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75点
ゲームブックやファンタジー小説でおなじみのモンスターが

『スパイダーウィックの謎』は、やたらと大風呂敷を広げたがるファンタジー映画が多

い中、身の程をわきまえた堅実なつくりの好編。小学生くらいの子供たちはもちろん、

TRPGやゲームブック世代のファンタジーファンにもすすめられるいくつかの要素を持っ

75点
ただいま流行中の「○○現場に偶然居合わせた人の衝撃映像」もの

P.O.V.リアルパニック・ムービーと銘打たれたこの映画。この耳慣れない宣伝文句はしかし、今後何度も使われるかもしれない。というのも現実にいま、P.O.V.なる手法は映画作りをする人々の間では無視できないブームなのだ。

ローカルTV局の女性レポーター(マニュエラ・ヴェラスコ)は、消防士の一日を追うドキュメンタリー番組のロケで消防署に来ている。実際には何の動きもなく、ちっとも面白い画が取れぬまま夜が更けていく。イラ立ちがつのるころ、緊急出動のサイレンが鳴りひびく。あるアパートで、なにやら騒ぎが起こったというのだ。

P.O.V.(Point of View)とはなんぞや。これは日本語で言う主観撮影というもので、簡単に言えば公開中の「クローバーフィールド/HAKAISHA」などがそれにあたる。ようは登場人物の目線で撮影された作品のことだが、これまではその特殊な映像をどう設定するかがひとつのカギであった。

75点
全裸格闘に挑んだヴィゴ・モーテンセン

『イースタン・プロミス』は、『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役ヴィゴ・モーテンセンの主演最新作。なんと彼の全裸姿モザイク無しによる格闘シーンがあるということで、世界中の女性映画ライター間で大変な話題を呼んだ(と予想される)問題作である。

クリスマス前のロンドン。看護士アンナ(ナオミ・ワッツ)が勤める病院にロシア人少女が運び込まれ緊急出産するが、母体は残念ながら死亡した。なんとか赤ん坊の父親を見つけたいと考えたアンナは、少女が残した手がかりからあるロシア料理店にたどり着く。そこの関係者とみられる自称運転手(ヴィゴ・モーテンセン)の警告を無視してさらなる探りを入れた彼女は、しかしすでに闇社会に絡め取られつつあった。

イギリスにおけるロシアンマフィアの世界を描いた社会派作品である一方、すぐれたサスペンスでもある。ロンドンのトルコ移民の惨状を取り入れた「堕天使のパスポート」(02年、英)の脚本家スティーヴ・ナイトによるストーリー運びが冴え渡る。ヒロインが駆る古いバイクや男たちが着用するアルマーニのブラックスーツなど、細かい小道具にも味がある、見ごたえある一本。

75点
ロッキー、ランボーに続き、インディ・ジョーンズも復活

ハリウッドでは、ご存知のとおり一年の間に数え切れないほどの話題作が生み出されている。その中でも、この年一番期待された超ド級の注目株がこれ。"パートタイム考古学者"『インディ・ジョーンズ』19年ぶりの最新作だ。

舞台は1957年のアメリカ、砂漠の中の広大な空軍基地。ソ連の女諜報員(ケイト・ブランシェット)率いる一団は、インディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)を脅して第51番倉庫に侵入、目当ての荷物へと誘導させる。彼女らは、大きな力を秘める水晶髑髏=クリスタル・スカルを探しているのだった。

19年ぶりの新作ということだが、劇中でも前作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」のラストから同期間経ったという設定。かつてインディとかかわった人物たちのその後についても、チラリと触れられ郷愁を誘う。

75点
絵本作家Dr.スースと日本人大学教授の交流により生まれたハートフルストーリー

私はこれを日本語吹き替え版の試写で見たが、さすがに歌の場面はオリジナル音声を聞きたいと思ったものの、全体的には満足のいくものだった。森川智之&雨蘭咲木子という『ダーマ&グレッグ』でおなじみの二人をはじめとする、専門の声優で固められた日本語版キャストの実力によるものであることは疑いない。

20世紀フォックスといえば『ザ・シンプソンズ MOVIE』(07年)公開の際、テレビ版と異なる有名人キャストを日本語吹き替え版に起用し、大顰蹙をかった事件が記憶に新しいが、さすがに懲りたのだろうか。いずれにせよ、これを見に行く子供たちはほぼ100%日本語版を見るのだから、知名度より完成度をとった方針は評価できる。

ジャングルに住む優しい象のホートン(声:ジム・キャリー 森川智之)は、大きな耳の前を横切るホコリの中から誰かの声が聞こえてくる事に気づく。ホコリに見えたものは、じつはダレダーレという名の極小の平和な国。安定して暮らしていた場所から、風に飛ばされここまでやってきたのだ。風に飛ばされるたび、嵐や地震におびえてきたダレダーレの市長(声:スティーヴ・カレル 小森創介)と無事コンタクトを取る事に成功したホートンは、彼らが安心して暮らせる場所まで運んでやる事を約束、冒険の旅に出る。

75点
ハムナプトラの続編は中国大陸が舞台

最近、中国がらみのハリウッド映画がやたらと多い。制作費が安く済む(米国の2から3分の1)とか、中国の市場規模が右肩上がりだからなどと、表向きには言われている。このハムナプトラシリーズも、久々に続編が作られたと思いきや舞台は中国、敵役はジェット・リー。あまりに強引な方向転換でファンを驚かせた。

古代中国を支配する皇帝(ジェット・リー)は、女呪術師(ミシェル・ヨー)に不死の術を探させる。だが、恋人を皇帝に殺された彼女は、不死の代わりに呪いの術をかけ、皇帝を大勢の部下もろとも封印してしまう。やがて2000年の時が過ぎ1946年。リック(ブレンダン・フレイザー)とエヴリン(マリア・ベロ)、そして息子のアレックス(ルーク・フォード)は、その封印を解く鍵を入手する。

20世紀もの間眠り続けたねぼすけの皇帝は、ジェット・リーのアクションを見たい観客の期待通りにすんなり復活。能天気だがなかなかしぶとい主人公一家と死闘を繰り広げる。シリーズのお約束どおり、主人公リックはどんなピンチでもユーモアを忘れない。圧倒的な超能力を持つ敵と対峙しても、意外となんとかなりそうな余裕ムードが心地よい。

