回は映像で見せますよ」と宣言するがごとく、まるで実写のようなすさまじいクオリティの水面ショットからはじまる。

6500万年前、生物を滅ぼすはずだった隕石が逸れたもうひとつの地球。首長竜のアーロは体が小さく、兄弟たちの中で劣等感を感じていた。最近、一家の食糧庫を荒らす謎の小さい生き物がおり、アーロはその捕獲を狙っていたが失敗する。逃げ出したその奇妙な生き物を追いかけるうち、アーロと父親の身に悲劇が起きる。

映像派宣言をしたとおり、この映画のクライマックスには一切の台詞がない。そして、それが強烈な涙腺刺激効果を生み出し、観客席のほとんどが落涙確実な出来となっている。まったくもって大した自信だし、実力である。これが子供映画というのだからハリウッドのレベルは圧倒的である。

80点
妙にリアリティのあるAIもの

「エクス・マキナ」は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」など並みいる超大作を押し退けてアカデミー視覚効果賞を受賞したわけだが、なるほどB級な筋書きに超A級の見た目をくっつけたようなユニークなSF映画である。

検索エンジン最大手企業の社員ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、大富豪で知られる創業者社長のネイサン(オスカー・アイザック)の山荘に招かれる。この施設で彼は、なんとAI(人工知能)を搭載した精巧な女性ロボット・エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)を完成させていた。若き優秀なプログラマーであるケイレブは、彼女との会話を通じて最終チェックをするため、全社員から抜擢されたのであった。

あれだけの機密を指紋や網膜認証のひとつもなく、ローテクなカードキーだけで守っているなど、突っ込みたい部分は多々ある。しかし、脱ぐべきときに脱ぐべき人がちゃんとすべてを見せてくれるつくりなので、多少のあらは許すことにする。

80点
資料的価値は点数以上

フェイスブックなどのSNSや、ウェブメールなどインターネットを利用していない人は、いまやほとんどいないだろう。少なくともこの記事を読んでいるすべての人はネットを使いこなしているわけだが、そんな皆さんがやりとりしているそうした情報は、すべてアメリカが(無断で)見張っている。

これは、物的証拠とともにエドワード・スノーデンが暴露した内部告発である。

これまでエシュロンという盗聴システムはよく知られていたが、彼が明らかにしたPRISMの性能と衝撃はその比ではなく、最近では「エクス・マキナ」などのフィクション映画の中でも言及されていたりする。

80点
演技力を堪能できる数少ないドラマ

スペイン映画「瞳の奥の秘密」(09年)のハリウッド版リメイクである本作は、ストーリーじたいの面白さも去ることながら、役者の演技力というものを純粋に堪能できる数少ない逸品である。

FBI捜査官のレイ(キウェテル・イジョフォー)は、ある殺人事件現場で、被害者が相棒のジェス(ジュリア・ロバーツ)の愛娘であることに気づき愕然とする。ひそかに思いを寄せるエリート検事補クレア(ニコール・キッドマン)の協力も受け、容疑者を挙げたまではよかったが、なぜか上層部は男を開放するよう圧力をかけてくる。

ニコールとジュリアは、そのキャリアと人気を考えると意外な気もするが、これがはじめての共演となる。そんなにギャラが高かったのかと皮肉の一つも言いたくなるほど、もっと早く見たかったといいたくなるほど、期待にたがわぬすばらしいパフォーマンスを見せている。

80点
前作ほどの完成度は望めないがなかなかの佳作

堂々たる傑作にして完結していた前作をもつ続編だけに、どうせこの程度だろうとの低めの先入観をもって見る人が多いと想像する。だが「ファインディング・ドリー」はそれをいい意味で裏切り、予想外の感動を与えてくるのだから大したものだ。

グレート・バリア・リーフで、友人たちと何不自由なく暮らす忘れんぼうのドリー。ある時彼女は幸せそうな親子であるマーリンとニモをみて、自分にも家族がいたはずだと考える。そのときかすかに戻った幼いころの記憶。それだけを頼りに、ドリーはマーリンの制止も聞かず大海原へと飛び出してゆく。家族をさがす無謀なドリーの旅は、はたしてどんな結末を迎えるのだろうか。

前作「ファインディング・ニモ」を私は、二人の障害者を特別扱いしていたマーリンが、結局彼らに救われる話だとあちこちで解説してきた。狭い見方で他人を判断することの愚かさと、弱者への理解をエンタメの中で見せる優れた映画作品だと評価してきた。

