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85点
シリーズ一作目に迫る名脚本

愛する女を救うため、何度でも過去に戻る男の物語「バタフライ・エフェクト」(04年)は、当サイトでも最高ランクの評価(98点)としたが、実際に見た人たちの満足度もきわめて高い傑作であった。あの映画の何がよかったかといえば、それは誰に聞いても脚本と回答がくる。その脚本家エリック・ブレスは、偶然にも今週公開の「ファイナル・デッドサーキット 3D」の脚本を担当。残念ながら(?)『バタフライ・エフェクト3/最後の選択』は別の人物がストーリーを書いている。

サム・リード(クリス・カーマック)は、時空を移動できる能力を生かし、警察の事件捜査に協力して生計を立てている。ゴールドバーグ教授(ケヴィン・ヨン)というよき助言者や、理解者である引きこもりの妹(レイチェル・マイナー)の全面協力により、安全・適切に「能力」を使い、彼は暮らしていた。そんなある日、10年前に殺された恋人レベッカの姉(サラ・ハーベル)がたずねてくる。彼女によれば、まもなく処刑される犯人の男が無実である証拠が見つかったため、なんとか真犯人を見つけ、彼を救ってほしいというのだ。

パート3と銘打たれているが、前作までとのつながりはない。シリーズを見てきた人にはおなじみの「過去に飛ぶ能力を持つ男」が主人公という、そこが共通点だ。

85点
前作よりはるかに面白く、そして怖い

自分がみたままを映像にする、いわゆる主観撮影という技法が流行している。中でも『REC/レック』は本国スペインで記録的大ヒット、成功例といえるだろう。早々にハリウッドに買われたリメイク権は、誰も気づかぬままいつのまにかビデオスルー作品となっていたが、オリジナルの続編である『REC/レック2』は、無事日本でも劇場公開が決定した。

前作のラストシーン直後。現場のアパートにSWATが到着した。ヘルメットに記録用CCDカメラを装着した彼らは、感染病の専門家(ジョナサン・メイヨール)のガイドにより、建物に突入した。博士は真っ先に最上階のチェックを指示するが、暗闇では凶暴化した住民たちが牙をむいて待ち受けていた。

前作も相当恐ろしいガチンコ恐怖映画だったが、今作はさらにパワーアップ。なにしろ、映画の前半部分丸ごとぐたぐだしていた前作と違い、今回はのっけからお化けアパートに突入。ラストまでサバイバルを繰り広げるのだ。気を抜いていられるのはせいぜいオープニングから3分ほどだろう。

85点
早くも映画化?

共有のヤリ部屋で女の変死体が見つかり、通報前に男たちが協議する──某ヒルズ事件が早くも映画化された。

なんて事があるはずはないが、きっとこんな状況だったのだろうなあと思わせる本作の設定はあまりにも生々しい。

だが、この映画の魅力はそうした時事性、類似性ではなく、ガチンコ本格ミステリとしてのそれだ。後半に説明する。

85点
「別れ」のあとには何が来るのか?

3DCGアニメーションで知られるピクサー社は、いうまでもなくこの地球上で最強のアニメーションスタジオである。品質面でも、ビジネス面でも、ここ以上のアニメ映画を作れる会社はどこにも存在しない。とくに私が立派だと思うのは、この会社が15年にわたり「オリジナル」にこだわり続けてきたことだ。

既存のストーリーではなく、ゼロから生み出す。それで利益を上げ続ける。これこそ、創造そのものというべきアニメーション、さらに言えば映画作りの理想形ではないだろうか。

風船売りの老人カール(声:エドワード・アズナー)は、長年暮らした家をついに追い出される事に。亡き妻との思い出がこもったこの家、そしてその中のあらゆるものを捨てることが出来ないカールは、熟考の結果すべての風船を家に結びつけ、家ごと空へ旅にでる。

85点
自虐ネタと本格的スペクタクル

ギリシャ神話をネタに思い切り遊んだ『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は、ほとんど確信的な「突っ込みどころ満載」映画といえる。

ぱっとしない高校生パーシー(ローガン・ラーマン)は、学校では勉強ができず、家では母の暴力的な再婚相手に悩まされる受難の日々を送っている。とはいえ彼は、何分間も水にもぐれたり、古代ギリシャ文字がなぜか読めたりといった、あまり役に立たない個性も持っていた。そんなある日、彼の平凡な日常は突如現れた化け物に襲われる形で幕を閉じる。どうやら世界は、パーシーのあずかり知らぬところでとんでもないことになっているらしい。

本作の世界観では、現代ニューヨークにしょっちゅう神々が遊びにきたり、あるいは住んでいる事になっている。頑強な肉体を持つ神様のこと、かわいい女性やイケメンがいればあっという間にメイクラブ。アダム徳永並のスーパーテクでオーマイゴッドと虜にさせ、たくさんの人神ハーフを生み出している。主人公のパーシーも、そうして生まれた一人というわけだ。

85点
≪平凡な人生の尊さを教えてくれる心優しい佳作≫

『英国王のスピーチ』がイギリス王室へのご祝儀のようにアカデミー賞を受賞したわずか2か月後、ロイヤル・ウェディングが世界に微笑みをもたらした。そしてその瞬間を見届けるように、オバマ大統領は翌日オサマ・ビンラディン暗殺計画を実行した。

敵総大将の死に熱狂する米国民の姿をみるにつけ、この国の大衆はわかりやすいストーリーが好きなのだなと実感する。この後は、長きにわたる対テロ戦争に一息付き、当然ながらアフガニスタンからの凱旋帰国と、抱き合う米兵の家族たちの美談ニュースがお茶の間をにぎわすことだろう。世界(米国人にとって)は平和に向け、大きく前進する。ハリウッド伝統の、感動のハッピーエンディング、というやつだ。

むろん金価格やドル、株価や原油市場も大きく動く。あの国のような巨大な経済を動かすには、経済理論のほかに映画的な演出が必要だということが、ここ数か月の動きをみているとよくわかる。