75点
イケメンたちがダンクしまくり

カンフー映画が流行中のようである。

思い出すだけでも「カンフーくん」「カンフー・パンダ」「少林少女」と、"枯れ木も山の賑わい"を地で行く魅力的なラインナップ。しかしこのバスケットボール+カンフーアクション『カンフー・ダンク!』だけは別だ。

カンフー学校の師父に拾われ育てられた孤児のファン(ジェイ・チョウ)は、夜の公園でさえない中年男リー(エリック・ツァン)と出会う。そこでファンの超人的な身体能力を見て取ったリーは、「富豪化計画」をひらめき、ファンのマネージャーとして大学バスケチームへの売込みを開始する。

75点
ロメロ「死霊のえじき」がリメイク

『デイ・オブ・ザ・デッド』は、ゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロによる三部作の最終作「死霊のえじき」(85年、米)のリメイクだが、見る際にはその事を真っ先に忘れなくてはならない。

最大のウリを最初に無視しろとはとんでもない話だが、こればかりは仕方がない。ゾンビを手なづけたり銃器を操作したりと多少の影響は見られるものの、原作越えなど下手な期待をすると、あまりに無関係な内容に客側がショック死する。

コロラド州のある町が、州兵の大部隊により演習と称され極秘に封鎖された。じつは町の中では、謎のウィルスが蔓延していたのだ。やがて感染者はゾンビとなり、人々を襲い始める。地元出身の兵士サラ(ミーナ・スヴァーリ)は、部下の兵士(ニック・キャノン)らと実家の家族の様子を見に行くが、そこで騒ぎに巻き込まれる。果たして彼らは無事脱出することができるのか。そしてウィルス感染事件の驚愕の真相とは?

75点
奥菜恵が恐怖映画でハリウッドデビュー

"日本製ハリウッド映画"といわれる本作は、美少女幽霊がうらめしやをするホラー作品。女優として低迷していた奥菜恵がはまり役の幽霊を演じ、華々しいハリウッドデビューを果たした。

新婚旅行で日本に来たカメラマン夫婦は、ドライブ中の箱根の山道で若い女性(奥菜恵)をはねてしまう。だが死体は見つからず、代わりにその日から彼らは心霊現象に悩まされる。

タイ映画「心霊写真」(04年)のリメイクということで、このかわいい幽霊は主人公の撮影した写真にことごとくおいたをする。被写体の背後に景気よくエクトプラズムなんかを出現させる。月刊ムーの常連投稿者でもない限り、そんなものを喜ぶヤツがいるわけもなく……というより仕事上しゃれにならない打撃をうけた主人公氏は、必死にその原因を探るが──という展開。

75点
アンジェリーナ・ジョリーがアクロバティックな殺し屋に

転職というと響きはいいが、日本の場合は転がり落ちるような職業変更ばかりというのが実情である。新卒以外でまともな職場に就けると思うなと、小学校から教えるべきと私は考えているが、教師の多くは「何度でもやり直せばいいのよ」などと、罠としか思えぬ無責任発言をすり込むからたちが悪い。

さえない青年ウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、ある日激しい銃撃戦に巻き込まれる。彼を守るかのように現れた美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)は、ウェスリーの父は凄腕の暗殺者だったと語り、フラタニティなる組織のアジトに案内する。彼らは神話の時代から神に代わって密かに悪人を抹殺してきた歴史ある組織で、ウェスリーの特殊能力を覚醒させようとしているのだった。

転職先を間違うと大変なことになるという、貴重な教訓を得られるアクション映画。主人公のヘタレ男は、絶世の美女アンジェリーナさんに乗せられて、よりにもよって暗殺者にジョブチェンジしてしまう。そこから先は聞くも涙の物語。常識外れのとんでもない訓練をやらされ、銃弾を意識的にカーブさせるなど、一人前の暗殺者に必要なスキルを身につけさせられる。そんなスキル一生身につかねえよと言いたくなるがそこはそれ。OJTの様子は特に必見だ。

75点
大笑い必至のホスト業界コメディ

愛田武氏といえばホスト王。歌舞伎町の業界勢力図を書き換え、ビジネスの健全化にも貢献したという、テレビ番組等でもおなじみのカリスマ社長だ。そんな彼の伝記映画『NIGHT☆KING ナイトキング』は、ホストビジネスの裏側を興味深く見せるコメディ作品。しかもなかなかの傑作で、ホストをテーマにした実写映画としては、相当面白い部類に入る。

昭和43年。女好きがたたってトラブルを巻き起こし、会社をくびになった榎本武(いしだ壱成)は、叔父のコネでホストに転職する。趣味と実益を兼ねる楽勝ジョブとなめていた榎本だったが、実際は実力がなければ収入ゼロという壮絶な格差社会。派閥争いやイジメがはびこる殺伐とした職場であり、ただ女が好きなだけで勤まるような仕事ではなかった。

AV女優やお笑いタレントがキャスティングされ、見るからに低予算Vシネマ臭がする一品だが、これが意外な掘り出し物。なにしろギャグが切れているし、ホスト業界という非日常的のトリビアを見られる楽しみもある。

75点
新型インフルエンザ感染爆発か?

最近、感染症に関する映画が増えている件について、危機管理の専門家、青山繁晴氏に聞いてみた。ちなみに氏は映画好きで有名だが、「映画界は(世の流れに)敏感なのではないか」と言っていた。ハリウッド映画業界が政治と強く結びついており、その最新情報を自らのコンテンツに生かしているのはよく知られているが、日本の映画界も徐々にそれに近づいてきたというわけか。そういう裏事情はちょいと想像しにくいが、ともあれ本作は予想以上のオープニング記録を打ち立て、関係者をほっとさせた。

私立病院の救急医師(妻夫木聡)のもとに、急患が運び込まれてくる。その予想を超えた劇症ぶりに、現場のスタッフは狼狽する。やがてWHOから専門家(檀れい)が派遣されてくるが、彼らの予想では半年間で数千万人の被害者が出るという。日本、いや世界の運命は、いまや最初の感染者が出たこの病院の対応にかかっていた。

前述の青山氏によれば、新型インフルエンザが登場すれば感染者の7割が死にいたるという。新型インフルエンザとは、従来のインフルエンザとは(名前は似てるが)まるで違うもの。鳥から人間に移り、現在はまだその次の段階、すなわち人間から人間に移るケースまではほとんど見られない。だがウィルスが変異し、人間同士で感染するようになったが最後、ワクチンが開発されるまでのおよそ半年間で、世界人類の多くが死に絶える。そういう危機は、いまやすぐそこまで迫っている。

75点
「タイタニック」のカップル再び?!

