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70点
スリリングな10代の時間を見事に表現した青春映画

『さよなら、僕らの夏』は、ある少年たちの一夏の出来事を描いた青春映画。わずか87分間のドラマだが、もともとこの脚本は映画化前から高く評価されていたもので、出来上がった本作もサンダンス映画祭ほか、各国で絶賛を浴びた。

出来をみると、監督の心理描写センスが優れており、美しい風景とそこでおきる恐ろしい出来事を、緊迫感あふれる演出で見事に表現している。数千万円という、比較的低予算でつくられた、作家性あふれる映画だが、見ごたえは下手な大作映画よりはるかにある。

主人公の中学生サム(ロリー・カルキン……名子役だったマコーレー・カルキンの弟だ)は、同級生ジョージからイジメをうけていた。それを知ったサムの兄は、友人らとジョージをこらしめる計画を立てる。それは、サムの誕生日を装ってジョージを川下りに誘い出し、泳げない彼を川に放り出して笑うというたわいもないものだった。ところが当日、ボートに乗って出かけた彼らの前には、予想外の恐ろしい出来事が待ち受けていた。

70点
女子割礼を真っ向から批判した社会派映画

アフリカやアラブ諸国、アジアの一部では、現在でも女子割礼が行われている。女子割礼とは、女性器切除(FGM)のこと。具体的には性感帯となる性器の一部を切除したり、ひどい場合には膣口を縫合したりする。不衛生な環境で行われる事も多く、手術が原因で亡くなる事も多い。運良く生き延びたとしても、その後一生、排泄、生理、そして性交時などに苦痛を伴い、分娩時の死亡率も(母子ともに)大きく高まる。

割礼などというと宗教儀式と思われがちだが(現地の人々もそう誤解している)、イスラム教にもキリスト教にもそんな決まりはなく、土着の慣習であることが明らかになっている。

『母たちの村』は、アフリカ映画を代表する83歳の映画作家、ウスマン・センベーヌが、この悪しき風習を痛烈に批判した劇映画だ。

70点
現代を舞台にしているのにどこか懐かしい、優れた映画作品

この映画に声の出演をしている谷村美月は、悪名高いあの「海賊版撲滅キャンペーン」のCMで、黒い涙を流すかわいい子だが、本作の試写会では、偶然私の横の方の席に座っていた。ご本人を横にして、あのドクロのCMを見るのは妙な気分であったが、本編では彼女、立派な演技を見せていた。

さて、そんな『時をかける少女』、筒井康隆の同名原作は、原田知世や内田有紀、南野陽子などアイドル主演で何度もテレビドラマ、映画化されているから皆さんもご存知とは思うが、今回は初の長編アニメーション、しかもオリジナルストーリーで映画化である。アニメーションの製作は、『千年女優』や『東京ゴッドファーザーズ』など、高品質で手作り感あふれる作品で世界的な高評価を得ているマッドハウスによる。

ヒロインは、これまでの『時をかける少女』の主人公だった芳山和子(声:原沙知絵)の姪で、高校生の紺野真琴(声:仲里依紗)。ある日彼女は、偶然にも時間跳躍の能力を身に付ける。20年ほど前にその力を持っていたと話す叔母に相談しても、原因は何もわからない。能天気な真琴は、テストの結果操作や好きなお菓子を何度も食べるためなど、ろくでもない事に能力を使いまくるが、そのタイムリープは彼女の知らぬうちに、彼女とその大切な男友達二人の運命を、大きく変えていたのだった。

70点
一般人ウケを捨て、ファン向けに特化した潔さ

今年の夏映画は、アニメーション作品や漫画が原作の映画が目立つが、この『ハチクロ』も、羽海野チカ作の少女漫画の実写化。美術大学を舞台に、等身大の若者たちを描く群像劇で、『NANA』と並び話題に上ることが多い人気作だ。

美大教師、花本修司(堺雅人)の研究室に入り浸る美大生、竹本(櫻井翔)は、先生の親戚の少女、はぐみ(蒼井優)に一目ぼれする。しかし、変人ながら圧倒的な才能を誇る先輩、森田(伊勢谷友介)も、どうやら彼女に思いを寄せているようだ。竹本は、はぐみに強く好意を寄せながらも、はぐみと森田、二人の天才同士の世界に入り込めず、疎外感を感じていく。

『ハチミツとクローバー』は、よく引き合いに出される『NANA』に比べると、やや低年齢向きという印象を受ける。それは、登場人物から性欲というものが一片も感じられないため、恋愛ドラマの展開に大きく制限が加えられてしまい、恋愛というものの表層を描くにとどまっているためだ。

70点
ナンパ経験者の男性に観てほしい

『ハード キャンディ』は、全世界の男性にとって猛烈に恐ろしい映画だ。低予算で作られてはいるが、安っぽさは微塵も感じさせず、その面白さは100億円クラスの超大作をはるかに上回る。とくに、合コンやら出会い系やらで、女の子と遊んだ経験のある男性ならば、グイグイと引き込まれてしまうに違いない。

主人公はカメラマンの30代男性(パトリック・ウィルソン)。彼の趣味は、出会い系サイトで少女を引っ掛けること。今日も見事14歳とアポとりに成功、しかも、面接してみたらこれがなかなかの美少女(エレン・ペイジ)、おまけに頭の弱そうなガキだから楽勝だ。適当に誉めそやし、口車に乗せ、見事自宅に連れ込む彼。少女は年の割になかなか乗り気で、SMプレイなんかもいける口らしい。ところが、緊縛プレイに付き合って、テーブルに縛り付けられた彼の股間=タマに、少女はなぜか氷パックを押し付ける。そしてハサミを取り出し言うのだ。「さあ、手術をはじめるわよ」

ナンパ男の悲劇、というやつである。なぜ彼は、こんな目にあわなければならないのか。

70点
無名の人々にささげられた、大まじめな9.11映画

9.11同時多発テロ事件では、4機の旅客機がハイジャックされたが、たった一機、ユナイテッド航空93便だけは、目標に到達することなく墜落した。果たしてその機内では何が起きていたのか。マット・デイモン主演のアクション映画『ボーン・スプレマシー』で、切れのいい演出を見せたポール・グリーングラス監督が、ノンフィクション風の演出で映画化する。

2001年9月11日、何機かの航空機が不審な動きを見せ始める。管制塔や関連当局が戸惑う中、ニューヨークのワールドトレードセンタービルに、最初の旅客機が突入。やがてユナイテッド93便の機内でもハイジャック犯人が立ち上がり、行き先をホワイトハウスに変更させる。高度が異常に低いことを不審に思った乗客たちは、やがて各自の携帯電話等でWTC炎上を確認する。死を覚悟し遺書を残すもの、愛する家族に電話をするもの、機内の緊張感が極度に達したとき、彼らは団結し、機を取り戻すことを決意するのだった。