85点
≪とっておきの脚本≫

「ディセント2」(2009)の脚本で知られるJ・ブレイクソンは34歳の若き才能だが、ずっと一つのアイデアを温めていた。彼はそれを他の監督に譲らず、絶対に自分の初監督作品として使うのだとこだわり続けた。それがこの『アリス・クリードの失踪』。ガンコな若手脚本家の夢は叶い、彼は無事、本作で映画監督デビューを果たした。

二人の男が無言でなにかの準備を始めている。人気のない小屋の窓をふさぎ、てきぱきと着替える。やがて彼らはそこに若い女を連れてきていったん服を脱がし、持ち物が何もない事を確認して準備した服を着せ、ベッドに括り付ける。彼らは誘拐犯で、若い女アリス(ジェマ・アータートン)は資産家の娘だった。鮮やかな手口を見せた二人の男、ダニー(マーティン・コムストン)とヴィック(エディ・マーサン)は、続いて身代金の要求に取り掛かる。しかし完璧なその計画は、3人の誰一人として予想もしない方向へと転がってゆく。

登場人物はたったの3人。ほとんどの舞台は監禁部屋。無セリフでひたすら誘拐実行のディテールを描く数分間無セリフのオープニング。のっけから緊張感は100点満点、ただものではない映画が始まったと観客の期待を高めてゆく。

85点
≪前に進む勇気が湧いてくる≫

『127時間』は、アカデミー賞を受賞した「スラムドッグ$ミリオネア」に続くダニー・ボイル監督期待の最新作。それも監督自らが企画書を書き発案者となって作り上げた、渾身の作品である。

アウトドア大好きな若者アーロン(ジェームズ・フランコ)は、今日もロッククライミングを楽しむため大自然の峡谷へと向かう。途中で出会った観光客の女の子に、誰も知らない穴場をガイドしてやるなど余裕を見せていた彼だが、やがて一人になって岩を登る途中、落石事故に巻き込まれる。幸い身体は無事だったものの、右手が巨岩に挟まれ身動きが取れなくなってしまう。

私の知るうちにもトライアスロン好きの女の子がいて、休日のたびどこかの島にいって走ったり泳いだりしているとメールが来る。どうせならビキニ姿の写メでも添付してくりゃいいのに気が利かないが、それはともかくこういうタイプとこの映画の主人公は正反対である。

85点
≪オトナのためのヒーロー映画≫

何のインパクトもないタイトル、中年男のコスプレ姿が移った場面写真。これでこの映画を見ようと思う人は、よほどの変わり者としかいいようのない。普通なら、なんら惹かれるところのない作品である。

しかし私レベルにもなれば、わずかそれだけの情報からでも傑作の香りを感じられる。さらにスタッフキャストの名を見て、これはかなりの確率で「当たり」だなと予想して試写を見に行った。結果、予想通り、いや予想以上の良い映画であった。

美人の妻(リヴ・タイラー)をもらったことが人生唯一にして最大の幸せである、平凡な食堂職員フランク(レイン・ウィルソン)。ところがイケメンのドラッグディーラー(ケヴィン・ベーコン)に妻を奪われ、その怒りでついに覚醒する。神の啓示をうけ、フランクはヒーローになることを決意。自作の赤いヒーロースーツに身を包み、夜の街に悪を求めて出かけるのだった。

85点
≪女子供に媚びぬ、オヤジのための脚本≫

一部に根強いファンがいる安全パイというべき鉄道映画の、それもシリーズ第2作。超有名ヒット作の二番煎じ臭さ漂う定年運転士のドラマという内容、本格的な長編映画は初という監督など、私にとって『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』の事前の期待値はゼロに近かった。

しかし映画とはわからぬものである。本作はこの秋の日本映画としては、トップクラスに入る見事な傑作であった。

運転士として現場一徹を貫いた滝島徹(三浦友和)は一か月後に定年を控えていた。その後は妻・佐和子(余貴美子)とのんびり旅行でもと計画をたてていたが、彼女はそれを拒否。今後は家族のためでなく自分のために看護師として第二の人生を始めると主張する。やがて彼女の気持ちがまったく理解できぬ徹と激しい口論となり、佐和子は出て行ってしまう。

85点
≪震災後の日本とリンクする≫

太平洋戦争を描いた映画は常に論議を巻き起こしてきた。民族・思想的立場により解釈が分かれる問題ゆえ、このテーマはどうしても批判の対象になりやすい。自国を一方的に被害者とする偏った考証の娯楽大作「パール・ハーバー」(01年、米)はその典型例。昔は同じ真珠湾攻撃を描いた作品でも、きわめて中立的な視点による「トラ・トラ・トラ!」(70年、米)という傑作もあったのだが、時が過ぎ戦争経験者が減るにつれ、感情的な戦争映画が増えてきた。

そんな流れの中で「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(134分、日本)を見ると、時代が一巡して再び冷静な映画作りができるようになったのかと希望が持てる。

日独伊三国同盟に強硬に反対するくだりから、ブーゲンビルの空に散った悲劇の最期まで、あくまで山本五十六の視点で開戦の顛末を追った本格戦争映画。役所広司演じる山本司令長官は徹底した現実主義者として描かれ、あくまで国益を守る外交的視点と、攻撃準備と生産力不足による軍事的見地の双方の理由から戦争回避に尽力する。

85点
完成度なら一番だったが

アカデミー賞というのは、作品の出来不出来以上に、なぜ今ここにこの作品があるのか、それが問われるものだと私は思っている。その点「ヒューゴの不思議な発明」は満点で、さらに数ある作品賞候補の中でも群を抜く完成度を誇る。結果的には「アーティスト」(11年、仏)に譲ったものの、マーティン・スコセッシ監督がほんの5年前に「ディパーテッド」(06年、米)で受賞したばかりでなければ、きっとこちらが選ばれていたことだろう。

1930年代のパリ。リヨン駅の屋根裏にある時計台の中には、父親を失った少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)が一人で住んでいる。生活に必要なものは駅のあちこちから拝借する借り暮らし。だが彼がもっとも収集に執念を燃やすのは、父親が残した機械人形の修理に必要なパーツ。人形を動かせば、父親が遺したメッセージを読める、そう彼は信じている。だがあるとき、ついに盗みの現場を玩具店の主人(ベン・キングズレー)にみつかってしまい……。