80点
観る前にテンションを上げないと

世界中でR指定映画としての興行記録を塗り替えている「デッドプール」を徹底的に楽しむには、酒でも飲んでテンションをアゲてからの方がよい。でないと私が見た試写室のように、皆でそろって沈黙することになりかねない。

元傭兵のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、今は不死身のデッドプールとしてお気楽に悪党をぶちのめしている。だが彼はヒーローを自覚しておらず、単にある男を探し追いかけているだけなのであった。

間違っても子供に見せてはいけない、大人のためだけのアメコミ映画である。戦いの途中でおっぱいポロリはあるわ、人体爆裂グロシーンは多発するわとそのつきぬけぶりはスカウトに来たX-MENもビックリである。これが同じ世界観というのだから仰天企画といってよい。

80点
テレビ局制作映画だからこその強みをみせた

テレビ局による映画製作は、映画マニアからは何かと批判されることが少なくない。だが、長年テレビ業界での経験がある君塚良一監督のフジテレビ製作映画「グッドモーニングショー」は、逆にテレビをよく知る彼らが作ったからこそこれほど面白くなった、珍しい成功例と言えるだろう。

朝のワイドショーのキャスター澄田真吾(中井貴一)は、起き掛けに同居する息子からデキ婚の意思を伝えられて狼狽する。おまけに共演する女子アナの圭子(長澤まさみ)からは、不倫関係を生放送中に公表するなどと一方的に通告されてしまう。散々な一日になりそうだと思った彼だが、本当のド不幸は放送開始後に待ち構えていた。

序盤はキャスターである主人公が朝の3時に目覚めてから本番までを、ディテール豊かに描く完全なお仕事ムービー。もしあなたがテレビ関係者なら、きっと息子に見せたくなるであろう。職場の格好よさを見事に描いた映像となっている。

80点
タイトルが怖い

「ザ・ギフト」は、同種のストーカー型サスペンスのひな形を踏襲するかと見せかけて、なかなかしゃれた(適切な表現ではないかもしれないがネタバレを避けるためあえてこう書く)展開で驚かせる佳作である。

シカゴからカリフォルニアの郊外に越してきたサイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)。経済的に成功し、かつ仲のいい夫婦である二人は、ある理由から夫サイモンの故郷であるこの地に戻ってきたのであった。そしてまだ引っ越し作業も終わっていないとき、買い物先でサイモンは高校時代の同級生ゴード(ジョエル・エドガートン)と25年ぶりに再会する。ところがその日からことあるごとにゴードから住所も教えていない新居へ贈り物が届くようになり、ロビンともども困惑する。

再会時は大人らしく友好的に振舞ったサイモンだが、昔から別にゴードとは仲良いわけではなく、それどころかあまり好きではなかったことが徐々に観客にもロビンにもわかってくる。ただ最初はそんなことは知らないから、ロビンは序盤、急にやってきたゴードにも満面の笑顔で応対する。

80点
勝ち組の女性客を気持ちよくさせる計算高いロマコメ

邦題も、野外フェスで「運命の人」と出会う冒頭のコメディシーンも、日本の某作品の二番煎じのような気がするが、それはともかくブリジット・ジョーンズ、なんと12年ぶりの続編の登場である。

40を超えてもいまだ独身彼氏ナシのブリジット(レニー・ゼルウィガー)。仕事はそこそこ順調だがこれではまずいと、悪友仲間と出かけた音楽フェスで、素敵な男性ジャック(パトリック・デンプシー)と思わずヤってしまう。しかも元カレのマーク(コリン・ファース)ともムードに流されしてしまい……これが、ブリジット史上最大のトラブルの引き金となってしまう。

「どっちの子供かわかんない!」10代の女の子ならまだしも、40過ぎの独身おばさんが遭遇するとギャグにしかならないシチュエーションである。こんなものはだれが見ても、どっちの子供だろうが良かったじゃねーかでおしまい。深刻さがないのが救いで、よって本作の笑える度は非常に高い。コメディとしては優秀である。

80点
ちゃんと笑わせてくれる

人気漫画の実写映画化はだいたい文句を言われ、炎上するのが定番の展開といえる。それでもワーナー・ブラザースは今年だけで何本もそんな企画をやろうという。どれも大ヒットコミックで、神をも恐れぬ攻めっぷりである。とりあえずはその一つ、空知英秋の同名大ヒットコミックの実写化「銀魂」の出来を語るとしよう。