「タイタニック」のカップル、レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットは、いまや押しも押されぬ大スター。二人とも演技力もすこぶる高い。だが、役者としての特性は正反対といってよい。

レオナルド・ディカプリオは、これはもう彼の顔をひと目見ただけで万人が愛してしまう、好感度の塊をそのまま顔に配置したような、いわば正のスターだ。

一方ケイト・ウィンスレットはその逆。いやな女、不快な態度を演じさせたら当代随一。いわば負のスターといえる。

75点
ティーン向け恋愛映画がこれほどの高品質とは

米大手ワーナーブラザーズは、翌夏強化のため08年冬公開予定だった『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を温存、金庫の奥深くにしまいこんだ。

その代わりに前倒しで公開されたのが、同じ英国のベストセラー小説『トワイライト』の映画化である本作。原作同様、10代の女の子の胸をときめかせるイケメン揃いの実写化だが、これが予想を上回る特大ヒット。捨て試合で思わぬ勝利を得たWBC2次ラウンド日韓戦の日本チームのような、旨みある興行となった。

アリゾナから越してきたベラ・スワン(クリステン・スチュワート)は、転校先の高校になじめずにいた。そんな彼女の気を引いたのが、地元クラスメートさえ近寄りがたい様子の寡黙な美少年エドワード・カレン(ロバート・パティンソン)。そしてある日、事故に巻き込まれたベラは、エドワードに人間離れしたパワーで救けられる。

75点
これからの洋画配給は本作の成功を参考にすることになるだろう

普通、パート2というのは一作目を見てからみるものだが、『レッドクリフ Part II —未来への最終決戦—』にその必要はない。本作は、あらゆる観客にとって、かゆいところに手が届く親切設計となっている。

たとえ前作をみてなくとも、何ら問題はない。「話題になってるから、よく知んないけどいってみるか〜」という人や、「三国志なんて興味ないけど、彼氏が無理やり見るっていうからぁ」てな女の子でもOK。そこには、決して取りこぼしはしないという配給サイドのしたたかな意思が感じられる。

80万もの曹操軍に対し劉備・孫権連合軍は5万。圧倒的な兵力差と、曹操(チャン・フォンイー)の卑劣な疫病作戦を前に、さすがの劉備(ユウ・ヨン)も怖気づいたか撤退を言い出してしまう。だが、軍師・孔明(金城武)と指揮官・周瑜(トニー・レオン)とその部下たちに迷いはない。かくして三国志最大のバトル、赤壁の戦いが始まった。

75点
衣装と美しい建築に価値を見出せる人に

人間社会に生きるものに、完全な自由などない。誰もが大なり小なり宿命を背負っている。だからこそ、人一倍重いそれを背負う人々を尊敬する気持ちが生まれる。

たとえ無意識であろうと、それは自然な感情である。日本人が皇室を敬うのも、貴族がヨーロッパ社会である種の尊敬を受けているのも、その思いが根底にある。彼らが生まれ持った宿命は、深く、重い。

この映画は、その事をわかりやすくわれわれの前に提示してくれる貴重な一本である。

75点
宗教知識ゼロでも楽しめる

前作『ダ・ヴィンチ・コード』(06年、米)が世界中で一番ウケたのは、何を隠そうこの日本。シリーズの売り物である陰謀論にしても、ローマやヴァチカンの謎めいた秘儀にしても、あるいはその背景となる美しい観光名所の数々も、日本人が大好きなものばかり、ということか。

この続編『天使と悪魔』にもそうした要素はふんだんにつめこまれている。おまけに初心者大歓迎のわかりやすさも兼ね備えているから、かなりの支持をえることになりそうだ。

教皇逝去にともない、新教皇を選ぶ儀式コンクラーヴェが開始された。だが、それを妨害するかのごとく、有力候補の枢機卿4名が誘拐、殺害予告される。外部に漏れる前の解決を願うヴァチカン当局は、立場上対立してはいたが、もっとも博識の宗教象徴学者ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)を呼び寄せ、事件捜査の助言を求めるのだった。

75点
泣けないが、感動的な物語

映画界では伊坂幸太郎が大ブームで、こぞって実写化されている。それにしてもこの4ヶ月だけで3本もの長編が公開されるというのは、尋常ならざるペースである。この『重力ピエロ』の原作も、直木賞候補となった人気作だが、今回は読まずに鑑賞した。読書仲間の音楽家(乙一嫌いのアラフォー 独身)がこの作家を絶賛するものだから、個人的にはどうも食指が動かない(私は乙一を高く評価しているので)。

遺伝子研究をしている大学院生の兄、泉水(いずみ)(加瀬亮)は、弟の春(岡田将生)から奇妙な話を聞く。春は街の落書き消しを仕事にしていたが、その現場と最近続いている連続放火事件のそれが、すべて共通しているというのだ。やがて別の法則性や暗号じみた符合を発見した彼らは、徐々に事件の真相に迫っていく。

よくできた物語であり映画だが、精神的にはかなりキツい。「泣けないが、感動的な話」「もっとも思い入れのある作品」と作者が語るとおり、大いに心揺さぶられる良質なドラマだが、単純なお涙頂戴ではまったくない。相当変わった家族の、しかし普通のそれ以上に固い絆が描かれる人間模様といったところ。

75点
プロレス版ロッキー

世界中で54もの映画賞をかき集めたこの話題作は、しかし当初はわずか4館スタート(米国)の小品であった。なぜそんなことになったかといえば、監督のダーレン・アロノフスキーがわがままを言ったからである。

どんなワガママだったかというと、「絶対に主演はミッキー・ロークでいく」という一点。スタジオ側は、とっくに過去の人となったそんな役者より、客を呼べるであろうニコラス・ケイジを起用したかったが、監督がまるで折れる気配が無いので、結局予算を大幅に削った。結果、本作はわずか数億円という、相当な低予算で作られることになった。これが、小規模公開の理由だろう。

……が、そのワガママがミッキー・ロークの胸を打った。アロノフスキー監督のような才気ある若い監督に、そこまで買ってもらって燃えない男はいない。結果、誰が見ても、彼の役者人生最高の役作り&鬼気迫る演技により、「レスラー」は数少ないプロレス映画の中でも、屈指の傑作に仕上がった。これが、54の映画賞受賞の理由である。

75点
今見るなら、オリジナルより面白いかも

スタイリッシュな映像とアクション演出で知られるトニー・スコット監督の最新作は、確かに彼らしいおしゃれな見た目の映画だが、どこか「古きよきアメリカ映画」的な懐かしい香りも感じさせる。