ホワイトハウスに突入するはずだったハイジャック機の中で起こった、知られざる感動の人間ドラマだ。監督たちは当局の関係者、そして遺族に綿密な取材を行い、特に遺族からは、機内から家族への最後の電話の内容などもインタビューした。演じる俳優たちにはそれぞれの人物の生い立ちや、当日の空港までの足取りまで伝え、役作りを行ってもらったという。安直なヒーロー映画にしないため、役者はあえて無名の俳優だけを使った。

70点
下ネタで笑いまくろう

近年、比較的高年齢な男性の童貞率が話題になっている。週刊誌などで見たところによると、40歳の約10%が童貞なのだそうだ。カトリックのような厳しい戒律がある宗教とはほとんど縁のない日本では、とくに童貞という事実は重荷となって男性の背中にのしかかる。そこで公開されるのが『40歳の童貞男』。秀逸な邦題が話題の、アメリカ製コメディ映画だ。

テレビゲームやフィギュア収集が趣味のアンディ(スティーヴ・カレル)は、マジメすぎる性格がたたって40歳の今も童貞。しかも、悪いことに職場の悪友3人組に、その事実を知られてしまう。翌朝には、早くも職場全員に知れ渡ってしまった上、なんとか童貞喪失させてやろうという周囲の余計なお世話に悩まされる羽目に。アンディとしては、彼らが紹介するナンパな女性たちより、誠実でやさしい向かいのショップ店員(キャサリン・キーナー)が気になるのだが……。

『40歳の童貞男』は、高年齢童貞をテーマにした、ロマンティックコメディの亜流である。しかし、日本で問題になっているような、「趣味にハマるあまり、女性とのコミュニケーション能力を得る機会がなく、結果として童貞のまま中年になってしまったオタク」についての社会風刺や、問題提起はほとんど行わない。単に、高年齢童貞という主人公の設定として、もっとも説得力がある"オタク"を採用したというだけ、といった印象だ。

70点
他人の人生にかかわる怖さを描いた、見ごたえあるドラマ

トルーマン・カポーティという人は、ノンフィクション小説のパイオニア。彼が、1959年におきたカンザス州一家4人惨殺事件の犯人に獄中取材し書き上げた『冷血』は、大ベストセラーとなり、世間に衝撃を与えた。映画『カポーティ』は、その執筆過程を丹念に追った伝記ドラマだ。

1960年、殺人犯スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)の存在を知った作家カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、彼が起こした事件を次回作の小説にすべく、何度も接触を試みる。彼は、親身になって話を聞いてやり、やがてスミスに心を開かせることに成功する。ところがカポーティはその裏で、彼を信頼して真実を打ち明けたスミスを裏切るような内容の小説を書いていた。

できれば題材となっているカポーティの小説『冷血』や、彼の盟友であるネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)の『アラバマ物語』について、予備知識があるといいが、無いとだめというわけではなく、基本的には誰でも(作家の取材・執筆過程に興味がある人ならば)楽しめるだろう。

70点
あきらかに時期尚早なわりには、なんとか見ごたえある大作に仕上げた

アメリカ同時多発テロ事件から5年、事件を直接の劇映画として描く試みが、続々行われている。この『ワールド・トレード・センター』もそのひとつ。

実体験を元にベトナム戦争の過酷な現実を描いた『プラトーン』(86年)、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を、陰謀論の観点から追った『JFK』(81年)など、社会派作品で知られるオリバー・ストーン監督が、大掛かりな予算をかけて作った作品だ。

2001年9月10日。普段どおり勤務についた港湾警察のジョン・マクローリン巡査部長(ニコラス・ケイジ)。やがて彼の耳に、WTCに航空機が突っ込んだとの信じがたい報告が入る。わけもわからず現場に急行した彼は、部下のウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)らとともにビル内に救出作業に向かうが、そのとき建物が崩落、彼らは瓦礫の下敷きになってしまう。

70点
B級パニックアクションのキモを完璧に理解したつくり

飛行機という乗り物は、人間が本能的に恐れる乗り物のひとつだ。あの鉄の塊が、いかなる技術でもって空を飛ぶのか、理解できない人間はもちろん、わかっていてもなんとなく怖い。なにしろ墜落事故はおきたが最後、老いも若きも一巻のおわりなのだから。

そして蛇。これも人間が本能的に嫌う動物の代表格といえる。てらてらと光る表面。くねくねと、手も足もないくせに異様にすばやい動き。おまけに一撃必殺の毒をもち、自分より巨大な獲物を丸呑みする常識はずれな習性……。

では、この二つが同時に襲ってきたらどうなるか。墜落の危機に瀕した空の密室、旅客機内に、数え切れないほど多数の毒蛇が放たれる。まさに、パニック必至。そんな映画が「スネーク・フライト」だ。

70点
イーストウッドらしい、静かでセンスのいい戦争映画

日米が戦ったあの戦争の中で、もっとも重要かつ激戦だった戦場のひとつに、硫黄島の戦いがある。第二次大戦を通して、米軍側の勲章のほとんどがこの戦闘の功労者に与えられたことからもわかるとおり、硫黄島は両国にとって重要な戦略拠点であった。

映画の中でも説明されているが、簡単にいうと日本にとっての硫黄島は、本土爆撃に向かう米軍側長距離爆撃機に対する警戒基地の役割を果たしていた。このおかげで日本軍は、本土で十分な迎撃・避難体制をとることができていたのだ。ところが硫黄島が落ちてからは、この場所が米軍の重要な補給、そして爆撃機を護衛する戦闘機の基地となり、日本本土はみるみる焼け野原と化していった。

この戦いを、二部作として描くことを決めたのが、いまや米国を代表する巨匠クリント・イーストウッド(「ミリオンダラー・ベイビー」「ミスティック・リバー」など)。この第1弾は米軍側からの視点、12月に公開される第2弾『硫黄島からの手紙』は、日本側の視点から描かれる。

70点
比較的まっとうだったラストムービー

『木更津キャッツアイ』は、今をときめく脚本家、宮藤官九郎の代表作であり、カルト的人気を誇るテレビドラマシリーズだ。放映当時は決して高視聴率ではなかったが終了後、あれよあれよという間にその評判が広がり、映画版も2本作られることになった。この『ワールドシリーズ』は、いよいよそのシリーズの最後、完結編となる。

余命わずかと宣告されながらも、しぶとく生きつづけたぶっさん(岡田准一)がついに死に、3年の月日が流れた。あれほど強い結束を誇った残りのメンバーも、すでにバラバラになっていた。そんな中、ただ一人木更津に残ったバンビ(櫻井翔)は、あるとき謎めいた天の声を聞く。さんざん的外れな行動を経た後、その声が「野球場を作れば彼は戻ってくる」との意味だと気づいたバンビは、早速メンバーを集めて実行に移すが……。

