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75点
純粋な人間はしばしば孤独を味わう

F・スコット・フィッツジェラルドの原作は何度も映画化されているが、「ムーラン・ルージュ」(2001)のバズ・ラーマン監督による3D作品として世に出されるこの2012年版は、豪華絢爛な主人公ギャツビーの表側、その一面を見せるという意味では決定版と言えるだろう。

1922年、中西部から憧れの都会NYに出てきた作家志望のニック(トビー・マグワイア)は、隣家の大富豪ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)になぜか気に入られ、毎夜開かれる評判のパーティーに招かれる。その圧倒的なゴージャスぶりと、誰一人経歴を知らぬ謎めいたジェイに興味を持つニックだったが、やがて彼が知るその物語は、にわかには信じがたいものであった。

いったいギャツビーとはだれなのか、その登場シーンからしてしゃれている。ほとんどギャグかと思うようなレオナルド・ディカプリオ満面のスマイルから始まるその物語は、最近流行の禁酒法時代を舞台にした純愛物語だ。

75点
非モテ層に推奨したい良質純愛映画

インターネットでは「女叩き」といって、やけに女性に手厳しい論調が目立つ。男にとって結婚は無駄だとか、一人でいるほうが気楽だというわけだが、書き込んでいるのはモテない中年と、それに引っ張られている知ったかぶりのモテない少年たちといった雰囲気である。

むろん、こうした考え方の背景に長引く不況があることは間違いない。男たちは金がないからそういう気持ちになるのだし、女たちも金がないから専業主婦志向が強まる。男たちはそれを寄生虫だと批判するが、どちらにも余裕がない、生きにくい時代ということであろう。

そんな人々に私は「箱入り息子の恋」を贈りたい。この素晴らしいラブストーリーは、終盤に少々監督の遊び心が過ぎる欠点はあるものの、演出の的確さ、ツボを外さない笑いとそれに伴くキャラクターへの共感によって、かなり出来のいい「非モテ」向け恋愛ムービーとなっている。

75点
ベテラン監督かと思うような的確な演出

老人映画であり合唱映画である本作は、監督の演出が的確で過剰なお涙ちょうだいがないため素直に感情移入しやすい。

舞台はロンドン。自他ともに認める頑固ジジイのアーサー(テレンス・スタンプ)は、しかし対照的に社交的な妻のマリオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を愛していた。老人合唱団で活躍する彼女を素直に認めることはできなかったが、妻のガンの再発を機に、いやおうなしに価値観の見直しを迫られることになる。

頑固な老人てのは映画の中ではいじりやすいキャラで、本作でも多くのユーモラスな場面に寄与している。合唱サークルでエロ歌詞の歌を歌っているのをみたり、それを若くて美人な音楽教師が提案することに嘆く様子など、それだけで笑いを誘う。

75点
TPPの終焉を予言するエンターテイメント超大作

どこか日本のロボットアニメや怪獣ものを思わせるアクション作品を、最新のハリウッドクオリティによる3D映像で味わう。「パシフィック・リム」は、私たち日本人にとってじつに奇妙な娯楽作品である。

あるとき太平洋の底から現れた巨大怪獣は、人々と都市に未曽有の被害をもたらした。沿岸諸国は二足歩行の巨大ロボット「イェーガー」を開発して対抗した。当初は優勢だった人類は、しかし登場頻度を縮め、より巨大化する怪獣の前に徐々に押され始めた。無敵のイェーガーに頼れなくなった各国は、巨大な防壁の建設に着手するが……。

主人公はかつてパートナーを戦闘中に失ったイェーガーのパイロット(チャーリー・ハナム)彼はやがて決戦に備え、新たなパートナー候補(菊地凛子)を紹介されるがはたして二人は怪獣を撃退することができるのか。そんな胸躍るロボット・アクションである。

75点
アメリカ版警察24時

LAPD全面協力、出演者が5ヶ月間も本物警察の特訓を受けて挑んだ「エンド・オブ・ウォッチ」は、リアル警察ムービーの決定版である。

サウス・セントラルはロサンゼルスの中でも指折りの犯罪多発地区。ここで働く警察官テイラー(J・ギレンホール)とザヴァラ(M・ペーニャ)は、白人とメキシコ系という人種の違いを超えて、家族といってもいい強い絆で結ばれていた。長年の経験から図抜けた危険察知能力を持つ彼らは、どんな修羅場でも生き延びてきたが、そんな名コンビの行方に不穏な影が立ち込める。

劇映画だが、主人公が今アメリカで増えているユーチューバーなる撮影マニアということで、そうした自画撮り映像を多用したドキュメンタリータッチとなっている。不審者を負う車載カメラ映像による序盤のアクションシーンの本物感といったらなく、こりゃただ者ではないぞと観客に緊張感を強いる。

75点
ほどほどで十分?!

最近はバットマンもスーパーマンもリアル志向だが、そういうブームとて永遠に続くわけではない。たとえば「ザ・タワー 超高層ビル大火災」はそうしたコンセプトに堂々と背を向けたマンガ志向のアクション映画ながら、きわめて新鮮で、むしろ正義を感じさせる出来に仕上がっている。

ソウルの汝矣島に建つ超高層ビル「タワースカイ」。クリスマスイブのイベントに備えるマネージャーのユニ(ソン・イェジン)は、担当の厨房からボヤが出たことに一抹の不安を覚えていた。そんなスタッフの不安をよそに会長(チャ・インピョ)は、複数機のヘリから人工雪を降らせる無謀な計画を強引に遂行しようとしていた。

この映画のコンセプトは明確で、高層ビルの火事でわくわくさせ、恐怖とスリルを楽しませ、最後は人間ドラマで泣かせるというもの。40年か50年前のアメリカ映画でよく見られた、王道のパニック映画といえるだろう。

75点
米映画の流行をつかんでいる

「ダークナイト」(2008)のクリストファー・ノーランが製作し「ウォッチメン」(2009)のザック・スナイダー監督する。アメコミ映画に社会派の香りとダークな世界感を採用したこの2人がスーパーマンを実写にする。おのずと骨太な映画を期待してしまうのは当然だ。

クリプトン星で生まれた最後の赤ん坊は、故郷の滅亡を前に父母の手により地球へと送られた。カンザスの心優しい夫婦に拾われた赤ん坊は、やがてクラーク(ヘンリー・カヴィル)の名で成長する。超人的なパワーをどう使うべきか、自分探しの旅に出たクラークが、激しい運命に翻弄されやがて得た解答とは。