この作品は、様々な視点から語ることができる。

85点
面白くて斬新でゴージャス

富士そばの一部店舗にカレーかつ丼というメニューがある。おそらくカレーライスとかつ丼の両方を食べたい人が考案したメニューであろう。だがそのコンビネーションは、予想通りいや予想に反して大した相乗効果をもたらさず、どうみてもかつ丼にカレーをかけた以上の料理にはなれなかった。

これは欲張りな消費者の要求が必ずしもいい結果を招くわけではない一例だが、インド映画『ロボット』は、笑いやスリラー、アクション、ミュージカルなどを、相乗効果を無視してひたすら盛り込んだ映画版カレーかつ丼。しかも、奇跡的に破綻なくまとまった他に類を見ないエンターテイメント作品に仕上がっており、富士そばメニュー考案者も激しく嫉妬間違いなしの逸品である。

バシー博士(ラジニカーント)は10年来の夢である人間型ロボット(ラジニカーント・二役)の開発に成功した。軍用にも耐えるほどの驚異的な能力と戦闘力をもつロボットだったが、感情を理解させるようにしてから予期せぬトラブルが発生する。

85点
泣けるスパイダーマン

サム・ライミ監督の降板をきっかけに、大ヒットシリーズである実写版スパイダーマンは一からやり直すことになった。キャストも一新、主人公ピーター・パーカーの高校生時代をじっくり描くという、ドラマ重視のコンセプトとなり、監督もマーク・ウェブ(「(500)日のサマー」(2009))が抜擢された。知名度も実績もかなり劣る面々となったわけだが、それでもふたを開ければドラマ性とエンターテイメント性を高いレベルで両立させたなかなかの傑作であった。

高校生のピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)は、両親が8歳の時に失踪したことが心の傷となっていたが、心優しい叔父夫婦と幸せに暮らしていた。そんなピーターは、あるとき父親の同僚だったコナーズ博士(リス・エヴァンス)の研究室で、特殊なクモにかまれてしまう。

下敷きにした原作自体も前シリーズとは異なるため、ヒロインはMJからグウェン(エマ・ストーン)に変更。恋人との関係は変身前から結構なラブラブ状態、との違いがあるが、基本的にはおなじみのスパイダーマン誕生秘話から描かれる。

85点
偽善に背を向け、介護を通して愛の本質に迫る

英語圏の映画ではないというのに「愛、アムール」を作品賞にノミネートしたあたりに、アカデミー会員の良心を感じるが、それもそのはず。見ればすぐにわかる、映画の出来という点だけならば、誰が見たってこいつがナンバーワン、である。

パリの高級賃貸住宅で暮らす老夫婦ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。深い愛情で結ばれた彼らだったが、妻アンヌがあるとき倒れ、半身まひの後遺障害が残ったことで平和で穏やかな日々は終わりを告げる。相談の結果、ジョルジュは妻を自宅で引き取ることに決めるが、老人同士の介護は想像を超える苦労に満ちたものだった。

オープニングから不穏な空気を張りつめるハネケ節で、こいつはただ事ではなさそうだとの思いを観客はまず抱く。

85点
プロパガンダ度100

アメリカウォッチャーにとって絶対に見逃せない映画というものがあるのだが、その条件の一つが「同時期にそっくりな映画が公開される」そのペア。

「エンド・オブ・ホワイトハウス」はホワイトハウスがテロリストの攻撃を受け陥落するストーリーだが、これは日本でも8月公開になる「ホワイトハウス・ダウン」と全く同じである。

そういう映画は天下のハリウッド2社の重役がそろって「こいつは面白い、今作るべきだ」と判断した企画であるから、きわめてタイムリーであったり、えらい人たちが広く人々に広めたい内容であることが多い。事実この公開と前後してボストンマラソンでテロ事件が起きた。「アメリカ本土が攻撃される」というのは、いまや絵空事とは笑っていられないリアリティをもって、映画化されるに足る題材なのである。

85点
とんでもない情熱の1本

映画というものは多かれ少なかれ、作り手の情熱がこもっているものだが、「蠢動 -しゅんどう-」はおそらく今年公開される内外すべての映画の中で、もっとも熱い情熱を注がれた映画作品である。出来映えもすこぶるよく、まさに渾身の1本と呼ぶにふさわしい。

山陰の因幡藩は飢饉からなんとか一息ついたところであった。ところがそんな折、幕府から派遣された剣術指南役の松宮(目黒祐樹)が怪しげな調査を繰り返しているとの報が城代家老のもとに入った。隠し田の存在などを幕府に知られれば、藩存続の危機。いまや藩は追い詰められ、非情な選択を迫られつつあった。

三上監督は30年来の夢である本作を作るため、3代続いた自らの会社を売り払った。そうして準備した製作費で一流のスタッフをそろえ、キャストを集めて斬り合いの訓練を施し、数十年間練りに練った渾身の脚本を映像化した。

85点
コメディ仕立てながら本格的

近年では一部の大河ドラマなど、「本格」から離れたものは時代劇ファンから批判されやすい。先日紹介した「蠢動 -しゅんどう-」(13年、日)がみた人から高く評価されているのも、近年まれにみる本格時代劇であったからだろう。

だが、考えてみると時代劇とはもともと絵空事であるのだから、本来どんな素っ頓狂な作風であっても文句を言われる筋合いはない。

実際この「清須会議」などは、日本人に大人気の戦国武将ものでありながら合戦シーンはなし、それどころかカリカチュアされた有名武将たちがコントのような掛け合いを繰り広げる場面まであるなど、相当アバンギャルドな時代劇である。

85点
ただの豪華キャスト映画ではない

マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、そしてブラッド・ピットと豪華出演陣に、テンポのいい編集がスタイリッシュな予告編。これってアタシみたいなオサレ女子にぴったりな映画じゃない?今日のフェイスブックのネタはこれできまりね!