ゲスト出演者ではなく、すでに死んでいるオジーを含めた、キャッツの中核的メンバーによる大団円だ。クドカンによる脚本は、このシリーズの伝統である時間まき戻しの効果を取り入れながら、回想その他さまざまな形でぶっさんやオジーを登場させる。しかし、そうした演出技巧にはけっして必要以上に頼らず、前作に比べてストレートな人間ドラマとして仕上げた。各キャラクターは相変わらずのバカをやっているが、最後にはホロリとさせる、そんな内容だ。

70点
人によって楽しみ方が大きく異なる映画

以前私は、「外国映画とは、そのときのその国民の空気感を知ることができる楽しみがある」というような事をこのウェブサイトで書いた記憶があるが、韓国で6人に1人が見たというほどの大ヒット作『トンマッコルへようこそ』は、まさにそうした楽しみ方ができる最たるものだ。この奇妙な戦争映画は、他に例を見ない独特の個性をもっており、大いに見る価値のある一本といえる。

1950年代、朝鮮半島の山深くの村トンマッコル。素朴で平和な人たちが住み、自給自足のつつましい暮らしを送るこの村に、米国人パイロットの操る戦闘機が不時着する。時を経ずして今度は道に迷った韓国軍兵士や、北朝鮮軍の兵士が村にやってくる。おりしも朝鮮戦争の真っ只中で、敵味方、そして同盟軍として戦う三者が集い、村は一触即発の状態となる。

『トンマッコルへようこそ』は、現実に起こった朝鮮戦争を題材にしながらも、その内容は限りなくファンタジーといってよい、不思議な映画だ。この架空の村トンマッコルでは、ありえないほど平和でのんきな暮らしがはぐくまれており、ここに集った戦争中の兵士たちは、彼らに影響を受けて、やがてお互いを理解し始めるという展開。

70点
深く感動を覚える人間ドラマに隠された、監督の執念

交戦中というわけでもない平和な隣国の一般市民を国家命令により拉致し、その罪を認めながらもいまだ被害者を返そうとしない。北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国による、決して許されない蛮行を、被害者に焦点を当てて描いたドキュメンタリー。

日本人ではなく、あくまで海外の「拉致問題を知らない人々」へ広くアピールするための作品なので、もともと私たちはターゲットではないということを理解した上で鑑賞するのがポイントだ。そうすることで普段見ているニュース報道とは違った、さまざまな発見をすることができる。

たとえば、タイトルからわかるとおり、本作は横田めぐみさんの家族を追いかける、人間重視の作風。マイケル・ムーアの扇情的な作品群のように、北朝鮮に対する批判などの政治的主張はほとんど見受けられず、あくまで悲劇に直面した夫妻の話として、ある程度距離をおいて彼らを見つめるのみだ。つまり、拉致問題を社会問題の側面からとらえるのではなく、人間ドラマとして描いている。

70点
テロリストの最後の一日のすごし方

『パラダイス・ナウ』は、私たちがいわゆるテロリストと呼んでいる存在、とくに自爆テロを行う人間が、最後の一日をどう過ごすかを詳細に描いた異色のドラマだ。

テロは問答無用の悪だと考える人々にとって、人間としての彼らの行動原理を理解しようという試みはすべて受け入れられないものと見え、この映画に対しても激しい反対の署名運動が繰り広げられた。それが影響したのかその年(2005年)のアカデミー外国語映画賞は逃したものの、本作が優れた映画作品であることに違いはない。

主人公の若者二人は長年の親友同士。彼らはパレスチナのイスラエル占領地ナブルスで自動車修理の仕事をしている。ロードプロックとフェンスに囲まれた不自由な町の中、閉塞感と貧しさは彼らの未来に大きな影を落としていた。ある日二人は、所属する抵抗組織が行う報復爆破作戦の実行者へと抜擢される。作戦は48時間後。二人は最後の日々をあわただしくすごし、やがてそのときを迎えるが……。

70点
とてつもなく不気味な要素を隠し持つ

最近のアメリカ製長編アニメ映画の多くは、正直なところどれも同じでまったく面白くない。

決まって動物が主人公で、似たような性格設定の擬人的キャラクターが似たような冒険をする。CGの出来の良さだけが自慢という、どうしようもないアイデアの貧困さに、私はウンザリしている。このままでは倖田來未の二番煎じから脱却できぬ後藤真希同様、ピクサー以外は没落の一途をたどるに違いあるまい。

ところがそんな中、この『ハッピーフィート』はほんのわずかだが独自色を打ち出すことに成功した。それが何かは後述する。

70点
スタローンが命をかけて作った一本

おそらく30代以上の男性にとって、ビル・コンティ作曲によるこのシリーズのテーマ曲『Gonna Fly Now』ほど心を奮い立たせるメロディはないだろう。あれが流れ、画面に巨大な「ROCKY」の文字がスクロールすれば、もはやそれだけで感無量、というほどほれ込んだファンも少なくない。

そんなロッキーシリーズもいよいよこれで大団円。前作パート5もそううたってはいたが、このシリーズを生み出したシルベスター・スタローン自身が「あれは失敗作、だからこれを作った」と語るとおり、さすがにこれ以降はなさそうだ。

ボクシングを引退したロッキー(シルベスター・スタローン)は、愛妻エイドリアンも亡くし、今はフィラデルフィアで小さなイタリア料理店を営んでいる。ずっと父の栄光と比べられて生きてきた息子からも避けられ、いまや客相手に昔話を繰り返すだけの日々だ。そんなある日、無敵の現役チャンピオン(アントニオ・ターヴァー)と全盛期の自分のシミュレーション対戦をテレビで見た彼は、くすぶる情熱を抑えきれず、ついに現役復帰を決める。

70点
単なるドッキリカメラにとどまらない社会派

本作は、アメリカで爆発的な話題を呼んだ映画だ。しかしその特殊な性質から、日本では公開すらしないのではないかと危ぶまれた一本でもある。お国柄の違いといってしまえばそれまでだが、そのくらい"アメリカ人向け"に特化して作られた作品ということだ。

『ボラット』は、ジャンルで言えばモキュメンタリーということになる。モキュメンタリーとは、ドキュメンタリー"風"に撮られた作品のこと。事実を追いかけるドキュメンタリーと違い、あくまで"風"。平たく言えばニセドキュメンタリーということだ。

中でもこの作品の場合は、一言でいうとドッキリカメラ。「カザフスタンからやってきたテレビリポーター」という設定の主人公ボラットが、「文化交流」と称してアメリカ中を旅しながら一般人にイタズラを仕掛けて回るという、大迷惑なお話だ。

70点
聖書&オカルトものとしては上質な部類

日本はキリスト教の国ではないので、聖書をネタにしたような映画はあまり受けない。クリスチャンなら誰でもわかるような「暗黙の事実」が私たちにはよくわからないし、そもそも興味が無いからだ。ましてそれがただでさえ人気の薄いオカルトジャンルの恐怖映画だとしたら、宣伝マン泣かせもいいところ、だ。