「マン・オブ・スティール」は、最近のハリウッドの流行を押さえた作りになっている。例えば攻撃されるのはアメリカ本土。今年日本公開されたホワイトハウス映画2本をはじめ繰り返されているモチーフで、これは自国がテロ攻撃される観客自身の不安を表している。

75点
傑作だが考え方には異論も

イクメンなどという言葉が生まれ、お父さんが積極的に育児にかかわることが珍しくない今の時代。だが、どんな大人だって最初から親だったわけではない。私は、子供たちには早めに知っておいてほしいことだと思っているが、あなたたちが生まれる前は父も母も「親」ではない、ただのおじさんおばさんだったのである。

そんなただのおじさんが「父」になる瞬間、過程を描いた「そして父になる」は、福山雅治にあて書きされたオリジナル脚本。福山がただのおじさんかどうかは別として、いまどきこうした地味な企画を映画の形にできるだけでも、是枝裕和という人物は大した監督である。

勝ち組人生を歩んできたエリートサラリーマンの野々宮(福山雅治)は、6歳になる息子の慶多(二宮慶多)がお受験で優秀さを見せても、優しすぎて覇気のない性格にはどこか不満げだ。そんなとき、病院から驚くべき知らせが入る。なんと慶多は新生児のときに取り違えられた、別の家の子供だという。本当の息子・琉晴(横升火玄)が暮らす斎木(リリー・フランキー)とその妻(真木よう子)と接触した野々宮は、がさつで卑屈な斎木に嫌悪感を催すも、その息子の競争心ある態度に「血」の絆を感じ、惹かれるのだった。

75点
原作読者は騙される

ミステリの映画化は難しい。原作読者にはオチが割れているし、小説という形態独特のトリック、たとえば叙述トリックがメインの場合は映像化それ自体が困難である。それらの障害を乗り越え、原作読者をもうならせる映画にするにはどうするか。

北川景子と深田恭子の初共演作「ルームメイト」は、その命題にきわめて斬新なやり方で一つの回答をたたきだした、大胆きわまり無い一本である。

交通事故で入院した春海(北川景子)は、非正規社員という不安定な立場で退院後の不安を感じてる。そんな折、親切にされた看護師の麗子(深田恭子)と仲良くなり、彼女とルームシェアをすることになる。不自由な生活を支えてくれる麗子に心から感謝していた春海だが、時折別人のような態度をとる彼女に、やがてぬぐい難い違和感を感じ始める。

75点
本気で作るバカ映画

「なんちゃって家族」は、ハングオーバー!シリーズの大ヒットに気をよくしたワーナー・ブラザースによる、よく似たコンセプトのコメディー映画である。

ブラックジョークや下品なギャグ満載ながら、手抜きのない脚本というぶっとい屋台骨をもつのがその特徴。ただ笑わせるだけではない、映画を見たなあという満腹感を味あわせる、サービス満点の一品である。

麻薬密売人デヴィッド(ジェイソン・サダイキス)は、近所のバカな童貞青年ケニー(ウィル・ポールター)のトラブルに首を突っ込んだ結果、貴重な売り物の麻薬を奪われ窮地に立たされる。組織から許され生き延びるためには、危険地域メキシコからの密輸という、命がけの仕事をするしかない。途方にくれたデヴィッドだが、ストリッパーで隣人のローズ(ジェニファー・アニストン)らをニセの家族とし、キャンピングカーで国境を突破する作戦を思いつく。

75点
若い子のおっぱいに目を奪われていると大ショック

フランソワ・オゾンという監督はいろいろなジャンルを撮りこなす器用さを持つが、とくにミステリをやらせると一流である。「17歳」は彼の最新作で、援助交際にはまりこむ17歳の女の子の心理に迫るドラマだが、これもみようによっては良質なミステリとなっている。

17歳の美しい少女イザベル(マリーヌ・ヴァクト)は、手近な男で初体験を済ませると、何かに取りつかれたように不特定多数の男と体を重ね始める。しかもそれは出会い系サイトでみつけた見知らぬ男たちで、彼女は彼らから対価をとる、すなわち売春をしているのだった。とくに周りに深刻な問題など見当たらないというのに、いったいイザベルはなぜそんなことをするのだろうか……。

オンナも30歳を越えると徐々に単純になってきて扱いやすくなるものだ。もっとも、ひとたび怒らせてしまったら大変恐ろしいのもこの年代の特徴ではあるが、とりあえず犬のようにひれ伏して許しをこえば、たいていのことは受け入れてくれる。そんな慈愛の心こそ、男としてはなかなかどうして可愛いなと感じるものである。

75点
あふれるリバタリアニズム

「ダラス・バイヤーズクラブ」はハイレベルな演出技法と役者の役作りを味わえる映画、すなわち見た目がわかりやすい「いい映画」だが、中身やテーマなど内容も、それに劣らずとんがった傑作である。

1985年のテキサス州ダラス。ロデオカウボーイのロン(マシュー・マコノヒー)は、大好きな酒と女を存分に楽しむ奔放な生き方を楽しんでいた。ところがそれが祟り、医師からHIV感染と余命30日を宣告されショックを受ける。生きのびるため病気について学び始めた彼は、偏見と誤解にみちたこの病気についてと、米国ですら遅れている治療法の現状を知る。病院で知り合った同性愛者のエイズ患者レイヨン(ジャレッド・レトー)の協力を得てロンは、未承認薬を求めメキシコへ向かうのだが……。

まず観客が驚くのは、エイズ患者役マシュー・マコノヒーの激やせ芸である。デニーロアプローチを地でいく彼は、余命30日を宣告された時点ですでに常軌を逸した痩せ方をしているが、そこからさらに病的にやせ細ろえていく。もっともこの役をやるには、これくらいやらないとどうにもならないわけだが、その期待に応えた点は特筆に値する。

75点
どうしようもない連中にも本物の愛がある

この映画のパンフレットや公式サイトには登場人物の相関図が掲載されているが、その理由は見終わったあとにわかる。後から眺めると、なるほどなと色々考えさせられる。

夫が失踪したバイオレット(メリル・ストリープ)の住む家に、一族が次々と集まってくる。長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は母親の世話を妹アイビーに押し付けながら、夫(ユアン・マクレガー)とうまくいかない負い目を抱えたまま。次女アイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はいまだ独身という不遇。能天気な三女カレン(ジュリエット・ルイス)は、しかし誰が見ても怪しげな男を連れてきた。問題だらけの一家の人間関係は、まさに一触即発の様相を呈していた。