──と思った推定40代女子のみなさん申し訳ない。それらはすべて映画宣伝会社の悪ふざけであり、万が一にもそんな気構えでこの映画を見ると、とんでもないトラウマを植え付けられかねないのでお気をつけいただきたい。

"カウンセラー"と呼ばれる若き敏腕弁護士(マイケル・ファスベンダー)は、あまりに美しい恋人のローラ(ペネロペ・クルス)との結婚に先立ち、ぜいたくな暮らしへの欲が出ていた。そこで旧知の実業家ライナー(ハビエル・バルデム)から裏社会で生きるウェストリー(ブラッド・ピット)を紹介してもらい、メキシコマフィアとの麻薬取引に手を染めることに。一回だけ、危ない橋は渡らないと、念には念を入れて挑んだカウンセラーだが、予期せぬトラブルに巻き込まれ窮地に追い込まれてしまう。

85点
世の中の仕組みムービー

大人は子供たちの前では見栄を張り、格好を付けてしまうものだ。だが、いつか社会にでる彼らに世の中の本当の姿を教えておくのもまた大人たちの役目。この映画はそんなときに使える、中学生から見られる社会の仕組みムービーである。

大手広告代理店、現通で働く若手社員、太田喜一郎(妻夫木聡)は、わがまま勝手な上司・大滝(豊川悦司)から彼の身代わりになって国際広告祭の審査員をやってこいと無謀な命令を受ける。太田は優秀な同僚社員(北川景子)をニセ妻として無理やり連れていくことに成功するが、そのミッションにはさらなる無謀な指令が秘められていたのだった。

多くの人にとって、広告業界は未知なる世界だろう。この映画の永井聡監督と脚本家の澤本嘉光はCM業界出身だから、一般の人が知ったらびっくりするようなギョーカイ特有の裏話をいくつも披露する。ちゃらんぽらんな上司による面倒な仕事の部下への丸投げ、スポンサーさまさまのカースト制度等々。それらは爆笑のギャグシーンとして大きな見所となっている。

85点
泣ける度、トラウマ度ともに高し

戦争を扱った映画には大きく2タイプある。戦争を外交政策のひとつとしてマクロに見つめる、すなわち政治映画としてのそれ。もう一つは、そこに巻き込まれる生活者を描くミクロの視点。後者の場合は戦争イコール天災のごとく描かれることが多く、開戦理由だとかその必然性を描くことは重視されない。

1945年の色丹島。父、祖父とくらす10歳と7歳の兄弟、純平(声:横山幸汰)と寛太(声:谷合純矢)は、戦闘とは無縁のおだやかな少年時代を送っていた。ところが終戦直後にソ連兵が突如侵攻。彼らの家や財産は没収され、かつての母屋にはソ連将校の一家が暮らすことに。その娘ターニャ(声・ポリーナ・イリュシェンコ)との交流に一時の幸福感を覚えるも、二人の家族はやがて過酷な運命に巻き込まれる。

「ジョバンニの島」は、典型的な後者のタイプ、すなわち戦争を天変地異のごときものとして、それに翻弄される一家を描いたミクロ視点の戦争映画だ。

85点
邦題はイマイチも中身は傑作

失敗に悩む人に私がいつも言うのは、超一流の打者だって7割近くは失敗なんだから気にせず堂々と失敗してやれということだ。一般人なら一割五分で十分、満足いく仕事が二割もできたら御の字である。まして三割いけばトップクラス。4割できたらもう神技だ。

1987年の夏。アメリカ東部の田舎町でシングルマザーのアデル(ケイト・ウィンスレット)は息子ヘンリー(ガトリン・グリフィス)とつつましく暮らしている。夫に去られてから精神を病み外出もままならぬアデルを、13歳ながら支えようとするヘンリーは月に一度の買い物に今日も母を連れ出してやった。ところが二人はそのショッピングセンターで出会った脱獄囚のフランク(ジョシュ・ブローリン)に無理やり自宅へ押しかけられ、そのまま軟禁されてしまう。

この映画のジェイソン・ライトマン監督はまだ若い(77年生まれ)が、個人的には恐るべき打率の高さで注目している才能である。なにしろデビュー作「サンキュー・スモーキング」(2006)から「JUNO/ジュノ」(2007)、「マイレージ、マイライフ」(2009)、「ヤング≒アダルト」(2011)と目下のところ傑作率10割。そしてこの最新作も期待にそぐわぬ素晴らしい人間ドラマである。

85点
ビジネスオリエンテーリング

娯楽要素が強く賞うけはしないかもしれないが、ことによると今年一番観客から愛される映画は「LIFE!」かもしれない。

雑誌「LIFE」の写真管理部員ウォルター(ベン・スティラー)は、引っ込み思案の小心者だったが、いつも妄想の中ではヒーロー的存在にあこがれていた。ネット時代の運命か、長年勤めたこの雑誌も休刊が迫るが、肝心の最終号に使用する表紙のネガが紛失していることに気付く。急ぎカメラマンのショーン(ショーン・ペン)に連絡を取ろうとするが、世界を飛び回る彼は捕まらない。やむなくウォルターは、行ったこともない秘境へと単身飛び出すことに。

人は旅で変わると言われるが、「LIFE!」は必ずしもそういうことを語っていない。少年時代の忘れられた趣味であるスケボー技術に救われる展開にしても、彼が元々持っていた経験、スキルであり、旅はそれの価値に気づかせただけのわき役である。

85点
チャラ男トム・クルーズのゲームブック人生

日本原作の超大作がこの夏は続くわけだが、圧倒的イチオシの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は、原作要素を大幅に改編した大胆さが功を奏した。

近未来、異生物による侵略を受けた人類は、空爆が効果を上げない敵に対し重武装の歩兵で対峙していた。戦況は芳しくなく、民間人へのプロパガンダを受け持っていたウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)まで最前線におくられることになったが、戦闘訓練を受けていないケイジは戦闘開始数分で戦死する。だがその瞬間、彼は出撃前日の朝へとタイムリープしているのだった。

桜坂洋のライトノベルがハリウッドの予算178億円の超大作になるときいて、これはとんでもないジャパニーズ(?)ドリームだと思ったものだが、実際に読み比べてみると、ストーリーも舞台もビジュアルもほとんど映画オリジナルで、タイムリープのアイデアを拝借して好き放題つくりかえたという印象である。だがもちろん、それでもこの傑作映画の根幹が原作にあることは事実で、それはたいへん誇らしいことだ。

90点
衝撃的で面白い、GW最大のオススメ

『アメリ』で、日本でも大人気になった女優オドレイ・トトゥの主演作。これは実に面白い!