そんなわけで『リーピング』は、『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)の女ボクサー役でアカデミー主演女優賞に輝いたのも記憶に新しいヒラリー・スワンクの主演作でありながら、興行的には苦戦が予想される一本。

かつて聖職者だったキャサリン(ヒラリー・スワンク)は、ある事件を契機に信仰を捨てた。今では、涙を流すキリスト像や病気を治す棺など世界各地の「奇跡」を科学で解き明かしてしまう、無神論者としてその名をとどろかせていた。ところが今回の調査では、旧約聖書の十の災い(出エジプト記)をなぞる超常現象が連続。現代科学という絶対的価値観が揺らぎつつある彼女とそのチームは、村人が災いの元と迫害する森の中の少女(アンナソフィア・ロブ)に会いに行くが……。

70点
99%の人にとっては0点

なぜこの点数なんだと思うかもしれないが、そこだけ見て判断しないでほしい。これは「ビートたけしのやることならすべて受け入れられる」という特殊な人がみてギリギリこのくらいだろうという点数であり、それ以外の人にとってこの映画はおそらく0点である。

主人公の映画監督キタノ(ビートたけし)は、得意のギャング映画を「二度と撮らない」と宣言してしまった。そこで、これまで撮ったことのない小津安二郎風のドラマや流行の昭和ノスタルジーもの、ホラーやらラブストーリーに挑戦するがどれも性に合わない。そんな彼がたどりついた詐欺師とその娘を主人公にしたストーリーは、しかしそのどれよりも無茶苦茶なものだった。

『ALWAYS』風の昭和懐古ものを撮ってみたら、治安の悪い下町でとてつもなく貧乏なガキどもが暴れまくる、夢のかけらもないどころかあまりにリアルすぎてシャレにならない映画になった。北野監督が典型的な人気ジャンルを手がけると、こんな風になるよ的なショートムービーの連続で、前半は大いに笑わせる。冗談とはいえそれぞれの作品は豪華なキャストと本格的な撮影でクオリティが高く、大いに見ごたえがある。

70点
加えたものはすばらしく、削ったものは致命的

乙一というミステリ作家の小説は、文章や構成はライトノベル的な子供向けの印象だが、その発想はなかなか鋭く、必死に読者を楽しませようというエンターテナー精神も旺盛なので個人的には好感度が高い。この映画の同名原作「きみにしか聞こえない」は彼の代表的短編のひとつだが、まさに上記の特徴が如実に現れた見所ある一篇だ。

リョウ(成海璃子)は学校で孤立しがちな女子高生。友達がいないからクラスでただひとり、ケータイを持っていない。ある日彼女は公園でおもちゃの携帯電話を拾うが、驚くべきことにそこに着信がはいる。恐る恐る出た電話の相手はリサイクルショップ店員を名乗るシンヤ(小出恵介)。やがて念じあうだけで通話できることがわかった二人は、四六時中の会話を通じて心を開きあっていく。

いまどきの高校生にとって、クラスでただひとり携帯を持っていないということがどんな意味を持つか。非常に現代的で、鋭いところをついた設定だと原作を読んだとき私は感じた。ケータイがほしいと願っているヒロインは、つまりは友達を渇望しているのだ。彼女の気持ちに痛々しい共感を覚える若い人は少なくあるまい。

70点
日本アニメの魅力がつまったオムニバス

短編を集めたオムニバスという形式は、全部が好みでなくとも楽しめるという点で、飽きっぽい人に向くと私は思っている。たとえ興味がなくとも15分待てば次が始まるのだ。120分間苦痛が続く可能性がある長編作品を見るよりは、圧倒的にリスクが少ない。

『Genius Party ジーニアス・パーティ』は、適度に前衛的・実験的な作品あり、万人ウケしそうな娯楽作品ありと、幅広いジャンルを誇るオムニバスアニメーション作品。真っ先に感じるのは、これだけいろいろなジャンルを平然と作ってのける日本アニメ界の層の厚さと、これまたそれを平然と受け入れるであろう日本のアニメファンの懐の深さである。

ジブリ作品のようなファミリーアニメから、それこそロリータ趣味のエロアニメまで、すべて一人でたしなむファンすらこの国では珍しくない。実写映画の世界では、なかなかそういう人はいない。だが、そんなアニメファンたちの存在によって、日本のアニメ文化は磨かれ、今では世界に誇るコンテンツに育った。彼らの情熱とスケベ心に、私は最大限の敬意を表する。

70点
70年代B級アクション映画のレプリカ

米国と、日本でも先月六本木ヒルズで公開されたイベント上映『グラインドハウス』は、B級映画マニアとしてのクエンティン・タランティーノ(およびその仲間たち)らしい、遊び心に富んだ企画だった。

"グラインドハウス"とは、アクションやバイオレンス、セックスの要素を盛り込んだ安っぽいB級映画を2〜3本立てで短期間公開する興行形態の映画館のこと。今ではほぼ全滅したが、日本にもかつては町にひとつくらいそんな映画館があった。ゴミひとつ落ちていない、総入れ替え制の綺麗なシネコン世代には想像できないかも知れないが、やたらと映画に詳しいオジサンたちの中には、こういう所で映画に親しんだ人が多い。

タランティーノももちろんその一人で、彼はあの独特のいかがわしさ、面白さを若い映画ファンにも知ってもらおうとこれを企画した。盟友ロバート・ロドリゲスにもその魅力を語って聞かせ、真っ先に引き込んだという。そして二人で長編を一本ずつ持ち寄り、間に架空の予告編(これも名だたる個性派監督が担当)を4本挟み、2本立てとして公開した。

70点
怖さから面白さへチェンジ

全身を金粉メイクした芸人が"皮膚呼吸"できずに死んだとか、中国の見世物小屋で両手両足を切断されたダルマ女性が日本語で助けを求めてきたとか、殺人場面を収録したスナッフビデオが高額で取引されているといった数々の都市伝説。そのほとんどは根拠のない嘘っぱちだが、「もしかしたらあるかもしれない」シンプルなリアリティが、我々の興味をひきつけてやまない。

そんな不気味ネタのひとつ、「金持ちの拷問同好会に、生贄となる若者を提供するホステル経営者」を、荒唐無稽さを抑えてホラームービーにしたイーライ・ロス監督『ホステル』の続編がこれ。万が一、都市伝説を信じてしまう純情な方が見たら、前作同様二度と海外の安宿に泊まることはできなくなるだろう。

アメリカ人の留学生少女3人組が、良質な天然温泉があると聞いてスロバキアのホステルにやってきた。だがそこは秘密拷問クラブと提携(?)する恐怖の館。彼女らは自分の知らぬ間に世界中のセレブ会員相手のオークションにかけられ、いつのまにか誰かに「自由なやり方で拷問して殺してよい」権利を買われているのだった。