初期ガンの化学療法により口内が始終痛み続ける主人公は、とてつもない口の悪さで悪態をつきまくる。アメリカ映画は口の悪いキャラがしょっちゅう出てくるが、それにしてもバイオレットの罵倒っぷりはあまりにスゴくて、観客は圧倒される。もちろん、これは演じる女優の演技力が物凄いわけである。のっけから、メリル・ストリープ劇場というわけだ。

75点
タイトルとコンセプトがよくないが、中身は絶品

長くレギュラー出演をしていてもいまだに生放送は緊張する。とくにラジオのそれは映像がない分、よりシビアである。テレビならごまかせても、ラジオで数秒間会話が途切れたらそれは即、放送事故となる。ラジオ番組を作るもの、出演するもの全員が心に秘めた、絶対に守らねばならぬ最後の防衛線だ。

DJ・マユミ(室井滋)は、20年以上続いた自身の長寿番組の最終回、その大事な生収録中に一本の非通知電話を受ける。会話の様子のおかしさから、相手の若い女が自殺を決意していると見抜いたマユミは、プロデューサーの制止を振り切り放送中、必死に彼女を説得する。だが彼女は考えを変えようとせず、いまにも電話を切ろうとするのだった。

ラジオ番組作りにかかわる一人としては、まったくもって胃が縮み上がるような展開である。なにしろときは最終回、プロデューサーは聴取率より何より、つつがなく番組を終わらせたい。一方、現場のスタッフとDJは、そんなすべてのしがらみよりも、目の前のリスナー一人を救いたい。

75点
現実を予見した社会派エンタテイメント

真っ先に逃げ出した船長をはじめ、運行会社から泣き女こと大統領、メディアや救助担当者まで、そろって信じがたい無責任体質を露呈したセウォル号事故。突発的な大事故が起きると、かかわる人々の本質が見えてくる例といえるわけだが、映画「テロ,ライブ」はその韓国の悪しき国民気質のようなものを、直前に予見していた点で特筆すべき社会派エンターテイメントといえる。

不祥事でテレビ番組からラジオ局に左遷された元国民的アナウンサー、ヨンファ(ハ・ジョンウ)は、今日もやる気のないトーク番組を進行していた。生放送だというのに爆破予告のいたずら電話がかかってきたことも、さらに彼を憂鬱にさせた。ところが直後、局の前の漢江に架かるマポ大橋が爆発炎上。その瞬間からヨンファの脳味噌はフル回転し、この前代未聞のスクープを利用して自らの復帰を図ろうと色めき立つのだった。

生放送中に爆破犯人から電話がかかってくる。ありがちだが魅力的な切り口のリアルシミュレーションドラマ、である。

75点
有機的につながるアクションを堪能

週末だけで13億円という驚異的な興収を記録したこの完結編は、前作「るろうに剣心 京都大火編」がいまだ上映中で、同じシネコンでみられるから相乗効果でグイグイ伸びるだろう。それだけの出来栄えだし、見ごたえも大いにある。

強力な私兵軍団を築いた志々雄真実(藤原竜也)の前に、明治政府は後手後手にまわり劣勢を否めない状況であった。一方、志々雄を唯一止められると期待された緋村剣心(佐藤健)は、危ないところをかつての師匠・比古清十郎(福山雅治)に救われる。彼のもとで療養と再修業に挑む剣心だが、はたして剣術面で圧倒された瀬田宗次郎(神木隆之介)や志々雄に対し、単身反撃できる日はくるのだろうか。

前作の隠れキャラ比古清十郎が前半の見せ場を彩る。演じる福山雅治と剣心役・佐藤健のソードバトルは本作でも最高クラスの迫力を感じさせる見事なもので、あの剣心がパワーで押されまくる姿には、速度で負けた瀬田戦とはまた違ったリアリティが伝わってくる。

80点
スタイル抜群の女の子がワイヤーワークで華麗にアクション

台湾(スー・チー)、中国(ヴィッキー・チャオ)、香港(カレン・モク)の3大スター主演のアクション映画。

『チャーリーズ・エンジェル』との差別化を計るためか、こちらはシリアス路線で行く。でもストーリーは似たようなもん。だから、見所はやはり美女のアクションという事になる。

この映画の美女たちは、モノトーンの衣装しか身に着けないので、色彩的に統一感のある画面作りに成功している。そして、その真っ白なパンツスーツが一番似合うのが、台湾の誇る人気女優スー・チーである。

80点
単なるビックリ映画としてみるのが正しい

日本の『リング』がハリウッドでリメイクされてからというもの、似たような東洋的ホラーが相次いで公開されているが、これもその流行の一つとされている。

ところが、駄作も多いその流行の中、『the EYE(アイ)』はなかなかいける。冒頭から、かなり面白い仕掛けがあるので、開演前には必ず席に付いていたほうがいい。この仕掛けは、まさにこの映画のコンセプトを象徴している。

主演女優は、目がおっきくてかわいらしい顔つき。演技もウマイ。当初は盲目だが、移植手術により徐々に視力を取り戻す過程はとてもリアル。そんな興味深い設定と尽きない謎、そして時々出てくる心臓に悪いシーンのおかげで、観ていて飽きることはない。

80点
最後の十秒にこの映画の魅力の全てがある!