お洒落で、映像もきれいで、実にフランス映画らしい、素敵な恋愛映画だと私は最初見ていて思った。

ところがどっこい、映画の中盤で信じ難い場面が出てくる。レティシア・コロンバニ監督は、わずか28歳で、実際私も本人をみたが、パリを普通に歩いていそうな普通のフランス娘って感じの人で、まさかこんな凄い事をやる人物には見えなかった。

90点
3部作のpart2としては、映画史上まれに見る出来のよさ

いわずと知れたSF3部作のPART2。今年の11月には、早くも完結編のPART3『マトリックス・レボリューションズ』が公開される。この2本と、テレビゲームの「エンター・ザ・マトリックス」のCGドラマ部分は、全て同時に撮影された。きっと俳優達は、今がいったいどの撮影なのか、ほとんど分かっちゃいなかったに違いない。

で、『リローデッド』であるが、前作のような、「革命的な映像・特殊撮影」は、素人目にはあまり感じられない。これは、あくまでCGの専門家で無い私の目でみて、という意味である。専門的に見れば、相当な進歩があると思われるが、普通に見て感じるのは、「前作ほどの衝撃的な映像は無いな。どっちかというと、既存の技術を洗練したって感じだな」ってな感じである。

だがしかし、このことは全くマイナスではない。たとえ前作と比べても『リローデッド』は、全く劣らないほどの出来映えとなっている。

90点
夏休み最高のイベントになるほど面白い娯楽映画

アイマックスシアターなどの、大型スクリーンの劇場で、3D(立体)上映される

47分間のドキュメンタリー映画。巨大スクリーン上映のため、日本語吹き替え版のみの上映となる。

この手の3D映画というのは、日本よりアメリカで一般的で、あちらのシネコン(映画複合施設)には、だいたい1つはこうした大型スクリーンの上映館が併設されている事が多い。

90点
落ちこんでいる人必見の、弱者に対する応援歌

巨大えびをボクサーに育て、一攫千金を狙う中年男の話。TVドラマの中で取りあげられるなど、話題のイギリス映画である。動物愛護の観点から、日本以外ではほとんど上映されないそうだ。

「えびボクサー」などと聞けば、「いったいそれはなんだ?」と、内容をまったく想像できないのが普通の感覚であろう。私も、鑑賞前はなるべく予備知識を入れずに見るタイプなので、これがいったいどんな映画なのか、さっぱりわからない状況で見た。

結果からいえば、『えびボクサー』は、『フル・モンティ』のような、弱者への応援歌であった。イギリス労働者階級の、さえない頑固オヤジが主人公で、妙に素直な気のいい若者と、H大好きな、浮気もののちょっと頭の弱いそのGFを引き連れ、巨大えびを使って、なんとか一旗あげようと奮闘する物語である。人間味溢れる、憎めない連中の姿には、自然に感情移入ができる。

90点
アフリカの魅力が詰まったエンターテイメントの傑作

本国のフランスではアニメーション映画史上、最高のヒットを記録したという、アフリカを舞台にしたアニメ。アフリカをよく知る監督が、アフリカを舞台に、アフリカの赤ちゃんを主人公に描く、教訓的な話である。

ズバリいうと、『キリクと魔女』は超1級のエンターテイメントである。こんなに面白くて、心に残るアニメーション作品は、久しぶりに見た。

アニメと言っても、ディズニーの優雅なフルアニメーションorCGアニメーションや、いわゆるジャパニメーションともまったく違う。わかりやすく言えば、動く絵芝居といった素朴な味わいである。絵柄も独特で、インパクトが強い。だが、それになれる頃には、このアフリカの雰囲気溢れる傑作に、多くの方がどっぷりとはまっている事だろう。

90点
年間ベストクラスの傑作サスペンス

映画一本が、電話ボックスの中だけで展開されるという、斬新なアイデアのシチュエーション・スリラー。映画の中と実際の時間の経過がシンクロするつくりになっている。

それにしてもすごい映画である。電話ボックスひとつで、立派に映画を成立させてしまった。『フォーンブース』は、制約だらけのちっぽけな舞台へ、これでもかというくらい、たくさんのアイデアをつめこんだ、一級のサスペンスだ。その切れ味鋭い着想と出来映えには、ある種の嫉妬を覚えるほど。

脚本家によると、メインアイデア自体は20年も前に浮かんだものだという。そして最近、突然プロットを思いつき、わずか1週間で脚本を書き上げたのだそうだ。なるほど、そう言うものだろうと思う。長年寝かせてきたアイデアと、ストーリーの材料となる数々の断片が、あるときを機会に一気に組みあがるというのは、実感できる話ではある。

90点
2004年お正月シーズン最大のオススメ

全米アニメ映画史上最大のヒットとなり、今年の夏シーズン最大の話題作となったアニメーション映画。人間にさらわれたクラウンフィッシュのニモを、ふがいないお父さんが危険な外海を旅して探しに行くという物語である。

一見、子供でもわかる単純なストーリーなのに、なぜ大人が見てもこんなに面白いのか。その理由は、キャラクター作りの巧みさがまずあげられる。ニモは、人間で言えば軽度の障害者で、おまけに過保護に育てられ、社会性がやや不足気味である。そして真の主人公である父・マーリンは、自分が無力だったため、過去に大切な人を失ったというトラウマがあり、まともな子育てができない男である。

ほかにも主要なキャラクターがいくつか出てくるが、どれも単純な絵柄の中に複雑な過去をにおわせる、深みのある設定となっている。そのため、大人が見ても共感しやすい。感動的なセリフの数々も、こうしたキャラクターがしゃべってこそ客の心に届く。