もっとも本作は、74年の地下鉄サスペンス「サブウェイ・パニック」のリメイクだからその印象も当然かもしれないが、何はともあれ、安心して楽しめるアメリカンエンタテインメントを堪能できたことは、久々に感じる幸福であった。

ニューヨークの地下鉄がハイジャックされた。犯行グループは先頭車両に人質の乗客とともに乗り込んだ後、切り離して停止。異変を察知した運行司令室では、たまたま当直だったベテラン職員ウォルター(デンゼル・ワシントン)が犯人との交信に成功。だが主犯格でライダーと名乗る男(ジョン・トラヴォルタ)の要求はとんでもないものだった。「1時間以内にニューヨーク市に1000万ドルを要求する。時間をすぎれば人質を一人ずつ殺す」

75点
美少女好きにもすすめたい、衝撃の一本

『エスター』は、ある日ロシアから美少女が養子としてやってくるお話である。それはある種の嗜好を持つ人にとっては特に素敵な状況であろうが、正直なところ、そういう人にもぜひ本作を見てほしい。その理由は、いすから転げ落ちたついでに床をも突き破る、常識はずれの衝撃的結末をみればすぐにわかる。

第三子を死産したことにより悪夢にうなされつづける妻ケイト(ベラ・ファーミガ)のため、夫ジョン(ピーター・サースガード)は養子を迎えることにした。施設でジョンは、聡明で絵の上手な9歳の少女エスター(イザベル・ファーマン)を直感的に気に入るが、それこそが悲劇の始まりだった。

美少女エスターは、御伽噺にでてくるような古風な服を好み、首と手首に巻いたリボンは決してはずさない。バスルームには鍵をかけ、美しい声で歌を歌う。とにかく一風変わった、ヘンな子である。

75点
トンデモ物としては最高

『恋空』の倍以上読まれたといわれる大人気ケータイ小説の映画化である本作は、モデル出身の佐々木希のセミヌードポスターも大きな話題となった。そして実際見てみると、意外や意外、期待をはるかに上回る出来であった。

女子高生の理央(佐々木希)は、誰もが振り向くルックスと、 クラスのいじめられっ子(山本ひかる)を救ってしまう優しさで、独特のカリスマを放っていた。そんな彼女は、ある日写真店のミスで、同じ姓の別人のプリントを渡されてしまう。そこに写っていた大学講師(谷原章介)に惹かれた彼女は、思わず直接会う約束を取り付けるが……。

女子中学生の皆さんがどう思うかは知らないが、個人的にケータイ小説映画に望むものは、そこそこリアルな登場人物と、絶対にありえない素っ頓狂なストーリー。その点本作は、間違いなくパーフェクトである。

75点
2度目も楽しめる、よくできたミステリ

先日、ある人と「ポリティカル・サスペンス」の話をしていたら、なぜか会話が食い違う。どうもおかしいなと思い確認してみたら、その人は「トロピカル・サスペンス」だと思っていたらしい。

そんなジャンルねーよと爆笑した我々だが、よくよく考えてみたら『パーフェクト・ゲッタウェイ』はまさに「トロピカルサスペンス」というほかない代物であった。

新婚旅行でハワイにやってきたシドニー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)とクリフ(スティーヴ・ザーン)は、持ち前の冒険心から秘境の先にあるビーチを目指すことに。奥深く進み、まわりに観光客の姿がほとんど見えなくなるころ、彼らはこの島に男女二人組の恐ろしい殺人犯が潜伏していることを知る。彼らが真っ先に思い出したのは、途中で出会った怪しいカップルの事だったが……。

75点
山田洋次監督の円熟味

『おとうと』をみると、これこそ横綱相撲だなという感じを受ける。最近は横綱というと、酔っ払って周りをぶんなぐる血の気の多い奴といった印象が強いが、もちろんこの映画はそうではない。奇手に逃げず、昔ながらの定番の技術のみで、堂々と見せる風格ある映画という意味である。

小さな薬局を営む吟子(吉永小百合)は、女でひとつで育てた娘、小春(蒼井優)の結婚を前に心穏やかな日々をすごしていた。ところがそこに、行方知れずだった問題児の弟、鉄郎(笑福亭鶴瓶)が突然現れる。どこかから小春の結婚の報を聞きつけたらしい彼は、当然のように式へ出席するつもりでやってきたのだった。

市川崑監督の「おとうと」(60年)に捧げられる本作は、山田監督がその登場人物を念頭に置きながら作り上げたドラマである。と同時に、「男はつらいよ」の幻のラストを意識させる内容にもなっている。

75点
南アW杯の年に、南アW杯の映画を見る

あるひとつのものに、さまざまな側面があったり多機能だったりすると、無性にうれしいものだ。

たとえばこの『インビクタス/負けざる者たち』という映画は、スポーツアクションであり、史実伝記であり、感動の人間ドラマでもある。さらにいえば、95年の南アフリカを舞台にしていながら、じつは現在のアメリカを強烈に比ゆした物語でもあったりする。こういう百面相の作品は、映画好きにはたまらない。清純派だけど夜は女王様、みたいな女性がモテるのと同じ原理である。

反アパルトヘイトの闘士マンデラ(モーガン・フリーマン)は、黒人の熱狂的な支持により大統領に就任する。だが、それまでの支配階級である白人との対立は深まるばかりで、社会の安定化を目指すマンデラにとって悩みはつきない。そこで彼は、まもなく開催されるラグビーワールドカップを利用し、国民の共生を実現しようと考える。

75点
≪これぞ少年が胸躍らせる冒険活劇≫

案外保守的なハリウッドのビジネスマンたちは、最近ギリシャ神話に目をつけ次々と映画化している。題材どころかタイトルまでほとんど同じ企画を両方通してしまい、あわてて片方を改題するなどあわてんぼうな一面をさらけだしたりもしているが、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」に続く本作『タイタンの戦い』も、そんなギリシャ神話ブームに乗ったひとつだ。

神話の時代。神々の横暴により人間界にはさまざまな災厄がふりかかっていた。業を煮やしたアルゴスの王は、ついに最高神ゼウス(リーアム・ニーソン)らオリュンポスに戦いを挑む。だが冥界神ハデス(レイフ・ファインズ)の返り討ちにあい、愛する王女(アレクサ・ダヴァロス)を生贄に差し出すはめに。神と人の間に生まれたペルセウス(サム・ワーシントン)はそれを見て、人間として戦うため立ち上がる。