アカデミー賞俳優ジャック・ニコルソン主演の感動ドラマ。

主人公は、定年退職を迎えた初老の男で、半生を振りかえり、自分の人生は平凡だが、そこそこ幸せだったと思いこんでいる。

ところが、突然妻が死亡し、しかも遺品を整理していたら自分の親友と浮気していやがったことが分かって、その思いは吹っ飛ぶ。

80点
二転三転ストーリーを楽しめる良質ミステリ

トム・クルーズが製作総指揮にあたった(出演はしていない)、刑事ドラマ。完成した本作を鑑賞したトム・クルーズは大満足し、『M:I-3』(04年夏公開)の監督に本作の監督ジョー・カーナハンを大抜擢したという話もある。

コレは非常に面白い。トム・クルーズは最近、そのネームバリューを持って、出演もしていない新作の宣伝に良く利用されるスターだが(たとえば、「トム・クルーズがリメイク権を買った」とか)、確かに彼は、脚本を見る目があるといっていいだろう。

この『NARC ナーク』も、彼が脚本に惚れこみ、製作を買って出たという作品だが、確かに非常に見応えのある、素晴らしいストーリーとプロットを持った、重厚な作品である。

80点
さすがは12000本から選ばれた脚本だ

ベン・アフレック&マット・デイモンが、『グッドウィルハンティング』の脚本を、自分たち主演で売りこみ、アメリカンドリームを実現したというのは有名な話である。そんな彼らが、自分たちに続く新人を探すための企画で集めた1万2000本の脚本の中から、グランプリに選んだ脚本を映画化した感動作が本作である。

主人公である8歳の少年の視点で、死と宗教の問題をさわやかに描いている。ユダヤ教とカトリックという、大人だったら非常にデリケートに扱う、大きな宗教の違いを、彼は子供ならではの純粋さ、大胆さで乗り越えてゆく。

主人公の少年は、白血病で余命がわずかという年下の親友のために、10個の課題を一つずつ親友にチャレンジさせる。無事全種目をクリヤーすると、親友は安心して天国に行けるという設定なのだ。

80点
子供も大人も楽しめる、これぞ娯楽映画の見本

冒険小説の古典『宝島』を原作にした、ディズニー・アニメーション。アカデミー賞の長編アニメ部門を『千と千尋の神隠し』と争った。

『トレジャー・プラネット』は、まさにディズニー、まさにハリウッド、という映画である。一切奇をてらわず、ストレートなストーリーで真っ向勝負、そこがいい。

『宝島』が原作とはいえ、舞台は宇宙。現代的に、設定を少々変更してあるのがミソである。そのアイデアのおかげで、空を飛ぶスノボーや重厚な宇宙船など、絵的に派手な見せ場を作ることが可能になった。話によると、このアイデア自体は17年前に考えられたが、最近技術的にようやく表現可能になったので、本作の製作が始まったのだという。

80点
まさに漫☆画太郎の世界だ!

カルト的人気を誇る漫画家、漫☆画太郎の漫画を初めて映画化した作品。87分の長編と、8分間の短編『ラーメンバカ一代』が同時上映となる。

早速だが、おすすめは8分間の短編のほうである。私はこの原作も読んだことがあるが、ここまで見事に映像化出来るとは夢にも思っていなかった。この監督(新人の山口雄大氏)は、この漫画家の魅力をよほど知り尽くしており、どうやれば面白く映画化出来るか、考え尽くしたに違いない。

もう、爆笑しっぱなしで、私は腹が痛くなった。マスコミ試写室というものは、えてして年齢層が高いもので、こうした若者向けのマニアックなギャグ作品は受けないだろうと思っていたが、隣に座っていた某ベテラン評論家なども、吹き出していたくらいだから、相当な破壊力である。

80点
一級の娯楽サスペンスに大満足

製作にニコラス・ケイジが参加した、死刑制度問題を題材にした社会派サスペンス。……とはいっても、難しい話や堅苦しい雰囲気はまったくない。1級の娯楽作品として成立している、万人向けの今週のイチオシ映画である。131分の長い上映時間をまったく感じさせず、すべてのシーンが面白い。気合のはいった力作であり、私は強くオススメする。

哲学科の大学教授が書いたというこの脚本は、まさに2時間の映画のために書き下ろされたもの。だから、複雑で長大な小説をムリヤリ映画化したときのような無理がない。ストーリー展開に無駄が無く、見ていて飽きることがない。結末の衝撃も、凄いものがある。

主演の、冤罪を主張する死刑囚はケビン・スペーシーが演じる。『ユージュアル・サスペクツ』を見た方なら、きっと最初から警戒心を抱きながら彼の行動を見てしまうだろう。だが、それでも問題はない。そうした観客の心理まで、読みきったようなキャスティングである。じつに見事だ。

80点
深いテーマを恐ろしくリアルに描いた、稀有な娯楽映画

ジェット・リー主演の、ワイヤーワーク満載のアクション映画。

……といわれて想像するような、お気楽映画とは実は程遠い。『HERO/英雄』は、その見た目の軽さとは裏腹に、実に奥の深い映画である。人間の本質を鋭く見ぬき、深く理解した上で描いており、私は大変感心した。

物語の展開は、ジェット・リーが大王へ、敵の凄腕暗殺者を倒したときの武勇伝を報告するという形を取っており、その回想シーンがイコールアクションシーンとなっている。そして、話が進むごとに、新事実が明らかになり、それによって回想シーンも微妙に姿を変えていくという、黒沢明の『羅生門』スタイルである。

80点
いつしか道を外れてしまった者たちを勇気づけてくれる感動のドラマ

落ちぶれた左翼運動家たちの、現実と再生を描いたドイツ製ドラマ。

若かりしころ、市民運動や反権力運動に参加して、今は完全に経済社会の負け組となった主人公の二人組。彼らが、仲間たちと15年前にしかけた爆弾が、今ごろになって爆発して大騒ぎになる。慌てて、音信不通だった仲間たちと久しぶりの再会をはたすと、みなは全く違った人生を歩んでいた、……というところから物語は始まる。

『レボリューション6』は、非常にリアルなドラマだ。勝ち組、負け組の落差がハッキリしてきた現在、この作品が描くテーマは非常に現代的だ。主人公たちのように、安定した人生のレールから一度でも外れて、苦労した経験のある人ならば、彼らの辛苦は身にしみて理解、共感出来るはずだ。

80点
上品でまっとうな、おすすめロマンティックコメディ

ジャン・レノとジュリエット・ビノシュという、フランスの誇る国際派スターが始めて競演したロマンティック・コメディ。

フランスの映画というと、たとえロマコメであっても、ひねった結末を期待する向きは多いだろうが、『シェフと素顔と、おいしい時間』は、比較的アメリカ的な、ストレートなストーリーである。つまり、ちょっとかわったシチュエーションで起こる数々の出来事や会話で笑わせ、最後にはちょっとホロリとさせる、王道の展開である。ロマコメ本来のお客さまである、映画なんてせいぜい年に数回程度というライトユーザーを中心に、存分に楽しませてくれる作品といえる。