90点
圧倒的な映像に興奮し、感動的な物語に涙する

アメリカの大恐慌時代に実在し、庶民の希望として愛された競走馬シービスケットと、その騎手ら3人の男たちの半生を描いた感動ドラマ。

世の中には超大作といわれ、派手な映像をウリにする映画が数多くある。だが、純粋に映像のパワーのみで感動させてくれる作品など、いったいいつくあるだろう。『シービスケット』は決して超大作とはいえない映画だが、その映像の迫力、観客の心に訴えかけるパワーは紛れもない一級品だ。

『シービスケット』のレースシーンの迫力は、工夫されたカメラワークとそれにシンクロする見事な音響、思いきり感情を揺さぶる音楽によって我々を圧倒する。ただの競馬の場面が、ここまでのスペクタクルになるとは、見る前は予想だにしなかった。

90点
インパクト強烈、美しい恋愛映画

マスコミ用試写室が連日騒然としたという、韓国製恋愛映画。たしかに、この映画の衝撃は半端ではない。

韓国だからできたのか、この監督だからできたのか、それはわからない。だが、一つだけはっきりといえるのは、この映画は決してハリウッドや日本では作れなかっただろうということだ。

もしあなたがスクリーンから強烈なインパクトを受けるという体験をしたいのなら、今週は『オアシス』を見るべきだ。この映画はほとんど映画界の突然変異のようなもので、今後も似たような作品が現れるとは、私には思えない。

90点
家族で見れる娯楽映画としてパーフェクト

ディズニーランドの人気アトラクションを元に映画化した作品。元のアトラクションがいわゆるホラーハウス、お化け屋敷に属する類の乗り物なので、私も最初、この映画も単なるお気楽ホラーなのかなと思っていた。しかし、実際のところはなかなかの力作、本格的な娯楽映画であった。

わずか88分間の上映時間のほとんどは、まさにアトラクションのように楽しいスペクタクルの連続。画面に迫りくるゴーストに対し、子供は素直に泣き叫び、大人は年甲斐もなくビックリしてしまう自分に苦笑しながら楽しめる。このゴーストたち、幽霊の癖にそれぞれ妙に人間味があって憎めない。

運悪くこの幽霊屋敷、ホーンテッド・マンションに閉じ込められてしまうエディ・マーフィ一家は、それぞれ離れ離れになったりくっついたりしながら、数々の試練でその家族愛を試される。彼お得意のコミカルな演技が作風にぴったりで、コメディとしてもよくできている。

90点
比較的一般人でも見やすい歴史超大作

トロイ戦争を描いた歴史超大作。ブラッド・ピット久々の主演作品で、彼の徹底した役作りも大きな見所だ。

『トロイ』は、ハリウッドで伝統的に作られてきた戦記もの超大作の流れにある作品だが、比較的娯楽要素が強く、万人受けすると思われる仕上がりだ。予告編でも流されている、何万人もの兵や帆船をCGで表現した戦争シーンなどは、『ロード・オブ・ザ・リング』等で類似の場面を体験済みの人にとっては真新しいものではないが、やはり見ごたえがある。

だが『トロイ』の真の見所はそうした大掛かりな映像スペクタクルよりも、伝説の英雄たちの魅力的な競演だろう。中でも映画版の中心となるのが、ブラッド・ピット演じる、無敵のギリシャ戦士アキレスと、トロイ王国の王子にして最強の戦士ヘクトルだ。こちらは190cm近い長身のエリック・バナが演じている。

90点
アクション映画史に残るであろう強烈な個性の一本

タイの元スタントマン俳優トニー・ジャー主演のリアルアクション映画。今後の映画界を変える勢いを感じさせる、ものすごい一本である。

タイの田舎のある村の守り神“オンバク”像の首が何者かに持ち去られた。村の長老は像の奪回のため、村一番のムエタイの使い手である若者(トニー・ジャー)を送り出す。

「一つ、CGをつかいません!」「二つ、ワイヤーを使いません!」「三つ、スタントマンを使いません!」「四つ、早回しを使いません!」 という、時代に逆行した強烈なキャッチコピーによる予告編を初めてみたときは、「どうせチープでしょぼいおバカ系のC級アクション映画だろう」とたかをくくっていた。(公式サイトで見られる特報と予告編は爆笑もので必見だ)

90点
大爆笑、最高のバイクアクション映画

アメリカのバカ若者たちが大型バイクで暴走する様子をけれん味たっぷりに描いたアクションムービー。

主人公(マーティン・ヘンダーソン)は、恋人とやり直すためこの町に戻ってきた。ところが町のバイカーギャング(暴走族みたいなもんだ)の中ボスとトラブり、そいつに大ボス(アイス・キューブ)の弟殺しの濡れ衣を着せられてしまう。

私が『トルク』の試写を見たのは、なんと今年の1月だ。著名なスターが出ているわけでもなく、監督も新人。要するにまったく売れる要素がないということか、公開も延び延びになってはや10月である。しかし、この映画ほど私が公開を望んでいた作品もない。早く大画面といい音響でもう一度見たいと願っていた一本なのである。

90点
低予算なのに年間ベスト級の大傑作

新進気鋭の監督作品が集まるサンダンス映画祭でも大好評だったサスペンスホラー。今週は、今年で一番多数の傑作が揃った激戦区の週であるが、中でも私がイチオシにしたいのがこの「ソウ/SAW」だ。

目がさめるとそこはだだっ広いバスルームのような部屋。自分の足は太いチェーンで部屋の隅につながれている。部屋の対角線上には見知らぬ男が同じようにつながれている。そして恐ろしいことに、二人の中間点、部屋の中央部には、頭を打ち抜かれうつぶせに倒れた死体が横たわっていた。なぜこんな場所にいるのか、さっぱりわからないまま、二人に「6時間以内に相手を殺さないと、2人とも死ぬ」とのメッセージが告げられる。

低予算なのに安っぽさはなく、ものすごい面白さ。今年のホラー、サスペンスの中ではダントツの傑作の登場だ。こんなに恐ろしい映画は数年に1本あればいいほうだろう。怖くて怖くて、見ちゃいられない。