ペルセウスと人間側のわずかな残存勢力による精鋭パーティーが、ハデスとその怪物クラーケンに立ち向かうまでを描くアドベンチャー。81年の同名映画のリメイクである。

75点
高品質な物語と世界観、そしてアニメーション

巨匠ティム・バートンがほれ込んだ至高の11分。その短編アニメーションを、同じ監督(シェーン・アッカー)が長編リメイクしたものが本作『9<ナイン> 〜9番目の奇妙な人形〜』である。

麻布製の人形が小さな部屋で目覚めた。背中には9の文字。部屋の中にも外にも生命の気配はない。文明社会はどうやら滅びてしまったようだ。というか、自分は誰なのか、なぜ動いているのか。やがて外に出た「9」は、背中に「2」と書かれているよく似た人形と出会う。

このアニメーションの魅力は、短編、長編とも抜群に引き込まれるその世界観にある。とくに短編では、セリフがないためほとんど説明がなされず、そのあいまいな背景がまた興味をそそった。誰が何のためにこの人形を作り、動かしたのか。彼らを襲う機械の化けものはいったい何か。人形たちはどこへ行くのか。

75点
≪今のアメリカを象徴するようなストーリー≫

『ザ・ウォーカー』は、オープニングの狩りのシーンからどこか腰のすわりの悪さを感じる不穏なつくりの映画である。だがそれは巧妙に仕掛けられた伏線であることが、そのうち観客にもわかる。さらにストーリーにはあらゆる比喩が含まれており、現代社会に生きるアメリカ人に対する重要なメッセージや皮肉も込められている。

ぱっと見れば、ただの終末アクション映画にすぎないが、そうした単純なルックスの裏に社会派のメッセージをこめてくるあたりが、アメリカ映画界の懐の深さ。他国じゃこうはいかない、さすがの横綱相撲といったところだ。

文明が崩壊し、その残滓を奪い合う弱肉強食の世界。動物たちも多くは滅び、人肉食すら珍しくないこの世界で、男(デンゼル・ワシントン)はある一冊の本を大事に抱え、西への旅を続けている。最後に残ったその1冊の本を大事に運ぶ理由は何なのか、そして男の目的地はどこなのか。常人離れしたサバイバル&戦闘能力で孤独な旅を続ける男だが、やがて本の価値を知る独裁者(ゲイリー・オールドマン)に補足され、壮絶な追跡を受けることに。

75点
≪胃が痛くなるほどの絶望感≫

この前週公開となった「ザ・ウォーカー」と本作は、世界設定もプロットもほとんど同じである。文明が崩壊し、靴やら石鹸が一番の貴重品。大事なものを抱えた主人公は、ひたすら目的地へ孤独な旅を続ける。

文明ならぬ国民生活が崩壊した世界を生きる現代アメリカ人は、本当に悲劇のヒーロー気取りが好きなんだなと感心するが、2作のラストを見比べてみると興味深い。個人的には、やっぱり2010年の映画はこういうオチしかないよなと完全に納得。その意味で両作品ともさほどの意外性はないのだが、作品としていまいちという意味ではまったくない。どちらも優れたSFであり、人間ドラマである。

文明が崩壊したアメリカ大陸を、南に向かって旅する二人がいた。父(ヴィゴ・モーテンセン)は徹底したサバイバルの心得とともに、決して悪の道に行くなと説きつづけ、幼い息子(コディ・スミット=マクフィー)はその教えだけを誇りに、絶望的なこの世界で何とか生きている。だが人間の肉を食料として求める無法者たちは、徒党を組み強力な武器で旅人を襲う。はたして父は、無防備な息子を守りきれるのだろうか。

75点
≪高度な計算で作られたコメディ作品≫

徹底的に練りこまれた脚本のコメディ、しかもお馬鹿お下劣系のそれというのは、日本ではあまりなじみがない。客の入らぬ映画を上映しても仕方がないのでビデオスルーになりかけたってのもわからぬでもないが、そうした作品の中にこそ掘り出し物があるわけだ。とくに『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』は、ゴールデングローブ賞受賞など、本国で評価が定まった手堅い一品であり、「本当によくできた映画をみたな」と感じたい方には、今週真っ先にすすめたい一本である。

結婚式を2日後に控えたダグ(ジャスティン・バーサ)は、悪友のフィル(ブラッドリー・クーパー)とスチュ(エド・ヘルムズ)に、マヌケで空気の読めない義理の弟アラン(ザック・ガリフィナーキス)を加えた4人でラスベガスの高級ホテルのスイートにチェックイン。だが翌朝目覚めると皆の記憶はなく、ダグの姿もない。最悪の二日酔いの頭で彼らは考える。いったい昨夜、何が起きたのか?

独身最後の馬鹿騒ぎ=バチェラーパーティというあちらの習慣は、よく映画の中で見ることができるが、これはあまりにひどい。スイートルームは滅茶苦茶で、バスルームにはなんと本物のトラがいる。自慢の前歯はなぜか抜かれ、見知らぬ赤ん坊まではっている。

75点
≪気持ちのいい連中が活躍する、万人むけ大ヒットゾンビ映画≫

ゾンビ映画といえば、娯楽映画のド定番。予算の大小にかかわらず面白いものが作れるし、コメディから恋愛、アクション、サスペンス、セクシー、そしてもちろんホラーと、どんなジャンルの要素も包み込む懐の深さがある。これはもう、ホラーではなく「ゾンビ」というジャンルで捉えたほうがよほどわかりやすい。

そんなわけで古今東西、数え切れぬほどのゾンビ映画が作られてきたが、そんな激しい競争の中で「史上最大のヒット」の快挙を達成したのが『ゾンビランド』。

これは考えてみたら大変なニュースである。なにしろこの最新ゾンビ映画は、3Dでもなければ超一流のスターが出ているわけでもない。このジャンルの王道といってもいい「オタク監督」とは正反対の、「これまでゾンビ映画なんて見たことも無い」などと語るルーベン・フライシャー監督による万人向けの作品である。しかもベースはコメディーかつロードムービーという、異色作というから驚きだ。

75点
≪真の孤独を知る人におすすめのラブストーリー≫

尽くす女、と呼ばれる女性がいる。遠方に住む異性の友人から窮状を知らされると、いてもたってもいられず送金の準備を始めたり、明らかに身の立つ可能性のないロックミュージシャンを食わせる事に生きがいを見出すタイプである。外部から見れば、どうみても堕ちる一方なのになぜそんな事をするのか。