音楽は、リュック・ベッソン作品でおなじみのエリック・セラ(『レオン』)で、とても感動的なメロディを聞かせてくれる。涙腺の開放に一役買っている。

80点
恐くて笑える、爽快なホラームービーだ

『エルム街の悪夢』シリーズのフレディ、『13日の金曜日』シリーズのジェイソン、この2大殺人鬼が対決するという、企画ものホラー映画。ホラー映画史上、もっとも有名なこの2人が1つの映画で大暴れするという事で、ホラーファンにとっては見逃せない一本だろう。

一応人間のヒロインが主人公で、彼女は、同時にこの2人の殺人鬼に狙われるという、映画史上、もっとも気の毒な状況に追いこまれるわけだが、そこはそれ、知恵と勇気でこの苦境をなんとか乗り越えようとするわけだ。

そしてまあ、いろいろあってラストでは殺人鬼同士が対決するわけだが、このバトルは実に見応えがあり、満足できる。戦いの舞台設定もいいし(1Rは夢世界というフレディの土俵、2Rはジェイソン有利の”ある場所”で戦う)、2人の対決に人間が絡む事で、ある種の臨場感が加わり、クライマックスの楽しさが濃厚になった。2人とも悪役なのに、いつのまにかどちらかの殺人鬼に肩入れしている自分に苦笑する。

80点
非常にクォリティの高いアニメ、クリスマスにぴったりなおとぎ話だ

『パーフェクトブルー』『千年女優』と、良質なアニメーション作品を送り続けている今敏監督の最新作。クリスマスの夜、ホームレス3人組が捨て子を見つけ、その両親を必死に探す、笑いと感動の物語。

アニメーション自体の製作は、マッドハウスというプロダクションが行っている。ここは世界的にも評価の高いところで、『アニマトリックス』や『メトロポリス』といった作品を見れば、その技術力の高さがわかると言うものだろう。『東京ゴッドファーザーズ』も、全米配給を視野に入れて作ったというだけあって、ジブリ作品と肩を並べるほどクォリティの高い、すばらしいアニメーションとなっている。まさに、日本アニメここにあり、と言った感じである。

ストーリーは、「奇跡」をテーマにしたもので、下手をすると「あまりに都合が良すぎる」と冷めてしまいがちなものだ。だがしかし、「雪のクリスマスという舞台設定」「アニメーションという手法」が、それを許させる。最高にドラマチックなおとぎ話に、誰もがきっと温かい涙を流すことであろう。

80点
70分間の退屈は、すべて最後の10分間のための布石だった

ミュージシャンや画家としても名をはせるヴィンセント・ギャロ監督による、一風変わったロード・ムービー。今週は、年間ベストクラスの『フォーン・ブース』という映画が公開されるが、それに匹敵するほどのオススメ作品がもう一本ある。それがこの『ブラウンバニー』だ。

映画が始まると、一人の男が出てくる。どうやらこの主人公はバイクレーサーらしい。男はレース参戦のため、アメリカ大陸を横断するように移動して行くが、カメラはただそれを淡々と追って行くだけである。

セリフもほとんど無く、説明的なシーンもまったく無い。観客には、この主人公にはデイジーなる女がいること、そして、どうやら何かに悩んでいるらしい、ということだけが、彼の表情やわずかなセリフ、そして挿入歌の歌詞(わざわざ字幕を振っていることから、歌詞自体も重要だということがわかるだろう)からわかるのみだ。

80点
これぞハリウッド超大作

前作の3倍以上の製作費(なんでも100億円以上とか)をかけて作った、刑事アクションパート2。黒人凸凹コンビが、すかしたギャグをかましながらトンデモなアクションを繰り広げて事件を解決するという、今となってはよくあるシチュエーションのハリウッド映画である。

「能書きは要らない。楽しませてくれりゃいい」という人たちにとって今週見るべきは、この『バッドボーイズ2バッド』で決まりだ。

この映画のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーというひげのおじさんは、手がけた作品(『アルマゲドン』『パイレーツ・オブ・カリビアン』など)すべての興行成績の合計は、なんと1兆円を超える。つまり彼は、大ヒットする映画=大衆が好む映画、のツボを知り尽くしているというわけだ。

80点
低予算ながら、気合の入った力作エンタテイメント

原子力発電所の抱える問題を痛烈に批判した社会派エンタテイメント。広瀬隆著「東京に原発を」を映画化したような内容だ。社会問題に真っ向から挑み、それを見事な娯楽作品に仕上げたこのような作品は、最近の邦画では見たことがなく、高く評価したい。

原発問題をある程度知っている人が見れば「よくぞ言ってくれた!」と快哉を叫ぶだろう。もちろん、興味ない人にもぜひ見てほしいと思わせる力作だ。とくに大都市にすむ人がこれを見たら、案外ショックを受けるかもしれない。公開する劇場は少ないが、もし見れるのなら、見ておいて損のない一本といえる。

全編、極端なまでに原発反対の主張を貫き、推進派を徹底的におちょくり、こきおろす。このあたりは、マイケル・ムーアを思わせる。『東京原発』を見ると、どうせ社会問題をやるなら中途半端に中立の立場ではなく、これくらいはやってくれないと面白くないなぁと感じる。

80点
オドレイの熱演とせつないラストが感動的

『アメリ』の、人々に幸せを与えるヒロイン役で人気爆発したオドレイ・トトゥ主演のイギリス映画。彼女が、慣れない英語のセリフで汚れ役を熱演、作品自体はアカデミー賞のオリジナル脚本賞にもノミネートされた。

舞台はイギリスのロンドン。トルコからの不法移民であるホテルメイド(A・トトゥ)は、同じ職場で働くアフリカ系黒人男性と、生活費の節約のため同居している。そんなある日、彼が職場のホテルで“あるもの”を見てしまったため、二人の運命が大きく転落して行く。

社会の底辺で過酷な暮らしを続ける不法移民の登場人物たちによるシリアスなサスペンスドラマ。「天使のような」誠実な男と、気高いイスラムの女。魅力的なキャラクターたちが、あまりに残酷な仕打ちを受けながら、それでもはかない夢をみる姿が絶望的に悲しい。

80点
中盤からの心踊る展開に拍手喝采

恐るべき繁殖力と酸性の血液が特徴のエイリアンと、高度な科学力と運動能力、高い知性が特徴のプレデターという二大異星生物が対決するアクションSF大作。どちらも高い人気をもつシリーズ映画だが、その主人公(?)同士が激突するという、両ファンには夢のような企画だ。