90点
オリジナルの魅力をよく理解した素晴らしいリメーク

少年野球映画の不朽の傑作『がんばれ!ベアーズ』(76年)のリメイク。

かつてはメジャーリーガーだったが、いまやアル中の害虫駆除業者に落ちぶれた主人公(ビリー・ボブ・ソーントン)に、リトルリーグのチームのコーチの依頼がくる。単に金のために引き受けた彼だったが、そのチーム"ベアーズ"の恐るべきダメさに愕然とする。悪ガキやいじめられっ子、英語すら話せない外国人、車椅子の少年など、メンバーはやる気のない連中ばかり。案の定、なんの練習もせず挑んだ初戦において、ベアーズは想像を絶する大敗を喫してしまう。

いやはや、素晴らしいリメイクである。オリジナルの魅力をよく理解し、少しだけ新しさを加えた忠実なつくり。やはり、あれだけ完成度の高い脚本は、そうそう変えられるものではない。また、変えるべきではない。しかし、数十年を経て、何も変えていないこのリメイクをまったく古さを感じずに見ることが出来るとは、モトがいかに完成度の高い物語だったかということでもある。

90点
オトナが泣ける、優れたファンタジー

現在大ヒット中の「チャーリーとチョコレート工場」の監督・主演コンビによる、ストップモーションアニメの長編。

舞台は19世紀のヨーロッパ。主人公の内気な青年(声:ジョニー・デップ)は、ある成りあがり一家の息子。彼は親同士の都合で、没落貴族の娘(声:エミリー・ワトソン)と結婚することになっていたが、それでも彼女の清楚な美しさを何より愛していた。ところが式の前夜、慣れない「誓いの言葉」を森の中で一人練習していた主人公が、彼女の薬指に見立てた枯れ枝に結婚指輪をはめた瞬間、地中から半分腐りかけた花嫁の亡霊(声:ヘレナ・ボナム=カーター)が現れ、「喜んでお受けいたします」と嬉しそうにつぶやくのだった。

「ティム・バートンのコープスブライド」は、「チャーリーとチョコレート工場」の予想以上の大ヒットにより、その観客動員を受け継ぐという、最高の形でスタートを切る形になった。これは、この映画を高く評価している私としても嬉しいことだ。こういう素晴らしい映画は、なるべく多くの人に見てもらいたい。

90点
筋肉はT-レックスの牙よりも強し

『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の監督、ピーター・ジャクソンは、9歳のときにテレビで見た、『キング・コング』(1933)に衝撃を受け、映画監督を志したという。その情熱は、12歳のときにミニチュアを用意して、自らリメイクをはじめたほど。やがて彼は30年の時を経て、本作品を監督、ついに長年の夢を実現させたことになる。

この、ピーター・ジャクソン監督によるリメイク版『キング・コング』をみて、最も私が素晴らしいと感じる点は、まさにその、作品に対する愛情の深さにある。随所にキングコング、そしてオリジナル作品への思いの深さ、敬意が感じられるし、全身全霊をかけたと思わせるほどのパワーも感じられる。さすがは「33年のオリジナルが一番好きな映画」と公言しているだけのことはある。

舞台は1930年代、不況真っ只中のアメリカ。野心家の映画監督(ジャック・ブラック)は、未知なる島の伝説を聞き、そこで映画を撮るべく、主演女優(ナオミ・ワッツ)や脚本家(エイドリアン・ブロディ)を連れて、航海に出る。かくしてその島「スカル・アイランド(髑髏島)」に到着するが、そこには恐るべき巨大生物コングが、島の主として君臨していた。

90点
観るべき価値のある、本物の映画

今になってみると、この「スタンドアップ」が果たして社会派映画として本当に優れていたのかどうか、その点についてだけはどうも自信がない。なにか、うまく騙されたような、そんな気もするのである。しかし映画作品としては、よい脚本家、よい監督、よい俳優がパワーを出し切った、紛れもない傑作である事だけは確かだ。

舞台は80年代終わりのアメリカ。ミネソタの鉱山に、炭鉱夫として就職したヒロインの苦難を描いた物語。

長年、男の職場として存在してきた鉱山に、男女平等と法律の名のもと、女性が入り始めてきた時代。秩序を乱された職場の男たちの態度は、当然冷たい。早速、猛烈ないじめが始まる。いや、いじめやセクハラもどきを通り過ぎて、ほとんど犯罪である。それほど強烈な虐待、差別に、彼女をはじめとするわずか数名の女性労働者はさらされる。

90点
楽しくて心温まる、幸せになれる映画

犬の考えていることが人間の言葉でわかったら、どんなに面白いだろうという妄想は、犬好きなら一度はしたことがあるはずだ。そして、それをそのまま映画にしたのがこの『イヌゴエ』。登場する無愛想なフレンチブルドッグの「心の声」が、主人公に聞こえてくるというのがメインアイデアだ。

この主人公は、臭気判定士(この資格は実在する)として働く青年(山本浩司)。彼は、人間としてはずば抜けた嗅覚を持ち、鋭敏過ぎて普段はマスクをしていないと生活できないほどだった。そんなある日、彼は父親から、拾ったフレンチブルドッグを旅行の間預ってくれと頼まれる。臭いに敏感な彼にとって、犬などとんでもないと断ったが、父は勝手にアパートに犬を置いて出かけてしまった。

ここから彼と犬の共同生活が始まるのだが、この主人公、なんとこの犬の心が「声」として聞こえることに気づく。それも関西弁の無愛想なオッサンの声として。

90点
前作より単純明快、ぜひ『ドッグヴィル』を見たあとに

『マンダレイ』は、あの斬新な佳作『ドッグヴィル』の続編だ。ちなみに『ドッグヴィル』最大の特徴は、床に白線を引いただけで壁も屋根も無い、だだっ広い体育館のような場所をひとつの村に見立て、そのセット内のみで3時間の映画を作りあげた点。役者たちがパントマイムで玄関のドアを開けると、キィとドアがきしむ効果音が挿入される。じつに斬新な演出の映画であった。

この『マンダレイ』も、まったく同じ手法で、ヒロインも同じ(ただし演じる女優は変更された)。彼女が別の場所(マンダレイという名の農園)で、別のドラマを繰り広げるPART2だ。

ときは1933年のアメリカ。ドッグヴィルを出たグレース(ブライス・ダラス・ハワード)は、ギャングのボスである父らと共に、南部のマンダレイという農園にたどりつく。そこはなんと、いまだに白人による黒人奴隷制が続く、驚くべき土地だった。正義感にかられたグレースは、父の部下のギャングたちの実力行使によりすぐに黒人奴隷を解放、父の反対を無視して民主的なルールをマンダレイに広めようとするが……。

90点
ショッキング映画、妊婦その他心臓の弱い人は絶対鑑賞禁止!