70点
ヒーローものとしてのツボを押さえつつ、無理に背伸びせずまとめた

スパイダーマンやX-メンをはじめとするマーベル社のアメコミヒーローの中でも最古参であるファンタスティックフォーは、本国での人気がきわめて高い。

その期待の実写映画であった2年前の前作(『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』)は、しかし日本ではろくに知名度を上げる事も無く終わった。レイザーラモンHGによる、「フォー」に引っ掛けたプロモーションや、エンド曲にオレンジレンジの歌を使ってみたりなど、明らかに方向性を間違った話題づくりが原因のひとつであろう。だいたい、何もしらない人には4作目と思われてしまいかねない題名からしてまずい。

そんな宣伝マン泣かせのシリーズだが、そんなわけでこれがパート2となる。

70点
タランティーノ版とセットで見比べるのも一興

9月1日から公開されている『デス・プルーフ in グラインドハウス』(クエンティン・タランティーノ監督)に続く、「往年のB級アクション映画の復刻版」第二弾。本来この2本は同時上映するために作られたが、日本ではディレクターズカットとして長めに再編集され、おのおの単独で上映されることになった。こちらの監督はタランティーノの盟友、ロバート・ロドリゲス。

舞台はテキサスの田舎町。陸軍部隊長(ブルース・ウィリス)と怪しげな科学者による生物兵器の取引中、トラブルからガスが空気中に放出されてしまう。それを吸った住民らは謎のウィルスに感染しゾンビ化。街は阿鼻叫喚の地獄と化す。

あらすじからわかるとおり、ゾンビ集団からのサバイバルを基軸にしたアクションホラーだ。上映前には架空のアクション映画の予告編が流されたり、フィルムの傷を再現するなど例によって「チープな地元の映画館」風味に味付けされている。とくにこのロドリゲス版で笑えるのは、ヒロインとのベッドシーンにおけるある演出だろう。普段は無表情なマスコミ試写室でも、ここはさすがに笑いが出た。

70点
シナリオは平凡だが、演出には光るものあり

劇場用アニメーションにおける時代劇アクションは、まだまだ開拓の余地があるジャンルの一つだ。少なくとも、ファンタジーやロボット、近未来ものに比べたら、ただそれだけで新鮮さを感じさせるだけの鮮度がある。『ストレンヂア -無皇刃譚-』を制作したアニメ会社のボンズは、そのあたりを重々理解したうえで、自分たちの作風をしっかりとこの個性的な映画に反映させた。

ときは戦乱の世。中国大陸から一人の孤児、仔太郎(声:知念侑李)がある禅僧に連れられ日本にやってきた。同時に、仔太郎に隠されたある秘密を求め、明国の軍団も追ってきた。彼らと利害の一致を見た赤池城領主による連合軍に追われる途中、仔太郎はなぜか刀を抜かない凄腕の剣士(声:長瀬智也)と出会い、彼を用心棒に雇うのだった。

無理に大風呂敷を広げぬ堅実な脚本のおかげで、荒唐無稽な要素を組み込みながらもぎりぎりのリアリティを維持することに成功した。命の価値が安かった時代を舞台とし、様式美的なチャンバラではない、血しぶき吹き出る実践的な戦闘シーンを組み込むことで、子供であろうと主人公であろうといつ死ぬかわからぬ緊迫感を生み出している。

70点
このくらいで十分と思わせる良質なミステリ映画

最近のウディ・アレン映画は、面白いか否かより、ほとんど好きか嫌いかで評されるようなところがあったが、『タロットカード殺人事件』は久々に"面白い"一本であった。

休暇でロンドンに来ているアメリカ人の女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、たまたま鑑賞した手品ショーで老マジシャンのシド(ウディ・アレン)から舞台上に呼ばれ、人体消失マジックのモデルにさせられる。巨大な箱に入れられたサンドラは、しかしそこでなぜか先日急死した有名記者の幽霊と遭遇、いま巷を騒がせている"タロットカード連続殺人事件"の犯人の名を告げられる。その後、なりゆきでシドと独自の捜査を始めることになった彼女は、幽霊が告げた犯人である若き貴族ピーター(ヒュー・ジャックマン)に、高貴な身分を装って近づくが……。

主要な登場人物はたった3人というシンプルさ。大それたどんでん返しはないが、得意のユダヤ人ネタをからめたユーモア溢れる大量の会話、途切れぬスリル、そしてひねりのあるオチと、よくまとまった作品だ。時折出てくる幽霊がヒントをくれるなど遊び心も満載。ミステリは大人の遊戯だということを、この監督が心底理解していることがよくわかり、見ていて気持ちがいい。

70点
大人気原作ものらしく、力の入った出来のティーン向けアクション

この映画の対象年齢は比較的はっきりしている。スパイとして大活躍する主人公は14歳の設定だから、まずはそれより下の世代の男の子、そしてその父親。ところが、そのどちらにも当てはまらない私が見てなかなか面白いのだからあなどれない。世界的なベストセラーの映画化ということで、相当力を入れて作ったことが良くわかる本格的アクションスパイムービーだ。

平凡に暮らしていた少年アレックス(アレックス・ペティファー)は、叔父(ユアン・マクレガー)の死後まもなくイギリス情報局秘密情報部(俗に言うMI6)からスカウトされる。実は叔父は凄腕の諜報員で、スキューバダイビングや射撃、登山など趣味の研鑽を通してアレックスを幼いころから一流のスパイにすべく育てていたのだった。彼は最初の作戦で、MI6がかねてからマークしているIT実業家(ミッキー・ローク)の元へ、PC雑誌のコンテスト優勝者を装って近づく事になった。

知らないうちにスパイとしての能力を、それも超一流のそれを身に着けていたアレックス。子供が活躍するストーリーは数あれど、こういう形で即戦力ぶりに説得力をあたえた点が絶妙。一緒に見に行ったお父さんたちは、次の日から息子にいろいろ習い事をさせたくなるだろう。心躍る導入部である。

70点
賛否両論の結末とはいうが……。

婚約者と公園を散歩中、理不尽な暴力ですべてを失ったラジオパーソナリティーのヒロイン。後日、護身用に拳銃を入手したもの

の、それで実際に悪党を殺めた瞬間、彼女は人として超えてはならない一線を踏み越えた事に気づく。

犯罪者とその暴力によりひどい目にあった女が、犯罪者から銃を得て、その圧倒的

70点
現実の女の子もこうなら楽なのに

ある日、流れ星が地上に落ちた。片思いの女の子にプレゼントすべく、流れ星のかけらを狙う主人公青年がそこにいくと、星は麗しきお姫様の姿に変わっていた。一方、悪の老魔女も、不老不死の効力をもつ彼女の心臓を虎視眈々と狙っていた。