2004年、南極大陸。ウェイランド社の人工衛星がその地下に大量の熱源があることを察知した。社長のチャールズ・ビショップ・ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)は、民間のスペシャリストを召集し、調査にあたることを決定。やがて地下施設は人間以外の知的生命体による建造であるとわかるが、そこには謎の生物の卵も大量に生みつけられていた……。

プレデターがある目的のために作った地下ピラミッドに、あわれ人間たちが迷い込んでしまうという話だが、詳しくはいえないものの本当によくできたストーリーだ。エイリアンとプレデターがなぜ戦い、そこにどう人間が絡んでいくのか。簡単そうで難しい脚本作りだったと私は思うが、製作者が長い間に何本もの脚本案を却下してまで待っただけあり、本当にすばらしいアイデアだ。

80点
お馬鹿な見た目と本格的な中身を持つカンフーアクション

『少林サッカー』のチャウ・シンチーが、再び監督&主演で送るカンフームービー。

時代は文革直前の中国、舞台は郊外の貧乏アパート。ある日、住民とチンピラが揉め事を起こすが、あっさり住民側が撃退してしまう。やがてこの事件はギャング団とアパート住民の全面カンフー戦争に発展する。

ストーリーは単純明快、アクションはのっけから全開。見せ場以外なし!といわんばかりの大サービスが好ましい、能天気なカンフーアクション映画だ。景気のいい作品らしく、元旦から公開となっている。

80点
何も考えず、ただ笑って楽しんで帰る映画

アニメ映画史上最大のヒット作『シュレック2』を製作したドリームワークスによる長編CGアニメーション。

主人公のオスカー(声:ウィル・スミス)は、いち労働者としてさえない暮らしをしながらも、いつか成功を手にしたいと願う小魚。一方、街を牛耳るホオジロサメ一家の末っ子レニー(声:ジャック・ブラック)は、ベジタリアンのためサメ社会になじめず悩んでいた。やがて両者は偶然出会い、オスカーがサメ退治を演じる事で二人の望みをかなえようという話になるのだが……。

『シャーク・テイル』は、海中のある町(?)を舞台に魚たちが繰り広げるコメディドラマで、アメリカでは3週連続1位というヒットを飛ばした。まず、見所はなんといっても豪華な声優陣。ハリウッドスターが多数登場し、本人の顔に似せた魚キャラクターの声をそれぞれ演じている。

80点
あの傑作のパート2で、ここまでやれれば上出来

2004年のサンダンス映画祭で絶賛を浴びたシチュエーションスリラー『ソウ』の正統なる続編。監督は新人のダーレン・リン・バウズマンに交代し、前作の監督らは製作にまわった。

前作で明らかになった連続殺人事件の犯人、通称"ジグソウ"がまた例の殺人ゲームをはじめた。しかし、現場に残された手がかりからアジトが判明、主人公の刑事(ドニー・ウォールバーグ)はSWATとともに突入、見事ジグソウを拘束する。ところがジグソウは、まるで警察の突入を予期していたかのように不敵な態度を崩さない。その直後、隣の部屋に数々のモニターが発見される。そこには不気味な部屋に監禁された8人の男女が写っていた。そして、まったく理不尽なことに、その中には主人公刑事の息子が含まれていたのだった。

『ソウ2』の物語は、ここからジェットコースターのように休みなく展開する。ひとつは、モニターに映った部屋の場所をなんとか突き止めようとする警察の物語。8人のいる部屋には神経ガスが充満し、一定の時間がたてば全員が死亡するとジグソウは告げる。悪趣味なことに、モニターの横にはカウントダウンするデジタル時計まで置いてある。

80点
このクォリティで、いわゆる"萌え"場面が続出?!

映画版『ハリーポッター』は、監督は変わっても、大まかな雰囲気は変わらずに続いている大人気シリーズだ。基本的には子供たち向けの、大ベストセラーファンタジー小説が原作だが、大人のファンも多数存在する。日本にも、わざわざ原著を訳しながら読む熱烈なファンがいる。

この『炎のゴブレット』は映画版の第4弾。メインキャストは前作までと共通。監督は、シリーズ初の英国人マイク・ニューウェル(「モナリザ・スマイル」など)だ。ハリーポッターはもともと英国の原作本であるから、彼にかかる期待は大きい。シリーズ最大最長の原作を、いったいどうやって2時間37分間にまとめるのか?

主人公のハリー(ダニエル・ラドクリフ)、その親友のロン(ルパート・グリント)、女友達ハーマイオニー(エマ・ワトソン)は、魔法学校の4年生に進級した。今年は、三大魔法学校・対抗試合がなんと100年ぶりに行われるという。これは、3校の代表選手1名ずつが魔法競技を競うものだが、選手選考を行うアイテム"炎のゴブレット"は、通常の発表を行った後、4人目の代表としてなんとハリー・ポッターの名前を告げるのだった。

80点
特徴的な演出技法と、素晴らしい銃撃戦を持つ映画

ラース・フォン・トリアーという映画作家がいる。「イマドキの映画界の軽薄な流行はけしからん」とばかりに、「オールロケ、音楽や人口照明は禁止、カメラは手持ち撮影で」などの独自ルール(ドグマ95と呼ばれる)を提唱したり、『ドッグヴィル』という映画では、セットの代わりに床に白線を書くなどの演劇的手法を大胆に取り込むなど、なかなか風変わりな人である。

そして、その彼が脚本を書き、ドグマ95仲間のトマス・ヴィンターベアが監督した、これまたかなり風変わりなドラマが『DEAR WENDY ディア・ウェンディ』だ。これは、既存の映画にちょっと飽きている、といった方にぜひすすめたい、個性的な作品。

アメリカのどこか、寂れた炭坑街にすむ少年(ジェイミー・ベル)は、ひ弱なために炭坑の仕事が続けられぬ自分にコンプレックスを持っていた。ところがある日、偶然本物の銃を手にした彼は、その圧倒的パワーをあえて他者に誇示せず、コントロールすることで、自分に自信を持つ事に成功した。やがて彼は、かつての自分と似た負け組の者たちを集め、ひそかに銃を愛好し、研究するサークルを結成する。

80点
抜群に怖い、"本物"のホラー映画

近年、ハリウッドで最も目覚しい活躍を見せた日本人監督といえば清水崇だ。彼は自身の代表作『呪怨』のリメイク『THE JUON』で、日本人監督として史上初の、全米興行ランキング第1位(しかも2週連続)という快挙を成し遂げたのだ。