人を愛するものは、自分をも愛する。強い自己愛とプライドを持つ女性が本来得るべき幸福を得ていない(と感じる)場合、激しい孤独に見舞われるが、そこで自らの存在意義を実感させてくれる「ダメンズ救い」が癒しになるわけだ。

だが、はたして彼女たちは愚か者だろうか。私はそうは思わない。

75点
≪黒幕はCIA?≫

『THE LAST MESSAGE 海猿』をみると、日本人も日本映画界も相変らず脳みその中は平和だなと感心する。

玄界灘に浮かぶ大規模天然ガスプラント「レガリア」で火災事故が発生した。海上保安庁の潜水士、仙崎(伊藤英明)は、後輩の服部(三浦翔平)ら仲間と共にこの困難な現場での救助作業を進めていた。ところが巨大台風が接近、ヘリさえ飛べぬ悪天候となり、彼らは数名の生存者とともにレガリアに閉じ込められてしまう。

レガリアの造形は映画にふさわしい大迫力で、そこでの救助作業はテレビドラマではまずできない大スペクタクルだ。巨大なセットに大量の水を流す撮影は、さぞ(予算もふくめて)苦労の多い現場だったろうと想像がつく。こうしたスケール感のある大作が当たり前のように公開される邦画隆盛時代が到来したことを、まずは喜びたい。

75点
≪愛国者たちの潔い最後を描くせつない時代劇≫

先日、尖閣諸島に色白な船長がやってきて、喧嘩上等とばかりに海保船に特攻を仕掛けてきた。こうした事態に対し、政治家はどう対処すべきなのか。穏健にコトナカレ主義に徹するのか、3倍返しじゃコラァと受けて立つのか。

どちらが正しいのかは、その時点では誰にもわからない。未来から振り返った時、ああすべきだったかもしれない、とわかる程度のものである。たとえその時はおかしな選択だったとしても、それが後々生きてくるなんてケースは腐るほどある。政治とは、常に謙虚な目で分析していきたいものである。

そんなわけで、歴史上の事件を描くとき、片方を一方的な悪として描くようなドラマは安っぽくなりがちだ。謙虚さを捨ててまで片方に肩入れする描き方は、それはそれで熱いものがあるが、常にこのチープ感が付きまとうリスクと隣り合わせとなる。

75点
≪超ハイクォリティ胸きゅん全部入りムービー≫

映画の上映前、予告編が始まるころに館内の照明は落ちる。そんな時間に我慢できず抱き合ってキスしはじめるようなアツアツのアベック(死語)にとって、『エクリプス/トワイライト・サーガ』はいうまでもなく最強の1本である。

なお私の場合、この上映館に一人で来ているおじさんの姿を後部座席に発見したが、たんにおじさんというだけだというのに、彼は館内で猛烈な違和感を発していた。もはや同業者でなければ説明がつかない、そんな異様な空気である。この映画に出かけようというおひとりさま男子は、くれぐれも覚悟が必要であろう。ちなみに人のことをあれこれ言う前にお前はどうなんだというクレームを、本サイトは一切受け付けていない。

高校卒業を前に、愛するエドワードと結ばれるためヴァンパイアになろうと考えているベラ(クリステン・スチュワート)。その意見に賛成しないエドワード(ロバート・パティンソン)。相変わらず前に進めない二人をよそに、シアトルでは謎の連続猟奇殺人事件が起こっていた。カイル家では、これを人間から変化したばかりの獰猛なヴァンパイア「ニューボーン」軍団によるものだと認識。ベラを守るため団結するが、戦力は圧倒的に不足していた……。

75点
≪原作ファンにすすめたい≫

『ノルウェイの森』がブームとなった80年代後半は、赤と緑の二冊組のハードカバーを持って歩いているだけで、なんとなく教養があるふりができた古き良きバブル時代である。普通の男女がブンガク作品をデートの話題にするようになったほどの、歴史に残る社会現象であった。

私のような恥ずかしがり屋の純情ボーイにとっては、この作品は下心を隠して女の子とエロ話をするための材料のようなもの。だからこそ異常なまでの大ベストセラーになったのだと、いまだに私は固く信じている。

昭和40年代。ワタナベ(松山ケンイチ)と親友のキズキ(高良健吾)、キズキの彼女である直子(菊地凛子)は3人でいつも仲良く過ごしていた。だがキズキが謎の自殺を遂げ、残された二人は深く傷つく。ワタナベは反動で大学では女遊びに走り、直子は療養のため入院した。直子への思いを忘れられぬワタナベだったが、やがて大学で爛漫な少女、緑(水原希子)と出会う。

75点
≪日本人のアイデンティティー的な題材だが、どこか米映画的≫

日本人はマンネリ大好きな民族である。ウルトラマンはカラータイマーが鳴るまでプロレスでいうセール(客を盛り上げるため攻撃を受け続けること)状態をやめようとしないし、水戸黄門もしかり、だ。規定通りの結末が待っているから、安心してみていられる。

年末になると、そんなマンネリリストに忠臣蔵が登場してくる。マニフェストにマの字も書いてない消費税アップを言われても、非実在青少年漫画を規制されても、お上の言うことならばと我慢し続ける忍耐深い民族にとっては、法を破ってでも筋を通す四十七士は憧憬の存在。そこにシビれる憧れるゥの世界だ。当然、彼らの物語は最高のうっぷん晴らしとなる。

とはいえ『最後の忠臣蔵』は、いわゆる史実の忠臣蔵とはかなり違う。あの話の後日談を描いた、ユニークなフィクション作品である。

75点
≪おとうさんの仕事はぎんこうごうとうです≫

盟友マット・デイモンがスター街道まっしぐらなのに比べ、最近ちと目立たないベン・アフレック。気の毒にも、評価の高かった監督第一作目も日本ではDVDスルーの憂き目を見た。しかしこの監督二作目「ザ・タウン」の出来の良さを知ってもらえれば、日本のファンにも再注目されるのではと思う。

全米有数の強盗多発地区であるボストンのチャールズタウン。ここで育ったダグ(ベン・アフレック)は、華々しい青春時代を送るがいまでは結局、弟分のジェム(ジェレミー・レナー)らと「家業」を継いでいた。鮮やかなその手口は仲間から厚い信頼を置かれていたが、あるとき逃亡のためやむなくとった人質が、同じ町出身の女(レベッカ・ホール)だとわかり、彼らは正体を知られたのではないかと狼狽する。