壁に囲まれた村にすむ青年、その裂け目を守る番人、願った場所にテレポートできる蝋燭など、各種設定や細かいアイテムに魅力があり、かつストーリーに生かされているので世界観がしっかりと感じられる。空を飛ぶ海賊船が着水する場面の異様な力の入れ方など、どこを重視すれば舞台が生き生きとするか、この作り手はよくわかっているようだ。

また、映画ファンにとってはベテランスターのいじり度合いが笑えるだろう。たとえば海賊船長のロバート・デ・ニーロは、本当はやさしいくせに部下の前では恐怖の船長を演じているという設定。自室に一人でいるときの本音バージョンとのあまりの落差は、このハリウッド随一の演技派がやるとじつにキョーレツ。デニーロアプローチの新たなる伝説として、映画史に記録されることになるだろう。

70点
昭和しあわせ博物館・第二幕

日々進歩するVFX。多くの映画監督はこれを未来世界など、見たことがないものを描くために使おうと考える。やがて一部の人々は、実在した過去を映像化するためにこそ、役に立つ技術だと気づく。しかしこのテクノロジーの専門家である山崎貴監督は、さらに一歩進んで、「どうせならその映像を最大のウリにしよう」と考えた。

その狙いは前作の大ヒットという形で大当たりした。当然である。それこそが、過去を舞台にした映画が本来あるべき姿だからだ。映画でなければ決して出来ない、丁寧に作られた、あるいは集められた調度品。広い撮影所いっぱいに立てられたオープンセット。美術スタッフの職人芸が遺憾なく発揮されたそういうものが、かつては映画館に行く楽しみの一つだった。

ストーリーやキャラクターではなく、背景でお客さんをうならせる事ができるということ。多くの映画人が忘れつつあった、あるいはあきらめていた事を山崎監督は最新の映像技術によってやり遂げた。高く評価すべきと私は考えている。

70点
望まない妊娠、彼女の選択は……?

本作品はエイドリアン・シェリーが監督した、はじめての日本公開作品であると同時に、悲劇的な理由により最後のそれとなってしまった(後述)。

アメリカ南部の田舎町。小さなダイナーのウェイトレス、ジェンナ(ケリー・ラッセル)はパイ作りの名人。隣町のパイコンテストで優勝して、その賞金で人生を変えるのが夢だが、嫉妬深く乱暴なダメ亭主に自由を奪われていた。それでも長年少しずつ貯金をし、いよいよ町から逃げ出そうというとき、望まない妊娠が明らかになる。

ユーモアと女性の本音に満ちた、幸福感溢れるドラマだ。ヒロインのジェンナはしょぼくれた田舎町で、お互い何の精彩もない人生を歩んでいる同僚のウェイトレス二人と愚痴をこぼしあう日々。よくみれば美人だし、パイ作りの腕も相当なものだがそれらは彼女の人生に何のプラスももたらさず、徐々に中年に近づいている。おそらく多くの若い女性たちが恐れる「灰色の人生コース」を、ジェンナはまっしぐらに進んでいる。

70点
スリラーではなく、天然ギャグ映画

アクション映画の名手、故深作欣二の息子、健太監督は、真面目に作ってもカルトやギャグにしてしまう、ある種の天然監督だと私はずっと思っていた。とくに前作『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』は、記録的大コケではあったものの、バカ映画ギリギリのアクション映画としてなかなかの出来栄えであり、彼の"才能"を生かすにはやはりこの道だなと予感させた。この新作『XX エクスクロス 魔境伝説』は、同じ娯楽映画としてさらに良い出来で、その成長ぶりは嬉しい限り。

親友の愛子(鈴木亜美)に誘われ、ひなびた温泉地、阿鹿里村(あしかりむら)を訪れた女子大生のしより(松下奈緒)。彼氏の浮気で傷ついた心を癒すべくやってきたが、村人の様子はただただ不気味。しかも、部屋の押入れで拾った携帯の通話相手は、「早く逃げろ! 脚を切り落とされるぞ!」と不気味な警告を叫び続けるのだった。

のっけからエンジン全開。わけがわからぬ風習と信仰にとりつかれた不気味村人からの、ヒロインの逃亡劇が始まる。やがて親友と思っていた愛子に不審な点がみられたり、かと思いきや、突然愛子視点の物語へ急変したりと、数章立てのミステリホラーとして、この上なくハイテンポな一品。怪しげな謎が徐々に(といってもかなりの速度で)明らかになるが、先を読むのが困難なので最後まで楽しめる。話の全体像がなかなか見えてこない点も、余計に興味をそそられる。

70点
人類最後の一人になっちゃいました

何かの間違いで人類が滅び、地上最後の一人になってしまったらどうするか。『アイ・アム・レジェンド』は、そんな男の物語だ。

ガンを根絶する画期的な新薬が開発された。やがてその万能性から、人類を救う大発明ともてはやされる。それから数年後、無人化して荒廃するニューヨークの街で、一人の男(ウィル・スミス)と一匹の犬がサバイバルしていた。毎日AMラジオ全周波数で他の生存者に呼びかけているものの、いまだ誰からも返事はない。自分以外の人類は絶滅してしまったのだろうか。

朽ち果てていく大量の車の脇を、野生動物が走り去る。猟銃代わりの軍用自動小銃を片手に、それを狩る男。公園には彼の植えたトウモロコシ畑があり、家には保存食料が備蓄されている。そんなショッキングな暮らしぶりと、数年前、まだ繁栄していた大都会の様子が交互に写される。徐々に何がおきたのか、観客も理解していくという寸法だ。

70点
キテレツなのに引き込まれる、少年アイスホッケー映画

アイスホッケーを題材にしたスポーツ映画である本作は、原作および監督の陣内孝則らしさが良いほうに出た、個性的で楽しい一本となった。

都会でタップダンサーになる夢が破れた修平(森山未來)は、恋人(加藤ローサ)の待つ北海道にやってくる。早速プロポーズするも、彼女の父が許してくれない。必死に食い下がった結果、父親が所有する少年ホッケーチームを優勝させたらOKとの条件を得る。が、チームはいまだ未勝利の弱小で、修平はスケートさえすべれぬズブの素人だった。

乱暴もののフィギュア少女や、すぐに足を"滑らせて"負ける少年力士など、一芸に秀でた逸材(?)を次々スカウトしたり、まったくの畑違いぶりを逆手に取った奇策により、チームが生まれ変わる変化球中心の展開。よって、努力と根性で勝ち上がるスポ根の王道を期待する人には向かない。

70点
食の安全性を徹底追求したドキュメンタリー

賞味期限や産地の偽装が一段落したと思ったら、テラ豚丼やらケンタッキーフライドゴキブリといった問題が持ち上がっている。どちらもKYなアルバイト店員の悪ふざけが、ミクシーやニコニコ動画といった巨大サイトを通じてネット上で広まったニュースだ。日本のフード業界は、もはや最上位の料亭から最底辺のファストフードまで、腐敗しきってしまったのか。

──と思ったところで今度は、不祥事のディフェンディングチャンピオン中国から、殺鼠剤入りの猛毒ラーメンが売られていたとの仰天話が飛び込んできた。お湯を注いで……ではなく、食べると数分であの世行きだという。知らん顔して輸出したら、これはもう生物兵器となんら変わりない。中国産食品は、いまや大量破壊兵器の粋に達している。米国は中国をテロ支援国家指定してはどうか。

さて、そんな今ぜひ見てほしいのがこの『食の未来』。誠実な語り口で、冷静に、かつ論理的に食の安全性の問題を解説するまじめなドキュメンタリーだ。米国では04年3月の選挙前にカリフォルニアで上映され、この地域での遺伝子組み換え作物(GMO)栽培禁止法案を通過させる力となった。情報量が多く、一部専門的な内容にも突っ込むため、字幕でなく日本語吹き替え版での上映となる。画面のみに集中して見られるのはありがたい。

70点
キモい男二人がフィギュアスケートでペアを組む?!