天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人との戦いに敗れ、傀儡政権となった江戸幕府。町には一足飛びに進んだ文明とともに天人があふれ、奇妙な共存生活を送っていた。かつて彼らと激しい戦いを繰り広げた侍、坂田銀時(小栗旬)はいまは便利屋を営んでいるが、あるとき旧友、桂小太郎(岡田将生)の失踪事件を追うことになる。

いきなりテンションの高いパロディから始まるギャグ映画なので、観客にはある意味覚悟が必要である。「これは「変態仮面」を撮った監督が、豪華キャストを使って最初っから無茶苦茶飛ばしまくるシュールギャグ映画なのだ」としっかり認識し、覚悟した上で鑑賞する。これが大事である。

80点
≪ローワンのファンなら爆笑必至≫

前作から7年、誰もが忘れていた続編第三弾『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』は、ベテランコメディアンの風格を見せつけた、余裕綽々の爆笑傑作スパイアクションであった。

間抜けな職員のミスにより、イギリスの秘密情報部MI7エージェントの個人情報が全世界に流出してしまった。やむなく彼らは情報が漏れていない、引退したエージェントを招集する。ところがその一人で、今は小学校で怪しげなスパイ技術を教えているジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)がさらなるミスを犯したため、わずかな残存エージェントも全滅してしまう。

限られたスキルしか持たないおバカスパイが、ハチャメチャな行動で回りを引っ掻き回しながら、なんとなく問題を解決してしまうシリーズ第三作。前作は7年前、一作目は03年ということで、ほとんどの人は見たこともないかもしれないが、別に無理して復習する必要はない。本作から見ても10分でキャラクターのお約束をつかめる、万人向けのコメディー映画である。

80点
≪満足度の高いホラー≫

当サイト『アス』の批評のところでも少しふれたが、現代の米ホラー映画界では、日本では安っぽいと思われがちなオカルトや都市伝説的ネタというのがドル箱……とまでいかずとも掘り出し物がつまった宝庫扱いである。その原因はいくつかあるのだが、『死霊館』(13)の成功体験もその一つである。

あれ以来、本編以外にもスピンオフとしてアナベルシリーズなど、作り手たちは大きな商売に育ててきた。それは映画人としてはとても尊敬すべきことだと思うが、一方で時系列が作品ごとにあちこち飛ぶので、よほどのファン以外はそろそろ頭がとっちらかっているのではないかと思われる。

そんな中、この『アナベル 死霊博物館』は、時代的には『死霊館』(13)直後の物語ということで、おなじみのシリーズキャラクターが出てきてファン納得なわけだが、同時に本作から初めて見る人にも全く問題なく楽しめる作りになっている。

85点
真の意味で大人と子供の両方が楽しめる傑作

『きれいな涙 SPIRIT』は王道のストーリーを持つアニメーション作品で、いかにもアメリカらしい一本。ディズニーの『トレジャープラネット』に対抗するドリームワークスの作品だが、どちらも実によく出来ている。フルアニメーションらしいエレガントな動きとCGの融合は、違和感を感じる部分がだいぶ減り、そろそろ完成の域に達したという感じがする。

カメラワークは、決してアニメっぽくはない、実写のハリウッド映画を見ているようなダイナミックなもので、照明(光源)の凝った様子も合わせて、高く評価したいところ。音楽と映像がシンクロした総合的な演出法は、映画としての完成度の高さを感じさせる。

この作品の面白いところは、主人公の馬を擬人化していないという点。馬は「ヒヒーン」としかいわないし、人間みたいな表情もしない。それなのに、その心情を雄弁に語っている。

85点
現代の最高レベルの特撮技術で、こんなリアルな残酷シーンを作るのは、もはや犯罪だ

マトリックスのアクション監督デヴィッド・エリスが送る、ホラー映画。

いやはや、とてつもなく悪趣味な映画である。これほどのホラー映画は、そうそうお目にかかれまい。『デッドコースター』がどういうタイプのホラーかというと、超高画質のリアルなCGで、人間が事故死する場面をスローでバッチリ見せるといったタイプのもの。

世間が、『ザ・リング』だの『ボイス』だの『呪怨』だのと、心理的な和風の恐怖映画に夢中になっているなか、その正反対に位置する『デッドコースター』は、実に新鮮。いいかげん、あの手のグジグジした恐怖映画に飽きが来ていた私にとっては、この映画は久々に観た、現代版悪趣味スプラッターとして、たいへん楽しめた。