そんな、勢いに乗る清水監督の最新作がこの『輪廻』。2004年の『感染』『予言』に続いて、日本の誇るホラー映画監督6人の競作レーベル「J-ホラーシアター」から発表された、本格派の恐怖映画だ。

35年前に、群馬県のホテルで起こった大量殺人事件の映画化を狙う映画監督(椎名桔平)は、そのヒロインに新人女優(優香)を抜擢する。やがてその事件の詳細を知るうち、彼女は奇妙な幻覚を見るようになる。そんな彼女の前に、前世が35年前の事件の被害者だと語る女性(松本まりか)が現れる。

80点
短所がないということが長所

ネットバンクが普及し、一般預金者にとっても、オンライン上の数字を動かすことに抵抗がなくなってきた昨今、銀行のセキュリティも大きく変化している。昔は、どれだけ金庫室の壁を分厚くするか、頑丈なドアをつけるかといったハード面が重要で、映画の中の銀行やぶりも、どうやって金庫室に進入するかが大きな見せ場であった。

しかし、今は違う。コンピュータ上の数字イコール現金である現在、強盗も金庫室を破る必要はない。それよりは、ネットワークへの侵入、ハッキングをした方がよほど早くて確実だ。というわけで、銀行のセキュリティも、クラッカー(悪意ある不正侵入者)を防ぐ、ファイヤーウォール(不正進入防止ソフト)が重要になってくる。

この映画の主人公は、銀行のそうしたセキュリティソフトの開発担当者。演じるハリソン・フォードは、アメリカ映画におけるヒーローの代名詞的存在だが、インディ・ジョーンズやハン・ソロ(『スターウォーズ』)など、かつて演じたマッチョな肉体派ではなく、今回は頭脳で勝負するタイプだ。銀行員だから、肉体的には平凡なおじさんという点がポイントだ。

80点
荒っぽい点はあるが、見ごたえ十分の海洋パニック大作

今週はゴールデンウィーク真っ最中というわけで、公開作品数が少ない。このサイトで紹介できるのも、これ1本ということになり少々寂しいが、訪問してくれた全員が読んでくれると思えば嬉しくもある。

さて、この作品は、いわずと知れた人気漫画の実写版。同じキャスト、スタッフによって04年に劇場版第1作が公開され、その後テレビで連続ドラマにもなった。『LIMIT OF LOVE 海猿』は、そのシリーズの完結編だ。

ただし、東宝のマーケティングチームは、あえて本作のタイトルに、パート2とか3といった数字をつけなかった。その理由は、本作が、単独で見ても問題なく楽しめる一話完結的なつくりであることがひとつ。そして、続編であることを明記して間口を狭めても十分な収益を見込めるほどのパワーが、まだこのシリーズには無いと、彼らが考えたからであろう。そして、その判断はおそらく正しい。

80点
シリーズを知らなくても、笑いまくりな一本

ピンクパンサーといえば、中高年の方には名喜劇役者ピーター・セラーズによる実写映画版が、もうちょい若目の方にはアニメーションシリーズが、そしてもっともっと若い方には、個性的なキャラクター商品の絵柄として、おなじみのシリーズといえる。

このリメイク版『ピンクパンサー』は、そのうち実写映画版を再現したもので、クルーゾー警部の活躍(?)を描く、コメディ映画である。(……とはいっても、この場合のリメイクというのは、旧シリーズのどれかを忠実に再現した、という意味にあらず。枠組みを借りた新シリーズ、というイメージが強い)

世界的に有名な歌手(ビヨンセ)の恋人でもあるサッカー監督が、競技場で何者かに暗殺される。同時に、その指にはめられていたダイヤモンドも失われていた。世界最大級のダイヤモンド、"ピンクパンサー"の行方をめぐる警部の推理とドタバタという、シリーズの伝統を踏まえたストーリーだ。

80点
男同士の兄弟の内面を鋭くえぐる、スリリングなドラマ

映画業界にとって、一番の稼ぎ時である夏休みシーズン。内外の大作が居並ぶ中で、地味なドラマ映画ながら、屈指の傑作なのが『ゆれる』だ。まるで、ぽつんと紛れ込んだようなこの作品は、とくに派手な大作映画を敬遠するタイプの方には、真っ先に見てほしい一本だ。

女にモテ、カメラマンとしても成功し、東京で派手に暮らす弟(オダギリジョー)。家業のちっぽけなガソリンスタンドを継ぎ、女に縁がなく、老いた父と二人で暮らすさえない兄(香川照之)。この二人が久しぶりの法事に、故郷で再会するところから物語は始まる。

弟は、兄が面倒な実家のもろもろを背負い込んでくれたから、東京で好きなことをやっていられるのだと薄々気づいていながら、何でも許してくれる優しく面倒見のよい兄に、無意識に甘えている状態だ。この日もあろう事か、兄が思いを寄せている二人の幼馴染の女(真木よう子)を送った後、そのまま部屋で抱いてしまう。そしてその翌日、事件はおきる。3人でドライブに出かけた渓谷のつり橋で、幼馴染の女だけが墜落死してしまうのだ。

80点
黒木和雄監督の遺作は、素晴らしい"日本映画"だった

『美しい夏キリシマ』『父と暮せば』といった映画で平和と反戦を訴えてきた、黒木和雄監督の遺作。劇作家の松田正隆が、自らの母親の体験談を元にした戯曲が原作となっている。

昭和20年の鹿児島。両親を亡くした紙屋悦子(原田知世)は、兄夫婦とつつましく暮らしていた。彼女は、兄の後輩である海軍航空隊の明石少尉(松岡俊介)に想いを寄せていたが、よりにもよってその親友、永与少尉(永瀬正敏)との縁談が持ち上がる。

快活な性格の明石は、悦子を大切に思っている。彼とは反対に、女性の前では何も話せなくなるウブでオクテな永与も、心やさしい悦子へ好意を寄せている。悦子は明石に想いを寄せながらも、そんな永与を人間的に好いている。