アイデアを聞いただけで「これは見たい」と思わせる映画がある。飲み屋で思いついてメモ用紙になぐり書きした企画書が、一発で通ってしまうようなパターンだ。『俺たちフィギュアスケーター』は、(企画書がペラ紙一枚だったかは知らないが)その典型例。

フィギュアスケート男子シングルで、常にトップ争いをしているチャズ(ウィル・フェレル)とジミー(ジョン・ヘダー)。実力は拮抗するも犬猿の仲の二人は、同点優勝の表彰式で乱闘騒ぎを起こしてしまう。事態を重く見たアメリカフィギュア界は二人を永久追放。しかし彼らは規約の穴を見つけ、シングルでなくペア部門でカムバックする。

男同士のペアでフィギュアスケートの頂点を目指すスポーツコメディー。なぜキモい男ペアかという理由付けも、なかなか説得力があって良い。実力は十分なれど、はたして二人は優勝できるのか?!

70点
Mr.ビーンがフランスに行くとどうなるか

ローワン・アトキンソンの名キャラクター"Mr.ビーン"は、およそ10年ほど前、日本でもブームになった。寸足らずのツイードスーツに濃すぎる顔で、いつも問題をややこしく増幅させるマヌケな英国人の姿は、いまも記憶に新しい。……というより、忘れたくともインパクトがありすぎて無理か。

97年には、あまり好評ではなかった映画版も作られ、やがて長い沈黙を経て、このたび本国イギリスのBBCにおける新作の放映と同時に、第2弾となるこの映画版が公開された。同時にこれが、ローワンいわく最後のビーンになるという。

慈善くじでフランス旅行を当てたビーン(ローワン・アトキンソン)は、カンヌ国際映画祭でにぎわう南仏へと旅立つ。ところがのっけから彼は、偶然居合わせた映画監督の息子を巻き添えにTGV(フランス高速鉄道)を乗り過ごすというポカをやらかす。やがて新進女優のサビーヌ(エマ・ドゥ・コーヌ)をも巻き込んだ、3人の予想不能な珍道中が始まる。

70点
国家による偽札製造事件の真相

がんさつ、ではなく"にせさつ"と読む。マヌケな犯罪者がコピー機で作るようなチンケな代物ではない。ナチス・ドイツが軍事作戦として敢行した大プロジェクトを、紙幣贋造に従事したものの立場から語る、実話を基にしたドラマだ。

第二次世界大戦のさなか。ナチスは敵国イギリス国内経済に打撃を与えるため、大規模なニセポンド札の製造に着手する。各地の収容所から印刷技術の専門家のユダヤ人をかきあつめ、ヘルツォーク親衛隊少佐(デーヴィト・シュトリーゾフ)のもと、作戦は開始された。当時、一介の捜査官だったヘルツォークに逮捕されたニセ札作りのプロ、サロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)も、リーダーとしてそこに加わった。

これまでの収容所と違い、柔らかなベッドやまともな食事が提供される"破格"の待遇。やがて彼らユダヤ人捕虜たちはポンド札の偽造に成功し、つかの間の開放感を味わう。この作戦が続く限り、彼らの命も保証されているためだ。

70点
ダコタ・ファニングのライバル女優の魅力大爆発

『テラビシアにかける橋』は、VFXをたくさん使ったまるで『ナルニア国物語』のごときファンタジックな映画だが、根底には比較にならないほどシリアスな何か、言ってみれば"死"の空気が流れている。

その理由は、原作者で米国児童文学の第一人者キャサリン・パターソンが、執筆当時癌にかかっていた事と、息子の周辺で起こったある悲劇にショックを受けた直後だったため。この映画版も、その空気感をよく表現しており、心温まるドラマを描きながらも、全編に異様な緊張感が張り詰めている。

小学五年生の少年ジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)は、おとなしい性格のうえ貧しい事もあり学校ではいじめられっ子。一方、隣に越してきた転入生のレスリー(アンナソフィア・ロブ)は、裕福な作家夫婦の一人っ子。運動も勉強もよくできるレスリーは、しかし想像力が豊かすぎてちょっと変わり者。クラスでも浮きまくりだった。仲間はずれ同士意気投合した二人は、家の裏の森をテラビシアと名づけ、その空想の国で日々冒険を楽しむのだった。

70点
全国の佐藤さんは、捕まったら殺されます

私はこの映画を見た後に、山田悠介の原作小説を読んだ。だれかが「すごい本だよ」と言っていたが、確かにそうだった。ここ数年読んだエンタテイメント小説の中で、一番驚かされたといっても過言ではない。

"佐藤"姓をもつ人たちが、各地で変死する事件が相次ぐ現代の日本。足がめっぽう速い高校生、佐藤翼(石田卓也)は、今日も佐藤洋(大東俊介)率いる不良グループから追い回されていた。やがてついに囲まれたところで、彼はどこかへ瞬間移動してしまう。そこはもとの日本とそっくりだが、どこかが違う世界。言葉も感情も持たない病気の妹(谷村美月)はなぜか雄弁で、翼を追いかけていた洋は気のいいヤツに変わっていた。だが一番の違いは、この世界の"佐藤"さんは、黒装束の殺人者たちに追いかけ殺される、「リアル鬼ごっこ」の真っ最中だったということだ。

私がなぜ原作小説に驚いたかといえば、それがケータイ小説以上に無茶苦茶な文章で書かれていたから。主語と述語がつながっていなかったり、意味不明な修飾語があったりと、とにかくびっくり。校正するはずの編集者は、よほどのイタズラ好きか眠っていたかのどちらかだ。ちょっと調べたところによると、この問題はずいぶん前からネット等で話題だったらしい。実例が並べてあってとても笑える。興味のある方は検索のほどを。

70点
笑って笑って、最後は第九の大合唱に涙

シネカノンという映画会社はよほど歌が好きなのか、あるいはヒットの方程式を確立したのか、もうながいこと「音楽&人情ドラマ」の娯楽映画に関わっている。『のど自慢』(1999年)や『ゲロッパ!』(2003)、そして『フラガール』(2006)といった具合だ。