もっともユニークで目立つ本作のポイントは、舞台となる街についてだろう。ボストンのチャールズタウン。この町は、あの犯罪無法国家アメリカの中でも、強盗がもっとも多い街として知られる。住民は先祖代々銀行強盗が生業で、休日ともなれば友人家族と誘い合って、川向こうの景気のいい街に出かけて覆面強盗をして帰ってくる。銀行強盗が地場産業とは、ガイトナー財務長官もびっくりである。

75点
≪アカデミー賞受賞も当然≫

「英国王のスピーチ」は、「ソーシャル・ネットワーク」との一騎打ちを制してアカデミー賞の主要部門を独占した話題作だ。日本では早くも終わコン臭がぷんぷん漂うFacebookの時代遅れ感に比べれば、数十年前の史実を描きながらもきわめて現代的な比喩を持つ本作がアカデミー賞を受賞したのは当然であろう。私としても見終わった瞬間、出来の良しあしとは関係なく「ああ、今年はこれだな」と確信を持った作品である。

1930年代のイギリス。国王ジョージ5世の二男アルバート(のちのジョージ6世 演じるのはコリン・ファース)は、吃音症のため満足にスピーチ一つできなかった。彼は、社交的で献身的な妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)のすすめで、オーストラリア出身の平民な上に型破りな自称専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)の治療を受けることに。徐々に効果も表れ、王族相手にまったく臆しないライオネルとアルバートは、やがて友情で結ばれてゆく。そんな折、即位したばかりの兄エドワード8世(ガイ・ピアース)が、全国民を驚かせる決断をする。

英国俳優界の芸達者勢揃いの、見ごたえある歴史ドラマ。この手のジャンルにありがちな退屈さや、歴史知識不足の観客が受けがちな疎外感を感じることはまったくない。非常にわかりやすく、華やかなこの時代の王室メンバーの魅力を感じさせてくれるとともに、主役二人の身分を超えた名タッグぶりに通快感を味わえる、万人向けの一品である。

75点
≪中年夫婦が楽しめる気軽なミステリードラマ≫

空撮最強の町ヴェネチアを舞台にした『ツーリスト』は、タイトルを見ればお気軽な旅情サスペンスだろうと誰もが思う。つまり日本でいえば、湯けむりミステリ群馬編〜混浴女子大生連続殺人事件、のようなもの。そして、じっさいそんな程度の内容だろうと思いつつ見ると、これが案外満足できる作品である。

警察から監視されている謎の美女エリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)。当局は彼女をマークすることで、その恋人で重要指名手配犯アレクサンダーを逮捕しようと一大捜査網を敷いていたのだ。むろん、アレクサンダーもそれは承知。捜査をかく乱するため、彼はエリーズにヴェネチア行きの列車に乗り、その中で自分に似た体形の男を探して同行しろとのメッセージを託した。エリーズはそれを忠実に実行、車内で平凡な数学教師のフランク(ジョニー・デップ)を逆ナン、みごと自分のホテルに誘い込むことに成功する。

さて、警察はアレクサンダーの素顔を知らないので、この展開に色めき立つ。この田舎教師がアレクサンダーか? そんな風に混乱し始める。はたして本物アレクサンダーの狙いはなんなのか。そして巻き込まれたツーリスト、ジョニー・デップ先生の運命やいかに。そんな、ヒッチコック風の古き良きサスペンスドラマだ。

75点
≪食事前に見たい、本格山岳映画≫

原発の汚染水も東電のボーナスもまったく減る気配がない今日この頃、お前らの使う電気だけは減らせとの理不尽な要求に、我々小市民は平伏するほかない状況である。

とくに今の時期は梅雨をひかえて蒸し暑い日もあったりして、思わずエアコンのスイッチに手が伸びる。だが、せめて見て涼しくなれる映画があったなら、多少なりとも節電に貢献できるのではないだろうか。

そんな数時間の避暑効果を生み出してくれそうなのが『岳 -ガク-』。東宝が送る、このGWの目玉的エンタテイメント大作である。

75点
≪暴れん坊将軍がライダーと共同戦線を張る超絶純正コラボレーション≫

仮面ライダー40周年イヤーということで、さすがに今年のライダー映画は気合が入っている。全ライダーがイナゴのように登場する前作に引き続き、早くも強烈な最新作が登場した。『劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』は誰も予想しなかったコラボレーションが魅力の話題作である。

欧州の森の中で、失われたメダルを発掘していた鴻上会長は、危険すぎる錬金術師ガラを甦らせてしまう。その強大な力により各地で大異変が発生、オーズこと映司(渡部秀)やアンク(三浦涼介)がいる東京・新宿副都心周辺も、そっくりそのまま江戸時代と入れ替わってしまう。

相変わらずちょっとヘタレで優しすぎるライダー、オーズであるが、そのキャラクターと今回コラボする相手は実に相性がいい。その相手とは、同じ東映が誇る江戸時代最強キャラ、暴れん坊将軍である。

75点
≪亀有映画史上最高傑作≫

「こち亀」は原作漫画からアニメーション、舞台版やら実写ドラマと、アニメ版開始時に目立った原作原理主義者がすっかり時代遅れになるほどに、あちこちに勢力を広げている。

『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜』は、香取慎吾主演の、これまた賛否両論が渦巻いたテレビドラマ版の映画化。安直すぎるパロディ邦題から、どうせばか騒ぎをするだけのくだらないギャグ映画だろうとの先入観を持ちがちだが、意外や意外。批評家たちが絶賛するほどの、まっとうな感動ドラマになっている。

両津勘吉(香取慎吾)は、小学生時代の初恋の相手、桃子(深田恭子)と再開する。旅芸人一座の座長として浅草にきていた彼女には、かつての桃子を思わせる愛らしい娘ユイ(川島鈴遥)がおり、両津はすぐに打ち解ける。シングルマザーの桃子に再び恋心をつのらせる両津だったが、そんなときユイが何者かに誘拐される事件が起きる。

75点
≪フランスらしい、純愛が原動力となるサスペンス≫

『この愛のために撃て』は、いろいろな意味でフランス的で、その反対に日本人からみると意外というか、感心する作品である。単純明快な痛快アクションではあるが、その意味で大いにすすめたくなる佳作だ。