80点
田舎町の靴工場が一念発起して、ドラッグクィーン専用ブーツを制作

イギリスで大人気を博した『キンキーブーツ』は、いかにも彼ら英国労働者階級が好みそうな「はぐれものバンザイ、庶民バンザイ」的な、見ると元気が出る心温まるドラマだ。

主人公(ジョエル・エドガートン)は、父の靴工場を相続したばかりの跡取り息子。長年勤めた技術力ある職人たちのおかげで、靴製品の品質は高いものだったが、儲けより従業員や消費者の満足を重視した先代の経営は、近年の安い輸入品に太刀打ちできず、倒産寸前だった。

そんなある日、主人公は偶然知り合ったド派手なドラッグクイーン(女装した男性)のローラ(キウェテル・イジョフォー)が、窮屈そうに女物のブーツを履いているのを見てひらめく。誰も作らない、男性用のキンキーブーツ(SM女王様用のハデハデブーツ)を作れば売れるんじゃないか? かくして彼とローラと工場従業員たちの奮闘が始まった。

80点
リアル志向のスパイ映画に立ち返り大成功

英国の紳士的なスパイの活躍を描く『007シリーズ』は、これまで色々なやり方でマンネリ打破に挑んできた。それは007が、イアン・フレミングによる原作からの根強いファンを多く抱えるとはいえ、すでに年間有数のビッグバジェットシリーズとなった以上、その期待にこたえつつも、常に若い新しいファンを取り込んでいかねばならない宿命にあるからだ。オジサン相手の古臭い古典と思われたら、そこでシリーズの命運は尽きるのだ。

そのため、主人公のジェームズ・ボンド役を数作ごとに変更、リフレッシュしたり、話の展開を派手にするなど様々な試みが行われた。しかし、ボンドが宇宙にまで進出したり、VFX満載で人間離れした動きを見せるアクションシーンは、スパイムービーとしての本質を大きく逸脱しており、主演俳優の変更とてその手法自体がマンネリと化すなど、徐々に作品のパワーは失われつつあった。

しかしそんなこのシリーズの迷走も、この『007/カジノ・ロワイヤル』で終わりだ。満を持して原作第一作目のタイトルをつけた本作のスタッフたちは、近年まれに見る入魂の作として、この最新作を仕上げてきた。

80点
骨董品のごときバイクで無謀な記録に挑戦したオヤジの物語

最近、実話の映画化が多いような気がするがコレもそのひとつ。バイクいじり暦ウン十年、三度のメシよりバイクが好き。近所から変人扱いされているそんな爺ちゃんが、あろう事か世界最高峰のスピードレースに挑戦するという話。映画はロードムービー風味の、心温まるさわやかな感動ドラマになっている。

舞台は60年代、ニュージーランドの片田舎インバカーギル。ガラクタだらけの家に独り暮らす初老の男バート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)は、今日も隣に住む少年と一緒にバイクの改造に精を出す。少年から借りた肉切り包丁でタイヤを削ったり、年代モノのエンジンを溶かしてピストンを作ったりと、呆れるようなやり方で愛車のインディアンの手入れをしていく。実はバートには、いつかこのマシンで地上最高速の記録を破るという、25年来の夢があるのだった。

そんなバートは、とにかく憎めないオッサンで、数々の非常識な行動も、屈託のない笑顔と無邪気な人柄で周りから許されてしまうタイプ。60を超えているのに少年のような彼は、社会の常識より自分の中のマイペースなルールのもとで生きている。

80点
主演二人のどちらかのファン向け

日本で大ヒットした『海猿』がハリウッドでリメイクされるという話をどこかで聞いて、それが頭の片隅にあったので、『守護神』のあらすじを聞いたときは「ああ、これがそうか」とずっと思っていた。……が、どうやらそれは違うらしい。沿岸警備隊の鬼教官に鍛えられる若き訓練生の訓練風景を主に描き、救命士としてデビューしたとたん、恐るべき難題に対峙するクライマックス。マジンガーZとテコンV程度のかすかな類似性は見受けられるものの、一応別物ということのようだ。

もう少し詳しく筋書きを書くと、ケヴィン・コスナー演じるこの教官は、これまで数百名を救ったと噂される伝説のレスキュー隊員。ところがある出来事をきっかけに、スクールの教官職に就くことになる。そこで出会うのが『バラフライ・エフェクト』のアシュトン・カッチャー演じる天才スイマー。その圧倒的な自信と若さを前に、教官と激しく対立するが……。というもの。いわゆるダブル主演で、お客さんの年齢にあわせてお好みのほうに感情移入して楽しんでください、という仕組みだ。

実績を残している大先輩に対し、やたらと自信家の若者というのはたいてい憎たらしく見えるものだが、アシュトンが演じるとそんなキャラでも好感を持ててしまう。この俳優の場合、いくらでもモテるだろうに私生活でバツ2熟女と添い遂げたり、弟の学費のために芸能界に入ったりと、ハンサムな上に性格までいいヤツっぽい先入観があるのがいけない。

80点
父子で楽しめるカッコイイ軍隊&戦闘スペクタクル映像展

『トランスフォーマー』のような、超ド派手ノーテンキ超大作を見に行くということは、年に何度か遊園地に行って頭をリフレッシュするのと目的は同じだ。一見、大人がいくような場所(映画)には見えないかもしれないが、こういうものは現代人にとって定期的に必要なビタミン剤のようなもの。ただ、それを作るのは予想以上に難しいもので、良く効くビタミン剤は意外と少ない。

火星方面からやってきた謎の物体が、世界各地で人類を脅かそうとしていた。中東のカタールでは軍事ヘリが突然二足歩行ロボットに変形、米軍基地を壊滅に追いやった。一方、気弱な男子高校生サム(シャイア・ラブーフ)が、学園のアイドル的存在のミカエラ(ミーガン・フォックス)の気を引きたくて父親に買ってもらったポンコツ車も、まるでサムを守る意思を持っているかのような奇妙な挙動を見せ始めていた。

日本生まれのアメリカ育ち。タカラの人形シリーズを元に数々の映像、アニメ作品として発展したトランスフォーマーがついに実写映画になった。マイケル・ベイ監督&スティーブン・スピルバーグ製作総指揮という、ハリウッドのエンターテナーの代名詞のような二人による、本年度最大級の超大作である。本国では早くもオープニング成績がなんと全米映画史上最高記録という、とんでもない事になっている。父子二代で楽しめる優良コンテンツへ、さらに付加価値を加えた理想的なケースだ。優れた原作をことごとく使い捨てにするどこかの国の映画業界は、大いに見習ってほしいものだ。

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