そしてその集大成的作品がこの『歓喜の歌』。下手すりゃドイツ以上によく歌われているのではないかと思われる、ベートーベンの第九(交響曲第9番)。あの年末恒例の合唱曲=第4楽章を題材にした、涙と笑いのコメディドラマだ。

12月30日、とある市民ホールで大事件が勃発した。やる気の無い担当者・飯塚主任(小林薫)のミスにより、2つのママさんコーラスを大晦日の夜にダブルブッキングしてしまったのだ。典型的な小役人体質で、これまでトラブルから逃げ続けてきた飯塚だったが、今回ばかりは一歩も譲らぬ両者の間で右往左往するハメになる。

70点
日本人としての誇りを失わず、戦犯裁判を戦い抜いた男の物語

戦勝国の一方的な論理でA級戦犯らを裁いた東京裁判の欺瞞は、近年の保守ブームで一般にもだいぶ知られるようになってきた。しかし、B級戦犯とされた岡田資(おかだたすく)中将が、命がけで米国側と法廷で戦った史実については、まだそれほど知られてはいない。

『明日への遺言』は、その法廷闘争の様子を描くことで、現代の日本人が失いつつある"真摯な生き方"を伝えようとする歴史ドラマ。

昭和23年3月、スガモプリズン(巣鴨拘置所)。そこには元東海軍管区司令官・岡田資中将(藤田まこと)が収監されていた。彼とその部下たちの起訴理由は、38名の米軍捕虜を不当に処刑したというものであった。しかし岡田は、無差別爆撃は国際法上の戦争犯罪であり、その実行者である彼らはジュネーブ条約でいう捕虜にはあたらないと主張。弁護人のフェザーストン(ロバート・レッサー)と共に、検察側と真っ向から対決するのだった。

70点
『アメリ』のオドレイ・トトゥが憎ったらしい小悪魔に

『ダ・ヴィンチ・コード』のようなトンデモ映画もたまにはあるが、『アメリ』『愛し

てる、愛してない...』『堕天使のパスポート』と、人気女優オドレイ・トト

ゥが選ぶ作品はどれも優れたものばかり。主演最新作『プライスレス 素敵

70点
アカデミー賞最多4部門を受賞した、コーエン兄弟最新作

最多4部門を受賞し、今年のアカデミー賞最大の話題作となった『ノーカントリー』は、噂どおりの味わい深い一品であった。

ベトナム帰還兵のモス(ジョシュ・ブローリン)は、テキサスの荒野で狩をする最中、銃撃戦の跡と思しき死体の山を発見する。そこで麻薬と200万ドルの現金を見つけ、思わず持ち逃げしたモスは、しかし追っ手に気づかれてしまう。その瞬間から彼は、殺人マシンのような暗殺者シガー(ハビエル・バルデム)に追われるハメになる。

ハイエナのように死体から金をあさる男とそれを追う化け物のようにタフな処刑人。事件の残虐さと異常性に、ただただ無力感をつのらせる昔気質の保安官(トミー・リー・ジョーンズ)。この3者を主人公とするクライムアクションだ。

70点
これが第一作目ならよかったのに

パート1の威光を受けた二作目は、興行面の有利さと反比例して、評価の面では苦戦を強いられるのが普通である。しかし、『口裂け女2』の前作にはそもそも高評価なるものが存在しないため、いわゆる「二作目のジンクス」は通用しない。

1970年代の岐阜。三姉妹の末っ子・真弓(飛鳥凛)は、陸上部の先輩を密かに想う元気で純朴な女子高生。結婚する長女・幸子(川村ゆきえ)、美容師として独立したばかりの次女(岩佐真悠子)とも仲良く、幸せに暮らしていた。しかしある夜、逆恨みした幸子の元彼が、暗がりで幸子と勘違いした真弓の顔面に硫酸をかける。

復讐相手の顔くらいきちんと確認しなさいというほかないが、このあわてんぼうの元カレのせいで、真弓と家族の運命は転落を始める。

70点
本格受験指南ムービー

『受験のシンデレラ』は、異業種監督が最初に作るべき映画の見本のような作品である。

東大合格率第一位の名門予備校のカリスマ教師・五十嵐(豊原功補)は、あるとき末期がんで余命1年半の宣告を受ける。絶望の最中、彼はコンビニで貧しそうな少女・真紀(寺島咲)と出会う。レジでの消費税計算において、真紀に数学的センスを見出した五十嵐は彼女に向かって言う。「お前は人生を変える気はないか?」

格差社会の最底辺ともいうべき、貧しい母子家庭の高校中退の少女を、日本一のカリスマ教師は人生最後の生徒に選んだ。チャンスは一回のみ、1年半後の東大合格に向け、500円コイン一枚の授業料で、二人の無謀な挑戦が始まる。

70点
自ら指を切って保険金を請求する人々

後出しじゃんけんの結果はわかりきっているという意見もあるが、韓国版『黒い家』の出来は予想以上に良いものであり、貴志祐介の同名原作のファンには(大竹しのぶ主演の99年公開の日本版でなく)こちらをオススメする。

生命保険調査員のチョン(ファン・ジョンミン)は、見知らぬ男パク(カン・シニル)から名指しで指名される。やがてその周辺で死体を発見したチョンは、あまりに不審な一連の出来事から、この事案はパクによる保険金詐欺だと確信する。しかもチョンが調査を続けると伝えると、パクは異常な嫌がらせをはじめるのだった。

原作でも映画でも、私が一番好きなのはこの前半の展開。実際に生命保険会社に勤めた経験のある貴志祐介だからこそ書ける、あまりにリアルな"異常客"の描写に背筋が凍る思いがする。

70点
ロバート・レッドフォードらしい社会派政治ドラマ

ここ最近、政治的なアメリカ映画が多いのは、ひとえに今年が大統領選挙の年だから。その意味では、それらの政治映画がことごとくプロパガンダであるという見方は決して間違ってはいない。

将来の大統領候補と目される共和党の上院議員(トム・クルーズ)は、執務室に旧知のジャーナリスト(メリル・ストリープ)を呼び、アフガンにおける対テロ戦争の新作戦について極秘情報を交え語り始める。彼女に独占スクープをプレゼントしようというのだ。おなじ頃、あるリベラルな大学教授(ロバート・レッドフォード)は、最近授業に出ない優等生に、その理由を問いただしている。さらに同時刻、教授のかつての教え子二人が、いままさにアフガンで新作戦に出撃しようとしていた。

時差のある三箇所での物語が、絶妙に絡み合いながら同時進行する政治ドラマ。きわめて会話量の多い社会派ものだ。ハリウッドきってのリベラル映画作家で俳優のロバート・レッドフォード7年ぶりの監督作品で、かなり露骨に自身の政治的立場を表明したものになっている。

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