パリ市内の病院で看護助手を務めるサミュエル(ジル・ルルーシュ)は、臨月の妻(エレナ・アナヤ)を自宅に押し入ってきた何者かに誘拐される。彼らの要求は、自分の病院に入院しているある男(ロシュディ・ゼム)の身柄。警察が厳重に警備するその入院患者を、看護助手の立場をつかってうまく院外に運び出したサミュエルだが、その瞬間彼らは組織と警察の双方から追われる身となってしまう。はたしてサミュエルは、愛する妻を取り戻すことができるのだろうか。

息つく暇もないハイスピードなアクションを、誰もが共感できるキャラクターの魅力で見せるフランス製サスペンス。

75点
≪TVドラマの映画化だが、ちゃんと映画らしさを持っている≫

『セカンドバージン』の記事で明らかにした問題点について、『モテキ』は相当頑張ってその高いハードルを越えてきた。

そもそもテレビドラマの映画版というものは、今まで無料でみられた作品にわざわざ1800円もの入場料を観客から直接とろうというものだ。

だから監督は、テレビ時代とは違って(番組のスポンサーではなく)観客を喜ばせるものを作らなくてはならない。お金を払うお客さんの感覚というのは鋭敏なもので、自分たち以外のスポンサーに気兼ねするような空気を感じれば一瞬でしらける。『セカンドバージン』はその点が下手だったが、『モテキ』は抜群に上手かった。だから私は高得点を与えるのである。なおこの段落の文章について、長澤まさみが見事なエロ演技を見せていたから誉めているわけでは決してない事を最初に申し上げておく。

75点
≪ボクシング映画に外れなし、か≫

日本はロボット先進国である。Hondaには二足歩行ロボットのASIMOがいるし、ソニーはかわいいアイボを開発した。財務省には野田首相がいるし、アメリカには日本国財務省がいる。どのロボットも世界に並ぶものなしの高性能なものばかりだ。

だからディズニーのロボットムービー『リアル・スティール』が、劇中でやたらと日本推しをしているのも、当然といえば当然である。

2020年のアメリカでは人間による格闘技はすたれ、代わりに人型ロボット同士が戦う派手なロボットボクシングが大人気。元ボクサーのチャーリー(ヒュー・ジャックマン)は、ポンコツロボットを操縦して主にアンダーグラウンドの試合で日銭を稼ぐ日々を過ごしていたが、家賃さえろくに支払えぬ始末。そんな彼の前に、11年ほど前に捨てた妻が死んだ知らせとともに、彼女に押し付けたはずの息子マックス(ダコタ・ゴヨ)が現れる。

75点
≪あらゆる用途に使える万能選手≫

古いが新しい映画「アーティスト」は、もしこの世に出るのが数年ずれていたならは、これほど評価されることもなく、とくに米国では忘れさられていた可能性がある。

1920年のハリウッド。トーキー移行期の中、サイレント映画のスターであるジョージ(ジャン・デュジャルダン)は時代に取り残されつつあった。一方、新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)はトーキーの波に乗りスター街道を駆け上っていくが、落ちてゆくジョージが常に気がかりであった。彼女はエキストラ女優時代、ジョージに親切にしてもらった恩を忘れていなかったのだ。

現代でもサイレント映画は作られている、または企画されているが、そのほとんどは陽の目を見ない。なぜなら世のニーズに合致していないからであり、同様に「アーティスト」も当初は資金集めに苦しんだ。しかしプロデューサーが自腹を切って企画を進めた結果、あれよあれよと賞レースの主役へと躍り出て、最後は米アカデミー賞を5部門受賞する栄誉を勝ち取った。

75点
≪マイケル・ムーアも絶賛≫

マイケル・ムーアが絶賛したインディーズ系ホラーということで、なんとなく予想していたが、なるほど『ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春』は、現代の若者が抱える諸問題をうまく象徴したゾンビホラーであった。

世界にゾンビがはびこる時代。オタク青年マイク(マイケル・マッキディ)は、死んではいるがなぜかゾンビになりきれぬ半ゾンビとして目覚めた。人間時代の記憶も生活習慣もそのままな彼は、ポケットの中に恋人に渡し損ねた指輪を見つける。直後に出会った同じ半ゾンビのブレント(ロス・キッダー)、なぜかなついてきたゾンビの大男チーズ(マーカス・テイラー)と3人で、恋人に指輪を渡す旅に出るのだが……。

この映画の設定の特殊なところは、肉体的にはゾンビの主人公が、事実上は人間そのものという点にある。死肉も食わないし人間も襲わない。人を襲いたくてウズウズすることもない。死んではいるが、中身は完全に人間である。

75点
主演女優の力

「ソウル・サーファー」は、思わぬ障害を持つことになったアスリートが逆境から這い上がる、いかにもディズニー好みの感動スポーツドラマだが、それを嫌みなく仕上げることができたのは、ひとえに主演女優の力である。

暖かい家族と暮らすハワイのカウアイ島で、何よりサーフィンを愛する13歳の少女ベサニー(アナソフィア・ロブ)。地方大会で活躍し、プロサーファーへの道が開けたそのとき、彼女はサメに襲われ左腕を失う。誰もがおしまいだと思った最悪の悲劇に、しかし彼女は決してへこたれなかった。

アナソフィア・ロブは、ハリー・ポッターシリーズのエマ・ワトソンら90年代に生まれた若手女優の中でも群を抜く美少女女優。この分野の世界的権威である私の意見なので何より信頼できる話だが、おそらく彼女は日本人がもっとも好むタイプの白人女性の顔立ちをしているのではないか。

75点
新感覚フランス映画

近年フランス映画は、テレビ局の出資比率が増えるとともに娯楽色の強い作品が増えている。昔ながらのアーティスティックなイメージのものは、賞受けする一部監督作品以外は影を潜めているようだが、「プレイ‐獲物」もそうした傾向にそった作品で、万人向けのアクション映画となっている。

出所目前の銀行強盗犯フランク(アルベール・デュポンテル)は、自分の犯したミスにより、愛する妻と言語障害のある娘が凶悪な性犯罪者に狙われてしまう。彼は意を決して脱獄し、妻のもとへと急いだが、優秀な女刑事クレール(アリス・タグリオーニ)が即座に彼を追い始めるのだった。

何かと批判される事の多いフランス映画界の娯楽路線だが、私は批判派に与しない。不況時にゲージツ家が不遇となるのは今に始まったことではない。そんな逆境から生まれてくる貧乏くさいアート系映画も、これまた時代を映す鏡にほかならない。文句を言いたくなる気持ちもわかるが、今は地球上のどこにも余裕などない。

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