85点
17歳の純粋さに感動できる、青春ドラマの傑作

性格も家庭環境も全く違う、二人の少女を主人公に、ティーンエイジャーの心を瑞々しく描いたドイツ製青春映画。

監督は、相当な数のティーンたちにリサーチをしたそうで、本作は細かい部分までとてもリアルに“今のドイツ少女”たちを表現している作品といえる。製作側が、自身の10代の頃の経験だけに頼らずに描いた点がうまく作用しており、メインターゲットの20〜30歳のみならず、当の10代の少女たちがみても、納得できる内容になっているのではないか。

ちなみに、映画の冒頭で、女の子二人が男子部員たちのシャワーシーンを覗く場面があるが、こんな事ホントにするもんかねぇ、と思った私は、ドイツの高校にいっている知り合いに早速聞いてみた。すると彼女いわく、「リアルだ。充分あり得る」だそうである。そう考えてみると、男の子のお尻ばっかり追いかけるカメラも、彼女らの視線をリアルに表現しているというわけか。

85点
主役の少女の存在感が、観客を圧倒する

ニュージーランドの原住民、マオリ族の族長の一族にうまれた少女を主人公に、男系社会での古い伝統への挑戦と、少女の成長を描く感動物語。

映画が始まって10分もすれば、この映画には“力”がある、と感じることができるだろう。スクリーンから溢れるエネルギーに観客は圧倒され、一気に引き込まれることが確実な、素晴らしい映画である。

古い伝統にこだわり、せっかく生まれた赤ちゃんをすら、それが女だと言うだけで嫌悪する祖父。我々の感覚からすればどうしようもない、ただの頑固親父に過ぎないこのキャラクターだが、単純な悪役というわけではない。

85点
これこそ完璧な脚本だと唸らせる

神経症気味でチックに悩む詐欺師と、突然現れた14歳の娘を中心に描かれるドラマ。メインキャストの素晴らしい演技力と、恐るべき完成度の高いストーリーで、まれに見る傑作にしあがった。

笑いあり、スリルあり、アクションあり、そして心震わせる感動ありと、『マッチスティック・メン』には、まさにエンターテイメントの全てがある。

このサイトの趣旨に100%合致した、非常にクオリティの高い娯楽映画である。これをみて頂ければ、私がこのサイトの読者の皆さんに、どういう映画をすすめたいのか、どういうポリシーで運営しているかが、きっとわかってもらえると思う。

85点
緊張感が途切れぬ良質なサスペンスドラマ

見応えのある法廷サスペンスもの。演技派で知られる2大スターがはじめて競演した。

さて、法廷劇といえば、根強いファンが存在する定番ジャンルであるが、この『ニューオリンズ・トライアル』は、ちょいと趣向が変わっている。通常このジャンルは、法廷での弁護士と検事(もしくは敵側弁護士)の激しいバトルというのがメインのお楽しみだろう。もちろんそれはそれであるのだが、本作では一方の陣営に、陪審コンサルタントなる聞きなれない職業の人物が登場する。

アメリカの裁判は陪審制(12名)で知られるが、多数の陪審員候補者の中から、自陣営に有利な陪審員を調べるのがこの専門家の役目だそうだ。この職種自体は実際に存在するものだが、映画の中では盗聴やら盗撮、尾行などの裏工作を駆使して候補者の思想・心理等を調べ上げ、自分たちの陣営に有利な陪審員を選び出す過程が興味深く描かれる。

85点
奇抜なアイデアを見せるための映画になっていない点がよい

カンヌ映画祭を騒然とさせた話題作。何がビックリかというと、そのセット。だだっ広い体育館みたいな場所の床に、なんと白線を引いただけ。各区画には「誰々の家」などと書いてあり、椅子など最小限の家具だけが置かれている。壁や屋根は一切無い。その家に入るときは、存在しない「ドア」を俳優が演技だけで表現して開けて入って行く。

ここで3時間(177分)、9章立ての物語が展開する。考えただけで退屈しそうな気がするがさにあらず。非常にエキサイティングなドラマが繰り広げられる。見た目のほうも、カメラアングルや光の具合等でメリハリをつけ、飽きさせない。セットがシンプルな分、それ意外の部分で相当工夫を凝らしているのがわかる。

終わってから考えてみると、この舞台劇のような奇抜な演出アイデアは必然だったと感じさせる。単に奇をてらっただけであったならば、ここまでは誉めはしないが、この話のテーマのひとつ「権力のもつ怖さ」の普遍性を際立たせるという意味で、「白線だけ」のセットは大いに効果を上げている。