凄い映画が現れた。万人向けではないが、たいへん知的で、インパクトの強い傑作の誕生である。

カンヌ国際映画祭でも絶賛された、このフランス映画『隠された記憶』は、ジャンルでいえばスリラーという事になろう。テレビキャスターとしてそこそこ成功し、妻や息子と幸せに暮らしている男の元へ、1本のビデオテープが送られてくるところから話は始まる。

そのテープの内容は、延々と自宅の玄関が映されているだけという、意味不明なものだった。しかし、やがて第2弾、第3弾が届くにつれ、家族の恐怖は増してゆく。そういうストーリーだ。

90点
大人が楽しめる、本格的な犯罪娯楽映画

銀行強盗を描く映画は数あれど、この映画の犯行の手口にははっとさせられる。なんとこの犯人は、人質全員に自分たちと同じ服を着せてしまうのだ。

白昼堂々と、ニューヨークのマンハッタン信託銀行を襲った犯人(クライヴ・オーウェン)とその仲間たちは、人質全員の服を脱がし、自らと同じ没個性な黒スーツを着せる。前例のない犯行に翻弄される警察だが、現場を指揮する刑事(デンゼル・ワシントン)は出口を固め、犯人たちを完璧に閉じ込めることに成功する。しかし、犯人と人質の区別がつかないため、下手に突入できない状況が続いていた。そんな中、銀行の会長は、やり手の弁護士(ジョディ・フォスター)を呼び出し、犯人たちとある交渉をさせるべく、現場に送り込むのだが……。

『インサイド・マン』は、アメリカ映画らしい重厚な大傑作をみたと満足できる、すばらしい一本である。クールなタイトル、見事なトリック、鑑賞後に思い起こすと、いくつも気づくことが出来る伏線の数々、優れたユーモア、そして役者の演技。けなすところが一切ない、見事なクライムムービーだ。

90点
他の追随を許さない、圧倒的な完成度の高さ

『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』に続く、ディズニー/ピクサーによる3D-CG長編アニメーション。冬に公開された前二作と違い、今年は満を持して、最激戦区たる夏シーズンにぶつけてきた。今回の内容は、擬人化された車たちが繰り広げるファンタジードラマだ。

主人公は、天才新人レースカーのマックィーン(声:オーウェン・ウィルソン)。圧倒的な才能を持ち、自己中心的な性格の彼は、ひょんなことから地図にも載っていない田舎町ラジエーター・スプリングスに迷い込んでしまう。

『カーズ』は、実在のルート66の物語からヒントを得て作られている。それは、わずかな時間を短縮するため建設されたバイパス道路のせいで、うち捨てられた小さな町の衰亡の物語だ。その町をモデルに作られたラジエータースプリングスには、あらゆる場所にノスタルジックな思い出がつまっていて、日本人である私たちの琴線にも大いに触れる。

90点
8分間ワンカット、映画史に残る衝撃の映像体験

環境ホルモンや電磁波の影響と思われる若い男性の精子の減少、女性の社会進出による晩婚化、そして格差社会による低所得者層の増加に伴い、少子化が叫ばれて久しい。しかしながらこの『トゥモロー・ワールド』の世界は、少子化を飛び越えて"無子化"になってしまった近未来だ。

舞台となるのは西暦2027年。この時代の人類最年少はなんと18歳。つまり18年間、新生児は誕生していない。原因は不明で、希望を失った世界には内戦やテロが頻発し、国家はことごとく壊滅状態に。ほぼ唯一、強力な軍隊で国境を守る英国だけが、ぎりぎりの秩序を保っている状況だ。

さて、主人公の官僚(クライヴ・オーウェン)は、かつて共に学生運動を戦った元妻(ジュリアン・ムーア)率いる反政府組織に拉致される。聞くと、彼女らが保護する移民集団のひとり、ある黒人女性が妊娠しているという。

90点
見終わって大いに考えさせられる一本

米国を代表するスターであり映画監督のクリント・イーストウッドは、保守的な思想を持つ人物として広く知られている。しかし意外にも彼が作る映画は、思想的に極端に偏ることがなく、公平かつ冷静な視点で物事を見たものが多い。

今回二部作として映画化される史実、"硫黄島の戦い"は、私たち日本人も当事者の一方であるが、彼のような監督が撮るという事には、一種の安堵感すら感じられる。とくに、プロパガンダくさい戦争映画を嫌う観客(例:『パール・ハーバー』のトンデモ度の高さに閉口した皆々様)にとっては、なおさらだ。

さらに、現在公開中の序章にあたる『父親たちの星条旗』を観た方にとっては、その出来栄えが平均以上であるから、期待もより大きいに違いない。

90点
楽しめる層はかなり限定されるが、当てはまれば敵なしの面白さ

この映画は「期待せずに見たら大当たり」という典型例のような作品であった。

とうとう破綻のときを迎えた日本経済を救うため、ある 財務官僚(阿部寛)はタイムマシンでその発明者(薬師丸ひろ子)を1990年に送り込むことを決めた。バブル崩壊の引き金となった大蔵省通達、いわゆる総量規制を止めるためだ──というあらすじ自体は、なかなか面白そうと思ったものの、日立製作所とのタイアップによる「ドラム型洗濯機タイプのタイムマシン」などというバカげた設定をみて、どうせろくでもないバカ映画だろうと、高をくくっていたのだ。

むろん、上記ストーリーから一瞬連想するような社会派SF、すなわち経済問題等を過去からシミュレーションする知的な作品なんぞを期待してはダメだが、タイムスリップをネタにしたコメディとして見れば、すこぶる出来のよい一本であった。

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