85点
若々しいセンスでさわやかに描いた傑作青春映画

嶽本野ばら原作、深田恭子主演、茨城県下妻を舞台にしたコメディ友情ドラマ。「サッポロ黒ラベル」のCMで、スローモーションによる卓球シーンを演出した中島哲也監督の若々しい映像感覚は、本作でも存分に発揮されている。地方を舞台にした日本映画はどうも垢抜けないイメージに仕上がることが少なくないが、『下妻物語』にはそれが全くない。このセンスの良さにまず驚かされる。

主人公は、下妻に住みながらロリータファッションをこよなく愛する女の子。常磐線で片道3時間近くかけて、代官山に通いつめるという固い信念を持つ。しかし、あまりに周りとかけ離れた趣味(と性格)のため、友達は一人もいない。しかもそれをちっとも“嫌な事”と感じていないという、孤高のティーンエイジャーだ。フカキョンの魅力がいかんなく発揮された、まさにはまり役といえる。幼い顔立ちにロリータファッションがこの上なく似合っており、非常に可愛らしい。

彼女が、ひょんな事から地元のヤンキー娘と出会い、やがて真の友情を築いていくというのが大まかなストーリー。いかにもなヤンキー(レディース??)ファッションの彼女と、ロリータな深田恭子の見た目および性格のギャップが凄まじい。若い観客にとって、二人の価値観の違いをこれほど雄弁に表す要素はなかろう。このギャップが数々の笑いを生みだし、良くできたコメディとなっている。

85点
知的障害の青年を巡る驚きの感動実話

アメリカのスポーツ専門誌に掲載されたある感動実話の映画化。知的障害の黒人青年を中心とした人々の交流を描いたハートウォーミングなドラマだ。

舞台は1976年のアメリカ。高校のアメリカンフットボール部の練習場をいつもうろついて眺めている知的障害を持った黒人青年がいた。ある日、ふとした事で部員が彼にイジメを加えてたことを知ったコーチは、当事者を厳しくしかった上で青年をチームに雑用係として迎えることにした。突然の事に戸惑いながらもやがて彼を受け入れていく部員たちだったが、人気チームである彼らの成績が下がるにつれ、街の人々からの風当たりは徐々に強まっていく。

時代はまだ70年代、知的障害を持つ黒人青年は、人々から気味悪がられていた。そんな彼をただ一人暖かく受け入れたコーチは、最初は周りの理解を得られなかったが、心やさしい娘や妻などの理解者の助けを得て、青年との交流を深めていく。やがては、町の人々すべても変わっていくのだ。健常者が障害者を助けるのではなく、一人の知的障害の青年が人々を救う物語であるところが感動的。

85点
トム・クルーズ主演映画としてはパーフェクト

人気スターのトム・クルーズが悪役を演じる犯罪アクション&サスペンス。

ロスで働くタクシードライバー(ジェイミー・フォックス)は、将来メルセデスを購入し、リムジン会社を設立するのが長年の夢。そんなある晩、一人の紳士(T・クルーズ)を乗せると、彼は破格の値段で一晩タクシーを借り切ると言う。

実はこの、トム・クルーズ演じる金持ち風の男は殺し屋で、一晩に5人を殺すという大忙しの仕事のパートナーとして、話の合うこの黒人運転手を見込んだのだ。やがて男の正体を知ったドライバーはどういう行動をとるのか? はたしてこの有能な殺し屋は仕事をまっとうできるのか。物語は予測できない方向へと転がって行く。(ちなみに後半のストーリーについて、プレス関係者には緘口令がしかれている)

85点
よくぞロマコメでここまでやった、すごすぎる

台湾の絵本の原作を、金城武主演で映画化したラブストーリー。ワーナーブラザーズ映画初の中国語作品であり、力の入った一本。

主人公のバイオリニスト(金城武)とヒロインの貧乏翻訳家(ジジ・リョン)はアパートの隣同士──だが、お互いの存在はまだ知らない。そんな二人が町で出会い、電話番号を交換したのはよいが、翌日そのメモは雨でにじんで読めなくなっていた。二人はこの出会いに運命を感じて、お互い必死に相手の居場所を探す……隣同士だとは気づかないまま。

これはすごかった。最初はもうなんてアホな話かと、天下のワーナーブラザーズも、ついにこんなくだらない映画を出してきたかと思ったが、(私の想定する)「ターンレフト ターンライト」の正しい楽しみ方を理解してからはその印象はサイコーへと変わった。平たく言えば、この映画は、まじめな恋愛映画を期待してみてはいけないのであった。とにかく笑い飛ばすこと、これがポイントだ。

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